特許第6043456号(P6043456)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6043456
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】燃料電池のスタック構造体
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2485 20160101AFI20161206BHJP
   H01M 8/2484 20160101ALI20161206BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20161206BHJP
【FI】
   H01M8/24 S
   H01M8/24 M
   !H01M8/12
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-154309(P2016-154309)
(22)【出願日】2016年8月5日
【審査請求日】2016年8月8日
(31)【優先権主張番号】特願2015-158914(P2015-158914)
(32)【優先日】2015年8月11日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】平岩 稔久
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊之
(72)【発明者】
【氏名】龍 崇
(72)【発明者】
【氏名】大森 誠
【審査官】 守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5662613(JP,B2)
【文献】 特開2016−149345(JP,A)
【文献】 特開2005−158531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/24
H01M 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池セルと、
前記燃料電池セルが挿入されるセル支持孔を有するマニホールドと、
前記燃料電池セルと前記マニホールドとを接合する接合材と、
を備え、
前記接合材は、前記燃料電池セルと前記セル支持孔との隙間に配置される充填部と、前記充填部の外側に配置される溜まり部とを有し、
前記燃料電池セルの外面に垂直な断面において、前記充填部と前記燃料電池セルとの第1接触長さに対する、前記溜まり部と前記燃料電池セルとの第2接触長さの比は、0.25以上29.80以下であ
前記第1接触長さは、0.05mm以上2.0mm以下であり、前記第2接触長さは、0.5mm以上1.5mm以下である、
燃料電池のスタック構造体。
【請求項2】
前記燃料電池セルの外面に垂直な断面において、前記第1接触長さに対する、前記溜まり部と前記マニホールドとの第3接触長さの比は、0.05以上29.60以下である、
請求項1に記載の燃料電池のスタック構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池のスタック構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池のスタック構造体は、燃料電池セルと、マニホールドと、接合材(シール材)とを備える(特許文献1を参照)。マニホールドは、燃料電池セルが挿入されるセル支持孔(貫通孔)を有する。接合材は、支持基板とセル支持孔とを接合する。
【0003】
このスタック構造体では、接合材が、マニホールドの内部空間(燃料ガスに曝される空間)と、スタック構造体の外部空間(空気に曝される空間)とを区画することによって、燃料ガスと空気との混合を防止している。すなわち、接合材は、シール材として機能している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−100687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スタック構造体では、稼働時には、熱膨張及び熱収縮等による熱応力が、燃料電池セル及びマニホールドに発生する。すると、この熱応力によって、接合材にクラックが局所的に発生してしまうおそれがある。ここで、局所的に発生したクラックが、熱応力によって、さらに成長すると、このクラックがマニホールドの内部空間とマニホールドの外部空間とを繋ぐ通路となり、内部空間に導入された燃料ガスが、内部空間から外部空間へと漏れ出してしまうおそれがある。