(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043578
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】組電池の冷却構造
(51)【国際特許分類】
H01M 10/613 20140101AFI20161206BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20161206BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20161206BHJP
H01M 10/6552 20140101ALI20161206BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20161206BHJP
H01M 10/6567 20140101ALI20161206BHJP
H01M 2/10 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/6552
H01M10/6556
H01M10/6567
H01M2/10 E
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-227899(P2012-227899)
(22)【出願日】2012年10月15日
(65)【公開番号】特開2014-82047(P2014-82047A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 広仲
(72)【発明者】
【氏名】多賀 和夫
【審査官】
猪瀬 隆広
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−257843(JP,A)
【文献】
特開2011−029103(JP,A)
【文献】
特開2005−283093(JP,A)
【文献】
特開2009−092357(JP,A)
【文献】
特開2001−297741(JP,A)
【文献】
特開2012−174971(JP,A)
【文献】
特開2011−183862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M2/10,
H01M10/60−10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直状に配置される複数の扁平状単電池と、ヒートパイプ部が設けられた基板を有する複数の平板状ヒートパイプと、単電池および平板状ヒートパイプを収容する外装ケースと、外装ケースの上壁外面に取り付けられた冷却装置とを備えており、平板状ヒートパイプの基板が、単電池の少なくとも片面に熱的に接触させられた状態で単電池とともに積層状に配置される鉛直状受熱部と、受熱部に連なって単電池よりも上方に突出するように設けられかつ受熱部と直角をなす水平状放熱部とを有し、ヒートパイプ部が、中空状作動液封入部内に作動液が封入されることにより基板の受熱部から放熱部にかけて設けられ、基板の放熱部が外装ケースの上壁内面に沿わされた状態で固定され、冷却装置が、外装ケースの上壁外面に、複数の平板状ヒートパイプの基板の放熱部に跨るように取り付けられており、平板状ヒートパイプの基板が互いに接合された2枚の金属板からなり、平板状ヒートパイプの基板のヒートパイプ部の作動液封入部が、基板のいずれか一方の金属板を膨出させることにより形成され、作動液封入部が基板の放熱部の下面側に膨出しているとともに、基板の放熱部の上面が平坦面であり、基板の放熱部の上面が外装ケースの上壁内面に面接触している組電池の冷却構造。
【請求項2】
平板状ヒートパイプの基板の放熱部が、当該放熱部の下側に沿って配置されかつ外装ケースの上壁に着脱自在に取り付けられた押さえ部材により固定されている請求項1記載の組電池の冷却構造。
【請求項3】
平板状ヒートパイプの基板の放熱部および押さえ部材が、長手方向を同方向に向けた長方形状であり、押さえ部材の長手方向の両端部に、放熱部の長手方向両端部よりも外方に突出した突出部が設けられ、当該突出部にめねじ穴が形成され、外装ケースの上壁を上方から貫通したおねじが押さえ部材の突出部のめねじ穴にねじ嵌められている請求項2記載の組電池の冷却構造。
【請求項4】
