特許第6043747号(P6043747)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043747
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】射出成形機の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/80 20060101AFI20161206BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B29C45/80
   B29C45/26
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-59390(P2014-59390)
(22)【出願日】2014年3月24日
(65)【公開番号】特開2015-182266(P2015-182266A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2015年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227054
【氏名又は名称】日精樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(72)【発明者】
【氏名】春日 信一
(72)【発明者】
【氏名】関 雅夫
【審査官】 井上 由美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−039054(JP,A)
【文献】 特開2013−022842(JP,A)
【文献】 特開平06−198694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め、射出充填時に金型の可動型と固定型間に所定の隙間となるパーティング開量が生じ、かつ良品成形可能な射出圧力となる成形射出圧力及び良品成形可能な型締力となる成形型締力を求めて設定するとともに、生産時に、前記成形型締力により型締装置を型締し、かつ前記成形射出圧力をリミット圧力として設定した射出装置を駆動して前記金型に樹脂を射出充填する特定の成形方式により成形を行う際における射出成形機の制御方法であって、予め、前記金型に充填された樹脂に対する冷却時間が経過したときの前記パーティング開量の大きさが、射出開始時における前記可動型と前記固定型間の隙間よりも大きくなる、前記成形型締力を補正する補正用型締力を設定するとともに、前記補正用型締力により補正を行うタイミングを、充填開始からの経過時間又はスクリュ位置の一方を用いた前記パーティング開量に関連する間接的な監視物理量に対する閾値により設定し、生産時に、前記監視物理量を検出するとともに、検出した監視物理量の大きさを監視し、前記金型に対する射出充填中から前記金型における樹脂の収縮完了前の期間に、前記監視物理量が前記閾値に達したなら、前記成形型締力を前記補正用型締力により補正した2次型締力により制御を行い、この2次型締力を前記冷却時間が経過するまで維持することを特徴とする射出成形機の制御方法。
【請求項2】
前記補正用型締力は、前記成形型締力の5〜50〔%〕の範囲から選定した大きさに設定することを特徴とする請求項1記載の射出成形機の制御方法。
【請求項3】
前記補正には、前記成形型締力に対する補正用型締力の加算処理を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の射出成形機の制御方法。
【請求項4】
前記監視物理量には、前記パーティング開量を直接用いることを特徴とする請求項1,2又は3記載の射出成形機の制御方法。
【請求項5】
前記パーティング開量は、前記金型に付設した位置検出器により検出することを特徴とする請求項4記載の射出成形機の制御方法。
【請求項6】
前記生産時に、少なくとも前記型締装置による型締後における所定の射出準備が完了したことを条件に、射出開始時の前後所定期間の範囲における予め設定したリセットタイミングに達したなら、前記位置検出器をゼロリセットするリセット制御を行うことを特徴とする請求項5記載の射出成形機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の成形方式により成形を行う際に用いて好適な射出成形機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂の射出充填時に金型の可動型と固定型間に所定の隙間となるパーティング開量を生じさせて成形を行う特定の成形方式を用いた射出成形機としては、既に、本出願人が提案した特許文献1に開示される射出成形機が知られている。
【0003】
この射出成形機は、型締装置側の動作波形である金型のパーティング開量の変化状況を視覚により容易かつ効果的にモニタリングできるようにし、特定の成形方式により成形を行う射出成形機であっても、生産時の十分なモニタリングを可能にするとともに、成形品質及び歩留まり率等の向上を実現し、さらに、汎用性及び発展性に寄与することを目的とした波形モニタ装置であって、具体的には、成形時における時間に対するパーティング開量の変化データを検出するパーティング開量検出手段と、少なくとも金型への樹脂充填開始以降から金型の冷却時間終了までのパーティング開量検出手段により検出した変化データを、成形機コントローラに付属するディスプレイの画面の波形表示部に表示する動作波形表示手段とを有する波形モニタ装置を搭載するものであるが、基本的な成形方式として、射出充填時に金型における可動型と固定型間に所定の隙間となるパーティング開量が生じ、かつ良品成形可能な射出圧力となる成形射出圧力と良品成形可能な型締力となる成形型締力を求めて設定するとともに、成形型締力により型締装置を型締し、かつ成形射出圧力をリミット圧力として設定した射出装置を駆動して金型に樹脂を射出充填する特定の成形方式を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−22842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特定の成形方式を採用する従来における射出成形機は、次のような解決すべき課題も存在した。
【0006】
第一に、予め、良品成形可能な成形射出圧力及び成形型締力を求めて設定し、成形時に、成形射出圧力及び成形型締力となるように制御を行うため、正常な状態で生産が行われている限り必然的に良品成形が実現されるとともに、このときのパーティング開量は所定の許容範囲に収まる。一方、成形射出圧力及び成形型締力はいずれも所定の大きさに設定されるため、パーティング開量が所定の許容範囲に収まるとしても、ショット毎の大きさには変動を生じることになり、この結果、成形品の厚さ及び体積も変動を生じる。通常、一般的な成形品であれば、この程度の厚さ及び体積の変動は無視できる許容範囲となるが、成形品の寸法や体積、更には外観性などに高度の精密性が要求される場合には無視できない課題となり、これらの要求に応えるためには更なる改善の余地があった。
【0007】
