特許第6043452号(P6043452)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6043452
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】寝具用不織布
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/407 20120101AFI20161206BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20161206BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20161206BHJP
   D06M 11/83 20060101ALI20161206BHJP
   A47C 27/12 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   D04H1/407
   A61L9/01 B
   A61L9/00 C
   D06M11/83
   A47C27/12 F
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-65109(P2016-65109)
(22)【出願日】2016年3月29日
【審査請求日】2016年8月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004053
【氏名又は名称】日本エクスラン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】土久岡 清輝
(72)【発明者】
【氏名】赤木 佑輔
【審査官】 山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−314082(JP,A)
【文献】 特開2004−169240(JP,A)
【文献】 特開2005−323842(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3121923(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/407
A47C 27/12
A61L 9/00
A61L 9/01
D06M 11/83
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄、アルミニウム、カリウム、及びチタンを含む金属組成物からなり、かつ金属組成物中の金属含有割合が鉄100ppmに対してアルミニウム100〜500ppm、カリウム0.5〜50ppm、チタン0.1〜50ppmである空気触媒を繊維表面に付着した短繊維架橋アクリレート系吸放湿性短繊維からなる物質分解除去短繊維、及び物質分解除去短繊維以外の短繊維からなり、物質分解除去短繊維以外の短繊維の使用割合が20〜80質量%である不織布であって、物質分解除去短繊維以外の短繊維がポリアミド短繊維、ポリエステル短繊維、アクリル短繊維、及び再生セルロース短繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の短繊維であり、空気触媒を繊維表面に付着した短繊維がポリエステル短繊維及び/又はアクリル短繊維であること、及び物質分解除去短繊維中の金属組成物の含有量が0.01〜20質量%であり、架橋アクリレート系吸放湿性短繊維の含有量が50〜95質量%であることを特徴とする寝具用不織布。
【請求項2】
寝具がベッドパッド又は敷きパッドであることを特徴する請求項1に記載の寝具用不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気触媒を付着した短繊維と架橋アクリレート系吸放湿性短繊維を併用して臭気原因物質を分解除去する能力を飛躍的に高めた寝具用不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の快適性、健康に対する意識の高まりから、汚染物質を分解または除去する機能を有する素材の開発が強く求められており、これらの機能に基づいて消臭性や抗菌性を有する物質分解除去剤が数多く提案されている。
