特許第6043614号(P6043614)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6043614保護負極、これを含むリチウム空気電池及びこれを含む全固体電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043614
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】保護負極、これを含むリチウム空気電池及びこれを含む全固体電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/131 20100101AFI20161206BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20161206BHJP
   H01M 12/04 20060101ALI20161206BHJP
   H01M 12/08 20060101ALI20161206BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20161206BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20161206BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20161206BHJP
   H01M 2/16 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   H01M4/131
   H01M4/485
   H01M12/04
   H01M12/08 K
   H01M10/0562
   H01M10/0565
   H01M10/0525
   H01M2/16 P
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-272115(P2012-272115)
(22)【出願日】2012年12月13日
(65)【公開番号】特開2013-125750(P2013-125750A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2015年6月10日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0134004
(32)【優先日】2011年12月13日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
(73)【特許権者】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】李 東▲ジュン▼
(72)【発明者】
【氏名】山本 治
(72)【発明者】
【氏名】今西 誠之
(72)【発明者】
【氏名】林 東民
(72)【発明者】
【氏名】武田 保雄
【審査官】 ▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−009103(JP,A)
【文献】 特開2011−238404(JP,A)
【文献】 特開2012−104280(JP,A)
【文献】 特開2009−193728(JP,A)
【文献】 特開2011−003313(JP,A)
【文献】 特表2007−513464(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0117007(US,A1)
【文献】 特開2010−244818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00 − 4/62
H01M 10/00 − 10/0562
H01M 12/00 − 12/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムチタン酸化物を含む負極と、前記負極表面に直接形成された下記化学式1で表示される化合物を含む保護膜と、を含み、
前記負極と保護膜との厚み比は、0.001:1ないし1,000:1である、保護負極:
Li1+X2−XSi3−Y12 …化学式1
前記化学式1で、Mは、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、インジウム(In)、スカンジウム(Sc)及びクロム(Cr)からなる群から選択された一つ以上であり、
Aは、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、ハフニウム(Hf)及びジルコニウム(Zr)からなる群から選択された一つ以上であり、
Xは、0ないし1の数であり、
Yは、0ないし1の数である。
【請求項2】
前記化学式1で表示される化合物が、
下記化学式2で表示される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の保護負極:
Li1+XAlGe2−X(PO …化学式2
前記化学式2でXは、0ないし1の数である。
【請求項3】
前記化学式1で表示される化合物が、
Li1.3Al0.3Ge1.7(PO、Li1.4Al0.4Ge1.6(PO、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO、Li1.6Al0.6Ge1.4(POまたはLi1.7Al0.7Ge1.3(POであることを特徴とする請求項1または2に記載の保護負極。
【請求項4】
前記リチウムチタン酸化物が、下記化学式3で表示される化合物であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の保護負極:
Li4+aTi5−bM’12−d …化学式3
前記化学式3で、−0.2≦a≦0.2、−0.3≦b≦0.3、0≦c≦0.3、−0.3≦d≦0.3であり、
M’は、1族ないし6族、8族、12族ないし15族元素からなる群から選択された一つ以上である。
【請求項5】
前記リチウムチタン酸化物が、
LiTiあることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の保護負極。
【請求項6】
前記リチウムチタン酸化物が、LiTi12またはLiTi12であり、
