(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
2つの視線方向が関連付けられており、前記第1の眼に関する一方の視線方向及び前記第2の眼に関する他方の視線方向が、所与の物体を見ることに関連付けられており、且つ、前記一対のレンズのうちの前記第1のレンズ用の前記中間光学関数(OFi1)及び前記一対のレンズのうちの前記第2のレンズ用の前記中間光学関数(OFi2)が光学的基準値を有し、前記変換式(T2)は、前記一対のレンズのうちの前記第2のレンズ用の前記中間光学関数(OFi2)が、関連する視線方向それぞれに関して、前記一対のレンズのうちの前記第1のレンズ用の前記中間光学関数(OFi1)と同じ光学的基準値を有するようになっている、請求項3に記載の方法。
請求項9による方法を実施するように適合されている、眼科用の一対のレンズを製造するための1組の装置(333)であって、前記1組の装置は、データ処理装置を備え、前記データ処理装置は、
− 中央処理装置(90);
− 前記中間光学関数(OFi2)を含むためのRAMメモリー(96);
− 前記眼及び前記目標光学関数(OFT1,OFT2)とに関するデータを含むためのROMメモリー(94);及び、
− 入力/出力装置(98);
を備える、1組の装置(333)。
プロセッサーでアクセス可能であり、かつ、前記プロセッサーによる実行時、前記プロセッサーに、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法のステップを実行させる、1つ以上の記憶された一連の命令を含む、コンピュータプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図面の要素は、簡潔かつ明瞭に示され、かつ必ずしも縮尺通りではないことが認められ得る。例えば、図面の要素の一部の寸法は、他の要素に対して拡大され、本発明の実施形態の理解を深めるのに役立つ。
【0025】
特定の特徴を有する一対のレンズ用の目標光学関数を生成する方法を提案する。この方法は、両眼視を改善させることができる。この両眼視性能の改善は、目標光学関数間の対称性が良好であることによって説明され得るだけでなく、目標光学関数が完全に対称的であるときにも存在する。説明の残りの部分では、対称性が完全でない場合でも、2つの目標光学関数のうちの少なくとも一方を生成するために両眼に関するデータを考慮すると、本発明による方法によって良好な両眼視性能が得られるという考え方で、対称性に焦点を合わせる。これは、装用者の快適性を改善させる。実際に、装用者は、装用者の自然な両眼挙動に適合した一対のレンズを与えられる。
【0026】
公知の通り、複合面(complex surface)上の任意の点における平均球面SPHは、式:
【数1】
(式中、R
1及びR
2は、メートルで表される局所的な最大及び最小曲率半径であり、及びnは、レンズの構成材料の屈折率である)
によって定義される。
【0027】
円柱面Cも式:
【数2】
によって定義される。
【0028】
レンズの複合面の特性は、局所的な平均球面及び円柱面によって表され得る。
【0029】
さらに、累進多焦点レンズはまた、レンズを装用する人の状況を考慮した光学特性によって定義され得る。
【0030】
図2及び
図3は、眼及びレンズの光学系を示す図であり、それゆえ、説明で使用される定義を示す。より正確には、
図2は、視線方向を規定するために使用されるパラメータα及びβを示す、そのような系の斜視図を表す。
図3は、装用者の頭の前後軸に平行かつパラメータβが0に等しいときに眼の回転の中心を通過する垂直面の図である。
【0031】
眼の回転の中心にはQ’を付す。
図2に一点鎖線で示す軸Q’F’は、眼の回転の中心を通りかつ装用者の前に延在する水平軸すなわち横軸である−すなわち軸Q’F’は主視線視野(primary gaze view)に対応する。この軸は、眼鏡屋がレンズをフレーム内に位置決めできるようにするためにレンズ上に存在するフィッティングクロス(fitting cross)と呼ばれる点で、レンズの複合面と交差する。レンズの後面と軸Q’F’との交差点は点Oである。中心Q’、及び半径q’の頂点球面(apex sphere)は、レンズの後面に横軸の交差点において接している。例としては、半径q’の値25.5mmは通常値に対応し、かつレンズ装用時に満足のいく結果をもたらす。
【0032】
図4に実線で示す所与の視線方向は、Q’の周りで回転した眼の位置、及び頂点球面の点Jに対応する;角度βは、軸Q’F’と、この軸Q’F’を含む水平面上への直線Q’Jの投影線との間に形成された角度である;この角度は、
図3の図に表す。角度αは、軸Q’Jと、軸Q’F’を含む水平面上の直線Q’Jの投影線との間に形成された角度である;この角度を
図2及び
図3の図に表す。それゆえ、所与の視線視野は、頂点球面の点J又は一対の角度(α,β)に対応する。下向きの視線角(lowering gaze angle)の値が正であるほど、視線は下がっており、及び値が負であるほど、視線は上がっている。
【0033】
所与の視線方向(viewing direction)において、物体空間における、所与の物体距離に配置された点Mの像は、回転面の場合にサジタル焦点距離及び接線焦点距離である、最小及び最大距離JS及びJTに対応する2つの点SとTとの間に形成される。物体空間における無限遠点の像は、光軸上の点F’に形成される。距離Dは、レンズの後側正面(rear frontal plane)に対応する。
【0034】
エルゴラマは、各視線方向の物点の通常の距離に関連する関数である。一般に、主視線方向の遠方視では、物点は無限遠である。鼻側に向かって、絶対値において約35度の角度α及び約5度の角度βに実質的に対応する方向の近方視では、物体距離は、30〜50cm程度である。エルゴラマの考えられる定義に関する詳細は、米国特許第A−6,318,859号明細書を考慮し得る。この文献は、エルゴラマ、その定義、及びそのモデリング方法について説明している。本発明の方法に関し、物点は無限遠であってもそうでなくてもよい。エルゴラマは、装用者の屈折異常の関数とし得る。
【0035】
これらの要素を使用して、各視線方向における装用者の屈折力及び乱視を規定することが可能である。エルゴラマによって与えられる物体距離にある物点Mは、視線方向(α,β)が考慮される。近接物体(object proximity)ProxOは、物体空間における対応する光線上の点Mに関して、点Mと頂点球面の点Jとの間の距離MJの逆数として定義される:
ProxO=1/MJ
【0036】
これにより、頂点球面の全点に対し薄肉レンズ近似(thin lens approximation)内の近接物体が計算できるようになり、これは、エルゴラマの決定に使用される。実際のレンズの場合、近接物体は、対応する光線上の物点とレンズの前面との間の距離の逆数とみなし得る。
【0037】
同じ視線方向(α,β)の場合、所与の近接物体を有する点Mの像は、最小及び最大焦点距離にそれぞれ対応する2つの点SとTとの間に形成される(回転面の場合のサジタル焦点距離及び接線焦点距離である)。量ProxIは、点Mの近接像と呼ばれる:
【数3】
【0038】
それゆえ、薄肉レンズの場合と同様に、所与の視線方向に関して、及び所与の近接物体、すなわち対応する光線上の物体空間の点に関して、屈折力Puiは、近接像と近接物体の和であると定義できる:
Pui=ProxO+ProxI
【0039】
同じように示すと、乱視Astは、各視線方向及び所与の近接物体に対して以下のように定義される:
【数4】
【0040】
この定義は、レンズによって生じた光線ビームの非点収差(乱視)に対応する。定義は、主視線方向において、伝統的な値の乱視を与えることに気づくことができる。通常、軸と呼ばれる乱視(非点収差)角度は、角度γである。角度γは、眼に関係しているフレーム{Q’,x
m,y
m,z
m}において測定される。これは、平面{Q’,z
m,y
m}における方向z
mに対して使用される取り決めに依存して像S又はTが形成される角度に対応する。
【0041】