このため、クラックに起因するガスリークの発生を抑制する様々な試みがなされ、この問題を解決するための技術が期待されている。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、ガスリークが発生しにくいスタック構造体を、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る燃料電池のスタック構造体は、燃料電池セルと、マニホールドと、接合材とを備える。マニホールドは、燃料電池セルが挿入されるセル支持孔を有する。接合材は、燃料電池セルとマニホールドとを接合する。接合材は、燃料電池セルとセル支持孔との隙間に配置される充填部と、充填部の外側に配置される溜まり部とを有する。燃料電池セルの外面に垂直な断面において、充填部と燃料電池セルとの第1接触長さに対する、溜まり部と燃料電池セルとの第2接触長さの比は、0.25以上29.80以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ガスリークが発生しにくいスタック構造体を、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る燃料電池のスタック構造体の全体斜視図である。
図2】セルの全体斜視図である。
図3】マニホールドの全体斜視図である。
図4】セル及びマニホールドの部分拡大断面図である。
図5】マニホールドの支持板に形成された挿入孔の拡大図である。
図6】接合材が配置される部分の拡大断面図である。
図7】燃料電池のスタック構造体において、接合材が配置される部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<スタック構造体の構成>
ここでは、本発明に係るスタック構造体の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
スタック構造体1は、固体酸化物形燃料電池(SOFC;Solid Oxide Fuel Cell)に用いられる構造体である。なお、本実施形態では、図1に示すように、x,y,z座標系が設定されている。
【0012】
スタック構造体1は、複数のセル100と、マニホールド200と、接合材300とを備えている。
【0013】
<セル>
各セル100は、燃料電池セルである。図1に示すように、各セル100は、マニホールド200に設けられる。セル100は、互いに間隔を隔てて並べられる。図2及び図4に示すように、セル100のx軸方向(長手方向)において燃料ガスが流入する側の端部10a(流入側端部)は、接合材300によってマニホールド200に接合される。セル100のx軸方向において燃料ガスが排出される側の端部10b(排出側端部)は、自由端となっている。このように支持基板10がマニホールド200に配置されるスタック構造は、一般的に「片持ちスタック構造体」と表現される。
【0014】
図2に示すように、セル100は、実質的に平板状に形成されている。セル100の長手方向、短手方向及び厚み方向は、それぞれx軸方向、y軸方向及びz軸方向に対応している。
【0015】
セル100は、x軸方向の長さL1がy軸方向の長さL2より長くなるように形成されている。x軸方向の長さL1は特に制限されないが、50mm以上且つ500mm以下の範囲内に設定することができる。y軸方向の長さL2は特に制限されないが、10mm以上且つ100mm以下の範囲内に設定することができる。z軸方向の長さL3は特に制限されないが、1mm以上且つ5mm以下の範囲内に設定することができる。
【0016】
図2に示すように、各セル100は、複数の発電素子部Aと、支持基板10と、シール膜20とを有する。
【0017】
各発電素子部Aは、燃料極、固体電解質膜、及び空気極を有する。各発電素子部Aは、燃料極、固体電解質膜、及び空気極の順に積層された積層焼成体である。ここでは、燃料極は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ;イットリア安定化ジルコニア)とから構成される。固体電解質膜は、例えば、YSZ(8YSZ;イットリア安定化ジルコニア)から構成される。空気極は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成される。
【0018】
