(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電圧印加部は、前記異なる複数の電圧として各膜厚について定められた値の中から、前回補正された膜厚に対応する各電圧を用いて、前記帯電体に対する前記異なる複数の電圧の印加を行う請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に示される技術では、感光体ドラムの膜厚に対応させた帯電電圧を決定していない。また、周囲環境が変化した場合には、上記推定した膜厚が実際の膜厚から外れるおそれがある。一方、特許文献2に示される技術では、推定した感光層の膜厚に対応させて帯電電圧を決定しているが、上記のように、この膜厚はパッシェンの法則の式から算出した推定のものであり、周囲環境の影響が考慮されていないため、周囲環境が変化すると、上記帯電電圧の印加により得られる表面電位が、目標の表面電位からずれるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、周囲環境変化及び膜厚の経年変化に拘わらず、感光体ドラム等の像担持体の膜厚に応じた適切な帯電電圧を用いて、帯電電圧の印加制御を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る画像形成装置は、像担持体の周面を帯電させる帯電体に、異なる複数の電圧を印加する電圧印加部と、
前記電圧印加部による前記複数の電圧の印加時における帯電電流を検知する帯電電流検知部と、
前記異なる複数の電圧の印加時に前記帯電電流検知部によって検知される帯電電流が示すI−V特性に基づき、前記像担持体の周面に設けられた膜厚を検出する膜厚検出部と、
前記帯電体及び前記像担持体の周囲温度又は周囲湿度の少なくとも一方からなる周囲環境値を検出する周囲環境値検出部と、
前記膜厚検出部によって検出された膜厚を、前記周囲環境値検出部によって検出された周囲環境値に応じて定められた補正値を用いて補正する膜厚補正部と、
前記膜厚補正部によって補正された膜厚に対応する帯電電圧を決定する決定部と、
前記決定部により決定された電圧を画像形成時における帯電電圧として、前記電圧印加部により前記帯電体に対して印加させる電圧印加制御を行う印加バイアス制御部とを備え
、
前記決定部は、前記膜厚補正部によって補正された膜厚に対応する帯電電流を更に決定し、
前記印加バイアス制御部は、更に画像形成時に、前記帯電電流検知部により検知される電流が、前記決定部により決定された帯電電流となるように、帯電電圧を可変させて、前記電圧印加部により前記帯電体に対して印加させる電圧印加制御を行い、
更に、前記決定部によって決定された帯電電流を、前記周囲環境値検出部によって検出された周囲環境値に応じて定められた電流補正値を用いて補正する電流補正部を備え、
前記周囲環境値検出部は、前記膜厚補正によって前記像担持体の膜厚を補正した後、画像形成時に、再度前記周囲環境値を取得し、前記電流補正部を用いて前記帯電電流を補正し、
前記印加バイアス制御部は、前記帯電電流検知部により検知される電流を、前記電流補正部による前記補正後の帯電電流とするために前記帯電電圧を可変させる制御を、前記電圧印加制御として行うものである。
【0008】
また、本発明の他の一局面に係る帯電電圧制御方法は、像担持体の周面を帯電させる帯電体に、異なる複数の電圧を印加する電圧印加ステップと、
前記複数の電圧の印加時における帯電電流を検知する電流検知ステップと、
前記異なる複数の電圧の印加時に検知される帯電電流が示すI−V特性に基づき、前記像担持体の周面に設けられた膜厚を検出する膜厚検出ステップと、
前記帯電体及び前記像担持体の周囲温度又は周囲湿度の少なくとも一方からなる周囲環境値を検出する周囲環境値検出ステップと、
前記検出された膜厚を、前記検出された周囲環境値に応じて定められた補正値を用いて補正する膜厚補正ステップと、
前記補正された膜厚に対応する帯電
電流を決定する決定ステップと、
画像形成時に、前記周囲環境値検出ステップを再度実行し、前記周囲環境値検出ステップに基づいて前記決定ステップで決定された前記帯電電流を補正する帯電電流補正ステップと、
前記
