(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、内部に流体が流れる導体管に三相交流電源を接続して通電加熱する流体加熱装置において、回路力率を改善して設備効率を向上させることをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る流体加熱装置は、内部に流体が流れる導体管に三相交流電圧を印加して通電加熱し、前記導体管内を流れる流体を加熱する流体加熱装置であって、1つの導体管又は電気的に互いに接続された複数の導体管を螺旋状に巻回して構成された3N(Nは1以上の整数)層の導体管層を備えており、前記3N層の導体管層それぞれのインピーダンス値が互いに略等しくなるとともに、それらの巻き方向が同一方向となるように同心円状に配置されており、互いに隣接する導体管層のうち一方の導体管層は、一端側を巻き始め部、他端側を巻き終わり部として巻回されており、前記互いに隣接する導体管層のうち他方の導体管層は、他端側を巻き始め部、一端側を巻き終わり部として巻回されており、n(n=1、2、・・・(3N−1))層目の導体管層の巻き始め部及び(n+1)層目の導体管層の巻き終わり部に三相交流電源のうちの何れか一相が接続されるとともに、1層目の導体管層の巻き終わり部及び3N層目の導体管層の巻き始め部に三相交流電源のうちの何れか一相が接続されることによって、又は、前記n層目の導体管層の巻き終わり部及び前記(n+1)層目の導体管層の巻き始め部に三相交流電源のうちの何れか一相が接続されるとともに、前記1層目の導体管層の巻き始め部及び前記3N層目の導体管層の巻き終わり部に三相交流電源のうちの何れか一相が接続されることによって、前記3N層の導体管層それぞれに生じる磁束が全体として打ち消し合うように構成されていることを特徴とする。
【0007】
このようなものであれば、各導体管層のインピーダンス値が互いに略等しくするとともに3N層の導体管層それぞれに生じる磁束が全体として打ち消し合うように三相交流電源を接続しているので、各導体管に発生するリアクタンスが低減されて力率を改善することができる。したがって、流体加熱装置の設備効率を向上させることができる。
【0008】
前記3N層の導体管層が、1本の導体管を連続して3N層に巻回することにより構成されており、前記1層目の導体管層の巻き始め部及び前記3N層目の導体管層の巻き終わり部に、前記導体管の両端部開口から形成される流体出入口が設けられていることが望ましい。これならば、1つの導体管を多重に巻回することで1つの構成要素とすることができ、部品点数を削減し、取り扱いを容易にすることができる。また、それぞれ隣接する導体管層の折り返し部分に三相交流電源の各相を接続することによって、1つの流体回路により流体を加熱することができる。
【0009】
前記3N層の導体管層が、M(M=2、3、・・・3N)本の導体管を1層又は連続して複数層に巻回することにより構成されており、前記各導体管の両端部開口が位置する導体管層の巻き始め部又は巻き終わり部に流体出入口が設けられていることが望ましい。これならば、M本の導体管により構成されているので、最大M種類の流体を同時に加熱することができる。また、任意の層の巻き始め部又は巻き終わり部の少なくとも一方に流体出入口を設けることができるので、流体の熱容量に応じて、当該流体が流れる導体管長(加熱長)を任意に構成することができる。
【0010】
前記3N層の導体管層が、3N本の導体管それぞれを1層に巻回することにより構成されており、前記3N層の導体管層のうち、2N層で水から飽和蒸気を発生させ、残りの1N層で飽和蒸気から過熱蒸気を発生させることが望ましい。20℃の水から130℃の飽和蒸気を発生させる熱量と、130℃の飽和蒸気から700℃の過熱蒸気を発生させる熱量との比は、約2対1である。したがって、2N層で飽和蒸気を発生させて1N層で過熱蒸気を発生させる構成とすれば、接続する三相交流電源の電流バランスを約1対1対1とすることができる。また、低い過熱蒸気温度とした場合でも、1相電流がゼロとなるような極端なアンバランスは発生しない。各過熱蒸気温度のときの三相交流電源の電流比を以下に示す。