複数の発電素子部Aは、支持基板10に設けられる。複数(例えば4個)の発電素子部Aは、電気的に直列に接続される。
【0019】
支持基板10は、電子伝導性を有さない多孔質の材料から構成された焼成体である。支持基板10は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)で構成される。
【0020】
支持基板10は、発電素子部Aを支持する。具体的には、支持基板10の両主面には、複数の発電素子部Aが、x軸方向に所定の間隔を隔てて設けられている。
【0021】
支持基板10の内部には、複数(例えば6個)の燃料ガス流路11(貫通孔)が形成されている。各燃料ガス流路11は、x軸方向に延びている。各燃料ガス流路11は、y軸方向(幅方向)に所定の間隔を隔てて形成されている。
【0022】
シール膜20は、支持基板10の外表面を覆う。シール膜20は、緻密質材料によって構成することができる。緻密質材料としては、例えば、YSZ、ScSZ、ガラス、スピネル酸化物などが挙げられる。シール膜20は、各発電素子部Aの固体電解質膜と同じ材料によって構成されていてもよい。この場合、シール膜20は、各発電素子部Aの固体電解質膜と一体的に形成されていてもよい。
【0023】
<マニホールド>
マニホールド200は、複数のセル100それぞれに燃料ガスを供給するためのものである。図3及び図4に示すように、マニホールド200は、実質的に直方体状の筐体である。マニホールド200では、高さ方向(上方)、短手方向(幅方向)、及び長手方向が、x軸方向、y軸方向、及びz軸方向に各別に対応している。
【0024】
図3及び図4に示すように、マニホールド200は、基部210と、支持板220(上壁)とを有している。基部210は、金属例えばステンレス鋼等から構成されている。基部210は、底部と、底部を取り囲む側壁とを有している。底部と側壁とによって、上方に向けて開口する開口部が形成される。
【0025】
支持板220は、金属例えばステンレス鋼等から構成されている。支持板220は、基部210上に配置される。具体的には、支持板220は、基部210の側壁の先端部に配置され、基部210の開口部を塞いでいる。このように、支持板220が基部210の開口部を塞ぐことによって、マニホールド200には、内部空間S1が形成される(図4を参照)。すなわち、内部空間S1は、基部210(底部及び壁部)と支持板220とによって構成される。この内部空間S1には、燃料ガスが導入される。
【0026】
燃料ガスは、導入管230を介して、外部から内部空間S1に導入される。導入管230は、金属例えばステンレス鋼等から構成されている。導入管230は、マニホールド200の支持板220に、接合・固定されている。具体的には、導入管230は、支持板220に形成された貫通孔(図示しない)に挿入された状態で、支持板220に溶接される。
【0027】
上記の構成を有するマニホールド200は、図3図4、及び図5に示すように、複数のセル100を支持する。具体的には、マニホールド200の支持板220が、複数のセル支持孔221を有している。各セル支持孔221は、マニホールド200の外側(外部空間)と内部空間S1とを連通するように、支持板220に形成されている。より具体的には、各セル支持孔221は、支持板220をx軸方向(高さ方向)に貫通している(図4を参照)。各セル支持孔221は、z軸方向(長手方向)に所定の間隔を隔てて形成されている(図3及び図5を参照)。また、各セル支持孔221は、y軸方向(短手方向)にも所定の間隔を隔てて形成されている(図3を参照)。
【0028】
図4に示すように、各セル支持孔221には、各セル100が配置される。詳細には、各セル100の燃料ガス流路11が内部空間S1に連通するように、各セル支持孔221には、各セル100の流入側端部10aが挿入される。
【0029】
図5に示すように、各セル支持孔221をマニホールド200の外側(外部空間)から見た場合(x軸に沿って見た場合)、各セル支持孔221は、一方向に長く形成され、且つ両端部が円弧状に形成されている。すなわち、各セル支持孔221は、長円形状に形成されている。各セル支持孔221は、y軸方向の長さL4(長手方向の長さ)がz軸方向の長さL5(短手方向の長さ・幅方向の長さ)より長くなるように形成されている。
【0030】