第二に、パーティング開量が所定の許容範囲に収まるとしても、樹脂状態や他の外乱が影響し、正常な状態で行われていない場合には、当該許容範囲を外れてしまう。この場合、パーティング開量に対して良否判別のための判定値を設定し、この判定値を外れた成形品については成形不良と判定すればよいが、上述した特許文献1における特定の成形方式では、成形射出圧力及び成形型締力に対する制御は行わないため、一旦、成形不良が発生した場合には、その状態が継続し、結果的に、成形品の歩留まり低下を招きやすい課題も存在した。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した射出成形機の制御方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る射出成形機Mの制御方法は、上述した課題を解決するため、予め、射出充填時に金型2の可動型2mと固定型2c間に所定の隙間となるパーティング開量Lmが生じ、かつ良品成形可能な射出圧力となる成形射出圧力Pi及び良品成形可能な型締力となる成形型締力Pcを求めて設定するとともに、生産時に、成形型締力Pcにより型締装置Mcを型締し、かつ成形射出圧力Piをリミット圧力Psとして設定した射出装置Miを駆動して金型2に樹脂Rを射出充填する特定の成形方式により成形を行うに際し、予め、金型2に充填された樹脂Rに対する冷却時間が経過したときのパーティング開量Lmの大きさが、射出開始時における可動型2mと固定型2c間の隙間よりも大きくなる、成形型締力Pcを補正する補正用型締力Pcaを設定するとともに、補正用型締力Pcaにより補正を行うタイミングを、充填開始からの経過時間又はスクリュ位置の一方を用いたパーティング開量Lmに関連する間接的な監視物理量(Lm)に対する閾値(Lma)により設定し、生産時に、監視物理量(Lm)を検出するとともに、検出した監視物理量(Lm)の大きさを監視し、金型2に対する射出充填中から金型2における樹脂Rの収縮完了前の期間に、監視物理量(Lm)が閾値(Lma)に達したなら、成形型締力Pcを補正用型締力Pcaにより補正した2次型締力Pcsにより制御を行い、この2次型締力Pcsを冷却時間が経過するまで維持するようにしたことを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な態様により、補正用型締力Pcaは、成形型締力Pcの5〜50〔%〕の範囲から選定した大きさに設定することができる。一方、補正には、成形型締力Pcに対する補正用型締力Pcaの加算処理を含ませることができる。他方、監視物理量には、パーティング開量Lmを直接用いることができるとともに、このパーティング開量Lmは、金型2に付設した位置検出器3により検出することができる。また、必要により、少なくとも型締装置Mcによる型締後における所定の射出準備が完了したことを条件に、射出開始時の前後所定期間の範囲における予め設定したリセットタイミングに達したなら、位置検出器3をゼロリセットするリセット制御を行うことが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
このような手法による本発明に係る射出成形機Mの制御方法によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0012】
(1) 予め、成形型締力Pcを補正する補正用型締力Pcaを設定するとともに、補正用型締力Pcにより補正を行うタイミングを、パーティング開量Lmに関連する所定の監視物理量(Lm)に対する閾値(Lma)により設定し、生産時に、監視物理量(Lm)を検出するとともに、検出した監視物理量(Lm)の大きさを監視し、金型2に対する射出充填中から金型2における樹脂Rの収縮完了前の期間に、監視物理量(Lm)が閾値(Lma)に達したなら、成形型締力Pcを補正用型締力Pcaにより補正した2次型締力Pcsにより制御を行うようにしたため、設定された成形型締力Pcに対して、いわば成形状態に応じた強弱変更を行うことができる。この結果、成形品の厚さ及び体積が過度に変動する状態にあっても当該変動を抑制し、成形品の寸法安定性及び外観性をより高めることができる。したがって、高度の精密性が要求される成形品の成形に用いて最適となる。
【0013】
(2) 樹脂Rの状態や他の外乱が影響し、パーティング開量が過度に変動する場合であっても、成形不良を発生する前に、成形型締力Pcを補正用型締力Pcaにより補正し、成形型締力Pcの大きさを適正化するようにしたため、無用な成形不良、即ち、バリ,反り,ヒケ等の成形不良を低減できるとともに、生産時における成形品の歩留まり率(良品率)を高めることができる。
【0014】
(3) 2次型締力Pcsを、金型2に充填された樹脂Rに対する冷却時間が経過するまで維持するようにしたため、その時の成形状態に応じて適正化された大きさとなる再設定された成形型締力Pcを、いわば樹脂Rが硬化するまで維持できることになり、成形品の厚さ及び体積の変動を低減する効果を確実に確保できる。
【0015】
(4) 補正用型締力Pcaを設定するに際し、冷却時間が経過したときのパーティング開量Lmの大きさが、射出開始時における可動型2mと固定型2c間の隙間よりも大きくなるように設定したため、冷却時間が経過するまで所定のパーティング開量Lmを確実に存在させることができ、樹脂収縮を常に補完することができる。この結果、ヒケ等の成形不良を低減でき、生産時における成形品の歩留まり率(良品率)向上に寄与できる。なお、冷却時間が経過したときのパーティング開量Lmの大きさが射出を開始したときのパーティング開量Lmよりも大きくならない場合には、樹脂収縮を補完した圧縮がされなくなり、ヒケ等の成形不良を生じる虞れがある。
【0016】
(5) 監視物理量として、パーティング開量Lmに関連する間接的な監視物理量となる、充填開始からの経過時間又はスクリュ位置の一方を用いたため、必要に応じた選択が可能になり、監視の多様性を高めることができる。また、必要により二以上組合わせて監視することも可能になるなど、監視の確実性及び発展性にも寄与できる。
【0017】
(6) 好適な態様により、補正用型締力Pcaを、成形型締力Pcの5〜50〔%〕の範囲から選定した大きさに設定すれば、本来の良品成形可能なパーティング開量Lmを確保しつつ、成形品の厚さ及び体積の変動を抑制する機能を確実かつ安定に発揮させることができる。
【0018】
(7) 好適な態様により、補正として、成形型締力Pcに対する補正用型締力Pcaの加算処理を含ませれば、金型2内の樹脂Rを増圧圧縮できるため、特に、成形原理上、発生しやすい不具合、即ち、樹脂Rの充填ボリュームが増加傾向になることによる成形品の厚さ及び体積が過度に大きくなりやすい不具合を解消できる。
【0019】
(8) 好適な態様により、監視物理量として、パーティング開量Lmを直接用いれば、望ましい効果を確保する観点から最も大きなパフォーマンスを得ることができるため、本発明の最適形態として実施できる。
【0020】
(9) 好適な態様により、パーティング開量Lmを、金型2に付設した位置検出器3により検出するようにすれば、パーティング開量Lmの大きさを直接検出できるため、位置検出器3以外の誤差要因を極力排した正確なパーティング開量Lm、更にはその変化データを得ることができる。
【0021】
