(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術にあっては、ベントホールカバーを精度よく位置を調節したうえで縫製して取り付ける必要があるため煩雑である。また、ベントホールカバーの追加にともなう部品点数の増加により、エアバッグ装置が高コスト化するおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、簡単かつ低コストな構造により、エアバッグ袋体の膨張展開中にエアバッグ袋体の内圧を瞬時に立ち上げて素早く膨張展開できるとともに、エアバッグ袋体の乗員拘束時にエアバッグ袋体の内圧の過剰な上昇を抑制できるエアバッグ装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、ガス(例えば、実施形態におけるガスG)が供給されて膨張展開するエアバッグ袋体(例えば、実施形態におけるエアバッグ袋体32)と、前記エアバッグ袋体を形成する基布(例えば、実施形態における第一基布36および第二基布37)に設けられ、前記エアバッグ袋体の内部と外部とを連通するベントホール(例えば、実施形態におけるベントホール40)と、を備えたエアバッグ装置(例えば、実施形態におけるエアバッグ装置13)において、前記エアバッグ袋体の周縁部(例えば、実施形態における周縁部32a)には、前記エアバッグ袋体の周方向における前記ベントホールに対応した位置
を挟んで前記周方向における一方側の周縁部(例えば、実施形態における一方側の周縁部37b)と、前記周方向における他方側の周縁部(例えば、実施形態における他方側の周縁部37c)とを、前記周方向に重ね合わせて接合される接合部(例えば、実施形態における接合部50)が形成され
、前記基布は、前方に配置される第一基布(例えば、実施形態における第一基布36)と、後方に配置される第二基布(例えば、実施形態における第二基布37)と、を有し、前記エアバッグ袋体は、前記第一基布の周縁部(例えば、実施形態における第一基布36の周縁部36a)と、前記第二基布の周縁部(例えば、実施形態における第二基布37の周縁部37a)とが接合されることにより形成され、前記接合部は前記第二基布の周縁部に形成され、前記ベントホールは、前記第一基布に形成されていることを特徴としている。
【0009】
本発明によれば、エアバッグ袋体の周縁部には、周方向におけるベントホールに対応した位置に、基布の一部を重ね合わせて接合される接合部が形成されているので、エアバッグ袋体が膨張展開するときに、接合部からベントホールにわたって径方向に沿うようにエアバッグ袋体にしわを発生させるとともに、ベントホールの周縁部同士が重なるように密着してベントホールが閉塞される。これにより、エアバッグ袋体の膨張展開中にガスの漏洩を抑制し、エアバッグ袋体の内圧を瞬時に立ち上げたあと保持できるので、エアバッグ袋体を素早く膨張展開できる。また、乗員を拘束した後は、エアバッグ袋体の形状が変化するとともにベントホールが開放するので、エアバッグ袋体の内部から外部に向かってガスを速やかに排出できる。このように、簡単かつ低コストな構造により、エアバッグ袋体の膨張展開中にエアバッグ袋体の内圧を瞬時に立ち上げて素早く膨張展開できるとともに、エアバッグ袋体の乗員拘束時にエアバッグ袋体の内圧の過剰な上昇を抑制できる。
また、本発明によれば、接合部は、周縁部におけるベントホールに対応した位置を挟んで周方向における一方側の周縁部と、周方向における他方側の周縁部とを、周方向に重ね合わせて接合することにより形成されているので、エアバッグ袋体が膨張展開するときに、接合部からベントホールにわたって、径方向に沿うように確実にしわを発生させることができる。したがって、エアバッグ袋体の膨張展開中にエアバッグ袋体の内圧を瞬時に立ち上げてさらに素早く膨張展開できる。
【0016】
また、請求項
2に記載の発明は、前記エアバッグ袋体の内部には、前記接合部と前記エアバッグ袋体の内面とを接続するストラップ(例えば、実施形態におけるストラップ45)が設けられていることを特徴としている。
【0017】
本発明によれば、接合部とエアバッグ袋体の内面とを接続するストラップが設けられているので、エアバッグ袋体が膨張展開するときに、ストラップにより接合部近傍でエアバッグ袋体の膨張が抑制されて、確実にしわを発生させることができる。
【0018】
また、請求項
3に記載の発明は、前記ベントホールが、前記エアバッグ袋体の径方向に沿うように延びるスリット(例えば、実施形態におけるスリット42)であることを特徴としている。
【0019】
