(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043498
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】電動式操向装置
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20161206BHJP
B62D 101/00 20060101ALN20161206BHJP
B62D 119/00 20060101ALN20161206BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D101:00
B62D119:00
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-88723(P2012-88723)
(22)【出願日】2012年4月9日
(65)【公開番号】特開2013-124089(P2013-124089A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2015年3月25日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0133542
(32)【優先日】2011年12月13日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 キョン 馥
(72)【発明者】
【氏名】金 南 榮
【審査官】
谷治 和文
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−56402(JP,A)
【文献】
特開2012−46049(JP,A)
【文献】
特開2012−66728(JP,A)
【文献】
特開2012−40948(JP,A)
【文献】
特開2011−183883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
B62D 101/00
B62D 119/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操向ホイールの操舵力を調節するユーザ選択部と、
前記操向ホイールの操向に対応してラックを駆動する駆動モータ部と、
車両のCAN通信を通じて入力された操向トルクおよび車速を利用して、前記駆動モータ部を制御する車速別駆動トルクを生成する基本電流マップによって生成された車速別駆動トルクに比べて所定の縮小比率で縮小された駆動トルクを生成する付加電流マップを備え、前記付加電流マップを利用して前記ユーザ選択部によって調節された調節信号に対応する調節トルクを生成し、生成された前記調節トルクによって前記基本電流マップによって生成された車速別駆動トルクを調節する付加機能論理回路と、車両の走行状態に対応し、前記付加機能論理回路によって調節された調節駆動トルクのトルク量を増減することによって調節駆動トルクを補償する駆動トルク補償マップと、前記駆動トルク補償マップによって補償された補償駆動トルクによって前記駆動モータ部を制御する駆動論理回路と、を備えた制御部と、
を含むことを特徴とする電動式操向装置。
【請求項2】
操向ホイールの操舵力を調節するユーザ選択部と、
前記操向ホイールの操向に対応してラックを駆動する駆動モータ部と、
車両のCAN通信を通じて入力された操向トルクおよび車速を利用して、前記駆動モータ部を制御する車速別駆動トルクを生成する基本電流マップと、車両の走行状態に対応して、前記基本電流マップによって生成された車速別駆動トルクのトルク量を増減することによって駆動トルクを補償する駆動トルク補償マップと、前記基本電流マップによって生成された車速別駆動トルクに比べて所定の縮小比率で縮小された駆動トルクを生成する付加電流マップと、を備え、前記付加電流マップを利用して前記ユーザ選択部によって調節された調節信号に対応する調節トルクを生成し、生成された前記調節トルクによって前記駆動トルク補償マップによって補償された補償駆動トルクを調節する付加機能論理回路と、前記付加機能論理回路によって調節された調節駆動トルクを利用して前記駆動モータ部を制御する駆動論理回路と、を備えた制御部と、
を含むことを特徴とする電動式操向装置。
【請求項3】
前記付加機能論理回路において、前記付加電流マップは、前記CAN通信を通じて入力された操向トルクおよび車速に対応して前記基本電流マップによって生成された車速別駆動トルクに比べて所定の縮小比率で縮小された縮小駆動トルクを生成し、前記調節トルクは、前記縮小駆動トルクを前記調節信号によって調節する調節段によって生成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動式操向装置。
【請求項4】
前記調節段は、前記調節信号に対応して前記縮小駆動トルクを所定の比率で増幅することを特徴とする請求項3に記載の電動式操向装置。
【請求項5】
前記ユーザ選択部は、前記制御部による駆動トルクの調節のために電流の大きさを段階的に変化させる多段スイッチの形態で設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動式操向装置。
【請求項6】
前記ユーザ選択部の調節に対応する前記操向ホイールの操舵力の変更状態を表示する表示部を更に含み、
前記制御部は、前記ユーザ選択部によって調節された調節信号によって変更される操向ホイールの操舵力を算出し、この算出された操向ホイールの操舵力に対応する画像が表示されるように表示部を制御する表示論理回路を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動式操向装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動式操向装置に係り、より詳しくは、ユーザインターフェースを備え、使用者による操向ホイールの操舵力の調節が可能な電動式操向装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動式操向装置(Motor Driven Power Steering:MDPS)は、電動式モータによって操向ホイールの操舵力を補助する装置である。最近の電動式操向装置は、速度に応じて操舵力を変更する基本ロジックの他にも、走行状況に応じて運転者の利便性を向上させるために、運転者による調節が可能な付加機能ロジックを備えている。
