特許第6043723号(P6043723)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043723
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】積層板型巻線
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/04 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   H02K3/04 Z
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-532812(P2013-532812)
(86)(22)【出願日】2011年9月8日
(65)【公表番号】特表2014-507102(P2014-507102A)
(43)【公表日】2014年3月20日
(86)【国際出願番号】US2011050865
(87)【国際公開番号】WO2012047442
(87)【国際公開日】20120412
【審査請求日】2014年7月31日
(31)【優先権主張番号】12/901,007
(32)【優先日】2010年10月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】クリーヴランド, マーク エー.
【審査官】 津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−504073(JP,A)
【文献】 実開昭58−100442(JP,U)
【文献】 特開2008−061357(JP,A)
【文献】 米国特許第06140734(US,A)
【文献】 特開2000−209838(JP,A)
【文献】 特表2004−516649(JP,A)
【文献】 特開2005−348461(JP,A)
【文献】 特開2009−183072(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/034712(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/00− 3/28
H02K 3/47
H02K15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄心無し積層板型巻線であって:
第1の複数の導電材料積層板を備える第1モータ構成部材であって、前記第1の複数の積層板が電気的に続されて、第1板型巻線を形成する、前記第1モータ構成部材と、
第2の複数の導電材料積層板を備える第2モータ構成部材であって、前記第2の複数の積層板が電気的に続されて、第2板型巻線を形成する、前記第2モータ構成部材と、を備え、
前記第1モータ構成部材は、第1外側リング、第1内側リング、及び、前記第1外側リングと前記第1内側リングとの間に架設される複数の第1導体を含む略環状の形状を有し、前記複数の第1導体の間に配置される複数の第1開口部を備え、前記第1の複数の積層板が、下端の積層板から順次、上面に隣接する積層板に対し、前記第1内側リング又は前記第1外側リングにて交互に接続されていて、
前記第2モータ構成部材は、第2外側リング、第2内側リング、及び、前記第2外側リングと前記第2内側リングとの間に架設される複数の第2導体を含む略環状の形状を有し、前記複数の第2導体の間に配置される複数の第2開口部を備え、前記第2の複数の積層板が、下端の積層板から順次、上面に隣接する積層板に対し、前記第2内側リング又は前記第2外側リングにて交互に接続されていて、
前記第1モータ構成部材及び前記第2モータ構成部材は、前記第1導体群が前記第2開口部群の内部に配置され、かつ前記第2導体群が前記第1開口部群の内部に配置されるように互いの上に積層され、前記第1モータ構成部材及び前記第2モータ構成部材が、交互磁極として構成されるように電気的に直列接続されている
鉄心無し積層板型巻線。
【請求項2】
前記複数の第1導体は、前記第1外側リング及び前記第1内側リングに対して下方に窪んだジョグル部を含み、前記複数の第2導体は、前記第2外側リング及び前記第2内側リングに対して上方に突出したジョグル部を含むことにより、前記第1モータ構成部材が前記第2モータ構成部材に固定されると、前記第1導体群及び前記第2導体群が略同一平面上に揃うようになり、かつ軸方向磁束導体構造を形成するようになる、請求項1に記載の鉄心無し積層板型巻線。
【請求項3】
前記複数の第1導体の前記第1の複数の積層板の各積層板は、複数の第1の垂直に積層する積層板を含み、前記複数の第2導体の前記第2の複数の積層板の各積層板は、複数の第2の垂直に積層する積層板を含む、請求項1に記載の鉄心無し積層板型巻線。
【請求項4】
前記導電材料はアルミニウムを含み、前記第1の複数の積層板の各々、及び前記第2の複数の積層板の各々は、隣接する積層板から陽極酸化または薄い絶縁板を介して電気的に絶縁され、前記第1の複数の積層板が、下端の積層板から順次、上面に隣接する積層板に対し、前記第1内側リング又は前記第1外側リングにて交互に溶接されていて、前記第2の複数の積層板が、下端の積層板から順次、上面に隣接する積層板に対し、前記第2内側リング又は前記第2外側リングにて交互に溶接されている、請求項1に記載の鉄心無し積層板型巻線。
【請求項5】
前記複数の第1導体及び前記複数の第2導体は、複数の渦電流制御スロットを含む、請求項1に記載の鉄心無し積層板型巻線。
【請求項6】
鉄心無し積層板型巻線を製造する方法であって、該方法は:
第1の複数のモータ構成板材を導電材料から切り出すことであって、複数の第1外側リング、及び複数の第1内側リングを切り出すことを含む、切り出すことと、
