【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートは、結晶性ポリエステル系樹脂と、ガラス転移温度Tgが90〜160℃である非晶性ポリエステル系樹脂とを含む熱可塑性ポリエステル系樹脂を含有していると共に、上記結晶性ポリエステル系樹脂と上記非晶性ポリエステル系樹脂の総量中、上記結晶性ポリエステル系樹脂20〜90重量%を含有し且つ上記非晶性ポリエステル系樹脂10〜80重量%を含有していることを特徴とする。
【0010】
熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸とジオールとをエステル化反応させて得られた鎖状ポリエステルであり、結晶性ポリエステル系樹脂と、ガラス転移温度Tgが90〜160℃である非晶性ポリエステル系樹脂とを含んでいる。
【0011】
熱可塑性ポリエステル系樹脂が結晶性又は非晶性であるかは下記の要領によって測定する。先ず、熱可塑性ポリエステル系樹脂の試料を示差走査型熱量計(DSC)を用いてJIS K7121に準拠して10℃/分の昇温速度で−100℃から300℃まで加熱溶融させ、300℃にて10分間に亘って保持し、次に、熱可塑性ポリエステル系樹脂の試料を10℃/分の降温速度で−100℃まで降温する。次に、熱可塑性ポリエステル系樹脂の試料を10℃/分の昇温速度にて−100から300℃まで加熱溶融させ、この二回目の昇温工程において、融解ピークを示さないものを非晶性ポリエステル系樹脂とし、融解ピークを示したものを結晶性ポリエステル系樹脂とする。
【0012】
結晶性ポリエステル系樹脂は、上述の測定方法において、結晶性と判断されればよく、芳香族ジカルボン酸とジオールとの間でエステル化反応をさせて得られた鎖状ポリエステルが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシジカルボン酸などが挙げられ、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましい。
【0013】
ジオールとしては、脂肪族ジオール又は脂環族ジオールが用いられる。脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコールなどが挙げられ、エチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましい。脂環族ジオールとしては、例えば、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
【0014】
結晶性ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレートなどが挙げられ、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。なお、結晶性ポリエステル系樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0015】
結晶性ポリエステル系樹脂のIV値は、小さすぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの製造時に破泡を生じてしまい、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの発泡倍率又は機械的強度が低下することがあり、大きすぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの製造時に気泡が十分に発泡せず、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの発泡倍率又は耐衝撃性が低下することがあるので、0.6〜1.5が好ましく、0.7〜1.3がより好ましい。なお、熱可塑性ポリエステル系樹脂のIV値は、固有粘度(Intrinsic Viscosity )を意味し、溶媒に溶質の微小単位量が溶解したときの溶液の粘度上昇の割合を表す。熱可塑性ポリエステル系樹脂のIV値は、ASTM D4603に準拠して測定された値をいう。
【0016】
非晶性ポリエステル系樹脂としては、上述の測定方法において、非晶性と判断されればよく、例えば、コポリエステル系樹脂が挙げられる。コポリエステル系樹脂とは、ジカルボン酸成分又はジオール成分の何れか一方或いは双方において二種以上のモノマー成分を含有しているポリエステル系樹脂をいう。コポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートにおいて、エチレングリコールの一部を他のジオールに置き換えたもの、又は、ポリエチレンテレフタレートにおいて、テレフタル酸の一部を他のジカルボン酸に置き換えたものが好ましい。
【0017】
コポリエステル系樹脂を構成しているジカルボン酸成分としては、例えば、芳香族ジカルボン酸が好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシジカルボン酸などが挙げられ、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましい。
【0018】
コポリエステル系樹脂を構成しているジオール成分としては、脂肪族ジオール又は脂環族ジオールが用いられる。脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコールなどが挙げられ、エチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましい。脂環族ジオールとしては、例えば、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
【0019】
コポリエステル系樹脂を構成している上記ジオール成分の一部の代わりに用いられるジオールとしては、PDO(1,3−プロパンジオール),BDO(1,4−ブタンジオール)、NPG(ネオペンチルグリコール)、CHDM(1,4−シクロヘキサンジメタノール)、TMCD(2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール)、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、スピログリコール、トランス−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオールなどが挙げられ、CHDM(1,4−シクロヘキサンジメタノール)、TMCD(2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール)又はスピログリコールの少なくとも一種を含有していることが好ましく、CHDM(1,4−シクロヘキサンジメタノール)又はTMCD(2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール)のうちの何れか一方又は双方を含有していることがより好ましい。
【0020】
コポリエステル系樹脂を構成している上記ジカルボン酸成分の一部の代わりに用いられるジカルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、ジメチルイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジメチルテレフタレートなどの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0021】
熱可塑性ポリエステル系樹脂のモノマー成分は、例えば、熱可塑性ポリエステル系樹脂をトリフルオロ酢酸−dと重クロロホルムとの1:1(重量比)混合溶液に溶解させ、更に、混合溶液にテトラメチルシランを標品として混合し、FT−NMRを用いて測定することができる。なお、FT−NMRとしては、例えば、バリアン社製から商品名「300MG型」にて市販されている装置を用いることができる。
【0022】