(10) 好適な態様により、少なくとも型締装置Mcによる型締後における所定の射出準備が完了したことを条件に、射出開始時の前後所定期間の範囲における予め設定したリセットタイミングに達したなら、位置検出器3をゼロリセットするリセット制御を行うようにすれば、型締後から射出開始までの射出待機中に、設定した成形型締力Pcを維持するとともに、ショット毎の金型温度の変動や並行して行われる他の工程における動作等に伴う外乱要因が存在する場合であっても、パーティング開量Lmの大きさに対する無用な影響を排除できるため、成形型締力Pcに対する補正用型締力Pcaの補正を正確かつ適正に行うことができるとともに、パーティング開量Lmに係わる正確なデータを安定して収集可能になるため、ゼロポイントが一致するショット毎のパーティング開量Lm…のモニタリングも的確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の好適実施形態に係る制御方法を用いた生産時における充填成形工程の処理手順を説明するためのフローチャート、
図2】同制御方法を用いた生産時における充填前工程の処理手順を説明するためのフローチャート、
図3】同制御方法を実施できる射出成形機の構成図、
図4】同制御方法を実行できる制御装置のブロック系統図、
図5】同制御装置におけるディスプレイに表示される射出・計量に係わる設定画面を示す表示画面図、
図6】同制御装置におけるディスプレイにウィンドウ表示される補正用型締力に係わる設定画面を示す表示画面図、
図7】同制御装置におけるディスプレイに表示される射出・計量に係わる設定画面を用いた同制御方法の原理説明図、
図8】同制御方法を実施する射出成形機における成形条件の設定時の処理手順を説明するためのフローチャート、
図9】同射出成形機の成形方法に用いる成形条件を設定する際の処理を説明するための型締力に対する成形品の良否結果を示すデータグラフ、
図10】同射出成形機の生産時における時間に対する射出圧力,射出速度及び型隙間の変化特性図、
図11】同射出成形機の金型の状態を用いた同制御方法の原理説明図、
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0024】
まず、本実施形態に係る制御方法を実施できる射出成形機Mの全体構成について、図3を参照して説明する。
【0025】
図3において、Mは射出成形機であり、射出装置Miと型締装置Mcを備える。射出装置Miは、前端に射出ノズル21nを、後部にホッパ21hをそれぞれ有する加熱筒21を備え、この加熱筒21の内部にはスクリュ22を挿入するとともに、加熱筒21の後端にはスクリュ駆動部23を配設する。スクリュ駆動部23は、片ロッドタイプの射出ラム24rを内蔵する射出シリンダ(油圧シリンダ)24を備え、射出シリンダ24の前方に突出するラムロッド24rsはスクリュ22の後端に結合する。また、射出ラム24rの後端には、射出シリンダ24に取付けた計量モータ(オイルモータ)25のシャフトがスプライン結合する。26は、射出装置Miを進退移動させて金型2に対するノズルタッチ又はその解除を行う射出装置移動シリンダを示す。これにより、射出装置Miは、射出ノズル21nを金型2にノズルタッチし、金型2のキャビティ内に溶融(可塑化)した樹脂R(図11)を射出充填することができる。
【0026】
一方、型締装置Mcには、型締シリンダ(油圧シリンダ)27の駆動ラム27rにより可動型2mを変位させる直圧方式の油圧式型締装置を用いる。型締装置Mcに、このような油圧式型締装置を用いれば、射出充填時に射出圧力により可動型2mを変位させ、必要な隙間(パーティング開量)Lm(Lmp,Lmr)を生じさせる場合に最適である。型締装置Mcは、位置が固定され、かつ離間して配した固定盤28と型締シリンダ27間に架設した複数のタイバー29…にスライド自在に装填した可動盤30を有し、この可動盤30には型締シリンダ27から前方に突出したラムロッド27rsの先端を固定する。また、固定盤28には固定型2cを取付けるとともに、可動盤30には可動型2mを取付ける。この固定型2cと可動型2mは金型2を構成する。これにより、型締シリンダ27は金型2に対する型開閉及び型締を行うことができる。なお、31は金型2を開いた際に、可動型2mに付着した成形品100(図11)の突き出しを行うエジェクタシリンダを示す。
【0027】
他方、35は油圧回路であり、油圧駆動源となる可変吐出型油圧ポンプ36及びバルブ回路37を備える。油圧ポンプ36は、ポンプ部38とこのポンプ部38を回転駆動するサーボモータ39を備える。40はサーボモータ39の回転数を検出するロータリエンコーダを示す。また、ポンプ部38は、斜板型ピストンポンプにより構成するポンプ機体41を内蔵する。したがって、ポンプ部38は、斜板42を備え、斜板42の傾斜角(斜板角)を大きくすれば、ポンプ機体41におけるポンプピストンのストロークが大きくなり、吐出流量が増加するとともに、斜板角を小さくすれば、同ポンプピストンのストロークが小さくなり、吐出流量が減少する。よって、斜板角を所定の角度に設定することにより、吐出流量(最大容量)が所定の大きさに固定される固定吐出流量を設定することができる。斜板42には、コントロールシリンダ43及び戻しスプリング44を付設するとともに、コントロールシリンダ43は、切換バルブ(電磁バルブ)45を介してポンプ部38(ポンプ機体41)の吐出口に接続する。これにより、コントロールシリンダ43を制御することにより斜板42の角度(斜板角)を変更することができる。
【0028】
さらに、ポンプ部38の吸入口は、オイルタンク46に接続するとともに、ポンプ部38の吐出口は、バルブ回路37の一次側に接続し、さらに、バルブ回路37の2次側は、射出成形機Mにおける射出シリンダ24,計量モータ25,型締シリンダ27,エジェクタシリンダ31及び射出装置移動シリンダ26に接続する。したがって、バルブ回路37には、射出シリンダ24,計量モータ25,型締シリンダ27,エジェクタシリンダ31及び射出装置移動シリンダ26にそれぞれ接続する切換バルブ(電磁バルブ)を備えている。なお、各切換バルブは、それぞれ一又は二以上のバルブ部品をはじめ、必要な付属油圧部品等により構成され、少なくとも、射出シリンダ24,計量モータ25,型締シリンダ27,エジェクタシリンダ31及び射出装置移動シリンダ26に対する作動油の供給,停止,排出に係わる切換機能を有している。
【0029】
これにより、サーボモータ39の回転数を可変制御すれば、可変吐出型油圧ポンプ36の吐出流量及び吐出圧力を可変でき、これに基づいて、上述した射出シリンダ24,計量モータ25,型締シリンダ27,エジェクタシリンダ31及び射出装置移動シリンダ26に対する駆動制御を行うことができるとともに、成形サイクルにおける各動作工程の制御を行うことができる。このように、斜板角の変更により固定吐出流量を設定可能な可変吐出型油圧ポンプ36を使用すれば、ポンプ容量を所定の大きさの固定吐出流量(最大容量)に設定できるとともに、固定吐出流量を基本として吐出流量及び吐出圧力を可変できるため、制御系による制御を容易かつ円滑に実施できる。
【0030】
次に、射出成形機Mに備える制御装置Cの構成について、図3図5を参照して具体的に説明する。
【0031】
制御装置Cは主要部を構成する図4に示す成形機コントローラ50を備え、この成形機コントローラ50にはディスプレイ52が付属する。また、成形機コントローラ50は、図4に示すように、サーボアンプ53を内蔵し、このサーボアンプ53の出力部に上述したサーボモータ39を接続するとともに、サーボアンプ53のエンコーダパルス入力部にはロータリエンコーダ40を接続する。さらに、図3に示すように、成形機コントローラ50の制御信号出力ポートには上述したバルブ回路37を接続する。
【0032】