前記第1外側リングと前記第1内側リングとの間に架設される複数の第1導体を前記第1の複数のモータ構成板材の各々の内部に形成して、前記複数の第1導体が、前記複数の第1導体の間の複数の第1開口部で離間することと、
所望の巻線パラメータに従って、前記第1の複数のモータ構成板材を積層し合体させて積層構造とすることにより第1モータ構成部材を形成することと、
前記第1の複数のモータ構成板材が、下端のモータ構成板材から順次、上面に隣接するモータ構成板材に対し、前記第1内側リング又は前記第1外側リングにて交互に接続されるように、前記第1の複数のモータ構成板材を電気的に続することと、
第2の複数のモータ構成板材を導電材料から切り出すことであって、複数の第2外側リング、及び複数の第2内側リングを切り出すことを含む、切り出すことと、
前記第2外側リングと前記第2内側リングとの間に架設される複数の第2導体を、前記第2の複数のモータ構成板材の各々の内部に形成して、前記複数の第2導体が、前記複数の第2導体の間の複数の第2開口部により離間することと、
前記第2の複数のモータ構成板材を、所望の巻線パラメータに従って積層して合体させて積層構造とすることにより第2モータ構成部材を形成することと、
前記第2の複数のモータ構成板材が、下端のモータ構成板材から順次、上面に隣接するモータ構成板材に対し、前記第2内側リング又は前記第2外側リングにて交互に接続されるように、前記第2の複数のモータ構成板材を電気的に続することと、
前記第1モータ構成部材を前記第2モータ構成部材に固定して、前記複数の第1導体が、前記複数の第2開口部の内部に配置され、かつ前記複数の第2導体が、前記複数の第1開口部の内部に配置されるように互いの上に積層し、前記第1モータ構成部材及び前記第2モータ構成部材が、交互磁極として構成されるように電気的に直列接続されることと、
を含む、方法。
【請求項7】
前記第1の複数のモータ構成板材、及び前記第2の複数のモータ構成板材を導電材料から切り出すことは、ウォータージェット法を利用して、各モータ構成板材をアルミニウム板から切り出すことを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の第1導体を、前記第1の複数のモータ構成板材の内部に形成することは、前記複数の第1導体を前記導電材料から切り出して、前記複数の第1導体が、前記複数の第1外側リングを前記複数の第1内側リングに接続して、前記複数の第1導体が、前記複数の第1開口部を挟むようにして、前記第1内側リング群の外周に沿って等間隔で離間するようにすることを含み、
前記複数の第2導体を、前記第2の複数のモータ構成板材の内部に形成することは、前記複数の第2導体を前記導電材料から切り出して、前記複数の第2導体が、前記複数の第2外側リングを前記複数の第2内側リングに接続して、前記複数の第2導体が、前記複数の第2開口部を挟むようにして、前記第2内側リング群の外周に沿って等間隔で離間するようにすることを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
環状ジョグル部を前記第1外側リングと前記第1内側リングとの間の前記第1モータ構成部材の内部に形成して、前記第1導体群が前記第1モータ構成部材の平面からずれるようにすることと、
環状ジョグル部を前記第2外側リングと前記第2内側リングとの間の前記第2モータ構成部材の内部に形成して、前記第2導体群が前記第2モータ構成部材の平面からずれるようにすることと、をさらに含み、
前記第1導体群及び前記第2導体群は、前記第1モータ構成部材を前記第2モータ構成部材に固定すると略同一平面上に揃うようになる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の第1導体を、前記第1の複数のモータ構成板材の内部に形成することは、前記複数の第1導体の各々に対応して、
複数の垂直に積層する板材を形成することと、
前記複数の垂直に積層する板材を積層して第1導体を形成することと、
前記複数の垂直に積層する板材を電気的に直列接続することと、
前記第1導体を、前記複数の第1外側リングに、そして前記複数の第1内側リングに接続して、前記複数の第1導体が、前記複数の第1開口部を挟むようにして、前記第1内側リング群の外周に沿って等間隔で離間するようにすることと、を含み、
前記複数の第2導体を、前記第2の複数のモータ構成板材の内部に形成することは、前記複数の第2導体の各々に対応して、
複数の垂直に積層する板材を形成することと、
前記複数の垂直に積層する板材を積層して第2導体を形成することと、
前記複数の垂直に積層する板材を電気的に直列接続することと、
前記第2導体を、前記複数の第2外側リングと前記複数の第2内側リングに接続して、前記複数の第2導体が、前記複数の第2開口部を挟むようにして、前記第2内側リング群の外周に沿って等間隔で離間するようにすることと、を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
1つ以上の渦電流制御スロットを、1つ以上の第1導体の内部に、そして1つ以上の第2導体の内部に作成することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
モータは普通、ロータ群及びステータ群を利用し、これらのロータ及びステータのうちの少なくとも1つは通常、鉄心に密着して巻回される銅線から成る巻線を含む。磁場内で回転すると、または回転磁場に置かれると、結果として誘導モータがトルクを生じる。これらの鉄心モータは、極めて高出力のモータとすることができ、かつ極めて高効率のモータとすることができるが、限界がある。鉄心構造は、重量が非常に大きな関心事となる航空機または他の輸送手段に使用されるように設計されるモータの内部に使用される場合に重くなってしまう。更に、巻線では、コイルを積み重ねる場合の巻線密度を高めることができない。コイルを積み重ねると、巻線を含むステータまたはロータの画成領域内の所定の磁束に曝されるようにすることができるコイルの量が少なくなるのでモータの効率を低下させる空隙が大きくなる。
