特許第6043644号(P6043644)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043644
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】真空冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F25D 7/00 20060101AFI20161206BHJP
   F25D 17/02 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   F25D7/00 A
   F25D17/02 304
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-22665(P2013-22665)
(22)【出願日】2013年2月7日
(65)【公開番号】特開2014-152982(P2014-152982A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130651
【氏名又は名称】株式会社サムソン
(72)【発明者】
【氏名】多田 聖司
(72)【発明者】
【氏名】明尾 伸基
【審査官】 関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−284162(JP,A)
【文献】 特開昭51−046572(JP,A)
【文献】 特開昭54−035445(JP,A)
【文献】 実開昭55−133201(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 7/00
F25D 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却物を収容する処理槽、処理槽と真空配管によって接続しており処理槽内の気体を吸引する真空発生装置、真空発生装置が処理槽から吸引している気体を途中で冷却する熱交換器、熱交換器で使用するための冷水を製造する冷水ユニットを持ち、処理槽内を真空化することで被冷却物の冷却を行う真空冷却装置において、前記の熱交換器は、冷水ユニットによって製造した冷水をためる冷水タンク内に前記熱交換器の伝熱管を設置した構成であって、冷水タンクの上部から冷水部分を貫通させて冷水タンクの下部まで達するようにしている第一熱交換器と、冷水タンクの下部から冷水部分を貫通させて冷水タンクの上部まで達するようにしている第二熱交換器を設け、第一熱交換器と第二熱交換器は冷水タンクの下部で連結した構造であることを特徴とする真空冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の真空冷却装置において、第一熱交換器の上部には処理槽から吸引してきた気体を複数の伝熱管に分散する上部分散室、第二熱交換器の上部には複数の伝熱管に分散して流れてきた気体を集合させる上部集合室を持っており、前記上部分散室及び上部集合室には開閉可能な上部ふたを設けていることを特徴とする真空冷却装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の真空冷却装置において、第二熱交換器に設けている伝熱管の設置本数は第一熱交換器に設けている伝熱管の設置本数よりも少なくしていることを特徴とする真空冷却装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の真空冷却装置において、第一熱交換器では気体を下向きに流し、第二熱交換器では気体を上向きに流すようにしていることを特徴とする真空冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は処理槽内を真空化し、処理槽内の被冷却物から水分を蒸発させた際に発生する気化熱を利用して被冷却物を冷却する真空冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
処理槽内に加熱調理した食品などの被冷却物を収容しておき、処理槽内を真空化することで被冷却物を冷却する真空冷却装置がある。被冷却物を収容している処理槽内を減圧し、処理槽内での沸点を被冷却物の温度よりも低下させると、被冷却物中の水分が蒸発し、その際に被冷却物から気化熱を奪うため、被冷却物を短時間で冷却することができる。真空冷却装置に使用する真空発生装置としては、水又は蒸気によるエジェクタや水封式又はドライ式の真空ポンプによるものが知られている。真空発生装置にて処理槽内の気体を吸引する場合、吸引気体と同時に被冷却物から発生した蒸気も吸引することになる。しかし、水は液体から気体に変わると体積が大幅に増大するため、蒸気をそのまま真空発生装置に吸引させたのでは、真空発生装置で排出しなければならない気体量が多くなる。その場合、処理槽内の減圧に要する時間が長くなるため、冷却工程時間が長くなってしまう。
【0003】
そのため、特開平7−139860号公報に記載があるように、処理槽内の気体を真空発生装置へ送る真空配管の途中に、真空発生装置が吸引している気体を冷却する熱交換器(コールドトラップ)を設け、真空配管の途中で気体を冷却することが行われている。熱交換器によって気体の冷却を行うと、気体の体積が縮小し、特に蒸気を冷却して液体に戻すと体積は大幅に小さくなるため、真空発生装置が吸引する気体の体積が小さくなり、真空冷却の効率を高めることができる。特開平7−139860号公報に記載の発明では、熱交換器内に冷却水を流す冷却水回路を挿入しておき、冷水ユニットで製造して冷水タンクにためておいた冷水を熱交換器内の冷却水回路に供給することで、冷却水回路の周囲を流れる気体を冷却するようにしている。冷水ユニットで製造した冷水をためておく冷水タンクを設置しておき、冷水タンクの冷水を冷却水供給路を通して熱交換器へ供給するようにしているため、熱交換器に冷水を安定的に供給することができる。
