(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記タンク支持ブラケット(42L,42R)の主要部は薄肉の金属板によって構成されているとともに、前記燃料タンク(50)に対してボルト結合が可能なボルト結合部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両のタンクカバー取付構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、現在、タンクカバーを車両の側部前方側から燃料タンクの下方のエンジンの側方位置まで延出させることにより、走行時におけるエンジンへの導風効果を高めることを検討している。
【0006】
しかし、上記従来のタンクカバー取付構造をそのまま採用すると、燃料タンクの前縁部の上面に突設されたフランジ部にタンクカバーが固定されることになるため、タンクカバーの下方側の延出領域が燃料タンク側の結合部であるフランジ部から下方に大きく離間してしまい、走行時等におけるタンクカバーの延出領域のバタつきを生じやすくなる。
【0007】
この対策としては、燃料タンクに突設されるフランジ部を車体下方側に屈曲させて延ばすことも考えられるが、その場合にはフランジ部の強度維持が困難になる。
また、別の対策としては、燃料タンクの前縁部自体を下方に延出させることも考えられるが、その場合には、燃料タンクの製造自体が困難になるため、生産コストの面で採用は現実的ではない。
さらに、別の対策としては、タンクカバーの適切な支持位置に対応する車体フレーム上の対応個所にタンクカバー取付用のステイを設けることも考えられるが、この場合、ステイの位置精度を確保するのが難しいうえ、燃料タンクの脱着時に、燃料タンクの固定箇所とは別にステイとタンクカバーの固定箇所で脱着作業を行わなけれずならず、作業工数が増加する。また、この場合、専用のステイを車体フレームに取り付ける必要があるため、部品点数も増加する。
【0008】
そこでこの発明は、燃料タンクの側方からエンジンの上部側方にかけてを覆うタンクカバーを、強度の高い簡単な構造によって容易に、かつ精度良く車体側に取り付けることのできる鞍乗型車両のタンクカバー取付構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る鞍乗型車両のタンクカバー取付構造では、上記課題を解決するために以下の構成を採用した。
請求項1に係る発明は、エンジン(2)の上方の車体フレーム部材(12,41)に取り付けられ、前記エンジン(2)に供給する燃料を貯留する燃料タンク(50)と、前記燃料タンク(50)の側方から前記エンジン(2)の上部側方にかけてを覆うタンクカバー(53L,53R)と、前記燃料タンク(50)の前部下方で前記車体フレーム部材(41)に取り付けられ、前記燃料タンク(50)の左右の前縁部をそれぞれ前記車体フレーム部材(41)に連結する左右一対のタンク支持ブラケット(42L,42R)と、を備えた鞍乗型車両において、前記タンク支持ブラケット(42L,42R)に、前記燃料タンク(50)との連結部(69L,69R)よりも車幅方向外側に延出する係止部(70L,70R)が一体に設けられ、該係止部(70L,70R)に前記タンクカバー(53L,53R)が結合されており、前記タンク支持ブラケット(42L,42R)は、前記車体フレーム部材(41)に対して
締結部材(67)によって脱着可能に締結固定される締結固定部(68L,68R)を備え、
前記タンクカバー(53L,53R)の前記タンク支持ブラケット(42L,42R)との結合部(63)よりも上方側の領域は前記燃料タンク(50)に直接結合され、前記タンク支持ブラケット(42L,42R)は、前記締結固定部(68L,68R)が前記車体フレーム部材(41)に対してゴム弾性体(72)を介して固定されているとともに、前記燃料タンク(50)と前記タンクカバー(53L,53R)に対してゴム弾性体を介さずに直接結合されており、前記締結固定部(68L,68R)と前記締結部材(67)は、車幅方向外側の側方を前記タンクカバー(53L,53R)によって覆われているとともに、車両前方側を開放されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る鞍乗型車両のタンクカバー取付構造において、前記タンク支持ブラケット(42L,42R)の主要部は薄肉の金属板によって
