特許第6043752号(P6043752)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アサヒマカム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6043752-伸縮経編地およびその編成方法 図000002
  • 特許6043752-伸縮経編地およびその編成方法 図000003
  • 特許6043752-伸縮経編地およびその編成方法 図000004
  • 特許6043752-伸縮経編地およびその編成方法 図000005
  • 特許6043752-伸縮経編地およびその編成方法 図000006
  • 特許6043752-伸縮経編地およびその編成方法 図000007
  • 特許6043752-伸縮経編地およびその編成方法 図000008
  • 特許6043752-伸縮経編地およびその編成方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043752
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】伸縮経編地およびその編成方法
(51)【国際特許分類】
   D04B 21/18 20060101AFI20161206BHJP
   D04B 21/10 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   D04B21/18
   D04B21/10
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-117250(P2014-117250)
(22)【出願日】2014年6月6日
(65)【公開番号】特開2015-229813(P2015-229813A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2016年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】596137151
【氏名又は名称】アサヒマカム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 博之
(72)【発明者】
【氏名】樋爪 静史
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−100968(JP,A)
【文献】 特開2005−290625(JP,A)
【文献】 特開2009−102757(JP,A)
【文献】 特開2007−297748(JP,A)
【文献】 特開2009−256829(JP,A)
【文献】 特開2009−007682(JP,A)
【文献】 特開2009−270215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B11/00−11/14
A41C1/00−5/00
A41D13/00−13/12
20/00
31/00−31/02
D04B1/00−39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地組織を編成する地筬と、変化組織を編成する複数のジャカード筬とを備えるジャカード経編機によって、非弾性糸から成る編成組織に弾性糸を挿入または編込んで編地全体に伸縮性が付与された伸縮経編地を編成する伸縮経編地の編成方法であって、
前記複数のジャカード筬のうちの一部のジャカード筬に非弾性糸を挿通するとともに、前記一部のジャカード筬を除く残余のジャカード筬に弾性糸を挿通する糸挿通工程と、
非弾性糸が挿通された前記一部のジャカード筬と弾性糸が挿通された前記残余のジャカード筬とによって編成可能な、締付け力が異なる複数の変化組織から、組合せて編成されるべき変化組織を選択する選択工程と、
前記ジャカード経編機によって、前記選択工程で選択された変化組織と前記地組織とを同時に編成する編成工程と、を含むことを特徴とする伸縮経編地の編成方法。
【請求項2】
前記複数の変化組織は、挿入組織とルーピング組織との組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載の伸縮経編地の編成方法。
【請求項3】
前記複数の変化組織は、1針オーバーラップ組織と2針オーバーラップ組織との組み合わせを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の伸縮経編地の編成方法。
【請求項4】
前記複数の変化組織は、挿入組織と1針オーバーラップ組織と2針オーバーラップ組織の組み合わせを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の伸縮経編地の編成方法。
【請求項5】
前記弾性糸の組織を複数の変化組織とし、前記非弾性糸により編まれる地組織を規則性のあるトリコット組織またはネット組織としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の伸縮経編地の編成方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載される伸縮経編地の編成方法によって編成された伸縮経編地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分的に締付け力の高い領域と低い領域とを有し、姿勢矯正、筋肉サポートなどの体型の補整に用いられる衣類などの生地として有利に実施することができる伸縮経編地をジャカード編みによって編成するための伸縮経編地の編成方法およびこの編成方法によって編成された伸縮経編地に関する。
【背景技術】
【0002】
第1の従来技術は、たとえば特許文献1に記載されている。この従来技術では、非弾性糸をジャカード編みして、その組織に変化によって部分的に締付け力の高低の変化与えた編成組織に、この編成組織に用いた地筬とは異なる地筬に弾性糸を挿通させて、締付け力の強弱が異なる組織を同時に形成する技術が提案されている。
【0003】
第2の従来技術は、たとえば特許文献2に記載されている。この従来技術では、弾性力を有する被覆弾性糸をジャカード編みによる組織変化によって、部分的に締付け力の高低が異なる領域を形成し、高い締付け力を有する領域を形成する技術が提案されている。
【0004】
第3の従来技術は、たとえば特許文献3に記載されている。この従来技術では、非弾性糸と伸縮糸とによって構成される生地組織に、他の強化伸縮糸を所定の強化領域に組織することによって、他の領域よりも締付け力の高い強化領域を形成し、この強化領域の形状に合わせて、移動範囲の広い特殊筬によって、強化弾性糸を大きく移動させて、強化領域を形成する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3023354号公報
【特許文献2】特許第4695685号公報
【特許文献3】特許第4971473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の特許文献1に記載される従来技術では、この編成方法によって編成された伸縮経編地は、自由性の高いジャカード編みによる高い柄効果を達成できる点で優れているが、非弾性糸の組織変化で作製される締付け力が高い領域と締付け力が低い領域との差がそれほど大きなものではないため、締付け力が切換わる境界部において、明確な締付け力の差が感じられるものではなく、高い体型補整機能およびサポート機能を得ることができないという問題がある。