帯電電流補正ステップで補正された帯電電流を目標値として、電圧印加部により前記帯電体に対して帯電電圧を印加させる印加バイアス制御ステップと、を有するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、I−V特性に基づいて像担持体の膜厚を検出し、当該検出した膜厚を周囲環境に応じて補正した上で、この補正後の膜厚に応じた帯電電圧を用いて帯電電圧の印加制御を行うため、周囲環境が変化した場合であっても、経年変化する像担持体の膜厚に応じて適切な帯電電圧を帯電体に印加することが可能になる。このため、周囲環境変化及び膜厚の経年変化に拘わらず、像担持体の表面電位を目標値に保つ帯電電圧の印加制御を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置及び帯電電圧制御方法について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の構造を示す正面断面図である。
【0012】
本発明の第1実施形態に係る画像形成装置1は、画像形成部2と、用紙搬送機構3と、給紙部4と、定着部5と、排出トレイ6とを備えている。本実施形態では、画像形成装置1がプリンターである場合を例にして説明する。
【0013】
画像形成装置1が画像形成動作を行う場合は、ネットワーク接続されたコンピューターから受信した画像データ、又は内蔵HDDに記憶されている画像データ等に基づいて、画像形成部2が、用紙搬送機構3により給紙部4から搬送路31を搬送されてきた記録媒体としての記録紙Pにトナー画像を形成する。この後、定着部5が、記録紙P上のトナー画像を熱圧着により記録紙Pに定着させる。定着処理の完了した画像形成済みの記録紙Pは排出トレイ6に排出される。
【0014】
画像形成部2は、感光体ドラム(像担持体)21と、帯電装置22と、露光装置23と、現像装置24と、転写ローラー25と、トナー除去装置27と、を備えている。各構成の詳細な説明は後述する。
【0015】
用紙搬送機構3は、搬送路31と、搬送ローラー32と、レジストローラー33と、を備えている。
【0016】
搬送路31は、給紙部4から、画像形成部2及び定着部5を経て、排出トレイ6まで記録紙Pが搬送させる搬送路である。搬送路31の各所には、搬送ローラー32が設けられており、当該搬送ローラー32の回転により、記録紙Pが搬送路31内において、給紙部4から、画像形成部2、定着部5、排出トレイ6へ搬送される。
【0017】
レジストローラー33は、搬送路31における画像形成部2の記録紙Pの搬送方向上流側に設けられ、搬送路31において搬送される記録紙Pを、感光体ドラム21と転写ローラー25とが対向する位置(すなわち、画像形成部2によるトナー画像の転写位置)に搬送するタイミングを調整する。
【0018】
レジストセンサー75は、搬送路31においてレジストローラー33よりも記録紙Pの搬送方向上流側に設けられている。後述する制御部100(
図3参照)は、レジストセンサー75により記録紙Pの先端部の到達が検出されたタイミングを用いて、当該タイミングから予め定められた一定時間経過後に、画像形成部2によるトナー画像の転写位置に記録紙Pが搬送されるようにレジストローラー33を駆動して、記録紙Pが画像形成部2の転写位置に到着するタイミングを調整する。
【0019】
定着部5は、画像形成部2による記録紙Pへのトナー画像転写位置よりも記録紙Pの搬送方向の下流側に配置されており、画像形成部2を通過した記録紙Pに転写されたトナー画像を熱ローラー51及び圧ローラー52により熱圧着して記録紙Pに定着させる。
【0020】
次に、画像形成部2の各構成について説明する。
図2は、画像形成部2の構成を示す正面断面図である。
図1及び
図2を用いて説明する。
【0021】
感光体ドラム21は、その表面に感光層が設けられ、静電潜像及びこの静電潜像に沿ったトナー像を形成する。本実施形態では、例として、OPC(有機光導伝体)からなる感光層である場合を説明する。
【0022】
帯電装置22は、感光体ドラム21の表面に対向する位置に設けられている。帯電装置22は、
図2に示す矢印の方向へ回転する感光体ドラム21の周面を予め定められた帯電能力で一様に帯電させる。帯電装置22の上記予め定められた帯電能力は、例えば、感光体ドラム21の表面を所定電位とする能力に設定されている。帯電装置22は、感光体ドラム21の回転軸方向と同一方向の回転軸を有する帯電ローラー(特許請求の範囲における帯電体の一例)222を備えている。当該帯電ローラー222には、帯電電圧印加部(電源装置)223により、トナーの正規帯電極性(本実施の形態ではプラス極性)と同極性の帯電電圧が印加される。帯電ローラー222に印加される帯電電圧は、後述する印加バイアス制御部101(