前記化学式1で表示される化合物が、Li1.3Al0.3Ge1.7(PO、Li1.4Al0.4Ge1.6(PO、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO、Li1.6Al0.6Ge1.4(POまたはLi1.7Al0.7Ge1.3(POであることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の保護負極。
【請求項7】
請求項1〜のうちいずれか1項に記載の保護負極と、
酸素を正極活物質とする正極と、を含むリチウム空気電池。
【請求項8】
前記保護負極と正極との間に、
電解質を含むセパレータ、液体電解質、無機固体電解質膜、高分子固体電解質膜、リチウムイオン伝導性固体電解質膜及びゲル型高分子電解質膜のうち選択された1層以上の中間層がさらに含まれることを特徴とする請求項に記載のリチウム空気電池。
【請求項9】
前記中間層が、
ガラス−セラミックス固体電解質であるか、またはガラス−セラミックス固体電解質と高分子固体電解質との積層構造体であるリチウムイオン伝導性固体電解質膜であることを特徴とする請求項に記載のリチウム空気電池。
【請求項10】
前記中間層が、
ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレン不織布及びポリフェニレンスルフィド不織布からなる群から選択された一つ以上のセパレータであることを特徴とする請求項に記載のリチウム空気電池。
【請求項11】
前記中間層が、
非水系溶媒及びリチウム塩を含む液体電解質であることを特徴とする請求項に記載のリチウム空気電池。
【請求項12】
前記正極が、多孔性炭素系物質を含むことを特徴とする請求項11の何れか一項に記載のリチウム空気電池。
【請求項13】
請求項1〜のうちいずれか1項に記載の保護負極を含む全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護負極、これを含むリチウム空気電池及びこれを含む全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム空気電池として、リチウムイオンの吸蔵/放出が可能な負極と、空気中の酸素を正極活物質とし、酸素の酸化還元触媒を含む正極とを具備し、正極と負極との間にリチウムイオン伝導性媒体を具備したものが知られている。
【0003】
リチウム空気電池の理論エネルギー密度は、3,000Wh/kg以上であり、これは、リチウムイオン電池と比較して、およそ10倍のエネルギー密度に該当する。併せて、リチウム空気電池は、親環境的であり、リチウムイオン電池よりも改善された安定性を提供することができるので、盛んに開発が行われている。
【0004】
このようなリチウム空気電池の負極活物質としては、高い容量を有することから、リチウム金属が使用される。ところが、リチウム金属は、不安定であり、反応性が高く、熱または衝撃に敏感であり、爆発の危険性がある。リチウム金属が使用された負極は、充電時にリチウムの表面に多くの樹枝状リチウムが析出され、充放電効率が低下したり、あるいは正極との短絡が発生することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、安定性が改善された保護負極、これを含む性能が向上したリチウム空気電池及びこれを含む全固体電池を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一側面によれば、リチウムチタン酸化物を含む負極と、前記負極表面に、下記化学式1で表示される化合物を含む保護膜と、を含む保護負極が提供される。
【0007】
Li1+X2−XSi3−Y12 …化学式1
【0008】
化学式1で、Mは、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、インジウム(In)、スカンジウム(Sc)及びクロム(Cr)からなる群から選択された一つ以上であり、
Aは、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、ハフニウム(Hf)及びジルコニウム(Zr)からなる群から選択された一つ以上であり、
Xは、0ないし1の数であり、
Yは、0ないし1の数である。
【0009】
化学式1で表示される化合物が、下記化学式2で表示される化合物であってよい。
Li1+XAlGe2−X(PO …化学式2
前記化学式2でXは、0ないし1の数である。
【0010】
化学式1で表示される化合物が、
Li1.3Al0.3Ge1.7(PO、Li1.4Al0.4Ge1.6(PO、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO、Li1.6Al0.6Ge1.4(POまたはLi1.7Al0.7Ge1.3(POであってよい。
【0011】
前記リチウムチタン酸化物は、下記化学式3で表示される化合物であってよい。
Li4+aTi5−bM’12−d …化学式3
前記化学式3で、−0.2≦a≦0.2、−0.3≦b≦0.3、0≦c≦0.3、−0.3≦d≦0.3であり、
M’は、1族ないし6族、8族、12族ないし15族元素からなる群から選択された一つ以上である。
【0012】
前記リチウムチタン酸化物は、LiTi12またはLiTi12であってよい。
【0013】
前記リチウムチタン酸化物が、LiTi12またはLiTi12であり、化学式1で表示される化合物が、Li1.3Al0.3Ge1.7(PO、Li1.4Al0.4Ge1.6(PO、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO、Li1.6Al0.6Ge1.4(POまたはLi1.7Al0.7Ge1.3(POであってよい。
【0014】
前記負極と保護膜との間に、セパレータ、非水系溶媒及びリチウム塩を含む液体電解質、無機固体電解質膜、高分子固体電解質膜、ゲル型高分子電解質膜及びリチウムイオン伝導性固体電解質膜のうちから選択された1層以上の中間層をさらに含んでよい。
【0015】
前記負極と保護膜との厚み比は、0.001:1ないし1,000:1であってよい。
【0016】
他の側面によれば、前述の保護負極と、酸素を正極活物質とする正極と、を含むリチウム空気電池が提供される。
【0017】
前記保護負極と正極との間に、セパレータ、液体電解質、無機固体電解質膜、高分子固体電解質膜、リチウムイオン伝導性固体電解質膜及びゲル型高分子電解質膜のうち選択された1層以上の中間層がさらに含まれてよい。
【0018】
前記中間層が、ガラス−セラミックス固体電解質であるか、またはガラス−セラミックス固体電解質と高分子固体電解質との積層構造体であるリチウムイオン伝導性固体電解質膜であってよい。
【0019】