800℃のとき 1 : 1.04 : 1.04
700℃のとき 1 : 1 : 1
500℃のとき 1 : 0.90 : 0.90
200℃のとき 1 : 0.70 : 0.70
【0011】
前記過熱蒸気を発生させる1N層を中間に配置し、前記飽和蒸気を発生させる2N層のうち1N層を内側、残りの1N層を外側に配置して、前記過熱蒸気を発生させる1N層を、前記飽和蒸気を発生させる2N層により挟むように構成されていることが望ましい。このように高温過熱蒸気が流れる層を、飽和蒸気が流れる層に挟まれた中間層とすることで、過熱蒸気の熱を無駄に外部に放出させることが無く、伝熱分を飽和蒸気を発生させる予熱として利用することができる。
【0012】
前記三相交流電源のぞれぞれの相が接続される導体管層が、各相間で電気的に絶縁されており、前記各相に設けられ、各相の電流を個別に制御する電流制御手段を有することが望ましい。これならば、各相が接続された導体管層毎にその温度を個別制御することができる。
【0013】
前記1層目の導体管層の巻芯中空部又は前記3N層目の導体管層の外側の少なくとも一方に磁気回路用磁性体が設けられていることが望ましい。これならば、導体管層を通電することにより生じる磁束を磁性体に沿って通すことができ、各導体管層を通電することにより生じる磁束を互いに打ち消し易くすることができる。
【発明の効果】
【0014】
このように構成した本発明によれば、内部に流体が流れる導体管に三相交流電源を接続して通電加熱する流体加熱装置において、回路力率を改善して設備効率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明に係る流体加熱装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
本実施形態に係る流体加熱装置100は、
図1に示すように、内部に流体(例えば水、飽和蒸気や過熱蒸気等)が流れる中空の導体管2に三相交流電源4を接続し、当該導体管2に三相交流電圧を印加して直接通電し、導体管2の内部抵抗により発生するジュール熱によって導体管2を加熱することにより、当該導体管2を流れる流体を加熱するものである。
【0018】
具体的にこのものは、1つの導体管2又は電気的に互いに接続された複数の導体管2を螺旋状に巻回して構成された3N(Nは1以上の整数)層の導体管層からなる流体加熱部3を備えている。
【0019】
この流体加熱部3は、
図2及び
図3に示すように種々の構成とすることができる。
【0020】
図2に示す流体加熱部3は、1つの導体管2から構成されるものであり、流体加熱部3全体のインピーダンス値を3N等分して形成される3N層(Nは1以上の整数)の導体管層を備えている。なお、本実施形態では、N=1として3層の導体管層3a、3b、3cを有するものである。
【0021】
この3層の導体管層3a、3b、3cは、1つの導体管2を一端側から他端側に螺旋状に巻回して構成された1層目の導体管層3aと、当該1層目の導体管層3aの他端に連続して、他端側から一端側に前記1層目の導体管層3aの巻き方向と同一方向に螺旋状に巻回して構成された2層目の導体管層3bと、当該2層目の導体管層3bの一端に連続して、一端側から他端側に前記2層目の導体管層3bの巻き方向と同一方向に螺旋状に巻回して構成された3層目の導体管層3cとを有する。
【0022】
このように3層の導体管層3a、3b、3cが構成されることにより、互いに隣接する導体管層(例えば1層目と2層目)のうち一方の導体管層(1層目)は、一端側を巻き始め部、他端側を巻き終わり部として巻回されており、互いに隣接する導体管層(例えば1層目と2層目)のうち他方の導体管層(2層目)は、他端側を巻き始め部、一端側を巻き終わり部として巻回される。なお、導体管2は、1巻き毎に絶縁物又は空隙によって絶縁される。例えば、外側周面に絶縁層を設ける等の絶縁加工が施された導体管2を用いることが考えられる。あるいは、数回巻き毎にブロック分けして、各ブロック毎に絶縁するように構成しても良い。なお、前記ブロック数は、導体管2に流れる電流値によって決定する。
