特許第6043555号(P6043555)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043555
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】組電池の冷却構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/613 20140101AFI20161206BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20161206BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20161206BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20161206BHJP
   H01M 10/6551 20140101ALI20161206BHJP
   H01M 10/6552 20140101ALI20161206BHJP
   H01M 10/6557 20140101ALI20161206BHJP
   H01M 10/6569 20140101ALI20161206BHJP
   H01M 10/6571 20140101ALI20161206BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20161206BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   H01M10/613
   H01M10/615
   H01M10/625
   H01M10/647
   H01M10/6551
   H01M10/6552
   H01M10/6557
   H01M10/6569
   H01M10/6571
   F28D15/02 101H
   F28D15/02 104A
   F28D15/02 Z
   H01M2/10 E
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-200270(P2012-200270)
(22)【出願日】2012年9月12日
(65)【公開番号】特開2014-56690(P2014-56690A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】柴田 弘貴
【審査官】 猪瀬 隆広
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/050011(WO,A1)
【文献】 特開2005−283093(JP,A)
【文献】 特開2009−092357(JP,A)
【文献】 特開平03−110392(JP,A)
【文献】 特開平11−204151(JP,A)
【文献】 特開2011−243358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D15/02,
H01M2/10,
H01M10/60−10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の扁平状の単電池と、ヒートパイプ部が設けられた基板を有する複数の平板状ヒートパイプとが、単電池の少なくとも片面に平板状ヒートパイプが熱的に接触するように積層状に配置されており、基板の周縁部の少なくとも一部に、単電池よりも外方に突出しかつ冷却源に熱的に接触させられる放熱部が設けられている組電池の冷却構造であって、
平板状ヒートパイプの基板のヒートパイプ部が、外方に膨出した中空の無端状作動液封入回路内に消火性作動液が封入されることによって設けられ、作動液封入回路に、ヒートパイプ部の内圧の異常上昇時に破損して消火性作動液を流出させる作動液流出部が設けられており、作動液封入回路が、一定の幅および一定の長さを有する複数の回路形成部を備えており、少なくとも1つの回路形成部に、内部が回路形成部内と通じるように外方に膨出し、かつ回路形成部の幅方向に突出するとともに平板状ヒートパイプの基板と直交する方向から見て先端に向かって先細り状となった山形の突出部が設けられ、当該突出部が作動液流出部となっている組電池の冷却構造。
