(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043669
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】分電盤
(51)【国際特許分類】
H02B 1/42 20060101AFI20161206BHJP
H02B 1/40 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
H02B9/00 D
H02B9/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-69750(P2013-69750)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-193103(P2014-193103A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】須佐 太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀浩
(72)【発明者】
【氏名】浅井 成実
【審査官】
出野 智之
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/065904(WO,A1)
【文献】
特開2008−136282(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/120939(WO,A1)
【文献】
特開2009−131009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/42
H02B 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主幹ブレーカと、当該主幹ブレーカの2次側に配設された主幹バーに対して、その両側のうち少なくとも一方の側に列設した複数の分岐ブレーカとを有し、前記分岐ブレーカの一次側端子を前記主幹バーに接続して前記主幹バーから電路を分岐する分電盤であって、
個々の前記分岐ブレーカに流れる分岐電流を検出する複数の電流センサを共通する基板に搭載した電流センサユニットと、
前記電流センサユニットとコネクタを介して連結され、前記電流センサが検出した電流情報を基に消費電力を演算して出力する通信計測ユニットとを具備し、
前記主幹バーには前記分岐ブレーカへ流れる電流を計測するための分岐バーが形成されて、前記電流センサが前記分岐バーに近接して配置されたGMR素子であって、
前記GMR素子から前記コネクタに至る基板上の信号線パターンが、前記通信計測ユニットから一定の直流電圧が印加された電圧線パターンにより挟持されて配設されて成ることを特徴とする分電盤。
【請求項2】
前記信号線パターン及び前記電圧線パターンは、基板内層部に形成され、前記信号線パターンを配設した基板の両面のうち少なくとも一方の面は、アースパターンで覆われて成ることを特徴とする請求項1記載の分電盤。
【請求項3】
前記電圧線パターンに印加される直流電圧は、前記GMR素子から出力される基準電圧であることを特徴とする請求項1又は2記載の分電盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐ブレーカに流れる分岐電流を計測して個々の分岐電路の消費電力を計測する機能を備えた分電盤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、個々の分岐電路に流れる電流を計測して分岐電路毎の消費電力を計測する機器を備えた分電盤がある。例えば、特許文献1では、分電盤内に個々の分岐電路の電流を計測するためのセンサを備えた分岐電流センサ基板、計測した電流値を判断したり電力を演算する計測制御ユニット、電流異常の発生を報知する報知ユニットを配置して、閾値を設定して分岐電流が閾値を超えるとLEDの発光で表示通知したり警報を発するよう構成し、きめ細かい電力の管理を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−136279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記特許文献1の構成は、分岐電流センサ基板は電流センサが検出した電流情報を個々にデジタル変換して計測制御ユニットに送信する構成であるため、分岐電流センサ基板の構成が複雑であり、コスト高なものになっていた。
また、空芯コイルを使用して分岐電流を検出するため、分岐バーを空芯コイルに挿通する作業が必要であり、組み付けや交換が面倒な作業となっていた。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、電流センサが検出した分岐電流情報をアナログ信号で伝送でき、且つ電流センサに分岐バーを挿通する作業を必要としない分電盤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、主幹ブレーカと、当該主幹ブレーカの2次側に配設された主幹バーに対して、その両側のうち少なくとも一方の側に列設した複数の分岐ブレーカとを有し、分岐ブレーカの一次側端子を主幹バーに接続して主幹バーから電路を分岐する分電盤であって、個々の分岐ブレーカに流れる分岐電流を検出する複数の電流センサを共通する基板に搭載した電流センサユニットと、電流センサユニットとコネクタを介して連結され、電流センサが検出した電流情報を基に消費電力を演算して出力する通信計測ユニットとを具備し、主幹バーには分岐ブレーカへ流れる電流を計測するための分岐バーが形成されて、電流センサが分岐バーに近接して配置されたGMR素子であって、GMR素子からコネクタに至る基板上の信号線パターンが、通信計測ユニットから一定の直流電圧が印加された電圧線パターンにより挟持されて配設されて成ることを特徴とする。