【0002】
これらの注意事項及び他の注意事項を考慮に入れて、本明細書に記載の本開示が提示される。
【発明の概要】
【0003】
本概要は、詳細な説明において以下に更に詳細に記載されるコンセプト群の選択部分を簡略にした形で紹介するために提供される。本概要は、特許請求する主題の範囲を限定するために利用されてはならない。
【0004】
本明細書において記載される装置、システム、及び方法は、モータ用積層板型巻線を提供することができる。本明細書において提供される本開示の1つの態様によれば、鉄心無し積層板型巻線は、2つのモータ構成部材を含み、これらのモータ構成部材を積み重ねて、巻線の交互磁極を形成する。これらのモータ構成部材は、ロータまたはステータとして構成することができる。各モータ構成部材は、多数の導電材料積層板を含む。これらの積層板は、直列に電気接続されて巻線を形成する。各モータ構成部材は、開口部群を導体群の間に挟む構成で離間する多数の導体を含む。これらの構成部材を積み重ねると、一方のモータ構成部材の導体群が、他方の構成部材の開口部群の内部に配置されて、軸方向に構成される板型巻線の略連続する薄い導体領域を形成する。
【0005】
別の態様によれば、鉄心無し放射状磁束モータシステムは、中心ハブ部に接続される一対の端部接続部材を含む。これらの端部接続部材は、互いに対向し、かつハブ部が中心に位置付けられて中心軸を包囲する環状部材である、または「slip ring(スリップリング)」と表記される部材である。2つの導体板は、これらの端部接続部材の間に架設され、かつこれらの端部接続部材に接続される。各導体板は、開口部群をこれらの平行導体の間に挟んで離間する多数の平行導体を含む。これらの導体板は、当該モータシステムの内部に配置されて、各導体板の導体群が、他方の導体板の開口部群の内部に嵌め込まれるようにしている。このような構成とすることにより、環状かつ放射状に構成されるロータまたはステータの略連続する外側表面が形成される。
【0006】
更に別の態様によれば、鉄心無し放射状磁束モータシステムは、中心ハブ部にスリップリングの位置で接続される対向端部接続部材群を含む。2つの導体板は、これらの端部接続部材の間に架設され、かつこれらの端部接続部材に接続される。各導体板は、開口部群をこれらの平行導体の間に挟んで離間する多数の平行導体を含む。これらの導体板は、当該モータシステムの内部に配置されて、各導体板の導体群が、他方の導体板の開口部群の内部に嵌め込まれるようにしている。これらの導体板はそれぞれ、電流が、環状ロータまたはステータの半径方向軸に対して垂直な架設方向に流れるように構成される。電流の方向は、1つの導体から隣接する導体へと交互に変化する。
【0007】
本開示の別の態様は、鉄心無し積層板型巻線を製造する方法を含む。前記方法によれば、積み重ねるとモータ構成部材を形成することになる多数のモータ構成板材を導電材料板から切り出す。多数の導体を、これらのモータ構成板材の各モータ構成板材の内部に、これらの導体が、開口部群をこれらの導体の間に挟んで離間するような構造となるように形成する。これらの板材を積み重ね、そして直列接続することによりモータ構成部材を形成する。当該プロセスを繰り返して、第2モータ構成部材を形成する。これらの2つの構成部材を、一方の構成部材の導体群が他方の構成部材の開口部群の内部に配置されるように互いに対して固定することにより、モータ巻線の交互磁極を形成する。
【0008】
別の態様によれば、一対の環状端部接続部材を中心ハブ部に取り付ける。第1平行導体グループを前記端部接続部材群に、前記端部接続部材群の半径方向軸に対して垂直になるように所定の位置に取り付ける。第2平行導体グループを前記端部接続部材群に、前記第1平行導体グループに隣接して取り付けて、前記第2グループの各導体が、前記第1グループの中の1つの導体に、前記導体の架設辺に沿って当接するようにする。各グループの導体群を電気的に接続して、電流が前記端部接続部材群の半径方向軸に対して垂直な架設方向に流れ、電流の方向が、連続する導体群の間で交互に変化するようにする。
【0009】
説明してきた特徴、機能、及び利点は、本発明の種々の実施形態において個別に実現することができる、または更に他の実施形態において組み合わせることができ、これらの実施形態についての更なる詳細は、以下の説明及び図面を参照することにより理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1Aは、本明細書において提示される種々の実施形態による積層板型巻線のロータディスクの上面図である。図1Bは、本明細書において提示される種々の実施形態による図1Aのロータディスクの多数の積層ディスクの断面図である。図1Cは、本明細書において提示される種々の実施形態による図1Bに示すロータディスクの部分Bの拡大図である。図1Dは、図1Cに示すロータディスクの導体の上面図であり、本明細書において提示される種々の実施形態による渦電流制御スロットを示している。
図2A図2Aは、本明細書において提示される種々の実施形態による積層板型巻線の2つのロータディスクの上面図及び断面図を示している。
図2B図2Bは、本明細書において提示される種々の実施形態による図2Aの2つのロータディスクを組み合わせることにより形成される軸方向磁束構造による積層板型巻線のロータディスクの上面図及び断面図を示している。
図2C図2Cは、図2Bの積層板型巻線の部分Dの斜視図であり、本明細書において提示される種々の実施形態による環状導体領域を示している。
図2D図2Dは、図2Cの積層板型巻線の一部の断面図であり、本明細書において提示される種々の実施形態による軸方向磁束構造を有する積層板型巻線との磁束相互作用を示している。
