【発明が解決しようとする課題】
【0007】
先行技術のセンサによって提供される位置情報は、磁気および電気信号の非線形性により今後業界が課す制約に照らして十分に精密とはならないと思われるため完全に満足いくものではない。
【0008】
実際、実務上では、実際に測定される信号は純粋に正弦波形ではなく、非常に大きくなることがある高調波成分を有する。したがって磁界成分のそれぞれは以下の式に従って書くことができる。
【0009】
【数1】
上記式において、
−B
1は、運動の方向に法線方向で、磁石によって生成される磁界成分を表す。
−B
2は、磁石が生成する、直角位相関係で、接線方向磁界成分を表す。
−θは、電気角、つまり対象信号の周期中の角度位置を表す。これが求めたいものであり、磁石に対するプローブの位置に比例するが、2つの対象成分に相当する2つのベクトル間の角度として定義される測定点の磁気角と混同してはならない。
−a
iは、信号B
1を形成する様々な高調波の振幅を表す。
−b
iは、信号B
2を形成する様々な高調波の振幅を表す。
−iは、高調波のランクを表す。
【0010】
信号の高調波は様々な破壊に由来し、特に、
−磁石の形状に内在するエッジ効果で、主に有効経路の両端で発生する。これらエッジ効果は運動の方向の磁石のサイズが有効経路に近づく、または有効経路よりもさらに小さくなるにつれて著しくなる。これらの効果は大きな磁石を選択することによって低減できるかもしれないが、これは望まれる小型化およびコスト削減に反する。
−不完全な磁化プロセス。方向が連続的に変動する磁石を製作することは、磁化ツールの製作に関係する困難を生む可能性がある。例えば、運動の方向に完全に線形に変動する磁化を生成することは難しく、ドリフトがホール効果素子により測定される電気信号の高調波をもたらす。
−磁石の相対透磁率。この相対透磁率は空気のものとは完全に同一ではないため、磁石と空気との間に寄生回折現象を生み、ホール効果素子によって検出される局所磁界を変形させる。
−磁石の非均質性。ある種類の磁石、特にボンド磁石で作動させるとき、素材は非均質性のことがあり、異なる磁気特性をもたらし、局所磁界の変形を生じさせる。
−磁界の成分を検出するホール効果素子のアライメント不良。
【0011】
このように、先行技術は高調波成分が弱いまたは存在せず、信号が基本成分の式を要約する構成の状況に置かれている。前述の成分B
1およびB
2はさらに以下のようになる。
【0012】
【数2】
このように電気角はB
1をB
2で割った商を求めるだけで得られ、以下の公式を導くことができる。
【0013】
【数3】
このように、センサの運動のすべての点で電気角を把握すると、その絶対位置情報を得ることができる。
【0014】
一般に、信号が変形正弦曲線で、前述の理由で純粋に正弦波形ではない場合、磁石の表面と測定するプローブとの間の距離を小さく、つまり磁石の近くにして作動させると、高調波成分は増幅する。磁石から遠くするほど、高調波成分は低くなる。しかし、できるだけ小さい磁石で作動させたい場合、その測定エアギャップが大きいときにもエッジ効果により著しい高調波成分を生じさせることがある。電気角を提供する先行技術によって与えられる公式は不十分である。
【0015】
当業者は、例えばデジタル線形化処理をさせる補正テーブルを適用することによって、情報の後処理などの解決方法によって精度を改善しようと努めてきた。この解決方法は過剰なコストを生じさせるとともに、機械的変化量および位置決めの許容差、並びに特に磁石とプローブとの間の距離変化量に敏感なロバスト性に劣るシステムをもたらす。上記述べるパラメータの一部は経時的に変化し、後処理だけによる補償はセンサの寿命に依存するドリフトをもたらす。
【0016】
フランス特許第2893410号明細書で提案される別の解決方法は、磁石の非定形形状により、例えば円形ではなく楕円形の断面により線形性の欠点を相殺することからなる。この解決方法はより複雑な製造方法を伴う。