本発明によれば、ベントホールが、エアバッグ袋体の径方向に沿うように延びるスリットであるので、エアバッグ袋体が膨張展開するときに発生したしわにより、スリットの周縁部が内側に引き込まれつつ重なるように密着してベントホールを閉塞することができる。したがって、エアバッグ袋体の膨張展開中にエアバッグ袋体の内圧を瞬時に立ち上げてさらに素早く膨張展開できる。
【0020】
また、請求項
4に記載の発明は、前記スリットの前記径方向における外側端部の幅が、前記スリットの前記径方向における内側端部の幅よりも広くなっていることを特徴としている。
【0021】
本発明によれば、スリットの径方向における外側端部の幅が、スリットの径方向における内側端部の幅よりも広くなっているので、スリットの径方向における外側端部近傍の基布の剛性が低下することにより、容易に基布を変形させることができる。これにより、エアバッグ袋体が膨張展開するときには、しわを容易に発生させてベントホールを閉塞できるとともに、乗員を拘束した後は、エアバッグ袋体の形状が容易に変化してベントホールを開放できる。したがって、エアバッグ袋体の膨張展開中にエアバッグ袋体の内圧を瞬時に立ち上げて素早く膨張展開できるとともに、エアバッグ袋体の乗員拘束時にエアバッグ袋体の内圧の過剰な上昇を抑制できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、エアバッグ袋体の周縁部には、周方向におけるベントホールに対応した位置に、基布の一部を重ね合わせて接合される接合部が形成されているので、エアバッグ袋体が膨張展開するときに、接合部からベントホールにわたって径方向に沿うようにエアバッグ袋体にしわを発生させるとともに、ベントホールの周縁部同士が重なるように密着してベントホールが閉塞される。これにより、エアバッグ袋体の膨張展開中にガスの漏洩を抑制し、エアバッグ袋体の内圧を瞬時に立ち上げたあと保持できるので、エアバッグ袋体を素早く膨張展開できる。また、乗員を拘束した後は、エアバッグ袋体の形状が変化するとともにベントホールが開放するので、エアバッグ袋体の内部から外部に向かってガスを速やかに排出できる。このように、簡単かつ低コストな構造により、エアバッグ袋体の膨張展開中にエアバッグ袋体の内圧を瞬時に立ち上げて素早く膨張展開できるとともに、エアバッグ袋体の乗員拘束時にエアバッグ袋体の内圧の過剰な上昇を抑制できる。
また、本発明によれば、接合部は、周縁部におけるベントホールに対応した位置を挟んで周方向における一方側の周縁部と、周方向における他方側の周縁部とを、周方向に重ね合わせて接合することにより形成されているので、エアバッグ袋体が膨張展開するときに、接合部からベントホールにわたって、径方向に沿うように確実にしわを発生させることができる。したがって、エアバッグ袋体の膨張展開中にエアバッグ袋体の内圧を瞬時に立ち上げてさらに素早く膨張展開できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第一実施形態)
以下に、本発明の第一実施形態に係るエアバッグ装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は、第一実施形態のエアバッグ装置13を備えた車両1の車室内2を示す斜視図である。なお、以下の説明では、前後方向は車両1の前後方向を示し、左右方向は車両1の左右方向を示し、上下方向は車両1の上下方向を示している。また、本実施形態では、車両1の右側に運転席のシート11が配置され、車両1の左側に助手席のシート9が配置された車両1について説明する。
図1に示すように、運転席のシート11の前方に配置されたステアリングホイール12の内部には、エアバッグ装置13が収納されている。
【0025】
図2は、
図1のA−A線に沿った断面図である。
図2に示すように、ステアリングホイール12はステアリングシャフト14の後端にナット15によりボス部16が固定され、ボス部16にカップ状のフロントカバー17が固定されている。フロントカバー17の周縁には、フロントカバー17を閉塞するように複数のボルト18によりリヤカバー19が固定されている。フロントカバー17の外周面には放射状に延びる複数のスポーク部20が取り付けられ、このスポーク部20にステアリングホイール本体21が支持されている。
【0026】
リヤカバー19の内周面には、リテーナ22がボルト18によりフロントカバー17およびリヤカバー19と共締めされ、このリテーナ22にエアバッグ装置13が支持されている。フロントカバー17およびリヤカバー19は、エアバッグ装置13を収納するエアバッグカバーを構成する。