非晶性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tgは、低すぎると、結晶性ポリエステル系樹脂の結晶化度を上昇させる前の熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの100℃での耐熱性(以下「第一耐熱性」という)が低下し、高すぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの熱成形にあたって、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートを非常に高温に加熱する必要があり、特殊な装置を必要とするので、90〜160℃に限定され、100〜160℃が好ましく、105〜130℃がより好ましい。
【0023】
非晶性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tgは、分子鎖中に大きな極性基を有する構造を導入し、又は、分子鎖中に分子の回転運動が抑制される構造のモノマー成分を導入することで上げることができる。非晶性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tgは、鎖長が長い置換基を有する構造のモノマー成分を導入することで下げることができる。
【0024】
非晶性ポリエステル系樹脂のIV値は、小さすぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの製造時に破泡を生じてしまい、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの発泡倍率又は機械的強度が低下することがあり、大きすぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの製造時に気泡が十分に発泡せず、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの発泡倍率又は耐衝撃性が低下することがあるので、0.6〜1.5が好ましく、0.7〜1.3がより好ましい。
【0025】
なお、本発明において、熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgは、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法で測定する。但し、サンプリング方法・温度条件に関しては以下のように行う。示差走査熱量計装置を用いアルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう試料を約6mg充てんして、窒素ガス流量25mL/分のもと、試料を290℃まで昇温(1st Heating)した後に290℃から30℃まで降温(Cooling)した後に30℃から290℃まで昇温(2nd Heating)した時のDSC曲線を得た。なお、全ての昇温速度及び降温速度は10℃/分で行い、基準物質としてアルミナを用いる。本発明において、ガラス転移点とは、2nd Heating過程で得られたDSC曲線より得られた中間点ガラス転移温度のことをいう。又、この中間点ガラス転移温度はJIS K7121:1987(9.3「ガラス転移温度の求め方」)より求める。なお、示差走査熱量計装置としては、例えば、エスアイアイナノテクノロジー社から商品名「DSC6220型」で市販されている示差走査熱量計装置を用いることができる。
図1にDSC曲線の一例を示した。なお、本発明では、DSC曲線の変曲点においてガラス転移温度Tgを算出するが、DSC曲線の変曲点を挟んだ低温側の平行部と、高温側の平行部との差Δ(mW)が0.02mW以下である場合はガラス転移温度Tgとみなさない。
【0026】
コポリエステル系樹脂としては、例えば、イーストマンケミカル社から商品名「トライタンTX−200」(芳香族ジカルボン酸成分:テレフタル酸、ジオール成分:1,4−シクロヘキサンジメタノール及び2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、ガラス転移温度Tg:116℃)及び商品名「トライタンTX−100」(芳香族ジカルボン酸成分:テレフタル酸、ジオール成分:1,4−シクロヘキサンジメタノール及び2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、ガラス転移温度Tg:107℃)にて市販されており、三菱ガス化学社から商品名「アルテスタ30」(芳香族ジカルボン酸成分:テレフタル酸、ジオール成分:スピログリコール、ガラス転移温度Tg:101℃)及び商品名「アルテスタ45」(芳香族ジカルボン酸:テレフタル酸、ジオール成分:スピログリコール、ガラス転移温度Tg:111℃)にて市販されている。
【0027】
コポリエステル系樹脂の合成方法としては、例えば、特表2008−544022号公報、特開2012−1589号公報に記載されているが、これらに限定されるものではない。以下に具体的な合成方法の一例を説明する。撹拌機付き熱媒循環式エステル化反応器に、ジカルボン酸とジオールとを供給した上でトリエチルアミンを加え、0.1〜0.3MPaの加圧下にて200〜270℃にて水を系外に排除しながらジカルボン酸とジオールとのエステル化反応を行い、エステル化合物及びオリゴマーの混合物を得る。このエステル化合物及びオリゴマーの混合物を撹拌機付き重縮合器に輸送し、これに重縮合触媒として三酸化アンチモンなどの触媒を添加する。続いて、エステル化合物及びオリゴマーの混合物を窒素雰囲気下、常圧にて200〜270℃で撹拌する。しかる後、エステル化合物及びオリゴマーの混合物を200〜270℃に保ったまま反応系の圧力を徐々に下げて第一段目の初期重縮合を行ってプレポリマーを製造する。次に、プレポリマーを冷却水中にストランド状に吐出して急冷し、ストランドカッターでチップ化してシリンダー形状のチップを得る。なお、チップ化時、重縮合器出口からノズル細孔までの樹脂温度は約270℃とし、約30分以内に全量をチップ化する。続いて、得られたチップを直ちに減圧乾燥機にて約50〜150℃で熱処理し、振動式篩分工程及び気流分級工程によって処理して、微粉体及びフィルム状物を除去しプレポリマーを得る。次に、プレポリマーを窒素雰囲気下で予熱後、連続固相重合反応器に送り、窒素雰囲気下、約200〜250℃で固相重合することによってコポリエステル系樹脂を製造することができる。
【0028】
熱可塑性ポリエステル系樹脂において、結晶性ポリエステル系樹脂及び非晶性ポリエステル系樹脂の総量中、非晶性ポリエステル系樹脂の含有量は、少ないと、押出発泡で製造されたヒートセット工程を経ない熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの第一耐熱性が不足し、又は、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの耐衝撃性が低下し、多いと、ヒートセット工程によって熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの結晶化度を上昇させた後の熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの180℃における耐熱性(以下「第二耐熱性」という)が不足するので、10〜80重量%に限定され、20〜80重量%が好ましい。
【0029】
又、熱可塑性ポリエステル系樹脂において、結晶性ポリエステル系樹脂及び非晶性ポリエステル系樹脂の総量中、結晶性ポリエステル系樹脂の含有量は、少なすぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの第二耐熱性が低下し、多すぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの第一耐熱性が低下し、又は、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの耐衝撃性が低下するので、20〜90重量%に限定され、20〜80重量%が好ましい。
【0030】
熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートは、その物性を損なわない範囲内において、添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、難燃剤、着色顔料、着色染料、結晶核剤、銅害防止剤(金属不活性剤)、分散剤、クエンチャー、滑剤、離型剤、帯電防止剤、酸化防止剤、光安定剤、ラクトン系加工安定剤、架橋剤、架橋助剤、張力調整剤などが挙げられる。各添加剤の含有量は、熱可塑性ポリエステル系樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましい。