図3A図3Aは、積層板型巻線の外側リング、及び導体部分の斜視図であり、本明細書において提示される種々の実施形態による水平に絶縁される積層板群を示している。
図3B図3Bは、積層板型巻線の外側リング、及び導体部分の斜視図であり、本明細書において提示される種々の実施形態による水平に積層するとともに垂直に積層する積層板群を示している。
図4A図4Aは、本明細書において提示される1つの実施形態による積層板型巻線の放射状磁束構造の斜視図である。
図4B図4Bは、図4Aの積層板型巻線の断面図であり、本明細書において提示される1つの実施形態による放射状磁束構造を有する積層板型巻線との磁束相互作用を示している。
図5図5は、本明細書において提示される別の実施形態による三相放射状磁束積層板型巻線の斜視断面図である。
図6A図6Aは、本明細書において提示される別の実施形態による更に別の放射状磁束積層板型巻線の断面図である。
図6B図6Bは、本明細書において提示される1つの実施形態による図6Aの放射状磁束積層板型巻線の積層板群の分解断面図である。
図6C図6Cは、本明細書において提示される1つの実施形態による図6Aの積層板型巻線の内部に利用される積層板型巻線積層体の斜視図である。
図7図7は、本明細書において提示される1つの実施形態による鉄心無し積層板型巻線を製造する方法を示すフロー図である。
図8図8は、本明細書において提示される別の実施形態による鉄心無し積層板型巻線を製造する方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の詳細な説明は、積層板型巻線(laminated sheet windings)に関するものである。上に簡単に説明したように、従来のモータ巻線は、鉄心に密着して巻回される銅線を利用する。効果的ではあるが、これらの巻線は重く、かつこれらの巻線では、通常の鉄心巻線の形状の性質に起因して、多くの巻線を効率的に装着することができない。本明細書において記載されるコンセプト及び技術を利用すると、巻線は、導電材料の積層板を用いて製造され、これらの積層板は互いから電気的に絶縁され、かつ電気的に直列接続されてモータ巻線を形成する。これらの巻線を、特定の実施形態に合う所望の厚さに積層し、そして空隙がこれらの巻線内に殆ど生じないように高密度で装着して、これらの巻線の効率を従来の鉄心巻線よりも向上させることができる。
【0012】
更に、本明細書において記載されるこれらの巻線は、鉄心を利用することなくアルミニウム板または銅板により作製することができるので、これらの巻線の重量だけでなく、これらの巻線を製造するコストを低減することができる。この特徴は、航空機内に用いられる場合には重量が重要な注意事項となるので、航空機産業には特に有利である。以下に記載される積層板型巻線は更に、軸方向構造または放射状構造となるように構成されて、モータ内の任意の特定の応用形態に対応することができる。
【0013】
「motor components(モータ構成部材群)」という用語は、広くロータ、ステータ、またはロータ及び/又はステータの任意の組み合わせを指すものとして以下に用いることができることに留意されたい。特定の応用形態によって異なるが、本明細書において記載されるこれらの巻線を利用して、ロータまたはステータを形成することができることを理解されたい。例えば、アルミニウムにより製造される場合、以下に記載されるこれらの巻線をロータとして利用して冷却を行なうと有利となり得る。しかしながら、本明細書において記載されるこれらの巻線は、強制空冷または液冷のような強制冷却法と併せて用いることができるように、銅または他の材料により製造することもできる。
【0014】
以下の詳細な説明では、詳細な説明の一部を構成し、かつ例示、特定の実施形態、または例を通して示される添付の図面を参照する。次に、同様の参照番号が同様の構成要素を幾つかの図を通じて指しているこれらの図面を参照しながら、軸方向構造または放射状構造による積層板型巻線について説明する。図1Aは、1つの実施形態によるロータディスク102の上面図を示している。図2A及び2Bに関連して以下に説明するように、電動モータのロータとして使用される積層板型巻線は、これらのロータディスク102のうちの2つのロータディスクを含む。更に分かり易くするために、1つのロータディスク102の特徴についてまず、説明する。図1A〜2Dに示す実施形態によれば、ロータディスク102は、単相軸方向磁束板型巻線として構成される。この構成では、ロータディスク102は、導体表面に近接して形成される磁場を受け、そしてその結果、中心軸回りに回転して、所望のトルクをモータに発生させる。放射状磁束板型巻線構造は、図4A〜6Cに関連して以下に説明される。
【0015】
ロータディスク102は、外側リング104と、内側リング106と、そして外側リング104と内側リング106との間に架設され、かつ外側リング104と内側リング106とを接続する多数の導体108と、を含む。これらの導体108は、内側リング106の外周の周りに略等間隔で離間している。導体開口部群110は、これらの導体108の間に形成される空間である。2つのロータディスク102を積層することにより形成される積層板型巻線についての以下の説明から明らかになることであるが、これらの導体開口部110のサイズはほぼ、これらの導体108の寸法に応じて設定されて、第2ロータディスク102の導体108が、大きな空隙が絶対に残ることがないように、導体開口部110の内部に嵌め込まれるようになる。
【0016】