前記中間層が、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレン不織布及びポリフェニレンスルフィド不織布からなる群から選択された一つ以上のセパレータであってよい。
【0020】
前記中間層が、非水系溶媒及びリチウム塩を含む液体電解質であってよい。
【0021】
前記正極が、多孔性炭素系物質を含んでよい。
【0022】
さらに他の側面によれば、前述の保護負極を含む全固体電池が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、安定性が改善された保護負極、これを採用する伝導度及び充放電特性が改善されたリチウム空気電池及び全固体電池を製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】リチウム(Li)/Li1+xTi2−xAl(PO(0≦X≦0.4)セルの充放電プロファイルを示したグラフである。
図2】一具現例による保護負極の構造を示した図面である。
図3A】一具現例によるリチウム空気電池の構造を示す概路図である。
図3B】一具現例によるリチウム空気電池の構造を示す概路図である。
図4】一具現例による全固体電池の構造を示した図面である。
図5A】実施例1によるセルのインピーダンスを示したグラフである。
図5B】実施例1によるセルの伝導度を示したグラフである。
図6A】比較例1によるセルのインピーダンス示したグラフである。
図6B】比較例1によるセルの伝導度を示したグラフである。
図7】実施例1及び比較例1,2によるセルの伝導度変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、例示的な保護負極、これを含むリチウム空気電池及びこれを含む全固体電池について、さらに詳細に説明する。
【0026】
一側面によれば、リチウムチタン酸化物を含む負極と、負極表面に、下記化学式1で表示される化合物を含む保護膜と、を含む保護負極が提供される。
【0027】
Li1+X2−XSi3−Y12 …化学式1
【0028】
化学式1で、Mは、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、インジウム(In)、スカンジウム(Sc)及びクロム(Cr)からなる群から選択された一つ以上であり、
Aは、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、ハフニウム(Hf)及びジルコニウム(Zr)からなる群から選択された一つ以上であり、
Xは、0ないし1の数であり、
Yは、0ないし1の数である。
【0029】
化学式1でXは、0.1ないし0.9、例えば、0.3ないし0.7である。
【0030】
化学式1でYは、0ないし0.9である。
【0031】
化学式1で表示される化合物は、当業者に周知の方法で製造可能である。
【0032】
図1は、リチウム(Li)/Li1+xTi2−xAl(PO(0≦X≦0.4)セルの充放電プロファイルを示したものである(Journal of The Electrochemical Society,157(6),A654-A659(2010))。
【0033】
これを参照すると、リチウム金属表面上に、Li1+xTi2−xAl(PO(以下、「LTAP」とする)保護膜を形成することにより、LTAPは、相対的に還元電圧が高くなり、リチウム金属電極のリチウムと反応し、2.5V(vs.Li+/Li)以下では、リチウムイオンが吸蔵されて不安定になる。従って、その場合には、LiN、LiPON、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)/ポリエチレンオキシド(PEO)などの中間層(interlayer)が必要である。このように、LTAPは、中間層なしでは、リチウム負極の保護膜の形成材料として使用するのが非常に困難であるということが分かる。
【0034】
本発明者らは、多くの研究の末に、負極活物質として、リチウムに比べて電位の高いリチウムチタン酸化物を使いつつ、LTAPに比べて、相対的に還元電位が低いが、リチウムチタン酸化物と反応性の低い化学式1の化合物を、保護膜の形成材料として使用することにより、負極活物質としてリチウム金属を使用する場合に比べて、安定性及び界面伝導度が向上し、寿命と高率特性とにすぐれ、伝導度特性を改善させることができることを見出した。これについて、さらに説明すれば、次の通りである。
【0035】
リチウムチタン酸化物の一つであるLiTi12は、リチウム吸蔵時、二相平衡状態(LiTi12⇔LiTi12)に至り、Li+/Li対の吸蔵/放出電位と比べて、一定の吸蔵/放出電位を生じ、それにより、充放電が進められつつ、十分な電子伝導度を有するようになる。また、リチウムチタン酸化物のLiTi12/LiTi12対のリチウム吸蔵/放出電位は、約1.5Vである。この電位では、デンドライト形成の危険性を回避することができる。また、LiTi12は、化学的及び熱的な安定性が高くて無毒性であり、電気化学的効率が大きい。このようなリチウムチタン酸化物を含んだ電池は、約1.5Vの充放電電圧が可能であり、グラファイト系物質に比べて、安定性にすぐれる。そして、リチウムの吸蔵・放出時、格子定数の変化がほとんどない物質であるため、可逆性と寿命特性とに優れる。
【0036】
前述のリチウムチタン酸化物を負極活物質として利用すると、負極及びこれを採用した電池の容量が低下することがある。そして、酸素及び電解質の反応によって、電池の性能が低下することがある。従って、このような点を補うために、リチウムチタン酸化物を含む負極上に、化学式1で表示される化合物を含む保護膜を形成する。
【0037】
前述のように、化学式1で表示される化合物を含む保護膜を形成すれば、前述のLTAPを利用する場合と異なり、負極と保護膜との間に中間層を形成せずとも、充放電特性及び容量特性にすぐれる電極を製造することができる。
【0038】
図2は、一具現例による保護負極の構造を示した図面である。
【0039】
これを参照すれば、保護負極は、リチウムチタン酸化物を含む負極21と、負極21上に、化学式1で表示される化合物を含む保護膜22と、が形成された構造を有する。このように、保護負極は、負極21と保護膜22との間に中間層が無くても、安定性に非常にすぐれ、充放電特性が向上して伝導度特性が改善される。
【0040】
負極と保護膜との厚み比は、制限されるものではないが、0.001:1ないし1,000:1であり、例えば、0.01:1ないし100:1である。
【0041】