【0031】
次に、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの製造方法について説明する。熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの製造方法としては、特に限定されず、例えば、結晶性ポリエステル系樹脂及びガラス転移温度Tgが90〜160℃である非晶性ポリエステル系樹脂とを含む熱可塑性ポリエステル系樹脂を押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練した後に押出機の先端に取り付けたダイから押出発泡させて熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートを製造する方法が挙げられる。なお、上記ダイとしては、押出発泡において汎用されているものであれば、特に限定されず、例えば、Tダイ、サーキュラダイなどが挙げられる。
【0032】
上記製造方法において、ダイとしてTダイを用いた場合には、押出機からシート状に押出発泡することによって熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートを製造することができる。一方、ダイとしてサーキュラダイを用いた場合には、サーキュラダイから円筒状に押出発泡して円筒状体を製造し、この円筒状体を徐々に拡径した上で冷却マンドレルに供給して冷却した後、円筒状体をその押出方向に連続的に内外周面間に亘って切断し切り開いて展開することによって熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートを製造することができる。
【0033】
熱可塑性ポリエステル系樹脂は架橋剤によって架橋されていてもよい。架橋剤としては、公知のものが用いられ、例えば、無水ピロメリット酸などの酸二無水物、多官能エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物などが挙げられる。なお、架橋剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。熱可塑性ポリエステル系樹脂を架橋させることでさらに押出発泡性が向上して良好な熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートが得られやすい。
【0034】
熱可塑性ポリエステル系樹脂を架橋剤によって架橋する場合には、押出機に熱可塑性ポリエステル系樹脂と共に架橋剤を供給すればよい。押出機に供給する架橋剤の量は、少なすぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂の溶融時の溶融張力が小さくなりすぎて、発泡シートが破泡してしまうことがあり、多すぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂の溶融時の溶融張力が大きくなりすぎて、押出発泡が困難となることがあるので、熱可塑性ポリエステル系樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましく、0.1〜1重量部がより好ましい。
【0035】
上記発泡剤としては、特に限定されず、プロパン、ブタン、ペンタンなどの飽和脂肪族炭化水素、テトラフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ジフルオロエタンなどのハロゲン化炭化水素などの有機ガス;二酸化炭素、窒素ガスなどの気体状の無機化合物;水などの液体状の無機化合物;重炭酸ナトリウムとクエン酸との混合物の如き、有機酸若しくはその塩と、重炭酸塩との混合物、ジニトロソペンタメチレンテトラミンなどの固体状の発泡剤などが挙げられ、有機酸若しくはその塩と、重炭酸塩との混合物、及び、有機ガスを併用することが好ましく、重炭酸ナトリウムとクエン酸との混合物、及び、有機ガスを併用することがより好ましい。なお、発泡剤の使用量は、熱可塑性ポリエステル系樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましい。
【0036】
本発明の熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートは押出発泡によって製造されるが、熱可塑性ポリエステル系樹脂は、非晶性ポリエステル系樹脂を所定量含有しており、非晶性ポリエステル系樹脂は溶融張力が高く且つ結晶部分を有しないことから、熱可塑性ポリエステル系樹脂の溶融張力が、結晶性ポリエステル系樹脂の融点付近において急激に変化するのが抑制され、熱可塑性ポリエステル系樹脂をより広い温度範囲において安定的に押出発泡させることができ、本発明の熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートは容易に且つ安定的に製造することができる。
【0037】
得られた熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートは、結晶性ポリエステル系樹脂と、90〜160℃のガラス転移温度Tgを有する非晶性ポリエステル系樹脂とを含有しており、結晶性ポリエステル系樹脂に起因するガラス転移温度Tgと、非晶性ポリエステル系樹脂に起因する、結晶性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tgよりも高いガラス転移温度Tgとを有している。
【0038】
得られた熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tgのうちの少なくとも一つは、90〜160℃の範囲内にあることが好ましく、100〜160℃の範囲内にあることがより好ましく、105〜130℃の範囲内にあることが特に好ましい。熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tgのうちの少なくとも一つが上記範囲内にないと、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの第一耐熱性が低下する虞れがある。なお、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートを構成している熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tgは、上述した熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tgの測定方法と同様の要領で測定することができる。
【0039】
熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートは、ガラス転移温度Tgが90〜160℃の非晶性ポリエステル系樹脂を含有していることから、ヒートセット前、即ち、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの結晶化度を上昇させる前においても優れた耐熱性(第一耐熱性)を有している。
【0040】
熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの100℃における加熱寸法変化率は、高いと、ヒートセットの工程のない熱成形で得られる成形品の高温での寸法安定性が低下することがあるので、1.5%以下が好ましく、1%以下がより好ましい。
【0041】
熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの100℃における加熱寸法変化率はJIS K6767に準拠して測定される。具体的には、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの表面に、長さ100mmの二本の直線を互いに直交した状態となるように描く。なお、何れか一本の直線は押出方向に平行となるようにする。