【請求項2】
消火性作動液がパーフルオロケトンからなる請求項1記載の組電池の冷却構造。
【請求項3】
作動液流出部となる突出部が、平板状ヒートパイプの基板と直交する方向から見て互いに鋭角をなす2つの傾斜辺を有している請求項1または2記載の組電池の冷却構造。
【請求項4】
単電池および平板状ヒートパイプが鉛直状に配置されており、平板状ヒートパイプの基板の上部に、単電池の上端部よりも上方に突出した上方突出部が設けられるとともに、ヒートパイプ部の作動液封入回路が基板の上方突出部まで延びており、平板状ヒートパイプの基板の上方突出部に放熱部が設けられ、作動液封入回路における基板の上方突出部に存在する部分に作動液流出部が設けられている請求項1〜3のうちのいずれかに記載の組電池の冷却構造。
【請求項5】
平板状ヒートパイプの基板が、ヒートパイプ部が設けられた鉛直状本体部分を備えており、鉛直状本体部分の上端に、鉛直状本体部分と直角をなす水平状放熱部が設けられ、すべての平板状ヒートパイプの基板の放熱部に跨って、1つの冷却源が熱的に接触するようになされている請求項4記載の組電池の冷却構造。
【請求項6】
平板状ヒートパイプにおける基板の鉛直状本体部分の下部に単電池の下端部よりも下方に突出した下方突出部が設けられ、下方突出部に、加熱源に熱的に接触させられる受熱部が設けられており、組電池を加熱する機能を有している請求項5記載の組電池の冷却構造。
【請求項7】
平板状ヒートパイプの基板における鉛直状本体部分の下端に、鉛直状本体部分と直角をなす水平状受熱部が設けられ、すべての平板状ヒートパイプの基板の受熱部に跨って、1つの加熱源が熱的に接触するようになされている請求項6記載の組電池の冷却構造。
【請求項8】
平板状ヒートパイプの基板が互いに接合された2枚の金属板からなり、平板状ヒートパイプの基板におけるヒートパイプ部の作動液封入回路が、基板の少なくともいずれか一方の金属板を膨出させることにより形成されている請求項1〜7のうちのいずれかに記載の組電池の冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は組電池の冷却構造に関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、図1の上下を上下というものとする。
【背景技術】
【0003】
近年、環境問題などから、ハイブリッド自動車、電気自動車等が注目されており、そのために各種の二次電池が開発されている。各種の二次電池の中でもリチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高く、密閉性に優れ、かつメンテナンスフリーであるため、ハイブリッド自動車や電気自動車用のバッテリとして優れているが、大型のものは実用化されていない。そこで、複数個の小型の単電池を直列または並列に接続して組電池の形態とすることにより、所望の電圧や容量を確保している。
【0004】
リチウムイオン二次電池は、使用温度によって性能や寿命が変化するので、長時間にわたって効率良く使用するためには適正な温度で使用する必要があるが、上述したような組電池の形態で用いた場合、各単電池自体から発せられる熱を放熱することが困難であり、各単電池の温度が上昇して寿命が短くなるという問題がある。
【0005】
そこで、上述したような組電池における単電池の温度上昇を抑制することを目的として、複数の扁平状の単電池と、複数の平板状ヒートパイプとが、両者が水平となるように交互に積層状に配置されており、平板状ヒートパイプの周縁部の少なくとも一部に、単電池よりも外方に突出しかつ放熱用ヒートシンクに接触させられる放熱部が設けられている冷却構造が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