【0023】
これら3層の導体管層3a、3b、3cのインピーダンス値は、巻回数、管長、管径、肉厚、巻径及び巻高さを調整して、互いに略等しくなるように構成されている。本実施形態では、各導体管層3a、3b、3cを構成する導体管2の管径及び肉厚及び巻回数等を同一にすることによって構成されている。
【0024】
このように3層の導体管層3a、3b、3cは、それぞれの巻き方向が互いに同一方向となるように同心円状に連続して3層に巻回されて構成されている。つまり、このように構成された流体加熱部3は、3層の導体管層3a、3b、3cが連続して一体に構成されるものである。ここで、1層目の導体管層3aの巻芯中空部又は3層目の導体管層3cの外側の少なくとも一方に磁気回路用磁性体を設けることが望ましい。なお、導体管層が6層、9層、・・・3N層の場合には、1つの導体管2を巻き方向を同一方向にして、一端側から他端側へ、次に、他端側から一端側へと連続的に同心円状に巻回して構成される。
【0025】
このように構成された流体加熱部3は、1つの導体管2を巻回して構成されることから、1層目の導体管層3aの巻き始め部及び3層目の導体管層3cの巻き終わり部に、導体管2の両端部開口から形成される流体出入口2Px、2Pyが設けられることになる。本実施形態では、1層目の導体管層3aの巻き始め部の流体出入口2Pxは一端側(
図2では上端側)に位置し、3層目の導体管層3cの巻き終わり部の流体出入口2Pyは他端側(
図2では下端側)に位置する構成となる。なお、流体出入口2Px、2Pyは、外部の配管を接続するためのフランジ等の構造部を有する。
【0026】
そして、この流体加熱部3において、三相交流電源4の各相(U相、V相、W相)が接続されて前記3層の導体管層3a、3b、3cにU相電圧、V相電圧及びW相電圧が印加されることにより、3層の導体管層3a、3b、3cそれぞれに生じる磁束が全体として打ち消し合うように構成されている。
【0027】
具体的には、
図3に示すように、1層目の導体管層3aの巻き終わり部及び2層目の導体管層3bの巻き始め部に三相交流電源4のうちの第1相(V相)が接続されて、2層目の導体管層3bの巻き終わり部及び3層目の導体管層3cの巻き始め部に三相交流電源4のうちの第2相(W相)が接続されて、1層目の導体管層3aの巻き始め部及び3層目3cの導体管層の巻き終わり部に三相交流電源4のうちの第3相(U相)が接続されるようにしている。つまり、3層の導体管層3a、3b、3cは、三相交流電源4に対してデルタ結線された回路構成であり、各導体管層3a、3b、3cに流れる交流電流の位相差は60度となる。
【0028】
つまり、1層目の導体管層3aの巻き終わり部と2層目の導体管層3bの巻き始め部とが連続する折り返し部分に設けられた接続端子にV相電圧が印加される。また、2層目の導体管層3bの巻き終わり部と3層目の導体管層3cの巻き始め部とが連続する折り返し部分に設けられた接続端子にW相電圧が印加される。さらに、1層目の導体管層3aの巻き始め部である導体管2の端部又はその近傍と3層目の導体管層3cの巻き終わり部である導体管2の端部又はその近傍とにそれぞれ設けられた接続端子にU相電圧が印加される。
【0029】
このように3層の導体管層3a、3b、3cに三相交流電源4を接続して三相交流電圧を印加することによって、各導電体層3a、3b、3cに流れる電流によって発生する磁束のベクトル合成和がゼロとなり、各導体管層3a、3b、3cに発生するリアクタンスが低減されて、回路力率が改善される。
【0030】
次に、
図4に示す流体加熱部3は、三相交流電源4を含む三相交流回路により電気的に接続された3つの導体管2から構成されるものであり、流体加熱部3全体のインピーダンス値を3N等分して形成される3N層(Nは1以上の整数)の導体管層を備えている。なお、本実施形態では、N=1として3層の導体管層3a、3b、3cを有するものである。
【0031】
この3層の導体管層3a、3b、3cは、1つの導体管2を一端側から他端側に螺旋状に巻回して構成された1層目の導体管層3aと、1つの導体管2を他端側から一端側に螺旋状に巻回して構成された2層目の導体管層3bと、1つの導体管2を一端側から他端側に螺旋状に巻回して構成された3層目の導体管層3cとを有する。