【0003】
特許文献1では、架橋構造およびカルボキシル基を有する重合体から形成され、かつ光触媒活性を有する金属酸化物微粒子を含有する光触媒含有繊維が提案されている。かかる金属酸化物微粒子は、悪臭物質、アレルゲン、菌、ウイルス等がカルボキシル基に吸着されるとともに光触媒で分解される機能を有するが、その機能を発揮するためには十分な光照射が必要であり、しかもカルボキシル基による吸着だけでは分解除去が不十分な物質が存在する問題があった。
【0004】
特許文献2では、光照射なしで水酸化ラジカル、オゾン又は過酸化物を発生する空気触媒が固着された繊維構造体が提案されている。空気触媒は物質の分解除去の効果に優れるが、その機能を効果的に発揮するためには周囲に十分な量の水蒸気が持続的に存在することが必要であり、また、空気触媒だけでは分解除去が不十分な物質が存在する問題があった。
【0005】
特許文献3では、鉄とアルミニウムとカリウムを含む金属組成物、および水を含有する水性組成物からなる消臭剤、抗菌剤、または防カビ剤が提案されている。この水性組成物は、対象物に固着すると水分が蒸発するため、その機能の持続的な発揮には限界があり、また、空気触媒だけでは分解除去が不十分な物質が存在する問題があった。
【0006】
上述の特許文献1〜3の問題を解消するために、出願人は、幅広い種類の物質を効果的かつ持続的に分解除去する能力を有する物質分解除去剤を提案した(特許文献4参照)。しかしながら、特許文献4では、これらの物質分解除去剤の機能を寝具用不織布において具体的に実現する方法までは提案していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−74243号公報
【特許文献2】特開2005−60904号公報
【特許文献3】特開2007−215988号公報
【特許文献4】PCT/JP2015/079581
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の特許文献4の技術をさらに進めるために創案されたものであり、その目的は、幅広い種類の臭気原因物質を効果的かつ持続的に分解除去する能力を有する寝具用不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、寝具用不織布において空気触媒を付着した短繊維と架橋アクリレート系吸放湿性短繊維を併用することにより、架橋アクリレート系吸放湿性短繊維によって空気触媒の周囲の水蒸気濃度が持続的に高まり、これにより空気触媒から多量のOHラジカルが発生されて空気触媒の物質分解除去能力を最大限発揮させることができるとともに、これに架橋アクリレート系吸放湿性短繊維の物質吸着能力が加わって、幅広い種類の臭気原因物質を分解除去する能力が相乗的に高まることを見い出し、本発明の完成に至った。
【0010】
即ち、本発明は、以下の(1)〜()の構成を有するものである。
(1)鉄、アルミニウム、カリウム、及びチタンを含む金属組成物からなり、かつ金属組成物中の金属含有割合が鉄100ppmに対してアルミニウム100〜500ppm、カリウム0.5〜50ppm、チタン0.1〜50ppmである空気触媒を繊維表面に付着した短繊維架橋アクリレート系吸放湿性短繊維からなる物質分解除去短繊維、及び物質分解除去短繊維以外の短繊維からなり、物質分解除去短繊維以外の短繊維の使用割合が20〜80質量%である不織布であって、物質分解除去短繊維以外の短繊維がポリアミド短繊維、ポリエステル短繊維、アクリル短繊維、及び再生セルロース短繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の短繊維であり、空気触媒を繊維表面に付着した短繊維がポリエステル短繊維及び/又はアクリル短繊維であること、及び物質分解除去短繊維中の金属組成物の含有量が0.01〜20質量%であり、架橋アクリレート系吸放湿性短繊維の含有量が50〜95質量%であることを特徴とする寝具用不織布。
)寝具がベッドパッド又は敷きパッドであることを特徴する(1)に記載の寝具用不織布。
【発明の効果】
【0011】