図1Bは、図1Aの切断線A−Aに沿って切断したときのロータディスク102の断面図を示している。この図から分かるように、これらの導体108は、導体表面112が、ロータディスク102の外側リング104及び内側リング106を含む平面に平行であり、かつ当該平面からずれた平面を画成するように、円環状のジョグル部に沿って形成される。導体表面112が、外側リング104及び内側リング106を含む平面に平行な平面内に構成されるものとして図示され、そして説明されているが、ロータディスク102の特定の実施形態に従って、任意の平面角度を導体表面112に関して用いることができることを理解されたい。図1Bに示すロータディスク102の部分Bの拡大図を図1Cに示す。この図によれば、ロータディスク102は、多数の導電材料積層板114により構成される。1つの実施形態によれば、これらの積層板114はアルミニウムである。
【0017】
アルミニウムは、幾つかの理由から、従来の鉄心丸銅線巻線よりも優れた利点をもたらす。第1に、本明細書において記載されるコンセプトによるアルミニウム巻線の重量は、従来の同等の巻線の重量よりも大幅に軽い。上記のように、この重量節約によって、航空機産業に対してだけでなく、他の輸送手段または重量が重要な設計事項となる他の任意の用途における使用に対して大きな利点がもたらされる。
【0018】
アルミニウムは通常、電動モータ内に適用するためには意図的に回避される。この理由は、アルミニウムは、広く利用される他の導電材料よりも抵抗が大きいためであり、抵抗が大きいということは、アルミニウムが、従来の材料よりも高い温度に加熱されることを意味する。しかしながら、本明細書において記載されるコンセプトでは、積層板型巻線を回転ロータ内に利用するので、結果としてロータに沿った空気流は、動作を維持するために十分な冷却効果をもたらすことができる。アルミニウムはまた、航空機産業において広く使用されている材料である。アルミニウムを切断し、曲げ加工し、溶接し、電気的に絶縁し、そしてその他として、操作するために利用される製造プロセスは既にサポートされているので、アルミニウム板型巻線の製造が容易である。本明細書において記載される種々の実施形態について、アルミニウムを回転ロータに使用する構成に関連して説明するが、銅または他の導電材料を別の構成として使用してもよいことを理解されたい。更に、本明細書において記載される積層板型巻線のコンセプトは、別の構成として、ステータに、強制冷却法、液冷法、または他の冷却法を用いて適用することができる。
【0019】
図1Cから分かるように、これらの積層板114は、溶接部116を介して電気的に直列接続される。1つの実施形態によれば、積層する前に、各板材114を陽極酸化する、またはその他として、電気的に絶縁することにより、電流が、ディスク102の端部に指示される溶接箇所以外の板材群の間を流れるのを防止する。積層されると、板材114は、ロータディスク102の一方の端部にある下側板材に、そしてロータディスク102の反対側の端部にある上側板材に交互に溶接されて、これらの板材114を電気的に直列接続して、非常に小さい空隙をこれらの板材114の間に有する巻線を形成し、これらの板材は、従来のエナメル線と同等である。この構造は、極めて効率的であるので、結果として得られるモータのサイズ及び重量を効果的に低減することができる。
【0020】
図1Cの下側端部に図示されるこれらの溶接部116は、これらの溶接部116が、直列接続状態を実際に示すためにのみ図示され、そしてこれらの溶接部116の実際の位置を必ずしも示していないので、破線で図示されていることに留意されたい。これらの溶接部116は、図1Cには図示されていないロータディスク102の反対側の外側端部に設けてもよい。これらの積層板114を電気的に直列接続する他の任意の手段を使用することができることも理解されたい。アルミニウムの溶接は、接続の信頼性の理由、及びロータディスク102内に生じる力を、高速モータ内で回転している間に管理する必要があるという理由から、半田付けよりも優れた利点をもたらすが、電気的接続を確立する任意の適切な方法を用いてもよい。
【0021】
また、本明細書において開示されるコンセプトは、添付の図面のうちの何れかの図面に示される多数の板材114に限定されないことを理解されたい。限定されるのではなく、ロータディスク102内に使用される板材114の正確な数、または明細書において開示される他の任意の部品の正確な数は、特定の用途、及び結果として得られる巻線の所望の厚さに応じて、導体に関連する磁束形成能力、及び対応するモータの所望の出力を考慮に入れて変えることができる。
【0022】
図1Dは、導体表面112の上面図を示している。種々の実施形態によれば、1つ以上の渦電流制御スロット118を1つの導体108の内部に切断により開口して、ロータディスク102が高速回転することによって発生する渦電流を最小限に抑える。次に、図2A及び2Bを参照するに、2つのロータディスク102を組み合わせて積層板型巻線を形成する操作について示し、そして説明する。図2Aは、2つのロータディスク102A及び102Bをそれぞれ示しており、これらのロータディスクは、外側リング104A及び104Bと、内側リング106A及び106Bと、導体108A及び108Bと、そして導体開口部110A及び110Bと、をそれぞれ有する。各ディスクは更に、端子202A及び202Bをそれぞれ含み、これらの端子は、積層板型巻線の正端子及び負端子として機能する。
【0023】
1つの実施形態によれば、各ロータディスク102は同一である。2つのロータディスク102A及び102Bが、互いの上に積層され、そして電気的に直列接続されると、図2Bに示す積層板型巻線204が形成される。図2A及の切断線A−A及びB−Bに沿った断面図から分かるように、ロータディスク102Aは、導体表面112Aが、1つの方向にジョグル加工を施された(屈曲させた)ディスク102Aの環状部分に対応するような姿勢になっているのに対し、導体表面112Bは、反対の方向にジョグル加工を施されたディスク102Bの環状部分に対応する。前に示したように、同一のロータディスク群102は、一方を他方に対してひっくり返した状態で使用することができる。
【0024】