各セル支持孔221におけるy軸方向の長さL4は、各セル100の流入側端部10aの外面におけるy軸方向の長さL2よりも大きい。各セル支持孔221のy軸方向の長さL4及び各セル100のy軸方向の長さL2の差は、例えば0.1mm以上且つ1.0mm以下の範囲内である。
【0031】
また、各セル支持孔221におけるz軸方向の長さL5は、各セル100の流入側端部10aの側面におけるz軸方向の長さL3よりも大きい。各セル支持孔221のz軸方向の長さL5及び各セル100のz軸方向の長さL3の差は、例えば0.1mm以上且つ1.0mm以下の範囲内である。
【0032】
すなわち、図5に示すように、各セル100の流入側端部10aが、各セル支持孔221に挿入された状態では、各セル支持孔221の内面と各セル100の流入側端部10aの外面との間には、隙間Gが形成される。隙間Gは、セル100の方向rに沿って、セル100の外周面周りに形成される。隙間Gは、全周にわたって一定であってもよいが一定でなくてもよい。この隙間Gには、接合材300が配置される。
【0033】
<接合材>
接合材300は、例えば、結晶化ガラスで構成される。結晶化ガラスとしては、例えば、SiO−B系、SiO−CaO系、MgO−B系、又はSiO−MgO系のものが用いられる。なお、結晶化ガラスとしては、SiO−MgO系のものが最も好ましい。
【0034】
ここで用いられる結晶化ガラスは、全体積に対する「結晶相が占める体積」の割合(結晶化度)が60%以上であり、且つ全体積に対する「非晶質相及び不純物が占める体積」の割合が40%未満のガラスである。なお、接合材300の材料として、非晶質ガラス、ろう材、セラミックス等が採用されてもよい。
【0035】
接合材300は、マニホールド200の内部空間S1の燃料ガスと、マニホールド200及び複数のセル100の外側の外部空間の空気との混合を防止する。具体的には、図4図5、及び図6に示すように、接合材300は、マニホールド200と各セル100との間に配置され、マニホールド200と各セル100とを接合する。これにより、接合材300は、内部空間S1(燃料ガスに曝される空間)と外部空間(空気に曝される空間)とを区画する。すなわち、接合材300は、シール材として機能する。
【0036】
なお、図4図5、及び図6では、説明を容易にするために、各部材の形状が誇張して描かれている。
【0037】
図4及び図6に示すように、接合材300は、マニホールド200の各セル支持孔221と各セル100との隙間Gを、マニホールド200及び各セル100の外側から塞ぐように、隙間Gに充填される。
【0038】
具体的には、図6に示すように、接合材300は、充填部301と、溜まり部302とを有する。充填部301は、隙間Gに配置される。充填部301は、x軸方向において、隙間Gの外部空間側(隙間Gの上部)に充填される。充填部301は、各セル100の流入側端部10aの外面、及びマニホールド200の各セル支持孔221の内面に接触して、両者を接合・固定する。
【0039】
この状態において、充填部301の下面は、各セル100の流入側端部10aの外面に対して、鈍角Dに形成されている。鈍角Dは、セル100の外面に沿う方向r(図5を参照)の全周において連続的に成立していてもよいが、方向rにおいて断続的に成立していてもよい。図6では、各セル100をxz平面で切断した断面における鈍角Dを、一例として、示している。これにより、充填部301の下面、及びセル100の流入側端部10aの外面によって構成される隅角部には、応力集中が発生しづらい。
【0040】
溜まり部302は、隙間Gの外側において、各セル100の流入側端部10aの外面、及びマニホールド200の外面(支持板220における外部空間側の面)に接触して、両者を接合・固定する。
【0041】
隙間Gのx軸方向における充填部301の下方、すなわち隙間Gの内部空間側(隙間Gの下部)には、接合材300が未充填である未充填空間S2(空間の一例)が設けられている。言い換えると、未充填空間S2は、隙間Gの接合材300とマニホールド200の内部空間S1との間に設けられている。
【0042】
上記のように接合材300が隙間Gに配置された状態では、図6に示すように、充填部301(隙間Gの接合材300)が、第1領域R1においてセル100に接触する。また、溜まり部302が、第2領域R2においてセル100に接触する。
【0043】
第1領域R1は、充填部301がセル100に接触する面である。第1領域R1は、セル100の外面に沿う方向rにおいて、セル100に接触し接着する。第1領域R1のx軸方向の長さは、第1接触長さC1によって定義される。
