特許第6043740号(P6043740)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043740
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/16 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   G03G21/16 133
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-27444(P2014-27444)
(22)【出願日】2014年2月17日
(65)【公開番号】特開2015-152807(P2015-152807A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年1月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】池谷 岳志
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−232296(JP,A)
【文献】 特開2002−111243(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/141219(WO,A1)
【文献】 特開平10−149077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に開閉可能に取り付けられるカバーと、閉止状態において該カバーの開放を規制するロック機構と、を備えた画像形成装置であって、
前記ロック機構は、
前記装置本体と係合して前記カバーの閉止状態からの開放を規制するロック位置と、前記装置本体との係合が解除されて前記カバーの開放を許容するロック解除位置との間を移動可能な第1のロック部材及び第2のロック部材と、
前記第1のロック部材及び前記第2のロック部材を前記ロック位置と前記ロック解除位置との間で移動させるレバー部材と、を有し、
前記第1のロック部材と前記レバー部材と前記第2のロック部材とは、前記第1のロック部材及び前記第2のロック部材の移動方向に沿ってこの順で配置され、
前記第1のロック部材及び前記第2のロック部材は、前記ロック位置における前記装置本体との掛かり量が前記第1のロック部材の方が前記第2のロック部材よりも大きくなるように形成され、前記第1のロック部材には、前記ロック解除位置において前記カバーの開放方向への回動によって回動可能な係合片が設けられ、
前記レバー部材の移動によって前記第2のロック部材によるロックが解除された後、前記カバーの開放方向への回動によって前記係合片が回動することにより前記第1のロック部材のロックが解除されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1のロック部材及び前記第2のロック部材は、前記ロック位置と前記ロック解除位置との間を、前記カバーの開閉方向に対して交差する方向に移動可能に前記カバーに支持されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記係合片は、前記カバーの開閉方向に対して交差する方向における前記第1のロック部材の一端に薄肉部を介して連結されており、前記係合片と前記第1のロック部材と前記薄肉部とは、可撓性を有する樹脂材料で一体成型されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記レバー部材は、前記第1のロック部材及び前記第2のロック部材の前記移動方向と交差する方向に前記カバーに沿ってスライド移動することにより、前記第1のロック部材と前記第2のロック部材とを前記ロック位置と前記ロック解除位置との間で移動させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置本体に開閉可能に取り付けられたカバーを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機やプリンター等の画像形成装置には、装置本体に開閉可能に取り付けられるカバーが備えられている。カバーは、通常使用時には装置本体の内部を閉止する一方、装置本体の内部で発生した紙詰まりを処理する際等には開放されるようになっている。このようなカバーは、一端側に支軸を形成し、この支軸の周りを他端側が開閉するように設けられた構造が一般的である。また、カバーには、閉止位置において装置本体に係合してカバーを回動不能にロックするロック機構が設けられているのが一般的である。
【0003】
ロック機構は、開閉される端部側付近の両側部において装置本体とロックされるように設けられていることが多い。例えばカバーの下端側に支軸を形成し、上端側を開閉する構造では、カバーを開く際に左右のロック機構が同時に解除された場合は、使用者は違和感なくカバーを開くことができる。しかし、カバーや装置本体の部品の寸法にばらつきがあると、左右のロック機構においてカバーと装置本体との係合量にずれが生じ、一方のロック機構は解除され他方のロック機構は解除されないようなカバー片開き状態になることがある。