それゆえ、装用条件におけるレンズの屈折力及び乱視の考えられる定義は、B.Bourdoncleらによる「Ray tracing through progressive ophthalmic lenses」、1990 International Lens Design Conference, D.T. Moore ed., Proc. Soc. Photo. Opt. Instrum. Eng.の論文に説明されているように計算できる。標準的な装用条件は、特に、装用時前傾角(pantoscopic angle)−8°、レンズ−眼の距離12mm、及びそり角(wrap angle)0°によって定義される、標準的な装用者の眼に対するレンズの位置と理解される。装用時前傾角は、通常水平となるように取られる、第一眼位における眼鏡レンズの光軸と眼の視軸との間の垂直面内における角度である。そり角は、眼鏡レンズの光軸と、通常水平となるように取られる、第一眼位における眼の視軸との間の水平面内における角度である。他の条件を使用してもよい。装用条件は、所与のレンズに対する光線追跡プログラムから計算し得る。さらに、屈折力及び乱視は、処方が、遠方視に対する、及び装用条件で眼鏡を装用する装用者に対する基準点において満たされるか、又はフロントフォコメータ(frontofocometer)によって測定されるかのいずれかとなるように、計算され得る。
【0042】
図4は、パラメータα及びβの値がゼロでない場合の配置を示す斜視図である。それゆえ、眼の回転効果は、固定フレーム{x,y,z}、及び眼に関係しているフレーム{x
m,y
m,z
m}を与えることによって説明できる。フレーム{x,y,z}は点Q’をその起点とする。軸xは、軸Q’Oであり、及びレンズから眼の方へ向けられている。y軸は垂直であり、かつ上方に向けられている。z軸は、フレーム{x,y,z}が正規直交となりかつ直線であるようになっている。フレーム{x
m,y
m,z
m}は、眼に関係しており、その中心は点Q’である。x
m軸は、視線方向JQ’に対応する。それゆえ、主視線方向に関して、2つのフレーム{x,y,z}及び{x
m,y
m,z
m}は同じである。
【0043】
レンズの特性は、いくつかの異なる方法で、特に光学的に表現し得ることが公知である。光学的な観点において、値は視線方向で表し得る。視線方向は、通常、それらの下向きの度合い、及び眼の回転の中心を起点とするフレームにおける方位によって与えられる。レンズが眼の前に装着されるとき、フィッティングクロスと呼ばれる点は、瞳孔、又は主視線方向に対して眼の回転の中心の前に置かれる。主視線方向は、装用者が真っ直ぐ前を見ている状況に対応する。それゆえ、選択したフレームでは、フィッティングクロスは、下向き角度0°及び方位角度0°によって、与えられる。
【0044】
眼科用の一対のレンズに対して目標光学関数を決定する方法を提案する。これに関連して、この方法は、
図5に示すものなどの眼科用の一対のレンズの光学的最適化方法において実行されることを理解されたい。この方法は、初期の一対のレンズを選択するステップ16を含む。目標光学関数は、以下説明するものを決定する方法によって決定される。これは、第1の眼用の目標光学関数を得ること、及び第2の眼用の目標光学関数を得ることを可能にするステップ18を構成する。次いで、各レンズは、
図1の伝統的な光学的最適化方法、又は欧州特許出願公開第A−1752815号明細書に説明されているような方法におけるように、それぞれの目標光学関数を考慮に入れて個別に最適化される。それゆえ、
図5の方法は、現在のレンズを定義するステップ20及び26を含み、光学関数が、一対の現在のレンズの各レンズに関連付けられ、まず、現在の一対のレンズが、初期の一対のレンズであると定義される。ステップ20及び26の後に、コスト関数を用いて現在の光学関数と目標光学関数との間の差を最小限にするための光学的最適化を実施するステップ22及び28がそれぞれ続く。コスト関数は、2つの光学関数間の距離を表す数学的な量である。最適化において好まれる光学的基準に従う異なる方法で表すことができる。
【0045】
本発明では、「最適化を実施する」は、好ましくはコスト関数を「最小にする」と理解されたい。当然ながら、当業者には、本発明は、正確な意味では最小にすることに限定されないことを理解されたい。最適化はまた、当業者が考えるコスト関数の表現によれば実関数の最大化ともし得る。すなわち、実関数を「最大にする」ことは、その反対のものを「最小にする」ことに等しい。
【0046】
本発明による目標光学関数の決定方法と組み合わせて使用される、そのような眼科用の一対のレンズの光学的最適化方法は、2つの視線方向の各々に同じ光学性能を有する最適化されたレンズを得ることができるようにし、第1の眼に関する一方の視線方向、及び第2の眼に関する他方の視線方向は、所与の物体を見るために協働する。実際、各眼の処方が異なるときでも、本発明による目標光学関数の決定方法により、対称性が改善された目標光学関数を得ることを可能にすることが明らかである。それゆえ、最適化されたレンズは、両眼特性が向上しており、それにより、装用者の快適性が増す。
【0047】
さらに、
図5による最適化方法が、2つの単眼最適化として提示される場合、両眼最適化などの他の可能性が考慮され得る。両眼最適化は、一対のレンズの2つのレンズの同時最適化である。
【0048】
ここで、本発明による目標光学関数の決定方法の異なる実施形態を説明する。
【0049】
図6は、目標光学関数を決定する方法の例示的な実施形態を実施するフローチャートを示す。決定方法は、少なくとも第1の眼に関するデータに基づいて一対のレンズのうちの第1のレンズ用に第1の目標光学関数を生成するステップ34を含む。第1の目標光学関数には、以下OFT1を付す。第1の眼に関するデータは、
図6のフローチャートのボックス32に概略的に示す。そのようなデータは、第1の眼の処方データ(球面とも呼ばれる処方されたパワー、円柱面とも呼ばれる処方された乱視(値及び軸)、処方されたプリズム(値及び向き))に関係する単眼データから導き出されたデータ、又は、処方データの組み合わせ(例えば平均パワーは、平均球面S=処方されたパワー+処方された乱視/2とも呼ばれる)、眼の高次収差レベルに関係する単眼データ、眼の生体計測に関係するデータ、例えば眼の回転中心の位置、角膜の位置、瞳孔の位置、瞳孔の直径、及び2つの眼の両眼挙動の情報を与えかつ利き眼(main eye)を決定できるようにする両眼データなどとし得る。利き眼は:優位眼(dominant eye)、観察眼(sighting eye)、最高視力眼、好ましい眼、最高又は最低レベルの高次収差を有する眼、最高又は最小感度(ぼけ感度、コントラスト感度..)である眼である。用語「眼球優位性」は、例えば、Dictionary of visual science, 4eme edition. D Cline, HW Hofstetter, JR Griffinに定義されている。用語「視力」は、眼内の網膜の焦点の鮮明さ、及び脳の解釈能力の感度に依存する、視覚の鋭敏性又は明瞭性を指す。用語「ぼけ感度」は、眼の前で起こる焦点ぼけによって生じた鋭敏性の損失を表す。用語「コントラスト感度」は、コントラストを検出する能力を指す。コントラスト感度は、最小検出コントラストを測定することによって決定される。最小検出コントラストを測定するが、通常示されるものは反対(逆)のもの、すなわちコントラスト感度である。
【0050】
決定方法は、さらに、少なくとも第1の眼に関するデータに基づいて、一対のレンズのうちの第2のレンズ用の第2の目標光学関数を生成するステップ36をさらに含む。第2の目標光学関数には、以下OFT2を付す。使用される第1の眼に関するデータは、第1の目標光学関数の生成ステップにおいて使用される第1の眼に関するデータと同じでも又は異なってもよい。
【0051】
この方法を実行すると、その結果として2つの目標光学関数OFT1及びOFT2が得られる。これは、第1のレンズ用の第1の目標光学関数OFT1、及び第2のレンズ用の第2の目標光学関数OFT2にそれぞれ対応する、
図6の結果ボックス38及び40に概略的に示す。この方法は、対称性が改善された、目標光学関数を得ることを可能にする。これに関連して、対称性の改善は、2つの視線方向の光学性能がより近くなることを意味する。それゆえ、光学的最適化方法において目標光学関数を使用するとき、両眼特性の改善されたレンズを得ることができる。それゆえ、一対のレンズの装用者の快適性も改善される。
【0052】
