(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043535
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】太陽熱集熱管
(51)【国際特許分類】
F24J 2/24 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
F24J2/24 D
F24J2/24 C
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-171290(P2012-171290)
(22)【出願日】2012年8月1日
(65)【公開番号】特開2014-31909(P2014-31909A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】竹内 範仁
(72)【発明者】
【氏名】岩 俊昭
(72)【発明者】
【氏名】小川 義博
【審査官】
仲村 靖
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−122693(JP,A)
【文献】
特開2011−080719(JP,A)
【文献】
特公昭60−051017(JP,B1)
【文献】
実開昭60−137248(JP,U)
【文献】
実開昭62−100389(JP,U)
【文献】
特開2009−174604(JP,A)
【文献】
特開昭63−312502(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/098622(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/098623(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/042578(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/042580(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0034204(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第101307957(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24J 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒が流通可能な中心金属管と、前記中心金属管の外周を覆い、前記中心金属管との間に環状空間を形成するガラス管と、一端側が前記中心金属管に接続されているとともに他端側が前記ガラス管に接続されていて前記中心金属管と前記ガラス管との熱膨張差を吸収する熱膨張差吸収手段とを備え、
前記熱膨張差吸収手段は、複数の金属製のベローズが接続筒を介して直列に配置され、かつ前記ベローズが前記接続筒を挟んで径方向に重なって配置されていることを特徴とする太陽熱集熱管。
【請求項2】
前記ベローズは2つである請求項1に記載の太陽熱集熱管。
【請求項3】
前記ガラス管より内径側に前記ベローズが配置されている請求項1又は請求項2に記載の太陽熱集熱管。
【請求項4】
前記ガラス管より外径側に前記ベローズが配置されている請求項1又は請求項2に記載の太陽熱集熱管。
【請求項5】
前記ベローズは、外側に配置されたベローズの方が内側に配置されたベローズより長さが長い請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の太陽熱集熱管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽熱集熱管に係り、詳しくは熱媒が流通する中心金属管と、その中心金属管を取り囲んで中心金属管との間に環状空間を形成するガラス管とが、中心金属管とガラス管との熱膨張差を吸収する熱膨張差吸収手段を介して接続されている太陽熱集熱管に関する。
【背景技術】
【0002】
熱媒が流通する金属管を太陽熱で加熱することにより熱媒を加熱してその熱を利用する場合、金属管が大気に接触した状態では、加熱された金属管の熱が大気に熱伝達されるため熱媒が効率良く加熱されない。そのため、金属管をガラス管で囲んで金属管との間に環状空間を形成して、太陽熱で加熱された金属管の熱が大気に熱伝達されることを防止している。しかし、金属管とガラス管とは熱膨張率の差が大きいため、金属管とガラス管との熱膨張差を吸収する熱膨張差吸収手段を設ける必要がある。金属管の温度は数100度に達するため、熱膨張差吸収手段は金属で形成される。熱膨張差吸収手段としてベローズが一般的であるが、金属製のベローズとガラス管とを直接接続すると、ベローズが伸縮する際に、ガラス管のベローズとの接続部が損傷し易い。
