(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043641
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】目元ケア用の美容器具
(51)【国際特許分類】
A61F 7/00 20060101AFI20161206BHJP
A61N 1/36 20060101ALI20161206BHJP
A61H 33/12 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
A61F7/00 320E
A61N1/36
A61H33/12 V
A61H33/12 S
A61H33/12 B
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-15850(P2013-15850)
(22)【出願日】2013年1月30日
(65)【公開番号】特開2014-144214(P2014-144214A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2015年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】日立マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】中村 真由美
(72)【発明者】
【氏名】坂田 栄二
【審査官】
増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−283451(JP,A)
【文献】
実開平01−101518(JP,U)
【文献】
特開平10−211228(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0014096(US,A1)
【文献】
特開2004−222741(JP,A)
【文献】
特開2011−244921(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3170618(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/00
A61H 33/12
A61N 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイマスク状に形成されて目の周りの顔肌を覆うマスク本体(1)と、マスク本体(1)に装着される発熱体(2)と、発熱体(2)を所定の温度に加熱する加熱装置(6)と、マスク本体(1)の肌接触面側に設けた装着部(17)に装着される液含浸体(5)と、低周波パルス電流を供給する美容電流供給源(7)と、第1肌電極(3)、第2肌電極(4)とを備えており、
加熱装置(6)で予め加熱された発熱体(2)と液含浸体(5)とが装着されたマスク本体(1)を、目の周りの顔肌に装着して、液含浸体(5)に含浸されている水分を発熱体(2)で加熱して水蒸気を生成し、生成された水蒸気と発熱体(2)の熱とで目の周りの顔肌を加温し、
第1肌電極(3)と、人体に接触させた第2肌電極(4)との間に低周波パルス電流を供給して、第1肌電極(3)に作用する電流を液含浸体(5)を介して目の周りの顔肌に作用させることを特徴とする目元ケア用の美容器具。
【請求項2】
発熱体(2)が、比熱が大きな素材で形成される蓄熱体(22)と、熱伝導率が小さな素材で形成されて前記蓄熱体(22)の表面を覆う被覆体(23)とで構成してある請求項1に記載の目元ケア用の美容器具。
【請求項3】
加熱装置(6)が、本体部(25)と、本体部(25)に設けた装填部(26)と、装填部(26)に臨んで配置されるコイルと、コイルに対して交流電流ないしパルス電流を供給する低周波発振回路を備えており、
発熱体(2)を装填部(26)に装着した状態でコイルを駆動して、発熱体(2)を電磁誘導加熱方式によって所定の温度に加熱する請求項1または2に記載の目元ケア用の美容器具。
【請求項4】
マスク本体(1)に左右一対のポケット(15)が左右に分離する状態で形成されており、
前記一対のポケット(15)のそれぞれに発熱体(2)が着脱可能に収容してある請求項1から3のいずれかひとつに記載の目元ケア用の美容器具。
【請求項5】
マスク本体(1)と正対する状態において、発熱体(2)の占有領域と、液含浸体(5)の占有領域とが前後に重なるように位置してある請求項1から4のいずれかひとつに記載の目元ケア用の美容器具。
【請求項6】
発熱体(2)が、目を閉じた状態における上まぶたと下まぶたを同時に覆う大きさに形成されており、
マスク本体(1)と正対する状態において、液含浸体(5)の占有領域が、発熱体(2)の占有領域の内側に位置させてある請求項1から5のいずれかひとつに記載の目元ケア用の美容器具。
【請求項7】
目の周りの顔肌を覆ったマスク本体(1)の装着状態を保持する保持具(13)がマスク本体(1)に設けられており、
マスク本体(1)の装着部(17)に第1肌電極(3)が配置され、保持具(13)に第2肌電極(4)が人体と接触する状態で配置してある請求項1から6のいずれかひとつに記載の目元ケア用の美容器具。
【請求項8】
マスク本体(1)の装着部(17)の下まぶたと対向する位置に第1肌電極(3)が配置してある請求項1から7のいずれかひとつに記載の目元ケア用の美容器具。
【請求項9】
マスク本体(1)の装着部(17)を含む肌接触面側に、左右一対の第1肌電極(3)が配置されており、