図6の方法の例によれば、第2の目標光学関数OFT2の生成ステップ36は、さらに、いくつかのステップを含み得る。それゆえ、生成ステップ36は、第1の光学関数の変換式に基づいて第2の中間光学関数を生じるステップ42を含む。第2の中間光学関数は、用語「目標」に至らない中間であると認められる。具体的には、光学関数に関連付けられる用語「中間」は、光学関数が、目標光学関数として使用されるものではないことを意味する。ほとんどの場合、中間光学関数は、目標光学関数の決定方法を実施するときに表れる、計算された関数にすぎず、そのような方法の結果ではない。
【0053】
本出願人らが、説明の残りの部分で第2の中間光学関数にOFi2及び変換式にT1を付す場合、第2の中間光学関数OFi2と第1の目標光学関数OFT1との間の数学的関係を以下の通り表すことができる:
OFi2=T1(OFT1)
【0054】
第1の目標光学関数OFT1の変換式T1は、任意の適切な関数とし得る。変換式T1は、第1の目標光学関数OFT1の任意の光学的基準に適用し得る。本発明の関連では、及び説明の残りの部分全体にわたって、用語「光学的基準」は、用語「目標光学関数」に関して使用される場合、所与の視線方向に対する光学的基準の評価の結果である光学的な量(光学的基準値)であると理解されたい。光学的基準の例として、パワー及び乱視を挙げることができる。光学的基準についてのさらなる詳細(定義及び評価)は、EPOに2009年10月7日に出願された同時係属特許出願、欧州特許第090305949号明細書に見出すことができる。この変換式T1は、第1の光学関数OFT1のいくつかの光学的基準を同時に修正し得る。
【0055】
多くの場合、変換式T1は、全視線方向に適用される。しかしながら、変換式T1は、限られた数の視線方向にのみ適用し得る。例えば、変換式T1は、視野中心域にのみ又は視野周辺域にのみ適用され得る。これにより、計算を容易にできる。
【0056】
変換式T1は、様々な種類の関数、特に線形関数及び非線形関数とし得る。シフト変換式及び相似変換式が線形関数の例である一方、平方根関数又は平方関数が、考えられる非線形関数を表す。
【0057】
さらに、変換式T1は、考慮される光学的基準によって変動し得る。例えば、変換式T1は、パワー(シフト)の特定の関数とし、別の変換式は、残存非点収差(恒等変換式)とし得る。
【0058】
特に、変換式T1は、装用者の2つの眼の回転中心を結ぶ線に垂直な平面に対して対称的とし得る。例えば、この平面は、2つの眼の回転中心を結ぶセグメントの中心を通過する平面である。2つの眼とそれらの対応するレンズ46及び48とを線図で示す
図7を参照すると、この平面は参照符号50によって、かつ2つの眼の回転中心の中間点は参照符号OCによって示してあり、それゆえ、平面は、それぞれOG及びODで示した各眼の回転中心によって形成されるセグメントの正中面に対応する。さらに、点OCの位置は、装用者のデータに従って個人化できる。
【0059】
図8は、T1が、装用者の2つの眼の回転中心を結びかつOCを通過する線に垂直な平面に対して対称性を有する変換式であるときの、変換式T1の効果を説明する線図である。
図8は、2つの点A及びA’を示しており、A’は変換式T1による像である。
【0060】
Aは、第1の眼の下向きの角度α1及び方位角度β1の視線方向に対応する。
図8の例によれば、第1の眼は右眼であり、及び説明では、右眼は、例において第1の眼であるとみなされるが、左眼も第1の眼とし得ることに留意する。この視線方向では、C
1A、...C
NAで示す光学的基準は、第1の目標光学関数OFT1に対して計算し得る。同様に、A’は、第1の眼の下向きの角度α2及び方位角度β2の視線方向に対応する。
図8の例によれば、第2の眼は左眼である。この視線方向では、C’
1A...C’
NAで示す光学的基準は、第2の中間光学関数OFi2に対して計算し得る。
【0061】
A及びA’が、装用者の2つの眼の回転中心を結びかつOCを通過する線に垂直な平面に対して対称的であるとき、それらの各角度間の以下の関係は、以下の通り定義できる:
α1=α2
β1=−β2。
【0062】
図面を読みやすくするために、
図8では、予め、変換式T1における対応する視線方向は、この場合には、反対方向の方位角度及び同じ下向きの角度を有することを考慮する。
【0063】
さらに、異なる光学的基準間の関係もある:それらは等しい。これは、1〜Nに含まれる全整数iに関して数学的に表すことができる、C
i=C’
i。
【0064】
変換式はまた、所与の物体に対する、一対を形成する各視線方向が、関連するそれらの目標光学関数に関して同一の光学性能を確実に有するようにする変換式T1とし得る。同じ考えを定式化する別の方法は、以下の通りである:所与の物体に対する、1つは第1の眼及び1つは第2の眼の2つの視線方向を、各関連付けられた視線方向に対して、第1の眼用の目標光学関数の光学的基準に関連付けることによって変換式が、前記基準値が第2の眼用の目標光学関数に対しても確実に同じであるようにする。
【0065】
図9は、この考えをより具体的に示す:視線方向56及び60は、一対の点Pを形成する。説明の変換式T1の例によれば、これらの点は1対1の像で対応する。さらに、第1のレンズの光学関数の光学的基準値と、これらの方向の第2のレンズ用の中間光学関数とがリンクしてもいる:それらは等しい。これは、所与の物体に対して、及び1〜Nに含まれる各整数iに対して、変換式T1によってリンクされている全対の視線方向に関して数学的に表すことができる、C
i=C’
i。
【0066】
図6による方法では、生成ステップ36はまた、第2の眼の処方データに基づく第2の中間光学関数OFi2の修正ステップ44を含む。処方の一部のみ、例えば平均球面のみが考慮される場合、処方の満足度は部分的となり得る。
【0067】
修正ステップは、第2の中間光学関数OFi2に修正関数を適用することによって実施され得る。この修正関数は、以下f2
modificationで示す。第2の中間光学関数OFi2と第2の光学関数OFT2との関係は、数学的に以下の通り表すことができる:
OFT2=f2
modification(OFi2)
【0068】
修正関数f2
modificationは、第2の中間光学関数OFi2の任意の光学的基準に適用し得る。例として、パワー及び残存非点収差を挙げることができる。この修正関数f2
modificationは、第2の中間光学関数OFi2のいくつかの光学的基準を同時に修正し得る。
【0069】
多くの場合、修正関数f2
modificationは、全視線方向に適用され得る。しかしながら、修正関数f2
modificationは、限られた数の視線方向にのみ適用し得る。例えば、修正関数f2
modificationは、視野中心域又は視野周辺域にのみ適用され得る。この場合、計算は簡単であり、それにより、この方法の実施は迅速となる。
【0070】
修正関数f2
modificationは、様々な種類の関数、特に線形関数及び非線形関数とし得る。シフト及び相似変換式は線形関数の例である一方、平方根又は平方関数は、考えられる非線形関数を示す。シフトは、興味深い変換式である。なぜなら、それらは、光学関数の不備の保存を可能にする一方、所望の処方を得ることができるようにする特性を有するためである。これは、特にパワーのシフトに当てはまる。相似変換式は、考慮される累進レンズのパワープロファイルを修正するときに好都合とし得る。
【0071】
さらに、修正関数f2
modificationは、考慮される光学的基準に従って変化し得る。例えば、修正関数f2
modificationは、パワー(シフト)のための特定の関数及び残存非点収差(恒等変換式)のための別の関数とし得る。
【0072】
それゆえ、
図6のフローチャートによる方法により、対称性が改善された目標光学関数が得られる。それゆえ、光学的最適化方法において目標光学関数を使用するとき、両眼特性が改善された一対のレンズを得ることができる。それゆえ、一対のレンズの装用者の快適性が改善される。
【0073】
一対のレンズのための光学関数を生成する方法は、より複雑とし得る。これは、
図10のフローチャートを参照して説明する方法の場合である。
図6と同じ参照符号が、関連のある部分で使用される。
【0074】
第1の目標光学関数OFT1の生成ステップ34は、いくつかのステップを含み得る。それゆえ、生成ステップ34は、第1の眼に関係するデータに基づく第1の中間光学関数を生じるステップ62を含む。第1の中間光学関数を、以下OFi1で示す。
【0075】
例えば、生成ステップ62は、遠方視のパワーの処方S
first eye−ΔS/2に好適な光学関数を生じることによって実施され得、式中、量S