【0042】
次に、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートを100℃の雰囲気下にて1時間に亘って放置した後、二本の直線の長さLをそれぞれ測定し、各直線について下記式に基づいて寸法変化率(%)を算出し、二本の寸法変化率の相加平均値を熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの加熱寸法変化率とする。
寸法変化率(%)=100×(L−100)/100
【0043】
ヒートセット前の熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの結晶化度は、低すぎると、ヒートセットを行っても十分な結晶化度の上昇がなく、第二耐熱性が不足する場合があり、高すぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの成形性が低下し、又は、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートが割れやすくなることがあるので、3〜28%が好ましく、5〜20%がより好ましく、5〜15%が特に好ましい。
【0044】
なお、本発明において、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの結晶化度は、示差走査型熱量計(DSC)を用いてJIS K7121に記載の測定方法に準拠して10℃/分の昇温速度にて昇温しながら測定された1mg当たりの結晶化熱量及び1mg当たりの融解熱量に基づいて算出することができる。なお、ΔH
0は、100%結晶化している場合の理論融解熱量〔完全結晶融解熱量(理論値)〕を意味する。例えば、ポリエチレンテレフタレートのΔH
0は140.1mJ/mgである。
【0045】
結晶化度(%)
=100×(│融解熱量(mJ/mg)│−│結晶化熱量(mJ/mg)│)/ΔH
0
【0046】
熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートは、真空成形法や圧空成形法などの汎用の成形方法を用いて熱成形することができる。熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートを熱成形するために加熱すると、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートを構成している結晶性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tgを超えた時点で結晶性ポリエステル系樹脂の溶融張力が急激に低下するものの、結晶性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tgよりも高いガラス転移温度Tgを有する非晶性ポリエステル系樹脂は熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの形態を保持するだけの十分な溶融張力を保持する。熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートを熱成形するには、更に、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートを、非晶性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度Tgよりも高い温度に加熱する必要があるが、非晶性ポリエステル系樹脂は、結晶性ポリエステル系樹脂のような急激な溶融張力の変化を示さず、溶融張力の温度依存性が低いことから、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートを熱成形温度に加熱した場合にあっても、非晶性ポリエステル系樹脂は熱成形温度付近において溶融張力の急激な変化を生じず、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの形状を維持でき且つ熱成形に適した適度な溶融張力を保持する。従って、本発明の熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートは、熱成形時に形態を保持してドローダウンなどの変形を生じないものの、金型に沿って正確に伸びることから、伸び不足に起因して、得られた成形品に部分的に薄い部分が発生するようなことはなく、得られた成形品は正確な形状及び優れた外観を有している。
【0047】
更に、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートはヒートセットすることによって熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの結晶化度を上昇させて熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートに優れた第二耐熱性を発現させることができる。
【0048】
熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートをヒートセットする際の熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの表面温度は、低すぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの結晶化度の上昇が不十分となり、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートに第二耐熱性を発現させることができないことがあり、高すぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートが割れやすくなることがあるので、160〜195℃が好ましく、160〜185℃がより好ましい。
【0049】
熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートをヒートセットする時間は、短すぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの結晶化度の上昇が不十分となり、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートに第二耐熱性を発現させることができないことがあり、長すぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートが割れやすくなることがあるので、2〜10秒が好ましく、3〜8秒がより好ましい。
【0050】
熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートを熱成形する場合、所望の形状に成形する前に熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートのヒートセットを行うと、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの結晶化度が上がり、熱成形性が低下するので、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートのヒートセットは、所望の形状に熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートを熱成形した後に行うことが好ましい。
【0051】
ヒートセット後の熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの結晶化度は、低すぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの第二耐熱性が低下することがあり、高すぎると、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートが割れやすくなることがあるので、10〜30%が好ましく、13〜25%がより好ましい。
【0052】