構成されているとともに、前記燃料タンク(50)に対して
ボルト結合が可能なボルト結合部を備えていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項
3に係る発明は、請求項
1または2に係る鞍乗型車両のタンクカバー取付構造において、前記タンクカバー(53L,53R)は、車両の側面視で上端部と下端部の間に車体前方側に突出する前方頂部(58)を備えるとともに、前記前方頂部(58)から前記上端部に向けて斜め上方に延出する上部傾斜辺(59a)と、前記前方頂部(58)から前記下端部に向けて斜め下方に傾斜する下部傾斜辺(59b)と、を備え、前記タンクカバー(53L,53R)の前記タンク支持ブラケット(42L,42R)との結合部(63)は、前記前方頂部(58)と略同一高さに設定されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項
4に係る発明は、請求項
1〜3のいずれか1項に係る鞍乗型車両のタンクカバー取付構造において、前記タンクカバー(53L,53R)の前記タンク支持ブラケット(42L,42R)との結合部(63)と、前記タンク支持ブラケット(42L,42R)の係止部(70L,70R)とはそれぞれ水平方向に延出して、相互に重ねられて結合されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項
5に係る発明は、請求項
1〜4のいずれか1項に係る鞍乗型車両のタンクカバー取付構造において、前記燃料タンク(50)は、車両の側面視にて、その下面が前記エンジン(2)の上部に向けて後下方下がりとなっていることを特徴とするものである。
請求項
6に係る発明は、請求項
1〜5のいずれか1項に係る鞍乗型車両のタンクカバー取付構造において、前記タンクカバー(53R)が結合される前記係止部(70R)は、前記タンク支持ブラケット(42R)の前記車体フレーム部材(41)に締結固定されるボス部(68R)よりも下方に延びていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、燃料タンクの左右の前縁部をそれぞれ車体フレーム部材に連結するタンク支持ブラケットに、燃料タンクとの連結部よりも車幅方向外側に延出する係止部が一体に設けられ、その係止部にタンクカバーが結合されるため、タンクカバーの前部下方に位置されるタンク支持ブラケットを利用して、タンクカバーを高い強度と高い位置精度をもって車体側に支持させることができる。
また、この発明によれば、燃料タンクや車体フレーム部材側に専用部品を追加せずにタンクカバーを車体側に取り付けることができるため、部品点数の削減と組付工数の削減によって生産コストの低減を図ることができる。
さらに、この発明によれば、燃料タンクの上部とタンクカバーが直接結合されるとともに、タンク支持ブラケットと燃料タンク、タンク支持ブラケットとタンクカバーの各間もゴム弾性体を介さず直接結合されることから、タンクカバーと燃料タンクの間の組付精度を高め、外観品質を高めることができる。一方、この発明においては、タンク支持ブラケットと車体フレーム部材がゴム弾性体を介して結合されるため、組付誤差を吸収することができる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、タンク支持ブラケットの主要部が薄肉の金属板によって形成され、燃料タンクにボルトで結合されるため、タンク支持ブラケットや、そのタンク支持ブラケットと燃料タンクとの結合部で受ける走行風による抵抗を低減することができる。
【0018】
請求項