【0003】
従来、
図6に示すように、中心金属管31とガラス管32とをベローズ33及びガラス金属転移素子34を使用して接続する構成が提案されている(特許文献1参照)。ベローズ33は、その内側端部33aが連結素子35を用いて中心金属管31と連結され、外側端部33bがガラス金属転移素子34によってガラス管32に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−251612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
太陽熱集熱管の全長のうち、太陽光が中心金属管31に入射できる範囲は、ベローズ33及びガラス金属転移素子34で覆われた範囲を除いた範囲になる。特許文献1では、ガラス金属転移素子34はベローズ33の外側に設けられているため、太陽光が中心金属管31に入射できる範囲は、ベローズ33で覆われた範囲を除いた範囲になる。ベローズ33は、中心金属管31及びガラス管32の熱膨張差の最大量を吸収可能な長さに形成されている。
【0006】
ところが、ベローズは伸縮前の長さがLの場合、ストロークに使用できる長さは0.3L程度であり、それ以上伸縮させると塑性域に入ってしまい、元の状態に戻らなくなる。従来技術では、ベローズは1つ設けられているため、例えば、中心金属管31及びガラス管32の熱膨張差の最大量が0.6Lであると、ベローズ33の長さは2L必要になり、アクティブエリアが小さくなる。ここで、アクティブエリアは、太陽光入射可能長/太陽熱集熱管全長で定義される。
【0007】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、熱膨張差吸収手段のベローズによって遮断される太陽熱の入射領域を従来に比べて小さくすることにより、アクティブエリアを大きくすることができる太陽熱集熱管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、熱媒が流通可能な中心金属管と、
前記中心金属管の外周を覆い、前記中心金属管との間に環状空間を形成す
るガラス管と、一端側が前記中心金属管に接続されているとともに他端側が前記ガラス管に接続されていて前記中心金属管と前記ガラス管との熱膨張差を吸収する熱膨張差吸収手段とを備え、前記熱膨張差吸収手段は、複数の金属製のベローズが接続筒を介して直列に
配置され、かつ
前記ベローズが前記接続筒を挟んで径方向に重な
って配置されている。ここで、「ベローズが直列に接続されている」とは、複数のベローズが同時に伸長したり収縮したりするとともに、その伸長量あるいは収縮量が加算されて全体の伸長量あるいは収縮量になるように接続されていることを意味する。
【0009】
この発明では、熱膨張差吸収手段は、ガラス管及び中心金属管の熱膨張の差の分、伸長あるいは収縮する。一端が接続筒に連結されたベローズは、接続筒を基準にして伸長あるいは収縮する。例えば、太陽熱の照射によりガラス管及び中心金属管が膨張し、ガラス管と中心金属管との熱膨張率の差により、熱膨張差吸収手段に引っ張り力が作用する状態では、各ベローズがそれぞれ同じ方向に伸長する。熱膨張後の状態において、熱膨張差吸収手段の伸長量は、各ベローズの伸長量の和になる。例えば、ベローズが2つの場合、ガラス管を基準にして考えると、ベローズを介してガラス管に接続されている接続筒は、ガラス管に接続されているベローズの伸長量の分、伸長前の状態に比べてガラス管の端部から距離が大きくなるように移動する。また、一端が接続筒に連結され、他端が金属中心管に接続されたベローズは、接続筒を基準にして伸長し、ベローズの他端のガラス管の端部までの距離は、伸長前の状態に比べて、接続管の移動量と、ベローズ自身の伸長量との和になる。したがって、2つのベローズとして同じベローズが使用されていれば、熱膨張差吸収手段の伸長量は、2つのベローズの伸長量の2倍になる。2つのベローズは径方向に重なった状態に配置されているため、熱膨張差吸収手段におけるベローズ部分の長さは、ベローズ1つ分の長さになる。3つ以上のベローズが直列に接続され、かつ径方向に重なって配置されていれば、熱膨張差吸収手段の伸長量は、3倍以上になる。したがって、熱膨張差吸収手段のベローズによって遮断される太陽熱の入射領域を従来に比べて小さくすることにより、アクティブエリアを大きくすることができる太陽熱集熱管を提供することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ベローズは2つである。この発明では、ベローズの数が3つ以上の場合に比べて製造が容易になる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記ガラス管より内径側に前記ベローズが配置されている。