【実施例1】
【0025】
図1には、本発明に係る一缶二水路風呂給湯器の第1実施例の制御構成が示されており、同図に示されるように、本実施例では、制御装置17に、給湯使用時浴槽湯水排水情報検出モードのモード制御部18、給湯燃焼制御手段19、配管洗浄制御手段20を有して構成されている。給湯使用時浴槽湯水排水情報検出モードのモード制御部18は、給湯使用監視手段33と、浴槽水位変化情報検出手段21と、情報補正手段26と、メモリ部28とを有している。なお、本実施例の一缶二水路風呂給湯器1は、
図2に示したようなシステム構成を有している。
【0026】
給湯燃焼制御手段19は、従来と同様に、ガス電磁弁24の開閉や比例弁25の開弁量調節等によるバーナ8の燃焼制御や燃焼ファン22の回転制御等を適宜行い、リモコン装置により設定された給湯設定温度の湯を給湯回路6を通して給湯できるように制御する。
【0027】
給湯使用監視手段33は、給湯燃焼制御手段19の制御情報に基づいて給湯使用状態であるかどうかを監視し、給湯使用状態および、その後の給湯使用停止以降のあらかじめ定められる設定遅延時間(例えば15秒間)が経過する間は、この間に浴槽湯水の排水が行われたら、給湯使用状態における浴槽湯水排水時の特有の給湯使用兼浴槽排水時浴槽水位検出モードで浴槽水位の時系列変化情報の検出動作が行えるように、浴槽水位変化情報検出手段21と情報補正手段26に給湯使用兼浴槽排水時浴槽水位検出モードの実行指令を加える。
【0028】
メモリ部28には、予め定められる水位低下リミット値と水位上昇リミット値とが格納されている。水位低下リミット値は、例えば、実際使用される浴槽2のよりも小さい浴槽2(
図3のA×Bで示されるような横断面積が小さい浴槽)において、実際使用される浴槽2の排水口30よりも大きい排水口30の穴から排水される状況を想定し、その想定される浴槽2の浴槽湯水の排水時に該排水による単位時間当たりの浴槽水位の低下量を求めた値が設定されている。
【0029】
例えば、
図3に示されるような浴槽2内の横断面積が675mm×564mm(A=675mm、B=564mm)で極端に小さい浴槽2において、排水口30の穴の径が一番大きいものを用いた状況を想定する。具体的には、現在用いられている排水口30の外径寸法(この外径寸法は、実際に水が流れる穴の寸法ではなく、穴の寸法は排水口30の穴に嵌められるゴム栓の外径寸法になる)は、33.3mm、41.9mm、54mm、69mm、78mmであり、このうち、一番大きい径78mmの排水口30の穴には、通常、外径42.5mmのゴム栓(42.5mmφ)が嵌められるので、このゴム栓の嵌合を想定している。なお、実際に使用される浴槽2がこの例のように小さい浴槽2の場合や、排水口30がこの例のように大きい場合も全くないとはいえないが、この例のような小さい浴槽2と大きい排水口30が組み合わせて使用される可能性はきわめて小さい。
【0030】
本実施例では、
図3に示すような、浴槽2内の横断面積が675mm×564mm(A=675mm、B=564mm)=380700mm
2で極端に小さい浴槽2と、外径42.5mmのゴム栓を用いた排水口30との組み合わせにおいて、トリチェリの定理を用いて湯水の流出速度を求め、以下のようにして水位低下リミット値を設定している。
【0031】
まず、浴槽貯湯量を、JIS S 2072 2009より、180リットルと仮定すると、この浴槽貯湯量と前記浴槽2内の横断面積S
1=380700mm
2の値から、排水口30の高さと浴槽湯水の水面の高さとの間の距離h[mm]は、次式(1)のようにして求めることができる。
【0032】
h=180×1000000÷380700=472.8132・・・(1)
【0033】
このhを用い、トリチェリの定理から、流出速度V[mm/秒]を次式(2)のようにして求めることができる。なお、式(2)において、gは重力加速度を示す。
【0034】
V=√(2gh)=√{2×(9.8÷1000)×472.8132}=3.044198・・・(2)
【0035】
また、ゴム栓外径を42.5mmと仮定した場合、排水口30の穴の面積S
2[mm
2]は、S
2=(42.5mm/2)
2×3.14=1417.906mm