【0004】
これに対して例えば特許文献1には、開閉レバーと、開閉レバーと一体に回動するシャフトと、シャフトの左右両端に設けられたロック部材と、を備えたロック機構を有する画像形成装置が開示されている。この画像形成装置では、閉止位置では両ロック部材を装置本体に係合させる方向に開閉レバーが付勢されて、カバーを閉止姿勢に維持している。カバーを開放する際は、開閉レバーによってシャフトを回動させることで、両ロック部材と装置本体との係合を同時に解除する。
【0005】
このようなロック部材を回動させるタイプのロック機構においては、使用者はカバーと装置本体との係合量以上にシャフトを回動させる傾向があるので、ロック機構を左右同時に解除することが可能となる。
【0006】
また、上記特許文献2には、ロック部材をシャフトの中央にも設けることでカバーの片閉まりを防止した画像形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−246063号公報
【特許文献2】特開2000−98681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら上記特許文献1及び特許文献2のロック機構においては、開閉レバーを回動させるために使用者の指をかけるスペースが必要となり、画像形成装置のより省スペース化を求める近年の傾向には対応できない。一方、省スペース化が可能なロック機構として、開閉レバーを上下方向にスライドさせてロック部材と装置本体との係合を解除するスライドタイプのロック機構も存在する。しかしこのスライドタイプのロック機構では、左右のロック機構において、カバーと装置本体との係合量のずれに起因するカバー片開き状態が生じやすかったり、カバー開時に使用者が違和感を覚えたりするという問題がある。
【0009】
そこで本発明は上記事情を考慮し、スライドタイプのロック機構を備えると共に、片開き状態になることなく開閉可能なカバーを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、装置本体に開閉可能に取り付けられるカバーと、閉止状態において該カバーの開放を規制するロック機構と、を備えた画像形成装置であって、前記ロック機構は、前記装置本体と係合して前記カバーの閉止状態からの開放を規制するロック位置と、前記装置本体との係合が解除されて前記カバーの開放を許容するロック解除位置との間を移動可能な第1のロック部材及び第2のロック部材と、前記第1のロック部材及び前記第2のロック部材を前記ロック位置と前記ロック解除位置との間で移動させるレバー部材と、を有し、前記第1のロック部材及び前記第2のロック部材は、前記ロック位置における前記装置本体との掛かり量が前記第1のロック部材の方が前記第2のロック部材よりも大きくなるように形成され、前記第1のロック部材には、前記ロック解除位置において前記カバーの開放方向への回動により回動可能な係合片が設けられていることを特徴とする。
【0011】
このような構成を採用することにより、カバーを開く際に、第2のロック部材と装置本体との係合が最初に解除され、その後で第1のロック部材の係合片が回動して第1のロック部材と装置本体との係合が解除されるようになるので、カバーを片開き状態になることなく開放することができる。
【0012】
本発明の画像形成装置において、前記第1のロック部材及び前記第2のロック部材は、前記ロック位置と前記ロック解除位置との間を、前記カバーの開閉方向に対して交差する方向に移動可能に前記カバーに支持されていることを特徴としても良い。
【0013】
このような構成を採用することにより、第1のロック部材及び第2のロック部材をカバーの厚さの範囲内に収容することができ、省スペース化を図ることができる。また、第1のロック部材及び第2のロック部材は、カバーに形成された中空部に収容することができるので、取り付けるための専用の部品が不要となり、部品点数を削減できる。
【0014】
本発明の画像形成装置において、前記係合片は、前記カバーの開閉方向に対して交差する方向における前記第1のロック部材の一端に薄肉部を介して連結されており、前記係合片と前記第1のロック部材と前記薄肉部とは、可撓性を有する樹脂材料で一体成型されていることを特徴としても良い。
【0015】
このような構成を採用することにより、第1のロック部材を容易に成型することができる。
【0016】
前記レバー部材は、前記第1のロック部材及び前記第2のロック部材の前記移動方向と交差する方向に前記カバーに沿ってスライド移動することにより、前記第1のロック部材と前記第2のロック部材とを前記ロック位置と前記ロック解除位置との間で移動させることを特徴としても良い。
【0017】
