【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、ノニオン系単量体単位を必須構成単位とする、架橋されてなる架橋物は、高吸水性作用を有しており、水を吸水した上記架橋物がセメント組成物中に分散することにより水がセメント組成物中に均一に分散することになって、セメントと水の水和がセメント組成物内で均一に生じることを見出して、本発明に想到した。
【0011】
すなわち本発明は、ノニオン系単量体単位を必須構成単位とする、架橋されてなる架橋物を含有することを特徴とするセメント添加剤である。
【0012】
本発明はそして、上記セメント添加剤、セメント及び水を含むセメント組成物でもある。
以下に本発明を詳述する。なお、以下において段落に分けて記載される本発明の好ましい形態の2つ又は3つ以上を組み合わせたものも本発明の好ましい形態である。
【0013】
〔セメント添加剤〕
本発明のセメント添加剤は、ノニオン系単量体単位を必須構成単位とし、架橋されてなる架橋物を含有する。単量体単位として、必須構成単位であるノニオン系単量体単位以外に他の単量体単位を有していてもよい。
【0014】
〔ノニオン系単量体〕
本発明におけるノニオン系単量体としては、N−ビニルラクタム系単量体、ポリアルキレングリコール系単量体が好ましい。以下、N−ビニルラクタム系単量体を必須構成単位とするセメント添加剤、ポリアルキレングリコール系単量体を必須構成単位とするセメント添加剤についてそれぞれ説明する。
なお、N−ビニルラクタム系単量体を必須構成単位とする場合は、後述するように、該N−ビニルラクタム系単量体が単量体成分中に一定以上の割合で含まれるようにすることが好ましく、ポリアルキレングリコール系単量体を必須構成単位とする場合は、該ポリアルキレングリコール系単量体が単量体成分中に一定以上の割合で含まれるようにすることが好ましい。また、N−ビニルラクタム系単量体とポリアルキレングリコール系単量体が混合されてもよい。
【0015】
〔N−ビニルラクタム系単量体を必須構成単位とするセメント添加剤〕
〔N−ビニルラクタム系単量体〕
本発明においてN−ビニルラクタム系単量体とは、N−ビニルラクタム構造を有する単量体であれば制限はなく、例えばN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾリンが例示される。これらN−ビニルラクタム系単量体は、一種類のみを用いてもよく、二種類以上を併用しても良い。N−ビニルラクタム系単量体の中でも、単量体および得られる架橋物の安全性の観点から、N−ビニル−2−ピロリドンが特に好ましい。
【0016】
本発明において使用するN−ビニルラクタム系単量体の製造方法については特に制限はないが、例えば上記N−ビニルラクタム系単量体がN−ビニルピロリドンである場合は、N−ヒドロキシエチルピロリドンを気相脱水反応させる方法が特に好ましい。N−ヒドロキシエチルピロリドンを気相脱水反応させる具体的な方法については、特に制限はなく、例えば、特開平8−141402号公報や特許第2939433号公報で報告された方法を採用すればよい。なお、上記の方法において、N−ヒドロキシエチルピロリドンの前駆体であるγ−ブチロラクトンは、無水マレイン酸から誘導されたものを用いることが好ましい。
しかしながら上記単量体は、2−ピロリドンをアセチレンでビニル化して得られるN−ビニルピロリドン、ブチロラクトンにエタノールアミンを作用させ1−(β−オキシエチル)−2−ピロリドンとし、水酸基を塩化チオニルで塩素に変え、脱水塩として得られるN−ビニルピロリドン、N−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドンと無水酢酸との反応によって得られる酢酸エステル中間体を脱酢酸して得られるN−ビニルピロリドン等であっても良い。
【0017】
上記製造方法によって製造されたN−ビニルラクタム系単量体は、通常、精製工程を経て、重合に使用される。
【0018】
架橋物の製造に使用される単量体は、少なくとも上記N−ビニルラクタム系単量体が含まれていれば特に限定されるものではなく、例えば、N−ビニルラクタム系単量体のみを用いてもよいし、N−ビニルラクタム系単量体と共重合可能なその他の重合性単量体を併用してもよい。なお、N−ビニルラクタム系単量体以外の単量体を共重合させる場合、全単量体100質量%(単量体成分)中のN−ビニルラクタム系単量体の含有量は、特に限定されるものではないが、N−ビニルラクタム系単量体を30質量%以上とすることが好ましく、40〜90質量%とすることがより好ましく、70〜80質量%とすることがさらに好ましい。
なお、ここでいう全単量体100質量%(単量体成分)とは、架橋性単量体を含まず、N−ビニルラクタム系単量体と後述するその他の単量体を含む概念である。
【0019】
〔その他の単量体〕
N−ビニルラクタム系単量体と共重合可能な単量体(その他の単量体)としては、特に限定されることはなく(但し上記架橋性単量体に該当する単量体を除く)、具体的には、例えば、1)アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸あるいはそれらの一価金属、二価金属、アンモニア、有機アミンによる部分中和物や完全中和物等の不飽和モノカルボン酸系単量体;2)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸あるいはそれらの一価金属、二価金属、アンモニア、有機アミンによる部分中和物や完全中和物等の不飽和ジカルボン酸系単量体;3)ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシスルホプロピル(メタ)アクリレート、スルホエチルマレイミド、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸あるいはそれらの一価金属、二価金属、アンモニア、有機アミンによる部分中和物や完全中和物等の不飽和スルホン酸系単量体;4)(メタ)アクリルアミド、ビニルアセトアミド、イソプロピルアクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド等のアミド系単量体;5)(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、2−メチルスチレン、酢酸ビニル等の疎水性単量体;6)2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリルアルコール、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、3−メチル−2−ブテン−1−オール(プレノール)、ポリエチレングリコールモノプレノールエーテル、ポリプロピレングリコールモノプレノールエーテル、2−メチル−3−ブテン−2−オール(イソプレンアルコール)、ポリエチレングリコールモノイソプレンアルコールエーテル、ポリプロピレングリコールモノモノイソプレンアルコールエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノアリルエーテル、ビニルアルコール等の水酸基含有不飽和単量体;7)ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のカチオン性単量体;8)(メタ)アクリロニトリル等のニトリル系単量体;9)(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸、(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸メチルエステル、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸等の含リン単量体;等が挙げられる。これらのうち、N−ビニルラクタム系単量体との共重合性等の点からは、1)又は3)が好適であり、特に3)の不飽和スルホン酸系単量体が特に好適である。これらは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合してN−ビニルラクタム系単量体と共重合させてもよい。
【0020】
全単量体100質量%(単量体成分)中のその他の単量体の含有量は、特に限定されるものではないが、その他の単量体を0質量%以上70質量%以下とすることが好ましく、5質量%以上40質量%以下とすることがより好ましく、10質量%以上30質量%以下とすることがさらに好ましい。
【0021】
その他の単量体としてカルボン酸類、スルホン酸類等の酸性基含有単量体を用いる場合、又は、塩基性基含有単量体を用いる場合、酸性基及び塩基性基が未中和のもの、部分中和されたもの、完全中和されたものの何れでも問題なく使用することができる。
【0022】
〔架橋性単量体〕
本発明においては、特に、1分子あたりに少なくとも2個の重合性二重結合基を有する架橋性単量体をN−ビニルラクタム系単量体と共重合させることが好ましい。適量の架橋性単量体をN−ビニルラクタム系単量体とともに重合させることによって、任意の架橋構造を形成して架橋物を得ることができる。
前記架橋性単量体としては、具体的には、例えば、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、ジビニルケトン、トリビニルベンゼン、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。これらは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
上記架橋性単量体の使用量は、特に限定されるものではなく、使用目的に応じて適宜調整すればよい。例えば、単量体成分100mol%に対して架橋性単量体を0.25mol%以上含有させて共重合させることが望ましい。また、単量体成分100mol%に対して架橋性単量体を0.15mol%以下含有させて共重合させることが望ましい。
【0024】
[架橋物]
本発明のセメント添加剤に含まれる架橋物は、硝酸カルシウム4水和物0.6質量%及び水酸化カリウム0.089質量%を含む水溶液に対する24時間後の吸水倍率が8g/g以上であることが望ましい。
【0025】
また、本発明のセメント添加剤に含まれる架橋物は、N−ビニルラクタム系単量体を30質量%以上含む単量体成分を重合させてなることが望ましい。
ここでいう単量体成分とは、架橋性単量体を含まず、上述したN−ビニルラクタム系単量体とその他の単量体を含む概念である。
そして、N−ビニルラクタム系単量体の割合を求める場合には、N−ビニルラクタム系単量体とその他の単量体の合計を100質量%として、N−ビニルラクタム系単量体の割合を求める。
【0026】
また、架橋物の平均粒子径(平均粒度)は、特に制限がないが10〜1000μmであることが好ましく、さらに好ましくは50〜600μmである。
平均粒子径がこのように小さい範囲であるとセメント組成物中で架橋物が均一に分散しやすいため、発明の効果が発揮されやすくなる。
【0027】
[架橋物の製造方法]
本発明のセメント添加剤に含まれる架橋物の製造方法は重合工程を含むものであるが、その方法は、特に制限されるものではなく、例えば、バルク重合法、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、沈殿重合法等の方法を採用することができる。上記重合反応に溶媒を用いる場合、溶媒としては、好ましくは水が挙げられるが、その他の溶媒、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、ジエチレングリコール等のアルコール類等から選ばれる単独あるいは2種以上を水と混合して用いることもできる。溶剤は使用しなくても構わない。