【0044】
第2領域R2は、溜まり部302がセル100に接触し接着する面である。第2領域R2は、セル100の外面に沿う方向rにおいて、セル100に接触し接着する。第2領域R2のx軸方向の長さは、第2接触長さC2によって定義される。
【0045】
第1接触長さC1に対する第2接触長さC2の比(C2/C1)は、0.25以上29.80以下である。これによって、セル100とマニホールド200を接合材300で強固に接合できるとともに、接合材300におけるクラックを抑えてガスリークを抑制することができる。
【0046】
第1接触長さC1は特に制限されないが、接合材300のガスシール性を考慮すると、セル支持孔221の長さT0の5%以上であることが好ましい。第1接触長さC1は、例えば0.05mm以上2.0mm以下とすることができる。第2接触長さC2は特に制限されないが、接合材300のガスシール性を考慮すると、セル支持孔221の長さT0の5%以上であることが好ましい。第2接触長さC2は、例えば0.5mm以上1.5mm以下とすることができる。
【0047】
ここで、第1接触長さC1は、次のように求められる。まず、図5に示す4つの測定位置M1〜M4において、セル100の外面に垂直な断面を観察して、接合材300の充填部301がセル100と接触する領域を確認する。測定位置M1,M2は、セル100の幅方向両端に位置し、互いに対向する。測定位置M3,M4は、セル100の幅方向中央両側に位置し、互いに対向する。次に、4つの測定位置M1〜M4それぞれにおいて、充填部301がセル100と接触する接触長さを測定する。そして、4つの測定位置M1〜M4で測定された接触長さの算術平均値を第1接触長さC1とする。
【0048】
第2接触長さC2は、第1接触長さC1と同様、次のように求められる。まず、図5に示す4つの測定位置M1〜M4において、セル100の外面に垂直な断面を観察して、接合材300の溜まり部302がセル100と接触する領域を確認する。次に、4つの測定位置M1〜M4それぞれにおいて、溜まり部302がセル100と接触する接触長さを測定する。そして、4つの測定位置M1〜M4で測定された接触長さの算術平均値を第2接触長さC2とする。
【0049】
図6に示すように、溜まり部302は、第3領域R3においてマニホールド200に接触する。第3領域R3は、溜まり部302がマニホールド200のうち支持板220の外面に接触し接着する。第3領域R3は、セル100の外面に沿う方向rにおいて、マニホールド200に接触し接着する。第3領域R3のz軸方向の長さは、第3接触長さC3によって定義される。
【0050】
第1接触長さC1に対する第3接触長さC3の比(C3/C1)は、0.05以上29.60以下が好ましい。これによって、接合材の強度をより向上させることができるため、接合材300からのガスリークをさらに抑制できる。
【0051】
第3接触長さC3は特に制限されないが、例えば0.1mm以上1.5mm以下とすることができる。第3接触長さC3は、第1接触長さC1と同様、図5に示す4つの測定位置M1〜M4それぞれにおいて測定された接触長さの算術平均値である。
【0052】
図6に示すように、充填部301は、第4領域R4においてセル支持孔221に接触する。第4領域R4は、充填部301がマニホールド200のうちセル支持孔221の内周面に接触し接着する。第4領域R4は、セル100の外面に沿う方向rにおいて、マニホールド200に接触し接着する。第4領域R4のx軸方向の長さは、第4接触長さC4によって定義される。
【0053】
第4接触長さC4は、第1接触長さC1とは異なっており、第1接触長さC1よりも短い。第4接触長さC4に対する第1接触長さC1の比(C1/C4)は、1.19以上39.40以下であることが好ましい。これによって、充填部301の内面をセル100の外面及びセル支持孔221の内周面それぞれに対して斜めに傾けることができる。従って、第1接触長さC1と第4接触長さC4が同じである場合に比べて、充填部301の内面とセル100の外面との境界付近や充填部301の内面とセル支持孔221の内周面との境界付近における応力集中が抑えられる。その結果、充填部301におけるクラックの発生が抑えられる。
【0054】
第4接触長さC4は特に制限されないが、例えば0.1mm以上1.5mm以下とすることができる。第4接触長さC4は、第1接触長さC1と同様、図5に示す4つの測定位置M1〜M4それぞれにおいて測定された接触長さの算術平均値である。