一方、金型2の外側面には位置検出器3を付設する。位置検出器3は、可動型2mと固定型2cの相対位置、即ち、パーティング開量Lmの大きさを検出する機能を有し、例えば、図4に示すように、固定型2c(又は可動型2m)に取付けた反射板3pと、可動型2m(又は固定型2c)に取付けることにより、光又は電波を反射板3pに投射して測距する反射型測距センサ3sの組合わせにより構成できる。この際、位置検出器3を、金型2の上面に設ける場合は、左右方向中央付近に、金型2の側面に設ける場合は、上下方向中央付近に配することが望ましい。このような位置検出器3を用いれば、パーティング開量Lmの大きさを直接検出できるため、位置検出器3以外の誤差要因を極力排した正確なパーティング開量Lm、更にはその変化データを得れる利点がある。また、油圧回路35におけるバルブ回路37の一次側には、油圧を検出する圧力センサ11を付設するとともに、油温を検出する温度センサ12を付設する。そして、位置検出器3,圧力センサ11及び温度センサ12は成形機コントローラ50のセンサポートに接続する。
【0033】
また、成形機コントローラ50には、コントローラ本体51とサーボアンプ53が含まれる。コントローラ本体51は、CPU及び内部メモリ等のハードウェアを内蔵するコンピュータ機能を備えている。したがって、内部メモリには、各種演算処理及び各種制御処理(シーケンス制御)を実行するため制御プログラム(ソフトウェア)51pを格納するとともに、各種データ(データベース)類を記憶可能なデータメモリ51mが含まれる。特に、制御プログラム51pには、本実施形態に係る制御方法、即ち、後述する成形型締力Pcを補正する補正用型締力Pcaを設定する補正用型締力設定機能、補正用型締力Pcaにより補正するタイミングとして所定の監視物理量となるパーティング開量Lmに対する閾値Lmaを設定する閾値設定機能、位置検出器3により検出したパーティング開量Lmの大きさを監視し、金型2に対する射出充填中から金型2における樹脂Rの収縮完了前の期間に、パーティング開量Lmが閾値Lmaに達したなら、成形型締力Pcを補正用型締力Pcaにより補正した2次型締力Pcsを得る補正機能(制御機能)、を少なくとも実行するための制御プログラムが含まれる。この場合、本実施形態における補正機能は加算機能となる。
【0034】
さらに、射出成形機Mは、特定の成形方式(特定成形モード)による成形動作を行うため、内部メモリには、その成形動作を行うための制御プログラム(シーケンス制御プログラム)が含まれる。この場合、特定成形モードとは、予め、射出充填時に金型2における可動型2mと固定型2c間に所定の隙間、即ち、パーティング開量Lmが生じ、かつ良品成形可能な成形射出圧力Pi及び成形型締力Pcを求めて設定するとともに、成形時(生産時)に、成形型締力Pcにより型締装置Mcを型締し、かつ成形射出圧力Piをリミット圧力Psとして設定した射出装置Miを駆動して、金型2に樹脂Rを射出充填するとともに、射出充填後、金型2における所定の冷却時間Tcが経過したなら成形品を取出可能にする成形モードである。制御装置Cは、この特定成形モードを前提とした制御を行うものであり、この特定成形モードについては後述する。
【0035】
一方、ディスプレイ52は、ディスプレイ本体52d及びこのディスプレイ本体52dに付設したタッチパネル52tを備え、このディスプレイ本体52d及びタッチパネル52tは表示インタフェース52iを介してコントローラ本体51に接続する。したがって、このタッチパネル52tにより各種設定操作及び選択操作等を行うことができる。このディスプレイ52には、図5に示す画面Xvが表示される。この画面Xvは縦長形状であり、図5は画面Xvの上半部に表示した射出・計量設定画面Xvfを示す。この射出・計量設定画面Xvfは上部に表示した射出・計量設定画面選択キーKfを選択することにより表示することができる。
【0036】
射出・計量設定画面Xvfにおいて、Kmは成形モード切換キーを示し、この切換キーKmにより、特定成形モードと汎用成形モードを切換えることができる。また、射出・計量設定画面Xvfは、図5に示すように、射出速度設定部61,射出圧力設定部62,計量設定部63,その他の設定及び表示を行う補助設定部64を備える。この場合、これらの各設定部61,62,63,64は、特定成形モードと汎用成形モードの双方に兼用して用いられる。さらに、射出・計量設定画面Xvfには、金型2への射出開始時以降から金型2の冷却終了(冷却時間終了)までの位置検出器3により検出した変化データを表示する波形表示部60を備える。波形表示部60は、横軸が時間〔秒〕軸となり、縦軸がパーティング開量Lm〔mm〕,射出圧力〔MPa〕,射出速度〔mm/s〕となる。特に、横軸の時間〔秒〕は、少なくとも金型2への樹脂充填開始となる射出開始時以降から金型2の冷却終了までの時間をプロットできる時間長を確保する。この波形表示部60は、特定成形モードにのみ用いられる。したがって、汎用成形モードの場合には、この波形表示部60とは異なる表示、即ち、従来より公知の一般的な波形表示が行われる。なお、波形表示部60において、符号Asは成形時におけるパーティング開量Lmの変化特性を示している。
【0037】
他方、波形表示部60の下方には特定成形設定部71を隣接させて設ける。この特定成形設定部71は特定成形モードに用いられる。特定成形設定部71には、型締力設定部71sとアナログ表示部71dを備える。型締力設定部71sは、型締力〔tonf〕に対する設定機能を備え、波形表示部60の下方に隣接して配される。このように波形表示部60に隣接させた型締力設定部71sを設ければ、波形表示部60に表示されるパーティング開量Lmの波形(変化)を確認しながら、型締力設定部71sを用いて設定できるため、パーティング開量Lmの変化に大きく影響を及ぼす型締力の設定をより的確かつ容易に行うことができる。また、アナログ表示部71dは、リアルタイムで得られるパーティング開量Lmをアナログ表示する機能を備える。その他、特定成形設定部71において、72は型変位モニタであり、アナログ表示部71dに表示されるパーティング開量Lmの絶対値を数値で表示する機能を備える。73は回転速度表示部、74は樹脂圧表示部、75はスクリュ位置表示部をそれぞれ示す。
【0038】
一方、波形表示部60の近傍には、2次型締用設定画面表示キー15を配する。したがって、この2次型締用設定画面表示キー15をONすることにより、図5に抽出して示す2次型締用設定画面16を、射出・計量設定画面Xvfの上にウィンドウ表示させることができる。この2次型締用設定画面16には、2次型締用監視物理量選択キー16a,補正用型締力設定キー16b,開始時期設定キー16c,型開量設定キー16d,スクリュ位置設定キー16e及び閉キー16fを備える。
【0039】
この場合、2次型締用監視物理量選択キー16aは、パーティング開量Lmに関連する監視物理量を選択するための選択キーであり、この選択キー16aをONすることにより、図6に示す監視物理量選択画面17がウィンドウ表示される。例示の監視物理量選択画面17は、OFF選択キー17a,型開量選択キー17b,時間選択キー17c,スクリュ位置選択キー17dを有し、これらの各監視物理量を選択できる。各選択キー17a…において、型開量選択キー17bを選択すれば、監視物理量として型開量が選択される。型開量はパーティング開量Lmを直接用いる場合である。したがって、型開量を選択した場合には、望ましい効果を確保する観点から最も大きなパフォーマンスを得ることができ、本発明の最適形態として実施できる利点がある。
【0040】