【0032】
各導体管層3a、3b、3cの巻回方向は同一方向であり、各導体管層3a、3b、3cのインピーダンス値は、巻回数、管長、管径、肉厚、巻径及び巻高さを調整して、互いに略等しくなるように構成されている。本実施形態では、各導体管層3a、3b、3cを構成する導体管2の管径及び肉厚及び巻回数等を同一にすることによって構成されている。なお、導体管層が6層、9層、・・・3N層の場合には、各導体管2を巻き方向を同一方向にして、一端側から他端側へ巻回するものと、他端側から一端側へ巻回するものとが交互に配置されるように構成される。
【0033】
このように構成された流体加熱部3は、各導体管層3a、3b、3cが1つの導体管2から形成されていることから、各導体管層3a、3b、3cの巻き始め部及び巻き終わり部それぞれに流体出入口2Px、2Pyが設けられ、それら流体出入口2Px、2Pyが一端側(
図4では上端側)及び他端側(
図4では下端側)に位置する構成となる。なお、流体出入口2Px、2Pyは、外部の配管を接続するためのフランジ等の構造部を有する。
【0034】
そして、この流体加熱部3において、三相交流電源4からの三相交流電圧の各相(U相、V相、W相)が前記3層の導体管層3a、3b、3cに印加されることにより、3層の導体管層3a、3b、3cそれぞれに生じる磁束が全体として打ち消し合うように構成されている。
【0035】
具体的には、
図5に示すように、1層目の導体管層3aの巻き終わり部及び2層目の導体管層3bの巻き始め部に三相交流電源4のうちの第1相(V相)が接続されて、2層目の導体管層3bの巻き終わり部及び3層目の導体管層3cの巻き始め部に三相交流電源4のうちの第2相(W相)が接続されて、1層目の導体管層3aの巻き始め部及び3層目の導体管層3cの巻き終わり部に三相交流電源4のうちの第3相(U相)が接続されるようにしている。つまり、3層の導体管層3a、3b、3cは、三相交流電源4に対してデルタ結線された回路構成であり、各導体管層3a、3b、3cに流れる交流電流の位相差は60度となる。
【0036】
つまり、1層目の導体管層3aの巻き終わり部である導体管2の端部又はその近傍と2層目の導体管層3bの巻き始め部である導体管2の端部又はその近傍とにそれぞれ設けられた接続端子にV相電圧が印加される。また、2層目の導体管層3bの巻き終わり部である導体管2の端部又はその近傍と3層目の導体管層3cの巻き始め部である導体管2の端部又はその近傍とにそれぞれ設けられた接続端子にW相電圧が印加される。さらに、1層目の導体管層3aの巻き始め部である導体管2の端部又はその近傍と3層目の導体管層3cの巻き終わり部である導体管2の端部又はその近傍とにそれぞれ設けられた接続端子にU相電圧が印加される。
【0037】
なお、1層目の導体管層3aの巻き始め部及び2層目の導体管層3bの巻き終わり部に三相交流電源4のうちの第1相(V相)が接続されて、2層目の導体管層3bの巻き始め部及び3層目の導体管層3cの巻き終わり部に三相交流電源4のうちの第2相(W相)が接続されて、1層目の導体管層3aの巻き終わり部及び3層目の導体管層3cの巻き始め部に三相交流電源4のうちの第3相(U相)が接続されるようにしても良い。
【0038】
このように3層の導体管層3a、3b、3cに三相交流電源4を接続して三相交流電圧を印加することによって、各導電体層3a、3b、3cに流れる電流によって発生する磁束のベクトル合成和がゼロとなり、各導体管層3a、3b、3cに発生するリアクタンスが低減されて、回路力率が改善される。また、各導体管層3a、3b、3cそれぞれに流体出入口2Px、2Pyが設けられているので、各導体管層3a、3b、3cに個別に流体を流すことによって、最大3種類の流体を同時に加熱することができる。
【0039】
また、
図4に示す流体加熱部3を用いて水から過熱蒸気を発生させる場合には、3N層の導体管層のうち、2N層で水から飽和蒸気を発生させ、残りの1N層で飽和蒸気から過熱蒸気を発生させることが考えられる。この場合、過熱蒸気を発生させる1N層を中間に配置し、飽和蒸気を発生させる2N層のうち1N層を内側、残りの1N層を外側に配置して、過熱蒸気を発生させる1N層を、飽和蒸気を発生させる2N層により挟むように構成することが熱利用の観点から望ましい。