2であるので、排水口30の穴からの単位時間当たりの排水量q(リットル/秒)は、次式(3)により求められる。
【0036】
q=S
2×V÷1000=4.316387・・・(3)
【0037】
したがって、水位低下速度v[mm/秒]は、v=S
2×V×1000÷380700=11.33803となる。
【0038】
なお、この値は、排水口30の穴を湯水が通る際の圧力損失が考慮されていないため、圧力損失係数K=1/2〜1/10を考慮し、そのうち、仮に、好ましい値(K=1/4〜1/5)を用い、次式(4)により水位低下リミット値Ld[mm/秒]を設定している。
【0039】
Ld=2.5=11.33803×K・・・(4)
【0040】
なお、前記式(2)から明らかなように、流出速度Vは浴槽湯水の水面高さに応じても変化するものであるので、例えば
図4(a)の模式図に示されるように、時系列的に変化する。そこで、例えば浴槽水位(浴槽湯水の水面の高さ)に対応させて水位低下リミット値を設定してもよいし、水位低下速度の最大値を水位低下リミット値として設定してもよい。
【0041】
また、水位上昇リミット値は、例えば、実際使用される浴槽2の横断面積よりも小さい、前記と同様の横断面積を有する浴槽2において、最大給湯流量で浴槽2に水を入れる状況を想定し、その想定される浴槽2の単位時間当たりの浴槽水位の上昇量を時系列的に求めた情報(例えば
図4(b)参照)に基づいて設定されている。なお、同図のHoは追い焚き循環路3の接続部(循環金具)の上端位置を示す。例えば
図3に示される浴槽3を想定した場合、水位上昇速度は、(20/60)×1000000/S
1=0.87558となるので、本実施例では、水圧が高い地域も存在することを考慮して、水位上昇リミット値Lu=1.3[mm/秒]としている。
【0042】
ここで重要なのは、水位上昇リミット値≦水位低下リミット値とすることである。それというのは、水位低下リミット値よりも水位上昇リミット値の方が大きい値であると、前記対流現象等に起因して水位上昇リミット値を超える値が続いた場合には、なかなか真の値に補正することができないためである。理想的には、水位低下リミット値は水位上昇リミット値の2倍程度とすることが望ましい。
【0043】
浴槽水位変化情報検出手段21は、予め定められる設定サンプリングタイミング毎に圧力センサ14により検出される検出水位に基づき、移動平均により浴槽水位の時系列変化情報を求めるものであり、その求めた情報を情報補正手段26に加える。なお、移動平均による水位の求め方は周知であるので、その説明は省略する。
【0044】
情報補正手段26は、浴槽水位変化情報検出手段21が移動平均によって求めた浴槽水位の時系列変化情報を受けて、給湯使用監視手段33から給湯使用兼浴槽排水時浴槽水位検出モードの実行指令が加えられている間は、以下の動作を行う。つまり、浴槽水位変化情報検出手段21が移動平均によって求めた浴槽水位の時系列変化情報において、浴槽水位の単位時間当たりの低下量が前記水位低下リミット値よりも大きい値のときには、その値を前記水位低下リミット値に置き換えて前記浴槽水位の時系列変化情報を補正し、浴槽水位の単位時間当たりの上昇量が前記水位上昇リミット値よりも大きい値のときには、その値を前記水位上昇リミット値に置き換え、前記浴槽水位の時系列変化情報を補正する。
【0045】
例えば、浴槽水位変化情報検出手段21によって移動平均により求められる浴槽水位の時系列変化情報が
図5(a)の特性線aに示す情報であり、時間T
1からT
2までの時間(単位時間あたり)の浴槽水位低下量が水位低下リミット値Ldよりも大きいときには、このT
2における浴槽水位の低下量を水位低下リミット値Ldに補正する(点W
1を点R
1に置き換える)。また、時間T
3からT
4までの時間(単位時間あたり)の浴槽水位上昇量が水位上昇リミット値Luよりも大きいときには、このT
4における浴槽水位の上昇量を水位上昇リミット値Luに補正する(点W
2を点R
2に置き換える)。
【0046】
なお、
図5(a)には2つの補正点のみ示しているが、実際には他の時点でも同様に、単位時間当たりの浴槽水位が水位低下リミット値Ldよりも大きいときには水位低下リミット値Ldに補正し、浴槽水位が水位上昇リミット値Luよりも大きいときには上昇低下リミット値Luに補正する。このような補正を行うと、例えば