3に係る発明によれば、タンクカバーの前方頂部と略同一高さの位置にタンク支持ブラケットとの結合部が設定されているため、車両走行時に、タンクカバーの上部傾斜辺の上端部付近や下部傾斜辺の下端部付近に外部の障害物が接触したときにおける衝撃荷重を有効にいなすことができる。したがって、タンクカバーの破損や車体からのタンクカバーの剥離を未然に防止することができる。
【0019】
請求項
4に係る発明によれば、タンクカバーのタンク支持ブラケットとの結合部と、タンク支持ブラケットの係止部とがそれぞれ水平方向に延出して、相互に重ねられて結合されているため、走行風による抵抗を充分に低減することができるとともに、タンクカバーが車両前端側から引き剥がされる荷重に対して高い支持強度を持たせることができる。
【0020】
請求項
5に係る発明によれば、燃料タンクの下面がエンジンの上部に向けて後下がりとなっているため、タンクカバーと燃料タンクの下面とによって走行風を効率良くエンジンの上部に誘導することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特別に断らない限り車両における向きと同一とする。また、図中の矢印FRは車両の前方を指し、矢印UPは車両の上方を指し、矢印LHは車両の左側方を指すものとする。
【0023】
図1は、この実施形態の鞍乗り型車両の全体を示す側面図である。
この実施形態の鞍乗り型車両は、エンジン2によって後輪WRが駆動されるオフロードタイプの自動二輪車である。以下、この実施形態の鞍乗り型車両については、「自動二輪車1」と呼ぶものとする。
自動二輪車1の車体フレームFは、前端部に配置されるヘッドパイプ11と、ヘッドパイプ11から後斜め下方へ延出するメインフレーム12と、ヘッドパイプ11上のメインフレーム12との連結部の下方位置から下方に延出するダウンパイプ13と、メインフレーム12の後部領域の左右の側部から下方に湾曲して延出する一対のセンタパイプ14L,14Rと、を備えている。センタパイプ14L,14Rの下端部同士は車幅方向に延出するクロスパイプ15によって結合されている。車体フレームFは、さらにメインフレーム12の後部から車体後方側に向かって延出する左右一対のシートレール16L,16Rと、左右の各センタパイプ14L,14Rのクロスパイプ15よりも上方側の下部領域と左右の対応するシートレール16L,16Rの後部領域とを連結するサポートパイプ17L,17Rと、を備えている。左右の各サポートパイプ17L,17Rは前端部から後端部に向かって上方に傾斜して延出しており、シートレール16L,16R、センタパイプ14L,14R、サポートパイプ17L,17Rによって囲まれる領域が側面視で略三角形状を呈するようになっている。また、ダウンパイプ13上のヘッドパイプ11との結合部から若干下がった領域と、メインフレーム12の後部の上方側領域の間は、車体前後方向に延出する補強パイプ9によって連結されている。
なお、上記の部材のうち紙面前後で重なって隠れている部材(例えば、センタパイプ14R)は、図示都合上括弧書きで符号を付している。以下の説明では、紙面前後で重なって隠れている部材については同様に扱っている。
【0024】
ヘッドパイプ11には、図示しないステアリングステムが回動自在に軸支されている。ステアリングステムには操向ハンドル21と左右一対のフロントフォーク22L,22Rが結合されている。フロントフォーク22L,22Rの下端部には、前輪WFが回転自在に軸支されている。
【0025】
メインフレーム12の上部には燃料タンク50が取り付けられ、燃料タンク50の後部のシートレール16L,16R上には乗員が着座するためのシート51が取り付けられている。また、シートレール16L,16R、センタパイプ14L,14R、サポートパイプ17L,17Rによって囲まれる側面視が略三角形状の領域の車幅方向内側の空間には、エンジン2で吸入する空気を濾過するためのエアクリーナ52が配置されている。
【0026】