ところで、リチウムイオン二次電池は、内部ショートや過充電などに起因して熱暴走し、電池の温度が異常に上昇して発火の原因となることがあるので、安全性を向上させるために発火した際の消火機能を備えた装置が求められている。しかしながら、リチウムイオン二次電池の熱暴走時に発火した際の消火機能を有する簡単かつ安価な構造の装置は実現していないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−140714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の目的は、上記実情に鑑みてなされたものであり、組電池を構成する単電池を効率良く冷却することができるとともに、単電池が熱暴走に起因して発火した際に消火することができ、しかも簡単かつ安価な組電池の冷却構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0010】
1)複数の扁平状の単電池と、ヒートパイプ部が設けられた基板を有する複数の平板状ヒートパイプとが、単電池の少なくとも片面に平板状ヒートパイプが熱的に接触するように積層状に配置されており、基板の周縁部の少なくとも一部に、単電池よりも外方に突出しかつ冷却源に熱的に接触させられる放熱部が設けられている組電池の冷却構造であって、
平板状ヒートパイプの基板のヒートパイプ部が、外方に膨出した中空の無端状作動液封入回路内に消火性作動液が封入されることによって設けられ、作動液封入回路に、ヒートパイプ部の内圧の異常上昇時に破損して消火性作動液を流出させる作動液流出部が設けられており、作動液封入回路が、一定の幅および一定の長さを有する複数の回路形成部を備えており、少なくとも1つの回路形成部に、内部が回路形成部内と通じるように外方に膨出し、かつ回路形成部の幅方向に突出するとともに平板状ヒートパイプの基板と直交する方向から見て先端に向かって先細り状となった山形の突出部が設けられ、当該突出部が作動液流出部となっている組電池の冷却構造。
【0011】
2)消火性作動液がパーフルオロケトンからなる上記1)記載の組電池の冷却構造。
【0012】
3)作動液流出部となる突出部が、平板状ヒートパイプの基板と直交する方向から見て互いに鋭角をなす2つの傾斜辺を有している上記1)または2)記載の組電池の冷却構造。
【0013】
4)単電池および平板状ヒートパイプが鉛直状に配置されており、平板状ヒートパイプの基板の上部に、単電池の上端部よりも上方に突出した上方突出部が設けられるとともに、ヒートパイプ部の作動液封入回路が基板の上方突出部まで延びており、平板状ヒートパイプの基板の上方突出部に放熱部が設けられ、作動液封入回路における基板の上方突出部に存在する部分に作動液流出部が設けられている上記1)〜3)のうちのいずれかに記載の組電池の冷却構造。
【0014】
5)平板状ヒートパイプの基板が、ヒートパイプ部が設けられた鉛直状本体部分を備えており、鉛直状本体部分の上端に、鉛直状本体部分と直角をなす水平状放熱部が設けられ、すべての平板状ヒートパイプの基板の放熱部に跨って、1つの冷却源が熱的に接触するようになされている上記4)記載の組電池の冷却構造。
【0015】
6)平板状ヒートパイプにおける基板の鉛直状本体部分の下部に単電池の下端部よりも下方に突出した下方突出部が設けられ、下方突出部に、加熱源に熱的に接触させられる受熱部が設けられており、組電池を加熱する機能を有している上記5)記載の組電池の冷却構造。
【0016】
7)平板状ヒートパイプの基板における鉛直状本体部分の下端に、鉛直状本体部分と直角をなす水平状受熱部が設けられ、すべての平板状ヒートパイプの基板の受熱部に跨って、1つの加熱源が熱的に接触するようになされている上記6)記載の組電池の冷却構造。
【0017】
8)平板状ヒートパイプの基板が互いに接合された2枚の金属板からなり、平板状ヒートパイプの基板におけるヒートパイプ部の作動液封入回路が、基板の少なくともいずれか一方の金属板を膨出させることにより形成されている上記1)〜7)のうちのいずれかに記載の組電池の冷却構造。
【発明の効果】
【0018】