なお、監視物理量として、時間選択キー17c又はスクリュ位置選択キー17dを選択することも可能である。時間選択キー17cを選択すれば、監視物理量として時間が選択されるとともに、スクリュ位置選択キー17dを選択すれば、監視物理量としてスクリュ位置が選択され、これらは、パーティング開量Lmに関連する間接的な監視物理量となる。図6は、時間選択キー17cを選択した例を示している。この場合の時間は、充填開始からの経過時間となる。このように、パーティング開量Lmを監視する監視物理量には、型開量のみならず、時間又はスクリュ位置の選択も可能となる。したがって、必要に応じた選択が可能になるため、監視の多様性を高めることができる。加えて、必要により二以上組合わせた監視も可能になるなど、監視の確実性及び発展性にも寄与できる。
【0041】
また、補正用型締力設定キー16bは、補正用型締力Pcaを設定するための設定キーである。この設定キー16bをONにすれば、例えば、テンキー入力画面が表示されるため、オペレータは所望の補正用型締力Pcaを入力設定できる。この場合、補正用型締力Pcaとしては、成形型締力Pcの5〜50〔%〕の範囲から選定した大きさに設定することが望ましい。このように設定すれば、本来の良品成形可能なパーティング開量Lmを確保しつつ、成形品の厚さ及び体積の変動を抑制する機能を確実かつ安定に発揮させることができる。即ち、補正用型締力Pcaを50〔%〕よりも大きくした場合、例えば、補正された成形型締力Pcとなる2次型閉力Pcsが大きくなり過ぎ、この結果、パーティング開量Lmが小さくなり過ぎることにより、ガス抜き等が十分に行われなくなる虞れがある。他方、5〔%〕よりも小さくした場合、例えば、パーティング開量Lmを十分に小さくすることができなくなり、成形品の厚さ及び体積の変動を十分に抑制できない虞れがあるが、5〜50〔%〕の範囲から選定すれば、これらの不具合を回避できる。
【0042】
さらに、補正用型締力Pcaは、冷却時間が経過したときのパーティング開量Lmの大きさが、射出開始時における可動型2mと固定型2c間の隙間よりも大きくなるように設定する。これにより、冷却時間が経過するまで所定のパーティング開量Lmを確実に存在させることができるため、樹脂収縮を常に補完することができる。この結果、ヒケ等の成形不良を低減でき、生産時における成形品の歩留まり率(良品率)向上に寄与できる。もし、冷却時間が経過したときのパーティング開量Lmの大きさが射出を開始したときのパーティング開量Lmよりも大きくならない場合には、樹脂収縮を補完した圧縮がされなくなり、ヒケ等の成形不良を生じる虞れがある。
【0043】
開始時期設定キー16c,型開量設定キー16d,スクリュ位置設定キー16eは、それぞれ監視物理量に対する閾値の設定キーである。したがって、型開量設定キー16dをONした場合、型開量選択キー17bに選択される型開量、即ち、パーティング開量Lmに対する監視のための閾値Lmaを設定できる。設定するに際しては、型開量設定キー16dをONにすることにより、例えば、テンキー入力画面が表示されるため、オペレータは所望の閾値Lmaを入力設定できる。この閾値Lmaは、補正用型締力Pcaにより成形型締力Pcを補正するタイミングを設定するものであり、生産時に、リアルタイムで検出されるパーティング開量Lmが、例えば、大きくなり過ぎことにより、閾値Lmaに達した場合には、そのタイミングで補正処理が行われる。なお、他の監視物理量を設定するための開始時期設定キー16c又はスクリュ位置設定キー16eを選択した場合であっても、同様に、時間又は位置に係わる所望の閾値を設定できる。
【0044】
また、補正を行うに際しては、設定された成形型締力Pcに対して補正用型締力Pcaを加算する処理を行う。これにより、2次型締力Pcsは、Pcs=(成形型締力Pc)+(補正用型締力Pca)から得られるため、この2次型締力Pcsを用いて、金型2に対する2次型締を行う。このように、補正として、成形型締力Pcに対する補正用型締力Pcaの加算処理を含ませれば、金型2内の樹脂Rを増圧圧縮できるため、特に、成形原理上、発生しやすい不具合、即ち、樹脂Rの充填ボリュームが増加傾向になることによる成形品の厚さ及び体積が過度に大きくなりやすい不具合を解消できる利点がある。
【0045】
さらに、この2次型締力Pcsは、金型2に充填された樹脂Rに対する冷却時間Tcが経過するまで維持する制御を行う。このような制御を行えば、その時の成形状態に応じて適正化された大きさとなる再設定された成形型締力Pcを、いわば樹脂Rが硬化するまで維持できることになるため、成形品の厚さ及び体積の変動を低減する効果を確実に確保できる利点がある。
【0046】
他方、サーボアンプ53は、圧力補償部81、速度リミッタ82、回転速度補償部83、トルク補償部84、電流検出部85及び速度変換部86を備え、圧力補償部81にはコントローラ本体51から、成形射出圧力Pi(リミット圧力Ps)又は成形型締力Pcが付与されるとともに、速度リミッタ82には速度限界値VLが付与される。これにより、圧力補償部81からは圧力補償された速度指令値が出力し、速度リミッタ82に付与される。この速度指令値はリミット圧力Psにより制限されるとともに、速度リミッタ82から出力する速度指令値は、速度限界値VLにより制限される。さらに、速度リミッタ82から出力する速度指令値は、回転速度補償部83に付与されるとともに、この回転速度補償部83から出力するトルク指令値はトルク補償部84に付与される。そして、トルク補償部84から出力するモータ駆動電流がサーボモータ39に供給され、サーボモータ39が駆動される。なお、ロータリエンコーダ40から得るエンコーダパルスは、速度変換部86により速度検出値Vdに変換され、コントローラ本体51に付与されるとともに、さらに、回転速度補償部83に付与されることにより、回転速度に対するマイナループのフィードバック制御が行われる。
【0047】
次に、本実施形態に係る制御方法を含む射出成形機Mによる成形方法について、図1図11を参照して具体的に説明する。
【0048】
最初に、成形方法の概要について説明する。
【0049】
(A) まず、生産時に使用する成形型締力Pcと成形射出圧力Piを求め、成形条件として設定する。この際、
(x) 射出充填時に、固定型2cと移動型2m間に適切なパーティング開量(自然隙間)Lmが生じること、
(y) 成形品には、バリ,ヒケ及びソリ等の成形不良が発生しないこと、
を条件とする。
【0050】
また、自然隙間Lmは、ガス抜き及び樹脂Rの圧縮(自然圧縮)が行われること、さらに、最大時のパーティング開量を成形隙間Lmpとし、冷却時間Tcが経過した後のパーティング開量を残留隙間Lmrとして、
(xa) 成形隙間Lmpは、0.03〜0.30〔mm〕、
(xb) 残留隙間Lmrは、0.01〜0.10〔mm〕、
の各許容範囲を満たすことを条件とする。したがって、成形隙間Lmpはパーティング開量Lmの最大量(max)となり、残留隙間Lmrはパーティング開量Lmの最小量(min)となる。
【0051】
(B) 生産時には、設定した成形型締力Pcにより型締を行うこと、成形射出圧力Piをリミット圧力Psに設定すること、の成形条件により樹脂Rは単純に射出する。
【0052】
したがって、このような成形方法によれば、射出充填時には、金型2において自然隙間Lm及び自然圧縮が発生する。この結果、射出装置Miにより射出充填される樹脂Rの挙動が不安定であっても、型締装置Mcが不安定な樹脂Rの挙動に適応し、高度の品質及び均質性を有する成形品が得られる。