第1肌電極(3)が、上まぶたおよび下まぶたと対向する状態で無端環状に形成してある請求項1から7のいずれかひとつに記載の目元ケア用の美容器具。
【請求項10】
マスク本体(1)の装着部(17)を含む肌接触面側に、第1肌電極(3)がマスク本体(1)の周縁に沿って無端環状に形成してある請求項1から7のいずれかひとつに記載の目元ケア用の美容器具。
【請求項11】
美容電流供給源(7)が、加熱装置(6)に組込んである請求項1から10のいずれかひとつに記載の目元ケア用の美容器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目の周りの顔肌を加温して血行を促進するための目元ケア用の美容器具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の美容器具として、アイマスク状の美容具が公知である(特許文献1)。そこでは、透湿性内袋に収容される水蒸気発生体と、透湿性内袋の片面に配置される温度調節材と、これらを収容するアイマスク形の透湿性外袋などで美容具を構成している。美容具の全体は、水蒸気発生体が発熱するのを防ぐために密封袋に収容してあり、透湿性外袋の周辺部には、美容具を顔肌に貼り付けるための粘着材が貼着してある。水蒸気発生体は、吸水性ポリマーに食塩水を含浸させた保水材と、鉄粉および活性炭などの混合物からなる。使用時には、使捨てカイロと同様に密封袋を開封し、鉄粉が空気中の酸素と結合するときの酸化熱で水蒸気を発生させ、目の周りの皮膚や筋肉を水蒸気で加温して血行を促進させる。
【0003】
同様の美容器具は特許文献2にも開示されている。そこでは、目の周りを覆う一対の凹所を備えたゴーグル状のハウジングと、凹所の内奥に配置される水保持部と、ハウジングに埋設されて水保持部を加熱する加熱部などで美容器具を構成している。ハウジングの下縁寄りの左右には、下まぶたの周囲を加熱する第2の加熱部が設けてある。使用時には、スポンジ状の水保持部に水を含浸させ、バンドを後頭部に掛けてハウジングを顔面に密着させ、目元の周囲を凹所で覆う。この状態で、加熱部のヒーターに通電し、ヒーターの熱で水保持部の水を気化させ、凹所に充満する水蒸気で目の周囲の皮膚や筋肉を加温する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−005209号公報(段落番号0028、
図1)
【特許文献2】特開2011−045394号公報(段落番号0031〜0033、
図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のアイマスク状の美容具によれば、目の周囲の皮膚や筋肉に約38℃の温度の水蒸気を15分程度作用させて血行を促進することができる。しかし、アイマスク状の美容具は、1回使用するごとに水蒸気発生体の発熱作用が消滅する。そのため、目元ケアを行うごとに新たな美容具を使用する必要があり、1回あたりの目元ケアのためのコストが嵩む。また、水蒸気発生体と透湿性外袋との間に、4枚の不織布と2枚の紙とを積層した温度調節材を配置して、水蒸気発生体で生成した水蒸気の温度を下げる必要がある。そのため、美容具自体の構造が複雑になり、その製造コストが高くなる。水蒸気発生体で生成した水蒸気の温度を温度調節材で低下させるので、美容具の熱効率が低い不利もある。
【0006】
その点、特許文献2の目元ケア用の美容器具は、消耗品が殆どなく、水保持部に水を補給するだけで繰返し使用できるので、一回あたりの目元ケアのためのコストは特許文献1のアイマスク状の美容具に比べて少なくて済む。また、比較的低温の水蒸気を発生させるため、生成した水蒸気の温度を低下させる必要がなく熱効率を向上できる。しかし、特許文献2の美容器具は、ハウジングがゴーグル状に構成してあるので、アイマスク状の美容具に比べて外形形状が大きいため、アイマスク型の美容具に比べると全体重量が重く、収納スペースが大きくなるのを避けられない。また、目元ケアを行う過程で水保持部をヒーターで加熱するので、ヒーターの過熱や、ユーザーが使用途中に眠り込んでしまった場合の安全対策が不可欠になるなど、美容器具の全体コストが嵩む不利がある。
【0007】
さらに、アイマスク型の美容具およびゴーグル型の美容器具のいずれの場合にも、生成した水蒸気で目の周囲の皮膚や筋肉を加温するだけの機能しか備えていない。そのため、目元のケアを行ったのち、改めて目の周りの美容処理を行なう必要があり、目の周りの一連の美容処理に手間と時間がかかるのを避けられない。
【0008】
本発明の目的は、消耗品を最小限にして目元ケアを行なうことができ、さらに、ゴーグル型の美容器具に比べて構造が簡単でコンパクト化でき、美容器具の全体コスト、および一回あたりの目元ケアのためのコストを削減できる目元ケア用の美容器具を提供することにある。
本発明の目的は、予め所定温度に加熱して蓄熱させた発熱体を熱源にして水蒸気を生成でき、従って、使用途中の発熱体が過熱状態に陥るおそれがなく、しかも使用途中にユーザーが眠込んでしまったとしても何等問題を生じることがない、安全性に優れた目元ケア用の美容器具を提供することにある。
本発明の目的は、水蒸気による目元のケアを行う際に、目の周りの顔肌に対してイオン導入やイオン導出などの美容処理を並行して行なうことができ、従って、目の周りの一連の美容処理をより少ない手間で効果的に行える目元ケア用の美容器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る目元ケア用の美容器具は、