押さえ部材およびおねじが合成樹脂製である請求項3記載の組電池の冷却装置。
【請求項5】
押さえ部材の上面に、基板の放熱部が入る凹部が形成されており、放熱部が、外装ケースの上壁内面と押さえ部材の凹部の底面とによって挟着されている請求項2〜4のうちのいずれかに記載の組電池の冷却構造。
【請求項6】
冷却装置が液冷式であり、下面が平坦面となっているとともに内部に冷却液流通部を有するケーシングと、ケーシングに接続された冷却液入口パイプおよび冷却液出口パイプとを備えており、ケーシングの下面が外装ケースの上壁外面に密着した状態で上壁に取り付けられている請求項1〜5のうちのいずれかに記載の組電池の冷却構造。
【請求項7】
外装ケースの上壁に、上壁外面に接合された基部、および基部に一体に形成されて上方に偏位し、かつ上壁外面と平行になるとともにめねじ穴が形成された上方偏位部を有する複数のめねじ部材が設けられており、冷却装置の周縁部の下端に外向きフランジが設けられ、当該外向きフランジが、外装ケースの上壁とめねじ部材の上方偏位部との間に嵌め入れられ、めねじ部材のめねじ穴に上方からおねじ部材がねじ嵌められ、冷却装置の外向きフランジが、おねじ部材の先端部により外装ケースの上壁側に押圧されることによって、冷却装置が外装ケースの上壁に着脱自在に取り付けられている請求項6記載の組電池の冷却構造。
【請求項8】
両面に平板状ヒートパイプの基板の受熱部が熱的に接触させられた単電池と、同じく片面のみに受熱部が熱的に接触させられた単電池とが混在している請求項1〜7のうちのいずれかに記載の組電池の冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は組電池の冷却構造に関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、
図2の上下を上下というものとする。
【背景技術】
【0003】
近年、環境問題などから、ハイブリッド自動車、電気自動車等が注目されており、そのために各種の二次電池が開発されている。各種の二次電池の中でもリチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高く、密閉性に優れ、かつメンテナンスフリーであるため、ハイブリッド自動車や電気自動車用のバッテリとして優れているが、大型のものは実用化されていない。そこで、複数個の小型の単電池を直列または並列に接続して組電池の形態とすることにより、所望の電圧や容量を確保している。
【0004】
リチウムイオン二次電池は、使用温度によって性能や寿命が変化するので、長時間にわたって効率良く使用するためには適正な温度で使用する必要があるが、上述したような組電池の形態で用いた場合、各単電池自体から発せられる熱を放熱することが困難であり、各単電池の温度が上昇して寿命が短くなるという問題がある。
【0005】
そこで、上述したような組電池における単電池の温度上昇を抑制することを目的として、複数の扁平状の単電池と、複数の平板状ヒートパイプとが、両者が水平となるように交互に積層状に配置されており、平板状ヒートパイプの周縁部の少なくとも一部に、単電池よりも外方に突出しかつ放熱用ヒートシンクに接触させられる放熱部が設けられている冷却構造が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、最近では、組電池のさらなる冷却効率の向上が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−140714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の目的は、上記要求に応えてなされたものであり、組電池を構成する単電池をさらに効率良く冷却することができる組電池の冷却構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0010】
1)鉛直状に配置される複数の扁平状単電池と、ヒートパイプ部が設けられた基板を有する複数の平板状ヒートパイプと、単電池および平板状ヒートパイプを収容する外装ケースと、外装ケースの上壁外面に取り付けられた冷却装置とを備えており、平板状ヒートパイプの基板が、単電池の少なくとも片面に熱的に接触させられた状態で単電池とともに積層状に配置される鉛直状受熱部と、受熱部に連なって単電池よりも上方に突出するように設けられかつ受熱部と直角をなす水平状放熱部とを有し、ヒートパイプ部が、中空状作動液封入部内に作動液が封入されることにより基板の受熱部から放熱部にかけて設けられ、基板の放熱部が外装ケースの上壁内面に沿わされた状態で固定され、冷却装置が、外装ケースの上壁外面に、複数の平板状ヒートパイプの基板の放熱部に跨るように取り付けられて