メインフレーム12の下方で、補強パイプ9とダウンパイプ13とセンタパイプ14L,14Rとに挟まれた領域には、エンジン2及び変速機23を主要素とするエンジンブロック24が設置されている。エンジン2はクランク軸を収容するクランクケース26の上部にシリンダブロック27が一体に結合される。変速機23はエンジン2のクランクケース26の後部に一体に結合されており、変速機23にはエンジン2の動力を外部に取り出すための出力軸28が設けられている。出力軸28は車幅方向の左側に突出しており、その突出端にドライブスプロケット29が一体に結合されている。
なお、
図1において、53L,53Rは、燃料タンク50からエンジンブロック24の上縁部にかけての側方を覆う樹脂製のタンクカバーであり、54a,54bは、タンクカバー53L,53Rの後部において、エアクリーナ52の側方を含むシート下の側方を覆う樹脂製のサイドカバーである。タンクカバー53L,53Rについては後に詳述する。
【0027】
エンジンブロック24の前部側下端はブラケット30を介してダウンパイプ13の下縁部に締結固定され、エンジンブロック24の後縁部は、左右のセンタパイプ14L,14Rの各下縁部に取り付けられたピボットプレート31L,31Rにエンジンハンガーボルト32,33を介して支持されている。
【0028】
また、ピボットプレート31L,31Rの上下方向の中間領域には、スイングアーム34の前端部を揺動可能に軸支するピボット軸35が取り付けられている。
スイングアーム34は、一対のアーム部34L,34Rを有し、両アーム部34L,34Rの前端部がピボット軸35に軸支されるとともに、両アーム部34L,34Rの後端部に後輪WRの車軸36が回転可能に軸支されている。車軸36の車幅方向の左側にはドリブンスプロケット37が一体に取り付けられている。エンジンブロック24側のドライブスプロケット29とスイングアーム34の後部のドリブンスプロケット37には、エンジン2の動力を後輪WRに伝達するためのドライブチェーン38が掛け渡されている。
なお、スイングアーム34は、図示しないクッションユニットを介して車体フレームFに支持されている。
【0029】
図2は、
図1の一部を拡大した図であり、
図3は、
図2からタンクカバー53L,53Rを取り去った図、
図4は、
図2のA矢視図である。また、
図5は、一部を断面にした燃料タンク50の側面図であり、
図6,
図7は、左右のタンクカバー53L,53Rの前部側の取付け部をそれぞれ示す斜視図である。
図3に示すように、ヘッドパイプ11とメインフレーム12とダウンパイプ13と補強パイプ9とに囲まれる略三角形状の領域は、これらの4部材の側面に跨って結合されるガセットプレート40によって補強されている。また、ガセットプレート40と補強パイプ9の少なくとも一方には、ガセットプレート40の車幅方向の左右両側に突出する
図4に示す支持ロッド41(車体フレーム部材)が一体に結合されている。
また、メインフレーム12の上部には、鞍状の燃料タンク50が左右方向で跨ぐように配置され、その燃料タンク50の前縁部の左右の下面が、それぞれタンク支持ブラケット42L,42Rを介して支持ロッド41に連結されている。なお、ここでは詳細な説明は省略するが燃料タンク50の後部は図示しないブラケットを介してメインフレーム12の後部上端側に連結されている。
【0030】
図4に示すように、燃料タンク50は、下面中央側にメインフレーム12を跨ぐための車体前後方向に沿う凹溝43が設けられ、その左右の前縁部の下面がそれぞれ平坦に形成されている。この燃料タンク50は、耐熱性の樹脂材料によって全体がほぼ一体に形成され、上端部の中央には燃料給油口44が設けられている。
燃料タンク50の左右の前縁部の各下面には、
図5に示すように、金属製のねじ受け部を有するステイ45がタンク成形時に一体に成形されている。また、燃料タンク50の前縁部の上部側の左右の側面には、タンクカバー53L,53Rの上部側の取付部であるナット46が埋設されている。
また、燃料タンク50は、車体に取り付けられた状態において、左右の側縁部の下面全体がエンジン2の上部に向けて後下方下がりとなっている。
【0031】