図2に示すように、アイマスク状に形成されて目の周りの顔肌を覆うマスク本体1と、マスク本体1に装着される発熱体2と、発熱体2を所定の温度に加熱する加熱装置6と、マスク本体1の肌接触面側に設けた装着部17に装着される液含浸体5と
、低周波パルス電流を供給する美容電流供給源7と、第1肌電極3、第2肌電極4とを含む。使用時には、液含浸体5に含浸されている水分を発熱体2で加熱して水蒸気を生成し、生成された水蒸気と発熱体2からマスク本体1を介して伝導する熱とで、目の周りの顔肌を加温
し、第1肌電極3と、人体に接触させた第2肌電極4との間に低周波パルス電流を供給して、第1肌電極3に供給された電流を液含浸体5を介して目の周りの顔肌に作用させることを特徴とする。
【0010】
発熱体2は、比熱が大きな素材で形成される蓄熱体22と、熱伝導率が小さな素材で形成されて蓄熱体22の表面を覆う被覆体23とで構成する。
【0011】
加熱装置6は、本体部25と、本体部25に設けた装填部2と、装填部26に臨んで配置されるコイルと、コイルに対して交流電流ないしパルス電流を供給する低周波発振回路を備えている。発熱体2を装填部26に装着した状態でコイルを駆動して、発熱体2を電磁誘導加熱方式によって所定の温度に加熱する。
【0012】
マスク本体1に左右一対のポケット15を左右に分離する状態で形成する。一対のポケット15のそれぞれに発熱体2を着脱可能に収容する。
【0013】
マスク本体1と正対する状態において、ポケット15に収容した発熱体2の占有領域と、装着部17に装着した液含浸体5の占有領域とが前後に重なるように、マスク本体1にポケット15および装着部17を形成する。
【0014】
発熱体2は、目を閉じた状態における上まぶたと下まぶたを同時に覆う大きさに形成する。より好ましくは、眼輪筋を覆う大きさに発熱体2を形成する。装着部17に装着した液含浸体5の占有領域を、ポケット15に収容した発熱体2の占有領域の内側に位置させる。
【0016】
目の周りの顔肌を覆ったマスク本体1の装着状態を保持する保持具13をマスク本体1に設ける。マスク本体1の装着部17に第1肌電極3を配置し、保持具13に第2肌電極4を人体と接触する状態で配置する。
【0017】
マスク本体1の装着部17の下まぶたと対向する位置に第1肌電極3を配置する。
【0018】
マスク本体1の装着部17を含む肌接触面側に、左右一対の第1肌電極3を配置する。第1肌電極3は、上まぶたおよび下まぶたと対向する状態で無端環状に形成する。
【0019】
マスク本体1の装着部17を含む肌接触面側に、第1肌電極3をマスク本体1の周縁に沿って無端環状に形成する。
【0020】
美容電流供給源7を加熱装置6に組込む。
【0021】
第1肌電極3に面状ヒーター40を絶縁層41を介して密着させる。第1肌電極3および面状ヒーター40に低周波パルス電流を供給して、液含浸体5を面状ヒーター40の熱で加熱して水蒸気を生成する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の美容器具においては、加熱装置6で所定の温度に加熱した発熱体2で、液含浸体5に含浸されている水分を加熱して水蒸気を生成し、生成された水蒸気と発熱体2から伝導する熱とで、目の周りの顔肌を加温して目元ケアを行えるようにした。このように、加熱装置6で加熱される発熱体2を熱源にして液含浸体5を加熱すると、従来のアイマスク状の美容具に比べて、消耗品を最小限にして、一回あたりの目元ケアのためのコストを削減できる。また、発熱体2および液含浸体5をマスク本体1に装着して目元ケアを行うので、従来のゴーグル型の美容器具に比べて構造を簡単でコンパクトなものとすることができ、従って、美容器具の全体コストを削減できる。
【0023】
また、使用時における美容器具は、予め所定温度に加熱した発熱体2を熱源にして水蒸気を生成するので、使用途中の発熱体2が過熱状態に陥るおそれはなく、安心して目元ケアを行うことができる。さらに、使用途中にユーザーが眠込んでしまったとしても、時間の経過とともに発熱体2の温度は低下する方向に変化するので、美容器具を顔肌に長時間にわたって装着していたとしても、低温火傷などで肌面を傷めるおそれがなく、全体として目元ケア用の美容器具の安全性を向上できる。比較的低温の発熱体2で水蒸気を発生させるので、生成した水蒸気の温度を低下させる必要がなく熱効率を向上できる利点もある。
【0024】
比熱が大きな蓄熱体22と、その表面を覆う熱伝導率が小さな被覆体23とで発熱体2を構成すると、加熱装置6で発熱体2を加熱する際に、より短い時間で発熱体2を所定の温度まで加熱できる。さらに、目の周りの顔肌を加温するときの蓄熱体22の熱伝導を被覆体23で抑止し、発熱体2の温度低下を緩やかなものとして、加温機能が短時間で損なわれるのを防止できる。
【0025】
本体部25と、装填部26と、装填部26に臨んで配置されるコイルと、低周波発振回路などで、電磁誘導加熱方式の加熱装置6を構成すると、本体部25の側で発熱体2の加熱状態や温度状態を管理して、発熱体2を過不足なく所定の温度に加熱することができる。また、電磁誘導加熱方式の加熱装置6においては蓄熱体22自体が発熱するので、ヒーター27で発熱体2を直接的に加熱する場合に比べて、被覆体23をより熱伝導率が小さな素材で形成することができる。従って、蓄熱体22を加熱した直後に、被覆体23を指でつまんでも、蓄熱体22の熱が指を介して逃げることはなく、蓄熱体22の加熱温度を高めに設定することができる。