重合反応に溶剤を使用する場合、溶液中の単量体成分の濃度は25質量%以上80質量%以下であることが好ましい。単量体成分の濃度が25質量%未満では、架橋物が得られにくかったり、得られた場合に重合後のゲルを解砕することが困難となることがある。また、乾燥に長い時間を必要とし、乾燥中に樹脂が劣化してしまうことがある。一方、単量体成分の濃度が80質量%を超えると、重合の制御が困難となり、残存単量体が増加する傾向にある。
【0028】
架橋物の製造にあたっては、架橋剤の存在下にN−ビニルラクタム系単量体を必須とする単量体成分を重合する方法を採用しても良く、重合した後架橋処理する方法等を採用しても良い。
【0029】
上記重合反応を行う際には、例えば反応温度や圧力等の反応条件は、特に制限されるものではない。例えば、反応温度は、20〜150℃、反応系内の圧力は、常圧または減圧とすることが好ましい。
【0030】
N−ビニルラクタム系単量体を主成分とする単量体成分の重合を開始する手段としては、重合開始剤を添加する方法、UVを照射する方法、熱を加える方法、光開始剤存在下に光を照射する方法等を採用することができる。重合した後架橋処理する方法としては、例えば、(i)N−ビニルラクタム系重合体にUVを照射する方法、(ii)N−ビニルラクタム系重合体に熱を加えて自己架橋させる方法、(iii)N−ビニルラクタム系重合体にラジカル発生剤を含有させた後、熱を加えて自己架橋させる方法、(iv)N-ビニルラクタム系重合体にラジカル重合性架橋剤およびラジカル重合開始剤を含有させた後、加熱および/または光照射する方法等が挙げられる。
【0031】
上記重合反応を行う際には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、加熱等によってラジカルが発生するものであれば、特に限定されないが、室温で5質量%以上の濃度で水に均一に溶解する水溶性開始剤が好ましい。具体的には、例えば、過酸化水素、t−ブチルヒドロパーオキシド等の過酸化物;2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロリオンアミジン)2塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(N−アリルアミジノ)プロパン〕2塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン〕2塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕2塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド〕等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類;アスコルビン酸と過酸化水素、スルホキシル酸ナトリウムとt−ブチルヒドロパーオキシド、過硫酸塩と金属塩等の、酸化剤と還元剤とを組み合わせてラジカルを発生させる酸化還元型開始剤;等が挙げられる。これらは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
上記重合開始剤の使用量については、特に限定されないが、全単量体(N−ビニルラクタム系単量体、その他の単量体、架橋性単量体)100質量%に対して0.002〜15質量%が好ましく、0.01〜5質量%がさらに好ましい。上記重合反応を行う際には、重合反応の促進あるいはN−ビニルラクタム系単量体の加水分解を防止する目的で、従来公知の塩基性pH調節剤を使用することもできる。pH調節剤の添加は任意の方法で行うことができ、例えば、重合初期より系内に仕込んでおいてもよいし、重合中に逐次添加してもよい。pH調節剤としては、具体的には、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、これらの中でも特にアンモニアが好ましい。これらは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。pH調節剤を用いる場合、その使用量については特に限定されないが、重合時の溶液が5〜10のpH領域、好ましくは7〜9のpH領域となるように使用するのがよい。
【0033】
上記重合反応を行う際には、重合反応の促進等の目的で、従来公知の遷移金属塩を使用することもできる。遷移金属塩としては、具体的には、銅、鉄、コバルト、ニッケル等のカルボン酸塩や塩化物等が挙げられ、これらは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。遷移金属塩を用いる場合、その使用量については特に限定されないが、重合性単量体成分に対して重量比で0.1〜20000ppbが好ましく、1〜5000ppbがさらに好ましい。上記重合反応を行う際には、上記重合開始剤および必要に応じて前記pH調節剤、上記遷移金属塩の他に、必要に応じて、任意の連鎖移動剤、緩衝剤等を用いることもできる。
【0034】
上記重合反応を行う際には、前述の各仕込み成分の添加方法は特に限定されず、回分式や連続式等の任意の方法で行うことができる。
【0035】
以下、ポリアルキレングリコール系単量体を必須構成単位とするセメント添加剤について説明する。
〔ポリアルキレングリコール系単量体を必須構成単位とするセメント添加剤〕
〔ポリアルキレングリコール系単量体〕
本発明においてポリアルキレングリコール系単量体とは、ポリアルキレングリコール鎖及び重合性基を有する単量体であれば制限はなく、例えば下記一般式(1)で表される単量体が好ましい。
【0036】
【化1】
【0037】
ただし、Rは水素又はメチル基であり、Xは同一又は異なってもよいオキシアルキレン基であり、Yは水素、炭素数1〜5のアルコキシ基、フェノキシ基、又は、炭素数1〜9のアルキル基を1〜3個置換基として有するオキシアルキルフェニル基であり、nは3〜300である。