first eyeは、第1の眼の処方に関するデータによって計算された平均パワーであり、及びΔSは、第1の眼の処方に関するデータによって計算された平均パワーと、第2の眼の処方のデータによって計算された平均パワーとの差に対応する。これは、ΔS=S
first eye−S
second eyeと数学的に表すことができる。このように生成された光学関数は、全ての所与の視線方向にわたる全ての光学的基準値の、(遠方視におけるパワーの処方S
first eye−ΔS/2に対する)最良の分布を与える。考慮できる光学的基準は、例えば、屈折力P
intermediate(α,β)及び乱視A
intermediate(α,β)である。
【0076】
図10による方法では、生成ステップ34はまた、第1の眼の処方データに基づく第1の中間光学関数OFi1の修正ステップ64を含む。
【0077】
修正ステップ64は、第1の中間光学関数OFi1に適用される修正関数によって実行され得る。この修正関数は、以下f1
modificationで示す。第1の中間光学関数OFi1と第2の光学関数OFT1との間の関係は、以下の通り数学的に表すことができる:
OFT1=f1
modification(OFi1)
【0078】
この関数f1
modificationは、上述の関数f2
modificationと同じ特性を有し得る。
【0079】
生成ステップ62により、パワーの処方S
first eye−ΔS/2に好適な光学関数を得ることができるようにするとき、修正ステップ64において使用される関数f1
modificationは、屈折力基準での全視線方向に関して一定のシフトとし得る。各視線方向に関し、屈折力基準は、以下の通り計算される:P(α,β)=P
intermediate(α,β)+ΔS/2。
【0080】
図10の方法によれば、第2の目標光学関数OFT2の生成ステップ36も、いくつかのステップを含み得る。それゆえ、生成ステップ36は、第1の中間光学関数の変換式に基づいて第2の中間光学関数を生じるステップ66を含む。本出願人らが、説明の残りの部分で第2の中間光学関数をOFi2で、及び変換式をT2で示す場合、第2の中間光学関数OFi2と第1の中間光学関数OFi1との数学的関係は、以下の通り表すことができる:
OFi2=T2(OFi1)
【0081】
第1の中間光学関数の変換式T2は、上述の変換式T1と同じ特性を有し得る。特に、パワーの処方S
first eye−ΔS/2に好適な光学関数を生じさせる例の場合には、変換式T2は、装用者の2つの眼の回転中心を結びかつ例えば2つの眼の回転中心を結ぶセグメントの中心を通る線に垂直な平面に対して対称とし得る。
【0082】
図10による方法では、生成ステップ36はまた、第2の眼の処方データに基づく第2の中間光学関数OFi2の修正ステップ44を含む。従って、ここでも、第2の中間光学関数OFi2と第2の光学関数OFT2との関係を、以下の通り数学的に表すことができる:
OFT2=f2
modification(OFi2)
【0083】
パワーの処方S
first eye−ΔS/2に好適な光学関数を生じる例の場合には、修正関数f2
modificationは、各視線方向に対するパワーを量−ΔS/2だけ、すなわちS
second eye−S
first eyeを2で割った量だけの、一定のシフトとし得る。
【0084】
方法を実施するとき、その結果として2つの目標光学関数OFT1及びOFT2が得られる。これを、
図10の結果ボックス38及び40に概略的に示し、これらは、第1のレンズ用の第1の目標光学関数OFT1、及び第2のレンズ用の第2の目標光学関数OFT2にそれぞれ対応する。この方法によって、対称性の改善された光学関数を得ることができる。それゆえ、光学的最適化方法において、目標光学関数を使用するとき、両眼特性が改善されたレンズを得ることができる。それゆえ、一対のレンズの装用者の快適性が改善される。
【0085】
2つの眼に関するいくつかのデータが他のデータよりもより関連性があることを考慮に入れるために、
図10のフローチャートによる方法は、より複雑とし得る。
図11のフローチャートは、方法のそのような例を示す。
【0086】
図10の方法と比較して、第1の中間関数OFi1の生成ステップをより詳細に示す。この方法は、2組の光学的基準を定義するステップ68を含む。第1の組は、第1の眼に関するデータを用いて計算される。光学的基準値を、{V1(α,β),...,VN(α,β)}
first eyeで示す。第2の組は、第2の眼に関するデータを用いて計算する。光学的基準値を、{V1(α’,β’),...,VN(α’,β’)}
second eyeで示す。例えば、V1は屈折力の基準であり、及びV2は乱視(非点収差)の基準である。2組の光学的基準値は、同じ数の光学的基準を有し、その数を、以下Nで示す。
【0087】
図11による方法は、さらに、第1の組の光学的基準{V1(α,β),...,VN(α,β)}
first eyeと第2の組の光学的基準{V1(α’,β’),...,VN(α’,β’)}
second eyeとの2つの光学的基準値Viの各々の間の2つの眼のデータに基づいて、重み係数γiを決定するステップ70を含む。重み係数γiは、例えば、両眼視における各眼の役割を表し得る。
【0088】
係数γiは、例えば、単眼データから取ってもよい。例えば、最も重要な眼が最低の処方である眼である場合、及びこの眼が第1の眼である場合、γiは1に等しいとし得る。これにより、両眼視において最も重要な役割を果たし得る第1の眼の光学性能に好都合にできる。
【0089】
係数γiはまた、上記で引用した生体計測又は両眼データから取ってもよい。例えば、最も重要な眼が優位眼である眼である場合、及びこの眼が第1の眼である場合、γiは1に等しいとし得る。これにより、両眼視において最も重要な役割を果たし得る優位眼の光学性能に好都合にできる。
【0090】
図11による方法はまた、第1の中間光学関数OFi1を構成する、W1,...,WNで示す1組の光学的基準を計算するステップ72を含む。1組の光学的基準W1,...,WNの光学的基準の数Nは、1組のデータV1,...,VNのデータの数Nに対応する。1組の光学的基準W1,...,WNは、両眼に関する2組の光学的基準V1,...,VNの全ての光学的基準Viの値に演算子Oを適用することによって得られる。換言すると、これは以下の通り数学的に表すことができる:
(W1;....;Wn)=O(V1_first eye,V1_second eye,...VN_first eye,VN_second eye)
【0091】
図11の実施形態の具体的な事例では、演算子Oは、考慮される眼の光学的基準と重み係数γiの積に対し、1及び重み係数の差に、他方の眼との間の光学的基準を乗算した積を加算して計算する。換言すると、これは、1〜Nのiに関して、以下の通り数学的に表すことができる:
Wi(α,β)=γi Vi(α,β)
first eye+(1−γi)Vi(α’,β’)
second eye
式中、(α,β)及び(α’,β’)は、対応する視線方向である(例えば、対応する視線方向は、上記で定義した又は所与の物体を見られるようにする2つの視線方向のための以下の対称α’=α、β=−β’を用いて定義された2つの視線方向とし得る)。
【0092】
それゆえ、第1の中間光学関数OFi1は、特定の基準に対する両眼の挙動を表すパラメータを考慮する。このために、第1の中間光学関数OFi1は、装用者により良好に適合される。第1の目標光学関数OFT1及び第2の目標光学関数OFT2が、多かれ少なかれ、第1の中間光学関数OFi1の式から直接推定されるため、第1の目標光学関数OFT1及び第2の目標光学関数OFT2も、装用者により良好に適合される。これは、他の決定方法に関しては、目標光学関数の対称性が改善されることに追加される改善点である。それゆえ、光学的最適化方法において目標光学関数を使用するとき、両眼特性が改善されたレンズを得ることができる。それゆえ、一対のレンズの装用者の快適性が改善される。
【0093】
この方法の具体例は、考慮されるデータViが屈折力でありかつγi=1/2である場合については、既に説明した。この例は、
図10について説明した。なぜなら、この値は同じレベルの両眼に対応するために、ほとんどの場合、γiは1/2とは異なるためである。
【0094】
別の例を
図12で説明する。この場合、選択したデータViは同様にパワーであるが、今回は、γi=1である。これは、第1の眼が利き眼であることを意味する。この具体的な事例では、第1の目標光学関数OFT1は、第1の眼に処方されたパワー(球面S