図3参照)により制御される。帯電ローラー222が感光体ドラム21表面に接触することにより、感光体ドラム21表面が帯電される。また、帯電装置22は、帯電電圧印加部223による帯電電圧の印加時に帯電装置22に流れる帯電電流を検知する帯電電流検知部225を備えている。
【0023】
露光装置23は、感光体ドラム21の表面に対向する位置であって、感光体ドラム21周面の上記回転方向において帯電装置22よりも下流側に設けられている。露光装置23は、画像形成装置1にネットワーク接続されたコンピューターから受信した画像データ、又は内蔵HDDに記憶されている画像データ等に対応したレーザー光を、
図2に矢印で示すように、帯電後の感光体ドラム21の周面に照射し、感光体ドラム21の周面に、当該画像データに対応する静電潜像を形成する。露光装置23は、レーザー露光部であり、レーザービームを出力するレーザー光源と、当該レーザービームを感光体ドラム21表面に向けて反射させるポリゴンミラーと、ポリゴンミラーによって反射されたレーザー光を感光体ドラム21に導くためのレンズやミラー等の光学部品を備えている。なお、露光装置23は、LED(Light Emitting Diode)により感光体ドラム21表面を照射する方式のもの等、他の方式からなるものであってもよい。
【0024】
現像装置24は、感光体ドラム21表面に露光装置23によって形成された静電潜像にトナーを供給する。現像装置24は、感光体ドラム21の回転軸方向と同一方向の回転軸を有する現像ローラー241を、感光体ドラム21に対向する位置に備え、当該現像ローラー241により感光体ドラム21表面に現像装置24内に貯留されているトナーを供給する。そして、現像装置24は、感光体ドラム21の表面上の露光装置23によって露光された部分に静電潜像にトナーを付着させ、静電潜像に応じたトナー画像を形成する。現像装置24に対しては、不図示のトナーコンテナーからトナーが供給される。
【0025】
転写ローラー(転写部)25は、感光体ドラム21の回転軸方向と同一方向の回転軸を有し、感光体ドラム21に対向する位置であって、感光体ドラム21の回転方向において現像装置24よりも下流側に設けられている。転写ローラー25は、感光体ドラム21表面に対して押圧された状態で設けられている。転写ローラー25には、転写バイアス印加部(電源装置)252により、転写バイアスが印加される。転写ローラー25に印加される転写バイアスは、後述する印加バイアス制御部101により制御される。画像形成時において、トナーの正規帯電極性とは異なる極性の転写バイアスが転写ローラー25に印加され、転写ローラー25は、感光体ドラム21の表面に形成されたトナー画像を、感光体ドラム21及び当該転写ローラー25のニップ部Nに搬送されてくる記録紙Pに転写させる。
【0026】
感光体ドラム21の回転方向において転写ローラー25よりも下流側には、トナー除去装置27が配置されている。トナー除去装置27は、感光体ドラム21の表面に残留するトナーを除去する。
【0027】
次に、第1実施形態に係る画像形成装置1の内部構成を説明する。
図3は第1実施形態に係る画像形成装置1の主要内部構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【0028】
画像メモリー71は、画像形成部2による画像形成の対象となる画像データを一時的に保存する領域である。
【0029】
HDD(ハードディスクドライブ)72は、画像形成装置1にネットワーク接続されたコンピューターから受信した画像データ等を記憶する大容量の記憶装置である。
【0030】
また、温度センサー77は、サーミスター等を備え、帯電装置22及び感光体ドラム21の周囲温度を周囲環境値として検出する。温度センサー77は、検出した温度を、後述する膜厚補正部104(第2実施形態では、膜厚補正部104又は電流補正部106)に出力する。
【0031】
また、湿度センサー78は、帯電装置22及び感光体ドラム21の周囲湿度を周囲環境値として検出する。湿度センサー78は、検出した湿度を、後述する膜厚補正部104(第2実施形態では、膜厚補正部104又は電流補正部106)に出力する。