リチウムチタン酸化物を含む負極の厚みは、10ないし300μmであり、保護膜の厚みは、10ないし500μmである。このような負極と保護膜とを含む保護負極の総厚は、20ないし800μmである。
【0042】
化学式1で表示される化合物は、例えば、下記化学式2で表示される化合物である。
【0043】
Li1+XAlGe2−X(PO …化学式2
【0044】
化学式2で、Xは0ないし1の数である。
【0045】
化学式2で、Xは0.1ないし0.9、例えば、0.3ないし0.7である。
【0046】
化学式2で表示される化合物は、Li1.3Al0.3Ge1.7(PO、Li1.4Al0.4Ge1.6(PO、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO、Li1.6Al0.6Ge1.4(PO、またはLi1.7Al0.7Ge1.3(POである。
【0047】
リチウムチタン酸化物は、下記化学式3で表示される化合物である。
【0048】
Li4+aTi5−bM’12−d …化学式3
【0049】
化学式3で、−0.2≦a≦0.2、−0.3≦b≦0.3、0≦c≦0.3、−0.3≦d≦0.3であり、
M’は、1族ないし6族、8族、12族ないし15族の元素のうちから選択された一つ以上である。
【0050】
化学式3でM’は、Li、Na、Mg、Al、Ca、Sr、Cr、V、Fe、Co、Ni、Zr、Zn、Si、Y、Nb、Ga、Sn、Mo、W、Ba、La、Ce、Ag、Ta、Hf、Ru、Bi、Sb及びAsからなる群から選択された一つである。
【0051】
化学式3で表示される化合物は、スピネル型構造を有し、例えば、LiTi12またはLiTi12である。
【0052】
一具現例によれば、リチウムチタン酸化物は、LiTi12またはLiTi12であり、化学式1で表示される化合物は、Li1.3Al0.3Ge1.7(PO、Li1.4Al0.4Ge1.6(PO、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO、Li1.6Al0.6Ge1.4(PO、またはLi1.7Al0.7Ge1.3(POである。
【0053】
負極と保護膜との間には、中間層としてセパレータ、非水系溶媒及びリチウム塩を含む液体電解質、無機固体電解質膜、高分子固体電解質膜、ゲル型高分子電解質及びリチウムイオン伝導性固体電解質膜のうちから選択された一つ以上をさらに含んでもよい。
【0054】
液体電解質は、非水系溶媒及びリチウム塩を含む。
【0055】
非水系溶媒としては、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アミン系またはホスフィン系の溶媒を使用することができる。
【0056】
カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などを使用することができる。
【0057】
エステル系溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、n−酢酸プロピル、tert―ブチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、γ−ブチロラクトン、デカノライド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)などを使用することができる。
【0058】
エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどが使用され、ケトン系溶媒としては、シクロヘキサノンなどが使用される。
【0059】
また、アミン系溶媒としては、トリエチルアミン、トリフェニルアミンなどを使用することができる。ホスフィン系溶媒としては、トリエチルホスフィンなどが使用されるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野で使用される非プロトン性溶媒であるならば、いずれも可能である。
【0060】
また、非プロトン性溶媒としては、R−CN(Rは、C−C20直鎖状、分枝状または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香族環またはエーテル結合を含んでもよい)などのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3−ジオキソランなどのジオキソラン類、スルホラン(sulfolane)類などを使用することができる。
【0061】
非プロトン性溶媒は、単独でまたは二つ以上混合して使用され、二つ以上混合して使用する場合の混合比は電池の性能によって適切に調節され、それは当業者に自明である。
【0062】
また、液体電解質は、イオン性液体を含んでもよい。
【0063】
イオン性液体としては、直鎖状または分枝状の置換されたアンモニウム、直鎖状または分枝状の置換されたイミダゾリウム、直鎖状または分枝状の置換されたピロリジニウム、直鎖状または分枝状の置換されたピペリジニウム陽イオンと、PF,BF,CFSO,(CFSO,(CSO,(CSO、(CN)などの陰イオンとから構成された化合物を使用することができる。
【0064】
リチウム塩は、溶媒に溶解され、電池内でリチウムイオンの供給源として作用することができる、例えば、負極とリチウムイオン伝導性電解質膜との間で、リチウムイオンの移動を促進することができる。
【0065】
リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiN(SO、Li(CFSON、LiCSO、LiClO、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(ここで、x及びyは、自然数である)、LiF、LiBr、LiCl、LiI及びLiB(C(LiBOB)からなる群から選択される一つまたは二つ以上を使用することができる。
【0066】
リチウム塩の含量は、0.01ないし10M、例えば、0.1ないし2.0Mであってもよい。リチウム塩の含量がこの範囲であるとき、電解質が適切な伝導度及び粘度を有するので、電解質が優れた性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動する。
【0067】
リチウム塩以外に、他の金属塩を追加して含んでもよく、例えば、AlCl、MgCl、NaCl、KCl、NaBr、KBrまたはCaClである。
【0068】