【0017】
別の解決方法は、センサの線形性を、ゾーンごとかつ反復的に改善するために曲線区間ごとに補正係数を適用することである。しかし、これには追加の電子リソースを要し、解決方法としては許容差に対してロバスト性があまりなく、劣化する経年変化を受ける解決方法となる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、後処理または特定の磁石構成を必要とせず、従来技術のセンサと比べて精度が改良された絶対測定システムを提案することによって、以上の欠点を解決することを目的とする。当然ながら、本発明に従い測定システムに追加処理を適用することは可能であるが、本質的に、本発明による測定システムは先行技術のセンサよりも精度が高くなっている。
【0019】
本特許の意味における「絶対精度」という用語は多重周期測定システムを参照すると規定される。そして絶対位置は一つの周期にわたる絶対位置に関係し、周期の時点に関する情報は追加手段によって判定される。
【0020】
有利なことに、本発明は特に当業者がロバストなセンサを製作することを可能にし、直方体磁石、または扇形もしくはタイル形の磁石の場合に、経路のサイズに対する磁石のサイズを最小化することを可能にするので、非常に良好な線形性を維持しながら経路よりも実質的に小さい磁石を得ることを可能にする。
【0021】
有利なことに、本発明は当業者が、高調波成分が非常に著しい小さな測定エアギャップおよび大きなものの両方と作動させることを可能にする。
実際、その場合、高調波成分は確かにかなり低くなるが、磁石が測定される経路よりも小さい場合にはエッジ効果が著しい高調波成分を生じうる。
【0022】
本明細書に引用される様々な事例において、高調波成分は無視できない。
一般に、本発明は絶対位置を測定するシステムに関係し、前記システムは永久磁石と、前記磁石に対して所定の経路を移動可能な少なくとも1つのプローブであって、前記磁石は移動方向に接線成分と称される第1磁界成分B
tと、法線成分と称され、第1成分に直交し直交位相関係にある第2磁界成分B
nとを有するプローブで磁界を生成し、前記プローブは、それぞれ前記成分B
n、B
tに依存する2つの電気信号V
n、V
tを伝達する前記プローブと、補正係数Gが割り当てられる前記信号V
n、V
t間の比率の逆正接に基づいて計算される位置情報を提供する計算手段とを備えており、前記計算手段は、kとは厳密に異なるゲインGを信号V
n、V
tのうちの一方に適用するようにパラメータ化されており、kは、Vmax
t/Vmax
n比を表し、Vmax
tおよびVmax
nは、それぞれ前記経路にわたる信号V
tおよびV
nの振幅を表し、ゲインGは、磁界成分から求める位置値と対応する実際の機械的位置値との間の偏差を最小化するように計算される。
【0023】
第1の代替例によると、永久磁石は運動の方向に連続的に変動する磁化方向を有する。
第2の代替例によると、永久磁石は一方向性磁化を有し、その強度は運動の方向に連続的に変動する。
【0024】
好ましくは、前記計算手段は、信号V
n、V
tのうちの一方に、0.4kから0.98kまでまたは1.02kから2.5kまでに含まれるゲインGを適用するようにパラメータ化されており、kは信号V
tおよびV
nの振幅間の比率を表す。
【0025】
好ましくは、前記磁気センサは2つのホール効果センサを含む。
有利なことに、前記磁気センサは、例えば、メレキシス社製のMLX90316プローブなどの磁束収束器に関連する少なくとも2対のホール効果素子を含む。
【0026】
第2の実施形態では、プローブは、例えば、ミクロナス社製のHAL3625プローブなどの収束器のないホール効果プローブであってもよい。
第2の実施形態では、プローブは磁気抵抗タイプとすることができる。
【0027】
第1の代替例によると、永久磁石は管状タイプである。
第2の代替例によると、永久磁石は半管状タイル形タイプである。