本発明の寝具用不織布は、架橋アクリレート系吸放湿性短繊維の存在により空気触媒の周囲の水蒸気濃度を持続的に高めているので、空気触媒による有機物質及び無機物質(金属を除く)の分解・除去能力を十分に発揮することができ、また架橋アクリレート系吸放湿性短繊維による物質の吸着効果も存在するため、幅広い種類の有機物質及び無機物質(金属を除く)に対する分解・除去能力が極めて優れている。従って、本発明の寝具用不織布を人間の身体が直接接触するベッドパッド又は敷きパッドなどに使用した場合、人間由来の臭気原因物質を効果的に分解除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の寝具用不織布は、特定の金属組成物からなる空気触媒を繊維表面に付着した短繊維と、架橋アクリレート系吸放湿性短繊維とからなる物質分解除去短繊維を含むものであり、空気触媒と架橋アクリレート系吸放湿性短繊維の相乗効果により物質の分解・除去能力を飛躍的に高め、消臭性、抗菌性、防カビ性などを持続的に高いレベルで発揮するものである。
【0013】
本発明の物質分解除去短繊維において短繊維に付着される空気触媒は、化学薬品を使用せずに、触媒効果により空気中の水分と反応してヒドロペルオキシルラジカル及びスーパーオキシドイオンを生成し、有害物質を分解し、さらに抗や消臭などの優れた効果を発揮するものである。
【0014】
空気触媒は、鉄、アルミニウム、カリウム、及びチタンを含む金属組成物からなるものであり、例えば土壌から無機酸または硫酸によって抽出される鉄、アルミニウム、およびカリウムに、四水酸化チタン塩酸塩からのチタンを配合することにより製造されることができる。空気触媒自体は、その作用機序を含め、従来から広く知られており、市販品から入手することが可能である。
【0015】
空気触媒中のカリウムは、空気触媒が物質を分解・除去する効果を奏するためのエネルギー源である。カリウムから放出される電子線等が周囲の水分子と衝突し、水和電子、原子状水素、水素ガス、ヒドロキシルラジカル、過酸化水素が生成される。水和電子及び原子状水素は酸化され、ヒドロペルオキシルラジカル及びスーパーオキシドイオンを生成し、ヒドロペルオキシルラジカルは原子状水素とともに過酸化水素を生成する。過酸化水素は鉄により還元され、ヒドロキシラジカル及び水酸化物イオンを生成する(フェントン反応)。過酸化水素は鉄により酸化され、ヒドロペルオキシルラジカル及び水素イオンが生成される。ヒドロキシラジカルとスーパーオキシドイオンは、強い酸化力を有し、これにより物質を分解・除去するとともに、微生物の増殖を阻害する効果を奏する。
【0016】
鉄は、上述のようにヒドロキシラジカル及び水酸化物イオンの生成反応(フェントン反応)、並びにヒドロペルオキシルラジカル及び水素イオンの生成反応を促進する。アルミニウムは、対象物または担体への固着・固定のための結合材として機能する。チタンは、アルミニウム、鉄、及びカリウムによる物質分解・除去効果をさらに高める役割を有する。アルミニウム、カリウム及びチタンの含有量は、鉄100ppmに対してそれぞれ100〜500ppm、0.5〜50ppm、0.1〜50ppmの割合であることが好ましい。さらに好ましくは、鉄100ppmに対してそれぞれ100〜300ppm、1〜10ppm、0.1〜5ppmの割合である。また、金属組成物中の鉄含有量は10〜100ppm、アルミニウム含有量は10〜100ppm、カリウム含有量は0.1〜10ppm、チタン含有量は0.01〜1ppmであることが好ましい。
【0017】
空気触媒が表面に付着される短繊維は、繊維長が30〜70mmで単糸繊度が2.0〜11.0dtexであることが好ましい。また、かかる短繊維としては、特に限定されないが、ポリエステル短繊維及び/又はアクリル短繊維を使用することが好ましい。短繊維への空気触媒の付着方法としては、従来公知の方法を適宜採用することができるが、例えば空気触媒の成分を短繊維の周囲表面にスプレーで塗布して乾燥する方法や空気触媒の成分を溶解した溶液中に短繊維を浸漬して乾燥する方法が挙げられる。
【0018】