リヤカバー19の内面には、エアバッグの膨張展開時にリヤカバーの破断を促進するためのティアライン19aが形成されている。ティアライン19aは、リヤカバー19を正面から見たときに、例えばH字状に形成されている。リヤカバー19は、エアバッグの膨張展開時にこのティアライン19aに沿って破断し、
図2中上側および下側に分かれて展開するようになる。
【0027】
(エアバッグ装置)
エアバッグ装置13は、例えば燃焼により高圧ガスを発生する推薬を充填したインフレータ31と、インフレータ31が発生させた高圧ガスが導入されて膨張展開するエアバッグ袋体32と、エアバッグ袋体32の基部を固定するリング状の固定ブラケット33とを備えている。
リテーナ22の前方には、インフレータ31のフランジ31aが配置されている。また、リテーナ22の後方には、エアバッグ袋体32の基部が配置されている。さらに、エアバッグ袋体32の基部の後方には、固定ブラケット33が配置されている。そして、前方から後方に向かって、インフレータ31のフランジ31a、リテーナ22、エアバッグ袋体32の基部、固定ブラケット33の順に積層されて、複数のボルト34およびナット35により締め付け固定されている。すなわち、リテーナ22と固定ブラケット33との間には、エアバッグ袋体32の基部が挟み込まれた状態で固定されている。
【0028】
図3は、第一実施形態に係るエアバッグ袋体32の分解斜視図である。
図3に示すように、エアバッグ袋体32は、平面視で円形状に形成されており、前方(
図3における下側)に配置される第一基布36と、後方(
図3における上側)に配置される第二基布37とを備えている。エアバッグ袋体32は、第一基布36の周縁部36aと、第二基布37の周縁部37aとが縫製部38により互いに縫製されて接合されることにより形成されている。
【0029】
第一基布36は、平面視円形状の布であって、インフレータ31(
図2参照)を囲む円形のインフレータ開口36cと、このインフレータ開口36cの周囲に形成された複数の貫通孔36bとが形成されている。インフレータ開口36cは、第一基布36の中央に形成される。
リテーナ22(
図2参照)の後面と固定ブラケット33の前面との間には、第一基布36が挟まれて複数のボルト34で締め付けられている。これにより、インフレータ31が発生するガスは、第一基布36の中央のインフレータ開口36cからエアバッグ袋体32の内部に供給される。
【0030】
第一基布36には、エアバッグ袋体32の内部と外部とを連通する円形状のベントホール40が形成されている。ベントホール40は、インフレータ開口36cから離間して二個形成されており、縫製部38よりも内側に配置されている。一方のベントホール40の中心およびインフレータ開口36cの中心を結ぶ直線と、他方のベントホール40の中心およびインフレータ開口36cの中心を結ぶ直線とにより形成される角度は、例えば90°程度となっている。
ベントホール40は、エアバッグ袋体32の膨張展開時において、ベントホール40の周縁部40a同士が重なるように密着して、ベントホール40を閉塞する。また、ベントホール40は、エアバッグ袋体32の膨張展開後であって乗員拘束時に、エアバッグ袋体32の内部のガスを放出する。
【0031】
図4は、膨張展開前のエアバッグ袋体32を後方から見たときの平面図である。
図5は、膨張展開直後のエアバッグ袋体32の斜視図である。なお、
図5において、閉塞前の開放されたベントホール40を二点鎖線で図示している。
第二基布37は、第一基布36と同等の直径を有する平面視円形状の布である。
ここで、
図4および
図5に示すように、エアバッグ袋体32の周縁部32aには、エアバッグ袋体32の周方向におけるベントホール40に対応した位置に、第二基布37の一部を重ね合わせて接合される接合部50が形成されている。
【0032】
本実施形態の接合部50は、エアバッグ袋体32の周縁部32aにおけるベントホール40に対応した位置を挟んで周方向における一方側の第二基布37の周縁部37bと、周方向における他方側の第二基布37の周縁部37cとを、エアバッグ袋体32の内側に引き込むように周方向に重ね合わせて接合することにより形成されている。これにより、エアバッグ袋体32の接合部50に対応した位置には、径方向の外側から内側に向かって、径方向に沿うように延びるしわ52が形成される。
【0033】
(作用)
続いて、エアバッグ袋体32の接合部50の作用について以下に説明する。
図2に示すように、車両1の衝突時に所定以上の加速度が検出されると、インフレータ31が点火され、折り畳まれたエアバッグ袋体32の内部にインフレータ31からガスが供給される。エアバッグ袋体32が膨張展開を開始すると、エアバッグ袋体32から圧力を受けてリヤカバー19がティアライン19aで破断される。その後、エアバッグ袋体32は 車室内2側に向かって膨張する。