【0004】
また、真空冷却装置においても、省スペース化・低コスト化の要望が強くある。特開平7−139860号公報の発明では、熱交換器に供給する冷却用水を冷却初期段階では常温水とし、その後に冷水ユニットによる冷水を供給することで、冷水タンクや冷凍機の大きさを小さくするとしている。しかしこの場合、配管の複雑化によるコスト上昇や水使用量の増大も発生するため、この分は効果が相殺されることになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−139860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、真空冷却装置において、省スペース化・低コスト化をすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、被冷却物を収容する処理槽、処理槽と真空配管によって接続しており処理槽内の気体を吸引する真空発生装置、真空発生装置が処理槽から吸引している気体を途中で冷却する熱交換器、熱交換器で使用するための冷水を製造する冷水ユニットを持ち、処理槽内を真空化することで被冷却物の冷却を行う真空冷却装置において、前記の熱交換器は、冷水ユニットによって製造した冷水をためる冷水タンク内に前記熱交換器の伝熱管を設置した構成であって、冷水タンクの上部から冷水部分を貫通させて冷水タンクの下部まで達するようにしている第一熱交換器と、冷水タンクの下部から冷水部分を貫通させて冷水タンクの上部まで達するようにしてる第二熱交換器を設け、第一熱交換器と第二熱交換器は冷水タンクの下部で連結した構造であることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記の真空冷却装置において、第一熱交換器の上部には処理槽から吸引してきた気体を複数の伝熱管に分散する上部分散室、第二熱交換器の上部には複数の伝熱管に分散して流れてきた気体を集合させる上部集合室を持っており、前記上部分散室及び上部集合室には開閉可能な上部ふたを設けていることを特徴とする。請求項3に記載の発明は、前記の真空冷却装置において、第二熱交換器に設けている伝熱管の設置本数は第一熱交換器に設けている伝熱管の設置本数よりも少なくしていることを特徴とする。請求項4に記載の発明は、前記の真空冷却装置において、第一熱交換器では気体を下向きに流し、第二熱交換器では気体を上向きに流すようにしていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の場合、熱交換器と冷水タンクは一体化しているため、冷水タンクと熱交換器の間で冷却水を循環させる循環経路などは不要になる。循環配管等を削減することで、装置として必要なスペースを小さくすることができ、装置コストを低下させることもできる。また、熱交換器と冷水タンクを別々に設けていた場合にはそれぞれに必要であった容器は、本発明であれば一つにすることができるため、この点でも設置スペースの縮小と低コスト化をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施例における真空冷却装置のフロー図
図2】本発明の一実施例における熱交換器部分の縦断面図
図3】本発明の一実施例における熱交換器部分の上部ふたを外した場合の平面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。図1は本発明の第一の実施例における真空冷却装置のフロー図、図2は本発明の一実施例における熱交換器部分の縦断面図、図3は本発明の一実施例における熱交換器部分の上部ふたを外した場合の平面図である。真空冷却装置は、処理槽2、真空発生装置1、第一熱交換器4、第二熱交換器5、冷水ユニット3、冷水タンク10などからなっている。真空冷却装置は、処理槽2の内部を真空化することによって、処理槽2に収容した被冷却物(高温の食品)から水分を蒸発させ、その際に発生する気化熱の作用によって冷却を行う。
【0012】
処理槽2と真空発生装置1の間は、真空配管9によって接続しておき、真空発生装置1を作動することによって処理槽2内の気体を排出する。このとき、処理槽2内の気体とともに被冷却物から発生した蒸気も真空発生装置1で吸引するようにしていると、真空発生装置1が吸引しなければならない気体の容積が大きくなり、処理槽2内の減圧に時間が掛かることになるため、冷却時間が長くなる。そのため真空配管9には熱交換器を設けておき、真空発生装置1が吸引している気体や気体中に含まれている蒸気を冷却することで、吸引しなければならない気体の体積を縮小している。
【0013】
熱交換器は、上流側の第一熱交換器4と下流側の第二熱交換器5の2系統とし、冷水タンク10内に設けている。第一熱交換器4と下流側の第二熱交換器5の伝熱管は、冷水タンク10の水部を貫通させるようにして設置している。第一熱交換器4の上部には処理槽2から吸引してきた気体を第一熱交換器4の複数の伝熱管に分散させるための上部分散室11、第二熱交換器5の上部には第二熱交換器5の複数の伝熱管を流れてきた気体を集合させる上部集合室13を設ける。
【0014】
