(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043492
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】変速機のシャフトダンパ
(51)【国際特許分類】
F16F 15/30 20060101AFI20161206BHJP
F16F 15/133 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
F16F15/30 U
F16F15/133 Z
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-66229(P2012-66229)
(22)【出願日】2012年3月22日
(65)【公開番号】特開2013-104557(P2013-104557A)
(43)【公開日】2013年5月30日
【審査請求日】2015年3月13日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0117520
(32)【優先日】2011年11月11日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黄 載 雄
(72)【発明者】
【氏名】陳 用 郁
(72)【発明者】
【氏名】呉 浣 守
【審査官】
鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第03670593(US,A)
【文献】
実開昭56−070225(JP,U)
【文献】
特開2004−068951(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第10150031(DE,A1)
【文献】
特開昭62−194050(JP,A)
【文献】
実開昭61−103646(JP,U)
【文献】
特開2009−115184(JP,A)
【文献】
特開2002−101634(JP,A)
【文献】
特開2003−035338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/10−15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機に回転可能に設置されたシャフトと、
前記シャフトに回転が拘束された状態に設置されたドライブプレートと、
前記シャフトと相対回転可能な状態に設置された第1慣性プレートと、
前記ドライブプレートと前記第1慣性プレート間の相対回動によって弾性変形しながら弾性力を提供することができるように設置された第1弾性部材と、
前記シャフトを回転軸として前記第1慣性プレートに対して相対回転可能な状態に設置された第2慣性プレートと、
前記第1慣性プレートと前記第2慣性プレート間の相対回動によって弾性変形しながら弾性力を提供することができるように設置された第2弾性部材と、
を有して構成され、
前記第1慣性プレートは前記ドライブプレートを囲んで設置され、
前記第1慣性プレートには前記第2慣性プレートとの間に回転力を伝達するための駆動部が一体で形成されており、
前記駆動部は前記第1慣性プレートから延長された後、前記第2慣性プレートの半径方向外側から内側に延長されて形成され、
前記第2慣性プレートは、前記駆動部の半径方向内側に延長された部分の内側を囲む形態で設置されていることを特徴とする変速機のシャフトダンパ。
【請求項2】
前記ドライブプレートと前記第1慣性プレートの間には相互間の相対回動量を制限することができるようにストッパーピンが設置され、
前記第1慣性プレートと前記第2慣性プレートの間にも相互間の相対回動量を制限することができるようにストッパーピンが設置されていることを特徴とする請求項1に記載の変速機のシャフトダンパ。
【請求項3】
前記第1慣性プレートは、前記シャフトとの間に第1ベアリングを介して相対回転可能に設置され、
前記第2慣性プレートは、前記駆動部との間に第2ベアリングを介して相対回転可能に設置され、前記シャフトとは前記第1ベアリングを介して相対回転可能に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の変速機のシャフトダンパ。
【請求項4】
前記第2慣性プレートは、前記第1慣性プレートより慣性が小さく設定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の変速機のシャフトダンパ。
【請求項5】
変速機に回転可能に設置されたシャフトと、
前記シャフトに回転が拘束された状態に設置されたドライブプレートと、
前記シャフトと相対回転可能な状態で設置された第1慣性プレートと、
前記ドライブプレートと前記第1慣性プレートの間の相対回動によって弾性変形しながら弾性力を提供することができるように設置された第1弾性部材と、
前記シャフトを回転軸として前記第1慣性プレートに対し相対回転可能な状態に設置された第2慣性プレートと、
前記第1慣性プレートと前記第2慣性プレートの間の相対回動によって弾性変形しながら弾性力を提供することができるように設置された第2弾性部材と、を有して構成され、
前記第1慣性プレートは前記ドライブプレートを囲んで設置され、
前記第1慣性プレートには前記第2慣性プレートとの間に回転力を伝達するための駆動部が一体で形成されており、
前記駆動部は、前記第1慣性プレートが前記シャフトの軸方向に延長された後、前記第2慣性プレートの半径方向内側から外側に延長されて形成され、
前記第2慣性プレートは前記駆動部の半径方向内側から外側に延長された部分のうちの外側を囲む形態で設置されていることを特徴とする変速機のシャフトダンパ。
【請求項6】