【0034】
図5に示すように、エアバッグ袋体32の展開中は、エアバッグ袋体32が膨張するとともに、エアバッグ袋体32の外径は縮小する。そして、接合部50を形成する第二基布37の周縁部37b,37cは、エアバッグ袋体32の外径の縮小にともない、エアバッグ袋体32の内部に引き込まれる。これにより、接合部50に対応した位置では、径方向の外側から内側に向かって、径方向に沿うように、しわ52が形成される。しわ52は、エアバッグ袋体32の膨張展開にともなって、径方向の外側から内側に向かって延びていく。
【0035】
図6は、
図5のB−B線に沿った断面図である。
ここで、接合部50は、エアバッグ袋体32の周方向におけるベントホール40に対応した位置に形成されているので、接合部50から延びたしわ52がベントホール40に到達した時に、ベントホール40の周縁部40aが内部に引き込まれるとともに密着する。そして、エアバッグ袋体32が膨張して膨張展開が完了すると、ベントホール40は閉塞される。
【0036】
具体的には、
図6に示すように、ベントホール40の周縁部40aがエアバッグ袋体32の内部に引き込まれ、しわ52の延在方向(すなわち径方向)に沿うように延びて配置されるとともに、周方向に対向した状態で互いに面接触して密着する。これにより、ベントホール40は、全体にわたって閉塞される。このとき、エアバッグ袋体32内部にはガスGが十分に供給されているため、エアバッグ袋体32の内圧によりベントホール40の周縁部40aが互いに押し付けられて密着する。これにより、エアバッグ袋体32の膨張展開が完了したとき、ベントホール40からガスGが漏洩するのを防止している。
【0037】
図7は、乗員Jを拘束したときのエアバッグ袋体32の側面図である。
エアバッグ袋体32の膨張展開後、車両衝突時の慣性力により、乗員Jがエアバッグ袋体32に向かって移動すると、エアバッグ袋体32により乗員Jは拘束される。その後、エアバッグ袋体32は、車両1の後方から前方(
図7における右側から左側)に向かって乗員Jによって押圧される。
【0038】
このとき、エアバッグ袋体32は、前後方向の厚さが減少して扁平するとともに、外径が拡大する。そして、エアバッグ袋体32の内部に引き込まれていたベントホール40の周縁部40aは、エアバッグ袋体32の外部に向かって引き出される。これにより、閉塞されていたベントホール40が開放されて、エアバッグ袋体32内部のガスGが放出される。したがって、エアバッグ袋体32による乗員拘束時に、エアバッグ袋体32の内圧が過剰に上昇するのを抑制できる。
【0039】
第一実施形態によれば、エアバッグ袋体32の周縁部32aには、周方向におけるベントホール40に対応した位置に、第二基布37の一部を重ね合わせて接合される接合部50が形成されているので、エアバッグ袋体32が膨張展開するときに、接合部50からベントホール40にわたって径方向に沿うようにエアバッグ袋体32にしわ52を発生させるとともに、ベントホール40の周縁部40a同士が重なるように密着してベントホール40が閉塞される。これにより、エアバッグ袋体32の膨張展開中にガスGの漏洩を抑制し、エアバッグ袋体32の内圧を瞬時に立ち上げたあと保持できるので、エアバッグ袋体32を素早く膨張展開できる。また、乗員Jを拘束した後は、エアバッグ袋体32の形状が変化するとともにベントホール40が開放するので、エアバッグ袋体32の内部から外部に向かってガスGを速やかに排出できる。このように、簡単かつ低コストな構造により、エアバッグ袋体32の膨張展開中にエアバッグ袋体32の内圧を瞬時に立ち上げて素早く膨張展開できるとともに、エアバッグ袋体32による乗員拘束時にエアバッグ袋体32の内圧の過剰な上昇を抑制できる。
【0040】
また、接合部50は、エアバッグ袋体32の周縁部32aにおけるベントホール40に対応した位置を挟んで周方向における一方側の第二基布37の周縁部37bと、周方向における他方側の第二基布37の周縁部37cとを、周方向に重ね合わせて接合することにより形成されているので、エアバッグ袋体32が膨張展開するときに、接合部50からベントホール40にわたって、径方向に沿うように確実にしわ52を発生させることができる。したがって、エアバッグ袋体32の膨張展開中にエアバッグ袋体32の内圧を瞬時に立ち上げてさらに素早く膨張展開できる。
【0041】
(第一実施形態の各変形例)
続いて、第一実施形態の各変形について説明をする。