この構成によれば、電流センサからコネクタに至る信号線パターンは、一定の直流電圧が印加された電圧線パターンで挟まれているため、電流センサから伝送される検知電流情報が簡易な回路で済むアナログ信号であっても、ノイズが乗り難く検出した電流情報を良好に伝送することが可能となる。そして、電流センサとして分岐電路周囲の磁力を検知して分岐電流情報を入手するGMR素子を使用するため、分岐バーを電流センサに挿入する面倒な作業が必要無く、簡易な操作で電流センサを設置できる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、信号線パターン及び電圧線パターンは、基板内層部に形成され、信号線パターンを配設した基板の両面のうち少なくとも一方の面は、アースパターンで覆われて成ることを特徴とする。
この構成によれば、信号線パターンは電圧線により左右から囲まれ、更に上下方向の少なくとも一方の面はアースパターンに覆われるため、更にノイズが侵入し難くできる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の構成において、電圧線パターンに印加される直流電圧は、前記GMR素子から出力される基準電圧であることを特徴とする。
この構成によれば、電圧線パターンによりGMR素子の基準電圧が供給されるため、別途基準電圧のための電圧線を設ける必要がない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電流センサからコネクタに至る信号線パターンは、一定の直流電圧が印加された電圧線パターンで挟まれているため、電流センサから伝送される検知電流情報が簡易な回路で済むアナログ信号であっても、ノイズが乗り難く検出した電流情報を良好に伝送することが可能となる。そして、電流センサとして分岐電路周囲の磁力を検知して分岐電流情報を入手するGMR素子を使用するため、分岐バーを電流センサに挿入する面倒な作業が必要無く、簡易な操作で電流センサを設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る分電盤の一例を示す構成図である。
【
図3】電流センサユニットを示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【
図4】電流センサ基板を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【
図5】主幹バーを示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【
図6】電流センサの信号線と電源線との関係を模式的に示した説明図である。
【
図7】電流センサユニットを構成する回路基板の信号線パターン形成部の断面説明図である。
【
図8】分電盤に主幹ブレーカと主幹バーと電流センサユニットを組み付けた分電盤の斜視図である。
【
図10】
図7の電流センサユニットを抜き出した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る分電盤の一例を示す構成図であり、1は主幹ブレーカ、2は分岐ブレーカ、3は主幹ブレーカ1の2次側に接続導体を介して接続された主幹バー、4は個々の分岐ブレーカ2に流れる分岐電流を計測する電流センサユニット、5は計測したデータを外部に出力する通信計測ユニットである。主幹バー3が分電盤中央において左右に亘って配設され、この主幹バー3に対して、分岐ブレーカ2が隣接して上下にそれぞれ列設されている。
電流センサユニット4は、分岐電流を計測するための電流センサ基板41と、計測した分岐電流情報を通信計測ユニット5に送信するためのセンサ接続基板42とで構成され、主幹バー3に重ねるように設置されている。
【0012】
図2は通信計測ユニット5の回路ブロック図を示している。
図2に示すように、通信計測ユニット5は、主幹バー3に接続されて自身の駆動電源及び電流センサユニット4の駆動電源を生成する電源部51、この電源部51から主幹バ3の電圧情報を入手して電力演算のための電圧データを生成する計測電圧変換部52、電流センサユニット4から送信された分岐電流情報を基に電力を計測する電力計測部53、通信計測ユニット5を制御する制御CPU54、外部のLANに接続して計測した電力情報等を外部に出力する外部通信IF55等を備えている。尚、6は主幹ブレーカ1に流れる電流を計測するための変流器である。
【0013】
図3は電流センサユニット4を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。電流センサユニット4は、上述したように電流センサ基板41とセンサ接続基板42とで構成されている。そして、電流センサ基板41は、一定間隔で複数の切り欠き41aが形成された櫛状部41bを有し、それぞれの切り欠き41aの側部に電流センサ43が組み付けられている。この電流センサ43は、IC化されたGMR素子(巨大磁気抵抗素子)が使用され、検出した電流情報はアナログ信号で出力される。
そして、センサ接続基板42の端部には、通信計測ユニット5と接続するためのコネクタ45が設けられている。
【0014】
図4は電流センサ基板41単体を示し、(a)は平面図、(b)は正面図を示している。1枚の基板に6個のGMR素子43が組み付けられ、背面にコネクタ44を備えている。このコネクタ44を、図示しないセンサ接続基板42側のコネクタに接続して両者は連結される。このとき、上向きの櫛状部41bを備えた電流センサ基板41と、下向きの櫛状部41bを備えた電流センサ基板41がセンサ接続基板42に取り付けられ、上向きの電流センサ基板41により、単相3線式電路の2本の電圧相を構成する2本の主幹バー3のうちの一方の分岐電流が計測され、下向きの電流センサ基板41により他方の電圧相を構成する主幹バー3の分岐電流が計測される。
【0015】
尚、
図3の電流センサユニット4は、上向き2枚、下向き2枚の計4枚の電流センサ基板41が連結され、個々の電流センサ43が検出した電流情報が収集される。また、