ここで、「ガラス管より内径側にベローズが配置されている」とは、最も外側に配置されるベローズにガラス管が(径方向に重なる部材を介することなく)接続されていることを意味する。例えば最も外側に配置されるベローズの蛇腹部から延びる円筒部の径が、ガラス管の径と同等であることを意味する。この発明では、最も内側に配置されたベローズが中心金属管に対して接続されるため、ベローズが伸長する際、ベローズの伸長に伴う接続筒の移動が、最も内側に配置されたベローズを中心金属管と接続する部分、例えば、フランジ部と干渉せずに移動し易い。また、ガラス管の径が同じ太陽熱集熱管で比較した場合、ガラス管より外径側にベローズが配置される構成に比べて配置スペースを小さくすることができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記ガラス管より外径側に前記ベローズが配置されている。ここで、「ガラス管より外径側にベローズが配置されている」とは、最も内側に配置されるベローズにガラス管が(径方向に重なる部材を介することなく)接続されていることを意味する。例えば最も内側に配置されるベローズの蛇腹部から延びる円筒部の径が、ガラス管の径と同等であることを意味する。この発明では、ベローズの数が多い場合でも、ガラス管と中心金属管との径の差を大きくせずにベローズを所望の数、設けることが容易になる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記ベローズは、外側に配置されたベローズの方が内側に配置されたベローズより長さが長い。複数のベローズを径方向に重ねて配置する場合、外側に配置されるベローズ、即ち径の大きなベローズの方が強度を高くすることが可能なため、ストロークを大きくすることができる。したがって、外側に配置されたベローズの長さを内側に配置されたベローズの長さより長くすることにより、同じ長さの熱膨張差吸収手段において、熱膨張差吸収能力を高くすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、熱膨張差吸収手段のベローズによって遮断される太陽熱の入射領域を従来に比べて小さくすることにより、アクティブエリアを大きくすることができる太陽熱集熱管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】(a),(b)は熱膨張差吸収手段の作用を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した一実施形態を
図1及び
図2にしたがって説明する。
図1に示すように、太陽熱集熱管11は、熱媒が流通可能な中心金属管12と、中心金属管12との間に環状空間としての環状真空空間13を形成する状態で中心金属管12の外周を覆うガラス管14と、中心金属管12とガラス管14との熱膨張差を吸収する金属製の熱膨張差吸収手段15とを備えている。
図1は太陽熱集熱管11の一端側を示しており、太陽熱集熱管11は他端側も同様(対称)に構成されている。
【0016】
ガラス管14は中心金属管12より短く形成され、中心金属管12の端部とガラス管14の端部との間に熱膨張差吸収手段15が接続されている。中心金属管12及び熱膨張差吸収手段15は、ステンレス鋼(SUS)製である。熱膨張差吸収手段15は、複数(この実施形態では2つ)のベローズ16−1,16−2が接続筒17を介して直列に、かつ径方向に重なる状態で配置されている。接続筒17は、両ベローズ16−1,16−2とほぼ同じ長さに形成され、円筒部の一端に外側に突出する外側フランジ17aを有し、他端に内側に突出する内側フランジ17bを有する。
【0017】
両ベローズ16−1,16−2は、蛇腹部18が同じ長さに形成され、蛇腹部18の両端に円筒部19a,19bが形成されている。外側に配置されたベローズ16−1は円筒部19a,19bの径がガラス管14の径と同じに形成されている。ベローズ16−1は、一方の円筒部19aにおいて、コバール製リング20を介してガラス管14に接続され、他方の円筒部19bの端部が接続筒17の外側フランジ17aに溶接で接続されている。コバールは鉄にニッケル及びコバルトを配合した合金であり、熱膨張率が金属のなかで低く、硬質ガラスに近い。
【0018】
内側に配置されたベローズ16−2は、一方の円筒部19aにおいて、接続筒17の内側フランジ17bに溶接で接続され、他方の円筒部19bの端部が中心金属管12に形成されたフランジ部12aの外周部に溶接で接続されている。フランジ部12aは、中心金属管12の円筒面に、孔を有する円形状のSUS板が溶接で固着されて形成されている。即ち、この実施形態の熱膨張差吸収手段15は、ガラス管14より内径側にベローズ16−1,16−2が配置されている。「ガラス管14より内径側」とは、最も外側に配置されるベローズ16−1の蛇腹部18の径、即ち円筒部19a,19bの径が、ガラス管14の径と同等であることを意味する。
