(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
磁性体コアに設けられた複数の励磁コイルに対して交番信号を印加し、前記磁性体コアに設けられた検出コイルから、前記交番信号に対応して検出される極性の異なるパルス状信号の波形を検出し、この極性の異なるパルス状信号の検出間隔により、定常磁界を検出する磁気素子を制御する磁気素子制御装置であり、
前記励磁コイルのうち第1励磁コイルに印加する、電流制御とした励磁信号である、前記交番信号における第1の交番信号を生成する第1励磁信号生成部と、
前記励磁コイルのうち前記第1励磁コイルと巻線の巻き方向が逆である第2励磁コイルに印加する、電流制御とした励磁信号である、前記交番信号における前記第1の交番信号と同期した極性の異なる第2の交番信号を生成する第2励磁信号生成部と、
前記交番信号の電流方向が切替る際の誘導起電力で発生する正又は負電圧の検出信号を検出する検出信号比較部と
を備え、前記第1励磁信号生成部及び前記第2励磁信号生成部の各々におけるオフセットの変化の極性が正及び負の温度特性で逆であることを特徴とする磁気素子制御装置。
磁性体コアに設けられた複数の励磁コイルに対して交番信号を印加し、前記磁性体コアに設けられた検出コイルから、前記交番信号に対応して検出される極性の異なるパルス状信号の波形を検出し、この極性の異なるパルス状信号の検出間隔により、定常磁界を検出する磁気素子を制御する磁気素子制御方法であり、
前記励磁コイルのうち第1励磁コイルに印加する、電流制御とした励磁信号である、前記交番信号における第1の交番信号を生成する第1励磁信号生成過程と、
前記励磁コイルのうち前記第1励磁コイルと巻線の巻き方向が逆である第2励磁コイルに印加する、電流制御とした励磁信号である、前記交番信号における前記第1の交番信号と同期した極性の異なる第2の交番信号を生成する第2励磁信号生成過程と、
前記交番信号の電流方向が切替る際の誘導起電力で発生する正又は負電圧の検出信号を検出する検出信号比較過程と
を備え、前記第1励磁信号生成過程及び前記第2励磁信号生成過程の各々におけるオフセットの変化の極性が正及び負の温度特性で逆であることを特徴とする磁気素子制御方法。
【背景技術】
【0002】
一般に、FG方式の磁気素子は、他の磁気素子であるホール素子や磁気抵抗素子に比較すると、磁界を検出する感度が高く、小型化が可能であるため、携帯電子機器などの方位検出装置などに用いられている。
図14は、時間分解型FG方式の磁気素子(磁界比例式測定)の構成例を示す図である。この
図14において、FG方式の磁気素子は、高透磁率材からなる磁性体コアの外周面に対し、励磁巻線と検知巻線とが巻かれている。励磁巻線の巻かれている領域は励磁信号により駆動される励磁コイルとして機能し、検知巻線の巻かれている領域は検知信号を出力する検出コイルとして機能する。定常磁界Hexは、磁性体コアの励磁巻線及び検知巻線の作る円筒空間を貫通する磁界である。
【0003】
図15は、時間分解型FG方式の磁気素子を用いて磁界比例式における磁気検出の原理を説明する波形図である。ここで、
図15(a)は、磁気素子の励磁コイルに供給される励磁電流を示す図であり、縦軸が励磁電流の電流値を示し、横軸が時刻を示している。
図15(b)は、磁気素子の励磁コイルが磁性体コア内に発生させる磁界の磁束密度を示す図であり、縦軸が磁性体コア内における磁束密度を示し、横軸が時刻を示している。
図15(c)は、磁気素子の検出コイルが誘導起電力により発生するパルスの電圧値を示す図であり、縦軸が検出コイルのピックアップ電圧の電圧値を示し、横軸が時刻を示している。
【0004】
この
図15において励磁コイルを駆動させるため、励磁コイルの端子間に、一定周期で交番する励磁電流Idの信号(以下、励磁信号とする)を、すなわち
図15(b)に示すように三角波形状の励磁信号(すなわち、三角波電流信号)を印加する(例えば、特許文献3参照)。
これにより、励磁電流の向きが変化する時間(励磁電流の正負の交番時間帯)において、
図15(c)の場合には、時刻t1及び時刻t2において、検出コイルが誘導起電力による正負のパルス(ピックアップ信号、すなわちpu信号)が発生する。以下、このパルスの電圧Vp(ピックアップ電圧)を検知信号とする。この検知信号は、三角波電流信号の周期に対応して、連続的に正負の極性の電圧を有するパルスとして、検出コイルの端子間に発生する(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0005】
磁性体コアの励磁巻線及び検知巻線の作る円筒空間を貫通する定常磁界Hex(
図14参照)が、この磁気素子に印加された場合、励磁巻線においてこの定常磁界Hexに対応した定常電流が流れる。すなわち、励磁巻線に印加される励磁信号の励磁電流Idに対して、上述した定常電流がオフセットとして重畳される。
その結果、このオフセットによって、交番する励磁信号により励磁コイルの駆動状態が変化し、すなわち、励磁電流Idの流れる向きが変化する時刻が、定常磁界Hexが印加されている場合と、定常磁界Hexが印加されていない場合とで変化する。
【0006】
このとき、
図15(c)に示すように、定常磁界Hexが印加されていない(Hex=0)場合に比較し、励磁コイルの発生する磁界と同様の方向の定常磁界Hexが印加されている(Hex>0)場合、励磁電流Idの流れる向きの変化するタイミングである時刻t1が遅くなり、時刻t2が早くなる(時間TmがT/2より短くなる)。一方、定常磁界Hexが印加されていない場合に比較し、励磁コイルの発生する磁界と反対の方向の定常磁界Hexが印加されている(Hex<0)場合、励磁電流Idの流れる向きの変化するタイミングにおいて時刻t1が早くなり、時刻t2が遅くなる(時間TpがT/2より長くなる)。
【0007】
これにより、この励磁電流Idの流れる方向が変わるタイミングに応じて変化する、磁性体コア内における磁束密度φの変化も、励磁電流Idに重畳される定常磁界Hexによる定常電流に対応して変化することになる。
そして、磁束の方向が変化した際、検出コイルに対して磁束の変化を打ち消す方向に誘導起電力が発生し、すなわち励磁電流Idが正から負に変化するタイミングにおいて検知信号が負電圧のパルスとして発生する。一方、励磁電流Idが負から正に変化するタイミングにおいて検知信号が正電圧のパルスとして発生する。
【0008】
したがって、FG型の磁気素子は、定常磁界Hexの印加されていない場合の検知信号の出力されるタイミングと、定常磁界Hexが印加されている場合の検知信号の出力されるタイミングとを比較することにより、定常磁界Hexの大きさを間接的に測定することができる。すなわち、定常磁界Hexが印加された場合、駆動コイルに特定の定常電流が流れるため、励磁信号に一定のオフセットが重畳し、負電圧及び正電圧のパルス状の検知信号の時間間隔が変化する。
したがって、FG型の磁気素子を用いた磁気検出装置は、負電圧及び正電圧のパルス状の検知信号の発生する時間間隔を測定することにより、外部から印加された定常磁界Hexの強度を測定している(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照)。
【0009】
ここで、励磁コイルに印加する励磁電流Idの最大値を、磁性体コアの飽和磁束密度以上となる磁界が発生する値に設定する。これにより、磁気素子の測定磁界範囲は、励磁信号の一周期の時間と、定常磁界Hexを印加することによるオフセットとしての定常電流の電流値に対応した時間変化(以下、励磁効率とする)とから決定される。
すなわち、
図15に示すように、時刻t0から時刻t3までが、励磁信号の一周期であり、この周期幅は時間Tである。定常磁界Hexが印加されていない場合(Hex=0)、負電圧の検知信号(以下、第1検知信号とする)が出力される時刻t1から、正の電圧の検知信号(以下、第2検知信号とする)が検出される時刻t2までの時間Twは、励磁信号の半周期となるため、時間T/2となる。
【0010】
また、定常磁界Hexが印加されている場合、この第1検知信号が出力されてから第2検知信号が検出されるまでの時間幅(以下、計測時間幅)が時間T/2に対して変化する。ここで、
図14に示すように、定常磁界Hexの磁束方向が実線の矢印の場合(Hex>0)、励磁コイルの生成する磁束方向と同一方向のため、時間幅Tmが時間T/2より短いものとなり(T0>Tm)、一方、定常磁界Hexの磁束方向が破線の矢印の場合(Hex<0)、励磁コイルの生成する磁束方向と逆方向のため、時間幅Tpが時間T/2より長くなる(Tp>T0)。ここで、T0=T/2である。
【0011】
次に、
図16は、時間分解型FG方式の磁気素子を用いて磁界比例式制御における磁気素子制御装置を用いた磁気検出装置の構成例を示す概略ブロック図である。
図16において、磁気素子500は、
図14に示す磁気素子であり、検出コイル502及び励磁コイル501から構成されている。
磁気素子制御装置400は、磁気素子制御部401とクロック信号生成部402とクロック信号調整部403とから構成されている。
クロック信号生成部402は、周期Tのクロックを生成して、クロック信号調整部403に対して出力する。
クロック信号調整部403は、供給されるクロックの信号レベルを調整して、調整されたクロックを磁気素子制御部401へ出力する。
【0012】
磁気素子制御部401は、検出信号増幅部4012、検出信号比較部4013、出力信号生成部4015、データ信号変換部4016、励磁信号調整部4017、励磁信号生成部4018を備えている。
励磁信号生成部4018は、クロック信号調整部403から供給されるクロックから、例えば、
図16(a)に示す励磁信号である三角波を生成する。
励磁信号調整部4017は、励磁信号生成部4018から供給される励磁信号の電圧レベルを調整して、励磁信号として励磁コイル501に対して供給する。
【0013】
励磁コイル501は、三角波に対応した磁界を、磁気素子500の磁性体コア内に生成する。
検出コイル502は、磁性体コア内における励磁信号の正負の交番時間帯に、パルスを発生する。
検出信号増幅部4012は、検出コイル502から供給されるパルスの電圧レベルを増幅し、検出信号として検出信号比較部4013へ出力する。
検出信号比較部4013は、パルス(検出信号)の時刻t1と時刻t2との時間幅と、T/2との差分を求め、この差分を出力信号生成部4015へ出力する。
【0014】
出力信号生成部4015は、供給される時間を示す差分から、この差分に対応する電圧情報を求める。出力信号生成部4015は、求めた電圧情報をデータ信号変換部4016へ出力する。
データ信号変換部4016は、内部記憶部に予め書き込まれて記憶されている電圧値磁界テーブルから、電圧情報の電圧値に対応する磁界強度を読み出して、磁気素子500に印加されている磁界の強度を求める。電圧値磁界テーブルは、上記電圧情報の電圧値と印加された定常磁界Hexの強度との対応を示すテーブルである。データ信号出力端子には、磁界強度検出装置(不図示)が接続されている。
【0015】
次に、
図17は、時間分解型FG方式の磁気素子(磁界平衡式測定)の構成例を示す図である。この
図17が示すように、磁界平衡式測定におけるFG方式の磁気素子は、