セパレータは、リチウム空気電池の使用範囲に耐えることができる組成であるならば、限定されるものではなく、例えば、ポリプロピレン,ポリエチレンなどの多孔性フィルム、ポリプロピレン素材の不織布、ポリフェニレンスルフィド素材の不織布などの高分子不織布などを例示することができ、それらを2種以上併用することも可能である。
【0069】
無機固体電解質膜としては、例えば、CuN、LiNまたはLiPONがある。
【0070】
高分子固体電解質膜としては、ポリエチレンオキシド膜などがある。
【0071】
他の側面によれば、前述の保護負極、及び正極活物質として酸素を含む正極を具備するリチウム空気電池が提供される。
【0072】
以下、一具現例によるリチウム空気電池について、さらに詳細に説明する。
【0073】
リチウム空気電池の一例を図3A及び図3Bに模式的に図示する。本発明の一具現例によるリチウム空気電池30及び30’は、第1集電体32に形成され、酸素を活物質とする正極33、第2集電体34に隣接するリチウムの吸蔵/放出が可能な保護負極37を具備する。
【0074】
保護負極37は、リチウムチタン酸化物を含む負極35、及び化学式1で表示される化合物を含む保護膜36を具備する。
【0075】
負極35と保護膜36との間には、中間層(図示せず)として、前述のように、非水系溶媒及びリチウム塩を含む液体電解質、無機固体電解質膜、高分子固体電解質膜、ゲル型高分子電解質、リチウムイオン伝導性固体電解質膜及びセパレータのうちから選択された一つ以上をさらに含んでもよい。
【0076】
リチウム空気電池30は、図3Aに図示されたように、保護負極37と正極33との間に中間層のない構造を有することができる。または、図3Bに図示されたように、リチウム空気電池30’は、中間層31が、保護電極37とカソード33との間に配置された構造を有することも可能である。中間層31は、セパレータ、非水系溶媒及びリチウム塩を含む液体電解質、無機固体電解質膜、高分子固体電解質膜、ゲル型高分子電解質及びリチウムイオン伝導性固体電解質膜のうちから選択された1層以上を含み、中間層31は、カソード33と保護電極37との間に配置される。
【0077】
無機固体電解質膜は、CuN、LiN、またはLiPONからなる。
【0078】
非水系溶媒は、前述の通りである。
【0079】
図3A及び図3Bの各構成要素は、図面に図示された厚み範囲に限定されることを示すものではない。
【0080】
液体電解質は、一部または全てが正極に含浸されてもよい。
【0081】
高分子電解質膜は、例えば、リチウムイオン伝導性高分子及びリチウム塩を混合して製造することができる。
【0082】
リチウム塩の含量及び種類は、保護負極に関連して記載した通りである。
【0083】
リチウムイオン伝導性高分子としては、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリエステルなどを使用する。
【0084】
中間層として使用されるリチウムイオン伝導性固体電解質膜は、無機物質及び高分子固体電解質成分からなる群から選択された一つ以上を含んでもよい。
【0085】
リチウムイオン伝導性固体電解質膜は、ガラス−セラミックス固体電解質や、ガラス−セラミックス固体電解質と高分子固体電解質との積層構造体であってもよい。このようなリチウムイオン伝導性固体電解質膜についてさらに詳細に説明すれば、次の通りである。
【0086】
リチウムイオン伝導性固体電解質膜としては、リチウムイオン伝導性ガラス、リチウムイオン伝導性結晶(セラミックスまたはガラス−セラミックス)、またはそれらの混合物を含む無機物質を例示することができる。化学的安定性を考慮すると、リチウムイオン伝導性固体電解質膜の例として、酸化物を挙げることができる。
【0087】
リチウムイオン伝導性固体電解質膜が、リチウムイオン伝導性結晶を多量に含む場合、高いイオン伝導度が得られ、例えば、リチウムイオン伝導性結晶を固体電解質膜全体重量に対して、例えば、50重量%以上、または55重量%以上の量で含んでもよい。
【0088】
リチウムイオン伝導性結晶としては、LiN、LISICON類、La0.55Li0.35TiOのようなリチウムイオン伝導性を有するペロブスカイト(perovskite)構造を有する結晶、NASICON型構造を有するLiTi12、またはそれら結晶を析出させるガラス−セラミックスを使用することができる。
【0089】
リチウムイオン伝導性結晶としては、例えば、Li1+x+y(Al,Ga)(Ti,Ge)2−xSi3−y12(ただし、O≦x≦1、O≦y≦1であり、例えば、0≦x≦0.4、0≦y≦0.6であり、または0.1≦x≦0.3、0.10≦y≦0.4である)が挙げられる。結晶が、イオン伝導を阻害する結晶粒系を含まない結晶である場合には、伝導性の面で有利である。例えば、ガラス−セラミックスは、イオン伝導を妨害する気孔や結晶粒系をほとんど有していないから、イオン伝導性が高く、併せて、優秀な化学的安定性を有することができる。
【0090】
リチウムイオン伝導性ガラス−セラミックスを例示すれば、リチウム−アルミニウム−ゲルマニウム−リン酸塩(LAGP)、リチウム−アルミニウム−チタン−リン酸塩(LATP)、リチウム−アルミニウム−チタン−シリコン−リン酸塩(LATSP)などを例として挙げることができる。
【0091】
例えば、マザーガラスが、LiO−Al−TiO−SiO−P系組成を有し、このマザーガラスを熱処理して結晶化する場合、このときの主結晶相は、Li1+x+yAlTi2−xSi3−y12(0≦x≦1、O≦y≦1)になり、このとき、x及びyとしては、例えば、0≦x≦0.4、または0≦y≦0.6である。x及びyは、具体的には、0.1≦x≦0.3、0.1≦y≦0.4である。
【0092】
ここで、イオン伝導を妨害する気孔や結晶粒系というのは、リチウムイオン伝導性結晶を含む無機物質全体の伝導度を、無機物質のうちのリチウムイオン伝導性結晶それ自体の伝導度に対して、1/10以下の値に低減させる気孔や結晶粒系などのイオン伝導性阻害物質を称する。
【0093】
また、ガラス−セラミックスというのは、ガラスを熱処理することによって、ガラス相内に結晶相を析出させて得られる材料であり、非晶質固体と結晶とからなる材料をいい、併せて、ガラス相全てを結晶相に相転移させた材料、例えば、材料中の結晶量(結晶化度)が100重量%である材料を含んでもよい。そして、100%結晶化させた材料でも、ガラス−セラミックスの場合には、結晶粒子間や、結晶内に気孔がほとんど存在しない。
【0094】