【0055】
また、隙間Gの間隔Kに対する第1接触長さC1の比(C1/K)は特に制限されないが、0.05以上であることが好ましい。これによって、ガスリークを適切に発生しにくくでき、且つセル100とセル支持孔221との接合力を適切に向上できる。隙間Gの間隔Kは、例えば0.1mm以上且つ1.0mm以下の範囲内に設定することができるが、これに限られるものではない。
【0056】
なお、各サンプルのセル支持孔221の形状のばらつき、各セル100の反りのばらつき、及び各セル100の主面の厚さのばらつき等の形状精度を考慮すると、隙間Gの間隔Kを0.1mm未満に設定することは容易ではない。また、隙間Gの間隔Kを、敢えて0.1mm未満に設定しようとすると製造コストが増大するおそれがある。このため、隙間Gの間隔Kは、0.1mm以上に設定することが好ましい。
【0057】
隙間Gの間隔Kは、次のように求められる。まず、図5に示す4つの測定位置M1〜M4において、セル100の外面に垂直な断面を観察して、隙間Gを確認する。次に、4つの測定位置M1〜M4それぞれにおいて、隙間Gの間隔を測定する。そして、4つの測定位置M1〜M4で測定された隙間Gの間隔の算術平均値を間隔Kとする。
【0058】
<その他の構造>
図4に示すように、スタック構造体1は、集電部材400,500をさらに有している。集電部材400は、隣接するセル100の間に設けられている。詳細には、集電部材400は、一方のセル100の燃料極と、他方のセル100の空気極とを電気的に直列に接続するために、隣接するセル100の間に設けられている。集電部材400は、例えば、金属メッシュ等から構成される。また、集電部材500は、各セル100に設けられている。詳細には、集電部材500は、各セル100の表側と裏側とを電気的に直列に接続するために、各セル100に設けられている。
【0059】
<スタック構造体の動作>
上記のスタック構造体1は、例えば、次のように動作する。スタック構造体1では、高温(例えば、600〜800℃)の燃料ガス(水素ガス等)が、導入管230からマニホールド200の内部空間S1へと導入される。すると、この燃料ガスが、各セル100の燃料ガス流路11に導入される。そして、燃料ガスが燃料ガス流路11を通過すると、燃料ガス流路11の排出側端部の排出口から外部へと排出される。一方で、空気(酸素を含むガス等)が、隣接するセル100間の空間において、セル100のy軸方向に通過する。
【0060】
このように燃料ガス及び空気を移動させることによって、各発電素子部Aでは、酸素分圧差すなわち電位差が、固体電解質膜の表裏面間に生じる。この状態で、セル100が外部の負荷に電気的に接続されると、下記(1)、(2)式に示す化学反応が起こる。これにより、セル100内にて電流が流れて発電状態となる。この発電状態において、セル100から電力が取り出される。
【0061】
(1/2)・O+2e−→O− (於:空気極) …(1)
+O−→HO+2e− (於:燃料極) …(2)
<スタック構造体の組立て>
上述のスタック構造体1は、例えば、次のように組み立てられる。
【0062】
まず、セル100の流入側端部10aの表面に、接合材300と親和性の高い材料(以下、「親和性材料」という。)を塗布して熱処理(結晶化処理)する。
【0063】
この際、図6に示すように、流入側端部10aの表面のうちセル支持孔221に対向する領域における塗布長さT1と、その外側の領域における塗布長さT2とを調整することによって、第1接触長さC1に対する第2接触長さC2の比(C2/C1)を0.25以上29.80以下に制御できる。また、塗布長さT1を調整することによって、第4接触長さC4に対する第1接触長さC1の比(C1/C4)を1.19以上39.40以下に制御できる。さらに、塗布長さT2を調整することによって、第1接触長さC1に対する第3接触長さC3の比(C3/C1)を0.05以上29.60以下に制御できる。
【0064】
次に、複数のセル100が、スタック状に整列された状態で、所定の治具等を用いて固定される。続いて、複数のセル100がスタック状に整列・固定された状態で、複数のセル100の流入側端部10aが、マニホールド200における複数のセル支持孔221に、各別に挿入される。
【0065】