前記第1慣性プレートと前記駆動部は、前記シャフトとの間に第1ベアリングを介して相対回転可能に設置され、
前記第2慣性プレートは、前記駆動部との間に第2ベアリングを介して相対回転可能に設置されていることを特徴とする請求項5に記載の変速機のシャフトダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機のシャフトダンパに関し、より詳しくは、変速機のシャフトに設置されて、ラトルノイズ(rattle noise)を低減させる変速機のシャフトダンパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
変速機の入力軸に、慣性プレートを含んで構成されるインプット・シャフト・ダンパ(ISD;Input Shaft Damper)を備えることにより、デュアル・マス・フライホイール(DMF;Dual Mass Flywheel)を使用せずとも、変速機のラトルノイズが問題となる特定回転数領域の共振を効果的に回避することができる(特許文献1,2)。
【0003】
しかし、上記のようなISDで特定回転数領域での共振を適切に減らすためには正確なチューニングが必要である。すなわち、
図1に例示したように、約1600RPM付近での共振を減少させるために変速機の入力軸に正確なチューニングがなされていないISDを付加した場合には、本来の最初の共振点aが2つに分割されて第1共振点a−1と第2共振点a−2を形成するようになり、分割された一方の第2共振点a−2は、その振幅が減ってISDを装着した効果がでているが、他方の第1共振点a−1は、図示したように最初の共振点aよりさらに高い振幅に増幅されることがあり得るのである。
【0004】
従って、変速機の入力軸や出力軸、カウンターシャフト又はPTO(POWER TAKE OFF SHAFT)シャフトにISDのような構造物(以下、この構造物を「シャフトダンパ」とする。)を装着して慣性を増大させるにおいては、適切にチューニングする対策が講じられなくてはならない。
【0005】
変速機のラトルノイズや共振の軽減に関しては、例えば、動力源と歯車機構との間の動力伝達経路上に、弾性力によって動力源と歯車機構との間に生じる変動トルクを吸収するダンパ部と、変動トルクが所定値を超えたときにすべりを生ずるリミッタ部とでなり、変速機におけるラトルノイズを解消するダンパ装置(特許文献3)、クランクシャフトに連結する第1ホイールと、クラッチ板を介して変速機入力軸に連結する第2ホイールと、それらを互いに連結する第1トーションスプリングとを備え、さらに、第1ホイールの両端面のうち第2ホイールが配設される反対側側面に第2トーションスプリングを介して第3ホイールが配設されて構成され、共振による影響の低減を図るフライホイールダンパ(特許文献4)などの提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許10−2007−0039819号明細書
【特許文献2】韓国公開特許10−2009−0049295号明細書
【特許文献3】特開2010−216523号公報
【特許文献4】特開2004−068951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような問題点を解決するためになされた本発明の目的は、変速機のラトルノイズ等NVH特性(自動車の騒音・振動・乗り心地特性)を向上させることができる変速機のシャフトダンパを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく本発明の変速機のシャフトダンパは、変速機に回転可能に設置されたシャフトと、シャフトに回転が拘束された状態に設置されたドライブプレートと、
シャフトと相対回転可能な状態に設置された第1慣性プレートと、ドライブプレートと第1慣性プレート間の相対回動によって弾性変形しながら弾性力を提供することができるように設置された第1弾性部材と、シャフトを回転軸として第1慣性プレートに対して相対回転可能に設置された第2慣性プレートと、第1慣性プレートと第2慣性プレート間の相対回動によって弾性変形しながら弾性力を提供することができるように設置された第2弾性部材と、を有して構成されている。
【0009】
また、別の形態として本発明による変速機のシャフトダンパは、変速機に回転可能に設置されたシャフトと、シャフトに対して所定範囲内で弾性的な相対回転が可能な状態にシャフトに装着された第1慣性体と、シャフトを回転軸として、第1慣性体に対して所定範囲内で弾性的な相対回転が可能に設置された第2慣性体と、を有して構成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、変速機の入力軸や出力軸、カウンターシャフト又はPTOシャフト等に慣性を付加するシャフトダンパを装着して、問題の対象共振を二つの共振に転換し、その一つの共振を最小化し、残りの一つの共振に対しては追加で共振を減らすことができるようにして、結果として問題の対象共振を全ての回転数領域で効果的に低減させて、変速機のラトルノイズ等NVH特性を向上させることができるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】従来技術の問題点を説明した変速機の入力軸の回転数に伴う角加速度グラフである。
【
図2】本発明による変速機のシャフトダンパの実施形態を図示した図面である。
【
図3】本発明による変速機シャフトダンパの別の実施形態を図示した図面である。
【
図4】本発明の作用を説明した変速機の入力軸の回転数に伴う角加速度グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図2と