【0003】
このような従来の付加機能ロジックは、基本ロジックから算出されたモータ電流量を運転者の調節に対応して増減することを基本原理としている。
【0004】
しかし、従来の付加機能ロジックは、基本ロジックによって導き出されたモータ電流量に、単純に運転者の調節によって決定された一定の大きさの電流値を加えたり引いたりする画一的な方式を用いている。このために、従来の付加機能ロジックは、基本ロジックの算出根拠を適切に反映することができなくなり、かえって運転者の操舵力が悪くなるという結果を招くことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国公開特許第10−2009−0027012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、基本ロジックによって生成された補助トルク量の算出根拠を反映しながら、運転者の選択による操舵力の調節が可能なユーザインターフェースを備えた、運転者による調節が可能な電動式操向装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述したような目的を達成するための本発明の電動式操向装置は、
(1)操向ホイールの操舵力を調節するユーザ選択部と、(2)操向ホイールの操向に対応してラックを駆動する駆動モータ部と、(3)車両のCAN通信を通じて入力された操向トルクおよび車速を利用して駆動モータ部を制御する車速別駆動トルクを生成する基本電流マップと、基本電流マップを所定の縮小比率で縮小した付加電流マップを備え、付加電流マップを利用してユーザ選択部によって調節された調節信号に対応する調節トルクを生成し、生成された調節トルクによって基本電流マップによって生成された駆動トルクを調節する付加機能ロジックと、車両の走行状態に対応して付加機能ロジックによって調節された調節駆動トルクを補償する駆動トルク補償マップと、駆動トルク補償マップによって補償された補償駆動トルクによって駆動モータ部を制御する駆動ロジックと、を備えた制御部と、
を含むことを特徴とする。
【0008】
また本発明の電動式操向装置は、
(1)操向ホイールの操舵力を調節するユーザ選択部と、(2)操向ホイールの操向に対応してラックを駆動する駆動モータ部と、(3)車両のCAN通信を通じて入力された操向トルクおよび車速を利用して駆動モータ部を制御する車速別駆動トルクを生成する基本電流マップと、車両の走行状態に対応して基本電流マップによって生成された駆動トルクを補償する駆動トルク補償マップと、基本電流マップを所定の縮小比率で縮小した付加電流マップを備え、付加電流マップを利用してユーザ選択部によって調節された調節信号に対応する調節トルクを生成し、生成された調節トルクによって駆動トルク補償マップによって補償された補償駆動トルクを調節する付加機能ロジックと、付加機能ロジックによって調節された調節駆動トルクを利用して駆動モータ部を制御する駆動ロジックと、を備えた制御部と、
を含むことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、付加機能ロジックにおいて、付加電流マップは、CAN通信を通じて入力された操向トルクおよび車速に対応して基本電流マップによって生成される駆動トルクに比べて縮小比率だけ縮小された縮小駆動トルクを生成し、調節トルクは、縮小駆動トルクを調節信号によって調節する調節段によって生成される。ここで、調節段は、調節信号に対応して縮小駆動トルクを所定の比率で増幅する。
【0010】
また本発明は、ユーザ選択部が、制御部による駆動トルクの調節のために電流の大きさを段階的に変化させる多段スイッチの形態で設けられ、
制御部が、ユーザ選択部によって調節された調節信号によって変更される操向ホイールの操舵力を算出し、この算出された操向ホイールの操舵力に対応する画像が表示されるように表示部を制御する表示ロジックを更に備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明は、付加電流マップを備えた付加機能ロジックにより、駆動モータ部の駆動のための基本ロジックによって生成された補助トルク量の算出根拠を反映して運転者の選択による操舵力の調節を実行することにより、運転者の運転の利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電動式操向装置に対するブロック図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る付加機能ロジックによる調節トルクの生成過程を説明するためのブロック図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る電動式操向装置に対するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る電動式操向装置について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る電動式操向装置に対するブロック図である。
図1に示すように、本実施形態に係る電動式操向装置100は、ユーザ選択部110、駆動モータ部120、および制御部130で構成される操向ホイールの操舵力を補助する操向装置であって、トルク補償によって運転者の操向力を最適化する。
【0014】
ユーザ選択部110は、運転者が操向ホイールの操舵力を調節するユーザインターフェースであって、駆動トルクの調節のために電流の大きさを段階的に変化させる多段スイッチの形態で設けられ、運転者の入力に対応する調節信号を生成して制御部130に伝達する。