【0026】
マスク本体1に一対のポケット15を左右に分離する状態で形成し、各ポケット15のそれぞれに発熱体2を収容すると、発熱体2をマスク本体1に対して、常に適正な装着位置に位置する状態で収容することができる。従って、ポケット15に収容した状態の発熱体2を、加温が必要な個所と適正に対応させて、目の周りの顔肌の加温を、熱ロスなどの無駄を伴うこともなく的確に行うことができる。
【0027】
ポケット15に収容した発熱体2の占有領域と、装着部17に装着した液含浸体5の占有領域とを前後に重ねると、発熱体2から液含浸体5へ向かう熱伝導経路を最短にして、液含浸体5に含浸された水分の加熱を効果的に行なえる。従って、液含浸体5における水蒸気の生成を速やかに、しかも持続した状態で的確に行える。また、液含浸体5の占有領域と重なっていない部分の発熱体2の熱は、マスク本体1を介して液含浸体5で覆われていない顔肌に伝導されて、加温された顔肌の血行を促進することができる。
【0028】
目を閉じた状態における上まぶたと下まぶたを同時に覆う大きさに発熱体2を形成すると、目の周りの顔肌の全体を発熱体2で加温し、さらに液含浸体5から放出された水蒸気で、液含浸体5に対応する個所とその周辺部を加温して血行を促進することができる。これに伴い、疲れ目や下まぶたの隈などの血行不良に伴う諸症状を改善して、健康な顔肌を取戻すための目元ケアを行うことができる。また、液含浸体5の占有領域が、発熱体2の占有領域の内側に位置させてあると、発熱体2による液含浸体5の加熱を的確に行って、液含浸体5に含浸された水分の加熱をさらに効果的に行なうことができる。
【0029】
低周波パルス電流を第1肌電極3と液含浸体5を介して目の周りの顔肌に作用させる美容器具によれば、水蒸気による目元のケアを行うのと同時に、目の周りの顔肌に対してイオン導入やイオン導出などの美容処理を並行して行なうことができる。従って、目の周りの一連の美容処理をより少ない手間で効果的に行える目元ケア用の美容器具を提供できる。また、目の周りの顔肌を発熱体2からの伝導熱と水蒸気で加温した状態では、毛穴が大きく開くので、イオン導入やイオン導出などの美容処理をさらに効果的に行なうことができる。イオン導入時には、液含浸体5に含ませた化粧水を肌面の内奥にまで効果的に染込ませて、顔肌を潤いと弾力がある状態に保持し美容効果を向上することができる。また、イオン導出時には、大きく開いた毛穴などに入込んでいた汚れを、液含浸体5に効果的に吸着させて、肌面を清潔で清浄な状態に保持できる。
【0030】
マスク本体1の保持具13に、第2肌電極4が人体と接触する状態で配置してあると、マスク本体1を装着して保持具13を耳に掛止め、あるいは保持具13を後頭部に掛け止めるだけで、第2肌電極4を人体に接触させることができる。従って、ユーザーはイオン導入やイオン導出を行う場合でも、目の周りの顔肌を水蒸気で加温する場合と同様に、単にマスク本体1を目の周りの顔肌にあてがって保持具13を装着するだけでよく、誰でもが手軽にイオン導入やイオン導出を含む目元ケアを行える。
【0031】
マスク本体1の装着部17の下まぶたと対向する位置に第1肌電極3を配置すると、主に下まぶたに水蒸気を供給して血行を促進しながら、同時に低周波パルス電流を下まぶたに対して作用させて、イオン導入やイオン導出を局部的に行うことができる。従って、下まぶたにおける血行を促進し、血行不良に伴って下まぶたに発現していた目の隈や疲れ目などの諸症状を改善し緩和することができる。
【0032】
装着部17を含む肌接触面側に、上まぶたおよび下まぶたと対向する状態で、左右一対の第1肌電極3を無端環状に配置すると、液含浸体5を介して上まぶたおよび下まぶたの双方に低周波パルス電流を作用させて、イオン導入やイオン導出を行える。従って、マスク本体1を顔に装着して、発熱体2の熱および水蒸気で加温を行うのに並行して、目の周りの顔肌の全体にイオン導入やイオン導出などの美容処理と目元ケアとを行なうことができる。
【0033】
第1肌電極3をマスク本体1の周縁に沿って無端環状に形成するマスク本体1によれば、目の周りの顔肌に加えて、眉毛の上部や、下まぶたの下側から鼻梁にわたる顔肌、つまり目の周りの顔肌の周縁部に低周波パルス電流を作用させて、イオン導入やイオン導出と目元ケアとを的確に行える。
【0034】
美容電流供給源7が加熱装置6に組込んであると、第1肌電極3および第2肌電極4用のコネクター33を加熱装置6に設けた出力端子に接続することにより、低周波パルス電流を第1肌電極3から肌面へ出力することができる。また、加熱装置6が商用電源を電源にして作動する場合には、低周波パルス電流の出力強度を必要な大きさに制御できるので、電気的な美容処理をより的確に行なうことができる。因みに、多機能携帯電話を利用して美容電流供給源7を構成する場合には、低周波パルス電流の出力強度に限界があるため、高い出力強度の低周波パルス電流を供給できないことがある。しかし、目の周りを囲む眼輪筋はパルス電流に敏感であるため、比較的低い出力強度の低周波パルス電流であっても、電気的な美容処理を行なうことができる。
【0035】