図3を参照すると、本発明の変速機のシャフトダンパは、変速機(図示していない)に回転可能に設置されたシャフト1と、シャフト1に回転が拘束された状態に設置されるドライブプレート3と、シャフト1と相対回転可能な状態に設置された第1慣性プレート5と、ドライブプレート3と第1慣性プレート5間の相対回動によって弾性変形しながら弾性力を提供することができるように設置された第1弾性部材7と、シャフト1を回転軸として第1慣性プレート5に対して相対回転可能な状態に設置された第2慣性プレート9と、第1慣性プレート5と第2慣性プレート9間の相対回動によって弾性変形しながら弾性力を提供することができるように設置された第2弾性部材11、を有して構成される。
【0013】
すなわち、本発明は、変速機に回転可能に設置されたシャフト1に対して、所定範囲内で弾性的な相対回転が可能な状態でシャフト1に装着された第1慣性体である第1慣性プレート5を備え、シャフト1を回転軸として第1慣性体に対して所定範囲内で弾性的な相対回転が可能に設置された第2慣性体である第2慣性プレート9を備えて、シャフト1に対して第1慣性プレート5と第2慣性プレート9が順に弾性的に直列連結された構造となっている。
【0014】
第2慣性プレート9は、第1慣性プレート5に比べて相対的に小さな回転慣性を有し、第2慣性プレート9は、第1慣性プレート5に対してはもちろんシャフト1に対しても相対回転が可能な状態に設置されるのである。
【0015】
ドライブプレート3と第1慣性プレート5の間には、相互間の相対回動量を制限することができるようにストッパーピン13が設置され、第1慣性プレート5と第2慣性プレート9の間にも相互間の相対回動量を制限することができるようにストッパーピン13が設置される。
【0016】
ストッパーピン13の設置によって、ドライブプレート3と第1慣性プレート5の間、および第1慣性プレート5と第2慣性プレート9の間の相対回動量が制限されるようにするメカニズムは、従来のISD装置と同じ、あるいは類似のメカニズムで実現することができ、ここでは詳しい説明を省略する。
【0017】
図2と
図3の二つの実施形態は、第1慣性プレート5がドライブプレート3を囲んで設置され、第1慣性プレート5には第2慣性プレート9との間に回転力を伝達するための駆動部5−1が一体に形成されている点で同じである。
【0018】
しかし、
図2の実施形態では、駆動部5−1が第1慣性プレート5から延長された後、第2慣性プレート9の半径方向内側から外側に延長されて形成され、第2慣性プレート9が駆動部5−1の半径方向外側を囲む形態で設置される構造である。
【0019】
ここで、第1慣性プレート5と駆動部5−1は、シャフト1との間に第1ベアリング15を介して相対回転可能に設置され、第2慣性プレート9は、駆動部5−1との間に第2ベアリング17を介して相対回転可能に設置される。
この構造では、第2慣性プレート9の慣性を利用できる点で
図3の実施形態より有利であり、ドライブプレート3の外側に位置した第2慣性プレート9の直径を大きくさせる等の方法により慣性を大きくすることができる。
【0020】
図3の実施形態では、駆動部5−1は第1慣性プレート5から延長された後、第2慣性プレート9の半径方向外側から内側に延長されて形成され、第2慣性プレート9は駆動部5−1の半径方向内側に延長された部分の内側を囲む形態で設置される構造である。
【0021】
ここで、第1慣性プレート5は、シャフト1との間に第1ベアリング15を介して相対回転可能に設置され、第2慣性プレート9は駆動部5−1との間には第2ベアリング17を介して相対回転可能に設置され、シャフト1とは第1ベアリング15を介して相対回転可能に設置される。
この構造では、駆動部5−1によって第2慣性プレート9を大きくして慣性を利用するのが、
図2の実施形態に比べて相対的に難しいが、軸方向の幅が相対的に小さくすることができるので搭載する上で有利である。
【0022】
上記のように構成された本発明の変速機のシャフトダンパは、変速機の入力軸に適用できるのはもちろん、これ以外に、変速機に設置された他の多様なシャフトに設置されることができ、例えば、出力軸、カウンターシャフト又はPTOシャフト等にも設置してその効果を発揮することができる。
【0023】
図4は、本発明による変速機のシャフトダンパが発揮する効果を図示したグラフである。シャフトダンパが装着されない状態での初期共振点Aが、シャフトダンパを装着することによって振幅が小さくなった二つの共振点である第1共振点A−1と第2共振点A−2に分割されることを示している。
【0024】
これは第1慣性プレート5が従来と同じ作用で二つの共振点に分割され、そのうちの一方の共振点A−2を初期共振点Aより小さな振幅に緩和させ、他方の共振点A−1では初期共振点Aに比べその緩和が微弱であるか、同等水準か、又はそれ以上の振幅を有する状態に変形されるような場合に、第2慣性プレート9を追加で装着していることで共振点A−1に対してその振幅を低くするように機能している。
【0025】
従って、本発明による変速機のシャフトダンパは、変速機で発生し得る共振現象を積極的に低減ないしは緩和させ、変速機は勿論、変速機を持つパワートレーンのNVH特性を大きく向上させることができるようになる。
【0026】
本発明は、特定の実施形態に関して図示して説明したが、以下の特許請求の範囲によって提供される本発明の技術的思想を外れない限度内で、本発明が多様に改良及び変化することができるということは、当業界で通常の知識を有する者において自明である。
【符号の説明】
【0027】
1;シャフト
3;ドライブプレート
5;第1慣性プレート
7;第1弾性部材
9;第2慣性プレート
11;第2弾性部材
13;ストッパーピン
15;第1ベアリング
17;第2ベアリング
5−1;駆動部
a、A;初期共振点
a−1、A−1;第1共振点
a−2、A−2;第2共振点