図2Bから分かるように、ロータディスク102Aはロータディスク102Bの上に、ロータディスク102Aの導体群108Aがロータディスク102Bの導体開口部群110Bの内部に嵌め込まれるように配置することができる。同様に、ロータディスク102Bの導体群108Bは、ロータディスク102Aの導体開口部群110Aの内部に収まる。2つのロータディスクを溶接して、または半田付けして合体させた後、図2Bの切断線C−Cに沿った積層板型巻線204の断面図から分かるように、結果として高密度の薄い導体領域206が得られる。
【0025】
図2Bに示す積層板型巻線204の部分Dの拡大斜視図を図2Cに示す。薄い導体領域206は、外側リング104A及び104Bと内側リング106A及び106Bとの間に明確に観察することができる。この実施形態によれば、ロータディスク102A及び102Bの外側リング104A及び104Bをそれぞれ含む積層板型巻線の外側リングの厚さは、導体領域206の厚さの略2倍であるが、本開示は、積層板型巻線204の残りの部分に対する導体領域206の何れの特定の厚さにも、または何れの厚さ比にも限定されない。これらの導体108をずらし、そしてこれらの導体開口部110を形成することにより、2つのロータディスク102を互いに対して固く固定して、高密度の薄い導体領域206を形成することができ、この導体領域206は、図2Dに示すように、ステータ212の磁石群210からの磁束と相互作用する略連続する導体表面を形成する。
【0026】
次に、軸方向磁束積層板型巻線204の製造プロセスについて説明する。多数のロータディスクテンプレートを、1枚のアルミニウム板から、ウォータージェット法または他の切断法を利用して切り出すことができる。これらのテンプレートを切り出す前、または切り出した後の何れかに、環状ジョグル加工を施して、オフセット導体表面112を形成することができる。このジョグル加工は、板材をプレス加工して成形体とすることにより、または他の公知の方法により施すことができる。次に、各ロータディスクテンプレートを、これらの積層板114を電気的に直列接続する溶接箇所をマスク材で被覆して陽極酸化することができる。非導電性薄膜フィルムを使用して、銅板群を電気的に絶縁することもできる。所望の数のロータディスクテンプレートを積み重ね、そして適切な箇所で溶接して、ロータディスク102を形成する。次に、2つのロータディスク102を積層し、そして一方を他方に対してひっくり返して固く固定して合体させて、薄い導体領域206を有する積層板型巻線204を形成することができる。
【0027】
図3Aは、外側リング104及び導体108を含むロータディスク102の一部を示している。この簡易図は、導体108をずらすジョグル加工を施していない状態で、水平に積層する板材302A〜302N(集合的に参照番号302で示す)の積層体を示している。これらの水平に積層する板材の各板材は、1枚のアルミニウム板から切り出される1つのロータディスクテンプレートを原型とすることができる。これとは異なり、図3Bは、各導体108が、水平に積層する板材302の積層体を利用して形成される構成の導体群108の別の構成を示しており、この場合、水平に積層する各板材は、多数の垂直に積層する板材304により構成される。この実施形態では、これらの垂直に積層する板材304は、効果的な方法として機能して、ロータが高速回転することにより生じる渦電流を最小限に抑える。これらの導体108はそれぞれ、外側リング104及び内側リング106に接続されて、ロータディスク102を形成することができる。任意の抵抗溶接法または他の方法を用いて、これらの導体108を所定の位置に固く固定する溶接部306を形成することができる。
【0028】
次に、図4Aを参照しながら、放射状磁束積層板型巻線404について詳細に説明する。1つの実施形態によれば、放射状積層板型巻線は、外側ロータまたはモータ構成部材402Aと、そして内側ロータまたはモータ構成部材402Bと、を含む。外側ロータ402A及び内側ロータ402Bはそれぞれ、上記ロータディスク群102と同様の方法で、積層アルミニウム板または他の積層導電材料板を利用して形成することができる。一旦、平板材から切り出され、そして積層されると、外側ロータ402A及び内側ロータ402Bをロール状に製造する、曲げる、またはその他として、公知の方法で成形して、この図に示す円筒形放射状磁束構造とし、この放射状磁束構造では、内側ロータ402Bを外側ロータ402Aの内部に入れ子状に配置する。この構造では、各ロータの導体408A及び408B(集合的に参照番号408で示す)は、他方のロータの対応する開口部410A及び410Bの内部に配置される。結果として得られる円筒形によって、これらの導体408を、巻線の半径方向軸に対して垂直な位置に位置決めすることができる。
【0029】
図4Bは、ロータとして構成される放射状磁束積層板型巻線404の切断線A−Aに沿って切断したときの断面図を示している。ステータの磁石群412を取り込んで、相互作用が導体群408を有する巻線の外側表面と磁石群412を有するステータとの間で働く様子を示している。放射状磁束積層板型巻線404が回転すると、これらの導体408は、これらの磁石412が形成する磁場の中を移動する。導体408A及び408Bは、対応する導体開口部群410の内部に配置されることにより、隣接する導体群408と略同一平面上に揃うので、巻線の導体領域は、高巻線密度の導線巻線が形成された状態で相対的に薄くなっている。これにより、磁場がこれらの導体を完全に突き抜けて、遠くまで届く必要がない。
【0030】