第3の代替例によると、永久磁石は扇形である。
【0028】
第4の代替例によると、永久磁石は直方体素子である。
第5の代替例によると、永久磁石は円盤形である。
ある特定の実施形態によると、磁石は直径方向に磁化されている。
【0029】
ある特定の実施形態によると、磁石は管状で、直径方向に磁化されている。
その方向が連続的に変動する磁化は、測定する寸法に沿って位置する領域に優先方向を有することができる。例えば、磁石の中心に、磁気干渉場(例えば、ケーブルに由来)が磁石に印加されるかどうか、および磁石の中央位置であらゆる状況において悪化しない精度を保全するためにその効果を最小化したいかどうかに応じて、法線方向または接線方向の磁化を課すことが可能である。磁石の中心で干渉場の方向が分かっていると、磁石の中心で磁化の方向を賢明に選択することが可能となる。干渉場が運動の中央に対して接線方向を有する場合、磁石の中央に対して接線方向を有する磁化を選択する。当然ながら、上記提案される例は、センサの経路の中央位置に一切制限されることはなく、センサの経路のあらゆる点で考慮できる。
【0030】
ある特定の実施形態によると、永久磁石は方向が経路の法線中心方向と経路の両端に対して接線方向との間で変動しながら磁化され、経路にわたる電気角の総回転角は実質的に180°に等しい。
【0031】
別の特定の実施形態によると、永久磁石は、方向が経路の接線中心方向と経路の両端に対して接線方向との間で変動しながら磁化され、経路にわたる電気角の総回転角は360°よりも小さい。
【0032】
非管状磁石の場合、磁石の磁気タイプ(中央に対して法線方向または中央に対して接線方向)および磁化の総回転角は、サイズの制約および所望の性能に従い判断される。
図4および
図5の表は、所定の経路および磁石の固定寸法に関するいくつかの例を示す。これらの表は、所望の磁石のサイズに応じて、磁化のタイプの選択が、特に、非線形性を超えて得られる性能によって導かれることを示している。
【0033】
ある代替例によると、磁石は異方性タイプであり、磁化の方向は異方性の方向に揃えられる。
好ましくは、磁石はその異方性の方向が磁石の経路に沿って連続的に変動する異方性を有する。
【0034】
本発明は、有効経路にわたり信号V
n、V
tの最大値Vmax
n、Vmax
tを判定すること、Vmax
t/Vmax
n比に等しい係数kを計算すること、逆正接計算の前に実際の位置と計算位置との差の大域的最小化によりkとは厳密に異なるゲイン係数Gを設定することからなる絶対位置測定システムをパラメータ化する方法にも関係する。
【0035】
本発明は、磁石とプローブとを備え、信号V
nおよびV
tは変形正弦曲線または疑似正弦曲線で、純粋な正弦曲線ではない、前述の種類の絶対位置を測定するシステムを実施する方法にも関係し、方法は、測定またはシミュレーションにより、プローブと磁石の複数の異なる相対位置について、これら相対位置各々の測定値Xを、この相対位置Xに対して求められる電気信号V
nおよびV
tのV
n/V
t比にリンクする法則を確立することからなる予備校正操作と、様々な測定値Xと、Cを既知の構造定数とする関数C.Arctgの様々な対応値(G.V
n/V
t)との間の、複数の相対位置に関して求められる偏差が最小となるゲインGの値を判定することからなる予備最適化操作と、そのシステムの使用中に実施され、プローブおよび磁石の相対位置の測定値Xを関数C.Arctg(G.V
n/V
t)の値と比較することからなる後続実施操作とを含む。
【0036】
このような実施形態において、当業者は本明細書を読む際、予備校正および最適化操作は絶対位置を測定する関係システムをパラメータ化する方法に相当すると理解するであろう。
【0037】
さらに、構造定数Cは磁石の磁気ピッチによって定義され、角度Arctg(G.V
n/V
t)の対応する変動に対するプローブおよび磁石の相違位置の距離の比率を表す。