第一実施形態では、エアバッグ袋体32のベントホール40は、平面視円形状に形成されていた(
図4参照)。これに対して、エアバッグ袋体32のベントホール40の形状は、第一実施形態に限定されることはなく、種々変更が可能である。なお、以下では、第一実施形態と同様の構成については、説明を省略している。
【0042】
図8は、第一実施形態の第一変形例に係る膨張展開前のエアバッグ袋体32を後方から見たときの平面図である。
図8に示すように、第一実施形態の第一変形例に係るエアバッグ袋体32には、ベントホール40として、径方向に沿うように延びるスリット42が形成されている。第一実施形態の第一変形例によれば、エアバッグ袋体32が膨張展開するときに発生したしわ52により、スリット42の周縁部40aが内側に引き込まれつつ重なるように密着して、ベントホール40であるスリット42を閉塞することができる。したがって、エアバッグ袋体32の膨張展開中にエアバッグ袋体32の内圧を瞬時に立ち上げてさらに素早く膨張展開できる。
【0043】
図9は、第一実施形態の第二変形例に係る膨張展開前のエアバッグ袋体32を後方から見たときの平面図である。
図10は、第一実施形態の第三変形例に係る膨張展開前のエアバッグ袋体32を後方から見たときの平面図である。
図9に示す第一実施形態の第二変形例に係るエアバッグ袋体32のように、ベントホール40が、径方向に沿うように形成されたスリット42であって、平面視でエアバッグ袋体32の中心に向かって頂部を有する三角形状に形成されていてもよい。
また、
図10に示す第一実施形態の第三変形例に係るエアバッグ袋体32のように、ベントホール40が、径方向に沿うように形成されたスリット42であって、平面視でエアバッグ袋体32の中心に向かって頂部を有する扇形状に形成されていてもよい。
【0044】
第一実施形態の第二変形例および第三変形例のいずれの場合においても、ベントホール40であるスリット42の径方向における外側端部の幅が、スリット42の径方向における内側端部の幅よりも広くなっている。このように構成することで、スリット42の径方向における外側端部近傍の第二基布37の剛性が低下することにより、容易に第二基布37を変形させることができる。これにより、エアバッグ袋体32が膨張展開するときには、しわ52を容易に発生させてベントホール40(スリット42)を閉塞できるとともに、乗員J(
図7参照)を拘束した後は、エアバッグ袋体32の形状が容易に変化してベントホール40を開放できる。したがって、エアバッグ袋体32の膨張展開中にエアバッグ袋体の内圧を瞬時に立ち上げて素早く膨張展開できるとともに、エアバッグ袋体32の乗員拘束時にエアバッグ袋体32の内圧の過剰な上昇を抑制できる。
【0045】
(
参考形態)
図11は、
参考形態に係る膨張展開前のエアバッグ袋体32を後方から見たときの平面図である。なお、
図11において、エアバッグ袋体32の膨張展開時に形成されるしわ52を二点鎖線で図示している。
第一実施形態における接合部50は、エアバッグ袋体32の周縁部32aにおけるベントホール40に対応した位置を挟んで周方向における一方側の第二基布37の周縁部37bと、周方向における他方側の第二基布37の周縁部37cとを、周方向に重ね合わせて接合することにより形成されていた(
図4参照)。
これに対して、
図11に示すように、
参考形態における接合部50は、エアバッグ袋体32の対向する第一基布36および第二基布37の一部を接合することにより形成されている点で、第一実施形態とは異なっている。なお、第一実施形態と同様の構成については、説明を省略している。
【0046】
参考形態に係るエアバッグ袋体32の周縁部32aには、エアバッグ袋体32の周方向におけるベントホール40に対応した位置に、第一基布36と第二基布37とを接合することにより接合部50が形成されている。接合部50は、第一基布36および第二基布37の一部を縫製することにより、エアバッグ袋体32の径方向の内側に頂部を有するV字状に形成されている。V字状に形成された接合部50の頂部から、エアバッグ袋体32の中心までの距離をLとしたとき、距離Lは、第一基布36および第二基布37の半径よりも短くなっている。なお、接合部50は、第一基布36の周縁部36aと第二基布37の周縁部37aとを縫製する縫製部38を縫製する際に、同工程で縫製することにより形成してもよいし、縫製部38の縫製後に別工程で縫製することにより形成してもよい。ただし、縫製部38と接合部50とを同工程で縫製することにより、製造工程の効率化およびコストダウンを図ることができる。
【0047】