図5は、放射状磁束積層板型巻線504が、中心ハブ部に接続される2つの対向非導電性端部環状接続部材506を使用して形成される構成の別の実施形態を示している。個別の導体板群から成る交互積層型導体508A〜508C(集合的に参照番号508で示す)は、これらの端部接続部材506に架設され、各導体508は、これらの端部接続部材506の間の隙間を跨いで延在し、そして対向端部で、これらの端部接続部材506に接続される。本文における「conductor sheet(導体板)」という用語は、電気的に直列接続される全ての導体508を指す。例えば、この実施形態では、3つの導体板が、三相電力に対応して配設される。第1導体板は全ての導体508Aを含む。第2導体板は導体群508Bを含む。第3導体板は導体群508Cを含む。図5に示すように、これらの導体508は互いに、架設辺に沿って当接し、そしてこれらの導体板の間に挟まれて交互に並んでいる。例えば、導体508Aは導体508Cに、前面側の架設辺で当接し、そして導体508Bに、後面側の架設辺で当接する。導体508Bは同様にして、導体508Aに、前面側の架設辺で当接し、そして導体508Cに、後面側の架設辺で当接する。
【0031】
この実施形態によれば、導体群508は、電流を単一の架設方向に、端部接続部材506に位置する導体508の一方の側から導体508を通って、対向する端部接続部材506に位置する他方の側に誘導する。例示のために、導体群508に付される矢印は、電流が移動する方向を示している。端部接続部材群506の位置では、配線510は、これらの導体508を、同じ導体板の隣の導体508に電気的に接続する。図から分かるように、電流は右から左に向かって、第1導体508Aを通過する。電流は次に、端部接続部材506の位置の配線510を流れて隣の導体508Aに達し、この導体508Aでは、電流は導体を通って左から右に戻る方向に誘導されて対向する端部接続部材506に達する。電流は、所定の相において、導体板の1つの導体508を順方向に流れて当該導体板の隣の導体508に流れ込み、そして隣の導体508を逆方向に流れて、方向を交互に変える。
【0032】
この実施形態によれば、これらの導体508は、複数の材料積層体とすることができ、これらの積層体を積層して、渦電流制御スロット群512を、これらの板状積層体の間に形成して、ロータの高い回転速度により発生する渦電流を最小限に抑える。磁石群をこれらの導体508の外側に同心円状に配置して、磁束を半径方向内側に向かうように発生させる。これらの導体508の一部は、この磁束と軸方向に交差して、力をこれらの導体に外周方向に発生させることにより、トルクを生じる。電流は、中心ハブ部近傍のこれらの導体508にスリップリング群を介して送り込むことができる。3つの導体板が、導体508A,508B,及び508Cにそれぞれ対応して設けられるので、放射状磁束積層板型巻線504が磁束内を回転すると、三相電力システムを構成することができる。
【0033】
本明細書において記載される実施形態の鉄心無し構造とは、巻線インダクタンスが従来構造よりも大幅に小さい構造を指す。従って、エネルギーが鉄心モータに蓄積され、次にエネルギーを急激に転流により放出させるときに放出されるように、磁場が無くなると、エネルギーが、放電現象によってブラシに加わるということがない。その結果、スリップリングブラシの摩耗率が最小になり、そしてこれらのスリップリングの寿命が、従来の鉄心系よりも長くなる。インダクタンスはまた、トルクの初期変動に対して悪影響を及ぼすので、鉄心無しロータは、従来の鉄心ロータの場合よりも最大トルクにより高速に到達することができ、これは、モータの最大応答速度が重要になる用途において有利となる。また、アルミニウムロータは、密度が極めて低いので、当該ロータは、より重い銅または磁石を回転させる場合よりもずっと小さい回転慣性を持つことになる。
【0034】
次に、図6A〜6Cを参照しながら、別の放射状磁束積層板型巻線604について説明する。図6Aは、放射状磁束ロータの断面図を示しており、この場合、中心ハブ部(図示せず)に取り付けられる端部接続部材群606を使用して、導体板群602を所定の位置に放射状磁束構造になるように固く固定する。図6Bは、導体板群602の分解図を示している。図6A及び6Bから分かるように、この実施形態によれば、これらの導体板は、2つの基部側板材602A及び602Bを含み、これらの基部側板材は、巻線604が使用される特定の用途に応じて、所望の厚さに交互に積層される。
【0035】
図6Cから分かるように、これらの導体板は、導体板ペア608にして積層することができる。導体板ペア608は、導体板602A及び導体板602Bを含み、これらの導体板は、図2B及び2Cに関連して上に説明したロータディスク102A及び102Bと同じようにして積み重ねる。導体板602Aは、任意の数の平行導体602Aを有し、これらの導体602Aは、これらの遠端部分610の平面からずらし、かつ互いから離間させて、導体開口部群を形成する。導体板602Bは、導体板602Aと同様の構造であり、そして導体板602Aに、一方の端部で電気的に接続されて直列接続を形成する。嵌合して合体すると、導体板602A及び602Bは、導体板ペア608を形成する。任意の数の導体板ペア608を積層させ、そして直列に、溶接部群116を介して接続することにより、所望の巻線を形成することができる。
【0036】
次に、図7を参照しながら、鉄心無し積層板型巻線204/404を製造する例示的な手順700について以下に詳細に説明する。図7に示され、かつ本明細書において説明される操作よりも多くの操作、または少ない操作を実行することができることを理解されたい。更に、これらの操作は、本明細書において説明される順番とは異なる順番で実行することができる。手順700は、操作702から始まり、この操作702では、ロータディスク102のような適当な枚数のモータ構成板材をアルミニウム板または他の適切な導電材料板から切り出す。これらの板材は、ウォータージェット法または他の切断法を利用して切り出すことができる。これらのモータ構成板材は、単体の構成部材群として切り出すことができる、または外側リング群、内側リング群、及び導体群を含むことができ、これらの部材は別々に切り出され、そして上に説明した方法で組み合わせる。