【0053】
次に、具体的な処理手順について説明する。まず、予め、成形条件となる成形射出圧力Piと成形型締力Pcを求めるとともに、成形条件として設定する。図8に、成形射出圧力Piと成形型締力Pcを求めて設定する処理手順を説明するためのフローチャートを示す。
【0054】
最初に、射出・計量設定画面選択キーKfを選択し、ディスプレイ52に、射出・計量設定画面Xvfを表示させるとともに、成形モード切換キーKmにより、成形モードを特定成形モードに切換える。そして、射出装置Mi側の射出条件となる射出圧力を、射出圧力設定部62により初期設定する。このときの射出圧力は、射出装置Miの能力(駆動力)に基づく射出圧力を設定できる(ステップS31)。この場合、射出圧力は、射出シリンダ24に接続した油圧回路35における圧力センサ11により検出した油圧Poにより求めることができる。射出圧力は、絶対値として正確に求める必要がないため、検出した油圧Poの大きさを用いてもよいし、演算により射出圧力に変換して用いてもよい。また、型締装置Mc側の型締条件となる型締力を、型締力設定部71sにより初期設定する。このときの型締力は、型締装置Mcの能力(駆動力)に基づく型締力を設定できる(ステップS32)。この場合、型締力は、型締シリンダ27に接続した油圧回路35における圧力センサ11により検出した油圧Poにより求めることができる。型締力は、絶対値として正確に求める必要がないため、検出した油圧Poの大きさを用いてもよいし、演算により型締力に変換して用いてもよい。なお、油圧回路35はバルブ回路37により切換えられ、型締時には型締装置Mc側の油圧回路として機能するとともに、射出時には射出装置Mi側の油圧回路として機能する。射出圧力及び型締力として、このような油圧Poを用いれば、成形型締力Pc及び成形射出圧力Piに係わる設定を容易に行うことができる。しかも、絶対値としての正確な成形型締力Pc及び成形射出圧力Piの設定は不要となるため、より誤差要因の少ない高精度の動作制御を行うことができる。
【0055】
次いで、初期設定した射出圧力に対する最適化処理を行うことにより生産時に用いる成形射出圧力Piを求めるとともに、初期設定した型締力に対する最適化処理を行うことにより生産時に用いる成形型締力Pcを求める(ステップS33,S34)。型締力及び射出圧力を最適化する方法の一例について、図9を参照して説明する。
【0056】
まず、初期設定した型締力及び射出圧力を用いて試し成形を行う。成形開始ボタンを押すことにより、型締動作が行われ、初期設定した条件により、金型2による試し成形が行われる。例示の場合、初期設定した型締力は40〔kN〕である。初期設定した型締力(40〔kN〕)及び射出圧力を用いた試し成形の結果を図9に示す。この場合、成形隙間Lmp及び残留隙間Lmrはいずれも0であることを示している。また、初期設定では型締力が大きめになるため、バリは発生しないレベル0(最良)であるとともに、ヒケはレベル4(不良)、ソリはレベル3(稍不良)、ガス抜きに関してはレベル3(稍不良)になったことを示している。
【0057】
さらに、型締力の大きさ及び射出圧力の大きさを、図9に示すように、段階的に低下させ、それぞれの段階で試し成形を行うことにより、固定型2cと移動型2m間のパーティング開量Lm(Lmp,Lmr)を測定するとともに、成形品100(図11(b)参照)の良否状態を観察する(ステップS35,S36)。なお、図9に、射出圧力のデータはないが、射出圧力の最適化は、射出充填時に移動型2mと固定型2c間にパーティング開量Lmが生じ、かつ良品成形可能となることを条件に、設定し得る最小値又はその近傍の値を成形射出圧力Piとすることができる。具体的には、図9に示すように、型締力を低下させた際に、適宜、射出圧力も低下させ、樹脂Rが金型2に対して正常に充填しなくなる手前の大きさを選択することができる。成形射出圧力Piとして、このような最小値又はその近傍の値を選択すれば、これに伴って、成形型締力Pcも最小値又はその近傍の値に設定可能となるため、省エネルギ性を高める観点から最適なパフォーマンスを得ることができるとともに、機構部品等の保護及び長寿命化を図ることができる。そして、求めた成形射出圧力Piは、生産時の射出圧力に対するリミッタ圧力Psとして設定する(ステップS37)。
【0058】
図9の結果を見れば、仮想線枠Zuで囲まれる14,15,16〔kN〕の型締力のとき、成形隙間Lmp及び残留隙間Lmrはいずれも許容範囲を満たしている。即ち、成形隙間Lmpは、0.03〜0.30〔mm〕の許容範囲、更には、0.03〜0.20〔mm〕の許容範囲をも満たしている。また、残留隙間Lmrは、0.01〜0.10〔mm〕の許容範囲、更には、0.01〜0.04〔mm〕の許容範囲をも満たしている。加えて、バリ,ヒケ及びソリのいずれも発生しないレベル0(最良)であるとともに、ガス抜きもレベル0(最良)となり、良品成形品を得るという条件を満たしている。したがって、成形型締力Pcは、三つの型締力14,15,16〔kN〕から選択できる。選択した型締力は、生産時に金型2で型締を行う際の成形型締力Pcとして設定する(ステップS38)。
【0059】
ところで、図9の場合、成形隙間Lmpが、0.03〜0.20〔mm〕の許容範囲を満たすとともに、残留隙間Lmrが、0.01〜0.04〔mm〕の許容範囲を満たすことがバリの発生しない最良成形品を得ることができるが、バリは、成形品取出後に除去することができるとともに、少しのバリがあっても良品として使用できる場合もあるため、図9に、レベル1(良)やレベル2(普通)で示す低度のバリ発生は、即不良品となるわけではない。したがって、図9に示すデータを考慮すれば、成形品の種類等によっては、仮想線枠Zusで囲まれる型締力12,13〔kN〕の選択も可能である。即ち、成形隙間Lmpが、0.03〜0.30〔mm〕の許容範囲を満たすとともに、残留隙間Lmrが、0.01〜0.10〔mm〕の許容範囲を満たせば、良品成形品を得ることが可能となる。
【0060】
なお、図9は、成形型締力Pcと成形射出圧力Piを設定するための説明用データである。したがって、実際の設定に際しては、例えば、型締力を、40,30,20,10等のように、数回程度の変更実施により目的の成形型締力Pc及び成形射出圧力Piを求めることができる。この場合、型締力及び射出圧力の大きさは、オペレータが任意に設定してもよいし、射出成形機Mに備えるオートチューニング機能等を併用しつつ自動又は半自動により求めてもよい。オートチューニング機能を利用した場合には、バリが発生する直前の型締力を容易に求めることができる。
【0061】
また、射出装置Miの射出速度Vdに対する速度限界値VLを設定する(ステップS39)。この速度限界値VLは、必ずしも設定する必要はないが、設定することにより、万が一、射出速度Vdが過度に速くなった場合でも、金型2や射出スクリュ等に対して機械的な保護を図ることができる。したがって、速度限界値VLには、金型2や射出スクリュ等に対して機械的な保護を図ることができる大きさを設定する。
【0062】