上記1)〜8)の冷却構造によれば、平板状ヒートパイプの基板のヒートパイプ部が、外方に膨出した中空の無端状作動液封入回路内に消火性作動液が封入されることによって設けられ、作動液封入回路に、ヒートパイプ部の内圧の異常上昇時に破損して消火性作動液を流出させる作動液流出部が設けられており、作動液封入回路が、一定の幅および一定の長さを有する複数の回路形成部を備えており、少なくとも1つの回路形成部に、内部が回路形成部内と通じるように外方に膨出し、かつ回路形成部の幅方向に突出するとともに平板状ヒートパイプの基板と直交する方向から見て先端に向かって先細り状となった山形の突出部が設けられ、当該突出部が作動液流出部となっているので、たとえばリチウムイオン二次電池からなる単電池が、内部ショートや過充電などに起因して熱暴走し、電池の温度が異常に上昇して発火すると、ヒートパイプ部の作動液封入回路内の消火性作動液がドライアウトして内圧が上昇する。その結果、作動液流出部が破損して消火性作動液が流出し、発生した火が消火される。
【0019】
また、作動液封入回路の山形突出部の耐圧性は低下するので、ヒートパイプ部の内圧の異常上昇時に破損して消火性作動液を流出させる作動液流出部を、比較的簡単な構造で設けることができる
【0020】
上記3)の冷却構造によれば、作動液封入回路の山形突出部の耐圧性が低下するので、ヒートパイプ部の内圧の異常上昇時に破損して消火性作動液を流出させる作動液流出部を、比較的簡単な構造で設けることができる。
【0021】
上記4)の冷却構造によれば、組電池が発火した際に作動液流出部から流出した消火性作動液が下方に流れ、効果的に消火することが可能になる。
【0022】
しかも、平板状ヒートパイプの基板の上方突出部に放熱部が設けられているので、以下に述べるように単電池を効率良く冷却することが可能になる。すなわち、単電池を冷却する際には、単電池から発せられる熱によって、平板状ヒートパイプにおける単電池に熱的に接触している部分が加熱され、この熱がヒートパイプ部の作動液封入部内の作動液に伝わって作動液が蒸発する。一方、放熱部の近傍においては、放熱部に熱的に接触している冷却源によって、基板における放熱部に近い部分から熱が奪われ、放熱部に近い上部において作動液封入部内の気相の作動液が凝縮し、作動液封入部内の気相作動液が凝縮した部分の圧力が低下する。そして、作動液封入部内で発生した気相作動液が、作動液封入部内における圧力が低下した部分に流れるとともに、再凝縮した液相作動液が、重力により下方に流れるので、ヒートパイプ部において、気相作動液の上方への流れと液相作動液の下方への流れとが発生し、作動液の循環が起きる。ヒートパイプ部の作動液封入部内で気相作動液が凝縮した液相作動液は、液相作動液が蒸発した部分に流れるまでの間においても、単電池から熱を奪って蒸発する。したがって、単電池における平板状ヒートパイプに熱的に接触している部分の全体が均等に冷却される。
【0023】
上記5)の冷却構造によれば、複数の平板状ヒートパイプの基板の放熱部に跨って冷却源を熱的に接触させることが可能になり、冷却源の数を低減することが可能になる。
【0024】
上記6)の冷却構造によれば、平板状ヒートパイプにおける基板の鉛直状本体部分の下部に単電池の下端部よりも下方に突出した下方突出部が設けられ、下方突出部に、加熱源に熱的に接触させられる受熱部が設けられており、組電池を加熱する機能を有しているので、以下に述べるように、寒冷地においては使用開始前に単電池を短時間で適正温度に加熱することが可能になる。すなわち、寒冷地において、使用開始前に単電池を加熱する際には、加熱源から平板状ヒートパイプの基板の受熱部に熱を供給する。供給された熱は、基板における受熱部に近い部分に伝わるとともに、ヒートパイプ部の作動液封入部内の作動液に伝わって作動液が蒸発する。一方、単電池に熱的に接触している部分においては、単電池によって基板から熱が奪われて単電池が加熱され、作動液封入部内の気相の作動液が凝縮し、作動液封入部内の気相作動液が凝縮した部分の圧力が低下する。そして、作動液封入部内で発生した気相作動液が、作動液封入部内における圧力が低下した部分に流れるとともに、再凝縮した液相作動液が、重力により下方に流れるので、ヒートパイプ部において、気相作動液の上方への流れと液相作動液の下方への流れとが発生し、作動液の循環が起きる。したがって、単電池における平板状ヒートパイプに熱的に接触している部分の全体が均等に加熱され、単電池の全体が短時間で適正温度に加熱される。