図14の磁気素子とは異なり、高透磁率材からなる磁性体コアの外周面に対し、励磁巻線と検知巻線とに加えて、フィードバック(以下、FB)巻線が巻かれている。励磁巻線の巻かれている領域は励磁信号により駆動される励磁コイルとして機能し、検知巻線の巻かれている領域は検知信号を出力する検出コイルとして機能し、フィードバック巻線の巻かれている領域はフィードバック信号により駆動されるFBコイルとして機能する。定常磁界Hexは、磁性体コアの励磁巻線及び検知巻線の作る円筒空間を貫通する磁界である。
【0016】
次に、
図18は、時間分解型FG方式の磁気素子を用いて磁界平衡式測定における磁気検出の原理を説明する波形図である。
図18(a)は、磁気素子の励磁コイルに供給される励磁電流を示し、縦軸が励磁電流の電流値を示し、横軸が時間を示している。励磁電流は、基準電流値0A(ゼロアンペア)を境にした正負の交番信号である。
図18(b)は、磁気素子のFBコイルに印加する電流であるFB信号(すなわち帰還信号)を示す図であり、縦軸がFB信号の電流値を示し、横軸が時間を示している。
図18(c)は、磁気素子の検出コイルが誘導起電力により発生するパルスの電圧値を示す図であり、縦軸がピックアップ信号の電圧値を示し、横軸が時間を示している。
【0017】
この
図18に示すように、磁界平衡式測定の場合、磁気素子に印加される定常磁界Hex(磁性体コア内を通過する定常磁界)を打ち消す磁界を、上記FBコイルにより発生させる。そして、定常磁界を打ち消す磁界をFBコイルに発生させる際の電流値から、磁気素子に印加されている定常磁界Hexを測定している。
磁界平衡式においては、磁性体コア内における定常磁界を打ち消すための磁界を発生するコイルとして、励磁コイル及び検出コイルに加えて、上記FBコイルが磁気素子に設けられている。
以下、本明細書においては、FB信号を印加して磁性体コア内の定常磁界を打ち消し、磁界の測定を行う方式をFBコイルFB制御とする。
【0018】
また、磁界平衡式測定の場合、すでに説明した磁界比例式と同様に、励磁コイルに印加される励磁信号の正負の交番時間帯に、検出コイルにおいて発生するパルスの時間間隔を測定する。そして、測定結果に基づき、負電圧の検知信号が出力される時刻t1から、正の電圧の検知信号が検出される時刻t2までの時間が、T/2となるように、FBコイルに対してFB信号を印加する。
例えば、
図18(c)において、時刻t1と時刻t2との時間幅が、T/2より広くなると、
図18(a)に示すように負の方向の定常磁界Hexが印加され、実質的に励磁信号の波形が波形L0から波形L2へと変化したこととなる。このため、励磁信号の波形L2を、時刻t1と時刻t2との時間幅が、T/2となる曲線L0の位置に戻すため、FBコイルに対して
図18(b)における波形FB2によって表される電流値のFB信号を印加する。
【0019】
一方、
図18(c)において、時刻t1と時刻t2との時間幅が、T/2より狭くなると、
図18(a)に示すように正の方向の定常磁界Hexが印加され、実質的に励磁信号の波形が波形L0から波形L1へと変化したこととなる。このため、励磁信号の波形L1を波形L0の位置に戻すため、FBコイルに対して
図18(b)における波形FB1によって表される電流値のFB信号を印加する。
そして、時刻t1と時刻t2との時間幅が、T/2となるようにFBコイルに印加したFB信号の電流値から、磁気素子に印加される定常磁界の強度を求めることになる。
【0020】
次に、
図19は、FBコイルFB制御における磁気素子制御装置を用いた磁気検出装置の構成例を示すブロック図である。
図19において、磁気素子300は、励磁コイル301、FBコイル302、検出コイル303から構成されている。
磁気素子制御装置200は、磁気素子制御部201とクロック信号生成部202とクロック信号調整部203とから構成されている。
クロック信号生成部202は、周期Tのクロックを生成して、クロック信号調整部203に対して出力する。
クロック信号調整部203は、供給されるクロックの信号レベルを調整して、調整されたクロックを磁気素子制御部201へ出力する。
【0021】
磁気素子制御部201は、検出信号増幅部2012、検出信号比較部2013、帰還信号調整部2014、帰還信号変換部2015、データ信号変換部2016、励磁信号調整部2017、励磁信号生成部2018を備えている。
励磁信号生成部2018は、クロック信号調整部203から供給されるクロックから、例えば、
図18(a)に示す励磁信号である三角波を生成する。
励磁信号調整部2017は、励磁信号生成部2018から供給される励磁信号の電圧レベルを調整して、励磁信号として励磁コイル301に対して供給する。
【0022】
励磁コイル301は、三角波に対応した磁界を、磁気素子300の磁性体コア内に生成する。
検出コイル303は、磁性体コア内における励磁信号の正負の交番時間帯に、パルスを発生する。
FBコイル302は、供給されるFB信号により、磁気素子300の磁性体コアに印加される定常磁界Hexを打ち消す磁界を発生する。
検出信号増幅部2012は、検出コイル303から供給されるパルスの電圧レベルを増幅し、検出信号として検出信号比較部2013へ出力する。
検出信号比較部2013は、パルス(検出信号)の時刻t1と時刻t2との時間幅と、T/2との差分を求め、この差分を帰還信号変換部2015へ出力する。
帰還信号変換部2015は、求められた差分から、FBコイル302に供給するFB信号の電流値を求める。
【0023】
ここで、帰還信号変換部2015は、内部記憶部に予め書き込まれて記憶されているFB電流値テーブルから、求められた差分に対応する電流値を読み出してFB信号の電流値を求める。FB電流値テーブルは、上記差分と磁性体コア内における定常磁界を打ち消す電流値(デジタル値)との対応を示すテーブルである。
帰還信号調整部2014は、帰還信号変換部2015から供給されるFB信号の電流値を、D/A(Digital/Analog)変換して、生成されたFB信号としての電流を、FBコイル302に対して出力する。また、帰還信号調整部2014は、帰還信号変換部2015から供給されるFB信号の電流値を、データ信号変換部2016へ出力する。
【0024】
データ信号変換部2016は、供給されるFB信号の電流値から、磁性体コア内において打ち消した定常磁界の強度、すなわち磁気素子300に印加されている定常磁界Hexの強度を求める。ここで、データ信号変換部2016は、内部記憶部に予め書き込まれて記憶されている電流値磁界テーブルから、FB信号の電流値に対応する磁界強度を読み出して、磁気素子300に印加されている磁界の強度を求める。電流値磁界テーブルは、上記FB信号の電流値と印加された定常磁界Hexの強度との対応を示すテーブルである。データ信号出力端子には、磁界強度検出装置(不図示)が接続されている。
【0025】
上述した時間分解型FG方式の磁気素子を用いて磁界比例式における磁気検出を行う場合、磁気素子300の磁性体コアの材料と構造とに起因するコイルに印加する電流あたりの発生磁界量(以下、励磁効率とする)と、励磁信号の強度により、測定可能な磁界範囲が決定される。
一方、時間分解型FG方式の磁気素子を用いて磁界平衡式における磁気検出を行う場合、磁気素子300に対して印加される定常磁界Hexによらず、一定の時間間隔(T/2)で検出信号が出力されるように、磁性体コア近傍の磁界を平衡状態として維持している。このため、磁気素子300全体の電源電圧により制限、すなわちFB信号の電流値が供給可能な範囲で磁界の測定を行うことができる。
【0026】
また、時間分解型FG方式の磁気素子を用いて磁界比例式における磁気検出を行う場合、検出信号の出力される時間間隔が磁界に応じて変化するため、磁気感度の線形性が磁気素子300の特性に直接に反映することになる。
一方、時間分解型FG方式の磁気素子を用いて磁界平衡式における磁気検出を行う場合、磁気素子の特性として、励磁効率の磁界依存性が小さいため、検出信号の波形と、検出信号の発生する時間間隔の定常性とが維持され易い。
そのため、たとえば、最大数百A(アンペア)程度の電流により発生する磁界を全測定電流範囲において線形性を維持した状態で測定する磁気素子に適用する場合、従来、磁界比例式に比較して、磁界平衡式における磁気検出が主に用いられている。
【発明を実施するための形態】
【0047】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態を説明する。本実施形態は、FG方式の磁気素子を用いて、磁気比例式の磁気検出処理を行う磁気制御装置である。
図1は本発明の第1の実施形態による磁気素子制御装置10及び磁気素子50からなる磁気検出装置の構成を説明する図である。磁気素子制御装置10は、磁気素子制御部11と、クロック信号生成部102と、クロック信号調整部103と、データ信号判定部104とを備えている。
【0048】
本実施形態による磁気素子制御装置10は、第1励磁コイル51、第2励磁コイル52及び検出コイル53からなるフラックスゲート型の磁気素子50に印加される定常磁界の強度を、時間分解型の磁気比例式により検出する際、第1励磁コイル51及び第2励磁コイル52の各々に対して印加する第1励磁信号DR1(第1交番信号)、第2励磁信号DR2(第2交番信号)のそれぞれを制御する。
磁気素子制御部11は、検出信号増幅部111、検出信号比較部112、時間−出力信号変換部113、データ信号変換部115、励磁信号調整部116及び励磁信号生成部117を備えている。
【0049】
クロック信号生成部102は、所定の周期のクロック信号を生成する発振器から構成され、生成したクロック信号をクロック信号調整部103に対して出力する。
クロック信号調整部103は、供給されるクロック信号の信号レベルを増幅したり、クロック信号の周期の変更などの処理を行い、処理結果のクロック信号を励磁信号生成部117に対して出力する。
【0050】
データ信号判定部104は、データ信号変換部115(後に詳述)から供給される磁気の強度を示すデータ信号の電圧値が、予め設定したデータ範囲(出力データ指定範囲)に含まれているか否かの判定を行う。データ信号判定部104は、内部の記憶部に上記データ範囲が予め書き込まれて記憶されている。このデータ範囲は、データ信号変換部115で増幅されて出力されるデータ信号の示す電圧値が、磁界の磁界強度とこの磁界強度を示す電圧値とが線形関係にある領域に含まれているか否かを判定する電圧値の範囲である。
【0051】
ここで、データ信号判定部104は、データ信号の電圧値が磁界強度と電圧値との線形関係にあるデータ範囲に含まれていない場合、エラーを示すデータ信号であるエラー信号を、外部の磁界強度検出装置に対して出力する。また、データ信号判定部104は、データ信号の電圧値がデータ範囲に含まれている場合、電圧値を示すデータ信号を、データ信号出力端子を介して外部の磁界強度検出装置に対して出力する。
【0052】
磁気素子制御部11において、検出信号増幅部111は、磁気素子50の検出コイル53の両端の電圧を、予め設定された増幅度によって増幅し、検出信号として検出信号比較部112へ出力する。
検出信号比較部112は、極性の異なる検出信号の出力される時刻t1(第1検出信号)と時刻t2(第2検出信号)との時間幅と、T/2との差分を求め、この差分に対応したデューティ比を有するパルスの列(時系列に一定周期で送出されたパルスの列)を、時間−出力信号変換部113に対して出力する。
【0053】
時間−出力信号変換部113は、検出信号比較部112から供給されるデューティ比を有するパルス列をPWM回路などを用いて直流電圧に変換して測定電圧とし、この測定電圧をデータ信号変換部115に対して出力する。