リチウムイオン伝導性固体電解質膜は、ガラスセラミックスを多量に含むものであり、高いイオン伝導率を得ることができるので、リチウムイオン伝導性固体電解質膜内に、80重量%以上のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスを含んでもよく、さらに高いイオン伝導率を得るためには、リチウムイオン伝導性ガラスセラミックスを、85重量%以上または90重量%以上の量で含んでもよい。
【0095】
ガラス−セラミックスに含まれたLiO成分は、Liイオンキャリアを提供し、リチウムイオン伝導性を得るのに有用な成分である。
【0096】
LiO成分の含量は、12ないし18%、例えば、12%、13%、14%、16%、17%、または18%である。LiO成分の含量がこの範囲であるとき、ガラスセラミックスのイオン伝導率及び熱的安定性に優れる。ガラス−セラミックスに含まれた成分の含量記載時に使用された「%」は、「モル%」を意味する。
【0097】
ガラス−セラミックスに含まれたAl成分は、マザーガラスの熱的安定性を向上させることができると同時に、Al3+イオンが、結晶相に固溶され、リチウムイオン伝導率向上にも効果がある。
【0098】
Al成分の含量は、5ないし10%、例えば、5%、5.5%、6%、9%、9.5%または10%である。Al成分の含量がこの範囲であるとき、ガラスセラミックスの熱的安定性低下なしに、伝導率にすぐれる。
【0099】
ガラス−セラミックスに含まれたTiO成分は、ガラスの形成に寄与し、結晶相の構成成分でもあり、ガラス及び結晶において有用な成分である。TiO成分の含量は、35ないし45%、例えば、35%、36%、37%、42%、43%または45%である。
【0100】
TiO成分の含量が、この範囲であるとき、ガラスセラミックスは熱的安定性と伝導率とに優れる。
【0101】
ガラス−セラミックスに含まれたSiO成分は、マザーガラスの溶融性及び熱的安定性を向上させることができると同時に、Si4+イオンが結晶相に固溶され、リチウムイオン伝導率の向上にも寄与する。
【0102】
SiO成分の含量は、1ないし10%、例えば、1%、2%、3%、7%、8%または10%である。SiO成分の含量がこの範囲であるとき、ガラス−セラミックスの伝導率に優れる。
【0103】
ガラス−セラミックスに含まれたP成分は、ガラスの形成に有用な成分であり、併せて、結晶相の構成成分でもある。
【0104】
成分の含量は、30%ないし40%、例えば、30%、32%、33%、38%、39%、または40%である。P成分の含量がこの範囲であるとき、ガラス−セラミックスのガラス化及び結晶状析出が容易である。
【0105】
このような組成の場合、溶融ガラスをキャストし、たやすくガラスを得ることができ、このガラスを熱処理して得られた結晶相を有するガラスセラミックスは、1×10−3S・cm−1という高いリチウムイオン伝導性を有することができる。
【0106】
また、このような組成以外にも、類似の結晶構造を有するガラスセラミックスを使用する場合には、Al成分をGa成分に、TiO成分をGeO成分に、その一部または全部を置換することもできる。併せて、ガラスセラミックスの製造時、その融点を低下させるか、あるいはガラスの安定性を向上させるため、イオン伝導性を大きく悪化させない範囲で、他の原料を微量添加することもできる。
【0107】
前述のようなリチウムイオン伝導性固体電解質膜は、ガラス−セラミックス成分以外に、高分子固体電解質成分をさらに含んでもよい。このような高分子固体電解質は、リチウム塩がドーピングされたポリエチレンオキシドであり、リチウム塩としては、LiN(SOCFCF、LiBF、LiPF、LiSbF、LiAsF、LiClO、LiCFSO、LiN(SOCF、LiN(SO、LiC(SOCF、LiN(SOCF、LiCSO、LiAlClなどを例示することができる。
【0108】
高分子固体電解質膜は、ガラス−セラミックスと積層構造体を形成することができ、上述のような成分を含む第1高分子固体電解質と第2高分子固体電解質と間に、ガラス−セラミックスが介在されてもよい。
【0109】
リチウムイオン伝導性固体電解質膜は、単層膜または多層膜で使用されてよい。
【0110】
一方、酸素を正極活物質として使用する正極としては、導電性材料が使用されてよい。導電性材料はまた、多孔性であってもよい。従って、正極活物質として、多孔性及び導電性を有するものであるならば、制限なしに使用することができ、例えば、多孔性を有する炭素系材料を使用することができる。このような炭素系材料としては、カーボンブラック類、グラファイト類、グラフェン類、活性炭類、炭素ファイバ類などを使用することができる。また、正極活物質として、金属ファイバ、金属メッシュなどの金属性導電性材料を使用することができる。また、正極活物質として、銅、銀、ニッケル、アルミニウムなどの金属性粉末を使用することができる。また、ポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料を使用することができる。導電性材料は、単独または混合して使用されてよい。
【0111】
正極には、酸素の酸化/還元のための触媒が添加されてもよく、このような触媒としては、白金、金、銀、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウムのような貴金属系触媒;マンガン酸化物、鉄酸化物、コバルト酸化物、ニッケル酸化物などのような酸化物系触媒;またはコバルトフタロシアニンのような有機金属系触媒を使用することができるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野で、酸素の酸化/還元触媒として使用されるものであるならば、いずれも可能である。
【0112】
また、触媒は、担体に担持されてよい。担体は、酸化物、ゼオライト、粘土系鉱物、カーボンなどであってもよい。酸化物は、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニウム、二酸化チタンなどの酸化物を一つ以上含んでもよい。Ce、Pr、Sm、Eu、Tb、Tm、Yb、Sb、Bi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Mo及びWから選択される一つ以上の金属を含む酸化物であってもよい。カーボンは、カーボンブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック、ランプブラックなどのカーボンブラック類;天然黒鉛、人造黒鉛、膨脹性黒鉛などの黒鉛類;活性炭類、炭素ファイバ類などであってもよいが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野で担体として使用されるものであるならば、いずれも可能である。