おり、平板状ヒートパイプの基板が互いに接合された2枚の金属板からなり、平板状ヒートパイプの基板のヒートパイプ部の作動液封入部が、基板のいずれか一方の金属板を膨出させることにより形成され、作動液封入部が基板の放熱部の下面側に膨出しているとともに、基板の放熱部の上面が平坦面であり、基板の放熱部の上面が外装ケースの上壁内面に面接触している組電池の冷却構造。
【0011】
2)平板状ヒートパイプの基板の放熱部が、当該放熱部の下側に沿って配置されかつ外装ケースの上壁に着脱自在に取り付けられた押さえ部材により固定されている上記1)記載の組電池の冷却構造。
【0012】
3)平板状ヒートパイプの基板の放熱部および押さえ部材が、長手方向を同方向に向けた長方形状であり、押さえ部材の長手方向の両端部に、放熱部の長手方向両端部よりも外方に突出した突出部が設けられ、当該突出部にめねじ穴が形成され、外装ケースの上壁を上方から貫通したおねじが押さえ部材の突出部のめねじ穴にねじ嵌められている上記2)記載の組電池の冷却構造。
【0013】
4)押さえ部材およびおねじが合成樹脂製である上記3)記載の組電池の冷却装置。
【0014】
5)
押さえ部材の上面に、基板の放熱部が入る凹部が形成されており、放熱部が、外装ケースの上壁内面と押さえ部材の凹部の底面とによって挟着されている上記2)〜4)のうちのいずれかに記載の組電池の冷却構造。
【0015】
6)冷却装置が液冷式であり、下面が平坦面となっているとともに内部に冷却液流通部を有するケーシングと、ケーシングに接続された冷却液入口パイプおよび冷却液出口パイプとを備えており、ケーシングの下面が外装ケースの上壁外面に密着した状態で上壁に取り付けられている上記1)〜5)のうちのいずれかに記載の組電池の冷却構造。
【0016】
7)外装ケースの上壁に、上壁外面に接合された基部、および基部に一体に形成されて上方に偏位し、かつ上壁外面と平行になるとともにめねじ穴が形成された上方偏位部を有する複数のめねじ部材が設けられており、冷却装置の周縁部の下端に外向きフランジが設けられ、当該外向きフランジが、外装ケースの上壁とめねじ部材の上方偏位部との間に嵌め入れられ、めねじ部材のめねじ穴に上方からおねじ部材がねじ嵌められ、冷却装置の外向きフランジが、おねじ部材の先端部により外装ケースの上壁側に押圧されることによって、冷却装置が外装ケースの上壁に着脱自在に取り付けられている上記6)記載の組電池の冷却構造。
【0017】
8)両面に平板状ヒートパイプの基板の受熱部が熱的に接触させられた単電池と、同じく片面のみに受熱部が熱的に接触させられた単電池とが混在している上記1)〜7)のうちのいずれかに記載の組電池の冷却構造。
【発明の効果】
【0018】
上記1)〜8)の冷却構造によれば、鉛直状に配置される複数の扁平状単電池と、ヒートパイプ部が設けられた基板を有する複数の平板状ヒートパイプと、単電池および平板状ヒートパイプを収容する外装ケースと、外装ケースの上壁外面に取り付けられた冷却装置とを備えており、平板状ヒートパイプの基板が、単電池の少なくとも片面に熱的に接触させられた状態で単電池とともに積層状に配置される鉛直状受熱部と、受熱部に連なって単電池よりも上方に突出するように設けられかつ受熱部と直角をなす水平状放熱部とを有し、ヒートパイプ部が、中空状作動液封入部内に作動液が封入されることにより基板の受熱部から放熱部にかけて設けられ、基板の放熱部が外装ケースの上壁内面に沿わされた状態で固定され、冷却装置が、外装ケースの上壁外面に、複数の平板状ヒートパイプの基板の放熱部に跨るように取り付けられているので、以下に述べるように単電池を効率良く冷却することが可能になる。
【0019】