データ信号変換部115は、測定電圧から予め測定されたゼロ磁界におけるオフセット電圧を減算し、所定の増幅率で増幅してデータ信号としてデータ信号判定部104に対して出力する。
【0054】
励磁信号生成部117は、クロック信号調整部103から供給されるクロック信号に基づいて、交番信号、例えば0Vを基準電位として交番する交番電圧信号としての三角波信号を生成する。
励磁信号調整部116は、励磁信号生成部117の生成した三角波信号を所定の増幅率にて増幅し、三角波電流信号である第1励磁信号DR1を生成して、第1励磁コイル51対して印加する。
また、励磁信号調整部116は、同様に上記三角波電流信号を反転させた(すなわち、位相を180度ずらした)反転三角波電流信号である第2励磁信号DR2を第2励磁コイル52に対して印加する。
【0055】
次に、
図2は、
図1における励磁信号調整部116及び励磁信号生成部117の構成例を示す図である。この
図2において、励磁信号調整部116は、差動増幅器2001(第1励磁信号生成部)、差動増幅器2002(第2励磁信号生成部)、インバータ2003及び抵抗2004を備えている。ここで、抵抗2004の抵抗値は抵抗値Rである。抵抗2004は、励磁信号生成部117の出力端子と、差動増幅器2001の(−)端子(反転入力端子)及びインバータ2003の入力端子との間に介挿されている。この抵抗2004は、励磁信号生成部117の出力する三角波励磁信号の電圧Vexを、電圧電流変換して、駆動電流Iとして作動増幅器2001の(−)端子に対して供給する。
インバータ2003は、出力端子が作動増幅器2002の(−)端子(反転入力端子)に接続されており、電流Iの極性を変え(流れる方向を逆とし)、作動増幅器2002の(−)端子へ供給する。すなわち、インバータ2003は、駆動電流Iに対して電流の絶対値が等しく、位相が180度ずれた負の電流(−I)の駆動電流を差動増幅器2002の(−)端子に対して印加する。励磁電圧Vexである場合、駆動電流Iである励磁電流Iexは、以下の式により求められる。
Iex=(Vex−(V−))/R=(Vex−Vref)/R
【0056】
上述した構成により、励磁信号調整部116は、第1励磁コイル51に対して電流値Iexの第1励磁信号DR1を流し、第2励磁コイル52に対して電流値−Iex(電流値Iexに対して位相が180度ずれている電流信号)の第2励磁信号DR2を流す。第1励磁信号DR1及び第2励磁信号DR2の各々は、互いに三角波電流信号であるが、それぞれ電流の極性が異なる。すなわち、交番信号として、第1励磁信号DR1と第2励磁信号DR2とは、電流値の振幅の絶対値が等しく、互いに位相が180度ずれた波形である。
また、差動増幅器2001と差動増幅器2002との各々は、駆動電流Iが供給されると、電圧Vrefを基準電位とし、第1励磁信号DR1(電流値Iex)を第1励磁コイル51に対して、また第2励磁信号DR2(電流値−(−Iex))を第2励磁コイル52に対して供給する。
【0057】
差動増幅器2001と差動増幅器2003とは、オフセットの温度依存性が異なる構成を用い、すなわちオフセットの温度依存性が逆の特性を有した構成を用いる。例えば、差動増幅器2001は、温度の上昇に対応して出力される電流値のオフセットが増加する回路構成で作成されている。一方、差動増幅器2002は、温度の上昇に対応して出力される電流値のオフセットが減少する回路構成で作成されている。ここでのオフセットは、差増増幅器2001と差動増幅器2002とが、磁気素子50に印加される磁界がゼロの場合(ゼロ磁界の場合)、実際には0Aであるが回路特性から出力される電流値を指している。
【0058】
図3は、本実施形態における磁気素子50のフラックスゲート(FG)型磁気素子である磁気素子50の構成例を示す図である。
磁気素子50は、磁性体コア54に対して3系統の巻線が巻かれており、第1系統の巻線で構成された第1励磁コイル51、第2系統の巻線で構成された第2励磁コイル52と、第3系統の巻線で構成された検出コイル53とからなる。
この
図3から判るように、磁性体コア54に対する第1励磁コイル51と第2励磁コイル52との巻方向は逆である。すなわち、第1励磁コイル51は、例えば、磁性体コア54に対して時計回りに巻かれている。一方、第2励磁コイル52は、第1励磁コイル51とは巻線の巻方向が異なり、磁性体コア54に対して反時計回りに巻かれている。
【0059】
第1励磁コイル51に流れる第1励磁信号DR1と、第2励磁コイル52に流れる第2励磁信号DR2とは、電流の流れる方向が逆であり、第1励磁コイル51の巻線の巻方向と第2励磁コイル52の巻線の巻方向とが逆である。このため、磁性体コア54の長尺方向に対して発生する磁界の方向は同一となる。すなわち、第1励磁信号DR1は第1励磁コイル51に流れる駆動電流である。また、第2励磁信号DR2は、第1励磁信号DR1に対して位相が180度ずれた電流であり、第2励磁コイル52に流れる駆動電流である。
【0060】
図4は、第1励磁コイル51及び第2励磁コイル52の各々のゼロ磁界におけるオフセットの温度依存性を示す図である。この
図4において、横軸が温度を示し、縦軸がゼロ磁界出力、すなわちオフセットの大きさを示している。また、T0は基準温度(例えば、室温)であり、Voは基準温度におけるゼロ磁界出力である電圧を示している。
図4に示しているように、差動増幅器2001が温度に対して正の温度依存性のオフセットを有しているため、オフセット(一点鎖線)は温度が上昇するに従い増加するため、ゼロ磁界出力が増加することになる。一方、差増増幅器2002は、差動増幅器2001と逆の温度依存性のオフセットを有している。したがって、差動増幅器2002が温度に対して負の温度依存性のオフセットを有しているため、オフセット(破線)は温度が上昇するに従い低下するため、ゼロ磁界出力が低下することになる。
【0061】
差増増幅器2001における温度に対するオフセットの変化比率と、差動増幅器2002における温度に対するオフセットの変化比率とが、絶対値で同一とするように温度特性を合わせて設計して作成する。
これにより、磁気コア54内に発生される磁界のオフセット値は、温度が変化した際、差増増幅器2001及び差動増幅器2002互いに逆の極性によるオフセット値の変化により相殺される。したがって、ゼロ磁界出力の有するオフセット値が温度変化に依存しない一定値とすることができ、磁気素子50の検出コイル53の出力値の温度依存性を抑制することができる。このゼロ磁界出力は、上述した上昇と下降との比率が同様のオフセットの合成となり、温度に依存せずに一定の値となるため、出力する際に容易に補正することができる。
なお、
図2記載のインバータ2003を用いず、
図3記載の励磁コイル51と励磁コイル52の巻方向を同一とした場合も、
図3記載の磁性体コア54の長尺方向に対して発生する磁界の方向は同一となる。したがって、
図2の差動アンプ2002と差動アンプ2003のオフセットの温度特性の極性が異なり、絶対値が同一の場合も、磁気素子50の検出コイル53の出力値の温度依存性を抑制することができる。
【0062】
また、すでに説明した
図15にて説明した励磁コイルに励磁電流を供給する処理に対し、
図3に示す磁気素子50では、第1励磁コイル51と第2励磁コイル52とに対して、それぞれ極性の異なる励磁電流が流す処理以外は、同様の磁界測定の処理が行われる。
図15(a)において、例えば磁気素子50の第1励磁コイル51に対し、第1励磁信号DR1(励磁電流Id)が供給されている。この場合、
図15(a)において、縦軸が第1励磁信号DR1の電流値を示し、横軸が時刻を示している。ここでは、第1励磁コイル51に供給される第1励磁電流DR1に対し、位相が180度ずれている第2励磁電流DR2の波形は省略されている。すなわち、第2励磁電流DR2は、第1励磁電流DR1と位相が180度シフトして第2励磁コイル52に対して供給されている。
【0063】
これにより、第1励磁電流DR1と第2励磁電流DR2とにより、差動増幅器2001と差動増幅器2002との各々の極性の異なるオフセットの温度依存性により、互いのオフセットがキャンセルされる。この結果、
図15(b)に示す磁束密度におけるオフセットのゼロ磁界における温度依存性が無くなり、温度によらずに一定のオフセット値に制御することができる。
したがって、オフセットの温度依存性が無くなることにより、
図15(c)における磁気素子の検出コイルが誘導起電力により発生するパルスの位置の温度依存性を抑制することができる。すなわち、磁気素子50の出力値の温度依存性を抑制することができる。また、
図15の説明における極性の異なるパルス(時刻t1における第1検出信号と時刻t2における第2検出信号)から定常磁界を測定する方法については、従来例での説明と同様である。
【0064】
また、励磁コイルに対する励磁信号のより発生する磁界強度は、励磁信号調整部116に対して印加される電流に依存する。本実施形態においては、第1励磁コイル51及び第2励磁コイル52の2つが励磁コイルとして設けられている。このため、本実施形態によれば、第1励磁コイル51に対して第1励磁信号DR1が印加され、第2励磁コイル52に対して第2励磁信号DR2が印加されることにより、電源電圧を増加させることなく、第1励磁コイル51と第2励磁コイル52に流れる電流の総和を増加させることができる。したがって、検出コイル53の巻線数に応じて、検出コイル53に誘導起電力により発生するパルス電圧を増加させることができる。誘導起電力により発生するパルスの電圧値が増加することにより、検出コイル53の両端の電圧を増幅する際の増幅率を低減することが可能となり、検出信号増幅部111のアンプ特性に起因したノイズを低減させ、出力されるデータ信号の時間変動を抑制することが可能となる。
【0065】
次に、
図5は、本実施形態による磁気素子制御装置10の磁気素子制御処理の動作例を説明するフローチャートである。
ステップS1:
検出信号増幅部111は、磁気素子50における検出コイル53の両端の電圧を増幅し、検出信号比較部112に対して出力する。
【0066】
ステップS2:
検出信号比較部112は、増幅された電圧と所定の閾値とを比較し、所定の閾値(正及び負の各々の電圧に対する閾値)を超える(あるいは下回る)電圧を検出信号とする。
すなわち、検出信号比較部112は、検出信号として第1検出信号及び第2検出信号を検出する。そして、検出信号比較部112は、第1検出信号(
図15における時刻t1のパルスに対応)及び第2検出信号(
図15における時刻t2のパルスに対応)の出力される周期(定常磁界の強度に対応した時間情報、Tm、T0、Tpなど)に基づき、電圧情報であるデューティ比を有するパルスの列(以下、パルス列とする)を生成する。
そして、検出信号比較部112は、生成したパルス列を電圧情報(第1検出信号及び第2検出信号の出力される周期の情報を有する電圧情報)として、時間−出力信号変換部113へ出力する。
【0067】
ステップS3:
時間−出力信号変換部113は、検出信号比較部112から供給されるデューティ比を有するパルス列を、PWM回路などを用いて直流電圧を生成して測定電圧とする。
そして、時間−出力信号変換部113は、生成した測定電圧をデータ信号変換部115に対して出力する。
【0068】
ステップS4:
データ信号変換部115は、時間−出力信号変換部113から測定電圧が供給されると、この測定電圧からオフセット電圧を減算する。このオフセット電圧は、例えば、本実施形態における差動増幅器2001及び差動増幅器2002の各々で相互にキャンセルされた定常的なオフセット値であり、事前に実験で測定されている。また、データ信号変換部115は、自身内部に記憶部を有している。このデータ信号変換部115の内部の記憶部には、実験で求められた定常的なオフセット電圧をが予め書き込まれている。
そして、データ信号変換部115は、オフセット電圧を用いて補正した測定電圧を、予め設定されている増幅率により増幅し、データ信号としてデータ信号判定部104に対して出力する。
【0069】
ステップS5:
データ信号判定部104は、データ信号変換部115から供給されるデータ信号の示す電圧値が、内部の判定回路に設定されている2個の閾値電圧で規定されるデータ範囲に含まれているか否かの判定を行う。このとき、データ信号判定部104は、データ信号の示す電圧値がデータ範囲に含まれている場合、処理をステップS6へ進める。一方、データ信号判定部104は、データ信号の示す電圧値がデータ範囲に含まれていない場合、処理をステップS7へ進める。このデータ範囲は、後述の磁界強度と電圧との対応が線形的な範囲を示している。
【0070】
ステップS6:
次に、データ信号判定部104は、データ信号変換部115から供給されたデータ信号を、外部の磁界検出装置に対して出力する。
この磁界検出装置は、A/D変換によりデータ信号の電圧をデジタル値に変換し、変換したデジタル値により内部の記憶部に記憶されている磁界強度テーブルから、磁気素子制御装置10から供給されたデータ信号の示す電圧値に対応する磁界強度を読み出し、自身の表示部に対して表示する。なお、データ信号判定部104の出力データ信号はアナログ値であるが、磁気素子制御装置10内で、A/D変換することにより、出力データ信号をデジタル化することも可能である。
【0071】
ステップS7:
次に、データ信号判定部104は、データ信号変換部115から供給されたデータ信号を破棄し、エラー信号を外部の磁界検出装置に対して出力する。
この磁界検出装置は、すでに述べたように、磁気素子制御装置10からエラー信号が供給されると、印加されている定常磁界が測定不能であることを示す通知を、自身の表示部に対して表示する。
【0072】
<第2の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態は、FG方式の磁気素子を用いて、磁気平衡式の磁気検出処理を行う。
図6は、本発明の第2の実施形態による磁気素子制御装置20及び磁気素子50からなる磁気検出装置の構成を説明する図である。磁気素子制御装置20は、磁気素子制御部21と、クロック信号生成部102と、クロック信号調整部103と、データ信号判定部104とを備えている。第1の実施形態と同様の構成には同一の符号を付してある。
【0073】
本実施形態による磁気素子制御装置20は、第1励磁コイル51、第2励磁コイル52及び検出コイル53からなるフラックスゲート型の磁気素子50に印加される定常磁界の強度を、時間分解型の磁気平衡式により検出する。磁気素子制御装置20は、この定常磁界の検出を行う際、第1励磁コイル51及び第2励磁コイル52の各々に対して印加する第1励磁信号DR1(第1交番信号)、第2励磁信号DR2(第2交番信号)のそれぞれを制御する。本実施形態は、磁気平衡式の制御を行うため、詳細は後述するが、第1の実施形態と異なり、第1励磁信号DR1及び第2励磁信号DR2には、磁気平衡のための帰還信号が重畳される。
【0074】
磁気素子制御部21は、検出信号増幅部211、検出信号比較部212、時間−出力信号変換部213、帰還信号調整部214、データ信号変換部215、励磁信号調整部216及び励磁信号生成部217を備えている。ここで、検出信号増幅部211、検出信号比較部212、時間−出力信号変換部213、データ信号変換部215、励磁信号調整部216及び励磁信号生成部217の各々は、ぞれぞれ
図1における検出信号増幅部111、検出信号比較部112、時間−出力信号変換部113、データ信号変換部115、励磁信号調整部116及び励磁信号生成部117に対応している。以下、
図1の各構成と異なる動作について説明する。
【0075】
磁気素子制御部211において、励磁信号生成部217は、クロック信号調整部103から供給されるクロック信号に基づいて、交番信号、例えば0Vを基準電位として交番する交番電圧信号としての三角波信号を生成する。
励磁信号調整部216は、励磁信号生成部217の生成した三角波信号を所定の増幅率にて増幅し、三角波電流信号を生成して、励磁コイル52対して印加する。
また、励磁信号調整部216は、第1励磁コイル51及び第2励磁コイル52の各々に対して印加する三角波電流信号、すなわち第1励磁信号DR1、第2励磁信号DR2のそれぞれに対して、後述するように帰還電流If、期間電流−Ifの電流成分を加えている。
【0076】
次に、
図7は、フラックスゲート型磁気素子の動作原理を示すグラフである。この
図7(a)は、励磁コイル52に供給する三角波電圧信号の時間変化を示すグラフであり、縦軸が電流を示し、横軸が時間を示している。この
図7(a)において、第1励磁コイル51に対して供給される三角波電流信号(第1励磁信号DR1)は、基準電流(0A)を境にした正負の交番信号である。
図7(a)においては、横軸と交差する縦軸の電流(基準電流)が0A(ゼロアンペア)と表される(電圧表記では基準参照電圧Vrefである)。この
図7(a)には示していないが、第2励磁コイル52に対して供給される三角波電流信号(第1励磁信号DR2)は、第1の実施形態と同様に、第1励磁コイル51に供給される三角波電流信号と位相が180度ずれている。
図7(b)は、
図7(a)の第1励磁コイル51に流れる第1励磁信号DR1と、第1励磁コイル52に流れる第2励磁信号DR2との電流の流れる方向が変化する(電流の極性が変化し、これにより励磁電流の電流値の極性が変化する)際に、誘導起電力によって検出コイル51に生じる検出信号(時刻t1の第1検出信号、時刻t2の第2検出信号)の時間変化を示すグラフである。また、
図7(b)においては、縦軸が電圧を示し、横軸が時間を示している。
【0077】
ここで、
図7(a)は、定常磁界(Hex)が磁気素子50に印加されたことにより、第1励磁コイル51に印加される三角波電流信号である第1励磁信号DR1の基準電位(基準電流0A)が、印加されている定常磁界を発生するDC電圧分、基準電流の0A(ゼロアンペア)からずれることを示している。図示はしていないが、第1励磁信号DR1と同様に、第2励磁コイル52に印加される三角波電流信号である第2励磁信号DR2の基準電位(基準電流0A)が、印加されている定常磁界を発生するDC電圧分、基準電流の0A(ゼロアンペア)からずれる。
また、上記第1励磁信号DR1及び第2励磁信号DR2の基準電流0Aにおける定常磁界(Hex)によるずれに対応し、第1検出信号(時刻t1)及び第2検出信号(時刻t2)の発生タイミングが時間的にずれることを示している。
【0078】
ここで、
図7(b)から解るように、第1検出信号の時刻t1及び第2検出信号の時刻t2間の時間幅Twと、三角波の周期Tの1/2である時間T/2との差分Tdが0であれば、磁気素子50に対して定常磁界(Hex)は印加されておらず、差分Tdが正であれば負の定常磁界(Hex<0)が印加され、差分Tdが負であれば正の定常磁界(Hex>0)が印加されている。
【0079】
図6に戻り、検出信号増幅部211は、磁気素子50の検出コイル53の両端の電圧を、予め設定された増幅度によって増幅する。
検出信号比較部212は、検出信号増幅部211から供給される増幅された検出信号の電圧値と、予め定められた閾値電圧値とを比較し、第1検出信号及び第2検出信号(
図7(b)参照)を検出する。
ここで、
図7(b)に示すように、第1検出信号は、負極性のパルスであり、第1励磁コイル51に対して印加される第1励磁信号DR1の電流の極性が正から負、また第2励磁コイル52に対して印加される第2励磁信号DR2の電流の極性が負から正に変化する電流領域で誘導起電力により発生する。一方、第2検出信号は、正極性のパルスであり、第1励磁コイル51に対して印加される第1励磁信号DR1の電流の極性が負から正、また第2励磁コイル52に対して印加される第2励磁信号DR2の電流の極性が正から負に変化する電流領域で誘導起電力により発生する。
また、検出信号比較部212は、極性の異なる検出信号の時刻t1と時刻t2との時間幅(後述)と、T/2との差分を求め、この差分を時間−出力信号変換部213へ出力する。
【0080】
時間−出力信号変換部213は、第1検出信号及び第2検出信号の出力される周期(
図7(b)における時刻t1と時刻t2との間隔、すなわち時間幅)に基づき、電圧情報としてのデューティ比を有するパルスを生成し、このパルスを電圧情報として帰還信号調整部214に対して出力する。すなわち、時間−出力信号変換部213は、電圧情報として、上記時間幅から帰還信号の電圧値を示すデューティ比を求め、この帰還信号の電圧値を示すデューティ比に応じた矩形波を帰還信号調整部214に対して出力する。
【0081】
帰還信号調整部214は、情報が矩形波信号で示されている場合、デューティ比に対応した直流電圧をPWM(Pulse Width Modulation)回路等により発生する。そして、帰還信号調整部214は、積分器などによりPWM信号を直流信号に変換して、この直流信号を帰還信号として励磁信号調整部216へ出力する。
また、帰還信号調整部214は、データ信号変換部215に対して、直流電圧の電圧値を示す電圧情報を供給する。
【0082】
データ信号変換部215は、帰還信号調整部214から供給される電圧情報を、予め設定された増幅度により増幅し、データ信号判定部104に対して出力する。
このデータ信号変換部215における増幅度は、予め線形的に測定可能な範囲の帰還信号の電圧値の範囲のみをデータ信号として出力する値に設定されている。すなわち、この増幅度は、定常磁界をキャンセルする磁界と、この磁界を発生する電圧値の帰還信号とが線形性を保つ範囲のみが増幅された電圧となり、範囲外の電圧を飽和させて一定電圧とするものである。すなわち、データ信号変換部215は、帰還信号に変換された電圧値とこの電圧値によって生成される磁界強度が線形性を有する帰還信号の電圧範囲外の帰還信号の電圧値が飽和する予め設定された増幅率により、帰還信号を増幅して出力する。
【0083】
データ信号判定部104は、データ信号変換部215から供給されるデータ信号の電圧値が予め設定したデータ範囲(出力データ指定範囲)に含まれているか否かの判定を行う。データ信号判定部104は、内部の記憶部に上記データ範囲が予め書き込まれて記憶されている。このデータ範囲は、データ信号変換部215で増幅されて出力されるデータ信号の示す電圧値が、磁界とこの磁界を示す電圧値とが線形関係にある領域に含まれているか否かを判定する電圧値の範囲である。
ここで、データ信号判定部104は、データ信号の電圧値がデータ範囲に含まれていない場合、エラーを示すデータ信号(エラー信号)を、外部の磁界強度検出装置に対して出力する。また、データ信号判定部104は、データ信号の電圧値がデータ範囲に含まれている場合、電圧値を示すデータ信号を、外部の磁界強度検出装置に対して出力する。
【0084】