first eyeである)に対応するパワーに対して生成される。さらに、T1は、装用者の2つの光学的な回転中心を結びかつ例えば2つの眼の回転中心を結ぶセグメントの中心を通過する線に垂直な平面に対して対称的であり、及び関数f2
modificationは、上記の量ΔSだけのパワーのシフトを与える。この具体的な方法によって、第1の眼が利き眼である装用者に適合される第1及び第2の目標光学関数を得ることができる。
【0095】
既に説明した本発明による目標光学関数の決定方法の様々な実施形態の全ては、一対のレンズのうちの第1のレンズ用の第1の目標光学関数の生成ステップが、少なくとも第1の眼に関するデータに基づいていることが共通している。しかしながら、これらの方法は、追加的なデータを考慮することによって、装用者の特定の要求により良好に適合された結果をもたらすことができる。関連性がある場合には同様の参照符号を付す。
【0096】
特に、
図13の方法によれば、第1の目標光学関数OFT1の生成ステップ34、ならびに第2の目標光学関数OFT2の生成ステップ36も、第2の眼に関するデータに基づいている。第2の眼に関するデータは、第1の眼に定義されたものと同じ種類のデータとし得る。
【0097】
この方法では、第1の目標光学関数OFT1の生成ステップ34、ならびに第2の目標光学関数OFT2の生成ステップ36は、第1及び第2の眼に関するデータを考慮する。
図13のボックス76は、この依存性を概略的に示す。
【0098】
両眼視性能を改善することに加えて、
図13による方法は、装用者により良好に適合された、目標光学関数を提供する。なぜなら、装用者特有の視力の問題に関するより多くのデータを考慮しているためである。
【0099】
図14のフローチャートは、
図13に従う実施形態の例を示す。第1の目標光学関数OFT1の生成ステップ34は、第1の中間光学関数を生成するステップ62を含む。このステップ62は、第1の計算された組の光学的基準{W1,...,WN}
first eyeに基づいて第1の中間光学関数OFi1を生成する。1組の光学的基準W1,...,WNは、第1の眼に関する演算子O
first eyeを、第1の眼及び第2の眼に関するデータに適用することによって得られる。明白にするために、第1の計算された組の光学的基準及び演算子O
first eyeは、
図14では説明されていない。光学的基準W1,...,WNは、前述したものと同じ特性を有する。演算子O
first eyeを以下説明する。
【0100】
生成ステップ34は、さらに、第1の眼の処方データに基づく第1の中間光学関数OFi1の修正ステップ64を含む。このステップは、上述の修正関数f1
modificationを用いて実施できる。
【0101】
第2の目標光学関数OFT2の生成ステップ44は、第2の計算された組の光学的基準{Wl,...,WN}
second eyeに基づいて第2の中間光学関数OFi2を生じるステップ66を含む。第2の組の光学的基準{W1,...,WN}
second eyeは、第2の眼に関する演算子O
second eyeを、第2の眼及び第1の眼に関するデータに適用することによって得られる。第1の眼の場合と同様に、第2の計算された組の光学的基準及び演算子O
second eyeは、
図14では説明されていない。第1の眼に関する演算子O
first eye及び第2の眼に関する演算子O
second eyeは、任意の演算子とし、「対応する演算子」であることの特性を有する。この用語「対応する演算子」は、第1の眼及び第2の眼に関する演算子O
first eyeと表現されるとき、演算子O
second eyeが、第1の眼と第2の眼の役割が交換されても、同じであることを意味する。換言すると、これは数学的に以下を意味する:
O
first eye(第1の眼に関するデータ、第2の眼に関するデータ)
=O
second eye(第2の眼に関するデータ、第1の眼に関するデータ)
【0102】
例として、平均パワー処方S
one eyeが与えられている第1の眼に関して、考慮される中間光学関数が、平均パワー処方S
one eye−ΔS/2に好適である場合、及び平均パワー処方S
other eyeを有する第2の眼に関して、考慮される中間光学関数が、平均パワー処方S
other eye+ΔS/2に対して好適である場合、ステップ62及びステップ66において使用される演算子は、対応する演算子である。なぜなら、2つの中間光学関数は、平均パワー処方:S
one eye−ΔS/2及びS
other eye+ΔS/2のおかげで生じるためである。
【0103】
第1の眼に関する演算子と、第2の眼に関する演算子とのこの対応を用いて、
図14のフローチャートによるこの方法は、同様の規則が両眼に適用される限り並列法と認められ得る。
【0104】
生成ステップ36は、さらに、第2の眼の処方データに基づく第2の中間光学関数OFi2の修正ステップ44を含む。このステップ44は、上述の修正関数f2
modificationを用いて実施できる。
【0105】
方法を実施後に得られた、目標光学関数OFT1及びOFT2は、対称性が改善されている。それゆえ、光学的最適化方法において目標光学関数を使用するとき、両眼視性能が改善されたレンズを得ることができる。それゆえ、一対のレンズの装用者の快適性が改善される。
【0106】
考慮される適用が、一方の眼の処方されたパワーS
one eyeのデータに関係する具体的な事例では、基準S
one eye−(S
one eye−S
other eye)/2は、
図15による目標光学関数の決定方法の例に対応する。この例によれば、修正関数f1
modificationは、(S
first eye−S
second eye)/2だけのパワーのシフトであり、かつ修正関数f2
modificationは、(S
second eye−S
first eye)/2だけのパワーのシフトである。この場合、修正関数は、前述のような対応する適用である。そのような例は、実施するのが簡単であるという利点をもたらす。
【0107】
装用者に関する他のデータを考慮し、かつ装用者の快適性を改善するために、
図14のフローチャートによる方法は、追加的な基準を考慮するためにさらに発展させ得る。
図16のフローチャートは、方法のそのような例を示す。
【0108】
図11の方法と同様に、
図16のステップ62は、2組の光学的基準値を定義するステップ68を含む。第1の組は、第1の眼に関するデータを用いて計算される。光学的基準値を、{V1(α,β),...,VN(α,β)
first eyeで示す。第2の組は、第2の眼に関するデータを用いて計算される。光学的基準値を、{V1(α’,β’),...,VN(α’,β’)}
second eyeで示す。例えば、V1は屈折力の基準であり、及びV2は乱視(非点収差)の基準である。
【0109】
ステップはまた、2つの光学的基準値Viの各々、すなわち第1の組の光学的基準{V1(α,β),...,VN(α,β)}
first eyeと、第2の組の光学的基準{V1(α’,β’),...,VN(α’β’)}
second eyeとの間の、2つの眼のデータに基づいた重み係数γiを決定するステップ70を含む。
図11による方法はまた、計算ステップ72を含む。
【0110】
さらに、
図16の方法では、第2の中間光学関数OFi2の生成ステップ66は、重み係数γi
second eye=1−γi
first eyeを決定するステップ70と、計算ステップ72とを含む。上述したものと同様に、これは、例えば、1〜Nのiに関して、以下の通り数学的に表すことができる:
Wi
first eye(α,β)=O1
=γi
first eye Vi
first eye(α,β)+(1−γi
first eye)Vi
second eye(α’,β’)
及び
Wi
second eye(α’,β’)=O2
=γi
second eye Vi
second eye(α’,β’)+(1−γi
second eye)Vi
first eye(α,β)
=(1−γi
first eye)Vi
second eye(α’,β’)+γi
first eyeVi
first eye(α,β)