【0040】
具体的には、1層目の導体管層3a及び3層目の導体管層3cに水を導入して飽和蒸気を発生させ、2層目の導体管層3bに、前記導体管層3a、3cで発生した飽和蒸気を導入して過熱蒸気を発生させる。このような構成により、接続する三相交流電源4の各相の電流バランスを約1対1対1とすることができる。また、高温過熱蒸気が流れる導体管層3bを、飽和蒸気が流れる導体管層3a、3cに挟まれた中間層とすることで、過熱蒸気の熱を無駄に外部に放出させることが無く、伝熱分を飽和蒸気を発生させる予熱として利用することができる。
【0041】
次にこのように構成した流体加熱装置100の力率改善を示す試験について説明する。なお、以下の試験においては、比較傾向を顕著に表すために、周波数800Hzの単相交流電源を用いた。
【0042】
図6には、断面積8.042mm
2、直径3.2mmの銅線を螺旋状に1層当たり60回巻いて構成してコイル層を形成し、一端側から他端側に巻回した1層目のコイル層、他端側から一端側に巻回した2層目のコイル層、一端側から他端側に巻回した3層目のコイル層をそれらの巻回方向が同一方向となるように同心円状に配置したものにおいて、(1)3層を直列接続して、1層目のコイル層の巻き始め部及び3層目のコイル層の巻き終わり部に単相交流電源を接続した場合(試験No.1、
図6(1))と、(2)3層それぞれに上述したように三相交流電源を接続した場合(試験No.2、
図6(2))との回路構成を示す。
【0043】
このとき、
図6の下表に示すように、試験No.1の場合には、力率が0.020であったのに対して、試験No.2の場合には、1層目のコイル層の力率が0.151、2層目のコイル層の力率が0.153、3層目のコイル層の力率が0.060であった。このように、
図6(2)の場合には、各導体管層に生じる磁束が打ち消し合うことから電圧降下が抑制されて力率が改善したと考えられる。なお、商用周波数60Hzの交流電圧に換算した場合には、試験No.1の力率が0.256であるのに対して、試験No.2の場合には、1層目のコイル層の力率が0.898、2層目のコイル層の力率が0.900、3層目のコイル層の力率が0.627、各層の平均力率が0.836である。大容量の流体加熱装置においては三相交流電源を用いることが一般的であるため、上記の通り、三相交流電源を用いた場合における力率が大幅に改善できることは、設備効率の向上においても効果が大きい。
【0044】
このように構成した本実施形態に係る流体加熱装置100によれば、各導体管層3a、3b、3cのインピーダンス値が互いに略等しくするとともに3層の導体管層3a、3b、3cそれぞれに生じる磁束が全体として打ち消し合うように三相交流電源4を接続しているので、各導体管層3a、3b、3cに発生するリアクタンスが低減されて力率を改善することができる。したがって、流体加熱装置100の設備効率を向上させることができる。
【0045】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0046】
例えば、前記実施形態では、3層の導体管層3a、3b、3cを有するもの(N=1の場合)について説明したが、Nが2以上の場合においても同様である。この場合、n(n=1、2、・・・5)層目の導体管層の巻き始め部及び(n+1)層目の導体管層の巻き終わり部に三相交流電源のうちの何れか一相が接続されるとともに、1層目の導体管層の巻き終わり部及び3N層目の導体管層の巻き始め部に三相交流電源のうちの何れか一相が接続されることによって、又は、前記n層目の導体管層の巻き終わり部及び前記(n+1)層目の導体管層の巻き始め部に三相交流電源のうちの何れか一相が接続されるとともに、前記1層目の導体管層の巻き始め部及び前記3N層目の導体管層の巻き終わり部に三相交流電源のうちの何れか一相が接続される。
【0047】
図7に、6層(N=2の場合)の導体管層を有する流体加熱部の結線図について示す。