【0019】
次に前記のように構成された太陽熱集熱管11の作用を説明する。
太陽熱集熱管11は、中心金属管12に一端側から導入された熱媒が、中心金属管12の他端側から排出される間に中心金属管12からの熱伝導によって加熱され、加熱された熱媒が暖房装置、温水器、発電等に利用される。
【0020】
例えば、太陽熱集熱管11は、反射面が凹面の反射鏡の焦点に中心金属管12が位置する状態で配設される。反射鏡の性能、環境温度、熱媒の中心金属管12内の移動速度等によっても異なるが、中心金属管12の温度は400℃程度まで上昇し、ガラス管14の温度は100℃程度になる。中心金属管12が環状真空空間13を介してガラス管14に覆われているため、ガラス管14を通して入射した太陽光により加熱された中心金属管12の熱が、中心金属管12を流通する熱媒を効率良く加熱する。
【0021】
ステンレス鋼(SUS)製のベローズ16−1の熱膨張率と、ガラス管14の熱膨張率とは大きく異なるが、ベローズ16−1はコバール製リング20を介してガラス管14に接続されているため、ベローズ16−1の伸長、収縮に伴う力が直接ガラス管14に伝達されず、ベローズ16−1の伸長、収縮によりガラス管14が損傷することが抑制される。
【0022】
次に熱膨張差吸収手段15の作用を詳述する。太陽光により加熱された中心金属管12及びガラス管14の熱膨張の差により、熱膨張差吸収手段15に対して伸長方向の力が加わる。中心金属管12及びガラス管14の熱膨張前の状態及び最大熱膨張後の端部の位置関係を
図2(a)及び
図2(b)に示す。
図2(a)に示すように、熱膨張前の中心金属管12の端部とガラス管14の端部との間隔をS0とし、
図2(b)に示すように、最大熱膨張後の中心金属管12の端部とガラス管14の端部との間隔をS1とすると、S1とS0との差であるS1−S0を、熱膨張差吸収手段15で吸収する必要がある。伸長前のベローズ16−1,16−2の長さをそれぞれLとして、ベローズ16−1,16−2がそのストロークの最大量に伸びたと仮定すると、ベローズ16−1,16−2の長さは伸長後に1.3Lになる。ガラス管14の端部を基準に、ベローズ16−1,16−2及び接続筒17の位置関係を、
図2(b)に模式的に示す。ベローズ16−1の長さは1.3Lになるため、接続筒17の位置はベローズ16−1の伸長前の位置から0.3Lだけフランジ部12a側へ移動する。なお、
図2(b)に接続筒17の移動前の内側フランジ17bの位置を二点鎖線で示す。ベローズ16−2は接続筒17の内側フランジ17bを基準に1.3Lの長さになる。その結果、熱膨張差吸収手段15の長さは、中心金属管12及びガラス管14の熱膨張前の状態から各ベローズ16−1,16−2の伸長量0.3Lの和である0.6Lだけ伸びる。したがって、0.6LがS1−S0以上になるように16−1,16−2の伸長前の長さLを設定すれば、熱膨張差吸収手段15は中心金属管12及びガラス管14の熱膨張に伴う両者の熱膨張差を吸収することができる。この長さは、従来のように1つのベローズを使用した場合の1/2になる。なお、接続筒17の伸びは無視している。
【0023】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)太陽熱集熱管11は、熱媒が流通可能な中心金属管12と、中心金属管12との間に環状真空空間13を形成する状態で中心金属管12の外周を覆うガラス管14と、中心金属管12とガラス管14との熱膨張差を吸収する熱膨張差吸収手段15とを備えている。そして、熱膨張差吸収手段15は、2つの金属製のベローズ16−1,16−2が接続筒17を介して直列に、かつ径方向に重なる状態で配置されている。そのため、熱膨張後の状態において、熱膨張差吸収手段15の伸長量は、各ベローズ16−1,16−2の伸長量の和になる。また、2つのベローズ16−1,16−2として同じベローズが使用されており、2つのベローズは径方向に重なった状態に配置されているため、熱膨張差吸収手段15におけるベローズ部分の長さは、ベローズ1つ分の長さになる。したがって、熱膨張差吸収手段15のベローズ16−1,16−2によって遮断される太陽熱の入射領域を従来に比べて小さくすることにより、アクティブエリアを大きくすることができる太陽熱集熱管を提供することができる。
【0024】
(2)ベローズ16−1,16−2は2つである。したがって、ベローズの数が3つ以上の場合に比べて製造が容易になる。