式中、(α,β)及び(α’,β’)は、対応する視線方向である(例えば、対応する視線方向は、上記で定義された以下の対称α’=α,β’=−βを用いて定義された2つの視線方向、又は所与の物体を見られるようにする2つの視線方向とし得る)。さらに、定義されたような演算子O1及びO2は、上記で定義された「対応する」適用の具体例であることに留意できる。
【0111】
一例によれば、ステップ62及び66は、いくつかの中間ステップを含み得る。第1の眼に考慮できる第1の中間光学関数は、S
one eye(Vi
first eye(α,β))の同じ平均パワー処方に好適なものであり、及び第2の眼に考慮できる第1の中間光学関数は、S
other eye(Vi
second eye(α’,β’))の同じ平均パワー処方に好適なものである。γiは、優位の測定値を用いて決定でき、及びγi
first eye=1/4である。
【0112】
第1及び第2の眼の最終的な中間光学関数は、以下の通り計算される:
Wi
first eye(α,β)=1/4Vi
first eye(α,β)+3/4Vi
second eye(α’,β’)
Wi
second eye(α’,β’)=3/4Vi
second eye(α’,β’)+1/4Vi
first eye(α,β)
中間光学関数は共通のデータγiのおかげで生じるため、O1及びO2は対応する演算子である。
【0113】
これにより、2つの光学関数間で同じ光学性能を得ることが可能になる。なぜなら、Wi
first eye(α,β)−Wi
second eye(α’,β’)は、両眼の挙動を考慮するためである。
【0114】
しかしながら、例えばWi
first eye(α,β)=k
iWi
second eye(α’,β’)など、Wi
first eye(α,β)とWi
second eye(α’,β’)との間に重み係数k
iを導入することが可能である。これにより、いくつかの両眼データを考慮できるようにし、それにより、一方の眼の1つの中間光学関数を他方よりも優遇できるようにする。
【0115】
それゆえ、中間光学関数OFi1及びOFi2は、特定の基準に対する両眼の挙動を表すパラメータを考慮する。このため、中間光学関数OFi1及びOFi2は、装用者により良好に適合される。これは、他の決定方法に関して、目標光学関数の対称性が改善されたことに追加される改善点である。それゆえ、光学的最適化方法において目標光学関数を使用するとき、両眼特性が改善されたレンズを得ることができる。それゆえ、一対のレンズの装用者の快適性が改善される。
【0116】
一対のレンズの目標光学関数の決定方法は、コンピュータで実行できる。これに関連して、特に具体的に明記しない限り、本明細書の説明全体を通して、用語「コンピュータで計算する」、「計算する」「生成する」などの使用は、コンピュータシステムのレジスタ及び/又はメモリー内で物理量、例えば電子などで表されるデータを、コンピュータシステムのメモリー、レジスタ又は他のそのような情報ストレージ、伝送又は表示装置内で同様に物理量で表される他のデータに操作及び/又は変換する、コンピュータ又はコンピュータシステム又は同様の電子計算装置の作業及び/又はプロセスを指すことを認識されたい。
【0117】
プロセッサーがアクセス可能でありかつプロセッサーでの実行時に、プロセッサーに方法のステップを実行させるようにする、1つ以上の記憶された一連の命令を含むコンピュータプログラム製品も提案される。
【0118】
そのようなコンピュータプログラムは、コンピュータ可読記憶媒体、例えば、限定されるものではないが、フロッピー(登録商標)ディスク、光ディスク、CD−ROM、光磁気ディスクディスク、読取り専用メモリー(ROM)、ランダムアクセスメモリー(RAM)、電気的プログラマブル読取り専用メモリー(EPROM)、電気的消去可能・プログラマブル読取り専用メモリー(EEPROM)、磁気カード又は光カードを含む任意のタイプのディスク、又は電子的な命令の記憶に好適でありかつコンピュータシステムバスに結合できる任意の他のタイプの媒体に記憶し得る。それゆえ、コンピュータプログラム製品の1つ以上の一連の命令を記憶するコンピュータ可読媒体を提案する。これにより、コンピュータプログラムをどこででも簡単に実行できるようにする。
【0119】
本明細書で提示されるプロセス及びディスプレイは、本質的に任意の特定のコンピュータ又は他の装置に関係しているわけではない。本明細書の教示に従うプログラムを備える様々な汎用システムを使用し得るか、又は所望の方法を実行するより専門的な装置を構成することが好都合であることが判明し得る。様々なこれらのシステムのための所望の構造は、以下の説明から明らかとなる。加えて、本発明の実施形態は、任意の特定のプログラミング言語に関して説明しない。当然のことながら、様々なプログラミング言語は、本明細書で説明する本発明の教示を実行するために使用し得る。
【0120】
先に説明した方法に従って目標光学関数を使用して一対のレンズを得るために、多くの装置又はプロセスを使用し得る。プロセスは、1組のデータの交換を暗示することが多い。例えば、この1組のデータは、方法によって決定された目標光学関数のみを含み得る。この1組のデータは、好ましくは、装用者の眼に関するデータをさらに含み、この1組のデータを用いて、一対のレンズを製造できるようにする。
【0121】
このデータの交換は、
図18の装置によって概略的に理解され得る。この図は、数値データを受信する装置333を表す。キーボード88と、ディスプレイ104と、外部情報センター86と、論理ユニットとして実現されたデータ処理装置100の入力/出力装置98につながれたデータ受信部102とを含む。
【0122】
データ処理装置100は、データ・アドレスバス92によってつながれた:
−中央処理装置90;
−RAMメモリー96、
−ROMメモリー94、及び
−前記入力/出力装置98
を含む。
【0123】
図18に示す前記要素は、当業者によく知られている。それらの要素についてはこれ以上説明しない。しかしながら、ROMメモリーは、眼及び目標光学関数に関するデータを含む一方、RAMメモリーは中間光学関数を含むことに留意されたい。これにより、一対のレンズの製造時に発生し得る1組のデータの交換が容易になる。
【0124】
一般的な方法によれば、装用者の処方に対応する眼科用の一対のレンズを得るために、レンズ製造業者によって処方研究室に半製品の眼科用レンズブランクが提供される。一般的に、半製品の眼科用レンズブランクは、基準光学面に対応する第1の面、例えば累進加入レンズ(progressive addition lens)の場合には累進面と、第2の球面とを含む。好適な光学特性を有する標準的な半製品のレンズブランクは、装用者の処方に基づいて選択される。球状後面を、最終的に処方研究室によって機械加工し、かつ研磨して、処方に一致する球−円環状面(sphero−torical surface)を得る。それゆえ、処方に一致する眼科用レンズが得られる。
【0125】
しかしながら、本発明による目標光学関数の決定方法を使用するとき、他の製造方法を使用し得る。
図18による方法は一例である。製造方法は、第1の位置における装用者の眼に関するデータを提供するステップ74を含む。データは、方法のステップ76において第1の位置から第2の位置に送信される。そこで、目標光学関数は、先に説明した決定方法に従って、第2の位置においてステップ78で決定される。製造方法は、さらに、
図18の場合のように、目標光学関数を送信するステップ80を含み得る。方法はまた、目標光学関数に基づいて光学的最適化を実行するステップ82を含み、目標光学関数は、伝達されてもされなくてもよい。方法はさらに、第2の位置における光学的最適化の結果に従う眼科用の一対のレンズの製造ステップ84を含む。代替的な実施形態では、製造ステップ84は、第3の位置において実施され得る。この場合、ステップ82を実施することによって得られたデータを第2の位置から第3の位置へ送信する別のステップが提供される。
【0126】
そのような製造方法は、装用者の眼に対する異なる処方の場合でも、両眼特性の良好な一対のレンズを得ることを可能にする。
【0127】
送信ステップ76及び80は電子的に達成できる。これにより、方法を早めることができる。一対のレンズは、より迅速に製造できる。
【0128】
この効果を高めるために、第2の位置及び第3の位置は、単に2つの異なるシステムとしてもよく、一方は計算に及び他方は製造に専念し、2つのシステムは、同じ建物に配置されている。しかしながら、2つの位置はまた、2つの異なる会社としてもよく、例えば一方はレンズ設計者及び他方は研究室にあってもよい。