図3(a)の平面図に示す面が、電流センサユニット4を分電盤に組み付けた状態では前方を向き、
図2(b)に示す正面が上方を向いて設置される。
【0016】
図5は主幹バー3を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。単相3線式電路の場合、主幹バー3は2本の電圧相と1本の中性相とから成る3本で構成され、
図5は電圧相に使用される主幹バー3を示している。主幹バー3は、長辺側の両側部に分岐ブレーカ2を接続する接続部31を形成し、電圧相に使用される主幹バー3は一方の側部のみ複数の切り欠き3aを設けて、接続する分岐ブレーカ2への分岐電流のみ流れる分岐バー32を形成している。
そして、切り欠き3aの奥部には、電流センサ基板41の櫛状部41bを構成する個々の突起を挿入するための挿入部3bが拡幅して形成されている。一方、他方の側部は凹凸のない一様な端面の接続部31が形成されている。
【0017】
分岐バー32は、分岐ブレーカ2の幅(設置間隔)に合わせたピッチで形成され、上述した電流センサ基板41の切り欠き41aの間隔は、このピッチと一致するよう形成されている。こうして、挿入部3bに櫛状部41bの個々の突起を挿入して噛み合わせることで、主幹バー3に流れる電流のうち分岐バー32に流れる電流、即ち分岐ブレーカ2に流れる電流のみ電流センサ43により計測することを可能としている。
【0018】
尚、主幹バー3のうち、電圧相に使用される主幹バー3に関しては、電流を計測するために分岐バー32が一方の側部に形成されているが、中性相に使用される主幹バー3は電流の計測が必要ないため、分岐バー32は無く、両側とも凹凸のない一様な端面で形成されている(図示せず)。
【0019】
図6は、電流センサ43から通信計測ユニット5までの電流センサユニット4に形成された信号線の構成を模式的に示し、L1は電流センサ43から延設された信号線、L2は電圧線を示している。尚、
図6では信号線L1を2本としているが、実際には電流センサ43毎に信号線L1が配設され、信号線L1は基板上に電流センサ43と同数形成されている。
こうして、信号線L1が各電流センサ43からコネクタ45に亘りパターン形成される一方、電圧線L2は直流3.3Vが印加され、信号線L1を両側から挟むように並行に配設されている。この電圧線L2に印加された電圧は、各電流センサ43に対して基準電圧を供給するためのものであり、通信計測ユニット5の電源部51が3.3V電圧を生成して、コネクタ45を介して電圧線L2に供給され、各電圧線L2は電流センサ43に接続されている。
【0020】
また、
図7は電流センサ基板41及びセンサ接続基板42の信号線形成部の断面説明図であり、
図7に示すように電流センサ基板41及びセンサ接続基板42は多層基板で構成され、信号線L1及び電圧線L2は基板Pの内層にパターン形成されている。信号線L1のパターンと電圧線L2のパターンとは、例えば100マイクロメートルの隙間tを設けて同一面上に形成されている。
そして、信号線L1及び電圧線L2をパターン形成した基板Pの両面はアースパターンGで覆われている。即ち、信号線L1の左右方向は電圧線L2で挟持され、上下方向はアースパターンで覆われている。
【0021】
図8は、主幹ブレーカ1と分電盤の最深部に配置した1本の主幹バー3と電流センサユニット4を分電盤ケースに組み付けた分電盤の斜視図を示し、
図9はA部の拡大図を示している。
図8、
図9に示すように、電流センサユニット4の電流センサ基板41は、主幹バー3に形成された分岐バー32に対して直交方向から挿入部3bに挿入して交差するよう配置される。尚、
図8は分電盤を右斜め下方から見た図を示している。
【0022】
ここで、
図10は
図8に示す電流センサユニット4を抜き出した拡大図を示し、分電盤の上方から見た斜視図を示している。
図10に示すように、電流センサユニット4は主幹バー3と電気的な接触が発生しないように絶縁カバー46で保護されて装着される。
【0023】
上記の如く構成された分電盤において、分岐電流及び電力の計測は次の様に実施される。通信計測ユニット5の電力計測部53は、個々の電流センサ43に対応する計測回路を有して、個々の電流センサ43から分岐電流情報を入手し、分岐電路毎に消費電力を計測する。計測した消費電力情報は制御CPU54に出力され、制御CPU54が外部通信IF55を介してパーソナルコンピュータ等の外部機器にデータを出力する。
【0024】
このように、電流センサ43からコネクタ45に至る信号線L1のパターンは、一定の直流電圧が印加された電圧線L2のパターンで挟まれて、電圧線L2によりガードパターンが形成されているため、電流センサ43から伝送される検知電流情報が簡易な回路で済むアナログ信号であっても、ノイズが乗り難く検出した電流情報を良好に伝送することが可能となる。そして、電流センサとして分岐電路周囲の磁力を検知して分岐電流情報を入手するGMR素子を使用するため、分岐バー32を電流センサ43に挿入する面倒な作業が必要無く、簡易な操作で電流センサ43を設置できる。
また、信号線L1のパターンは、更に上下方向がアースパターンGに覆われるため、更にノイズが侵入し難い。
更に、電圧線パターンにより電流センサ43であるGMR素子の基準電圧が供給されるため、別途基準電圧供給のための配線が必要ない。
【0025】
尚、上記実施形態は、単相3線式電路の構成を説明したが、本発明の構成は、単相2線式電路を対象とする分電盤、或いは三相電路を対象とする分電盤においても適用できるものである。また、信号線L1及び電圧線L2を配設した部位の基板Pの方面に形成したアースのベタパターンは一方の面だけであっても良い。
【符号の説明】
【0026】
1・・主幹ブレーカ、2・・分岐ブレーカ、3・・主幹バー、4・・電流センサユニット、5・・通信計測ユニット、32・・分岐バー、43・・電流センサ(GMR素子)、44・・コネクタ、51・・電源部、53・・電力計測部、54・・制御CPU、L1・・信号線、L2・・電圧線、P・・基板、G・・アースパターン。