このような構成を採用することにより、レバー部材をカバーの厚さの範囲内に収容することができ、省スペース化を図ることができる。また、レバー部材は、カバーに形成された中空部に収容することができるので、取り付けるための専用の部品が不要となり、部品点数を削減できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、スライドタイプのロック機構を備えたカバーであっても、片開き状態になったり使用者が違和感を覚えたりすることなく開閉動作できる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るプリンターの内部構造を模式的に示す側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るプリンターにおいて、後面カバー開放状態を示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係るプリンターにおいて、後面カバー閉止状態を示す斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係るプリンターにおいて、後面カバー閉止状態を示す正面図である。
図5】本発明の一実施形態に係るプリンターにおいて、後面カバー閉止状態を示す横断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係るプリンターにおいて、後面カバー閉止状態における後面カバーと装置本体との位置関係を示す横断面図であり、図6(A)は左側端部を示し、図6(B)は右側端部を示す。
図7】本発明の一実施形態に係るプリンターにおいて、後面カバーのロック機構を示す図であり、図7(A)は斜視図、図7(B)は係合片を拡大して示す斜視図である。
図8】本発明の一実施形態に係るプリンターにおいて、ロック位置におけるロック機構を示す図であり、図8(A)は平面図、図8(B)は正面図である。
図9】本発明の一実施形態に係るプリンターにおいて、ロック解除位置におけるロック機構を示す図であり、図9(A)は平面図、図9(B)は正面図である。
図10図10(A)は、本発明の一実施形態に係るプリンターにおいて、本体部を回動した際のロック機構を示す平面図であり、図10(B)は係合片の回動を説明する平面図である。
図11】本発明の一実施形態に係るプリンターにおいて、第1のロック部材の係合片の回動状態を説明する図である。
図12】本発明の一実施形態に係るプリンターにおいて、第1のロック部材の突起の他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る画像形成装置について説明する。
【0021】
図1を用いてプリンター(画像形成装置)の全体の構成について説明する。図1は本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのプリンターの内部構造を模式的に示す側面図である。なお、以下の説明では、図1に示す矢印Frが示す方向をプリンターの正面側(前側)とし、左右の向きは、プリンターを正面から見た方向を基準とする。
【0022】
図1に示されるように、プリンター1は、箱型形状の装置本体(装置本体)2を備えており、装置本体2の上端部には、画像読取装置3が設けられている。装置本体2の下部には用紙(図示せず)を収納する給紙カセット4が設けられ、装置本体2の上面には排紙トレイ5が設けられている。
【0023】
装置本体2の内部において、排紙トレイ5の下方には、トナーコンテナ6が配置されている。トナーコンテナ6の後方には、レーザー・スキャニング・ユニット(LSU)で構成される露光器7が配置されている。露光器7の下方には、画像形成部8が設けられている。画像形成部8には、像担持体である感光体ドラム9が回転可能に設けられており、感光体ドラム9の周囲には、帯電器10と、現像器11と、転写ローラー12と、クリーニング装置13とが、感光体ドラム9の回転方向(図1の矢印X参照)に沿って配置されている。
【0024】
装置本体2の内部には、給紙カセット4から排紙トレイ5に向かう用紙の搬送経路15が設けられている。搬送経路15には、上流側から順に、給紙部16と、感光体ドラム9と転写ローラー12とによって構成される転写部17と、定着装置18と、排紙部19とが設けられている。また、転写部17および定着装置18の下方には、両面印刷用の反転経路20が形成されている。
【0025】
装置本体2の後側の面には、下端部に設けられた支軸31を中心として開閉可能な後面カバー30が設けられている。装置本体2の後側の面と後面カバー30の前側の面との間に、定着装置18から排紙部19に向かう搬送経路15が形成されており、後面カバー30を開くことによって、搬送経路15に生じた紙詰まり等を処理できるようになっている。
【0026】
次に、このような構成を備えたプリンター1の画像形成動作について説明する。
【0027】
プリンター1に電源が投入されると、各種パラメーターが初期化され、定着装置18の温度設定等の初期設定が実行される。そして、プリンター1に接続されたコンピューター等から画像データが入力され、印刷開始の指示がなされると、以下のようにして画像形成動作が実行される。