【0025】
上記7)の冷却構造によれば、複数の平板状ヒートパイプの基板の受熱部に跨って加熱源を熱的に接触させることが可能なり、冷却源および加熱源の数を低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】この発明による組電池の冷却構造の全体構成を示す一部切り欠き正面図である。
図2図1に示す冷却構造の一部を示す分解斜視図である。
図3図1の冷却構造に用いられる平板状ヒートパイプの一部分を示す基板と直交する方向から見た図である。
図4図1の冷却構造に用いられる平板状ヒートパイプの第1の変形例を示す図である。
図5図1の冷却構造に用いられる平板状ヒートパイプの第2の変形例を示す図である。
図6図1の冷却構造に用いられる平板状ヒートパイプの第3の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、図1の左右を左右というものとする。
【0028】
また、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0029】
図1はこの発明による組電池の冷却構造の全体構成を示し、図2はその一部の構成を示す。また、図3図1の冷却構造に用いられる平板状ヒートパイプの一部分を示す。
【0030】
図1および図2において、組電池の冷却構造は、リチウムイオン二次電池からなる複数の扁平直方体状単電池(1)と複数の平板状ヒートパイプ(2)とが、単電池(1)および平板状ヒートパイプ(2)が鉛直状となり、かつ平板状ヒートパイプ(2)が隣り合う単電池(1)どうしの間および左端の単電池(1)の左側(外側)に位置するように積層状に配置されたものである。単電池(1)と平板状ヒートパイプ(2)とは熱的に接触させられている。図示は省略したが、単電池(1)と平板状ヒートパイプ(2)との間には電気絶縁フィルムが介在させられるか、あるいは平板状ヒートパイプ(2)の左右両面に電気絶縁コーティングが施されることによって、単電池(1)と平板状ヒートパイプ(2)との間が電気絶縁状態となっていることが好ましい。
【0031】
なお、この明細書において、「直方体」という用語には、数学的に定義される厳密な直方体だけではなく、直方体に近似した形状も含むものとする。また、単電池(1)は扁平直方体状に限らず、扁平状であればよい。
【0032】
単電池(1)の上端に1対の端子(3)が上方突出状に設けられており、図示は省略したが、端子(3)を利用して全ての単電池(1)が直列状または並列状に接続されることにより組電池(4)が構成されている。
【0033】
平板状ヒートパイプ(2)は、互いに接合された2枚のアルミニウム板からなり、かつ1つのヒートパイプ部(6)が設けられた鉛直状本体部分(5a)を有する縦長方形基板(5)を備えている。平板状ヒートパイプ(2)の基板(5)の鉛直状本体部分(5a)の上端は単電池(1)の上端よりも上方に大きく突出しており、ヒートパイプ部(6)の上部も単電池(1)の上端よりも上方に位置している。鉛直状本体部分(5a)の上方突出部を(5b)で示す。平板状ヒートパイプ(2)の基板(5)の鉛直状本体部分(5a)の下端は単電池(1)の下端よりも基板(5)の厚み以上下方に位置している。
【0034】
平板状ヒートパイプ(2)の基板(5)のヒートパイプ部(6)は、基板(5)のいずれか一方のアルミニウム板を外側に膨出させることにより形成された1つの無端状作動液封入回路(7)内に、消火性作動液が封入されることによって形成されている。なお、作動液封入回路(7)は、両アルミニウム板をそれぞれ外方に膨出させることにより形成されていてもよい。消火性作動液としては、パーフルオロケトンを用いることが好ましい。パーフルオロケトンとしては、たとえばNovec(ノベック)649(CF3CF2C(O)CF(CF32、住友スリーエム社製)が用いられる。
【0035】