【0015】
駆動モータ部120は、制御部130に制御されて駆動され、操向ホイールの操向に対応してラックを駆動することによって車両を駆動する。
制御部130は、
図1に示すように、基本電流マップ132、付加機能ロジック134、及び駆動トルク補償マップ136に分けられ、電動式操向装置100の全般的な動作を制御する。なお、このような機能上の区分は説明の便宜のためのものであり、制御部130は、このようなモジュールのみに区分されて限定されることはない。
【0016】
基本電流マップ132は、車両のCAN通信を通じて入力された操向トルクおよび車速を利用して、ラックと連動した駆動モータ部120を制御する車速別駆動トルクを生成するように事前に設定される。
【0017】
付加機能ロジック134は、基本電流マップ132を所定の縮小比率で縮小した付加電流マップ1342を備え、この付加電流マップ1342を利用してユーザ選択部110によって調節された調節信号に対応する調節トルクを生成する。付加機能ロジック134は、生成された調節トルクにより、基本電流マップによって生成された駆動トルクを調節する。付加機能ロジックによって調節された調節駆動トルクは、駆動トルク補償マップ136によって処理される。
【0018】
図2は、本発明の第1実施形態に係る付加機能ロジックによる調節トルクの生成過程を説明するためのブロック図である。
図2を参照しながら、付加機能ロジック134による調節(駆動)トルクの生成について具体的に説明する。
ユーザ選択部によって調節された調節信号に対応する調節トルクは、基本電流マップ132によって生成された駆動トルクを調節するために用いられる。
【0019】
図2に示すように、付加電流マップ1342は、基本電流マップ132を所定の縮小比率で縮小したマップであって、基本電流マップ132によって生成された駆動トルクに比べて所定の縮小比率だけ縮小された縮小駆動トルクを生成する。
【0020】
ここで、基本電流マップによって生成された駆動トルクを調節するために用いられる調節トルクは、付加電流マップ1342によって縮小された縮小駆動トルクを、ユーザ選択部110から伝達された調節信号によって調節する調節段1344によって生成される。一般的に、調節段1344は、調節信号に対応して縮小駆動トルクを所定の比率で増幅する形態で調節する。
【0021】
駆動トルク補償マップ136は、車両の走行状態に対応して付加機能ロジック134によって調節された調節駆動トルクを補償する。駆動トルク補償マップ136は、一般的にダンピング補償、復元制御、慣性補償、フリクション補償などの多様な補償ロジックを含む。
駆動ロジック138は、駆動トルク補償マップ136によって補償された補償駆動トルクによって駆動モータ部120を制御する。
【0022】
表示ロジック139は、ユーザ選択部110の調節信号によって変更する補償駆動トルクに対応する操向ホイールの操舵力を算出し、算出された操向ホイールの操舵力に対応する画像が表示されるように表示部140を制御する。このような画像は、操向ホイールの操舵力の変更状態を表示するグラフであることができる。
【0023】
以下、
図3を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る電動式操向装置200について説明する。本実施形態に係る電動式操向装置200は、第1実施形態と類似して、ユーザ選択部210、駆動モータ部220、および制御部230で構成され、第1実施形態とは制御部230で実行される動作のみが異なる。
したがって、以下では制御部230の動作を中心に説明し、他の構成についての説明は省略する。
【0024】
第2実施形態に係る制御部230は、基本電流マップ232、駆動トルク補償マップ236、付加機能ロジック234、及び駆動ロジック238に分けることができる。
基本電流マップ232は、第1実施形態と同様に、車両のCAN通信を通じて入力された操向トルクおよび車速を利用して、ラックと連動した駆動モータ部220を制御する車速別駆動トルクを生成する。
【0025】
駆動トルク補償マップ236は、第1実施形態とは異なり、まず、基本電流マップ232によって生成された駆動トルクを補償する。
そして、付加機能ロジック234は、付加電流マップ2342を備えることと調節駆動トルクを生成する過程とが
図2に示す第1実施形態と同じであるが、第1実施形態とは異なり、第2実施形態に係る付加機能ロジック234は、駆動トルク補償マップ236によって補償された補償駆動トルクを調節する。駆動ロジック238は、このように調節された調節駆動トルクを利用して駆動モータ部220を制御する。
【0026】
表示ロジック239は、ユーザ選択部110の調節信号によって変更する調節駆動トルクに対応する操向ホイールの操舵力を算出し、算出された操向ホイールの操舵力に対応する画像が表示されるように表示部240を制御する。このような画像は、操向ホイールの操舵力の変更状態を表示するグラフであることができる。
【0027】
このように、本実施形態に係る電動式操向装置100、200は、付加電流マップ1342、2342を備えた付加機能ロジック134、234により、駆動モータ部120、220の駆動のための基本ロジックによって生成された補助トルク量の算出根拠を反映して運転者の選択による操舵力の調節を実行することができ、運転者の運転の利便性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0028】
100、200 電動式操向装置
110、210 ユーザ選択部
120、220 駆動モータ部
130、230 制御部
132、232 基本電流マップ
134、234 付加機能ロジック
136、236 駆動トルク補償マップ
138、238 駆動ロジック
139、239 表示ロジック
140、240 表示部
1342、2342 付加電流マップ
1344 調節段