次いで、2次型締を行う際における条件設定を、2次型締用設定画面16を用いて行う。設定に際しては、2次型締用設定画面表示キー15をONにし、図5に抽出して示す2次型締用設定画面16を、射出・計量設定画面Xvf上にウィンドウ表示させる(ステップS40)。そして、2次型締用監視物理量選択キー16aにより、パーティング開量Lmに関連する監視物理量を選択する(ステップS41)。例示は、図5に示すように、「型開量」を選択した。この場合、図6に示すように、監視物理量選択画面17から型開量選択キー17bを選択すればよい。次いで、補正用型締力設定キー16bにより、補正用型締力Pcaを設定する(ステップS42)。この場合、設定キー16bをONにすることにより、テンキー入力画面が表示されるため、オペレータは所望の補正用型締力Pcaを入力する。前述したように、補正用型締力Pcaとしては、成形型締力Pcの5〜50〔%〕の範囲から選定した大きさに設定することが望ましく、例示は、「1100」knを設定した場合を示す。また、設定した監視物理量、即ち、型開量(パーティング開量Lm)に対する監視のための閾値Lmaを設定する(ステップS43)。閾値Lmaの大きさは、前述した良品成形可能な成形隙間Lmpとなる0.03〜0.30〔mm〕の範囲を考慮しつつ、成形品の精密度等に応じた任意の大きさを設定できる。例示は、閾値Lmaとして、「0.09」〔mm〕を設定した場合を示す。
【0063】
さらに、パーティング開量Lmを検出する位置検出器3のゼロリセット条件を設定する(ステップS44)。後述する生産時には、少なくとも型締装置Mcによる型締後における所定の射出準備が完了したことを条件に、射出開始時の前後所定期間の範囲における予め設定したリセットタイミングに達したなら、位置検出器3をゼロリセットするリセット制御を行うため、ゼロリセット条件としては、このリセット制御を行うタイミングを、リセットタイミングとして設定する。この場合、所定の射出準備が完了したこと、には、少なくとも、ノズルタッチ動作が終了したこと,金型温度が安定状態に達すること,の一方又は双方の条件を含ませることができる。
【0064】
その他、必要事項があれば、その設定を行う(ステップS45)。例示の射出成形機Mは、成形型締力Pcを、油圧回路35における温度センサ12により検出した油温Toの大きさにより補正する補正機能を備えている。この補正機能は、成形型締力Pcに対する温度ドリフト等による油温Toの影響を排除するための機能であり、成形型締力Pcを常に一定に維持できるため、動作制御の更なる高精度化及び安定化を図れるとともに、成形品の高度の品質及び均質性に寄与できる。したがって、他の必要事項の設定としては、補正機能により補正する際に使用する補正係数等を適用できる。
【0065】
次に、本実施形態に係る制御方法を用いた生産時の具体的な処理手順について、各図を参照しつつ図1及び図2に示すフローチャートに従って説明する。
【0066】
図1及び図2は、成形射出圧力Pi及び成形型締力Pcを用いた生産時の処理手順を示し、図1は、充填開始から成形品をエジェクトするまでの充填成形工程Sbを示すとともに、図2は、射出準備から射出開始までの充填前工程Saを示す。
【0067】
最初に、図2を参照して充填前工程Saについて説明する。まず、バルブ回路37の切換及びサーボモータ39の制御により、射出装置Miの計量モータ25を駆動し、樹脂Rを可塑化処理する(ステップS1)。この成形方法では、一般的な成形方法のように、樹脂Rを正確に計量する計量工程は不要である。即ち、本実施形態における成形方法の場合、射出工程では、キャビティ内に樹脂Rが満たされるまで射出動作を行うのみでよいため、計量工程における樹脂Rは多めに計量しておけば足りる。したがって、一般的な計量工程における計量動作は行うが、正確な計量値を得るための計量制御は不要となる。また、バルブ回路37の切換及びサーボモータ39の制御により、型締装置Mcの型締シリンダ27を駆動し、型締力が成形型締力Pcとなるように、金型2に対する型締を行う(ステップS2,S3)。このときの金型2の状態を図11(a)に示す。
【0068】
型締の終了により射出準備に係わる処理が行われる(ステップS4,S5)。この処理にはノズルタッチ動作によるノズルタッチ及び金型温度に対する制御が含まれる。ノズルタッチ動作では、射出装置移動シリンダ26が駆動制御され、射出装置Miが前進移動して金型2に対してノズルタッチする制御が行われる。また、金型温度に対する制御処理は、型開きにより変動した金型温度が正規の設定温度になるように制御される。
【0069】
そして、射出準備に係わるこれらの処理が終了すれば、射出装置Miは射出待機状態となる(ステップS6)。一方、成形機コントローラ50では、設定されたリセットタイミングに達したか否かを監視する(ステップSd1)。例示のように、リセットタイミングを射出開始時に一致させる設定を行った場合、射出開始時に達したタイミングにより射出を開始するとともに(ステップS7,S8)、位置検出器3をゼロリセットするリセット制御を行う(ステップSd2,Sd3)。これにより、型締後から射出開始までの射出待機中に、設定した成形型締力Pcを維持するとともに、ショット毎の金型温度の変動や並行して行われる他の工程における動作等に伴う外乱要因が存在する場合であっても、パーティング開量Lmの大きさに対する無用な影響を排除できるため、成形型締力Pcに対する補正用型締力Pcaの補正を正確かつ適正に行うことができるとともに、パーティング開量Lmに係わる正確なデータを安定して収集可能になるため、ゼロポイントが一致するショット毎のパーティング開量Lm…のモニタリングも的確に行うことができる。
【0070】
射出開始時には、バルブ回路37の切換及びサーボモータ39の制御により、射出装置Miの射出シリンダ24を駆動し、図10に示す射出開始時tsから樹脂Rの射出を行う。この場合、スクリュ21は定格動作により前進させればよく、スクリュ21に対する速度制御及び圧力制御は不要である。また、射出開始時tsには、同時にリセットタイミングに達するため、成形機コントローラ50により位置検出器3をゼロリセットするリセット制御を行う。以上により充填前工程Saが終了する。充填前工程Saの終了により充填成形工程Sbが行われる。
【0071】
次に、図1を参照して充填成形工程Sbについて説明する。上述した射出の開始により、加熱筒22内の可塑化溶融した樹脂Rは金型2のキャビティ内に充填される(ステップS9)。また、樹脂Rの充填に伴い、図10に示すように、射出圧力Pdが上昇する。そして、リミット圧力Psに近づき、リミット圧力Psに達すれば、リミット圧力Psに維持するための制御、即ち、オーバーシュートを防止する制御が行われ、射出圧力Pdはリミット圧力Ps(成形射出圧力Pi)に維持される(ステップS10,S11)。したがって、射出動作では実質的な一圧制御が行われる。この状態においても型締力は成形型締力Pcとなるように金型2に対する型締制御が行われる(ステップS12)。なお、図10中、Vdは射出速度を示す。
【0072】
この後、金型2のキャビティ内に樹脂Rが満たされることにより、金型2は樹脂Rに加圧され、固定型2cと可動型2m間に型隙間が生じるとともに、最大時には最大パーティング開量Lmpが生じる(ステップS13)。この最大パーティング開量Lmpは、予め設定した成形型締力Pc及び成形射出圧力Piにより、0.03〜0.30〔mm〕の許容範囲、望ましくは、0.03〜0.20〔mm〕の許容範囲となり、良好なガス抜きが行われるとともに、不良の排除された良品成形が行われる。このときの金型2の状態を図11(b)に示す。
【0073】