ヒートセット後の熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの180℃における加熱寸法変化率は、高すぎると、高温時における成形品の寸法安定性が低下することがあるので、1.5%以下が好ましく、1%以下がより好ましい。なお、ヒートセット後の熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの180℃における加熱寸法変化率は、100℃における加熱寸法変化率の測定方法において、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートを180℃の雰囲気下にて放置したこと以外は同様の要領で測定する。
【0053】
上記熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1の表面に繊維強化プラスチック層H1を積層一体化して繊維強化複合体Hとしてもよい。具体的には、繊維強化複合体Hにおいて、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1の表面に繊維強化プラスチック層H1が積層一体化されている。
【0054】
本発明の繊維強化複合体Hに用いられる繊維強化プラスチック層H1は、強化繊維に強化用合成樹脂を含浸させてなるものである。
【0055】
繊維強化プラスチック層H1は、
図5に示すように、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1の両面に積層一体化されている必要はなく、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1の片面にのみ積層一体化されている場合であってもよく、繊維強化プラスチック層H1の積層は、繊維強化複合体Hの用途に応じて決定すればよい。なかでも、繊維強化複合体Hの耐衝撃性を考慮すると、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1の両面に繊維強化プラスチック層H1、H1が積層一体化されていることが好ましい。
【0056】
繊維強化プラスチック層H1を構成している強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、チラノ繊維、玄武岩繊維、セラミックス繊維などの無機繊維;ステンレス繊維やスチール繊維などの金属繊維;アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサドール(PBO)繊維などの有機繊維;ボロン繊維などが挙げられる。強化繊維は、一種単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。なかでも、強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維及びアラミド繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。これらの強化繊維は、軽量であるにも関わらず優れた機械的強度を有している。
【0057】
強化繊維は、所望の形状に加工された強化繊維基材として用いられることが好ましい。強化繊維基材としては、織物、編物、不織布、及び繊維を一方向に引き揃えた繊維束(ストランド)を糸で結束(縫合)してなる面材などが挙げられる。織物の織り方としては、平織、綾織、朱子織などが挙げられる。また、糸としては、ポリアミド樹脂糸やポリエステル樹脂糸などの合成樹脂糸、及びガラス繊維糸などのステッチ糸が挙げられる。
【0058】
繊維強化基材は、一枚の繊維強化基材のみを単層として用いても、複数枚の繊維強化基材を積層して積層体として用いてもよい。複数枚の繊維強化基材を積層した積層体としては、(1)一種のみの繊維強化基材を複数枚用意し、これらの繊維強化基材を積層した積層体、(2)複数種の繊維強化基材を用意し、これらの繊維強化基材を積層した積層体、(3)繊維を一方向に引き揃えた繊維束(ストランド)を糸で結束(縫合)してなる面材を複数枚用意し、これらの面材を繊維束の繊維方向が互いに相違した方向を指向するように重ね合わせ、重ね合わせた面材同士を糸で一体化(縫合)してなる積層体などが用いられる。なお、糸としては、ポリアミド樹脂糸やポリエステル樹脂糸などの合成樹脂糸、及びガラス繊維糸などのステッチ糸が挙げられる。
【0059】
繊維強化プラスチック層は強化繊維に強化用合成樹脂が含浸されてなるものである。含浸させた強化用合成樹脂によって、強化繊維同士を結着一体化させることができる。強化繊維に含浸させる強化用合成樹脂としては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の何れであってもよいが、熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。
【0060】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、マレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂とを予備重合した樹脂などが挙げられ、耐熱性、衝撃吸収性又は耐薬品性に優れていることから、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂には、硬化剤、硬化促進剤などの添加剤が含有されていてもよい。なお、熱硬化性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0061】
又、熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂、アミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、サルファイド系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられ、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートとの接着性又は繊維強化プラスチック層を構成している強化繊維同士の接着性に優れていることから、ポリエステル系樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂が好ましい。なお、熱可塑性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0062】
熱可塑性エポキシ樹脂としては、エポキシ化合物同士の重合体又は共重合体であって直鎖構造を有する重合体や、エポキシ化合物と、このエポキシ化合物と重合し得る単量体との共重合体であって直鎖構造を有する共重合体が挙げられる。具体的には、熱可塑性エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、長鎖脂肪族型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂が好ましい。なお、熱可塑性エポキシ樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0063】
熱可塑性ポリウレタン樹脂としては、ジオールとジイソシアネートとを重合させて得られる直鎖構造を有する重合体が挙げられる。ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールなどが挙げられる。ジオールは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。ジイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートが挙げられる。ジイソシアネートは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なお、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0064】
繊維強化プラスチック層中における強化用合成樹脂の含有量は、20〜70重量%が好ましく、30〜60重量%がより好ましい。熱硬化性樹脂の含有量が少なすぎると、強化繊維同士の結着性や、繊維強化プラスチック層と熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートとの接着性が不十分となり、繊維強化プラスチック層の曲げ弾性率などの機械的強度や繊維強化複合体の衝撃吸収性を十分に向上させることができない虞れがある。また、熱硬化性樹脂の含有量が多すぎると、繊維強化プラスチック層の曲げ弾性率などの機械的強度が低下して、繊維強化複合体の機械的強度を十分に向上させることができない虞れがある。