【0032】
温度センサー77及び湿度センサー78は、特許請求の範囲における周囲環境値検出部の一例である。なお、温度センサー77及び湿度センサー78は、少なくともいずれか一方が備えられ、膜厚補正部104は、当該出力されてきた値を用いて後述する膜厚補正を行うものであればよい。本実施形態では、画像形成装置1は、温度センサー77及び湿度センサー78の両方を備え、膜厚補正部104は、これら両方から出力されてきた温度及び湿度の各値を用いて後述する膜厚補正を行う例を説明する。
【0033】
画像形成装置1は、制御ユニット10を備える。制御ユニット10は、CPU(Central Processing Unit)、RAM、ROM及び専用のハードウェア回路等から構成される。制御ユニット10は、制御部100、印加バイアス制御部101、膜厚検出部102、膜厚補正部104、及び決定部105を備える。特に、制御ユニット10は、上記のROM又はHDD72に記憶されたプログラムが上記のCPUに実行されることにより、印加バイアス制御部101、膜厚検出部102、膜厚補正部104、及び決定部105として機能する。
【0034】
制御部100は、画像形成装置1の全体的な動作制御を司る。制御部100は、画像形成部2、定着部5、給紙部4、画像メモリー71、HDD72、帯電装置駆動部221、ドラムモーターを有する感光体ドラム駆動部211、転写ローラー駆動部251、現像装置24、トナー除去装置27、レジストセンサー75等と接続されている。制御部100は、接続されている上記各機構の動作制御や、各機構との間での信号又はデータの送受信を行う。
【0035】
帯電装置22は、帯電電圧印加部223と、帯電電流検知部225とを備えている。
【0036】
印加バイアス制御部101は、帯電装置22の帯電電圧印加部223及び転写バイアス印加部252が印加する電圧を制御する。
【0037】
印加バイアス制御部101は、画像形成時に、帯電電圧印加部223に、トナーの正規帯電極性と同極性の帯電電圧を帯電ローラー222に印加させるバイアス制御を行って、感光体ドラム21の表面の感光層をトナーの正規帯電極性と同極性に帯電させる。また、印加バイアス制御部101は、転写バイアス印加部252に、トナーの正規帯電極性とは逆極性の転写バイアスを転写ローラー25に印加させるバイアス制御を行って、感光体ドラム21の表面から記録紙Pにトナー像を転写させて画像形成を行う。
【0038】
なお、帯電電流検知部225は、上述したように、上記帯電電圧印加部223による帯電電圧の印加時に帯電装置22に流れる帯電電流を検知する。帯電電流検知部225は、検知した帯電電流の値を膜厚検出部102及び印加バイアス制御部101に出力する。
【0039】
膜厚検出部102は、感光体ドラム21表面の感光層の膜厚を検出する。印加バイアス制御部101は、帯電電圧補正処理として、例えば一定時間毎に、帯電電圧印加部223に異なる複数の帯電電圧を帯電ローラー222に印加させる。帯電電流検知部225は、これら各帯電電圧の印加時等に、それぞれの帯電電流を検知する。
【0040】
膜厚検出部102は、上記異なる複数の電圧の印加時に帯電電流検知部225によって検知される帯電電流が示すI−V特性に基づいて、感光体ドラム21表面の感光層の膜厚を検出する。
【0041】
例えば、印加バイアス制御部101は、感光体ドラム21の表面電位が350(V)と550(V)になるように、それぞれの表面電位に対して異なる帯電電圧を印加する。当該感光体ドラム21の表面電位を350(V)及び550(V)とするための電圧の値は、感光体ドラム21表面の膜厚の値に応じて予め定められ、決定部105が記憶している。決定部105は、印加バイアス制御部101が印加する帯電電圧の値を決定する。
【0042】
印加バイアス制御部101が上記複数の異なる電圧を帯電電圧印加部223により印加させると、当該各帯電電圧の印加時における帯電電流を帯電電流検知部225が検知する。膜厚検出部102は、印加バイアス制御部101から当該印加に用いた各電圧の値を取得し、各電圧の印加時における帯電電流の値を帯電電流検知部225から取得する。膜厚検出部102は、これら電圧値と、各電圧の印加時におけるそれぞれの帯電電流の値とを用いて、帯電電圧の変化に伴う帯電電流変化の関係を示すI−V特性を算出する。