(3)ガラス管14より内径側にベローズ16−1,16−2が配置されている。最も内側に配置されたベローズ16−2が中心金属管12に対して接続されるため、ベローズ16−1,16−2が伸長する際、ベローズ16−1,16−2の伸長に伴う接続筒17の移動時に、接続筒17が最も内側に配置されたベローズ16−2を中心金属管12と接続する部分であるフランジ部12aと干渉せずに移動し易い。また、ガラス管14の径が同じ太陽熱集熱管11で比較した場合、ガラス管14より外径側にベローズ16−1,16−2が配置される構成に比べて配置スペースを小さくすることができる。
【0025】
(4)中心金属管12はステンレス鋼製であり、溶接により接続が可能なため、接続部の気密状態を確保し易く、環状真空空間13の真空度が確保される。また。ステンレス鋼管は、耐蝕性や強度に優れ、種々の分野で使用されており、入手が容易でコスト的にも有利である。
【0026】
(5)金属製のベローズ16−2は、中心金属管12に形成されたフランジ部12aに溶接で接続されている。ベローズ16−2の蛇腹部18の径は中心金属管12の径より大径のため、両者を溶接で接続するには、ベローズ16−2側あるいは中心金属管12側のいずれかにフランジ部を設ける必要がある。この実施形態では、中心金属管12側にフランジ部12aが形成されているため、ベローズ16−2側に設ける場合に比べて容易に形成することができる。
【0027】
(6)ベローズ16−1とベローズ16−2とは接続筒17を介して接続されている。従って、互いの蛇腹部18が干渉することなく伸縮することが出来る。
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
【0028】
○ 熱膨張差吸収手段15は、ガラス管14より外形側にベローズ16−1,16−2が配置されている構成であってもよい。具体的には、
図3に示すように、ガラス管14にコバール製リング20を介して接続されるベローズ16−1が内側に配置され、中心金属管12に接続されるベローズ16−2が外側に配置される。この構成では、ベローズの数が多い場合でも、ガラス管14と中心金属管12との径の差を大きくせずにベローズを所望の数、設けることが容易になる。
【0029】
○ 熱膨張差吸収手段15を構成するベローズ16−1,16−2として長さの異なるベローズを使用してもよい。例えば、
図4に示すように、外側に配置されたベローズ16−1の方が内側に配置されたベローズ16−2より長さを長くしてもよい。複数のベローズを径方向に重ねて配置する場合、外側に配置されるベローズ、即ち径の大きなベローズの方が強度を高くすることが可能なため、ストロークを大きくすることができる。したがって、外側に配置されたベローズ16−1の長さを内側に配置されたベローズ16−2の長さより長くすることにより、同じ長さの熱膨張差吸収手段15において、熱膨張差吸収能力を高くすることができる。
【0030】
○ 熱膨張差吸収手段15を構成するベローズの数は2つに限らず、3つ以上でもよい。例えば、3つのベローズ16−1,16−2,16−3を使用する場合、
図5に示すように、3つのベローズ16−1,16−2,16−3と、2つの接続筒17とを交互に重なる状態で配置する。この構成においても、熱膨張差吸収手段15の伸縮量は各ベローズ16−1,16−2,16−3の伸縮量の合計になり、1つのベローズの長さで3倍の伸縮量となる。
【0031】
○ ベローズ16−1,16−2,16−3は、円筒部19a,19bの内径が蛇腹部18の山部と谷部との中間の径と同じ構成に限らず、それより大きくてもあるいは小さくてもよい。
【0032】
○ ベローズ16−1,16−2,16−3は、円筒部19a,19bの径が同じに限らず、円筒部19aの径が円筒部19bの径より大きくてもあるいは小さくてもよい。
○ ベローズ16−1,16−2,16−3は、蛇腹部18のひだ壁がV形に限らず、U形のひだ壁を有する構成であってもよい。
【0033】
○ ベローズ16−1,16−2と中心金属管12との接続は、中心金属管12にフランジ部12aを形成せずに、ベローズ16−1,16−2の円筒部19b側にフランジ部を形成し、そのフランジ部を中心金属管12の端部に溶接で接続してもよい。
【0034】
○ 中心金属管12やベローズ16−1,16−2,16−3あるいは接続筒17をステンレス鋼以外の金属で形成してもよい。
○ 環状空間は環状真空空間13に限らず、例えば、熱伝導率が空気より小さい気体が環状空間に通常の大気圧と同等以上の圧力で満たされて、熱伝導率が真空と同程度の状態であってもよい。なお、「真空」とは、通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間の状態を意味する。
【符号の説明】
【0035】
11…太陽熱集熱管、12…中心金属管、13…環状空間としての環状真空空間、14…ガラス管、15…熱膨張差吸収手段、16−1,16−2,16−3…ベローズ、17…接続筒。