続いて、接合材300が、マニホールド200及び各セル100の外側から隙間Gを塞ぐように供給されると、充填部301及び溜まり部302が形成される。このときに、セル100に塗布された塗布長さT1の親和性材料に対する接合材300の濡れ性が、マニホールド200のセル支持孔221の内表面に対する接合材300の濡れ性よりも高いため、図6に示すように、第1接触長さC1が第4接触長さC4よりも長くなる。また、セル100に塗布された塗布長さT2の親和性材料に対する接合材300の濡れ性が、マニホールド200の外表面に対する接合材300の濡れ性と異なるため、図6に示すように、第2接触長さC2と第3接触長さC3とがそれぞれ調整される。
【0066】
最後に、接合材300(例えば非晶質材料のペースト)に対して、熱処理(結晶化処理)が施される。この熱処理によって非晶質材料の温度が結晶化温度に到達すると、非晶質材料の内部において結晶相が生成され、接合材300が結晶化する。この結果、非晶質材料が固化・セラミックス化し、結晶化ガラスとなる。
【0067】
これにより、この結晶化ガラスで構成される接合材300によって、各セル100の流入側端部10aがマニホールド200の各セル支持孔221に接合・固定される。言い換えると、各セル100の流入側端部10aが、接合材300によって、マニホールド200の支持板220に接合・支持される。その後、上述した所定の治具が複数のセル100から取り外され、スタック構造体1が完成する。
【0068】
<他の実施形態>
上述した実施形態では、充填部301がセル支持孔221と接触する第4接触長さC4が、充填部301がセル100と接触する第1接触長さC1よりも短いこととしたが、これに限られるものではない。例えば、図7に示すように、第4接触長さC4は、第1接触長さC1よりも長くてもよい。また、図示しないが、第4接触長さC4は、第1接触長さC1と同じであってもよい。
【0069】
これらの場合であっても、第1接触長さC1に対する第2接触長さC2の比(C2/C1)を0.25以上29.80以下とすることによって、接合材300におけるクラックを抑えてガスリークを抑制することができる。
【0070】
なお、第1接触長さC1に対する第2接触長さC2の比は、図7に示すように、接合材300を隙間Gに充填する前にセル支持孔221の内周面に予め塗布される親和性材料の塗布長さT4によって調整することができる。
【実施例】
【0071】
以下において本発明に係るセルの実施例について説明するが、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0072】
(サンプルNo.1〜No.14の作製)
以下のようにして、サンプルNo.1〜No.14の燃料電池スタック構造体を作製した。サンプルNo.1〜No.14は、図6に示した構成を有する
まず、長さ200mm、幅50mm、厚み2mmのセルを準備した。セルの外面は、YSZシール膜によって覆われている。セルの内部には、燃料流路が形成されている。
【0073】
次に、セルの一端部の外面全周に親和性材料としての非晶質材料のペーストを塗布した後、熱処理(850℃、1時間)することによって親和性材料を結晶化した。この際、図6に示したように、セル支持孔に対向する領域における塗布長さT1と、その外側の領域における塗布長さT2とを調整することによって、表1に示すように、接合材の充填部とセルとの第1接触長さC1と、接合材の溜まり部とセルとの第2接触長さC2と、接合材の溜まり部とマニホールドとの第3接触長さC3とをサンプルごとに変更した。
【0074】
次に、セル支持孔を有するステンレス鋼製のマニホールドを準備して、セルの一端部をセル支持孔に挿入した。
【0075】
次に、接合材としての非晶質材料のペーストをセルとセル支持孔の隙間に充填した後、熱処理(850℃、1時間)することによって接合材を結晶化した。
【0076】
(サンプルNo.15〜No.28の作製)
以下のようにして、サンプルNo.15〜No.28の燃料電池スタック構造体を作製した。サンプルNo.15〜No.28は、図7に示した構成を有する
まず、長さ200mm、幅50mm、厚み2mmのセルを準備した。セルの外面は、YSZシール膜によって覆われている。セルの内部には、燃料流路が形成されている。
【0077】
次に、セル支持孔を有するステンレス鋼製のマニホールドを準備した。
【0078】
次に、セル支持孔の内周面全周に親和性材料としての非晶質材料のペーストを塗布した後、熱処理(850℃、1時間)することによって親和性材料を結晶化した。この際、図7に示したように、セルの外面における塗布長さT2と、セル支持孔221の内周面における塗布長さT4とを調整することによって、表2に示すように、接合材の充填部とセルとの第1接触長さC1と、接合材の溜まり部とセルとの第2接触長さC2と、接合材の溜まり部とマニホールドとの第3接触長さC3とをサンプルごとに変更した。