【0129】
例えば、第1の位置は、レンズ注文側、例えばアイケア専門店としてもよい。
【0130】
眼科用の一対のレンズを製造するための1組の装置であって、製造方法を実施するように適合されている装置も説明する。
【0131】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明する。
【0132】
実施例の図の概要
図19〜93は、考慮されるレンズの光学的分析のデータを与える。
【0133】
図19、
図22、
図25、
図28、
図31、
図34、
図37、
図40、
図43、
図46、
図49、
図52、
図55、
図58、
図61、
図64、
図67、
図70、
図73、
図76及び
図79の横軸は、遠方視の制御点に対応する視線方向に対して生成された平均屈折力の値に対する、経線に沿った平均屈折力の変化を取って示す。縦軸は、眼の傾斜角度の値αを取って示し、眼の方向における正の値は、下向きである。眼の基準方向は、フィッティングクロスに対して規定される。連続曲線は平均屈折力に対応し、これは、眼の方向を含みかつこの方向の周りで回転する平面に対する平均値として計算される。これら破線で示す曲線は、これらの平面で生成される最大及び最小屈折力値を示す。
【0134】
図23、
図26、
図32、
図35、
図38、
図41、
図50、
図53、
図56、
図65、
図68、
図71、
図74、
図82、
図84、
図86、
図88、
図90及び
図92は、平均屈折力マップである。
図20、
図29、
図44、
図47、
図59、
図62、
図77、及び
図80は、平均屈折力障害(optical mean power defect)のマップである。これらのマップでは、屈折力障害は、以下の通り各視線方向に対して計算される:Pd(α,β)=P(α,β)−S(式中、P(α,β)は、視線方向(α,β)に関するレンズの平均屈折力の値であり、及びSは、遠方視(α〜−8°,β〜0°)の視線方向に関する屈折力の値である。これらのマップは、2つのレンズにわたる障害の分布の差を見積もるのを助ける。マップの垂直及び水平座標は、眼の傾斜角度αの値及び眼の方位角度βの値である。これらのマップに示される曲線は、同じ平均屈折力の値又は平均屈折力の値の障害に対応する眼の方向をつないでいる。曲線に対する各平均屈折力の値又は平均屈折力の値の障害は、隣接する曲線間で0.25ジオプトリずつ増え、かつこれらの曲線のいくつかで示される。
【0136】
図が、重ね合わせられた図であるとき、以下の取り決めを使用する:右眼に関する曲線又は面は実線であらわす一方、左眼に関する曲線又は面は点線で描く。そのような重ね合わせは、相対的な値によって屈折力のプロファイルを表すことによって、及び同じフレーム(選択されたフレームは右眼に好適なフレームである)に光学的マップを示すことによって、達成される。
【0137】
関連性があるとき、いくつかの図面は、特定の点上における、特定値に関係する追加的なデータを含む。より正確にいえば、平均球面の値、非点収差の値(modulus of astigmatism)及び非点収差の軸は、遠方視ゾーン(FVを付す点)における基準点、近方視ゾーン(NVを付す点)における基準点、及びフィッティングクロスに対して与えられる。これらの値は、数種類の図面(先に説明したようなプロファイル及びマップ)が示されるときには1種類の図面に与えられるにすぎないが、それらは、考慮される光学関数に関係し、それゆえ他の種類の図面にも適用されることを理解されたい。
【実施例】
【0138】
実施例1(従来技術)
実施例1は、従来技術による例に対応する。この場合、遠方視におけるパワーの処方は右眼に関しては1.0δであり、及び左眼に関しては3.0δである。さらに、処方された加入度は、各眼2.75δである。この実施例1では、装用者に乱視は処方されていない。
【0139】
図19、
図20及び
図21は、従来技術による方法によって得られた目標光学関数のために得られた、重ね合わされた図である。明瞭にするために、左眼用の目標光学関数は、装用者の2つの眼の回転中心を結びかつ例えば2つの眼の回転中心を結ぶセグメントの中心を通過する線に対する両眼間の対称性を考慮に入れて表される。マップでは、以下の関係で示されている:
α
left_map=α
left
β
left_map=−β
left
ここで、(α
left,β
left)は、左眼の所与の視線方向であり、及び(α
left_map,β
left_map)は、右眼フレームにおける対応する視線方向である。
【0140】
明瞭にするために、各目標とする関数のための(右眼及び左眼に1つずつ)対応する図はまた、
図22、
図23及び
図24(右眼)及び
図25、
図26及び
図27(左眼)に示す。予想通り、
図19、
図20及び
図21を分析すると、パワーの処方が左眼と右眼とで異なるため、完全に重なってはおらず、これは、目標光学関数が対称的ではないことを意味する。
【0141】
光学的最適化方法において目標光学関数を使用することにより、両眼視性能が劣るレンズをもたらすことになる。これは、
図28、
図29及び
図30を考慮すると明白となる。これらの図面は、従来技術による目標光学関数を使用する、そのような光学的最適化方法によって得られたレンズの光学関数のために得られた結果の、重ね合わせた図面である。重ね合わせは完璧ではないことに留意されたい。その結果、一対のレンズの両眼視性能は最適にされない。
【0142】
実施例2
実施例2は、実施例1で考慮された処方と同じ実施例に対応する。それゆえ、遠方視におけるパワーの処方は、右眼に関しては1.0δであり、左眼に関しては3.0δである;処方された加入度は、各眼2.75δであり、装用者に乱視は処方されていない。
【0143】
実施例2は、
図10のフローチャートによる目標光学関数の決定方法を実施するときに得られた結果に対応する。この場合、第1の眼は右眼であり、第2の眼は左眼である。
【0144】
ステップ32において考慮される右眼に関するデータは、パワー、加入度及び乱視に対する処方である。これらのデータを使用して、右眼の第1の目標とする中間光学関数OFi1を生成する。これは、
図10の方法によるフローチャートのステップ62に対応する。この目標光学関数の特徴を
図31、
図32及び
図33に示す。
【0145】
この光学関数OFi1に基づいて、右眼用の目標光学関数OFT1を生成することが可能となる。修正ステップ64は、各視線方向に関数f1
modificationを適用することによって実行される。実施例1では、f1
modificationは、量−1.0δだけのパワーのシフトである。この目標光学関数OFT1の特徴を
図34、
図35及び
図36に示す。
【0146】
光学関数OFi1に基づいて、左眼用の目標光学関数OFT2を生成することが可能である。
図10の方法によれば、生成ステップ36は、生成ステップ66及び修正ステップ44を含む。具体的な実施例2では、適用される変換式T2は、装用者の2つの光学的な回転中心を結びかつ例えば2つの眼の回転中心を結ぶセグメントの中心を通過する線に垂直な装用者の平面に対して対称的である。この変換式T2は、特に、
図8を参照して先に説明した。この目標光学関数OFi2の特徴を、
図37、
図38及び
図39に示す。
【0147】
修正ステップ44は、関数f2
modificationを各視線方向に適用することによって実行される。実施例2では、f2
modificationは、量+1.0δだけのパワーのシフトである。この目標光学関数OFT2の特性を
図40、
図41及び
図42に示す。
【0148】
図43、
図44及び
図45は、
図10による方法によって得られた、目標光学関数OFT1及びOFT2のために得られた結果の、重ね合わせた図である。実施例4の場合、重なりはほぼ完璧である。それゆえ、実施例1の場合と比較して、実施例2で使用された
図10の方法は、対称性の改善された目標光学関数を得ることを可能にする。これは、上述のように、光学的最適化方法においてこれらの目標光学関数を使用する際に、より良好な両眼視性能をもたらす。この主張を
図46〜48に示す。
【0149】
図46、
図47及び
図48は、
図10のフローチャートの方法に従って目標光学関数を使用するような光学的最適化方法によって、それぞれのレンズに関する光学関数をそれぞれ得て、これら得られた光学関数に対して得られた結果を、重ね合わせた図である。実施例1と比較して、重なりは良好であり、これは、最適化されたレンズがより対称的であることを証明する。これは、両眼視性能が改善された徴候を示し、これは、各眼に処方されたパワーが異なることにかかわらない。