図5(b)の特性線bのような浴槽水位変化補正情報が得られる。
【0047】
配管洗浄手段20は、情報補正手段26によって補正された浴槽水位変化補正情報(例えば
図5(b)特性線b)に基づいて、浴槽水位が低下していき、予め定められる配管洗浄開始基準水位(
図5(b)のHs)以下になったとき(Ts)、または、配管洗浄開始基準水位以下になってから予め定められる設定時間(ΔT)が経過したとき(Te)に、注水通路15を通して給湯回路6側から追い焚き循環路3側に湯水を送水し、追い焚き循環路3を洗浄する。この配管洗浄は、給湯熱交換器7により加熱された湯水により行ってもよいし、加熱されていない水により行ってもよい。
【0048】
なお、配管洗浄開始基準水位(Hs)は、例えば浴槽2に追い焚き循環路3を接続する循環金具の上端位置(
図5(b)のHo)から20リットルの水を入れた場合の水位に10mmを加えた高さの水位とすることができるが、前記循環金具の上端位置を配管洗浄開始基準水位としてもよく、適宜設定される。また、前記設定時間としては、浴槽水位が配管洗浄開始基準水位になってから殆ど全ての湯水が排水されるまでの時間(例えば浴槽水位が0になると推定されるまでの時間ΔT)を設定したり、浴槽水位が配管洗浄開始基準水位になってから殆ど全ての湯水が排水されるまでの時間よりも少し多めの時間(ΔT+α)を設定したりすることができ、適宜設定される。
【0049】
以上のような特徴的な制御構成によって、本実施例は、給湯使用状態における浴槽湯水排水時に浴槽水位の時系列変化情報を適正に求め(情報補正手段26によって補正し)、その情報に基づき、浴槽水位が配管洗浄に適した水位となったときに配管洗浄を行うことにより、適切なタイミングで追い焚き循環路3の配管洗浄を行うことができる。つまり、例えば
図5(a)の特性線aに示したような補正前の浴槽水位の時系列変化情報に応じて配管洗浄を行おうとすると、実際には配管洗浄開始基準水位(
図5(a)のHs)になっていない状態で(特性線aのW
3に対応するTwで)配管洗浄が開始されてしまうが、このような動作を防止でき、適切なタイミングで追い焚き循環路3の配管洗浄を行うことができる。
【実施例2】
【0050】
図6には、本発明に係る一缶二水路風呂給湯器の第2実施例の制御構成が示されている。第2実施例は前記第1実施例とほぼ同様に構成されており、その重複説明は省略または簡略化する。第2実施例が前記第1実施例と異なる特徴的なことは、実際に使用される浴槽に対応させて水位低下リミット値を補正する学習機能構成を設けたことである。この学習機能構成は、制御装置17内に設けられている、排水スピード検出手段29と、記憶手段30と、真リミット値検出手段31、水位低下リミット値補正手段32とを有して構成されている。
【0051】
排水スピード検出手段29は、実際に使用される浴槽2において、給湯が使用されていない状態で浴槽湯水の排水時に該排水による単位時間当たりの浴槽水位の低下量を時系列的に移動平均により求める。つまり、排水スピード検出手段29は、実際に使用される浴槽2において、給湯が使用されていない状態であらかじめ定められる設定サンプリングタイミング毎に圧力センサ14により検出される検出水位に基づき、移動平均により浴槽水位の時系列変化情報を求め、この値を記憶手段30に加える。なお、この移動平均による浴槽水位の時系列変化情報は、給湯使用の影響を受けないのでほぼ正確に求められる。
【0052】
記憶手段30は、排水スピード検出手段29により検出される浴槽湯水排水時の単位時間当たりの時系列的な浴槽水位低下量を1回以上の予め定められる回数記憶する。なお、この記憶回数や記憶の仕方は、特に限定されるものでなく、適宜設定されるものであるが、例えば、排水スピード検出手段29によって浴槽湯水排水時の単位時間当たりの時系列的な浴槽水位低下量の新しいデータが検出されたときには、最も旧いデータを消去して新しいデータを蓄積し、常にN回分(Nは複数)のデータを記憶する方法をとることができる。
【0053】