参考形態によれば、対向する第一基布36および第二基布37の一部を接合するだけで簡単かつ低コストに接合部50を形成できる。また、エアバッグ袋体32の中心から接合部50までの距離Lは、第一基布36および第二基布37の半径よりも短いので、エアバッグ袋体32が膨張展開するときに、接合部50近傍でエアバッグ袋体32の膨張が抑制されて、第一実施形態と同様にしわ52を発生させることができる。したがって、エアバッグ袋体32の膨張展開中にエアバッグ袋体32の内圧を瞬時に立ち上げてさらに素早く膨張展開できる。
【0048】
また、接合部50が、エアバッグ袋体32の径方向の内側に頂部を有するV字状に形成されているので、接合部50から接合部50の頂部が指向する方向にむかって、すなわち径方向の外側から内側に向かって、確実にしわ52を発生させることができる。したがって、エアバッグ袋体32の膨張展開中にエアバッグ袋体32の内圧を瞬時に立ち上げてさらに素早く膨張展開できる。
【0049】
なお、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0050】
図12は、他の実施形態に係る膨張展開直後のエアバッグ袋体32の斜視図である。
エアバッグ袋体32の形態は、上述の
第一実施形態、参考形態および第一実施形態の各変形例に限定されない。
例えば、
図12に示すように、エアバッグ袋体32の内部に、接合部50とエアバッグ袋体32の内面とを接続するストラップ45が設けられていてもよい。
ストラップ45は、例えば帯状をした布等からなる部材であり、一方端部が固定ブラケット33に固定されるとともに、他方端部が接合部50の内側に固定されている。この構成によれば、エアバッグ袋体32が膨張展開するときに、ストラップ45により接合部50近傍でエアバッグ袋体32の膨張が抑制されて、確実にしわ52を発生させることができる。
【0051】
第一実施形態では、エアバッグ袋体32の周縁部32aにおけるベントホール40に対応した位置を挟んで周方向における一方側の第二基布37の周縁部37bと、周方向における他方側の第二基布37の周縁部37cとを、エアバッグ袋体32の内側に引き込むように周方向に重ね合わせて接合することにより形成されていた。これに対して、接合部50の形態は、第一実施形態に限定されない。したがって、例えばベントホール40に対応した位置を挟んで周方向における一方側の第一基布36の周縁部と、周方向における他方側の第一基布36の周縁部とを、エアバッグ袋体32の内側に引き込むように周方向に重ね合わせて接合することにより接合部が形成されていてもよい。さらに、例えばベントホール40に対応した位置を挟んで周方向における一方側の第一基布36の周縁部および第二基布37の周縁部37bと、周方向における他方側の第一基布36の周縁部および第二基布37の周縁部37cとを、エアバッグ袋体32の内側に引き込むように周方向に重ね合わせて接合することにより接合部が形成されていてもよい。
【0052】
第一実施形態および
参考形態では、ベントホール40が円形状であり、第一実施形態の各変形例では、ベントホール40が径方向に沿うスリット42であったが、ベントホール40の形状は、
第一実施形態、参考形態および第一実施形態の各変形例に限定されない。また、
第一実施形態、参考形態および第一実施形態の各変形例では、ベントホール40の個数が二個であったが、ベントホール40の個数は二個に限定されない。
【0053】
第一実施形態、参考形態および第一実施形態の各変形例では、ステアリングホイール12内に格納されたエアバッグ装置13の態様で説明をしたが、本発明の適用は、ステアリングホイール12内に格納されたエアバッグ装置13に限られない。したがって、例えば、助手席側のダッシュボードに格納されたエアバッグ装置や、車両1の窓の縁辺に沿って格納されたサイドカーテンエアバッグ装置等にも本発明を適用できる。
【0054】
第一実施形態、参考形態および第一実施形態の各変形例では、接合部50における第一基布36および第二基布37の各基布の接合を縫製により行っていた。これに対して、各基布の接合方法は縫製に限られない。したがって、例えば接着剤や織り合わせにより第一基布36および第二基布37の各基布を接合して接合部50を形成してもよい。
【0055】
第一実施形態、参考形態および第一実施形態の各変形例をそれぞれ任意に組み合わせてもよい。したがって、例えば、接合部50がV字状に形成されるとともに、ベントホール40としてスリットが形成されたエアバッグ袋体としてもよい。
【0056】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。