一方、左右のタンクカバー53L,53Rは、フロントカバー部材55、リヤカバー部材56、及び、ロアカバー部材57の三部材によって構成されており、上記の各タンク支持ブラケット42L,42Rには、フロントカバー部材55が連結されるようになっている。
【0032】
図8は、左側のタンクカバー53Lのフロントカバー部材55を示す図であり、
図9は、右側のタンクカバー53Rのフロントカバー部材55を示す図である。また、
図10は、左側のタンクカバー53Lのフロントカバー部材55、リヤカバー部材56、及び、ロアカバー部材57を分離した状態で示した図である。
これらの図に示すように、フロントカバー部材55は、車両の側面視で上端部と下端部の間で車体前方側に鋭角状に突出する前方頂部58を備えるとともに、前方頂部58から上端部に向けて斜め上方に延出する上部傾斜辺59aと、前方頂部58から下端部に向けて斜め下方に延出する下部傾斜辺59bと、を備えている。また、フロントカバー部材55は車体後方側に略L字状の切欠き部60が設けられ、全体として略L字状の側面視形状とされている。以下、フロントカバー部材55のうちの、前方頂部58から後上方側に延出する部分を上方延出片61aと呼び、前方頂部58から後下方側に延出する部分を下方延出片61bと呼ぶものとする。
また、左右のフロントカバー部材55は、
図4に示すように、ほぼ前方頂部58付近の高さ位置を車幅方向の最大膨出部として、上方延出片61aと下方延出片61bがそれぞれ上下方向に湾曲している。
【0033】
フロントカバー部材55の上方延出片61aの上端部の近傍には、
図8,
図9に示すように、燃料タンク50の上部側面に埋め込まれたナット46に対し、その部位をボルト締結する(
図2中のボルト47参照。)ためのボルト孔62が形成されている。
また、
図8に示す左側のフロントカバー部材55の裏面のうちの、前後幅方向の略中央の前方頂部58と略同一高さ位置には、車体取付状態において略水平姿勢で延出する板状の結合片63(結合部)が延設されている。この結合片63には、結合片63を上下方向に貫通する取付孔64が形成されている。この取付孔64には、結合片63をタンク支持ブラケット42Lに固定するための樹脂ファスナ65(
図4参照。)が嵌入されるようになっている。なお、
図8中の符号66は、結合片63を補強するための補強リブである。
図9に示す右側のフロントカバー部材55は、上述した左側のフロントカバー部材55とほぼ同様の構成とされているが、右側のフロントカバー部材55の結合片63の突設位置は、左側のフロントカバー部材55の結合片63の突設位置よりも若干下方に下がった位置に設定されている。
【0034】
ところで、左右のタンク支持ブラケット42L,42Rは、
図4,
図6,
図7に示すように、支持ロッド41の軸方向の端面にボルト67によって締結固定されるボス部68L,68Rと、燃料タンク50の前縁部の下面にボルト71によって締結固定される連結部69L,69Rと、連結部69L,69Rよりも車幅方向外側に延出してフロントカバー部材55の結合片63に取り付けられる係止部70L,70Rと、を備えている。タンク支持ブラケット42L,42Rは、全体が金属材料から成り、ボス部68L,68Rのみが鋼管または鉄棒材から形成され、残余の部分は金属板からプレス成形されている。
【0035】
左側のタンク支持ブラケット42Lは、
図4,
図6に示すように、ボス部68Lの外周面の上部から後部に亙る領域に、連結部69Lと係止部70Lを有するプレス部品が溶接固定されて構成されている。
連結部69Lは、上面が平坦な略矩形状に形成され、その部分が燃料タンク50の下面に重合された状態において、ステイ45(
図5参照。)に対して前後二箇所でボルト71によって締結されるようになっている。
また、連結部69Lの車幅方向外側には、