真リミット値検出手段31は、記憶手段30により記憶した単位時間当たりの時系列的な浴槽水位低下量に基づいて、実際に使用される浴槽2における真の水位低下リミット値を求める。この真の水位低下リミット値の求め方は適宜設定されるものであるが、例えば、記憶手段30により記憶されているデータの平均値をとって真の水位低下リミット値としてもよいし、その平均値に排水スピードアップ方向の一定の値(あるいは割合)を上乗せした値を水位低下リミット値としてもよい。
【0054】
水位低下リミット値補正手段32は、予め定められていてメモリ部28に格納されている水位低下リミット値を、真リミット値検出手段31によって求めた真の水位低下リミット値に変更する。
【0055】
第2実施例では、情報補正手段26は、浴槽水位変化情報検出手段21が移動平均によって求めた浴槽水位の時系列変化情報を受けて、給湯使用監視手段33から給湯使用兼浴槽排水時浴槽水位検出モードの実行指令が加えられている間、浴槽水位の単位時間当たりの低下量が水位低下リミット値補正手段32により補正した真の水位低下リミット値よりも大きい値のときには、その値を前記真の水位低下リミット値に置き換えて前記浴槽水位の時系列変化情報を補正する。この補正によって、給湯使用状態の浴槽湯水排水時における浴槽水位の時系列変化情報をより一層適正に求めることができ、その情報に基づき、配管洗浄をより一層適切なタイミングで行うことができる。
【0056】
なお、本発明は、前記各実施例に限定されるものでなく適宜設定されるものである。例えば、前記各実施例では、予め1つの水位低下リミット値と1つの水位上昇リミット値を与えたが、一般家庭用として用いることが想定されている浴槽2のうち横断面積が極端に小さい浴槽2における水位低下リミット値や水位上昇リミット値と、一般家庭用として用いることが想定されている浴槽2よりは遙かに大きい、寮等に用いられる業務用の浴槽2のうち、横断面積が極端に小さい浴槽2における水位低下リミット値や水位上昇リミット値を与え、実際に使用される浴槽2が家庭用か業務用かに応じて、いずれかのリミット値を選択できるようにしてもよい。
【0057】
また、情報補正手段26は、浴槽水位変化情報検出手段21が移動平均によって求めた浴槽水位の時系列変化情報を受けて、この情報において浴槽水位の単位時間当たりの低下量が前記水位低下リミット値よりも大きい値のときには、その値を前記水位低下リミット値に置き換え、浴槽水位の単位時間当たりの上昇量が前記水位上昇リミット値よりも大きい値のときには、その値を前記水位上昇リミット値に置き換える動作によって、前記浴槽水位の時系列変化情報を補正するようにしたが、以下のような補正動作を行うようにしてもよい。
【0058】
つまり、情報補正手段26は、圧力センサ14による前記設定サンプリングタイミング毎に検出される検出水位の値を浴槽湯水変化情報検出手段21から取り込み、検出水位の単位時間あたりの低下値が前記水位低下リミット値よりも大きいときにはその値を前記水位低下リミット値に置き換え(
図7の点w
1から点r
1への変更を参照)、前記検出水位の単位時間当たりの上昇値が前記水位上昇リミット値よりも大きいときにはその値を前記水位上昇リミット値に置き換え(
図7の点w
2から点r
2への変更を参照)。そして、
図1、
図6の破線矢印に示されるように、置き換えた情報を浴槽水位変化情報検出手段21に加え、その置き換えた情報(置き換えられたサンプリング値の情報)に基づいて浴槽水位変化情報検出手段21が移動平均による浴槽水位の時系列変化情報検出を行えるように検出水位情報を補正してもよい。この場合も、サンプリング値(検出水位)を補正してから移動平均を行うことにより、適切な浴槽水位の時系列変化情報を得ることができる。
【0059】
さらに、前記各実施例では、給湯使用状態における浴槽湯水排水時に特有の給湯使用兼浴槽排水時浴槽水位検出モードで浴槽水位の時系列変化情報の検出動作を行う時に、水位低下リミット値と水位上昇リミット値とに対応させて浴槽水位の低下と上昇の時系列変化情報を補正できるようにしたが、水位低下リミット値のみを与えて水位低下時のみ、情報補正手段26により浴槽水位の時系列変化情報を補正するようにしてもよい。
【0060】
さらに、一缶二水路風呂給湯器1は、暖房機能等の他の機能も備えていてもよい。
【0061】
さらに、本発明の燃焼装置は、例えば前記実施例で設けたガス燃焼を行うバーナの代わりに、石油燃焼用のバーナを設けてもよい。