第1肌電極3に面状ヒーター40を設け、その熱で液含浸体5を加熱して水蒸気を生成すると、面状ヒーター40の発熱温度や、発熱状態の維持管理などを精密に行って、目元ケアをより的確に行うことができる。また、目元ケアを開始してから終了するまでの間の発熱体2の温度管理を精密に行って、目元ケアを的確にしかも安全に行うことができる。面状ヒーター40を絶縁層41を介して第1肌電極3に密着させるのは、第1肌電極3と面状ヒーター40を流れる電流が相互に干渉するのを避けるためである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明に係るマスク本体の縦断側面図である。
【
図2】本発明に係る美容器具の全体構成を示す正面図である。
【
図7】発熱体と液含浸体の前後の位置関係を示す説明図である。
【
図8】第1、第2の肌電極のマスク本体に対する配置形態を示す背面図である。
【
図9】マスク本体の別の実施例を示す説明図である。
【
図10】マスク本体のさらに別の実施例を示す背面図である。
【
図11】マスク本体のさらに別の実施例を示す背面図である。
【
図12】マスク本体のさらに別の実施例を示す背面図である。
【
図13】マスク本体のさらに別の実施例を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(実施例)
図1ないし
図8に、本発明に係る目元ケア用の美容器具(以下、単に美容器具と言う。)の実施例を示す。本発明における前後、左右、上下とは、
図1および
図2に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
【0038】
図2において美容器具は、目の周りの顔肌を覆うマスク本体1と、マスク本体1にそれぞれ装着される左右一対ずつの発熱体2・2、第1、第2の肌電極3・4、および液含浸体5・5と、発熱体2を所定の温度に加熱する加熱装置6と、低周波パルス電流を供給する美容電流供給源7などで構成する。
【0039】
マスク本体1は、
図1に示すように、それぞれアイマスク状に形成されるポケットシート10と、区分シート11と、肌接触シート12の周縁を縫着ないし熱溶着して形成してあり、その左右両側に耳掛紐(保持具)13が固定してある(
図2参照)。ポケットシート10と区分シート11との間には、発熱体2を収容するためのポケット15が左右に分離する状態で形成してあり、各ポケット15に臨むポケットシート10には、発熱体2を出入れするための出入口16が横一文字状に開口してある(
図3参照)。
【0040】
肌接触シート12の下寄りの左右には、液含浸体5を装着するための装着部17が設けてある。装着部17は、上下に長い左右一対のリボン18の上下端を肌接触シート12に縫着ないし熱溶着して形成してある。
図4に示すように、リボン18と肌接触シート12との間に液含浸体5の両側を挟みこむことにより、液含浸体5を肌接触シート12に装着することができる。液含浸体5は市販されている面マットからなり、目元ケアを1回行うごとに交換される。つまり、目元ケアを行うときの消耗品は、面マットと、同マットに含浸される化粧水あるいは水のみとなる。
【0041】
区分シート11と肌接触シート12との間には、マスク本体1の顔肌に対する肌当りを和らげるための軟質の通気自在な発泡樹脂シート19が装填してある。ポケット15に収容した発熱体2の熱が、ポケットシート10を介して無駄に放出されるのを防ぐために、ポケットシート10は、表裏2重のシート体10aの間に断熱シート10bを介装して形成してある。シート体10a、区分シート11、肌接触シート12は、それぞれ布生地、不織布、シート状のフェルトなどのシート材で形成することができるが、マスク本体1を繰返し使用する関係上、洗濯が可能で型崩れしにくいシート材であることが好ましい。さらに、顔肌と接触する肌接触シート12は、洗濯が可能で型崩れしにくいことに加えて、通気自在で肌触りがよいシート材で形成することが好ましい。これは、余分な水蒸気を肌接触シート12を介して発泡樹脂シート19に吸収させ、顔肌が水蒸気でべた付くのを防ぐためである。
【0042】
図6において発熱体2は、熱容量が大きく比熱が大きな素材で形成される円盤状の蓄熱体22と、熱伝導率が小さな(低い)素材で形成されて蓄熱体22の表面を覆う被覆体23とで構成してあり、これにより、穏やかな放熱を可能としている。比熱が大きな素材としては鋼材、銅合金、アルミニウム合金などの金属、ガラス、あるいはポリエチレングリコールなどを適用でき、熱伝導率が小さな素材としてはプラスチック、ゴム、あるいはこれらの発泡体、木、陶磁器などを適用できる。この実施例では、蓄熱体22を比重が小さくて軽いアルミニウム合金を素材にして円盤状に形成した。また、被覆体23は、他のプラスチック材に比べて比重が小さくて軽く、しかも熱伝導率が小さなシリコーン、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリエチレンなどから選択でき、この実施例ではポリエチレンを素材にして射出成形した皿状のケース23aとケース蓋23bとで構成した。ケース23aに蓄熱体22を収容したのち、ケース蓋23bをケース23aにねじ込むことにより、ケース23aと蓄熱体22とケース蓋23bの三者を一体化して、互いに密着させることができる。
【0043】