作動液封入回路(7)は、基板(5)の鉛直状本体部分(5a)全体に形成された縦長方形の格子状となっており、一定の幅および一定の長さを有する垂直直線状および水平直線状の複数の回路形成部(7a)を備えているとともに、基板(5)の上方突出部(5b)まで延びている。少なくともいずれか1つ、ここでは1つの垂直直線状の回路形成部(7a)における基板(5)の上方突出部(5b)に存在する部分の両側に、ヒートパイプ部(6)の作動液封入回路(7)の内圧の異常上昇時に破損して消火性作動液を流出させる作動液流出部(8)が設けられている。作動液流出部(8)は、回路形成部(7a)の幅方向の両側にそれぞれ回路形成部(7a)の幅方向に突出するように設けられており、図3に示すように、回路形成部(7a)の同一膨出高さを有するとともに内部が回路形成部(7a)と通じるように外方に膨出し、かつ平板状ヒートパイプ(2)の基板(5)と直交する方向から見て先細り状となった山形の突出部からなる。作動液流出部(8)となる山形突出部は、上下2つの傾斜辺(8a)を有しており、各傾斜辺(8a)は、平板状ヒートパイプ(2)の基板(5)と直交する方向から見て突出端側に向かって他の傾斜辺(8a)側に傾斜し、かつ互いに鋭角をなしている。
【0036】
平板状ヒートパイプ(2)の基板(5)は、たとえば2枚のアルミニウム板の合わせ面のうちの少なくともいずれか一方の面に圧着防止剤を所要パターンに印刷し、この状態で2枚のアルミニウム板を圧着して合わせ板をつくり、合わせ板の非圧着部に流体圧を導入することによって作動液封入回路(7)を一挙に形成する、所謂ロールボンド方によって製造される。合せ板の非圧着部は、作動液封入回路(7)に対応する形状の作動液封入回路(7)用非圧着部と、作動液封入回路(7)用非圧着部から合せ板の周縁に至る流体圧導入用非圧着部とからなる。流体圧導入用非圧着部から流体圧を導入して作動液封入回路(7)を形成すると、流体圧導入用非圧着部は、一端が作動液封入回路(7)に連なるとともに他端が合せ板の周縁に開口した作動液注入部となる。作動液注入部は作動液の注入後封止される。
【0037】
なお、基板(5)は、少なくとも1枚のアルミニウム板が作動液封入回路(7)を形成するための外方膨出部を有する2枚のアルミニウム板を、たとえばろう付することにより形成してもよい。
【0038】
平板状ヒートパイプ(2)の基板(5)における鉛直状本体部分(5a)の上端に、基板(5)が鉛直状本体部分(5a)に対して左右いずれか一方、ここでは右方に直角をなすように曲げられることによって、鉛直状本体部分(5a)と直角をなす水平状放熱部(9)が設けられ、同じく鉛直状本体部分(5a)の下端に、基板(5)が鉛直状本体部分(5a)に対して左右いずれか一方、ここでは右方に直角をなすように曲げられることによって、鉛直状本体部分(5a)と直角をなしかつ単電池(1)の下方に位置する水平状受熱部(10)が設けられている。すべての放熱部(9)は同一水平面内に位置しており、複数、ここではすべての放熱部(9)に跨って1つの冷却源(11)が熱的に接触させられている。図示の例では、冷却源(11)は、放熱部(9)に熱的に接触させられる放熱基板(11a)と、放熱基板(11a)の片面に間隔をおいて並列状に一体に形成された複数のフィン(11b)とからなる。また、冷却源(11)としては、内部に低温流体が流される流体冷却式クーラなどが用いられてもよい。また、すべての受熱部(10)は同一水平面内に位置しており、複数、ここではすべての受熱部(10)に跨って1つの加熱源(12)が熱的に接触させられている。加熱源(12)としては、内部に高温流体が流される流体加熱式ヒータや、電気ヒータなどが用いられる。なお、図2に鎖線で示すように、放熱部(9)および受熱部(10)は、基板(5)が鉛直状本体部分(5a)に対して左方に直角をなすように曲げられることによって設けられていてもよい。
【0039】