【0065】
繊維強化プラスチック層の厚みは、0.02〜2mmが好ましく、0.05〜1mmがより好ましい。厚みが上記範囲内である繊維強化プラスチック層は、軽量であるにも関わらず機械的強度に優れている。
【0066】
繊維強化プラスチック層の目付は、50〜4000g/m
2が好ましく、100〜1000g/m
2がより好ましい。目付が上記範囲内である繊維強化プラスチック層は、軽量であるにも関わらず機械的強度に優れている。
【0067】
繊維強化複合体Hは、比荷重などの機械的強度及び衝撃吸収性に優れた熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの表面に繊維強化プラスチック層が積層一体化されており、繊維強化複合体は機械的強度及び衝撃吸収性が向上されている。更に、繊維強化複合体Hは、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1の表面に繊維強化プラスチック層H1が積層一体化されているので、繊維強化複合体Hに加わった衝撃力は、繊維強化プラスチック層H1全体に伝播し拡散した上で熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1の全体に伝達される。従って、繊維強化複合体Hに加わった衝撃力は、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1の全体で効率良く吸収され、よって、繊維強化複合体Hは、優れた衝撃吸収力を有している。このような繊維強化複合体Hは、特に制限されないが、航空機、自動車、船舶、及び建築物などの構成部材や電子機器の筐体として好適に用いられる。
【0068】
次に、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1の表面に繊維強化プラスチック層H1を積層一体化させて繊維強化複合体Hを製造する方法について説明する。熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1の表面に繊維強化プラスチック層H1を積層一体化させる方法としては、特に限定されず、例えば、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの表面に、強化用合成樹脂が含浸されている強化繊維を含む繊維強化プラスチック層形成材を積層して積層体を製造した後、積層体を加熱して、積層体をその熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート上への繊維強化プラスチック層形成材の積層方向に押圧することによって、繊維強化プラスチック層形成材を繊維強化プラスチック層として熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの表面に積層一体化させる方法が挙げられる。
【0069】
具体的には、上述した熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの表面に、強化用合成樹脂が含浸されている強化繊維を含む繊維強化プラスチック層形成材を積層して積層体を製造する。熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートにおける繊維強化プラスチック層形成材を積層する面は、得られる繊維強化複合体の用途に応じて決定すればよく、特に制限されない。従って、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの一方の面上のみに繊維強化プラスチック層形成材を積層してもよい。得られる繊維強化複合体の耐衝撃性を考慮すると、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの両面に繊維強化プラスチック層形成材を積層することが好ましい。
【0070】
なお、積層体に用いられる熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートや繊維強化プラスチック層形成材に用いられる強化用合成樹脂及び強化繊維については、上述した繊維強化複合体における繊維強化プラスチック層に用いられる強化用合成樹脂及び強化繊維と同様であるため、これらの詳細な説明を省略する。
【0071】
強化繊維中に強化用合成樹脂を含浸させる方法としては、特に限定されず、例えば、(1)強化繊維を強化用合成樹脂中に浸漬して強化繊維中に強化用合成樹脂を含浸させる方法、(2)強化繊維に強化用合成樹脂を塗布し、強化繊維に強化用合成樹脂を含浸させる方法、及び(3)強化繊維基材上に強化用合成樹脂を含むシートを積層した後にこれらを加熱加圧して、強化繊維基材を構成している強化繊維中にシートに含まれている強化用合成樹脂を含浸させる方法などが挙げられる。また、(1)及び(2)の方法では、強化繊維を強化繊維基材として用い、強化繊維基材を強化用合成樹脂に浸漬することによって、又は強化繊維基材に強化用合成樹脂を塗布することによって、強化繊維基材を構成している強化繊維に強化用合成樹脂を含浸させることもできる。
【0072】
なお、強化繊維基材、又は強化用合成樹脂が含浸されている強化繊維基材を含む繊維強化プラスチック層形成材は市販されているものを用いることができる。強化繊維基材は、例えば、三菱レイヨン社から商品名「パイロフィル」にて市販されている。また、熱硬化性樹脂が含浸されている強化繊維基材を含む繊維強化プラスチック層形成材は、例えば、三菱レイヨン社から商品名「パイロフィルプリプレグ」にて市販されている。熱可塑性樹脂が含浸されている強化繊維基材を含む繊維強化プラスチック層形成材は、長瀬ケムテック社から商品名「NNGF60−03s」にて市販されている。
【0073】
上述の如くして製造された積層体を汎用の要領で加熱しながら積層体を熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートに対する繊維強化プラスチック層形成材の積層方向に押圧する。例えば、積層体を加熱しながら積層体の厚み方向に押圧する。
【0074】
積層体の加熱によって、繊維強化プラスチック層形成材及び熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートが加熱される。繊維強化プラスチック層形成材に含まれている強化用合成樹脂が未硬化の熱硬化性樹脂を含む場合には、熱硬化性樹脂を硬化させることによって強化繊維同士を結着、固定一体化させて繊維強化プラスチック層とし、この繊維強化プラスチック層を熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの表面に硬化した熱硬化性樹脂によって積層一体化させる。
【0075】
又、繊維強化プラスチック層形成材に含まれている強化用合成樹脂が熱可塑性樹脂を含む場合には、繊維強化プラスチック層形成材を繊維強化プラスチック層として熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの表面に熱可塑性樹脂によって積層一体化させる。
【0076】
複数枚の繊維強化プラスチック層形成材を重ね合わせた状態に熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートの表面に積層している場合には、上述の積層体の加熱及び押圧によって、繊維強化プラスチック層形成材同士がこれら繊維強化プラスチック層形成材に含まれている強化用合成樹脂によって積層一体化されて繊維強化プラスチック層を形成する。
【0077】