本発明の物質分解除去短繊維で使用する架橋アクリレート系吸放湿性短繊維は、架橋構造と0.1〜10mmol/gのカルボキシル基を有するアクリレート系重合体を構成成分とする従来公知の短繊維が使用可能である。かかる短繊維としては、例えば特開2000−314082号公報に記載のように、アクリロニトリル含有率が85〜95重量%であるアクリル系繊維に対するヒドラジン系化合物による架橋処理によって導入される窒素含有量の増加が、1.0〜5.0重量%である架橋アクリレート系短繊維であって、残存ニトリル基の一部が3.0〜6.0meq/gのアルカリ金属塩型カルボキシル基に変換されており、しかも20℃×50%RH条件と20℃×95%RH条件との吸湿率差が50重量%以上150重量%以下である吸放湿性繊維が挙げられる。架橋アクリレート系短繊維は、上述のようにNa塩、Mg塩、Ca塩などの塩型カルボキシル基に変換されたもの以外に、塩型に変換されていないH型カルボキシル基タイプのものがある。いずれのタイプも使用可能である。架橋アクリレート系短繊維は、繊維長が30〜50mmで単糸繊度が2.0〜11.0dtexであることが好ましい。
【0019】
本発明の物質分解除去短繊維は、上述の空気触媒を繊維表面に付着した短繊維と架橋アクリレート系吸放湿性短繊維とを質量比で5:95〜50:50の割合で混綿機などを使用して均一に混合して使用することが好ましい。本発明の寝具用不織布における空気触媒を繊維表面に付着した短繊維と架橋アクリレート系吸放湿性短繊維の割合は、それぞれ3〜20質量%、5〜50質量%であることが好ましい。
【0020】
本発明の物質分解除去短繊維における空気触媒の金属組成物の含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、上限は特に限定されないが、経済的な観点から20質量%である。また、本発明の物質分解除去短繊維における架橋アクリレート系吸放湿性短繊維の含有量は、50質量%以上、好ましくは60質量%以上であり、上限は特に限定されないが、経済的な観点から95質量%である。
【0021】
本発明の寝具用不織布では、加工の容易性及びコストの点から、上述の物質分解除去短繊維以外の短繊維を使用する。寝具用不織布中の物質分解除去短繊維以外の短繊維の使用割合は、20〜80質量%であることが好ましい。物質分解除去短繊維以外の短繊維としては、特に限定されないが、ポリアミド短繊維、ポリエステル短繊維、アクリル短繊維、及び再生セルロース短繊維からなる群から選ばれる短繊維を使用することが好ましい。これらの短繊維は、単独で又は複数種の組み合わせで使用することができる。かかる短繊維は、繊維長が30〜70mmで単糸繊度が2.0〜8.0dtexであることが好ましい。
【0022】
物質分解除去短繊維以外の短繊維は、上記の種類の短繊維の中で熱接着繊維を含むことが好ましい。熱接着繊維は、寝具用不織布を構成する短繊維同士を接着するため及び全体の形態保持性のために加えられるものであり、従来公知の低融点成分を含む短繊維を使用することができる。かかる短繊維は、繊維長が38〜64mmであり、単糸繊度が3.0〜7.0dtexであることが好ましい。物質分解除去短繊維以外の短繊維は、混綿機などを使用して前述の物質分解除去短繊維と均一に混合して使用することが好ましい。熱接着性繊維は、不織布を構成する短繊維中に3〜35質量%の割合で含有されていることが好ましく、さらには5〜20質量%の割合で含有されていることが好ましい。
【0023】
上述の物質分解除去短繊維と、物質分解除去短繊維以外の短繊維とを均一に混合した短繊維は、従来公知のサーマルボンド、ケミカルボンド、ニードルパンチなどの方法によって不織布に加工することができる。サーマルボンド法は、熱接着繊維を混合された短繊維を加熱処理して不織布に加工する方法である。あるいは、従来公知のレジンボンド法(ケミカルボンド法)によって短繊維を不織布に加工することができる。レジンボンド法(ケミカルボンド法)は、エマルジョン系の熱接着樹脂を含浸あるいはスプレーなどで短繊維に付着させ、加熱乾燥させて短繊維の交点を接着して不織布に加工する方法である。この方法を用いると不織布の形態安定性が高まり、加工性の向上に寄与する。熱接着樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ゴム、塩化ビニル樹脂などが挙げられ、前記樹脂は、水系化したエマルジョン樹脂の形態が好ましい。これらの熱接着樹脂の中でもアクリル樹脂が接着性及び柔軟性の面より好ましい。熱接着樹脂は、不織布中に短繊維とは別に存在させ、短繊維の3〜20質量%の割合で不織布中に含有させることが好ましい。このようにして得られた本発明の不織布は、厚み10〜50mmで目付150〜400g/mであることが好ましい。