【0150】
実施例3
実施例3は、実施例1又は実施例2で考慮された処方と同じ実施例に対応する。それゆえ、パワーの処方は、右眼1.0δ、及び左眼3.0δである;処方された加入度は、各眼に対し2.75δあり、かつ装用者に乱視は処方されていない。さらに、右眼を利き眼とみなしている。一対のレンズの性能を高めるために、2つの目標光学関数の定義において利き眼に関するデータがより重要である。
【0151】
それゆえ、実施例3は、
図12のフローチャートに従って目標光学関数の決定方法を実行する際に得られた結果に対応する。この場合、第1の眼は右眼であり、第2の眼は左眼である。
【0152】
ステップ32において考慮される右眼に関するデータは、パワー、加入度及び乱視の処方である。これらのデータを使用して、右眼用の目標光学関数OFT1を生成する。これは、
図12の方法のフローチャートのステップ34に対応する。この目標光学関数の特徴を
図49、
図50及び
図51に示す。
【0153】
この光学関数OFT1に基づいて、左眼用の目標光学関数OFT2を生成することが可能となる。
図12の方法によれば、生成ステップ36は、生成ステップ66及び修正ステップ44を含む。具体的な実施例3では、適用される変換式T2は、装用者の2つの光学的な回転中心を結びかつ例えば2つの眼の回転中心を結ぶセグメントの中心を通過する線に垂直な装用者の平面に対して対称的である。この変換式T2は、特に、
図8を参照して上述した。この目標光学関数OFi2の特徴を
図52、
図53及び
図54に示す。
【0154】
修正ステップ44は、各視線方向に関数f2
modificationを適用することによって実行する。実施例3に関連して、f2
modificationは、量2.0δだけのパワーのシフトである。この目標光学関数OFT2の特徴を
図55、
図56及び
図57に示す。
【0155】
図58、
図59及び
図60は、
図12による方法に従って得られた目標光学関数OFT1及びOFT2のために得られた結果の、重ね合わせた図である。実施例3の場合、重なりはほぼ完璧であり、目標とする両光学関数の差は、周辺視野ゾーンで認められるにすぎない(
図61参照)。それゆえ、実施例1の場合と比較すると、実施例3で使用される
図12の方法は、対称性が改善された目標光学関数を得ることを可能にする。実施例2の場合と比較すると、実施例3はまた、2つの目標光学関数の定義において利き眼を特別扱いすることができる。これは、既に説明したように、光学的最適化方法においてこれらの目標光学関数を使用する際に、より良好な両眼視性能をもたらす。この主張を
図61、
図62及び
図63によって説明する。
【0156】
図61、
図62及び
図63は、
図12のフローチャートの方法に従って目標光学関数を使用するような光学的最適化方法によってそれぞれのレンズに関する光学関数をそれぞれ得て、これら得られた光学関数に対して得られた結果を重ね合わせた図である。実施例1と比較すると、重なりは良好であり、これは、最適化されたレンズがより対称的であることを示す。これは、両眼視性能が改善された徴候であり、及びこれは、各眼に処方されたパワーが異なることにかかわらない。
【0157】
実施例4
実施例4は、右眼−0.75δ及び左眼−1.75δのパワーの処方に対応する;処方された加入度は、各眼2.00δであり、及び装用者に乱視は処方されていない。
【0158】
実施例4は、
図14のフローチャートによる目標光学関数の決定方法を実施するときに得られた結果に対応する。この場合、第1の眼は右眼であり、第2の眼は左眼である。
【0159】
ステップ62で考慮される右眼及び左眼に関するデータは、パワー、加入度及び乱視の処方である。これらのデータを使用して、右眼に第1の目標とする中間光学関数OFi1を生成する。これは、
図15の方法によるフローチャートのステップ62に対応する。この目標光学関数の特徴を
図64、
図65及び
図66に示す。
【0160】
この光学関数OFi1に基づいて、右眼用の目標光学関数OFT1を生成することが可能である。修正ステップ64が、各視線方向に関数f1
modificationを適用することによって実施される。実施例1の関連では、f1
modificationは、量+0.5δだけのパワーのシフトである。この目標光学関数の特徴OFT1を
図67、
図68及び
図69に示す。
【0161】
同時に、右眼の第1の目標とする中間光学関数OFi1。これは、
図15の方法によるフローチャートのステップ66に対応する。この目標光学関数OFi2の特徴を
図70、
図71及び
図72に示す。
【0162】
修正ステップ44は、各視線方向に関数f2
modificationを適用することによって実行される。実施例4に関連して、f2
modificationは、量−0.5δだけのパワーのシフトである。この目標光学関数OFT2の特徴を
図73、
図74及び
図75に示す。
【0163】
図76、
図77及び
図78は、
図15による方法によって得られた目標光学関数OFT1及びOFT2に対して得られた結果を重ね合わせた図である。実施例4の場合、重なりはほぼ完璧である。それゆえ、実施例1の場合と比較すると、実施例4で使用される
図15の方法は、対称性の改善された目標光学関数を得ることができるようにする。これは、上述の通り、光学的最適化方法においてこれらの目標光学関数を使用する際に、良好な両眼視性能をもたらす。この主張を
図79〜81に示す。
【0164】
図79、
図80及び
図81は、
図10のフローチャートの方法による目標光学関数を使用するような光学的最適化方法によって得られたレンズの光学関数の重ね合わせた図である。良好な重なりを観察でき、これは、上述した通りの良好な両眼特性をもたらす。
【0165】
実施例5(従来技術)
実施例5は、従来技術による実施例に対応する。この場合、パワーの処方は、右眼0.75δ及び左眼1.75δである。さらに、処方された加入度は、各眼2.50δである。この実施例4に関して、装用者に乱視は処方されていない。
【0166】
光学的最適化方法において、従来技術による目標光学関数を使用することにより、両眼視性能の劣るレンズをもたらす。これは、
図82及び
図83と比較して
図84及び
図85を考慮すると明らかとなる。この点において、重なりが完璧ではないことに留意し得る。それゆえ、一対のレンズの両眼視性能は最適にされていない。
【0167】
実施例6
実施例6は、実施例5に考慮された処方と同じ実施例に対応する。それゆえ、パワーの処方は、右眼0.75δ、及び左眼1.75δである;処方された加入度は、各眼2.50δであり、及び装用者に乱視は処方されていない。
【0168】
実施例6は、以下、簡潔に説明する目標光学関数の決定方法を実施するときに得られる結果に対応する。この場合、第1の眼は右眼であり、第2の眼は左眼である。
【0169】
目標とする関数は、両眼フレームの右眼に処方されたパワーに対応する屈折力のために生じる。目標光学関数は、
図86、
図87、
図88及び
図89の両眼座標に表される。
図86及び
図88は右眼に関する一方、
図87及び
図89は左眼に関する。
【0170】
両眼座標では、両眼の視線方向は、
図7を参照して規定された点OCを中心とした正規直交基準(direct orthonormal basis)に関して測定された2つの角度によって規定される。両眼の視線方向に基づいて視覚的環境をサンプリングする。両眼の視線方向の各々に関して、視覚的環境の対応する物点Pを決定する。各眼に関して、光学的基準を評価する。
【0171】
各単眼フレームにおいてこれらの目標光学関数を表すとき、
図90〜93が得られる。
図90及び
図91は、右眼用の目標光学関数の特性を示す一方、
図92及び
図93は、右眼用の目標光学関数の特性を示す。上述の目標光学関数の決定方法の各々のように、一方では
図90及び
図92の重なり、及び他方では
図91及び
図93の重なりは、従来技術におけるよりも良好である。これは、両眼特性を改善させる。
【0172】
本発明を、好ましい実施形態を参照して説明した。しかしながら、本発明の範囲内で多くの変形例が可能である。特に、眼科用レンズは、単一視(球面、円環状)、遠近両用、累進型、球面レンズ(など)を含め、全ての種類とし得る。