上述の積層体の加熱及び押圧工程は大気圧下において行ってもよいし、減圧下において行ってもよい。積層体の加熱及び押圧工程を減圧下において行うと、繊維強化プラスチック層形成材中の余分な強化用合成樹脂を吸引、除去することができると共に、繊維強化プラスチック層形成材中、又は、繊維強化プラスチック層形成材と熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートとの間、若しくは、繊維強化プラスチック層形成材間に存在している空気を吸引、除去することができ、得られる繊維強化プラスチック層の強化繊維を強化用合成樹脂によってより強固に結着、固定一体化することができると共に、繊維強化プラスチック層と熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シートとをより強固に一体化することができる。
【0078】
又、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1の表面に繊維強化プラスチック層H1を積層するにあたって、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1及び繊維強化プラスチック層形成材を成形しながら、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1の表面に繊維強化プラスチック層H1を積層一体化して所望形状に成形された繊維強化複合体Hを製造してもよい。
【0079】
このような繊維強化複合体の製造方法としては、公知の熱成形方法を用いることができ、例えば、真空成形法、圧空成形法などが挙げられる。真空成形法及び圧空成形法を応用した熱成形方法として、例えば、ストレート成形法、ドレープ成形法、プラグアシスト成形法、プラグアシスト・リバースドロー成形法、エアスリップ成形法、スナップバック成形法、リバースドロー成形法、プラグアシスト・エアスリップ成形法、マッチモールド成形法、及び、これらの成形法を組み合わせた熱成形方法が挙げられ、成形性に乏しい繊維強化プラスチック層形成材を使用しても外観の良好な繊維強化複合体を得ることができるので、マッチモールド成形法が好ましい。
【0080】
繊維強化複合体Hを熱成形方法を用いて製造する要領の一例を具体的に説明する。先ず、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1の少なくとも一面に上述の繊維強化プラスチック層形成材2を積層して積層体Mを製造する(積層工程)。なお、
図6では、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1の両面に繊維強化プラスチック層形成材2、2を積層した場合を示したが、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1の片面にのみ繊維強化プラスチック層形成材2を積層してもよい。
【0081】
更に、積層体Mの繊維強化プラスチック層形成材2上に雌雄金型からの離型性を向上させるために離型フィルム3を積層させてもよい。離型フィルム3は、合成樹脂フィルムから構成されている。離型フィルムを構成している合成樹脂としては、繊維強化プラスチック層形成材2及び雌雄金型に対して剥離性を有しておれば、特に限定されず、例えば、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(4フッ化エチレン−エチレン共重合体)などのフッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂などが挙げられる。
【0082】
次に、上記積層工程に続いて成形工程を行う。先ず、
図6に示したように、成形工程において、積層体Mの熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1を把持する一方、繊維強化プラスチック層形成材2は一切把持しない。
【0083】
このように、繊維強化プラスチック層形成材2を把持しないことによって、積層体Mのプレス成形時に、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1上において自由に移動可能な状態とし、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1のプレス成形に伴う伸びに繊維強化プラスチック層形成材2が追従する必要がなくなり、繊維強化プラスチック層形成材2を独立して雌雄金型41、42によって円滑にプレス成形することができ、プレス成形が困難とされている繊維強化プラスチック層形成材2を熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1上において容易に且つ正確にプレス成形することができる。
【0084】
又、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1の把持は、積層体Mをプレス成形する際に熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1を雌雄金型41、42に対して正確な位置に保持して熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1を安定的に支持し、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1を正確にプレス成形可能にすると共に、安定的に支持された熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1上にて繊維強化プラスチック層形成材2を安定的にプレス成形して所望形状に成形することができるようにしており、積層体Mの熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1及び繊維強化プラスチック層形成材2を所望形状に正確にプレス成形することができる。
【0085】
熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1の把持は公知のクランプ5を用いて行われればよい。又、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1を把持する位置は、上記目的が達成されるのであれば、特に限定されず、例えば、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1の対向する外周縁部や、発泡シートの四方外周縁部などが挙げられる。
【0086】
上述のように、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1を把持した上で、積層体Mを加熱する。積層体Mの加熱によって繊維強化プラスチック層形成材2中に含浸されている強化用合成樹脂を軟化させる。強化用合成樹脂が未硬化の熱硬化性樹脂を含む場合、未硬化の熱硬化性樹脂を軟化させて硬化させることなく流動性を有する状態とする。熱硬化性樹脂は、加熱によって熱硬化する前に流動性を有する状態となるので、この流動性を有する状態を維持するように温度制御する。強化用合成樹脂が熱可塑性樹脂を含む場合、熱可塑性樹脂が流動性を有する状態となるように温度制御する。なお、積層体Mの加熱手段は、赤外線ヒータなどの公知の加熱装置を用いればよい。
【0087】
積層体Mの加熱温度は、低すぎると、繊維強化プラスチック層形成材に含浸させている強化用合成樹脂の軟化が不十分となって、繊維強化プラスチック層形成材を雌雄金型の形状に沿って正確に成形することができないことがあり、高すぎると、発泡シートの気泡が熱によって破壊されて、得られる繊維強化複合体の軽量性及び衝撃吸収性が低下することがあるので、(強化用合成樹脂のガラス転移温度Tg−60℃)〜(強化用合成樹脂のガラス転移温度Tg+80℃)が好ましく、(強化用合成樹脂のガラス転移温度Tg−50℃)〜(強化用合成樹脂のガラス転移温度Tg+70℃)がより好ましい。なお、本発明において、積層体Mの加熱温度とは、積層体Mの繊維強化プラスチック層形成材の表面温度をいう。強化用合成樹脂中に二種類以上の熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂が含有されている場合、強化用合成樹脂のガラス転移温度Tgは、強化用合成樹脂に含まれている合成樹脂のガラス転移温度Tgのうちの最も高いガラス転移温度Tgとする。強化用合成樹脂中に二種類以上の熱硬化性樹脂が含有されている場合、全ての熱硬化性樹脂が硬化することなく流動性を有する状態となるように積層体Mの加熱温度を調整する必要がある。