【0043】
図4は感光体ドラム21表面の感光層の膜厚毎のI−V特性をグラフにより示す図である。
図4に示すように、当該I−V特性は、感光体ドラム21表面の膜厚に応じて異なる傾きを示す。なお、予め定められた各膜厚のI−V特性は予め実験により収集しておき、例えば制御ユニット10又は膜厚検出部102に内蔵されるメモリーに、例えば各膜厚とI−V特性との関係を示すデータテーブルにより記憶されている。膜厚検出部102は、上記異なる複数の帯電電圧の印加時に算出したI−V特性に対応する膜厚を、感光体ドラム21の膜厚として検出する。
【0044】
膜厚補正部104は、膜厚検出部102によって検出された膜厚を、温度センサー77及び湿度センサー78によって検出された温度及び湿度に応じて補正する。
【0045】
ここで、上記I−V特性の環境依存性を説明する。
図5はI−V特性の環境依存性を示す図である。
図5に示すように、上記I−V特性は、周囲温度及び周囲湿度に影響されて変化する。
【0046】
例えば、温度35℃で湿度15%(高温低湿の状態)の環境下でのI−V特性は、各計測ポイントに○印を付した線HLが示す傾きを有する。また、温度10℃で湿度15%(低温低湿の状態)の環境下では、I−V特性は、△印を付した線LLが示すものとなる。さらに、温度10℃で湿度80%(低温高湿の状態)の環境下では、I−V特性は、□印を付した線LHが示すものとなる。温度32.5℃で湿度80%(高温高湿の状態)の環境下では、I−V特性は、×印を付した線HHが示すものとなる。標準環境である温度25℃で湿度50%(標準温度標準湿度の状態)の環境下でのI−V特性は、*印を付した線RRが示すものとなる。
【0047】
このように、I−V特性は周囲温度及び周囲湿度に依存して変化するため、膜厚補正部104は、当該周囲環境に応じて予め定められた補正値を用いて、上記検出された膜厚を補正する。これにより、周囲環境がI−V特性に与える影響を加味した上で、正確性を高めた上記膜厚の検出を可能にする。
【0048】
図6は、膜厚補正部104が膜厚の補正に用いる各補正値を温度及び湿度別に示す図である。膜厚補正部104は、
図6に示す各温度及び湿度の組み合わせで示される周囲環境と、各周囲環境に対応するそれぞれの膜厚補正値をデータテーブルにより記憶している。膜厚補正部104は、このデータテーブルに基づいて、温度センサー77及び湿度センサー78から出力されてくる温度及び湿度について定められている補正値を読み出し、この補正値を用いて、膜厚検出部102により検出された膜厚を補正する。例えば、温度T=26℃、湿度H=70%の場合、膜厚補正部104は補正値を-0.91とし、上記検出された膜厚の値に当該補正値を加算することにより、膜厚の値を補正する。
【0049】
決定部105は、膜厚補正部104によって補正された膜厚に対応する電圧を決定する。決定部105は、各膜厚の値に対応するそれぞれの帯電電圧を予めデータテーブル等により記憶しており、上記補正された膜厚に対応する電圧を当該データテーブルから読み出して、画像形成時の帯電電圧として決定する。また、感光体ドラム21の表面電位を350(V),550(V)とするための、表面電位350(V)に対する帯電電圧と、表面電位550(V)に対する帯電電圧とが、感光体ドラム21の感光層の膜厚の各値について予め定められている。決定部105は、表面電位を350(V),550(V)とするための各帯電電圧を膜厚の値毎にデータテーブル等により記憶しており、後述する帯電電圧の補正処理時に用いる帯電電圧として決定する。
【0050】
印加バイアス制御部101は、決定部105により決定された電圧を帯電電圧として、帯電電圧印加部223により帯電ローラー222に対して印加させる。
【0051】
本発明の第1実施形態に係る画像形成装置1による帯電電圧の印加制御を説明する。
図7は本発明の第1実施形態に係る画像形成装置1による帯電電圧印加制御を示すフローチャートである。
【0052】
画像形成装置1では、予め定められた一定期間毎(例えば24時間毎、又は電源投入時等)に、画像形成時に帯電電圧印加部223が印加する帯電電圧を補正する処理が行われる。印加バイアス制御部101は、例えば制御ユニット10に内蔵されるタイマーにより時刻又は時間経過を計測し、上記一定期間が経過して帯電電圧の補正時期が到来したかを判断する(S1)。