また、帰還信号調整部214における処理において、例えば、第1検出信号から第2検出信号までの時間幅が、第2検出信号から第1検出信号までの時間幅に対して長い場合、定常磁界が負である必要がある。このため、帰還信号調整部214は、定常磁界をキャンセルする正の磁界を発生させる直流電圧の帰還信号を発生する。
一方、第2検出信号から第1検出信号までの時間幅が、第1検出信号から第2検出信号までの時間幅に対して長い場合、定常磁界が正であるため、帰還信号調整部214は、定常磁界をキャンセルする負の磁界を発生させる直流電圧の帰還信号を発生する。
【0085】
すなわち、帰還信号調整部214は、電圧情報であるパルス列が供給されると、このパルスのデューティ比に対応した電流値の帰還信号を生成し、生成した帰還信号を励磁信号調整部216に対して出力する。
ここで、帰還信号調整部214は、例えば、オペアンプを用いて構成された電圧電流変換回路が設けられている。この電圧電流変換回路において、オペアンプ機能のアンプを用い、正入力と負入力の電位差がゼロに維持されるようにこのアンプが機能するため、アンプの出力から正入力への電流信号は、外部磁界と比例関係となる。
【0086】
そして、励磁信号調整部216は、帰還信号調整部214から供給される第1帰還信号(If)を、第1励磁コイル51に印加する第1励磁信号DR1に対して重畳する。また、励磁信号調整部216は、上記第1帰還信号と極性が逆の第2帰還信号を、第2励磁コイル52に印加する第2励磁信号DR2に重畳する。これにより、第1励磁コイル51及び第2励磁コイル52において、上記第1帰還信号及び第2帰還信号による磁界が発生し、磁気素子50内の磁性体コア54内に発生する磁界が一定とするように調整される。結果として、外部の定常磁界に依存せず、検出コイル53で検出される第1検出信号と第2検出信号の時間間隔を一定(T/2)に保持することができる。
【0087】
次に、
図8は、
図6における帰還信号調整部214、励磁信号調整部216及び励磁信号生成部217の構成例を示す図である。この
図8において、励磁信号調整部216は、差動増幅器2001(第1励磁信号生成部)、差動増幅器2002(第2励磁信号生成部)、インバータ2003及び抵抗2004を備えている。ここで、抵抗2004の抵抗値は抵抗値Rである。抵抗2004は、励磁信号生成部217の出力端子と、差動増幅器2001の(−)端子(反転入力端子)及びインバータ2003の入力端子との間に介挿されている。この抵抗2004は、励磁信号生成部217の出力する三角波励磁信号の電圧Vexを、電圧電流変換して、駆動電流Iexとして作動増幅器2001の(−)端子に対して供給する。
【0088】
これにより、差動増幅器2001は、第1励磁コイル51に対して駆動電流Iexを供給する。
また、インバータ2003は、出力端子が作動増幅器2002の(−)端子(反転入力端子)に接続されており、電流Iの極性を変え(流れる方向を逆とし)、作動増幅器2002の(−)端子に対して供給する。これにより、差動増幅器2002は、差動増幅器2001とは電流の絶対値が等しく、極性の異なる駆動電流を第2励磁コイル52に対して供給する。
【0089】
また、帰還信号調整部214は、帰還電流(If)を差動増幅器2001に対して供給する帰還信号調整部2141と、帰還電流(−If)を差動増幅器2002に対して供給する帰還信号調整部2142とを備えている。
帰還信号調整部2141は、電圧情報であるパルス列が供給されると、このパルス列のデューティ比に対応した電流値の第1帰還信号(If)を生成し、この第1帰還信号を差動増幅器2001の(−)端子に対して供給する。これにより、第1励磁信号DR1(Iex)に対して、第1帰還信号が重畳される。
【0090】
また、帰還信号調整部2142は、電圧情報であるパルス列が供給されると、このパルス列のデューティ比に対応した電流値の第2帰還信号(−If)を生成し、この第2帰還信号を差動増幅器2002の(−)端子に対して供給する。これにより、第2励磁信号DR2(−Iex)に対して、第2帰還信号が重畳される。
【0091】
次に、
図9は、
図6における帰還信号調整部214、励磁信号調整部216及び励磁信号生成部217の他の構成例を示す図である。この
図9において、励磁信号調整部216Aは、差動増幅器2001(第1励磁信号生成部)、差動増幅器2002(第2励磁信号生成部)、インバータ2003及び抵抗2004を備えている。ここで、抵抗2004の抵抗値は抵抗値Rである。抵抗2004は、励磁信号生成部217の出力端子と、差動増幅器2001の(−)端子(反転入力端子)及びインバータ2003の入力端子との間に介挿されている。この抵抗2004は、励磁信号生成部217の出力する三角波励磁信号の電圧Vexを、電圧電流変換して、駆動電流Iexとして作動増幅器2001の(−)端子に対して供給する。
インバータ2003は、出力端子が作動増幅器2002の(−)端子(反転入力端子)に接続されており、電流Iの極性を変え(流れる方向を逆とし)、作動増幅器2002の(−)端子に対して供給する。これにより、差動増幅器2002は、差動増幅器2001とは極性が異なる駆動電流−Iexを第2励磁コイル52に対して供給する。
【0092】
また、帰還信号調整部214は、帰還信号調整部2141A及帰還信号調整部2142Aを備えている。
帰還信号調整部2141Aは、電圧情報であるパルス列が供給されると、このパルス列のデューティ比に対応した電流値の第1帰還信号(−If)を生成し、この第1帰還信号を差動増幅器2001の(+)端子に対して供給する。これにより、第1励磁信号DR1(Iex)に対して、第1帰還信号が重畳される。
また、帰還信号調整部2142Aは、電圧情報であるパルス列が供給されると、このパルス列のデューティ比に対応した電流値の第2帰還信号(If)を生成し、この第2帰還信号を差動増幅器2002の(+)端子に対して供給する。これにより、第2励磁信号DR2(−Iex)に対して、第2帰還信号が重畳される。
【0093】
上述した第1帰還信号及び第2帰還信号の生成はアナログ処理によるものであるが、以下に示すデジタル処理で生成する構成を用いても良い。
検出信号比較部212は、第1検出信号から第2検出信号までの時間幅を計測し、この時間幅Tw(Tp、Tmなど)と三角波の周期Tの半分の時間、すなわちT/2との差分Td(=Tw−(T/2))を求め、帰還信号変換部1014に対して出力する。
時間−出力信号変換部213は、検出信号比較部212から時間情報である差分Tdが供給されると、この差分Tdから、FB信号としての帰還信号の電圧を生成する電圧情報を生成する。
ここで、時間−出力信号変換部213には、差分Tdとこの差分Tdに対応したデジタル値の電圧情報との対応を示す時間電圧情報テーブルが内部の記憶部に予め書き込まれて記憶されている。
【0094】
そして、時間−出力信号変換部213は、この内部の記憶部に記憶されている時間電圧情報テーブルから、供給される差分Tdに対応する電圧情報を読み出し、帰還信号調整部214に対して出力する。例えば、電圧情報は、帰還信号の電圧値を示すデジタル値のデータである。また、電圧情報は、差分Tdの極性が付され、すなわち差分Tdが正の場合に正の極性を有し、差分Tdが負の場合に負の極性を有している。したがって、磁気素子50に対して、正の極性の定常磁界Hexが印加されている場合、励磁信号調整部216Aは、三角波電圧信号から生成される第1励磁信号DR1の電流値に対して負の極性の帰還電流Ifを帰還信号として重畳し、一方、負の極性の定常磁界Hexが印加されている場合、三角波電圧信号から生成される第1励磁信号DR1の電流値Iに対して正の極性の帰還電流Ifを第1帰還信号として重畳する。また、励磁信号調整部216Aは、第2励磁信号DR2に対し、第1励磁信号DR1と異なる極性の帰還電流(−If)の帰還電流を第2帰還信号として重畳する。
【0095】
帰還信号調整部214は、時間−出力信号変換部213から供給される電圧情報に基づき、電圧情報の示す電圧値の帰還信号を生成し、FB信号として励磁信号調整部216Aに対して出力する。
ここで、帰還信号調整部214は、電圧情報がデジタル値であるので、例えば内部にD/A変換器を備え、供給されるデジタル値である電圧情報をD/A変換器に入力して直流電圧を得て、これを直流電流に変換して、第1帰還信号、第2帰還信号として励磁信号調整部216Aに対して出力する。
励磁信号調整部216Aは、すでに述べたように、帰還信号調整部214から供給される第1帰還信号を重畳させた第1励磁信号DR1を第1励磁コイル51に対して供給し、第2帰還信号を重畳させた第2励磁信号DR2を第2励磁コイル52に対して、三角波電流信号として印加する。
【0096】
また、第1励磁信号DR1及び第2励磁信号DR2の各々にそれぞれ第1帰還信号、第2帰還信号が重畳されている場合、検出信号比較部212が検出する第1検出信号及び第2検出信号の時間間隔はT/2近傍にある。
このため、検出信号比較部212は、すでに第1励磁信号DR1及び第2励磁信号DR2の各々にそれぞれ第1帰還信号、第2帰還信号が重畳されている場合、出力する時間情報が、T/2とするに必要な帰還信号と現在印加している帰還信号との差分の電流値を示している。したがって、検出信号比較部212は、第1励磁信号DR1及び第2励磁信号DR2が印加されている場合、上述した差分の電流値を示す時間情報として差分Tdを時間−出力信号変換部213に対して出力する。
【0097】
また、時間−出力信号変換部213は、差分の電流値を示す時間情報である差分Tdが供給されると、すでに述べたように、この差分Tdに対応する電流値を生成するための電圧情報を、内部の記憶部に記憶されている時間電圧情報テーブルから読み出し、帰還信号調整部214に対して出力する。
また、帰還信号調整部214は、内部に記憶部を有し、この記憶部に電圧情報が積算されて記憶され、この積算された電圧情報を用いて、励磁信号調整部216Aに対して出力する帰還信号(第1帰還信号及び第2帰還信号)の電流の生成を行い、励磁信号調整部216Aに対して出力する。
ここで、帰還信号調整部214は、差分Tdに対応する電圧情報が予め設定された設定電圧範囲内に含まれるか否かの判定を行う。
【0098】
そして、帰還信号調整部214は、この設定電圧範囲内に電圧情報が含まれていない場合、磁気素子50に対して印加されている定常磁界をキャンセルする際に、印加しても磁界が変化しない、すなわちキャンセルに影響がない小さな電圧と判定する。
すなわち、帰還信号調整部214は、磁界強度を変化させる際の制御の精度の誤差となり、ほぼ第1検出信号及び第2検出信号の時間幅がT/2であると判定する。このとき、帰還信号調整部214は、この誤差範囲とされた電圧情報を、内部の記憶部の直前までの時間情報に積算せず、破棄する。
【0099】
データ信号変換部215は、帰還信号調整部214から供給される電圧情報を、予め設定された増幅度により増幅し、外部に対して出力する。
このデータ信号変換部215における増幅度は、予め線形的に測定可能な範囲の帰還信号の電圧値の範囲のみをデータ信号として出力する値に設定されている。すなわち、この増幅度は、定常磁界をキャンセルする磁界と、この磁界を発生する電圧値の帰還信号とが線形性を保つ範囲のみが増幅された電圧となり、範囲外の電圧を飽和させて一定電圧とするものである。すなわち、データ信号変換部215は、帰還信号の電圧値とこの電圧値によって生成される磁界強度が線形性を有する帰還信号の電圧範囲外の帰還信号の電圧値が飽和する予め設定された増幅率により、帰還信号を増幅して出力する。