図7においては、1層目の導体管層の巻き始め部及び2層目の導体管層の巻き終わり部に三相交流電源4のうちの第1相(V相)が接続されて、2層目の導体管層の巻き始め部及び3層目の導体管層の巻き終わり部に三相交流電源4のうちの第2相(W相)が接続されて、3層目の導体管層の巻き始め部及び4層目の導体管層の巻き終わり部に三相交流電源4のうちの第3相(U相)が接続されて、4層目の導体管層の巻き始め部及び5層目の導体管層の巻き終わり部に三相交流電源4のうちの第1相(V相)が接続されて、5層目の導体管層の巻き始め部及び6層目の導体管層の巻き終わり部に三相交流電源4のうちの第2相(W相)が接続されて、1層目の導体管層の巻き終わり部及び6層目の導体管層の巻き始め部に三相交流電源4のうちの第3相(U相)が接続された場合を示している。
【0048】
さらに
図8に示すように、3N層の導体管層における任意の層の巻き始め部又は巻き終わり部の少なくとも一方に流体出入口が設けられているものであっても良い。つまり、3N層の導体管層が、M(M=2、3、・・・3N)本の導体管を1層又は連続して複数層に巻回することにより構成されており、各導体管の両端部開口が位置する導体管層の巻き始め部又は巻き終わり部に流体出入口が設けられているものであっても良い。
【0049】
具体的に、
図8(A)には、6層の導体管層を有する流体加熱部において、2本の導体管を、1本目の導体管を連続して4層に螺旋状に巻回し、2本目の導体管を連続して2層に螺旋状に巻回することにより構成し、1層目の巻き始め部及び4層目の巻き終わり部と、5層目の巻き始め部及び6層目の巻き終わり部とに流体出入口2Px、2Pyを設けた場合を示している。これならば、各導体管2に個別に流体を流すことによって、最大2種類の流体を同時に加熱することができる。
【0050】
また
図8(B)には、6層の導体管層を有する流体加熱部において、3本の導体管を、1本目の導体管を連続して3層に螺旋状に巻回し、2本目の導体管を連続して2層に螺旋状に巻回し、3本目の導体管を1層に螺旋状に巻回することにより構成し、1層目の巻き始め部及び3層目の巻き終わり部と、4層目の巻き始め部及び5層目の巻き終わり部と、6層目の巻き始め部及び巻き終わり部とに流体出入口2Px、2Pyを設けた場合を示している。これならば、各導体管2に個別に流体を流すことによって、最大3種類の流体を同時に加熱することができる。
【0051】
つまり、巻回する導体管の本数及び各導体管を何層巻きにするかを種々設定することによって、任意の層の巻き始め部又は巻き終わり部の少なくとも一方に流体出入口を設けることができる。
【0052】
また、前記実施形態では、導体管の両端部開口により流体出入口を構成するものであったが、その他、導体管の側壁に開口を形成することによって流体出入口を構成しても良い。これならば、1つの導体管を用いて複数層に巻回して構成された複数の導体管層において、導体管の両端部開口が位置する巻き始め部及び巻き終わり部以外の導体管層の巻き始め部又は巻き終わり部に流体出入口を設けることができる。
【0053】
加えて、
図4の流体加熱部3のように、前記三相交流電源4のぞれぞれの相が接続される導体管層3a、3b、3cが各層間で電気的に絶縁されたものにおいて、
図9に示すように、三相交流電源の各相の電流を個別に制御する電流制御手段5を設けたものであっても良い。この電流制御手段5は、例えばサイリスタを用いて構成されており、各相に設けられて各相の電流を個別に制御することによって、各導体管層3a、3b、3cに流れる電流を個別に制御する。これにより、各相が接続された導体管層毎にその温度を個別制御することができる。
【0054】
更に加えて、
図10〜
図12に示すように、本実施形態の流体加熱装置100により発生した過熱蒸気等を種々の適用事例(用途)に用いることができる。つまり、本実施形態の流体加熱装置100は、
図10〜
図12に示す適用事例に対応する設備に組み込んで使用することができる。
【0055】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。