【0079】
次に、セルの一端部をセル支持孔に挿入した。
【0080】
次に、接合材としての非晶質材料のペーストをセルとセル支持孔の隙間に充填した後、熱処理(850℃、1時間)することによって接合材を結晶化した。
【0081】
(接合材の観察)
まず、各サンプルにおいて、セルの幅方向両端の2箇所とセルの幅方向中央両側の2箇所とにおけるセルの外面に垂直な断面を露出させた。
【0082】
次に、各サンプルの4つの断面を、走査型電子顕微鏡(日本電子社製、型式JSM6610LV)で観察することによって、第1乃至第3接触長さC1〜C3を算出した。第1乃至第3接触長さC1〜C3は、4つの断面それぞれにおける測定値の算術平均値である。算出結果を表1及び表2にまとめて示す。
【0083】
(接合材形成後のガスリーク試験)
各サンプルの燃料流路の出口をゴムキャップで封止した後、加圧した燃料ガスをマニホールドに導入した。
【0084】
次に、各サンプルを液体中に浸漬させて、接合材から気泡が発生するか否かを目視で観察した。表1及び表2では、気泡が発生したサンプルが「リークあり」と評価され、気泡が発生しなかったサンプルが「リークなし」と評価されている。
【0085】
(熱サイクル試験後のガスリーク試験)
各サンプルの燃料流路に還元性の燃料ガスを流通させながら、雰囲気温度を2時間で常温から750度まで上昇させた後、4時間で常温まで低下させる工程を10サイクル繰り返した。
【0086】
次に、各サンプルの燃料流路の出口をゴムキャップで封止した後、加圧した燃料ガスをマニホールドに導入した。
【0087】
次に、各サンプルを液体中に浸漬させて、接合材から気泡が発生するか否かを目視で観察した。表1及び表2では、気泡が発生したサンプルが「リークあり」と評価され、気泡が発生しなかったサンプルが「リークなし」と評価されている。
【0088】
【表1】
【表2】
【0089】
表1および表2に示すように、第1接触長さC1に対する第2接触長さC2の比(C2/C1)を0.25以上29.80以下としたサンプルNo.3〜12,17〜26では、接合材形成後における接合材からのガスリークを抑制できた。これは、第1接触長さC1に対する第2接触長さC2の比を適正値に制御することによって、セルとマニホールドを接合材で強固に接合でき、かつ、接合材におけるクラックを抑えることができたためである。
【0090】
また、表1および表2に示すように、サンプルNo.3〜12,17〜26のうち、第1接触長さC1に対する第3接触長さC3の比(C3/C1)を0.05以上29.60以下としたサンプルNo.4〜11,18〜25では、熱サイクル試験後においても、接合材からのガスリークを抑制できた。これは、第1接触長さC1に対する第3接触長さC3の比を適正値に制御することによって、接合材の強度をより向上させることができたためである。
【産業上の利用可能性】
【0091】
燃料電池のスタック構造体に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 スタック構造体
100 セル
200 マニホールド
221 セル支持孔
300,300a 接合材
10 支持基板
11 燃料ガス流路
A 発電素子部
C1 第1接触長さ
C2 第2接触長さ
C3 第3接触長さ
C4 第4接触長さ
G 隙間
K 隙間の間隔
S1 内部空間
S2 未充填空間
【要約】
【課題】ガスリークが発生しにくいスタック構造体1を、提供する。
【解決手段】スタック構造体1は、セル100と、マニホールド200と、接合材300とを備える。マニホールド200は、セル100が挿入されるセル支持孔221を有する。接合材300は、セル100とマニホールド200とを接合する。接合材300は、セル100とセル支持孔221との隙間に配置される充填部301と、充填部301の外側に配置される溜まり部302とを有する。セル100の外面に垂直な断面において、充填部301とセル100との第1接触長さC1に対する、溜まり部302とセル100との第2接触長さC2の比は、0.25以上29.80以下である。
【選択図】図6
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図1