【0100】
したがって、このデータ信号は、定常磁界をキャンセルする磁界の強度を求める磁界電圧、すなわち定常磁界の強度を示すものである。外部にある磁界強度検出装置(不図示)は、このデータ信号が示す磁界電圧の電圧値を磁界の強度に変換して、変換した磁界の強度を出力する。
【0101】
ここで、磁界強度検出装置には、磁界電圧の電圧値と、この磁界電圧の電圧値に対応する磁界の強度との対応を示す磁界強度テーブルが、内部の記憶部に予め書き込まれて記憶されている。
磁界強度検出装置は、磁気素子制御装置20から供給される、データ信号の示す磁界電圧の電圧値に対応する磁界強度を、磁界強度テーブルから読み出し、定常磁界(Hex)の強度の数値とし、例えば、自身に設けられた表示部に表示する。本発明は、磁気素子制御装置100と上述した図示しない磁界強度検出装置とにより、磁気検出装置を構成する。
【0102】
次に、
図6及び
図10を用いて、本実施形態における磁気素子制御装置20の動作の説明を行う。
図10は、第2の実施形態における磁気素子制御装置20の動作例を示すフローチャートである。第2の実施形態においては、デジタル処理により帰還信号を生成する構成の場合で説明する。また、アナログ処理により帰還信号を生成する構成についても、
図10のフローチャートの動作により同様に行うことができる。
【0103】
ステップS11:
検出信号増幅部211は、検出コイル53の両端の電圧を増幅し、検出信号比較部212へ出力する。
そして、検出信号比較部212は、第1検出信号の検出された時刻t1及び第2検出信号が検出された時刻t2間の時間幅Twから、基準の時間幅であるT/2を減算し、減算結果の差分Tdを時間−出力信号変換部213に対して時間情報として出力する。また、この時間情報をデジタル値に変換する場合、TDC(Time to Digital Converter)等を用いることが望ましい。
【0104】
ステップS12:
次に、時間−出力信号変換部213は、供給される時間情報である差分Tdに対応した帰還信号の電圧値を示す電圧情報を、記憶部に記憶されている時間電圧情報テーブルから読み出す。この時間電圧情報テーブルは、時間情報とこの時間情報に対応する電圧情報(すなわち差分Tdを0とするための磁界強度に対応した電圧値を示す情報)とを対応付けたテーブルである。
そして、時間−出力信号変換部213は、読み出した電圧情報を、帰還信号調整部214に対して出力する。
【0105】
ステップS13:
次に、帰還信号調整部214は、内部の記憶部に記憶されている、現在の第1励磁信号DR1及び第2励磁信号DR2に重畳させている帰還信号(第1帰還信号及び第2帰還信号)を示す直前の電圧情報を読み出す。
そして、帰還信号調整部214は、記憶部から読み出した電圧情報に対して、検出信号から供給される電圧情報を加算する。
帰還信号調整部214は、加算結果の電圧情報に基づいて、この電圧情報の示す電圧値に対応する電流値の帰還信号を生成し、励磁信号調整部216に対して出力する。
また、帰還信号調整部214は、加算結果の電圧情報を新たな直前の電圧情報として、内部の記憶部に書き込んで記憶させ、かつこの電圧情報(デジタル値)をデータ信号変換部215に対して出力する。
【0106】
ステップS14:
次に、励磁信号調整部216には、第1帰還信号及び第2帰還信号が帰還信号調整部214から供給される。
そして、励磁信号調整部216は、クロック信号調整部103の出力するクロック信号に同期した三角波信号から生成した励磁信号に対して、帰還信号調整部214から供給される帰還信号を重畳する。すなわち、励磁信号調整部216は、第1励磁信号DR1に対して第1帰還信号を重畳し、第2励磁信号DR2に対して第2帰還信号を重畳する。
そして、励磁信号調整部216は、第1励磁信号DR1を第1励磁コイル51に対して印加し、第2励磁信号DR2を第2励磁コイル52に対して印加する。
【0107】
ステップS15:
次に、データ信号変換部215は、帰還信号調整部214より供給される電圧情報を予め設定したオフセット値によりオフセット調整し、かつ、予め設定した増幅度により増幅し、増幅結果をデータ信号としてデータ信号判定部104に対して出力する。
【0108】
ステップS16:
次に、データ信号判定部104は、データ信号の示す電圧値が予め設定されているデータ範囲に含まれているか否かの判定を行う。
このとき、データ信号判定部104は、データ信号の示す電圧値がデータ範囲に含まれている場合、処理をステップS17へ進め、一方、データ信号の示す電圧値がデータ範囲に含まれていない場合、処理をステップS18へ進める。
【0109】
ステップS17:
次に、データ信号判定部104は、データ信号がデータ範囲に含まれているため、このデータ信号をそのまま、外部に配置された磁界強度検出装置に対して出力する。
そして、外部の磁界強度検出装置は、供給されたデータ信号の示す電圧値に対応した磁界強度を、内部の記憶部に記憶された磁界強度テーブルから読み出し、自身の表示部に読み出した磁界強度を表示する。なお、データ信号判定部104の出力データ信号はアナログ値であるが、磁気素子制御装置10内で、A/D変換することにより、出力データ信号をデジタル化することも可能である。
【0110】
ステップS18:
一方、データ信号判定部104は、データ信号がデータ範囲に含まれていないため、このデータ信号を破棄し、エラー信号を外部に配置された磁界強度検出装置に対して出力する。
【0111】
このとき、この磁界強度検出装置は、例えば、エラー信号が供給されると自身の表示部に、測定範囲を超えていることをユーザに対して通知する情報を表示する。
電源が供給されると、磁気素子制御装置20は、上述した
図10に示すフローチャートに従い、ステップS11からステップS18の処理を行う。
また、磁気素子制御装置110に対して電源が投入された際、帰還信号調整部1013は、内部の記憶部にある電圧情報の積算されたデータをリセットし、初期値として0を書き込む。
【0112】
本実施形態は、FB信号である第1帰還信号及び第2帰還信号の各々を、第1励磁信号DR1、第2励磁信号DR2それぞれに重畳させ、この第1励磁信号DR1を第1励磁コイル51に印加し、第2励磁信号DR2を第2励磁コイル52に対して印加する。このため、本実施形態によれば、磁気感度の温度依存性と磁気素子の出力値の温度依存性との双方を同時に抑制することが可能である。また、従来の磁気平衡式で使用するFBコイルが設けられた磁気素子のFBコイルと第2励磁コイルとして使用することが可能であるため、磁気素子の構造を新規に設計する必要がないという利点がある。
【0113】
ここで、磁気素子を小型化するのみでなく、磁気素子のサイズが磁気平衡式と同等の場合、FBコイルの領域を用い、励磁コイルや検出コイルの巻数を増加させることにより、励磁効率の増加によって、さらに定常磁界の測定範囲を広げたり、検出コイルにおける検出信号のS/N(Signal/Noise)比を向上させることができる。
また、本実施形態によれば、オフセット電圧とともに帰還信号を励磁信号に重畳させるため、周囲の環境による磁界強度に対応したオフセット電圧をオフセット電圧調整部1018に設定しておくことにより、精度良く容易に測定対象の磁界強度を測定することができる。
【0114】
また、任意の時間幅の測定周期をクロック信号に同期させて生成し、第1励磁コイル51及び第2励磁コイル52に対して励磁信号を印加して測定処理を行う期間と、第1励磁コイル51及び第2励磁コイル52に対しての励磁信号の印加を停止して測定を行わない期間を交互に設け、第1励磁コイル51び第2励磁コイル52を間欠動作させる。ここで、当然のことながら、第1励磁コイル51と第2励磁コイル52とは、互いの温度特性をキャンセルする必要があるため、同一のタイミングで簡潔動作させる必要がある。
これにより、磁気素子50自体の発熱が抑制され、温度変化を低減することにより、より精度の高い磁界強度の測定が行える。
【0115】
さらに、この間欠動作の機能を用いて、複数の磁気素子の励磁コイルを順番に駆動することにより、1つの磁気素子制御装置により、複数の磁気素子により定常磁界を測定することが可能である。
例えば、3個の磁気素子の各々の測定軸、すなわちx軸、y軸及びz軸の3軸のそれぞれを直交するように磁気素子を設け、3次元空間における磁界強度及び磁界の方向を測定する他軸の磁気素子の制御に用いることができる。
【0116】
<第3の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第3の実施形態を説明する。本実施形態は、FG方式の磁気素子を用いて、磁気平衡式及び磁気比例式の双方による磁気検出処理を行う。
図11は、本発明の第3の実施形態による磁気素子制御装置30及び磁気素子50からなる磁気検出装置の構成を説明する図である。磁気素子制御装置30は、磁気素子制御部31と、クロック信号生成部102と、クロック信号調整部103と、データ信号判定部104とを備えている。第1の実施形態または第2の実施形態と同様の構成には同一の符号を付してある。
【0117】
磁気素子制御部31は、検出信号増幅部311と、検出信号比較部312と、時間−出力信号変換部313と、帰還信号調整部314、データ信号変換部315と、励磁信号調整部316と、励磁信号生成部317と、第1アナログスイッチ321と、第2アナログスイッチ322とを備えている。ここで、検出信号増幅部311、検出信号比較部312、時間−出力信号変換部313、帰還信号調整部314、データ信号変換部315、励磁信号調整部316及び励磁信号生成部317の各々は、
図6における検出信号増幅部211、検出信号比較部212、時間−出力信号変換部213、帰還信号調整部214、データ信号変換部215、励磁信号調整部216及び励磁信号生成部217とそれぞれ同様の機能を有する。
以下、
図6の磁気素子制御装置20の各構成及び動作と異なる点を説明する。
【0118】
第3の実施形態と第2の実施形態と異なる構成は、磁気平衡式の磁界測定と磁気比例式の磁界測定とのいずれにも対応することができる点である。
すなわち、第3の実施形態は、第2の実施形態における磁気平衡式の磁界測定の構成を、磁気比例式の磁界測定の構成に、利用者が任意に選択して切り換えることができる。以下、帰還電圧を生成する処理をデジタル値によって行う場合で説明するが、帰還電圧の生成をアナログ処理で行う場合も同様である。
【0119】
この
図11において、第1アナログスイッチ321及び第2アナログスイッチ322の各々は、磁気平衡式の構成とするか、あるいは磁気比例式の構成とするかの切替を行っている。
すなわち、磁気素子制御部31は、磁気素子制御装置30の図示しない切替スイッチが、磁気平衡式の構成とする制御を示す状態であることを検出すると、第1アナログスイッチ321を導通状態(ON)とし、第2アナログスイッチ322を非導通状態(OFF)とする。
これにより、時間−出力変換部313で、時間を示す差分Tdが帰還信号調整部314へ出力され、第2の実施形態と同様の磁界の測定処理が行われる。
【0120】
一方、磁気素子制御部31は、磁気素子制御装置30の図示しない切替スイッチが、磁気比例式の構成とする制御を示す状態であることを検出すると、第1アナログスイッチ321を非導通状態(OFF)とし、第2アナログスイッチ322を導通状態(ON)とする。