なお、発熱体2の表面側の熱伝導率と、裏面側の熱伝導率とは異ならせてあることが好ましい。詳しくは、発熱体2をポケット15に収容した状態において、発泡樹脂シート19を介して目と正対する側を発熱体2の裏面側とするとき、ポケットシート10と正対する発熱体2の表面側の熱伝導率を低くする。例えば、発熱体2を形成する表面側の素材自体の熱伝導率を小さくし、あるいは発熱体2を形成する表面側に空気断熱層を設ける。このように、表面側の熱伝導率が低く設定してあると、発熱体2の無駄な外部への放熱を抑止できる。また、被覆体23を発泡体で構成すれば、発熱体2を所定の温度に加熱したのちに、被覆体23に化粧水や水などを含浸させ、この状態で蓄熱体22を被覆体23に収容してポケット15に装着することにより、水分をゆっくりと気化させて保湿できる。被覆体23を構成する発泡体としては、発泡プラスチック、発泡ゴム、コットン、ガーゼ、パフなどを適用することができる。
【0044】
目元ケアを的確に行うために、マスク本体1を適正に装着した状態におけるポケット15に装填した発熱体2と、装着部17に装着した液含浸体5と、上まぶたと下まぶたとの位置関係を次のように設定した。
図2に示すように、マスク本体1と正対する側から見て、発熱体2は、目を閉じた状態における上まぶたと下まぶたを同時に覆う大きさ、つまり、眼輪筋の全体を覆う大きさに形成した。さらに、
図7に示すように、ポケット15に収容した発熱体2の占有領域と、装着部17に装着した液含浸体5の占有領域とが前後に重なり、しかも、液含浸体5の占有領域の殆どの部分、より好ましくは液含浸体5の占有領域の全ての領域が、発熱体2の占有領域の内側に位置するようにした。
【0045】
発熱体2および液含浸体5のサイズは、眼球サイズより大きめに設定するのが好ましい。さらに、液含浸体5のサイズは、下まぶたの全体を覆うことが可能なサイズにすることが好ましく、とくに、目下頬部分はシミが発生しやすいので、目下頬部分をも液含浸体5で覆うことができる大きさにすることが好ましい。この実施例においては、発熱体2の直径を約50mmとし、液含浸体5の縦横寸法を20mm×40mmとした。因みに、発熱体2の温度が高ければ高いほど、目の周りの顔肌を長い時間にわたって加熱することができるが、その場合には、眼球の温度が必要以上に高くなるおそれがある。こうした不具合を避けながら、長い時間にわたって加熱を行うために、眼球と正対する部分を前方へ凹ませ、あるいは眼球と正対する部分をリング状に形成して、眼球と接触しない逃げ空間を液含浸体5に形成することができる。
【0046】
図5に示すように、加熱装置6は扁平箱状の本体部25と、本体部25の上面に凹み形成した左右一対の装填部26と、装填部26の底壁に臨んで設けられるヒーター27と、本体部25に連結されて装填部26の開口面を開閉するカバー28などを備えている。左右の装填部26にそれぞれ発熱体2を装填したのち、本体部25の上面に設けたスイッチ29をオン操作すると、ヒーター27に駆動電流が供給されて発熱体2を所定の温度にまで加熱することができる。また、発熱体2が所定の温度状態になると、ヒーター27に対する駆動電流の供給が自動的に停止され、そのことをLED表示具30の点灯によって明示することができる。発熱体2の加熱温度は、美容器具の使用環境(気温)の違いに応じて38〜45℃の範囲内であればよく、常温(20℃)の使用環境では42℃とすることが好ましい。また、加熱装置6にヒーター27の温度スイッチを設けて、発熱体2の加熱温度を調節できるようにしてもよい。
【0047】
加熱装置6としては、ヒーター27で発熱体2を直接的に加熱する以外に、電磁誘導加熱方式によって発熱体2を加熱することができる。その場合には、本体部25の内部に例えば20〜100kHz程度の交流電流あるいはパルス電流を発振する低周波発振回路と、発振された駆動電流で駆動されるコイルを設ける。コイルは渦巻状に形成されて、装填部26に臨んで配置してある。蓄熱体22は、鉄損の大きな素材や、円電流の電気抵抗が大きな素材、例えば鉄やステンレスのような磁性体で構成してあり、電磁誘導加熱方式によって発熱体2を加熱することができる。その場合には、蓄熱体22自体が発熱するので、ケース23aおよびケース蓋23bは、ヒーター27で発熱体2を直接的に加熱する場合に比べて、さらに熱伝導率が小さな素材で形成することができる。これに伴い、電磁誘導加熱方式によって蓄熱体22を加熱した直後に、ケース23aおよびケース蓋23bを指でつまんでも、蓄熱体22の熱が指を介して逃げることはなく、蓄熱体22の加熱温度を高めに設定することができる。発熱体2は、平坦なタンク状の被覆体23と、その内部に封入される蓄熱体22とで構成することができる。その場合の蓄熱体22は、ノルマルパラフィン(n−テトラデカン、n−オクタデカン)や、無機塩、有機酸(ステアリン酸)などの潜熱蓄熱材と、液状の潜熱蓄熱材に浸漬される磁性体とで構成することができる。潜熱蓄熱材は、加熱された磁性体の熱で液化される。この蓄熱体22によれば、蓄熱体22の全体を磁性体で構成する場合に比べて、軽量化することができるうえ、熱容量も大きくすることができる。また、その他の加熱装置6としては、蓄熱体22の内部にヒーターを設け、このヒーターを加熱するための外部電極を被覆体23(好ましくは、装填部26側)の表面に露出するように配置して、発熱体2を装填部26に装着した時に、装填部26の底面に設けた電極と接続して、発熱体2(蓄熱体22)を加熱するものであっても良い。
【0048】
水蒸気で目の周りの顔肌を加温するのに並行して、目の周りの顔肌に低周波パルス電流を作用させて美容処理を行なうために、第1、第2の肌電極3・4と、これらの電極3・4に低周波パルス電流を供給する美容電流供給源7を設けている。
図2および