他方、少なくとも射出開始時tsから金型2の冷却終了teまでの期間においては、パーティング開量Lmの大きさを検出する(ステップS17)。具体的には、可動型2mと固定型2cの相対位置を検出する位置検出器3を用いて、一定のサンプリング時間間隔により、時間に対するパーティング開量Lmの大きさを検出する。これにより、検出されたパーティング開量Lm(検出データ)はコントローラ本体51に付与される。コントローラ本体51では、付与されたパーティング開量Lmの大きさを監視する(ステップS18)。この監視は金型2の冷却終了teまで行う(ステップS19)。
【0074】
そして、コントローラ本体51は、この監視期間中に、パーティング開量Lmの大きさが閾値Lmaに達したか否かを判断する(ステップS20)。もし、監視期間中に、パーティング開量Lmの大きさが閾値Lmaに達したときは、成形型締力Pcを補正用型締力Pcaにより補正する補正処理、即ち、成形型締力Pcに補正用型締力Pcaを加算する加算処理を行う(ステップS21)。
【0075】
図7にパーティング開量Lmの変化特性を示す。図7中、Lmaで示す一点鎖線は閾値のラインを示している。また、実線で示す変化特性Asはパーティング開量Lmの正常時の変化状態、仮想線で示す変化特性Apはパーティング開量Lmが大き過ぎる変化状態である。正常時における変化特性Asは、正常故に閾値Lmaに達することはない。これに対して、仮想線の変化特性Aeはパーティング開量Lmが大き過ぎるため、図中ta時点で閾値Lmaに達する。
【0076】
したがって、パーティング開量Lmが閾値Lmaに達したta時点で、成形型締力Pcに補正用型締力Pcaを加算する加算処理を行う。これにより、コントローラ本体51は、成形型締力Pcを、補正用型締力Pcaを加算した大きさの2次型締力Pcsとなるように変更処理を行う(ステップS22)。この結果、金型2は、いわば自動的に2次型締力Pcsの大きさとなるように型締制御される(ステップS12)。即ち、成形型締力Pcが2次型締力Pcsとなるまで増圧制御されるため、パーティング開量Lmは小さくなる。そして、この2次型締力Pcsは、金型2に充填された樹脂Rに対する冷却時間Tcが経過するまで維持される。
【0077】
よって、このような本実施形態に係る制御方法によれば、予め、成形型締力Pcを補正する補正用型締力Pcaを設定するとともに、補正用型締力Pcにより補正を行うタイミングを、パーティング開量Lmに関連する所定の監視物理量(Lm)に対する閾値(Lma)により設定し、生産時に、監視物理量(Lm)を検出するとともに、検出した監視物理量(Lm)の大きさを監視し、金型2に対する射出充填中から金型2における樹脂Rの収縮完了前の期間に、監視物理量(Lm)が閾値(Lma)に達したなら、成形型締力Pcを補正用型締力Pcaにより補正した2次型締力Pcsにより制御を行うようにしたため、設定された成形型締力Pcに対して、いわば成形状態に応じた強弱変更を行うことができる。この結果、成形品の厚さ及び体積が過度に変動する状態にあっても当該変動を抑制し、成形品の寸法安定性及び外観性をより高めることができる。したがって、高度の精密性が要求される成形品の成形に用いて最適となる。また、樹脂Rの状態や他の外乱が影響し、パーティング開量が過度に変動する場合であっても、成形不良を発生する前に、成形型締力Pcを補正用型締力Pcaにより補正し、成形型締力Pcの大きさを適正化するようにしたため、無用な成形不良、即ち、バリ,反り,ヒケ等の成形不良を低減できるとともに、生産時における成形品の歩留まり率(良品率)を高めることができる。
【0078】
一方、時間の経過に伴って金型2のキャビティ内における樹脂Rの固化が進行するとともに、この固化に伴って樹脂Rの圧縮(自然圧縮)が行われる(ステップS14)。そして、設定した冷却時間Tcが経過すれば、バルブ回路37の切換及びサーボモータ39の制御により、型締シリンダ27を駆動し、可動型2mを後退させることにより型開きを行うとともに、バルブ回路37の切換及びサーボモータ39の制御により、エジェクタシリンダ31を駆動し、可動型2mに付着した成形品100の突き出しを行う(ステップS15,S16)。これにより、成形品100が取り出され、一成形サイクルが終了する。この場合、冷却時間Tcは、射出開始時tsからの経過時間として予め設定することができる。また、図10に示すように、冷却時間Tcの経過した時点teでは、樹脂Rの自然圧縮により、固定型2cと可動型2m間の残留隙間Lmrは、予め設定した成形型締力Pc及び成形射出圧力Piにより、0.01〜0.10〔mm〕の許容範囲、望ましくは、0.01〜0.04〔mm〕の許容範囲となり、金型2のキャビティ内における樹脂Rに対する自然圧縮が確実に行われるとともに、成形品100における高度の品質及び均質性が確保される。このときの金型2の状態を図11(b)に示す。この後、次の成形が継続する場合には、同様に、樹脂Rを可塑化して射出準備を行うとともに、以降は、型締、射出、冷却等の処理を同様に行えばよい(ステップSr,S1…)。
【0079】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,数量,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0080】
例えば、位置検出器3として反射型測距センサ3sを例示したが、近接センサ等の非接触かつ隙間等を精度よく検出できる各種センサを利用できる。また、冷却時間Tcの経過後における可動型2mと固定型2c間に所定の残留隙間Lmrを生じさせることが望ましいが、残留隙間Lmrを生じさせない場合を排除するものではない。他方、射出成形機Mとして、直圧方式の油圧式型締装置を用いた場合を例示したが、トグル方式の電動式型締装置を用いてもよい。この場合、トグルリンク機構を非ロックアップ状態にして型締を行うようにすれば、本来の使用態様では自然圧縮を実現できないトグル方式の型締装置Mcであっても自然圧縮が可能となり、特定の成形方式(特定成形モード)による成形を、直圧方式の油圧式型締装置を用いた場合と同様に実現することができる。さらに、成形隙間Lmpとして、0.03〜0.30〔mm〕の許容範囲を、残留隙間Lmrとして、0.01〜0.10〔mm〕の許容範囲をそれぞれ例示したが、これらの範囲に限定されるものではなく、新しい樹脂Rの種類等に応じて変更可能である。また、成形射出圧力Piは、良品成形可能な最小値又はその近傍の値に設定することが望ましいが、このような最小値又はその近傍の値以外となる場合を排除するものではない。一方、補正として、成形型締力Pcに対する補正用型締力Pcaの加算処理を例示したが、パーティング開量Lmが小さ過ぎる場合には、減算処理を行うなど、他の補正手法を排除するものではない。さらに、補正は、一回行う場合を示したが、一定時間経過しても閾値Lmaを下回らない場合など、二回以上行う場合を排除するものではない。なお、位置検出器3に対するゼロリセット制御は任意である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明に係る制御方法は、型締装置Mcにより型締された金型2に対して射出装置Miから樹脂Rを射出充填して成形を行う各種の射出成形機に利用できる。
【符号の説明】
【0082】
2:金型,2m:可動型,2c:固定型,3:位置検出器,M:射出成形機,Mc:型締装置,Mi:射出装置,Lm:パーティング開量(監視物理量),Lma:閾値,R:樹脂,Pi:成形射出圧力,Pc:成形型締力,Pca:補正用型締力
図1
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図10
図11