これにより、時間−出力信号変換部313は、時間を示す差分Tdに対応する電圧情報を求めた後、この電圧情報を帰還信号調整部314へ出力せず、データ信号変換部315に対して出力することになる。
そして、時間−出力変換部313は、上記切替スイッチが磁気比例式の構成とする制御を示す状態である場合、検出信号比較部312から供給される差分Tdに基づいて磁界強度を示す電圧値を出力する。
【0121】
ここで、時間−出力変換部313には、差分Tdとこの差分Tdに対応する磁気強度を示す電圧値との対応を示す磁気比例式電圧テーブルが、内部の記憶部に予め書き込まれて記憶されている。
そして、時間−出力変換部313は、検出信号比較部312から供給される差分Tdに対応する電圧値を、磁気比例式電圧テーブルから読み出し、磁気比例式の場合に対応して設定された増幅率によりこの電圧値を増幅し、データ信号判定部104に対して出力する。この磁気比例式の場合の増幅率も、磁気比例式の場合の増幅率と同様に、電圧値と磁気強度とが線形関係にある領域のみを取り出すためのリミッタとなる値に設定されている。
したがって、データ信号変換部315は、磁気平衡式の構成である場合、磁気平衡式の場合に対応して設定された増幅率により帰還信号調整部314から供給される電圧情報を増幅し、データ信号の電圧値として、データ信号判定部104に対して出力する。
また、データ信号判定部104は、磁気比例式の場合も、磁気平衡式の場合と同様に、予め設定された線形関係が維持されている範囲内であるか否かの判定を行う。
【0122】
次に、
図11及び
図12を用いて第3の実施形態における磁気素子制御装置130の磁気素子制御処理を説明する。
図12は、第3の実施形態における磁気素子制御装置30が行う磁気素子制御処理(デジタル値による帰還電圧の生成処理)の動作例を説明するフローチャートである。
【0123】
ステップS21:
検出信号増幅部311は、検出コイル53の両端の電圧を増幅し、検出信号比較部1012へ出力する。
検出信号比較部312は、第1検出信号の検出された時刻t1及び第2検出信号が検出された時刻t2間の時間幅Twから、基準の時間幅であるT/2を減算し、減算結果の差分Tdを時間−出力信号変換部313に対して、測定された時間情報として出力する。
【0124】
ステップS22:
磁気素子制御部31は、切替スイッチが磁気平衡式の構成として磁気素子制御装置30を使用すること示す帰還制御の状態(磁気平衡式モード)、あるいは磁気比例式の構成として磁気素子制御装置30を使用することを示す帰還制御でないことを示す状態(磁気比例式モード)のいずれであるかの検出を行う。
ここで、磁気素子制御部31は、切替スイッチが磁気平衡式モードである場合、処理をステップS23へ進め、一方、切替スイッチが磁気比例式モードである場合、処理をステップS34へ進める。
【0125】
ステップS23:
次に、磁気素子制御部31は、切替スイッチが磁気平衡モードである場合、第1アナログスイッチ321を導通状態とし、第2アナログスイッチ322を非導通状態とする。
これにより、時間−出力信号変換部313は、検出信号比較部312から供給される差分Tdから、この差分Tdに対応する電圧値を求め、この求めた電圧値を電圧情報として、帰還信号調整部314に対して出力する。この差分Tdから電圧値を求める処理は、第2の実施形態と同様である。
【0126】
ステップS24:
次に、時間−出力信号変換部313は、検出信号比較部312から供給される差分Tdから、この差分Tdに対応する電圧値を求め、この電圧値を電圧情報として帰還信号調整部314に対して出力する。
電圧情報が供給されると、帰還信号調整部314は、自身の記憶部に書き込まれている直前の帰還電圧の電圧値に対して、この電圧情報の示す電圧値を加算し、加算結果を新たな帰還電圧の電圧値とする。
【0127】
ステップS25:
次に、帰還信号調整部314は、加算結果の新たな帰還電流の電流値が予め設定した最大電流以下(指定範囲内)であるか否かの判定を行う。この最大電流は、第1励磁コイル51あるいは第2励磁コイル52に対して印加する帰還電流(第1帰還信号、第2帰還信号)の電流値の範囲を規定する第1電流湯閾値範囲(−から+の極性を有する電圧値の範囲)であり、例えば、重畳される第1励磁信号DR1、第2励磁信号DR3に対して印加すると、第1励磁コイル51、第2励磁コイル52が破損する絶対最大定格の電流値の90%程度の電流値に設定されている。
このとき、帰還信号調整部314は、この第1電流閾値範囲に含まれる場合、処理をステップS26へ進め、この第1電流閾値範囲に含まれない場合、処理をステップS28へ進める。
また、帰還信号調整部314は、帰還電流が第1電流閾値範囲に含まれると判定された場合、内部に設けられたカウンタのカウント処理、すなわちカウント値(処理の繰り返し回数)をインクリメント(カウント値に1を加算)する。
【0128】
ステップS26:
次に、帰還信号調整部314は、内部に設けられたカウンタのカウント値が、内部の記憶部に予め書き込まれて記憶され(内部の記憶部に設定され)ているカウント閾値未満か否かの判定を行う。
このとき、帰還信号調整部314は、カウンタのカウント値がカウント閾値未満である場合、処理をステップS27へ進め、一方、カウント値がカウント閾値以上である場合、処理をステップS28へ進める。
【0129】
上記カウント閾値は、帰還電圧を求める際に収束しない場合を考えて設定したものである。したがって、カウント閾値は、一定の定常磁界を磁気素子50に印加し、この定常磁界の磁界強度を誤差範囲内で測定できる、すなわち定常磁界をキャンセルする帰還電圧を算出することができた帰還電圧の算出の繰り返し回数を求める。そして、この繰り返し回数に基づき、例えばこの繰り返し回数に任意の倍数(2等の任意の数値)を乗じた数値をカウント閾値として、帰還信号調整部314が内部に有する記憶部に書き込んで記憶させておく。
【0130】
ステップS27:
次に、帰還信号調整部314は、差分Tdから求められた電圧情報の電圧値から生成する帰還信号(第1帰還信号及び第2帰還信号)の絶対値が、予め設定された第2電流閾値未満か否かの判定を行う。
このとき、帰還信号調整部314は、差分Tdから求められた電圧情報の電圧値から生成する帰還信号の電流値が第2電流閾値以上である場合、処理をステップS30へ進め、一方、帰還信号の電流値が第2電流閾値未満である場合、処理をステップS29へ進める。
ここで、第2電流閾値範囲は、現在の帰還信号の電流値に加算しても、測定誤差を超える磁界強度を変化させる電流値か否かを判定するものである。したがって、帰還信号調整部314は、第2電流閾値範囲に含まれる電流値を、測定における誤差内の磁界強度の変化しか与えない電流値と判定し、この帰還信号の電流値を発生する電圧情報の示す電圧値を、内部の記憶部に積算されている帰還電圧に対して加算する処理をおこなわない。また、第2電流閾値範囲は、実験などにより求め、帰還信号調整部314の内部の記憶部に予め書き込まれて記憶されている。
【0131】
ステップS28:
帰還信号調整部314は、磁気素子50に対して現在印加されている定常磁界が測定不能として、データ信号判定部104を介し、外部の磁界強度検出装置に対してエラー信号を出力する。
エラー信号が供給されることにより、磁界強度検出装置は、磁気素子50に対して現在印加されている定常磁界が測定不能であることを示す通知を、自身の表示部に対して表示する。
【0132】
ステップS29:
次に、帰還信号調整部314は、新たに求めた帰還電圧を内部の記憶部に対し、直前の帰還電圧として書き込んで記憶させる。
また、帰還信号調整部314は、この新たに求めた帰還電圧の電圧値に対応する第1帰還信号(If)及び第2帰還信号(−If)を生成し、励磁信号調整部316に対して出力する。
そして、励磁信号調整部316は、励磁信号生成部317から供給される三角波から三角波電流信号を生成する。
励磁信号調整部1016は、生成した三角波電流信号に対して、帰還信号調整部314から供給される第1帰還信号を第1励磁信号DR1に重畳し、第2帰還信号を第2励磁信号DR2に重畳させ、それぞれ第1励磁コイル51、第2励磁コイル52に対して印加する。この後、励磁信号調整部316は、処理をステップS21へ戻す。
【0133】
ステップS30:
次に、帰還信号調整部316は、内部の記憶部に記憶されている帰還電圧の電圧値を読み出し、データ信号変換部315に対して出力する。
そして、データ信号変換部1015は、帰還信号調整部1013から供給された帰還電圧の電圧値を予め設定された増幅率により増幅し、データ信号としてデータ信号判定部104に対して出力する。
【0134】
ステップS31:
次に、データ信号判定部104は、データ信号変換部315から供給されるデータ信号の示す電圧値が、内部の記憶部に記憶されているデータ範囲に含まれているか否かの判定をおこなう。このとき、データ信号判定部104は、データ信号の示す電圧値がデータ範囲に含まれている場合、処理をステップS32へ進める。一方、データ信号判定部104は、データ信号の示す電圧値がデータ範囲に含まれていない場合、処理をステップS33へ進める。
【0135】
ステップS32:
次に、データ信号判定部104は、データ信号変換部315から供給されたデータ信号を、外部の磁界検出装置に対して出力する。
この磁界検出装置は、すでに述べたように、内部の記憶部に記憶されている磁界強度テーブルから、磁気素子制御装置30から供給されたデータ信号の示す電圧値に対応する磁界強度を読み出し、自身の表示部に対して表示する。
【0136】
ステップS33:
次に、データ信号判定部104は、データ信号変換部315から供給されたデータ信号を破棄し、エラー信号を外部の磁界検出装置に対して出力する。
この磁界検出装置は、すでに述べたように、磁気素子制御装置30からエラー信号が供給されると、印加されている定常磁界が測定不能であることを示す通知を、自身の表示部に対して表示する。
【0137】
ステップS34:
次に、磁気素子制御部31は、切替スイッチが磁気比例モードである場合、第1アナログスイッチ321を非導通状態とし、第2アナログスイッチ322を導通状態とする。
これにより、時間−出力信号変換部313は、上記切替スイッチが磁気比例式の構成とする制御を示す構成であるため、検出信号比較部312から供給される差分Tdに基づいて磁界強度を示す電圧値を、データ信号変換部315に対して出力する。
【0138】
ステップS35:
次に、時間−出力信号変換部313は、検出信号比較部312から供給される差分Tdに基づいて磁界強度を示す電圧値を求め、求めた電圧値をデータ信号変換部315に対して出力する。
この磁界比例式による磁界強度の検出は、すでに述べた従来例の場合と同様である。
【0139】
次に、
図11及び
図13を用いて第3の実施形態における磁気素子制御装置30の他の磁気素子制御処理を説明する。
図13は、第3の実施形態における磁気素子制御装置130が行う磁気素子制御処理(アナログ値による帰還電圧の生成処理)の動作例を説明するフローチャートである。
【0140】
ステップS41:
磁気素子制御部31は、切替スイッチが磁気平衡式の構成として磁気素子制御装置30を使用すること示す状態(磁気平衡式モード)、あるいは磁気比例式の構成として磁気素子制御装置30を使用することを示す状態(磁気比例式モード)のいずれであるかの検出を行う。
ここで、磁気素子制御部31は、切替スイッチが磁気平衡式モードである場合、処理をステップS42へ進め、一方、切替スイッチが磁気比例式モードである場合、処理をステップS51へ進める。