【0028】
まず、帯電器10によって感光体ドラム9の表面が帯電された後、露光器7からのレーザー光(図1の二点鎖線P参照)により感光体ドラム9に対して画像データに対応した露光が行われ、感光体ドラム9の表面に静電潜像が形成される。この静電潜像は、トナーコンテナ6から現像器11に供給されたトナーによりトナー像に現像される。
【0029】
一方、給紙部16によって給紙カセット4から取り出された用紙は、上記した画像形成動作とタイミングを合わせて転写部17へと搬送され、転写部17において感光体ドラム9上のトナー像が用紙に転写される。トナー像を転写された用紙は、搬送経路15を下流側へと搬送されて定着装置18に進入し、この定着装置18において用紙にトナー像が定着される。トナー像が定着された用紙は、排紙部19から排紙トレイ5に排出される。感光体ドラム9上に残留したトナーは、クリーニング装置13によって回収される。
【0030】
次に、後面カバー30について、図2図6を参照して説明する。図2は後面カバー開放状態を背面側から見た斜視図、図3は後面カバー閉止状態を背面側から見た斜視図、図4は後面カバー閉止状態を示す正面図、図5は後面カバー閉止状態を示す図4のA−A部分における断面図、図6は閉止状態における後面カバーと装置本体との位置関係を示す図であり、図6(A)は後面カバーの左端部を示す平面図、図6(B)は後面カバーの右端部を示す平面図である。
【0031】
後面カバー30は、前述のように、装置本体2の後面に下端部に設けられた支軸31を中心として開放位置(図2参照)と閉止位置(図3参照)との間を開閉可能に取り付けられている。装置本体2の後面には、図2に示されるように、左右方向に所定の間隔を開けて配置された上下方向に延びる複数のリブ列22からなる搬送経路15の一方の面が形成されている。リブ列22の左右両端の下方には、後面カバー30と係合する第1の係合部24と第2の係合部25とが形成されている。第1の係合部24及び第2の係合部25は、左右方向に貫通した方形の開口部である。
【0032】
後面カバー30は、図2等に示されるように、搬送経路15を閉じる本体部(カバー)32と、搬送経路15を閉じた姿勢で本体部32の開放を阻止するロック機構33と、を備える。
【0033】
本体部32は、図2図4等に示されるように、横長の長方形状の板状の部材である。本体部32の前側の面には、左右方向に所定の間隔を開けて配置された、下から上に向かって斜め後ろ方向に延びる複数のリブ列34からなる搬送経路15の他方の面が形成されている。本体部32のリブ列34は、装置本体2の後面に形成されたリブ列22と対応するように形成されており、両リブ列34、22間をシートが上方向へ搬送されるようになっている。
【0034】
本体部32の上端面の左側の部分と右側の部分とには、図5に示されるように、左右方向(後面カバー30の開閉方向と交差する方向)に沿った左中空部35と右中空部36とが形成されている。左中空部35の左端面及び右中空部36の右端面は開口している。図6(A)及び図6(B)にわかりやすく示されるように、左中空部35の開口及び右中空部36の開口は、本体部32が閉止位置に回動した際に、装置本体2に形成された第1の係合部24及び第2の係合部25とそれぞれ対応するようになっている。また、本体部32の上端面の中央部には、左右の中空部35、36の間から、左中空部35及び右中空部36の長手方向と直交する下方に延びる中央中空部37が形成されている。図5等に示されるように、左中空部35、右中空部36、中央中空部37には、ロック機構33が収容される。図6(A)に示されるように、本体部32において、左中空部35の左端部付近には、前方側に対向する規制リブ38が形成されている。規制リブ38は板状の形状であり、平面視において、左中空部35に沿って左右方向に延設された平坦面38aと、平坦面38aの右端を基点として左中空部35から離れる方向(下方)に傾斜しながら右方に延設された傾斜面38bと、を備えている。
【0035】
本体部32の下端面の左右端部のそれぞれには、図4等に示されるように、下方に向かって支持片39が突設されている。左右の支持片39には、それぞれ左方向及び右方向に向かって支軸31が突設されている。これらの支軸31は装置本体2に設けられた軸受部(図示されず)に軸支されており、本体部32は、搬送経路15を閉じる閉止位置と搬送経路15を開放する開放位置との間を、支軸31を中心として回動可能となっている。
【0036】
次に、ロック機構33について、図7図9等を参照して説明する。図7(A)はロック機構を前面側から見た斜視図、図7(B)はロック機構の第1のロック部材の係合片を拡大して示す斜視図、図8は閉止状態におけるロック機構を示す図であり、図8(A)は平面図、図8(B)は正面図、図9は解放状態におけるロック機構を示す図であり、図9(A)は平面図、図9(B)は正面図である。
【0037】