すなわち、単電池から発せられる熱によって、平板状ヒートパイプの基板における単電池に熱的に接触している受熱部が加熱され、この熱がヒートパイプ部の受熱部の作動液封入部内の作動液に伝わって作動液が蒸発する。一方、放熱部においては、外装ケースの上壁外面に取り付けられている冷却装置により上壁を通して熱が奪われ、作動液封入部内の気相の作動液が凝縮し、作動液封入部内の圧力が低下する。そして、受熱部の作動液封入部で発生した気相作動液が、圧力が低下した放熱部の作動液封入部に流れるとともに、再凝縮した液相作動液が、受熱部の作動液封入部に流れるので、ヒートパイプ部において、気相作動液の流れと液相作動液の流れとが発生し、作動液の循環が起きる。放熱部の作動液封入部内で再凝縮した液相作動液は、受熱部の作動液封入部に流れるまでの間においても、単電池から熱を奪って蒸発する。したがって、単電池における平板状ヒートパイプの基板の受熱部に熱的に接触している部分の全体が均等に冷却される。
【0020】
上記2)の冷却構造によれば、単電池および平板状ヒートパイプを交換する必要が生じた場合にも、平板状ヒートパイプを外装ケースの上壁から取り外すことが可能になる。
【0021】
上記3)の冷却構造によれば、平板状ヒートパイプの基板の放熱部を外装ケースの上壁内面に固定する作業、および上壁内面から取り外す作業を、比較的簡単に行うことができる。
【0022】
上記4)の冷却構造によれば、単電池と外部との間の電気絶縁性が向上する。
【0023】
上記5)の冷却構造によれば、押さえ部材により放熱部を固定する際に、作動液封入部の潰れを防止することができる。
【0024】
上記6)の冷却構造によれば、平板状ヒートパイプの基板の放熱部の冷却を効果的に行うことができ、その結果単電池を効率良く冷却することができる。
【0025】
上記7)の冷却構造によれば、冷却装置を外装ケースの上壁外面に取り付ける作業、および上壁外面から取り外す作業を、比較的簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】この発明による組電池の冷却構造の全体構成を示す平面図である。
【
図3】
図1の冷却構造における平板状ヒートパイプの基板の放熱部を外装ケースの上壁内面に固定する構造を示す分解斜視図である。
【
図5】
図1の冷却構造における冷却装置を外装ケースの上壁外面に取り付ける構造を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、
図1および
図2の左右を左右というものとする。
【0028】
また、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0029】
図1および
図2はこの発明による組電池の冷却構造の全体構成を示し、
図3〜
図5はその要部の構成を示す。
【0030】
図1および
図2において、組電池の冷却構造は、リチウムイオン二次電池からなる複数の単電池(1)と、ヒートパイプ部(4)が設けられた基板(3)を有する複数の平板状ヒートパイプ(2)と、たとえばステンレス鋼により形成されかつ単電池(1)および平板状ヒートパイプ(2)を収容する密閉箱状の外装ケース(5)と、外装ケース(5)の上壁(5a)外面に取り付けられた複数の冷却装置(6)とを備えている。
【0031】
単電池(1)は扁平直方体状であり、外装ケース(5)内に、左右方向に積層状に並ぶように配置されている。図示は省略したが、単電池(1)の上端に1対の端子が上方突出状に設けられており、当該端子を利用して全ての単電池(1)が直列状または並列状に接続されることにより組電池(7)が構成されている。
【0032】
なお、この明細書において、「直方体」という用語には、数学的に定義される厳密な直方体だけではなく、直方体に近似した形状も含むものとする。また、単電池(1)は扁平直方体状に限らず、扁平状であればよい。
【0033】
図1〜
図3に示すように、平板状ヒートパイプ(2)の基板(3)は互いに接合された2枚のアルミニウム板からなり、隣り合う単電池(1)間およびいずれか一端、ここでは左端の単電池(1)の左側に配置されて単電池(1)に熱的に接触している鉛直状受熱部(8)と、受熱部(8)の上端部に単電池(1)よりも上方に突出するように設けられかつ受熱部(8)と直角をなして一方、ここでは右方にのびる水平状放熱部(9)とを備えている。受熱部(8)の上端における幅方向(
図1の上下方向)の中央部には、鉛直状の幅狭部(11)が単電池(1)よりも上方に突出するように設けられており、幅狭部(11)の上端に連なって放熱部(9)が設けられている。図示は省略したが、単電池(1)と平板状ヒートパイプ(2)の受熱部(8)との間には電気絶縁フィルムが介在させられるか、あるいは平板状ヒートパイプ(2)の受熱部(8)の左右両面に電気絶縁コーティングが施されることによって、単電池(1)と平板状ヒートパイプ(2)の受熱部(8)との間が電気絶縁状態となっていることが好ましい。