【0038】
上記オキシアルキレン基としては炭素数2〜4のオキシアルキレン基が望ましい。また、全オキシアルキレン基に対するオキシエチレン基のモル分率が50モル%以上であることが望ましい。
【0039】
一般式(1)で表される単量体としては、例えば、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール・ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール・ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ベンジルオキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0040】
架橋物の製造に使用される単量体は、少なくとも上記ポリアルキレングリコール系単量体が含まれていれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリアルキレングリコール系単量体のみを用いてもよいし、ポリアルキレングリコール系単量体と共重合可能なその他の重合性単量体を併用してもよい。なお、ポリアルキレングリコール系単量体以外の単量体を共重合させる場合、全単量体100質量%(単量体成分)中のポリアルキレングリコール系単量体の含有量は、特に限定されるものではないが、ポリアルキレングリコール系単量体を70質量%以上とすることが好ましく、85質量%以上とすることがより好ましい。また、85〜100質量%とすることがさらに好ましい。
なお、ここでいう全単量体100質量%(単量体成分)とは、架橋性単量体を含まず、ポリアルキレングリコール系単量体と後述するその他の単量体を含む概念である。
【0041】
〔その他の単量体〕
ポリアルキレングリコール系単量体と共重合可能な単量体(その他の単量体)としては、特に限定されることはなく(但し上記架橋性単量体に該当する単量体を除く)、具体的には、例えば、1)アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸あるいはそれらの一価金属、二価金属、アンモニア、有機アミンによる部分中和物や完全中和物等の不飽和モノカルボン酸系単量体;2)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸あるいはそれらの一価金属、二価金属、アンモニア、有機アミンによる部分中和物や完全中和物等の不飽和ジカルボン酸系単量体;3)ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシスルホプロピル(メタ)アクリレート、スルホエチルマレイミド、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸あるいはそれらの一価金属、二価金属、アンモニア、有機アミンによる部分中和物や完全中和物等の不飽和スルホン酸系単量体;4)(メタ)アクリルアミド、ビニルアセトアミド、イソプロピルアクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド等のアミド系単量体;5)(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、2−メチルスチレン、酢酸ビニル等の疎水性単量体;6)2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリルアルコール、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、3−メチル−2−ブテン−1−オール(プレノール)、ポリエチレングリコールモノプレノールエーテル、ポリプロピレングリコールモノプレノールエーテル、2−メチル−3−ブテン−2−オール(イソプレンアルコール)、ポリエチレングリコールモノイソプレンアルコールエーテル、ポリプロピレングリコールモノモノイソプレンアルコールエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノアリルエーテル、ビニルアルコール等の水酸基含有不飽和単量体;7)ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のカチオン性単量体;8)(メタ)アクリロニトリル等のニトリル系単量体;9)(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸、(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸メチルエステル、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸等の含リン単量体;等が挙げられる。これらのうち、ポリアルキレングリコール系単量体との共重合性等の点からは、1)又は3)が好適であり、特に3)の不飽和スルホン酸系単量体が特に好適である。これらは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合してポリアルキレングリコール系単量体と共重合させてもよい。
【0042】
全単量体100質量%(単量体成分)中のその他の単量体の含有量は、特に限定されるものではないが、その他の単量体を0質量%以上70質量%以下とすることが好ましく、5質量%以上40質量%以下とすることがより好ましく、10質量%以上30質量%以下とすることがさらに好ましい。
【0043】
その他の単量体としてカルボン酸類、スルホン酸類等の酸性基含有単量体を用いる場合、又は、塩基性基含有単量体を用いる場合、酸性基及び塩基性基が未中和のもの、部分中和されたもの、完全中和されたものの何れでも問題なく使用することができる。
【0044】