図8に示すように、美容電流供給源7は、多機能携帯電話(スマートフォン)やアイフォン(登録商標)などに代表される情報通信端末を利用したものであり、そのイヤフォン端子にコネクター33を介して接続した出力リード34の導出端に、第1肌電極3と第2肌電極4とが接続してある。情報通信端末の内部には、音楽ファイルを記録するメモリー部が設けてあり、さらに、再生された音楽信号をソースにして低周波パルス電流を生成し、イヤフォン端子に出力するアプリケーションがインストールしてある。
【0049】
イヤフォン端子(音声出力端子)に出力される低周波パルス電流の極性は、アプリケーションの側で切換えることができ、例えば、イオン導入による美容処理を行なう場合には、第1肌電極3にマイナス極性の低周波パルス電流を作用させ、イオン導出による美容処理を行なう場合には、第1肌電極3にプラス極性の低周波パルス電流を作用させる。この種の情報通信端末を利用した美容器具の詳細は、特開2012−115646号公報に開示してある。
【0050】
上記の第1、第2の肌電極3・4のうち、第1肌電極3は装着部17に配置してあり、第2肌電極4は耳掛紐13に配置してある。詳しくは、第1肌電極3を銅合金でボタン状に構成し、その出力面3a(
図1参照)が肌接触シート12の外面に露出する状態で、第1肌電極3を装着部17にかしめ固定している。液含浸体5を装着部17に装着した状態においては、第1肌電極3の出力面3aが、液含浸体5の肌接触シート12との対向面の中央に接触して、第1肌電極3が液含浸体5を介して下まぶたと対向している。第2肌電極4は導電性ゴムの管状体からなり、耳掛紐13の外面を覆う状態で装着してある。
図2に示すように、耳掛紐13を耳に掛止めた状態における第2肌電極4は、耳または耳の付根の皮膚と接触している。
【0051】
次に、アイマスク型の美容器具の使用例を説明する。美容器具を使用するのに先行して、
図5に示すように、一対の発熱体2を加熱装置6の装填部26に装填し、スイッチ29をオン操作して発熱体2を加熱する。並行して、液含浸体5の全体に適量の化粧水を含浸させたのち、
図4に示すように装着部17に装着する。さらに、コネクター33を美容電流供給源7のイヤフォン端子に接続し、美容電流供給源7のディスプレイ35に表示された制御画面において、運転モードや運転時間を選択し、あるいは動作強度を調整する。例えば、イオン導入モードで美容器具を使用する場合には、制御画面上のイオン導入モードを選択し、その作動時間や刺激強度を設定する。このような一連の準備を行っているうちに、発熱体2が所定の温度(42℃)に加熱されるので、各発熱体2を加熱装置6の装填部26から取外してポケット15に装着する。
【0052】
次に
図2に示すように、発熱体2と液含浸体5が装着されたマスク本体1を、目の周りの顔肌に被せつけ、その耳掛紐13を左右の耳に掛止める。しばらくすると、発熱体2の熱が発泡樹脂シート19を介して液含浸体5に伝導されるので、液含浸体5に含浸された化粧水の水分が蒸発して、下まぶたの皮膚に水蒸気が接触し、さらに水蒸気が上まぶた側の皮膚に接触して、目の周りの顔肌を加温する。同時に、発熱体2の熱が発泡樹脂シート19と肌接触シート12を介して目の周りの顔肌の全体を心地よい温度(40℃前後)に加温する。このときの水蒸気の温度や、肌接触シート12を介して伝導される熱の温度は、発熱体2の温度より高い温度になることはなく、従って、使用途中に眠込むことがあったとしても、安心して目元ケアを行なうことができる。なお、発泡樹脂シート19に水分を補給することで、ゆっくりと気化させて保湿することができる。この発泡樹脂シート19としては、スポンジ、コットン、ガーゼ、パフなどを適用することができる。
【0053】
上記の目元ケアに並行して、イオン導入やイオン導出による美容処理を行なうことができる。その場合には、マスク本体1を目の周りの顔肌に被せつける前に、美容電流供給源7のディスプレイ35に表示された制御画面のスタートボタンをオン操作して、予め設定しておいたイオン導入モードの美容処理を開始する。イオン導入モード時には、第1肌電極3にマイナス極性の低周波パルス電流が供給され、液含浸体5を介して下まぶた側の肌面に低周波パルス電流が作用する。そのため、液含浸体5に含浸された化粧水が下まぶた側の肌面にしみ込む作用を促進して、肌面を湿潤で弾力のある状態に保持できる。
【0054】
とくに、目の周りの肌面が水蒸気、あるいは発熱体2からの伝導熱で加温された状態では、毛穴が大きく開くため、化粧水を肌面の内奥にまでさらに効果的に染込ませて、美容効果を向上することができる。同様にして、イオン導出モード(イオンクレンジングモード)で美容処理を行なうことができ、その場合には、第1肌電極3にプラス極性の低周波パルス電流を作用させて、肌面の皺や襞部などに入込んでいた汚れを、第1肌電極3側の綿マットに吸着させて、肌面を清潔な状態に保持できる。マスク本体1による美容処理が終了したら、マスク本体1を顔肌から取外し、さらに液含浸体5を装着部17から取外して廃棄する。イオン導出モードで美容処理を行なった場合には、目の周りの顔肌に付着している浮出た汚れを払拭して除去する。なお、美容器具の使用に伴って、発熱体2の温度は徐々に低下するが、発熱体2の温度が低下するのに対応して、低周波パルス電流の出力強度を徐々に増加すると、美容処理を最後まで適切に行うことができる。
【0055】
図9ないし
図13は、それぞれ美容器具の別の実施例を示している。
図9に示す美容器具においては、その発熱体2の外形の大きさを、
図1から