上述した冷却構造において、単電池(1)を冷却する際には、単電池(1)から発せられる熱によって、平板状ヒートパイプ(2)の基板(5)の鉛直状本体部分(5a)における単電池(1)に熱的に接触している部分が加熱され、この熱がヒートパイプ部(6)の作動液封入回路(7)内の消火性作動液に伝わって消火性作動液が蒸発する。一方、平板状ヒートパイプ(2)の基板(5)の放熱部(9)に熱的に接触している冷却源(11)によって、基板(5)の鉛直状本体部分(5a)における放熱部(9)に近い部分から熱が奪われ、放熱部(9)に近い上部において消火性作動液封入回路(7)内の気相の消火性作動液が凝縮し、消火性作動液封入回路(7)の上部内の圧力が低下する。そして、消火性作動液封入回路(7)内で発生した気相の消火性作動液が、消火性作動液封入回路(7)内における気相消火性作動液が凝縮して圧力が低下した上部に流れるとともに、再凝縮した液相消火性作動液が、重力により下方に流れるので、ヒートパイプ部(6)において、気相消火性作動液の上方への流れと液相消火性作動液の下方への流れが発生し、消火性作動液の循環がおきる。ヒートパイプ部(6)の消火性作動液封入回路(7)の上部内で凝縮した液相の消火性作動液は、ヒートパイプ部(6)の下部に戻るまでの間においても、平板状ヒートパイプ(2)の基板(5)の鉛直状本体部分(5a)における単電池(1)に熱的に接触している部分の消火性作動液封入回路(7)内で単電池(1)から熱を奪って蒸発する。したがって、単電池(1)における平板状ヒートパイプ(2)に熱的に接触している部分の全体が均等に冷却される。
【0040】
仮に、リチウムイオン二次電池からなる単電池(1)が、内部ショートや過充電などに起因して熱暴走し、単電池(1)の温度が異常に上昇して発火すると、ヒートパイプ部(6)の作動液封入回路(7)内の消火性作動液がドライアウトして内圧が上昇する。その結果、作動液流出部(8)が先端から破損して消火性作動液が流出し、発火が消される。
【0041】
寒冷地において、使用開始前に単電池(1)を加熱する際には、加熱源(12)から平板状ヒートパイプ(2)の基板(5)の受熱部(10)に熱を供給する。受熱部(10)に供給された熱は、基板(5)の鉛直状本体部分(5a)における受熱部(10)に近い部分に伝わるとともに、ヒートパイプ部(6)の消火性作動液封入回路(7)内の消火性作動液に伝わって消火性作動液が蒸発する。一方、単電池(1)の温度は低いので、単電池(1)に熱的に接触している部分においては、単電池(1)によって基板(5)から熱が奪われて単電池(1)が加熱され、消火性作動液封入回路(7)内の気相の消火性作動液が凝縮し、消火性作動液封入回路(7)内の気相消火性作動液が凝縮した部分の圧力が低下する。そして、消火性作動液封入回路(7)内で発生した気相消火性作動液が、消火性作動液封入回路(7)内における圧力が低下した部分に流れるとともに、再凝縮した液相消火性作動液が、重力により下方に流れるので、ヒートパイプ部(6)において、気相消火性作動液の上方への流れと液相消火性作動液の下方への流れとが発生し、消火性作動液の循環が起きるとともに蒸発凝縮の潜熱変化が起こる。したがって、単電池(1)における平板状ヒートパイプ(2)に熱的に接触している部分の全体が均等に加熱され、単電池(1)の全体が短時間で適正温度に加熱される。
【0042】
上記実施形態において、図1に鎖線で示すように、組電池(4)の単電池(1)および平板状ヒートパイプ(2)が、たとえばアルミニウムなどの高熱伝導性材料からなる1つの外装ケーシング(13)内に収納されて用いられることがある。この場合、平板状ヒートパイプ(2)の放熱部(9)が外装ケーシング(13)の頂壁内面に熱的に接触させられ、同じく受熱部(10)が外装ケーシング(13)の底壁内面に熱的に接触させられる。
【0043】
図4図6は上述した実施形態1の冷却構造に用いられる平板状ヒートパイプの変形例を示す。
【0044】
図4に示す平板状ヒートパイプ(15)の場合、上記実施形態の平板状ヒートパイプ(2)と同様な構成を有する基板(5)の鉛直状本体部分(5a)の長さ方向の上端側でかつ幅方向の両側部分が切除されることによって、基板(5)の鉛直状本体部分(5a)の幅方向の中央部に、基板(5)の幅方向に一定の幅を有しかつ長手方向外側に突出した上方突出部(16)が設けられている。上方突出部(16)は、単電池(1)の上端よりも上方に突出している。なお、放熱部(9)は上方突出部(16)の上端に設けられている。