【0034】
平板状ヒートパイプ(2)の基板(3)のヒートパイプ部(4)は、基板(3)のいずれか一方のアルミニウム板を外側に膨出させることにより形成された1つの中空無端状作動液封入部(12)内に作動液が封入されたものであり、基板(3)の受熱部(8)から幅狭部(11)を経て放熱部(9)にかけて設けられている。ここでは、作動液封入部(12)は、放熱部(9)の下面側のみに膨出するように形成されており、放熱部(9)の上面は平坦面となっている。
【0035】
平板状ヒートパイプ(2)の基板(3)は、たとえば2枚のアルミニウム板の合わせ面のうちの少なくともいずれか一方の面に圧着防止剤を所要パターンに印刷し、この状態で2枚のアルミニウム板を圧着して合わせ板をつくり、合わせ板の非圧着部に流体圧を導入することによって作動液封入部(12)を一挙に形成する、所謂ロールボンド方によって製造される。合せ板の非圧着部は、作動液封入部(12)に対応する形状の作動液封入部用非圧着部と、作動液封入部用非圧着部から合せ板の周縁に至る流体圧導入用非圧着部とからなる。流体圧導入用非圧着部から流体圧を導入して作動液封入部(12)を形成すると、流体圧導入用非圧着部は、一端が作動液封入部(12)に連なるとともに他端が合せ板の周縁に開口した作動液注入部となる。作動液注入部は作動液の注入後封止される。
【0036】
なお、基板(3)は、少なくとも1枚のアルミニウム板が作動液封入部(12)を形成するための外方膨出部を有する2枚のアルミニウム板を、たとえばろう付することにより形成してもよい。
【0037】
図3および
図4に示すように、平板状ヒートパイプ(2)の基板(3)の放熱部(9)は、上面が外装ケース(5)の上壁(5a)内面に面接触した状態で、放熱部(9)の下側に沿って配置されかつ外装ケース(5)の上壁(5a)に着脱自在に取り付けられた合成樹脂製押さえ部材(13)により固定されている。平板状ヒートパイプ(2)の基板(3)の放熱部(9)および押さえ部材(13)は、それぞれ長手方向を
図1の上下方向に向けた長方形状である。押さえ部材(13)の長手方向の両端部に、放熱部(9)の長手方向両端部よりも外方に突出した突出部(13a)が設けられるとともに、突出部(13a)にめねじ穴(14)が形成されており、外装ケース(5)の上壁(5a)に形成された貫通穴(15)に上方から通された合成樹脂製おねじ(16)が、押さえ部材(13)の突出部(13a)のめねじ穴(14)にねじ嵌められることによって、放熱部(9)が押さえ部材(13)により外装ケース(5)の上壁(5a)内面に着脱自在に取り付けられている。上壁(5a)上面における貫通穴(15)の周囲の部分とおねじ(16)の頭部との間には、パッキン(17)およびステンレス鋼製ワッシャ(18)が、前者が上壁(5a)側に位置するように配置されている。押さえ部材(13)の上面に、基板(3)の放熱部(9)が入る凹部(19)が形成されている。そして、基板(3)の放熱部(9)の上面が上壁(5a)内面に面接触するとともに、作動液封入部(12)の膨出頂面が凹部(19)の底面に面接触しており、放熱部(9)が、外装ケース(5)の上壁(5a)内面と押さえ部材(13)の凹部(19)の底面とによって挟着されている。
【0038】
図4および
図5に示すように、冷却装置(6)は液冷式であり、下面が平坦面となっているとともに内部に左右方向にのびる冷却液流通部(22)を有し、かつ下端に外向きフランジ(25)が設けられているケーシング(21)と、ケーシング(21)の一端部に接続されて冷却液流通部(22)に冷却液を供給する冷却液入口パイプ(23)と、ケーシング(21)の他端部に接続されて冷却液流通部(22)から冷却液を排出する冷却液出口パイプ(24)とを備えている。
【0039】
冷却装置(6)の冷却液流通部(22)内には、左右方向にのびる波頂部、左右方向にのびる波底部、および左右方向にのびかつ波頂部と波底部とを連結する連結部よりなるコルゲート状のアルミニウム製インナーフィン(33)が配置されている。冷却液入口パイプ(23)および冷却液出口パイプ(24)のケーシング(21)側端部は扁平状に変形させられており、その先端開口が閉鎖されるとともに下壁部分に貫通穴(図示略)が形成されている。そして、冷却装置(6)のケーシング(21)の頂壁に開口(図示略)が形成され、両パイプ(23)(24)の扁平部の下壁部分における前記貫通穴の周囲の部分が、ケーシング(21)の頂壁における前記開口の周囲の部分にろう付などにより金属接合されている。