図6に示すように、下方に屈曲する側面視が略三角形状の屈曲壁73が設けられ、その屈曲壁73の下端に車幅方向外側(左側方)、かつ前方に向かって延出する略三角形状の係止部70Lが連続して設けられている。係止部70Lは、収斂した車幅方向外側の端部に図示しない取付孔が形成されている。係止部70Lの先端側は略水平に延出し、その先端側の上面にはフロントカバー部材55の結合片63が水平姿勢で重ねられ、その状態で結合片63と係止部70Lが樹脂ファスナ65によって結合されるようになっている。左側のフロントカバー部材55は、これによりタンク支持ブラケット42Lの係止部70Lに連結される。
また、タンク支持ブラケット42Lのボス部68Lは、円筒状のゴムブッシュ72(ゴム弾性体)を間に挟み込んだ状態において、支持ロッド41の左端面にボルト結合される。
【0036】
一方、右側のタンク支持ブラケット42Rは、
図4,
図7に示すように、ボス部68Rの外周面の上部から後部と下部とに亙る領域に、連結部69Rと係止部70Rを有するプレス部品が溶接固定されて構成されている。このプレス部品は、車体正面から見た形状が略コ字状に形成され、連結部69Rがコ字形状の上辺に配置され、係止部70Rがコ字形状の下辺に配置されている。ボス部68Rは、連結部69Rと係止部70Rを接続する縦壁75の前端部領域の上下方向の略中央に固定されている。連結部69Rと係止部70Rは、縦壁75の上下の端部から車幅方向外側(右側方)に延出している。
【0037】
連結部69Rは、上面が平坦な略矩形状に形成されている。連結部69Rは、その上面が燃料タンク50の右側の前縁部の下面に重合され、その状態でステイ45(
図5参照。)に前後二箇所でボルト71によって締結されるようになっている。
また、係止部70Rは、略三角形状に形成され、収斂した車幅方向外側の端部に図示しない取付孔が形成されている。係止部70Rの先端側は略水平に延出し、その先端側の上面にはフロントカバー部材55の結合片63が水平姿勢で重ねられ、その状態で結合片63と係止部70Rが樹脂ファスナ65によって結合されるようになっている。右側のフロントカバー部材55は、これによりタンク支持ブラケット42Rの係止部70Rに連結される。
【0038】
また、
図10に示すように、リヤカバー部材56は、車体側面視で略T字状に形成され、前縁部側がフロントカバー部材55の後縁部に対して係止爪76による係合とビス止めによって結合される。また、ロアカバー部材57は、車体側面視で略L字状に形成され、上縁部がリヤカバー部材56の後部側の下縁部に係止爪77による係合によって係止されるとともに、前縁部がリヤカバー部材56のT字の脚部にビス止めによって結合される。また、リヤカバー部材56の後端部はメインフレーム12に図示しないブラケットを介して結合される。
【0039】
以上のように、この自動二輪車1は、車体の左右に燃料タンク50の側方とエンジン2の上部側方にかけてを覆うタンクカバー53L,53Rが設けられているため、タンクカバー53L,53Rによって燃料タンク50の側部を確実に保護し、かつ外観品質を高めることができ、しかも、車両の走行時には、タンクカバー53L,53Rによってエンジン2の上部に走行風を効率良く誘導することができる。
特に、この自動二輪車1においては、燃料タンク50の下面がエンジン2の上部に向けて後下がりとなっているため、タンクカバー53L,53Rと燃料タンク50の下面とによって走行風をより効率良くエンジン2の上部に誘導することができる。
【0040】
この実施形態のタンクカバー取付構造は、タンク支持ブラケット42L,42Rに、燃料タンク50との連結部69L,69Rよりも車幅方向外側に延出する係止部70L,70Rが一体に設けられ、その係止部70L,70Rにタンクカバー53L,53Rの各フロントカバー部材55の結合片63が結合されるため、タンクカバー53L,53Rの前部下方に配置されるタンク支持ブラケット42L,42Rを利用して、タンクカバー53L,53Rを高い強度と高い位置精度をもって車体フレームFに支持させることができる。
したがって、エンジン2の上部側方まで延出するタンクカバー53L,53Rであるにも拘わらず、ガタつきなくタンクカバー53L,53Rを車体側に固定することができる。
【0041】