〔架橋性単量体〕
架橋性単量体としては、N−ビニルラクタム系単量体を必須構成単位とする場合と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0045】
〔架橋物〕
架橋物としては、硝酸カルシウム4水和物0.6質量%及び水酸化カリウム0.089質量%を含む水溶液に対する24時間後の吸水倍率が8g/g以上であることが望ましい。
【0046】
また、架橋物は、ポリアルキレングリコール系単量体を85質量%以上含む単量体成分を重合させてなることが望ましい。
ここでいう単量体成分とは、架橋性単量体を含まず、上述したポリアルキレングリコール系単量体とその他の単量体を含む概念である。
そして、ポリアルキレングリコール系単量体の割合を求める場合には、ポリアルキレングリコール系単量体とその他の単量体の合計を100質量%として、ポリアルキレングリコール系単量体の割合を求める。
【0047】
また、架橋物の平均粒子径(平均粒度)は、特に制限がないが10〜1000μmであることが好ましく、さらに好ましくは50〜600μmである。
平均粒子径がこのように小さい範囲であるとセメント組成物中で架橋物が均一に分散しやすいため、発明の効果が発揮されやすくなる。
【0048】
〔架橋物の製造方法〕
架橋物の製造方法としては、N−ビニルラクタム系単量体に代えてポリアルキレングリコール系単量体を用い、N−ビニルラクタム系重合体に代えてポリアルキレングリコール系重合体を用いる他は、N−ビニルラクタム系単量体を必須構成単位とする場合と同様にすることができるため、その詳細な説明を省略する。
【0049】
以下、本発明のセメント添加剤を用いたセメント組成物について説明する。
〔セメント組成物〕
本発明のセメント組成物は、本発明のセメント添加剤、セメント、及び、水を含むことを特徴とする。
セメントとしては、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形);各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント);白色ポルトランドセメント;アルミナセメント;超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント);グラウト用セメント;油井セメント;低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント);超高強度セメント;セメント系固化材;エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の1種以上を原料として製造されたセメント)等の他、これらに高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏を添加したもの等が挙げられる。
【0050】
骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材等が挙げられる。
【0051】
上記セメント組成物においては、その1m
3あたりの単位水量、セメント使用量及び水/セメント比は特に限定されず、例えば、単位水量100〜185kg/m
3、使用セメント量250〜800kg/m
3、水/セメント比(質量比)=0.1〜0.7であることが好ましい。より好ましくは、単位水量120〜175kg/m
3、使用セメント量270〜800kg/m
3、水/セメント比(質量比)=0.15〜0.65である。このように本発明のセメント組成物は、貧配合〜富配合まで幅広く使用可能であり、単位セメント量の多い高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m
3以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。また、本発明のセメント組成物は、比較的高減水率の領域、すなわち、水/セメント比(質量比)=0.15〜0.5(好ましくは0.15〜0.4)といった水/セメント比の低い領域においても、良好に使用することができる。
【0052】
また本発明のセメント組成物は、高減水率領域においても優れた諸性能を高性能で発揮でき、優れた作業性を有することから、例えば、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品(プレキャストコンクリート)用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等にも有効に適用できるものである。また、中流動コンクリート(スランプ値が22〜25cmの範囲のコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50〜70cmの範囲のコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効である。
【0053】
上記セメント組成物において、本発明のセメント添加剤の配合割合としては、例えば、本発明の必須成分であるセメント添加剤(複数含む場合はその合計量)が、固形分換算で、セメント質量の全量100質量%に対して、0.01〜1質量%となるように設定することが好ましい。
【0054】
〔セメント分散剤〕
本発明のセメント組成物は、本発明のセメント添加剤とは別に、通常使用されるセメント分散剤を更に含むことが望ましい。セメント分散剤は複数種類を併用することも可能である。セメント分散剤としては特に限定されず、例えば、ポリカルボン酸系セメント分散剤;樹脂酸塩、オキシカルボン酸塩等のカルボン酸塩系セメント分散剤;ポリオール複合体;リグニンスルホン酸塩、メラミンスルホン酸またはその塩(以下、酸またはその塩を、酸(塩)と記す)のホルマリン縮合物、クレオソート油スルホン酸(塩)ホルマリン縮合物、ナフタリンスルホン酸(塩)ホルマリン縮合物等のスルホン酸(塩)系セメント分散剤等が挙げられる。これらセメント分散剤は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0055】