【0024】
本発明の寝具用不織布は、様々な用途に展開することができるが、その物質分解除去性能から人体が長時間密着するベッドパッド又は敷きパッドとして使用することが好ましい。ベッドパッド又は敷きパッドへの加工方法は、特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。
【0025】
本発明の寝具用不織布は、アンモニア、酢酸、イソ吉草酸、硫化水素、インドール、トルエン、一酸化窒素、二酸化窒素などの幅広い有機及び無機物質(金属を除く)を持続的に分解除去することができる。また、菌やウイルスやカビの増殖を抑制する抗菌機能も有する。さらに、タバコのヤニなどの汚れ物質や花粉へも適応可能である。また、果物や野菜などの生鮮食品より生成する成長促進ホルモン(エチレンガス)の分解も可能である。
【実施例】
【0026】
本発明の寝具用不織布の効果を実施例によって以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
実施例1
(1)空気触媒を繊維表面に付着した短繊維Aの準備
空気触媒として市販の「TiOTiO」((株)サンワード商会製)を用意した。この「TiOTiO」の金属組成を分析したところ、鉄17ppm、アルミニウム24ppm、カリウム0.22ppm、チタン0.08ppmであり、鉄100ppmに対してアルミニウム141ppm、カリウム1.29ppm、チタン0.47ppmの含有割合であった。繊維長64mm、単糸繊度6.6dtexの開繊したポリエステル短繊維をベルトコンベヤーに乗せ、スプレーを用いて空気触媒の付着量が2.0質量%となるように塗布した。塗布したポリエステルを120℃で3分間乾燥処理し、空気触媒を繊維表面に付着した短繊維Aを得た。
【0028】
(2)架橋アクリレート系吸放湿性短繊維Bの準備
架橋アクリレート系吸放湿性短繊維Bとして「モイスファイン」(東洋紡(株)製)を使用した。この短繊維Bの繊維長は48mm、単糸繊度は5.1dtexであった。
【0029】
(3)短繊維A及び短繊維B以外の短繊維Cの準備
繊維長64mm、単糸繊度6.6dtexの汎用ポリエステル短繊維と、繊維長64mm、単糸繊度4.4dtexのポリエチレンテレフタレート芯鞘複合短繊維(鞘成分:低融点ポリエチレンテレフタレート(融点110℃)、芯成分:ホモポリエチレンテレフタレート(融点255℃)、鞘比率50質量%)(東レ社製 ポリエチレンテレフタレート芯鞘複合繊維「6911」)を用意し、それらを表1に記載の質量比で池上機械(株)の混綿機を用いて均一に混合し、短繊維Cを得た。
【0030】
(4)不織布の作成
短繊維Aと短繊維Bを1:2の質量比で池上機械(株)の混綿機を用いて均一に混合した後、さらに短繊維Aと短繊維Bの混合物と短繊維Cを同様に混綿機を用いて6:4の質量比で均一に混合した。得られた混合された短繊維をカード、クロスレイした後、150℃の熱風で2分間熱処理して厚さ20mm、目付167g/mの不織布(縦150cm、横90cm)を得た。
【0031】
(5)敷パッドの作成
上記のようにして得られた同じ2枚の不織布を表地と裏地として重ね合わせ、キルティング機械を用いて格子状に加工し、敷きパッドを得た。なお、表地、裏地をともに縦糸にポリエステルの45番手、横糸に綿35%を含むポリエステルの45番手の混紡糸を用いて作成した縦230本、横263本の平織りで挟んだ。
【0032】
実施例2
空気触媒として、市販品ではなく、特開2007−215988号公報の製造例1(金属組成物製造)に記載の方法に従って作製した土壌由来の金属組成物からなる空気触媒を使用した以外は、実施例1と同様にして不織布及び敷きパッドを作成した。なお、ここでの空気触媒の金属組成物中の金属元素の種類と含有量について同様に分析したところ、鉄、アルミニウム、カリウム、チタンはそれぞれ23ppm、33ppm、0.81ppm、0.07ppmであり、鉄100ppmに対してアルミニウム143ppm、カリウム3.52ppm、チタン0.30ppmの含有割合であった。
【0033】
実施例3