【0053】
印加バイアス制御部101は、帯電電圧の補正時期が到来したかと判断すると(S1でYES)、帯電電圧印加部223に、感光体ドラム21の表面電位を350(V),550(V)とするための、表面電位350(V)に対する帯電電圧と、表面電位550(V)に対する帯電電圧とを印加させる。なお、決定部105は、S2の実行時に、前回の補正処理において後述のS5で検出された膜厚の値に対応する表面電位350(V)に対する帯電電圧と、表面電位550(V)に対する帯電電圧とを、S2で用いられる電圧として決定する。
【0054】
S2において上記複数の帯電電圧が印加されると、帯電電流検知部225が、それぞれの帯電電圧印加時における帯電電流を検知する(S3)。
【0055】
続いて、膜厚検出部102は、上記S2において印加された各帯電電圧と、これらの電圧のそれぞれの印加時に帯電電流検知部225により検知された帯電電流とに基づいて、帯電電圧の増加に伴う帯電電流の増減の傾きを示すI−V特性を算出する(S4)。
【0056】
膜厚検出部102は、各I−V特性とこれら対応する膜厚との関係を示す上記データテーブルから、S4で算出したI−V特性に対応する膜厚を読み出し、当該膜厚を感光体ドラム21の膜厚として検出する(S5)。
【0057】
次に膜厚補正部104が、温度センサー77及び湿度センサー78からこの時点での温度及び湿度を取得する(S6)。そして、膜厚補正部104は、温度及び湿度の組み合わせと、膜厚の補正値との関係を示す上述したデータテーブルに基づいて、S6で取得した温度及び湿度について定められている補正値を読み出し、この補正値を用いて、S5で検出された膜厚を補正する(S7)。
【0058】
そして、決定部105は、S7で補正された膜厚に対応する電圧を、各膜厚の値に対応するそれぞれの帯電電圧を記憶した上記データテーブル等から読み出して、画像形成時の帯電電圧として決定する(S8)。
【0059】
印加バイアス制御部101は、S8で決定された帯電電圧を画像形成時の帯電電圧として設定し、画像形成時には、当該設定した帯電電圧を用いて帯電電圧印加部223に帯電電圧を印加させる(S9)。
【0060】
なお、決定部105は、S8においては、上記補正された膜厚に対する電圧の決定に代えて、補正された膜厚に対応する帯電電流を決定するようにしてもよい。このとき、決定部105は、各膜厚の値に対応する帯電電流を記憶したデータテーブル等を有し、S7で補正された膜厚に対応する帯電電流を当該データテーブルから読み出すことにより、上記帯電電流の決定を行う。この場合、印加バイアス制御部101は、画像形成時に、帯電電流検知部225により検知される電流をモニターし、当該検知される電流が、上記決定された帯電電流となるように、帯電電圧を可変させる帯電電圧印加制御を行う。
【0061】
このように、第1実施形態に係る画像形成装置1では、I−V特性に基づいて感光体ドラム21の感光層の膜厚を検出して、当該検出した膜厚を温度及び湿度からなる周囲環境に応じて補正し、画像形成時には、この補正後の膜厚に応じた帯電電圧を用いて、印加バイアス制御部101が、帯電電圧印加部223に帯電電圧を印加させる。このため、感光体ドラム21及び帯電装置22の周囲環境が変化し、更に感光体ドラム21の膜厚が経年変化した場合であっても、当該変化した周囲環境及び膜厚に応じて適切な帯電電圧を帯電ローラー222に印加することが可能になる。このため、周囲環境変化及び膜厚の経年変化に拘わらず、感光体ドラム21の表面電位を、好適な目標値に保つ帯電電圧の印加制御を行うことができる。
【0062】
次に、本発明の第2実施形態に係る画像形成装置1を説明する。
図8は、第2実施形態に係る画像形成装置1の主要内部構成を概略的に示す機能ブロック図である。なお、
図3に示した第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0063】
第2実施形態に係る画像形成装置1では、決定部105は、膜厚補正部104により補正された膜厚に対する電圧の決定に代えて、補正された膜厚に対応する帯電電流を決定する。上記と同様に、決定部105は、各膜厚の値についての帯電電流の値を記憶したデータテーブル等を有し、補正された膜厚に対応する帯電電流を当該データテーブルから読み出すことにより、上記帯電電流の決定を行う。