【0141】
ステップS42:
次に、磁気素子制御部31は、切替スイッチが磁気平衡モードである場合、第1アナログスイッチ321を導通状態とし、第2アナログスイッチ322を非導通状態とする。
これにより、磁気素子制御装置30は、磁気平衡式による磁界強度の検出をおこなう構成となる。
【0142】
ステップS43:
次に、検出信号増幅部311は、検出コイル53の両端の電圧を予め設定された所定の増幅率により増幅し、検出信号比較部312へ出力する。
そして、検出信号比較部312は、検出された第1検出信号及び第2検出信号を時間情報として、時間−出力信号変換部313に対して出力する。
【0143】
ステップS44:
検出信号が供給されると、時間−出力信号変換部313は、第1検出信号及び第2検出信号の出力される周期(時間情報)に基づき、電圧情報としてのデューティ比を有するパルスの列(以下パルス列)を生成し、このデューティ比を有するパルス列を電圧情報として帰還信号調整部314に対して出力する。
【0144】
ステップS45:
帰還信号調整部314は、供給されるデューティ比を有するパルス列により、PWM回路などにより、直流電圧を生成して、この直流電圧に対応した電流値の帰還信号(第1帰還信号及び第2帰還信号)を生成し、励磁信号調整部316に対して出力する。
ここで、帰還信号調整部314は、例えば、オペアンプを用いて構成された電圧電流変換回路が設けられている。この電圧電流変換回路において、オペアンプ機能のアンプを用い、正入力と負入力の電位差がゼロに維持されるようにこのアンプが機能するため、アンプの出力から正入力への電流信号は、外部磁界と比例関係となる。
【0145】
そして、この電流信号に比例する信号を帰還信号(第1帰還信号及び第2帰還信号)として、励磁コイル(第1励磁コイル51、第2励磁コイル52)に印加することで、この帰還信号による磁界が発生し、磁気素子50内の磁性体コアに印加される磁界が一定になるように調整する。結果として、外部の定常磁界に依存せず、第1検出信号と第2検出信号の時間間隔を一定(T/2)に保持することができる。ここで、帰還信号調整部314は、パルス列により、PWM回路で生成された直流電圧から第1帰還信号を生成し、この第1帰還信号の電流と極性の異なる同一の電流値の電流を第2帰還信号として生成する。
【0146】
ステップS46:
次に、励磁信号調整部316は、帰還信号調整部314から供給される第1帰還信号及び第2期間信号の各々を、三角波から生成した三角波電流信号である第1励磁信号DR1、第2励磁信号DR2それぞれに対して重畳する。
そして、励磁信号調整部316は、生成した第1励磁信号DR1を第1励磁コイル51に対して印加し、第2励磁電流DR2を第2励磁コイル52に対して印加する。
【0147】
ステップS47:
次に、帰還信号調整部314は、PWM回路等により、デューティ比を有するパルス列を、積分器などにより生成した直流電圧を、データ信号変換部315へ出力する。
そして、データ信号変換部315は、帰還信号調整部314から供給された直流電圧の電圧値を予め設定されたオフセット値によりオフセット調整し、かつ、予め設定した増幅率により増幅し、増幅した結果をデータ信号としてデータ信号判定部104に対して出力する。
【0148】
ステップS48:
次に、データ信号判定部104は、データ信号変換部315から供給されるデータ信号の示す電圧値が、内部の判定回路に設定されている2個の閾値電圧で規定されるデータ範囲に含まれているか否かの判定をおこなう。このとき、データ信号判定部104は、データ信号の示す電圧値がデータ範囲に含まれている場合、処理をステップS49へ進める。一方、データ信号判定部104は、データ信号の示す電圧値がデータ範囲に含まれていない場合、処理をステップS50へ進める。
【0149】
ステップS49:
次に、データ信号判定部104は、データ信号変換部315から供給されたデータ信号を、外部の磁界検出装置に対して出力する。
この磁界検出装置は、すでに述べたように、A/D変換によりデータ信号の電圧をデジタル値に変換し、変換したデジタル値により内部の記憶部に記憶されている磁界強度テーブルから、磁気素子制御装置30から供給されたデータ信号の示す電圧値に対応する磁界強度を読み出し、自身の表示部に対して表示する。実施例1と同様に、データ信号判定部104の出力データ信号はアナログ値であるが、磁気素子制御装置10内で、A/D変換することにより、出力データ信号をデジタル化することも可能である。
【0150】
ステップS50:
次に、データ信号判定部104は、データ信号変換部315から供給されたデータ信号を破棄し、エラー信号を外部の磁界検出装置に対して出力する。
この磁界検出装置は、すでに述べたように、磁気素子制御装置30からエラー信号が供給されると、印加されている定常磁界が測定不能であることを示す通知を、自身の表示部に対して表示する。
【0151】
ステップS51:
次に、磁気素子制御部31は、切替スイッチが磁気比例モードである場合、第1アナログスイッチ321を非導通状態とし、第2アナログスイッチ322を導通状態とする。
これにより、時間−出力信号変換部313は、上記切替スイッチが磁気比例式の構成とする制御を示す構成であるため、検出信号比較部312から供給される差分Tdに基づいて磁界強度を示す電圧値を、データ信号変換部315に対して出力する。
【0152】
ステップS52:
次に、検出信号増幅部311は、検出コイル53の両端の電圧を増幅し、検出信号比較部312へ出力する。
そして、検出信号比較部312は、検出された第1検出信号及び第2検出信号を時間情報として、時間−出力信号変換部313に対して出力する。
【0153】
ステップS53:
検出信号が供給されると、時間−出力信号変換部313は、第1検出信号及び第2検出信号の出力される周期(時間情報)に基づき、電圧情報としてのデューティ比を有するパルスの列(以下パルス列)を生成し、このデューティ比を有するパルス列を電圧情報としてデータ信号変換部315に対して出力する。
データ信号変換部35は、供給されるデューティ比を有するパルス列により、PWM回路などにより、直流電圧を生成して測定電圧とする。後段のステップS37においては、測定電圧を帰還信号として処理が行われる。
【0154】
上述した第3の実施形態は、第1アナログスイッチ321及び第2アナログスイッチ322の各々の導通状態を制御することにより、磁気素子制御装置30を磁気平衡式による磁界測定の構成、あるいは磁気比例式による磁界測定の構成のいずれかに切り換えて用いることができる。
第3の実施形態は、第1アナログスイッチ321を非導通状態とし、第2アナログスイッチ322をオン状態とすることにより、帰還信号(第1帰還信号、第2帰還信号)を三角波電流信号である励磁信号(第1励磁信号DR1、第2励磁信号DR2)に重畳させない。すなわち、励磁信号に対して、磁気素子50に印加されている定常磁界をキャンセルする帰還信号を重畳させることをせずに、定常磁界をキャンセルする電圧を、測定電圧として直接に磁界強度に変換する構成を簡易な回路により実現している。
【0155】
また、本実施形態は、FB信号である第1帰還信号及び第2帰還信号の各々を、第1励磁信号DR1、第2励磁信号DR2それぞれに重畳させ、この第1励磁信号DR1を第1励磁コイル51に印加し、第2励磁信号DR2を第2励磁コイル52に対して印加する。このため、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、磁気感度の温度依存性と磁気素子の出力値の温度依存性との双方を同時に抑制することが可能である。従来の磁気平衡式で使用するFBコイルが設けられた磁気素子のFBコイルと第2励磁コイルとして使用することが可能であるため、磁気素子の構造を新規に設計する必要がないという利点がある。
【0156】
ここで、磁気素子を小型化するのみでなく、磁気素子のサイズが磁気平衡式と同等の場合、FBコイルの領域を用い、励磁コイルや検出コイルの巻数を増加させることにより、励磁効率の増加によって、さらに定常磁界の測定範囲を広げたり、検出コイルにおける検出信号のS/N(Signal/Noise)比を向上させることができる。
また、本実施形態によれば、オフセット電圧とともに帰還信号を励磁信号に重畳させるため、周囲の環境による磁界強度に対応したオフセット電圧をオフセット電圧調整部1018に設定しておくことにより、精度良く容易に測定対象の磁界強度を測定することができる。
【0157】
さらに、本実施形態によれば、磁気比例式(第1アナログスイッチ321が非導通状態、第2アナログスイッチ322を導通状態の場合)による磁界測定の場合、励磁電流と励磁効率とに制限される測定磁界範囲に対応して、測定対象の定常磁界の測定を考慮する。これにより、磁界と測定された測定電圧との間に良好な線形性が得られる。さらに、この磁気比例式における測定磁界範囲内の定常磁界を測定する際、FB信号の生成を行う必要がないため、消費電流を抑制することが可能となる。
一方、測定磁界範囲が広い、すなわち磁気比例式(第1アナログスイッチ321が導通状態、第2アナログスイッチ322を非道通状態の場合)における測定磁界範囲より磁界強度の大きい範囲における磁界測定を行う場合、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様に、磁気平衡式による磁界測定を行う必要がある。この磁気平衡式により、広い磁界強度の範囲で磁界と帰還信号との線形性を得ることができる。
【0158】
また、任意の時間幅の測定周期をクロック信号に同期させて生成し、第1励磁コイル51及び第2励磁コイル52に対して励磁信号を印加して測定処理を行う期間と、第1励磁コイル51及び第2励磁コイル52に対しての励磁信号の印加を停止して測定を行わない期間を交互に設け、第1励磁コイル51び第2励磁コイル52を間欠動作させる。ここで、当然のことながら、第1励磁コイル51と第2励磁コイル52とは、互いの温度特性をキャンセルする必要があるため、同一のタイミングで間欠動作させる必要がある。
これにより、磁気素子50自体の発熱が抑制され、温度変化を低減することにより、より精度の高い磁界強度の測定が行える。
【0159】
さらに、第2の実施形態と同様に、この間欠動作の機能を用いて、複数の磁気素子の励磁コイルを順番に駆動することにより、1つの磁気素子制御装置により、複数の磁気素子により定常磁界を測定することが可能である。
例えば、3個の磁気素子の各々の測定軸、すなわちx軸、y軸及びz軸の3軸のそれぞれを直交するように磁気素子を設け、3次元空間における磁界強度及び磁界の方向を測定する他軸の磁気素子の制御に用いることができる。
【0160】
また、
図1の磁気素子制御部11、
図6の磁気素子制御部21、
図11の磁気制御部31各々の機能(デジタル値による帰還信号の生成を行う演算処理)を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより磁気素子制御の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0161】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0162】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。