【0040】
冷却装置(6)は、外装ケース(5)の上壁(5a)外面に、ケーシング(21)の下面が外装ケース(5)の上壁(5a)外面に密着した状態で、左右方向に並んだ複数の平板状ヒートパイプ(2)の基板(3)の放熱部(9)に跨るように取り付けられている。ここでは、冷却装置(6)は、全平板状ヒートパイプ(2)の基板(3)の放熱部(9)のうち一部の複数の放熱部(9)に跨るように配置されており、隣り合うものどうしが互いに干渉しないように、
図1の上下方向にずれた状態で外装ケース(5)の上壁(5a)外面に、次のようにして取り付けられている。
【0041】
すなわち、外装ケース(5)の上壁(5a)に、上壁(5a)外面に接合された基部(27)、および基部(27)に一体に形成されて上方に偏位し、かつ上壁(5a)外面と平行になるとともにめねじ穴(29)が形成された上方偏位部(28)を有する複数のステンレス鋼製めねじ部材(26)が設けられている。そして、冷却装置(6)のケーシング(21)下端の外向きフランジ(25)が、外装ケース(5)の上壁(5a)とめねじ部材(26)の上方偏位部(28)との間に嵌め入れられ、上方偏位部(28)のめねじ穴(29)に上方からステンレス鋼製おねじ部材(31)がねじ嵌められており、外向きフランジ(25)が、おねじ部材(31)の先端部によってステンレス鋼製押圧板(32)を介して外装ケース(5)の上壁(5a)側に押圧されることにより、冷却装置(6)が外装ケース(5)の上壁(5a)外面に着脱自在に取り付けられている。
【0042】
上述した冷却構造において、単電池(1)を冷却する際には、単電池(1)から発せられる熱によって、平板状ヒートパイプ(2)の基板(3)における単電池(1)に熱的に接触している受熱部(8)が加熱され、この熱がヒートパイプ部(4)の受熱部(8)の作動液封入部(12)内の作動液に伝わって作動液が蒸発する。一方、冷却液を冷却液入口パイプ(23)から供給するとともに冷却液出口パイプ(24)から排出して、冷却装置(6)のケーシング(21)の冷却液通部(22)内に冷却液が流されることにより、外装ケース(5)の上壁(5a)を介して冷却装置(6)に熱的に接触している平板状ヒートパイプ(2)の基板(3)の放熱部(9)から熱が奪われ、放熱部(9)において作動液封入部(12)内の気相の作動液が凝縮し、作動液封入部(12)内の圧力が低下する。そして、受熱部(8)の作動液封入部(12)で発生した気相作動液が、圧力が低下した放熱部(9)の作動液封入部(12)に流れるとともに、再凝縮した液相作動液が、重力により受熱部(8)の作動液封入部(12)に流れるので、ヒートパイプ部(4)において、気相作動液の上方への流れと液相作動液の下方への流れが発生し、作動液の循環がおきる。ヒートパイプ部(4)の放熱部(9)の作動液封入部(12)で凝縮した液相作動液は、受熱部(8)の作動液封入部(12)に戻るまでの間においても、平板状ヒートパイプ(2)の基板(3)の鉛直状本体部分(5a)における単電池(1)に熱的に接触している部分の作動液封入部(12)内で単電池(1)から熱を奪って蒸発する。したがって、単電池(1)における平板状ヒートパイプ(2)に熱的に接触している部分の全体が均等に冷却される。
【産業上の利用可能性】
【0043】
この発明による組電池の冷却構造は、たとえば複数のLi二次電池からなる組電池を備えたハイブリッドカーに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0044】
(1):単電池
(2):平板状ヒートパイプ(2)
(3):基板
(4):ヒートパイプ部
(5):外装ケース
(5a):上壁
(6):冷却装置
(7):組電池
(8):受熱部
(9):放熱部
(12):作動液封入部
(13):押さえ部材
(13a):突出部
(14):めねじ穴
(16):おねじ
(19):凹部
(21):ケーシング
(22):冷却液流通部
(23):冷却液入口パイプ
(24):冷却液出口パイプ
(25):外向きフランジ
(26):めねじ部材
(27):基部
(28):上方偏位部
(29):めねじ穴
(31):おねじ