上記例示のセメント分散剤のうち、ポリカルボン酸系セメント分散剤が、減水性能に優れており、スランプ保持性能が良好であるので、特に好ましい。これにより、流動性に優れ、かつ強度および凍結融解に対する抵抗性等に優れたセメント組成物が得られる。
【0056】
上記ポリカルボン酸系セメント分散剤は、不飽和カルボン酸(塩)を含む単量体成分を重合してなる重合体である。上記ポリカルボン酸系セメント分散剤としては、例えば、ポリエチレングリコールモノアリルエーテルとマレイン酸(塩)との共重合体;ポリアルキレングリコール(メタ)アリルエーテルまたはポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートと、不飽和スルホン酸塩と、(メタ)アクリル酸塩とからなる単量体成分を共重合してなる共重合体;(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸(塩)との共重合体;スルホネート基を有する(メタ)アクリルアミドと、(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリル酸(塩)とからなる単量体成分を共重合してなる共重合体;ポリアルキレングリコールビニルエーテルまたはポリアルキレングリコール(メタ)アリルエーテルと、(メタ)アクリル酸(塩)との共重合体;ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸(塩)との共重合体;不飽和カルボン酸(塩)とポリアルキレングリコール鎖を有する単量体とを必須成分として含む単量体成分を重合してなる共重合体等が挙げられる。
【0057】
上記例示のうちでも、不飽和カルボン酸(塩)とポリアルキレングリコール鎖を有する単量体とを必須成分として含む単量体成分を重合してなる共重合体が好ましい。上記の不飽和カルボン酸(塩)の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等、およびこれらの中和物や部分中和物が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。また、ポリアルキレングリコール鎖を有する単量体の例としては、ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;エチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル;メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル等のアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル;エチレングリコールモノクロチルエーテル等のポリアルキレングリコールモノクロチルエーテル;メトキシポリエチレングリコールモノクロチルエーテル等のアルコキシポリアルキレングリコールモノクロチルエーテル等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。また、これらポリカルボン酸系セメント分散剤は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0058】
上記セメント組成物において、セメント分散剤の配合割合としては、例えば、固形分換算で、セメント質量の全量100質量%に対して、0.01〜10質量%となるように設定することが好ましい。0.01質量%未満では性能的に充分とはならないおそれがあり、逆に10質量%を超えると、その効果は実質上頭打ちとなり経済性の面からも不利となるおそれがある。より好ましくは0.02〜5質量%であり、更に好ましくは0.05〜3質量%である。なお、本明細書中、固形分含量は、以下のようにして測定することができる。
(固形分測定方法)
1.アルミ皿を精秤する。
2.1で精秤したアルミ皿に固形分測定物を精秤する。
3.窒素雰囲気下130℃に調温した乾燥機に2で精秤した固形分測定物を1時間入れる。
4.1時間後、乾燥機から取り出し、室温のデシケーター内で15分間放冷する。
5.15分後、デシケーターから取り出し、アルミ皿+測定物を精秤する。
6.5で得られた質量から1で得られたアルミ皿の質量を差し引き、2で得られた固形分測定物の質量で除することで固形分を測定する。
【0059】
〔セメント組成物中に含まれるその他の材料〕
本発明のセメント組成物には、例えば、水溶性高分子物質、高分子エマルジョン、遅延剤、早強剤・促進剤、鉱油系消泡剤、油脂系消泡剤、脂肪酸系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、オキシアルキレン系消泡剤、アルコール系消泡剤、アミド系消泡剤、リン酸エステル系消泡剤、金属石鹸系消泡剤、シリコーン系消泡剤、AE剤、界面活性剤、防水剤、ひび割れ低減剤、膨張材、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤、高炉スラグ等の1種又は2種以上を含んでいてもよい。
これらの材料の配合割合は、特に限定されるものではないが、セメント分散剤の固形分100質量%に対し、10質量%以下となるように設定することが好適である。
【0060】
なお、本発明のセメント組成物を製造する場合、セメント添加剤、セメント、水を一度に混合してもよいし、セメントと水を混合した後にセメント添加剤を加えてもよい。また、セメント分散剤をセメント添加剤、セメント、水と一緒に加えてもよいし、別々に加えてもよい。セメント組成物中に含まれるその他の材料も、セメント添加剤、セメント、水と一緒に加えてもよいし、別々に加えてもよい。