ロック機構33は、本体部32の上端面に沿って配置されており、装置本体2と係合して本体部32の閉止状態からの開放を規制するロック位置と、装置本体2との係合が解除されて本体部32の開放位置への回動を許容するロック解除位置との間を移動可能な第1のロック部材41及び第2のロック部材42と、第1のロック部材41及び第2のロック部材42のそれぞれの移動方向と交差する方向に移動することにより、第1のロック部材41及び第2のロック部材42をロック位置とロック解除位置との間で移動させるレバー部材43と、を有する。第1のロック部材41、第2のロック部材42、レバー部材43は、例えばポリアセタール樹脂(POM)、ポリアミド樹脂(PA)等の可撓性を有する樹脂で形成される。
【0038】
第1のロック部材41は、断面形状が方形で左右方向に長い中空枠状の部材であり、長さ方向において前後方向の厚さが二段階に形成されている。第1のロック部材41において、右端面と下面との間の角部には、左方向に向かって下方に傾斜した右傾斜面45が形成されている。また、左端面には、左方向に突出する突起46が形成されている。突起46は断面形状が方形の中空枠状であり、左端面と前面との間の角部には、左方向に向かって後方に傾斜した左傾斜面47が形成されている。
【0039】
第1のロック部材41には、突起46からやや右寄りの位置に、前面から後面に向かって平面形状がU字状に切り欠かれた凹部48が形成されている。凹部48の底部48aと第1のロック部材41の後側の面との間は薄肉に形成されており、凹部48よりも左側の部分49(以降、係合片という)は、凹部48よりも右側の部分に対して凹部48の底部48aを中心として前後方向に回動可能となっている。図7(B)に示されるように、凹部48の左側には、壁部50が形成されており、壁部50の左側には中空部51が形成されている。
【0040】
第1のロック部材41は、本体部32の上端面に形成された左中空部35内を左右方向にスライド可能に支持されている。具体的には、第1のロック部材41は、突起46が左中空部35の開口から左方向に突き出て、装置本体2の第1の係合部24と比較的深く係合するロック位置(図6(A)、図8参照)と、突起46が左中空部35の開口から左方向にやや突き出して装置本体2の第1の係合部24と比較的浅く係合するロック解除位置(図9参照)と、の間をスライドする。詳細には、図8に示されるロック位置において、突起46と第1の係合部24との掛かり量L1が、図9に示されるロック解除位置において、突起46と第1の係合部24との掛かり量L2よりも長くなるように設定されている。さらに、掛かり量L2は、ロック解除位置において本体部32を開方向に回動した際に、係合片49が凹部48の底部48aを中心として回動して第1の係合部24から離間し、第1のロック部材41と第1の係合部24との係合が解除可能となるように設定されている。
【0041】
第1のロック部材41は、左中空部35内において、付勢部材(図示されず)によってロック解除位置の方向(右方向)へ付勢されている。
【0042】
第2のロック部材42は、断面形状が方形の左右方向に長い中空枠状の部材であり、長さ方向において前後方向の厚さが二段階に形成されている。第2のロック部材42において、左端面と下面との間の角部には、右方向に向かって下方に傾斜した左傾斜面51が形成されている。また、右端面には、右方向に突出する突起52が形成されている。突起52は断面形状が方形の中空枠状であり、右端面と前面との間の角部には、右方向に向かって後方に傾斜した右傾斜面53が形成されている。
【0043】
第2のロック部材42は、本体部32の上端面に形成された右中空部36内を左右方向にスライド可能に支持されている。具体的には、第2のロック部材42は、突起52が装置本体2の第2の係合部25に係合するロック位置(図6(B)、図8参照)と、突起52が装置本体2の第2の係合部25から離間したロック解除位置(図9参照)との間をスライドする。図8に示されるロック位置において、突起52と第2の係合部との掛かり量L3は、ロック位置において第1のロック部材41の突起46と第1の係合部24との掛かり量L1よりも短く、ロック解除位置においては必ず第2の係合部25から離間するように設定されている。さらに、掛かり量L1と掛かり量L3との差は、装置本体2や後面カバー30の各部の寸法の平均的なばらつき量よりも大きく設定されている。掛かり量L1と掛かり量L3との差は、例えば0.5mmである。
【0044】
第2のロック部材42は、右中空部36内において、付勢部材(図示されず)によってロック解除位置の方向(左方向)へ付勢されている。
【0045】
レバー部材43は、前後方向に扁平で横長の直方体状の部材である。レバー部材43の上端面には、下方に凸の湾曲状の凹部55が形成されている。また、レバー部材43の上端面と左右の側面との角部には、上端面から左方向へ向かって下方へ傾斜した左傾斜面56と、上端面から右方向へ向かって下方へ傾斜した右傾斜面57とがそれぞれ形成されている。左右傾斜面56、57は、第1のロック部材41の右傾斜面45と第2のロック部材42の左傾斜面51とにそれぞれ対応するように形成されている。
【0046】