【0113】
正極は、バインダをさらに含んでもよい。バインダは、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を含んでもよい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン−ブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体などを単独でまたは混合して使用することができるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野でバインダとして使用されるものであるならば、いずれも可能である。
【0114】
正極は、例えば、酸素酸化/還元触媒、導電性材料及びバインダを混合した後、適当な溶媒を添加して正極スラリを製造した後、集電体表面に塗布して乾燥させるか、あるいは選択的に、電極密度の向上のために、集電体に圧縮成形して製造することができる。また、正極は、選択的に、リチウム酸化物を含んでもよい。また、選択的に、酸素酸化/還元触媒は、省略されてよい。
【0115】
集電体としては、酸素の拡散を迅速にさせるために、網状またはメッシュ形態などの多孔体を利用することができ、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウムなどの多孔性金属板を使用することができるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野で集電体として使用されるものであるならば、いずれも可能である。集電体は、酸化を防止するために、耐酸化性の金属または合金被膜に被覆されてよい。
【0116】
セパレータとしては、保護負極で説明したところと同一のものを使用することができる。
【0117】
一具現例によるリチウム空気電池は、既存の負極に比べて、安定性が改善され、安定して作動し、その結果、充放電特性、寿命、電気的性能などのセル性能が改善される。
【0118】
本明細書で使用される用語である「空気(air)」は、大気空気に制限されるものではなく、酸素を含む気体の組み合わせ、または純粋酸素ガスを含んでもよい。このような用語「空気」に係わる広い定義がすべての用途、例えば、空気電池、空気正極などに適用される。
【0119】
リチウム空気電池は、リチウム一次電池、リチウム二次電池にいずれも使用可能である。また、その形状は、特別に限定されるものではなく、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒状、扁平型、コーン型などを例示することができる。また、電気自動車などに利用する大型電池にも適用することができる。
【0120】
さらに他の側面によれば、前述の保護負極を採用した全固体電池が提供される。
【0121】
保護負極は、リチウムチタン酸化物を含む負極と、下記化学式1で表示される化合物を含む保護膜と、からなる。このように、保護負極は、負極上に中間層の介在なしに、保護膜が負極上に直接形成される構造を有する。
【0122】
Li1+X2−XSi3−Y12 …化学式1
【0123】
化学式1で、Mは、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、インジウム(In)、スカンジウム(Sc)及びクロム(Cr)からなる群から選択された一つ以上であり、
Aは、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、ハフニウム(Hf)及びジルコニウム(Zr)からなる群から選択された一つ以上であり、
Xは、0ないし1の数であり、
Yは、0ないし1の数である。
【0124】
全固体電池は、電池の構成要素が全部固体であるので、電池の信頼性が向上し、電池をさらに小型化及び薄型化することが可能になる。
【0125】
リチウムチタン酸化物を含む負極は、固体電解質を含む。
【0126】
全固体電池の一例として、全固体薄膜リチウム二次電池の概略縦断面図を図4に示す。
【0127】
全固体薄膜リチウム二次電池は、基板41、基板41上に設置された第1集電体42、第1電極43、固体電解質44、第2電極45、及び第2集電体46で構成される。一方ここでは、第1電極を正極層、第2電極を負極層とするが、第1電極が負極層であり、第2電極が正極層であってもよい。この電池は、真空装置を利用した薄膜製作法によって、基板41上から、第1集電体42、第1電極43、固体電解質44、第2電極45、第2集電体46の順序に積層することによって得ることができる。もちろん、真空装置を利用した薄膜製造法以外の方法でも差し支えない。また、第2集電体46上に、保護層として、樹脂やアルミニウム・ラミネートフィルムを配置しても構わない。
【0128】
基板41としては、例えば、アルミナ基板、ガラス基板及びポリイミドフィルムなどの電気絶縁性基板;シリコン基板などの半導体基板;アルミニウム及び銅などの導電性基板;を使用することができる。導電性基板を使用する場合、第1集電体42と第2集電体46とが導通することがないように、第1集電体42と基板41との境界面、あるいは第2集電体46と基板41との境界面の少なくともいずれか一方に、電気絶縁性を有する材料要素を配置する。ここで、基板表面の表面粗度は、小さい方が望ましいから、鏡面板などを使用するのが有効である。
【0129】
基板41上に配置される第1集電体42としては、例えば、白金、白金/パラジウム、金、銀、アルミニウム、銅、ITO(インジウム−スズ酸化膜)など、電子伝導性のある材料が使用される。それ以外にも、電子伝導性を有し、また第1電極43と反応しない材料であるならば、第1集電体42として使用することができる。
【0130】
この第1集電体42の製造法としては、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、イオンビーム蒸着法または電子ビーム蒸着法などが利用される。ただし、基板41にアルミニウム、銅、ステンレスなどの導電性を有する材料を使った場合は、第1集電体42は、配置せずともよい。
【0131】
第1電極(正極層)43には、例えば、リチウム二次電池の正極材料として使用されるコバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMn)、酸化バナジウム(V)、酸化モリブデン(MoO)及び硫化チタン(TiS)などの遷移金属酸化物を使用することが望ましい。それ以外にも、リチウム二次電池の正極に使用される材料であるならば、第1電極43に使用することができる。