冷水タンク10は直方体形状であって、冷水ユニット3との間を冷却用水配管7によって接続しておき、冷水ユニット3で発生させた冷水をためておくものである。冷却用水配管7は、冷水ユニット3と冷水タンク10の間で冷水を循環させることができるようにしており、冷却用水配管7の途中には循環ポンプ8を設けている。冷水タンク10の下部には、第一熱交換器4の複数の伝熱管に分かれて流れてきた気体を集合させる下部集合室12を設ける。下部集合室12は、冷水タンク10の下部で気体流をターンさせて第二熱交換器5へ流すものであり、下部集合室12の天井面は冷水タンクの底板としており、第一熱交換器4及び第二熱交換器5の伝熱管下端は下部集合室12まで達する構成としている。下部集合室12の底部にはドレン配管を接続しておき、熱交換器で発生した凝縮水(ドレン)はドレン配管を通して下方に設けているドレンタンク6へ送ることができるようにしておく。
【0015】
処理槽2からの真空配管9は第一熱交換器4の上部分散室11に接続し、真空発生装置1へ接続している真空配管9は第二熱交換器5の上部集合室13に接続しておき、処理槽2から吸引してきた気体は、第一熱交換器4と第二熱交換器5を通った後に真空発生装置1へ達するようにしておく。第一熱交換器4は上部分散室11と下部集合室12の間を多数の伝熱管でつなぎ、第二熱交換器5も上部集合室13と下部集合室12の間を多数の伝熱管でつないでいるものである。そのため、処理槽2から取り出された気体は、上部分散室11から第一熱交換器4の伝熱管に分かれて進み、冷水タンク10の下方に設けている下部集合室12に入ることで集合する。その後、下部集合室12でターンした後に再び第二熱交換器5の伝熱管に分かれて進み、上部集合室13で集合した後に真空発生装置1に向かうことになる。第一熱交換器4及び第二熱交換器5の伝熱管は、冷水タンク10の水部を貫通させて設置しているため、伝熱管の外側は冷水タンク10の冷水に接している。
【0016】
実施例での真空冷却運転動作を説明する。まず準備として、処理槽2内に被冷却物を収容し、処理槽2を密閉しておく。真空発生装置1、冷水ユニット3、循環ポンプ8の各機器類を作動することで真空冷却運転を行うと、処理槽2内の気体が真空配管9を通して真空発生装置1から取り出され、処理槽2内の圧力が低下していく。処理槽内の圧力が低下すると、処理槽2内に収容している被冷却物から水分が蒸発し、水分が蒸発する際には周囲から気化熱を奪うため、被冷却物の温度は急激に低下していく。
【0017】
真空配管9を通して送られてきた気体は、第一熱交換器4の上部分散室11から複数の伝熱管に分岐して下向きに流れ、下部集合室12へ向かう。伝熱管は低温の冷水をためた冷水タンク10に設置しているものであり、伝熱管の外側表面は冷水に接しているために伝熱管では周囲から冷却されている。そのため伝熱管内を流れる気体は、伝熱管の周囲から冷却されながら進むことになる。第一熱交換器4内を下向きに流れた気体は、下部集合室12でターンして第二熱交換器5内を上向きに流れる。第二熱交換器5の伝熱管も周囲で冷水と接しているために第二熱交換器5内を流れる気体は更に冷却される。
【0018】
第一熱交換器4及び第二熱交換器5で気体の冷却を行うと、気体中に含まれていた蒸気が凝縮し、凝縮水は伝熱管内側表面を伝わり落ちて伝熱管の下方にある下部集合室12へ流れ落ちる。下部集合室12の底部に流れ落ちた凝縮水は、下部集合室12の底部に接続しているドレン配管を通して下方に設置しているドレンタンク6へ流れ落ちていく。蒸気が凝縮水になると体積は大幅に小さくなるため、処理槽2から吸引してきた気体は第一熱交換器4で体積を縮小させ、第二熱交換器5でさらに体積を縮小させる。そのため、第二熱交換器5で必要な気体流路の断面積は、第一熱交換器4に比べると小さくなっており、第二熱交換器の伝熱管設置数は第一熱交換器4よりも少なくすることができる。気体の体積が小さくなると、真空発生装置1で排出しなければならない気体量が少なくなるため、より早く処理槽2内の圧力を低下することができ、冷却に要する時間を短縮させることができる。
【0019】
第一熱交換器4の上部分散室11及び第二熱交換器5の上部集合室13は、図3に記載しているように上面を角フランジによる固定としており、上部ふた14は取り外すことができる構造としている。上部ふた14を取り外すと、第一熱交換器4及び第二熱交換器5の伝熱管の内側が現れる。伝熱管は垂直方向に延びる直管であるため、上部ふた14を取り外すと、ブラシや配管洗浄ノズルを使用して伝熱管の内面を洗浄することができる。食品を冷却する真空冷却装置の場合、処理槽2に通じている真空配管9は清潔に保つことができるようにしておく必要がある。上部分散室11及び上部集合室13の上部ふた14を取り外すことができるようにしておけば、第一熱交換器4及び第二熱交換器5の内部を容易に洗浄することができるため、処理槽2に通じている第一熱交換器4及び第二熱交換器5を清潔に保つことができる。
【0020】
以上説明した本発明の真空冷却装置では、冷水タンクと熱交換器を一体化しており、従来の真空冷却装置では必要であった冷水タンクと熱交換器の間での冷却水の循環は不要となる。そのため、冷水タンクと熱交換器の間での循環経路をなくすことができ、真空冷却装置の構造を簡略化することができる。このことにより、真空冷却装置の省スペース化と低コスト化ができる。また、熱交換器と冷水タンクを別々に設けていた場合にはそれぞれに必要であった容器は、本発明であれば一つにすることができるため、この点でも設置スペースの縮小と低コスト化をすることができている。
【0021】
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0022】
1 真空発生装置
2 処理槽
3 冷水ユニット
4 第一熱交換器
5 第二熱交換器
6 ドレンタンク
7 冷却用水配管
8 循環ポンプ
9 真空配管
10 冷水タンク
11 上部分散室
12 下部集合室
13 上部集合室
14 上部ふた


図1
図2
図3