レバー部材43は、本体部32の上端面に形成された中央中空部37に、上下方向にスライド可能に支持されている。レバー部材43の凹部55の開口部は、本体部32の後面とほぼ同一面上に形成されており、本体部32の後面に沿って上下方向にスライド可能に支持されている。詳細には、レバー部材43が上方向にスライドした状態では、図8に示されるように、左右傾斜面56、57の下部が、第1のロック部材41の右傾斜面45と第2のロック部材42の左傾斜面51のそれぞれの上部に係合し、第1のロック部材41及び第2のロック部材42をロック位置にスライドさせている。
【0047】
一方、レバー部材43が下方向にスライドすると、第1のロック部材41及び第2のロック部材42はそれぞれ右方向及び左方向に付勢されているので、図9に示されるように、第1のロック部材41の右傾斜面45及び第2のロック部材42の左傾斜面51がそれぞれ左傾斜面56及び右傾斜面56に沿って乗り上げ、第1のロック部材41及び第2のロック部材42はロック解除位置にスライドする。
【0048】
レバー部材43は、付勢部材(図示されず)によってロック位置に向かって上方に付勢されている。レバー部材43の付勢部材の付勢力は、第1のロック部材41及び第2のロック部材42をそれぞれロック解除位置に向かって付勢する付勢部材の付勢力よりも大きく設定されている。つまり、レバー部材43は自然姿勢においては、付勢部材によってロック位置にスライドしており、第1のロック部材41及び第2のロック部材42をそれぞれロック位置にスライドさせている。
【0049】
上記構成を有する後面カバー30の開閉動作について、図8図11を参照して説明する。図10は、後面カバー開放位置におけるロック機構を示す平面図、図11は、係合片の回動状態を示す図である。後面カバー閉止位置においては、本体部32は支軸31を中心として略垂直な姿勢に回動しており、ロック機構33によって閉止位置に回動不能にロックされている。すなわち、図8に示されるように、ロック機構33においては、第1のロック部材41及び第2のロック部材42はレバー部材43によってそれぞれロック位置にスライドしており、本体部32の閉止位置からの開放を阻止している。また、第1のロック部材41においては、図11に示されるように、壁部50の先端部が本体部32の規制リブ38の平坦面38aに対向しており、係合片49の底部48aを中心とした前後方向への回動が規制されている。
【0050】
レバー部材43の凹部55を押し下げると、図9に示されるように、第1のロック部材41及び第2のロック部材42はそれぞれ付勢部材で付勢されてロック解除位置にスライドする。すなわち、第2ロック部材42においては、突起52が第2の係合部25から完全に離間して、第2の係合部25との係合が解除される。一方、第1のロック部材41においては、突起46の先端の部分が第1の係合部24に浅く係合したままである。また、図11の二点鎖線で示されるように、第1のロック部材41の壁部50の先端部が、本体部32の規制リブ38の傾斜面38bに対向し、中空部51は規制リブ38の平坦面38aに対向する。これにより、係合片49は底部48aを中心として回動可能となる。
【0051】
次に、レバー部材43の凹部55を押し下げたまま支軸31を中心として本体部32を開方向に回動させる。すると、第2のロック部材42においては、突起52と第2の係合部25とは干渉せず、本体部32は回動可能である。一方、第1のロック部材41においては、突起46が第1の係合部24と干渉するが、本体部32に開方向への力を加えることによって、図10に示されるように、突起46を含む係合片49が凹部48の底部48aを中心として回動し、本体部32の回動に伴ってやがて第1の係合部24から離間する。これにより、第1のロック部材41及び第2のロック部材42の双方が装置本体2の第1の係合部24及び第2の係合部25のそれぞれから完全に離間し、本体部32は支軸31を中心として開放位置まで回動可能となる。
【0052】
第1のロック部材41及び第2のロック部材42が装置本体2から離間した後、レバー部材43の押圧を解除すると、第1のロック部材41及び第2のロック部材42はロック位置にスライドする。また、係合片49は、第2の係合部24から完全に離間した後、弾性力によって元の姿勢に戻る。
【0053】
後面カバー30を閉じる際は、支軸31を中心として本体部32を閉止位置に回動させる。第1のロック部材41及び第2のロック部材42はロック位置にスライドしているので、やがて、第1のロック部材41の突起46の左傾斜面が第1の係合部24の後方の装置本体壁面2aに当接すると共に、第2のロック部材42の突起52の右傾斜面53が第2の係合部25の後方の装置本体壁面2bに当接する。
【0054】
さらに本体部32を回動させると、第2のロック部材42においては、右傾斜面53の前端から後端に沿って装置本体壁面2bが当接するにしたがって、第2のロック部材42は徐々に左方向に押圧される。これにより、レバー部材43は付勢力に抗して下方にスライドするようになる。
【0055】