【0037】
操作702から、手順700は操作704に進み、この操作704では、導体108/408のような導体群を切り出す、またはそれ以外の方法として、成形することができる。上に説明したように、導体開口部群は、モータ構成部材群から切り出して形成することにより、導体群を形成することができる、またはこれらの導体は、水平に積層する板材群302、または垂直に積層する板材群304を使用して形成することができる。これらの導体にはジョグル加工を、導体群を含むモータ構成板材群の一部にプレス加工、またはオフセット加工を施すことにより施して、結果として得られるモータ構成部材の導体表面112が略同一平面上に揃って、非常に連続性のある導体表面が得られるようにする。操作706では、渦電流制御スロット群118を、これらの導体の表面に切断により開口して、モータ構成部材群が高速回転している間の渦電流による損失を制御することができる。
【0038】
手順700は操作706から操作708に進み、この操作708では、モータ構成板材群を、結果として得られる巻線の所望の特性またはパラメータに従って積層し、そして電気的に直列接続してモータを構成する巻線を形成する。これらのモータ構成板材を当接表面の位置で陽極酸化する、またはその他の方法として、互いから電気的に絶縁することにより電流が、これらの板材を溶接して電気接続部を直列に形成する所望の箇所を除く板材群の間を流れるのを防止することができる。
【0039】
別のモータ構成部材を形成すべきかどうかについての判断を操作710で行なう。例えば、多数のロータディスク102を積層して、上に説明した積層板型巻線を形成することができる。同様に、外側ロータ402A及び内側ロータ402Bをそれぞれ形成し、そして入れ子状に配置して合体させることにより、積層板型巻線を形成することができる。更に別のモータ構成部材を操作710で形成する場合、手順700は操作702に戻り、そして上に説明したように進む。しかしながら、更に別のモータ構成部材群を操作710で形成しない場合、手順700は操作712に進み、この操作712では、モータ構成部材群を入れ子状に配置して、他の構成部材の対応する導体開口部群の内部に配置される1つの構成部材の導体群と合体させることにより、積層板型巻線を形成し、そして手順700は終了する。
【0040】
次に、図8を参照しながら、鉄心無し積層板型巻線504/604を製造する例示的な手順800について以下に詳細に説明する。手順800は、操作802から始まり、この操作802では、環状端部接続部材506/606を中心ハブ部に取り付ける、または中心ハブ部と一体的に形成する。上に説明したように、これらの端部接続部材は、非導電材料により形成される。電流を回転している積層板型巻線から静止回路に流すスリップリングまたは他の手段を中心ハブ部に取り付けることができる。
【0041】
操作802から、手順800は操作804に進み、この操作804では、導体508/602を、アルミニウムのような導電材料から切り出すことができる、またはその他の方法として、導体508/602は、アルミニウムのような導電材料により形成することができる。上に説明したように、導体群508は材料積層体群により形成され、これらの材料積層体を積層して、渦電流制御スロット群512を、これらの積層板材群の間に形成することにより、ロータの高い回転速度により生じる渦電流を最小限に抑えることができる。これらの導体602は板材から、導体群108について上に説明した方法と同様の方法で切り出すことができる。導体508/602はこれらの端部接続部材に、端部接続部材506/606の半径方向軸に対して垂直な方向に平行に並び、かつこれらの導体の架設辺に沿って互いに当接するように取り付けられる。
【0042】
手順800は操作804から操作806に進み、この操作806では、導体508/602を、電流が半径方向軸に対して垂直な架設方向に誘導されて、電流が各連続導体を流れる方向を交互に変えながら流れるように電気的に接続する。操作808では、別の相に対応する別の回路を積層板型巻線に追加すべきかどうかについての判断を行なう。追加すべきであると判断される場合、手順800は操作804に戻り、そして全ての導体板が追加されるまで継続する。一旦、適切な導体板群が取り付けられると、各相に対応する回路群を、操作810において、中心ハブ部の位置のスリップリングに電気的に接続し、そして手順800は終了する。
【0043】
上の開示から、本明細書において記載され、かつ以下の請求項に含まれるこれらの積層板型巻線は、調整用巻線よりも優れた利点を提供する。これらの巻線の内部の磁気空隙は、本明細書において記載される積層板型巻線を高密度に巻装することができるので低減される。より高密度に巻装することができるこれらの巻線は、堅牢であり、溶接して合体させることにより、高速動作に対する許容度を大きくすることができ、かつ接続部の信頼性を向上させることができる。本明細書において記載される巻線は、磁気吸着がロータとステータとの間に生じないので、容易に取り付け、そして取り替えることができ、そして利用される組み立て部材が、航空機または輸送手段用途に使用される場合に、従来の巻回コイルと比較して、衝撃時の利用価値をことのほか高めることができる。
【0044】
上に説明した主題は、例示としてのみ与えられ、そして本発明を限定するものとして捉えられるべきではない。図示され、かつ説明される例示的な実施形態及び応用形態に従うことなく、かつ以下の請求項に説明される本開示の真の思想及び範囲から逸脱しない範囲において、種々の変形及び変更を本明細書において説明される主題に加えることができる。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8