また、このタンクカバー取付構造においては、燃料タンク50側や車体フレームF側に専用部品(例えば、フランジ部やステイ)を追加することなく、タンクカバー53L,53Rの各フロントカバー部材55を車体フレームFに取り付けることができるため、部品点数の増加による生産コストの高騰を招くことがない。
【0042】
また、この実施形態のタンクカバー取付構造においては、タンク支持ブラケット42L,42Rの連結部69L,69Rと係止部70L,70Rが薄肉の金属板によって形成され、燃料タンク50の前縁部の下面に連結部69L,69Rがボルト71によって結合されるため、車両の走行時にタンク支持ブラケット42L,42Rや燃料タンク50との結合部で受ける走行風による抵抗を抑制することができる。
【0043】
さらに、この実施形態においては、タンクカバー53L,53Rのフロントカバー部材55の結合片63と、タンク支持ブラケット42L,42Rの係止部70L,70Rとがそれぞれ略水平に延出して相互に重ねられて結合されるため、車両の走行時にこれらの部位で受ける走行抵抗を充分に低減することができる。また、この実施形態の場合、相互に結合される結合片63と係止部70L,70Rが車体前後方向に幅のある部材であるため、タンクカバー53L,53Rが車両前端側から引き剥がされる方向の荷重を受けても、結合片63や係止部70L,70Rに曲げを生じることがない。さらに、この構造では、樹脂ファスナ65が結合片63と係止部70L,70Rに厚み方向に貫通して係合されるため、タンクカバー53L,53Rが車両前端側から引き剥がされる方向の荷重を受けても、樹脂ファスナ65がその荷重を強度上有利なせん断荷重として受け止めることができる。
【0044】
さらに、このタンクカバー取付構造では、タンクカバー53L,53Rのフロントカバー部材55の上部側が燃料タンク50の上部側面のナット46に直接的に結合されるとともに、タンク支持ブラケット42L,42Rの連結部69L,69Rと燃料タンク50、タンク支持ブラケット42L,42Rの係止部70L,70Rとフロントカバー部材55の各間も直接的に結合されるため、フロントカバー部材55と燃料タンク50の間の組付精度を高めることができる。したがって、これにより外観品質を高めることができる。
一方、このタンクカバー取付構造では、各タンク支持ブラケット42L,42Rと車体側の支持ロッド41との間はゴムブッシュ72を挟み込んで結合されているため、ゴムブッシュ72によって組付誤差を吸収することができる。
【0045】
また、この実施形態の場合、タンクカバー53L,53Rの各フロントカバー部材55が、前方頂部58から斜め上方に延出する上部傾斜辺59aと、前方頂部58から斜め下方に延出する下部傾斜辺59bと、を備え、フロントカバー部材55のタンク支持ブラケット42L,42Rと結合される結合片63が、前方頂部と略同一高さに設定されているため、車両走行時に、フロントカバー部材55の上部傾斜辺59aの上端部付近や下部傾斜辺59bの下端部付近に外部の障害物が接触したときにおける衝撃荷重を有効にいなすことができる。したがって、この構造により、タンクカバー53L,53Rの破損や車体からのタンクカバー53L,53Rの剥離を未然に防止することができる。
【0046】
また、この実施形態の右側のタンク支持ブラケット42Rは、ボス部68Rから下方に屈曲した後に、係止部70Rが車幅方向外側に延出してフロントカバー部材55と結合されているため、フロントカバー部材55の下方延出片61bのバタつきをより有効に抑制することができるとともに、下方延出片61bの形状を安定的に維持することができる。
【0047】
また、この実施形態の左側のタンク支持ブラケット42Lは、ボス部68Lから上方に屈曲した後に、係止部70Lが車幅方向外側に延出してフロントカバー部材55と結合されているため、タンクカバー53Lを車体から取り外す際に、タンクカバー53Lの前方側の開口からスパナ等の工具によってボルト67を容易に取り外すことができるという利点がある。
【0048】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。