一方、第1のロック部材41においては、突起46が第1の係合部24の後方の装置本体壁面2bに当接するが、第2のロック部材42によるレバー部材43の下方へのスライドに伴って第1のロック部材41も右方向へ付勢され、さらに、凹部48の底部48aを中心として係合片49が回動する。
【0056】
そして、第1のロック部材41の突起46及び第2のロック部材42の突起52がそれぞれ第1の係合部24及び第2の係合部25に係合すると、レバー部材43は付勢部材によってロック解除位置にスライドし、第1のロック部材41及び第2のロック部材42をロック位置に係止する。これにより、第1のロック部材41及び第2のロック部材42がそれぞれロック位置にスライドし、本体部32を閉止状態に保持してロックする。
【0057】
上記したように本発明の一実施形態に係るプリンター1によれば、レバー部材43を上下方向にスライドさせて装置本体2とロック及びロック解除するタイプのロック機構33において、片開きを起こさずに後面カバー30を開放することができる。すなわち、ロック位置における第2のロック部材42の突起52と第2の係合部25との掛かり量L3を、ロック位置における第1のロック部材41の突起46と第1の係合部24との掛かり量L1よりも短く設定したので、レバー部材43の押し下げによって第2のロック部材42の係合が必ず最初に解除される。この状態では第1のロック部材41の係合片49は第1の係合部24に浅く係合しているが、その後で本体部32を開方向へ回動させると第1のロック部材41の係合片49が回動して第1のロック部材41の係合が解除されるようになっている。
【0058】
また、掛かり量L1と掛かり量L3との差(ロック解除位置における第1のロック部材41の掛かり量L2)は、図10(B)に示されるように、第1のロック部材41の係合片49が凹部48の底部48aを中心として回動した際の係合片49の先端の回転軌跡において、第1のロック部材41の移動方向における係合片49の先端の変位量Xであり、この値が後面カバー30や装置本体2の各部の寸法の平均的なばらつき量よりも大きく設定されている。このように、ばらつき量以上に第1のロック部材41の係合片49が変位するので、寸法のばらつきがあっても、片開き状態になることなく後面カバー30を開くことができる。また、第1のロック部材41、第2のロック部材42及びレバー部材43は、簡単な形状であり、容易に成型できる部材である。さらに、取り付けるための専用の部材を必要とせずに後面カバー30に支持されており、部品材料の低減や装置の小型化が可能となる。
【0059】
また、本実施形態においては、第1のロック部材41の係合片49を回動可能とするために、第1のロック部材41に前面から後面に向かってU字状に切り欠かれた凹部48を形成したが、凹部48を後面から前面に向かってU字状に切り欠くように形成してもよい。ただし、係合片49の回動の繰り返し耐性を考慮すると、前面から後面に向かって切り欠くように形成することが好ましい。また、強度を考慮して凹部48の底部48aを補強するように構成しても良い。あるいは、係合片49を第1のロック部材41と別の部品として形成し、係合片49と第1のロック部材41とを板バネ等の弾性部材で回動可能に接続してもよい。
【0060】
次に、本実施形態に係る後面カバー30のロック機構33において、第1のロック部材41の他の例を、図12を参照して説明する。図12は第1のロック部材の突起を示す平面図である。
【0061】
第1のロック部材41の突起46には、左傾斜面47と後面との角に、後右方向に向かって傾斜した第2の傾斜面60が形成されている。
【0062】
この実施形態においては、本体部32を回動させた際に、第2の傾斜面60が第1の係合部24の後側の装置本体後面2aに沿うので、第1のロック部材41の突起46が装置本体後面2aをスムーズに通過できるようになる。
【0063】
さらに、本発明の実施形態では、プリンター1に本発明の構成を適用した場合について説明したが、他の異なる実施形態では、複写機、ファクシミリ、複合機等のプリンター1以外の画像形成装置に本発明の構成を適用しても良い。
【0064】
さらに、上記した本発明の実施形態の説明は、本発明に係る画像形成装置における好適な実施の形態を説明しているため、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。すなわち、上記した本発明の実施の形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能であり、上記した本発明の実施の形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【符号の説明】
【0065】
1 プリンター(画像形成装置)
2 装置本体(装置本体)
30 後面カバー
32 本体部(カバー)
33 ロック機構
41 第1のロック部材
42 第2のロック部材
43 レバー部材
49 係合片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12