架橋アクリレート系吸放湿性短繊維Bとして「ベルオアシス」(帝人(株)製)を使用した以外は、実施例1と同様にして不織布及び敷きパッドを作成した。この短繊維Bの繊維長は51mm、単糸繊度9.0dtexであった。
【0034】
実施例4〜6,
表1に記載の不織布の構成比率にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして不織布を作成した。
【0035】
実施例9〜10
表1に記載の不織布の構成比率で実施例1と同様にして三種類の短繊維を混綿機を用いて均一に混合した。得られた混合された短繊維をカード、クロスレイした後、シャワー方式で熱接着樹脂(エマルジョン化したアクリル樹脂、DIC社製、「ボンコート AN−1190S」)を表1に記載の付着量となるように塗布し、150℃の熱風で3分間熱処理して厚さ20mm、目付167g/mの不織布(縦150cm、横90cm)を得た。
【0036】
比較例1
空気触媒を繊維表面に付着した短繊維Aの構成分を全て架橋アクリレート系吸放湿性短繊維Bにした以外は、実施例1と同様にして不織布及び敷きパッドを作成した。
【0037】
比較例2
架橋アクリレート系吸放湿性短繊維Bの構成分を全て空気触媒を繊維表面に付着した短繊維Aにした以外は、実施例1と同様にして不織布及び敷きパッドを作成した。
【0038】
上記のようにして得られた実施例1〜6,8〜10及び比較例1、2の敷きパッドは、いずれも使用感や耐久性に関して良好であった。特に、熱接着樹脂と併用した場合には、形態安定性に優れており、加工性に優れた不織布であった。さらに、実施例1〜6,8〜10及び比較例1、2で得られた敷きパッドを10cm×10cmに切断した試料を用いてアンモニア、酢酸、イソ吉草酸、ノネナールの臭気成分に関して経時的な分解・除去効果を確認するためにSEKマーク繊維製品認証基準(JEC301)(一般社団法人繊維評価技術協議会)の消臭性試験に従って二時間後の臭気成分の減少率を測定した。
【0039】
具体的には、各試料を用意し、これらの試料を20℃×65%RHの条件下で24時間調湿した後、5リットルのサンプリングバッグにそれぞれ封入した。試料を封入したテドラバッグ中に3リットルの20℃×65%RHの空気と所定の初発濃度となるようにした所定の物質(アンモニア、酢酸、イソ吉草酸、ノネナール)を添加し、20℃×65%RHの条件で2時間経過後の添加物質の濃度(質量%)を検知管で測定し、臭気減少率(%)を算出した。なお、各試料の臭気減少率(%)は、洗濯回数0回及び5回後の試料の両方で確認した。洗濯は、JIS L0217 103法に従ってJAFET標準配合洗剤を使用して行ない、吊干しで乾燥させた。それらの結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
表1の結果からわかるように、空気触媒と架橋アクリレート系吸放湿性短繊維を併用した物質分解除去短繊維を含む不織布から構成される実施例1〜6,8〜10の敷きパッドは、いずれもアンモニア、酢酸、イソ吉草酸、ノネナールに対して高い消臭効果(物質分解・除去効果)を示した。これに対して架橋アクリレート系吸放湿性短繊維のみを使用した比較例1や空気触媒のみを使用した比較例2の敷きパッドは、実施例1〜6,8〜10より明らかに劣る消臭効果(物質分解・除去効果)であった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の寝具用不織布は、幅広い種類の物質に対して高い分解・除去する能力を持続的に有するので、人間の身体が密着する敷きパッドやベッドパッドなどの寝具に極めて有用である。
【要約】
【課題】幅広い種類の臭気原因物質を効果的かつ持続的に分解除去する能力を有する寝具用不織布を提供する。
【解決手段】鉄、アルミニウム、カリウム、及びチタンを含む金属組成物からなり、かつ金属組成物中の金属含有割合が鉄100ppmに対してアルミニウム100〜500ppm、カリウム0.5〜50ppm、チタン0.1〜50ppmである空気触媒を繊維表面に付着した短繊維、及び架橋アクリレート系吸放湿性短繊維からなる物質分解除去短繊維と、物質分解除去短繊維以外の短繊維とからなる寝具用不織布であって、物質分解除去短繊維中の金属組成物の含有量が0.01質量%以上であり、架橋アクリレート系吸放湿性短繊維の含有量が50質量%以上である。
【選択図】なし