図8で説明した発熱体2の大きさより小さくして、主に液含浸体5のみを発熱体2で加熱できるようにした。他は、先の実施例と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。以下の実施例においても同じとする。
【0056】
図10に示す美容器具においては、マスク本体1に眼鏡形の1個のポケット15を形成し、マスク本体1の上縁に沿って開口した出入口16から、発熱体2をポケット15に出入れできるようにした。このように、左右に連続する眼鏡形のポケット15に一対の発熱体2を装着した場合には、発熱体2が左右に遊動して目の周りの顔肌を適切に加熱できないおそれがある。しかし、
図10に示すように、左右のポケット15の下縁の間に鼻梁に沿う上突部15aを設けておくと、左右の発熱体2が遊動するのを規制して、目の周りの顔肌を発熱体2で適正に加熱することができる。この実施例における発熱体2は、左右一対の発熱体2を一体に構成して、ひょうたん状に形成することができる。その場合には、発熱体2が左右に遊動するのを規制でき、さらに発熱体2のポケットへ15への着脱を1回で簡便に行うことができる。
【0057】
図11および
図12は、それぞれ第1肌電極3の電極形状を変更した実施例を示している。
図11においては、左右の第1肌電極3を逆台形の無端環状に形成して、第1肌電極3を左右の上まぶたおよび下まぶたと対向させるようにした。この場合の液含浸体5は、ガーゼを片方の目の周りの顔肌の大きさに折りたたんで形成することができ、折りたたまれたガーゼに化粧水を含浸させた状態で目の周りの顔肌に密着させ、その外面にマスク本体1を装着して美容処理を行なう。もちろん、折りたたまれたガーゼは、マスク本体1の側に装着して使用してもよい。この実施例においては、下まぶたと上まぶたの双方に低周波パルス電流を作用させて、両まぶたに同時に電気的な美容処理を施すことができる。
【0058】
図12においては、第1肌電極3をマスク本体1の周縁に沿って無端環状に形成し、1個の第1肌電極3のみで、目の周りの肌面に液含浸体5を介して低周波パルス電流を作用させるようにした。この場合の液含浸体5は、
図11の場合と同様に、折りたたまれた一対のガーゼを各目の周りの顔肌に密着させてもよいし、左右横長に折りたたまれた1個のガーゼで左右の目の周りの顔肌を同時に覆うようにしてもよい。要は、液含浸体5が第1肌電極3に密着できさえすれば、その外形形状に制限はない。このように、第1肌電極3の形状は、低周波パルス電流を作用させたい肌面の位置や形状に応じて自由に選択できる。
【0059】
図13に示す美容器具は、発熱体2を備えていない。その代わりに、第1肌電極3と肌接触シート12との間に面状ヒーター40を配置して、第1肌電極3と面状ヒーター40に低周波パルス電流を供給して、液含浸体5を面状ヒーター40の熱で加熱して水蒸気を生成できるようにした。なお、面状ヒーター40は、絶縁層41を介して第1肌電極3と密着しているので、互いに干渉しあうことはない。
【0060】
上記の実施例以外に、美容電流供給源7は加熱装置6に組込むことができる。その場合には、コネクター33を加熱装置6に設けた低周波パルス電流の出力端子に接続して、第1肌電極3から肌面へ出力することができる。また、商用電源を電源とする加熱装置6に美容電流供給源7を組込むことにより、低周波パルス電流の出力強度を必要な大きさに制御できるので、低周波パルス電流の出力強度に限界がある多機能携帯電話を利用する場合に比べて、電気的な美容処理をより的確に行なうことができる。さらに、イオン導入器やクレンジング器などの美容機器にパルス電流の出力端子を設け、この出力端子を第1肌電極3および第2肌電極4と接続して、電気的な美容処理を行なうことができる。要するに、低周波パルス電流を供給する美容電流供給源7と、低周波パルス電流の出力端子とを備えているものであれば、第1肌電極3と第2肌電極4を先の出力端子に接続して、電気的な美容処理を行なうことができる。
【0061】
マスク本体1に設けられる保持具13は、耳掛紐状に形成する必要はなく、側頭部から後頭部にわたって掛けとめられるバンド、あるいはベルトであってもよい。その場合の第2肌電極4はバンドなどの肌接触面側に設けるか、バンドなどから導出したリード線の導出端に第2肌電極4を設けて、髪に邪魔されることなく第2肌電極4を肌面に接触できるようにすることができる。発熱体2の被覆体23はケース状に形成する必要はなく、例えば、蓄熱体22を溶融プラスチックで被覆し、あるいは成形されたプラスチックの内部に蓄熱体22を封入して、被覆体23を形成することができる。装着部17は、一対の面ファスナーや、プラスチック製のホックを介して液含浸体5を取付ける構造とすることができる。
【0062】
第1肌電極3および第2肌電極4を備えているマスク本体1は、繰返し使用が可能に構成してあってもよいが、洗濯の手間と衛生面を考慮して、所定の回数だけ繰返し使用したのち廃棄するようにしてもよい。
図2、
図9、
図11および
図12で説明したマスク本体1は、これら4者を一組にして提供することができ、その場合には、ユーザーの好みに応じて必要個所を加温しながらイオン導入し、あるいはイオン導出する際に、マスク本体1を使い分けることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 マスク本体
2 発熱体
3 第1肌電極
4 第2肌電極
5 液含浸体
6 加熱装置
7 美容電流供給源
13 耳掛紐(保持具)
15 ポケット
16 出入口
17 液含浸体の装着部