【0132】
第1電極(正極層)43の製造法としては、スパッタリング法や、抵抗加熱蒸着法、イオンビーム蒸着法、電子ビーム蒸着法、あるいはレーザアブレーション法などが利用される。
【0133】
固体電解質44としては、全固体電池として使用される一般的な電解質が使用できる。
【0134】
第2電極(負極層)45には、前述の一具現例による保護負極が使用される。
【0135】
第2集電体46としては、第1集電体42のような材料が使用される。また、この第2集電体46の製造法としては、第1集電体42のような方法が利用される。
【0136】
前述の全固体電池を複数個積層し、積層電池を構成することも可能である。
【0137】
また、本実施の形態では、全固体電池の一例として、全固体薄膜リチウム二次電池の場合を示したが、この電池のみに限定されるものではない。
【0138】
以下、実施例を挙げてさらに詳細に説明するが、それらに限定されるものではない。
【0139】
製造例1:Li1.4Al0.4Ge1.6(POの合成
クエン酸と水とを溶解し、0.2Mクエン酸水溶液を準備した。このクエン酸水溶液100mlと、ゲルマニウムテトラブトキシド0.584gとを、95℃で20時間撹拌した。
【0140】
得られた結果物に、硝酸リチウム0.097g、硝酸アルミニウム0.15g及びNHPO 0.345gを付加し、これを0.5時間撹拌した。撹拌された混合物に、エチレングリコール5gを付加し、これを120℃で0.5時間撹拌してから、150℃で0.5時間撹拌した。
【0141】
このような過程によって得た混合物を170℃で6時間撹拌し、これを500℃で4時間撹拌して熱処理し、これを800℃で5時間撹拌して熱処理を実施した。
【0142】
熱処理結果物を、エチルアルコールと平均粒径が約8mmのジルコニアビードを利用したボールミルでHEMM(high energy mechanical milling)を2時間実施した。ミーリングされた結果物に対して、150MPaでプレスを実施し、これを900℃で6時間熱処理し、膜状のLi1.4Al0.4Ge1.6(PO(以下、LGAPとする)を得た。
【0143】
実施例1:保護負極及びセルの製作
金(Au)ホイルとアルミニウム(Al)ホイルとが順次に積層された集電体上に、LiTi12膜と、製造例1によって得たLGAP膜とLiTi12膜を順次に積層し、その上部にアルミニウムホイルと金ホイルとが順次に積層された集電体を積層してセルを製造した。
(LiTi12膜の製造過程)
LiTi12粉末、super-P及びポリビニリデンフルオライド(PVDF)結合剤を80:10:10重量比で混合し、この混合物にN-メチルピロリドン(NMP)を付加してスラリーを製造した。
前記スラリーをアルミニウム集電体ホイル上にコーティングし、コーティングされた結果物を120℃で2時間乾燥してLiTi12電極を形成した。前記電極でLiTi12のローディング量は約4mg/cmであった。
作業電極(working electrode)として前記LiTi12電極を使用し、参照電極(reference electrode)としてリチウム金属を利用しつつ、電解質として1Mリチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(lithium trifluoromethanesulfonimide: LiTFSI)のプロピレンカーボネート(PC)溶液を使用してビーカセル(beaker cell)を製造した。前記ビーカセルを充電し得られた結果物をPC及びジメチルカーボネートを利用して洗浄してLiTi12膜を得た。
【0144】
比較例1:負極及びセルの製作
銅ホイル、リチウムホイル、製造例1によって得たLGAP膜、リチウムホイル及び銅ホイルを順次に積層し、銅ホイル−リチウムホイル−LGAP膜−リチウムホイル−銅ホイルの積層体からなるセルを製作した。
【0145】
比較例2:負極及びセルの製作
銅ホイル、リチウムインジウム合金ホイル、製造例1によって得たLGAP膜、リチウムインジウム合金ホイル及び銅ホイルを順次に積層し、銅ホイル−リチウムインジウム合金ホイル−LGAP膜−リチウムインジウム合金ホイル−銅ホイルの積層体からなるセルを製作した。
【0146】
評価例1:セルのインピーダンス及び伝導度の評価
実施例1及び比較例1によって製造されたセルのインピーダンス及び伝導度を測定し、その結果は、それぞれ図5A,5B及び図6A,6Bに図示した通りである。インピーダンス分析器はSolartron 1260 Impedance analyzer (Solartron analytical)を使用し、インピーダンス測定温度は約25℃であった。図5A及び図5Bは、実施例1のセルのインピーダンス並びに伝導度の評価結果を示し、図6A及び図6Bは、比較例1のセルのインピーダンス並びに伝導度の評価結果を示したものである。
【0147】
インピーダンスは、1,000,000Hzないし0.1Hz範囲で、開放回路電圧(open circuit voltage)で、約5mVの交流電圧を印加する条件で評価し、実数部と虚数部とのインピーダンスの関数として、プロファイルを示したものであり、伝導度は、前述のインピーダンス値を利用し、逆算して求められた値である。
【0148】
図5A,5B及び図6A,6Bを参照し、実施例1のセルは、比較例1の場合と比べて伝導度が改善されるということが分かった。
【0149】
評価例2:セルの伝導度変化評価
実施例1及び比較例1,2によるセルの伝導度変化を評価し、その結果を図7に示した。
【0150】
伝導度変化は、インピーダンス分析装備を使い、蓄積時間を35日まで経過することによるセルの伝導度変化を測定して評価したものである。
【0151】
図7を参照すれば、実施例1のセルは、比較例1,2のセルに比べ、伝導度が改善され、経時的に伝導度変化がないということが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明の保護負極、これを含むリチウム空気電池及びこれを含む全固体電池は、例えば、電源関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【符号の説明】
【0153】
21,35 負極
22 保護膜
30 リチウム空気電池
31 イオン伝導性固体電解質膜
32,42 第1集電体
33 正極
34,46 第2集電体
36 保護膜
37 保護負極
41 基板
43 第1電極
44 固体電解質
45 第2電極
図2
図3A
図3B
図4
図1
図5A
図5B
図6A
図6B
図7