【0045】
基板(5)の鉛直状本体部分(5a)に設けられたヒートパイプ部(17)の作動液封入回路(18)は、突出部(16)を含んで基板(5)の全体に形成された異形の格子状となっており、一定の幅および一定の長さを有する垂直直線状および水平直線状の複数の回路形成部(18a)を備えているとともに、基板(5)の上方突出部(16)まで延びている。少なくともいずれか1つ、ここでは1つの垂直直線状の回路形成部(18a)における基板(5)の上方突出部(16)に存在する部分の幅方向両側に、ヒートパイプ部(17)の作動液封入回路(18)の内圧の異常上昇時に破損して消火性作動液を流出させる作動液流出部(8)が設けられている。
【0046】
図5に示す平板状ヒートパイプ(20)の場合、上記実施形態の平板状ヒートパイプ(2)と同様な構成を有する基板(5)の鉛直状本体部分(5a)の長さ方向の上端側でかつ幅方向の中央部分が切除されることによって、基板(5)の鉛直状本体部分(5a)の幅方向の両側部分に、基板(5)の幅方向に一定の幅を有しかつ長手方向外側に突出した2つの上方突出部(21)が間隔をおいて設けられている。上方突出部(21)は、単電池(1)の上端よりも上方に突出している。なお、放熱部(9)は各上方突出部(21)の上端に設けられている。
【0047】
基板(5)の鉛直状本体部分(5a)に設けられたヒートパイプ部(22)の作動液封入回路(23)は、両突出部(21)を含んで基板(5)の全体に形成された異形の格子状となっており、一定の幅および一定の長さを有する垂直直線状および水平直線状の複数の回路形成部(23a)を備えているとともに、基板(5)の上方突出部(21)まで延びている。少なくともいずれか1つ、ここでは1つの垂直直線状の回路形成部(23a)における基板(5)の上方突出部(21)に存在する部分の幅方向両側に、ヒートパイプ部(22)の作動液封入回路(23)の内圧の異常上昇時に破損して消火性作動液を流出させる作動液流出部(8)が設けられている。
【0048】
図4および図5に示す平板状ヒートパイプ(15)(20)は、単電池(1)の1対の端子(3)を利用して、全ての単電池(1)を直列状または並列状に接続するの際に好ましい形態である。
【0049】
図6に示す平板状ヒートパイプ(30)の場合、基板(5)の鉛直状本体部分(5a)に設けられたヒートパイプ部(31)の作動液封入回路(32)は、基板(5)の中央部に位置する縦長方形の格子部(33)と、格子部(33)から放射状に外側にのびた複数の直線部(34)と、複数の直線部(34)の先端どうしを連結する縦長方形額縁状の連結部(35)とよりなる。したがって、作動液封入回路(32)は、一定の幅および一定の長さを有する垂直直線状、水平直線状および傾斜直線状の複数の回路形成部(32a)を備えているとともに、基板(5)の上方突出部(5b)まで延びている。少なくともいずれか1つ、ここでは上端の水平直線状の回路形成部(32a)における基板(5)の上方突出部(5b)に存在する部分に、ヒートパイプ部(31)の作動液封入回路(32)の内圧の異常上昇時に破損して消火性作動液を流出させる作動液流出部(8)が設けられている。作動液流出部(8)は、回路形成部(32a)の幅方向の下側に回路形成部(32a)の幅方向に突出するように設けられている。
【産業上の利用可能性】
【0050】
この発明による組電池の冷却構造は、たとえば複数のLi二次電池からなる組電池を備えたハイブリッドカーに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0051】
(1):単電池
(2)(15)(20)(30):平板状ヒートパイプ
(4):組電池
(5):基板
(5a):本体部分
(6)(17)(22)(31):ヒートパイプ部
(7)(18)(23)(32):作動液封入回路
(7a)(18a)(23a)(32a):回路形成部
(8):作動液流出部
(9):放熱部
(10):受熱部
(11):冷却源
(12):加熱源
図1
図2
図3
図4
図5
図6