【0088】
なお、本発明において、熱硬化性樹脂のガラス転移温度Tgは下記の要領で測定された温度をいう。熱硬化性樹脂のガラス転移温度Tgを測定する場合には熱硬化性樹脂を予め硬化させる必要がある。熱硬化性樹脂の硬化温度はJIS K7121:1987において測定される発熱ピーク温度±10℃が目安とされる。熱硬化性樹脂の硬化時間は60分間が目安とされ、硬化後の熱硬化性樹脂の発熱ピークをJIS K7121:1987に準拠して測定した際に、発熱ピークが観察されなければ、硬化が完了されたとみなせ、この硬化後の熱硬化性樹脂を用いて、後述する要領で熱硬化性樹脂のガラス転移温度Tgを測定する。なお、上述した熱硬化性樹脂の硬化温度の目安となる発熱ピーク温度の詳細な測定方法は、下記の通りである。熱硬化性樹脂の発熱ピーク温度は、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法で測定する。但し、サンプリング方法・温度条件に関しては以下の要領で行う。示差走査熱量計装置を用いてアルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう試料を約6mg充てんして、窒素ガス流量20mL/分のもと、基準物質としてアルミナを用い、試料を30℃から220℃まで速度5℃/分で昇温させる。本発明において、熱硬化性樹脂の発熱ピーク温度とは1回目昇温時のピークトップの温度を読みとった値である。なお、示差走査熱量計装置としては、例えば、エスアイアイナノテクノロジー社から商品名「DSC6220型」にて市販されている示差走査熱量計装置を用いることができる。
【0089】
熱硬化性樹脂のガラス転移温度Tgは、JIS K7121(1987)「プラスチックの転移温度測定方法」における規格9.3「ガラス転移温度の求め方」に準拠して測定された温度とする。具体的には、ガラス転移温度Tgを測定する、硬化後の熱硬化性樹脂6mgを試料として採取する。示差走査熱量計装置を用い、装置内で流量20mL/分の窒素ガス流の下、試料を20℃/分の昇温速度で30℃から200℃まで昇温して200℃にて試料を10分間に亘って保持する。その後、試料を装置から速やかに取出して25±10℃まで冷却した後、装置内で、流量20mL/分の窒素ガス流の下、20℃/分の昇温速度で試料を200℃まで再度、昇温した時に得られるDSC曲線よりガラス転移温度(中間点)を算出する。測定においては基準物質としてアルミナを用いる。なお、示差走査熱量計装置としては、例えば、エスアイアイナノテクノロジー社から商品名「DSC6220型」にて市販されている示差走査熱量計装置を用いることができる。
【0090】
上記積層体Mの加熱によって、繊維強化プラスチック層形成材2は、これに含浸させている強化用合成樹脂を流動性を有する状態としてプレス加工可能な状態となっていると共に、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1も加熱によって軟化しプレス成形によって容易に成形可能な状態となっている。
【0091】
この状態で、
図6及び
図7に示したように、上記積層体Mを雌雄金型41、42間に配設し、雌雄金型41、42を型締めすることによって、プレス成形によって、積層体Mの熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1を所望形状に成形すると共に、繊維強化プラスチック層形成材2を熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1上にて滑らしながら所望形状に成形する。プレス成形中、繊維強化プラスチック層形成材2の強化用合成樹脂が流動性を保持するように雌雄金型の温度を制御する。プレス成形時、積層体Mは、雌雄金型41、42によって押圧されることから、繊維強化プラスチック層形成材2に含まれている強化用合成樹脂は繊維強化プラスチック層形成材2の表面に滲出して繊維強化プラスチック層形成材2の表面に表皮層を形成し、よって、得られる繊維強化複合体Hの表面は、繊維強化プラスチック層の繊維が露出することのない平滑面に形成される。
【0092】
上記では、積層体Mを加熱した上で雌雄金型41、42間に配設した場合を説明したが、積層体Mを雌雄金型41、42間に配設した上で、積層体Mを加熱してもよい。
【0093】
次に、積層体Mを雌雄金型41、42によってプレス成形して所望形状に成形した後、繊維強化プラスチック層形成材2に未硬化の熱硬化性樹脂が含浸されている場合には、積層体Mの繊維強化プラスチック層形成材2に含有されている未硬化の熱硬化性樹脂を硬化させて、繊維強化プラスチック層形成材の強化繊維同士を硬化した熱硬化性樹脂で結着、固定して繊維強化プラスチック層形成材2を繊維強化プラスチック層H1とし、この繊維強化プラスチック層H1を硬化した熱硬化性樹脂によって熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1の少なくとも一面に積層一体化させて繊維強化複合体Hを製造する(硬化工程)。
【0094】
積層体Mの繊維強化プラスチック層形成材2に含有されている未硬化の熱硬化性樹脂を硬化させるための加熱温度は、プレス成形時の積層体Mの加熱温度と同一であってもよいし変化させてもよいが、熱硬化性樹脂の硬化を促進するために積層体Mの加熱温度を上昇させることが好ましい。
【0095】
積層体Mの繊維強化プラスチック層形成材2に含有されている未硬化の熱硬化性樹脂を硬化させるための加熱温度は、低すぎると、熱硬化性樹脂の硬化が不十分となって、得られる繊維強化複合体の機械的強度が低下することがあり、高すぎると、発泡シートの気泡が熱によって破壊されて、得られる繊維強化複合体の軽量性及び衝撃吸収性が低下することがあるので、(熱硬化性樹脂のガラス転移温度Tg−50℃)〜(熱硬化性樹脂のガラス転移温度Tg+50℃)が好ましく、(熱硬化性樹脂のガラス転移温度Tg−40℃)〜(熱硬化性樹脂のガラス転移温度Tg+40℃)がより好ましい。強化用合成樹脂中に二種類以上の熱硬化性樹脂が含有されている場合、熱硬化性樹脂のガラス転移温度Tgは、強化用合成樹脂に含まれている熱硬化性樹脂のガラス転移温度Tgのうちの最も高いガラス転移温度Tgとする。
【0096】
又、繊維強化プラスチック層形成材2に含浸させている強化用合成樹脂が熱可塑性樹脂である場合、熱硬化性樹脂の場合と異なり、上述した硬化工程は必要なく、後述するように冷却することによって熱可塑性樹を固化させて、繊維強化プラスチック層形成材の強化繊維同士を固化した熱可塑性樹脂で結着、固定して繊維強化プラスチック層形成材2を繊維強化プラスチック層H1とし、この繊維強化プラスチック層H1を固化した熱可塑性樹脂によって熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1の少なくとも一面に積層一体化させて繊維強化複合体Hを製造する。
【0097】
次に、繊維強化複合体Hを必要に応じて冷却した後、雌雄金型41、42を開いて繊維強化複合体Hを得ることができる(
図8参照)。得られた繊維強化複合体Hは、強化用合成樹脂によって強化繊維同士が結着され且つ雌雄金型41、42に沿って所望形状に成形された繊維強化プラスチック層H1が強化用合成樹脂によって熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1の表面に沿って全面的に密着した状態に積層一体化されている。なお、
図8においては、繊維強化プラスチック層H1上に離型フィルム3が積層された状態を示したが、離型フィルム3は、繊維強化複合体Hの繊維強化プラスチック層H1から容易に剥離、除去することができる。又、
図8において、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1は、その両端部を切除した状態を示した。
【0098】
このようにして得られた繊維強化複合体Hは、熱可塑性ポリエステル系樹脂押出発泡シート1の表面に、強化用合成樹脂で強化繊維同士が強固に結着されてなる繊維強化プラスチック層H1が強化用合成樹脂によって強固に積層一体化されており、優れた機械的強度を有していると共に、一部に発泡体を有していることから軽量性及び衝撃吸収性にも優れている。