【0064】
そして、第2実施形態に係る画像形成装置1は、第1実施形態で示した構成に加えて、更に電流補正部106を備える。電流補正部106は、決定部105によって上記のようにして決定された帯電電流を、温度センサー77及び湿度センサー78によって検出された温度及び湿度に応じて補正する。
【0065】
電流補正部106は、温度センサー77及び湿度センサー78により検出される温度及び湿度の各組み合わせに対する帯電電流補正値をデータテーブル等により記憶している。
図9は、決定部105により決定された帯電電流の補正に用いる各帯電電流補正値を温度及び湿度別に示す図である。例えば、電流補正部106は、
図9に示す内容を有するデータテーブルを記憶している。そして、電流補正部106は、決定部105によって帯電電流が決定されたとき、この時点で温度センサー77及び湿度センサー78から温度及び湿度を取得し、当該温度及び湿度の組み合わせに対応する帯電電流補正値を読み出す。そして、電流補正部106は、当該読み出した帯電電流補正値を、上記決定された帯電電流に加算することにより、当該帯電電流を周囲環境に応じて補正する。例えば
、温度T=26℃、湿度H=70%の場合、電流補正部106は補正値を0.75とし、上記決定された帯電電流の値に当該補正値を加算することにより、決定された帯電電流を周囲環境に応じて補正する。
【0066】
印加バイアス制御部101は、帯電電流検知部225により検知される電流をモニターし、当該検知される電流が、上記電流補正部106による補正後の帯電電流となるように、帯電電圧を可変させる帯電電圧印加制御を行う。
【0067】
本発明の第2実施形態に係る画像形成装置1による帯電電圧の印加制御を説明する。
図10は本発明の第2実施形態に係る画像形成装置1による帯電電圧印加制御を示すフローチャートである。なお、
図7を用いて説明した第1実施形態と同様の処理は説明を省略する。
【0068】
第2実施形態では、膜厚補正部104により感光体ドラム21表面の感光層の膜厚が補正されると(S17)、決定部105は、当該補正された膜厚に対する帯電電流を上記データテーブルに基づいて決定する(S18)。
【0069】
そして、電流補正部106は、この時点で温度センサー77及び湿度センサー78から温度及び湿度を取得し(S16で取得された温度及び湿度を用いてもよい)、当該温度及び湿度の組み合わせに対応する帯電電流補正値を、電流補正部106が保有する上記データテーブルから読み出す。電流補正部106は、当該読み出した帯電電流補正値を用いて、上記設定された帯電電流を補正する(S19)。
【0070】
印加バイアス制御部101は、帯電電流検知部225により検知される電流が、S19において補正された後の帯電電流となるように、すなわち、上記補正された帯電電流を目標値として、帯電電圧を可変させる帯電電圧印加制御を行う(S20)。
【0071】
このように、I−V特性に基づいて感光体ドラム21の感光層の膜厚を検出して、当該検出した膜厚を温度及び湿度からなる周囲環境に応じて補正し、画像形成時には、この補正後の膜厚に応じた帯電電流となるように、印加バイアス制御部101が、帯電電圧印加部223に印加させる帯電電圧を可変させる制御を行う。このため、感光体ドラム21及び帯電装置22の周囲環境が変化し、更に感光体ドラム21の膜厚が経年変化した場合であっても、当該変化した周囲環境及び膜厚に応じて適切な帯電電圧を帯電ローラー222に印加することが可能になる。このため、周囲環境変化及び膜厚の経年変化に拘わらず、感光体ドラム21の表面電位を、好適な目標値に保つ帯電電圧の印加制御を実現できる。
【0072】
なお、本発明は上記実施の形態の構成に限られず種々の変形が可能である。例えば、温度センサー77及び湿度センサー78の一方のみが備えられ、膜厚補正部104が、当該
一方のセンサーから出力されてきた値を用いて上記膜厚補正を行う場合、膜厚補正部104は、当該一方のセンサーが出力する温度又は湿度のいずれかと、これに対応する補正値とをデータテーブルにより記憶するようにする。
【0073】
また、
図1乃至
図10を用いて上記各実施形態に示した構成及び処理は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明の構成及び処理はこれに限定されるものではない。