【0007】
前述の特許文献2に記載される従来技術では、生地全体の平均的な締付け力は高くなるものの、締付け力が高い領域と低い領域との間に大きな締付け力の差が得られるものではない。また、被覆弾性糸が用いられるので、編成生地に艶がなく、高級感に乏しいという問題がある。
【0008】
前述の特許文献3に記載される従来技術では、生地を作製する地組織とは別の強化弾性糸を用いるので、部分的な領域の締付け力を強化できるという点で優れているが、特殊筬の移動によって単体の糸を大きく移動させて強化領域の形を形成しなければならないので、複雑な形や狭い領域に強化領域が点在する場合などには、この手法を適用することができず、適用範囲が限られてしまうという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、締付け力が切換わる境界部における締付け力の差を大きくして、高い体型補整機能およびサポート機能を有するとともに、艶および高級感を有する生地を得ることができる伸縮経編地の編成方法およびこの編成方法によって編成された伸縮経編地を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、地組織を編成する地筬と、変化組織を編成する複数のジャカード筬とを備えるジャカード経編機によって、非弾性糸から成る編成組織に弾性糸を挿入または編込んで編地全体に伸縮性が付与された伸縮経編地を編成する伸縮経編地の編成方法であって、
前記複数のジャカード筬のうちの一部のジャカード筬に非弾性糸を挿通するとともに、前記一部のジャカード筬を除く残余のジャカード筬に弾性糸を挿通する糸挿通工程と、
非弾性糸が挿通された前記一部のジャカード筬と弾性糸が挿通された前記残余のジャカード筬とによって編成可能な、締付け力が異なる複数の変化組織から、組合せて編成されるべき変化組織を選択する選択工程と、
前記ジャカード経編機によって、前記選択工程で選択された変化組織と前記地組織とを同時に編成する編成工程と、を含むことを特徴とする伸縮経編地の編成方法である。
【0011】
また本発明は、複数の変化組織は、挿入組織とルーピング組織との組み合わせを含むことを特徴とする。
【0012】
また本発明は、複数の変化組織は、1針オーバーラップ組織と2針オーバーラップ組織との組み合わせを含むことを特徴とする。
【0013】
また本発明は、複数の変化組織は、挿入組織と1針オーバーラップ組織と2針オーバーラップ組織との組み合わせを含むことを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記弾性糸の組織を複数の変化組織とし、前記非弾性糸により編まれる地組織を規則性のあるトリコット組織またはネット組織としたことを特徴とする。
また本発明は、前記伸縮経編地の編成方法によって編成された伸縮経編地である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、非弾性糸が挿通される一部のジャガード筬と弾性糸が挿通される残余のジャガード筬とによって編成することができる、締付け力が異なる複数の変化組織から組合せを選択して、地組織とともに編成するので、複雑な形で点在する強化部形状を自在に形成することができ、締付け力が切換わる境界部における締付け力の差を大きくして、高い体型補整機能およびサポート機能を有するとともに、艶および高級感を有する生地を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態によって編成される伸縮経編地のジャカードに非弾性糸および弾性糸を用いた編組織を説明するための変化図である。
図2】本発明の一実施形態によって編成される伸縮経編地のジャカードに非弾性糸および弾性糸を用いた編組織を説明するための変化図である。
図3】本発明の一実施形態によって編成される伸縮経編地のジャカードに非弾性糸および弾性糸を用いた編組織を説明するための変化図である。
図4】本発明の一実施形態によって編成される伸縮経編地のジャカードに非弾性糸および弾性糸を用いた編組織を説明するための変化図である。
図5】糸の消費が少ない挿入組織と糸の消費が多いルーピング組織とを含む4種類のジャカード変化組織(a),(b),(c),(d)を示す組織図である。
図6】糸の消費が少ない1針オーバーラッピング組織と糸の消費が多い2針オーバーラッピング組織を含む、3種類のジャカード変化組織(a),(b),(c)を示す組織図である。
図7】体型サポート機能を備えるショーツ用の生地の一部を示す図である。
図8】締付け力と変化組織との対応関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1図4は、本発明の一実施形態によって編成される伸縮経編地のジャカードに非弾性糸および弾性糸を用いた編組織を説明するための変化図である。本発明において、伸縮経編地を編成するために用いられる経編機は、地筬と、非弾性糸が挿通されるジャカード筬と、弾性糸が挿通されるジャカード筬とを備え、これらの筬をジャカード制御装置のコンピュータによって、ピエゾ素子を備える糸ガイドバーを電気的に動作させてジャカード制御を行い、地筬による地組織とともに、複数のジャカード筬による変化組織を同時に編成して、伸縮性を有する伸縮経編地を成す生地を製造することができるジャカード経編機が用いられる。
【0018】
本実施形態の伸縮経編地の編成方法について述べる。
図1図2および図3は、地筬GB3と地筬GB4とによって編成されるベース生地に、非弾性糸が挿通された一方のジャカード筬JB1によるジャカード変化組織を使い分けて、主に生地の表面の艶など意匠効果を付与し、また弾性糸が挿通された他方のジャカード筬JB2によるジャカード変化組織によって、生地に締付け力の強弱を付与することができる伸縮経編地の編成組織を示している。
【0019】
図4は、ガイドピッチを1イン1アウトの2列の糸ガイドバーを組合せて1つの筬の構成とするジャカード筬JB1−1,JB1−2;JB2−1,JB2−2において、それぞれの列の組織が対称となる異なる動きを基本組織としてハーフセットによるジャカード編組織を構成し、地筬GB3とGB4で生地全体に縦方向の伸縮性を一定に与える役目をして、JB1−1,JB1−2の非弾性糸によって柄やネットを含むメイン生地の構成し、またJB2−1,JB2−2の弾性糸によりジャカード変化組織を選択して、生地の締付け力の強弱を付与する。
【0020】
図1図4において、伸縮経編地を形成するために各糸は矢符S方向に供給され、したがってジャカード経編機からは編成後の生地が同方向に排出される(以下、同じ)。
【0021】
図5は、糸の消費が少ない挿入組織と糸の消費が多いルーピング組織とを含む4種類のジャカード変化組織(a),(b),(c),(d)を示す組織図である。各ジャカード変化組織(a)〜(d)のそれぞれの最下段に破線で示す組織は、変化前のジャカード基本組織を示している。各ジャカード基本組織が変化して、糸の消費が少ない組織から多い組織へと順に1,2,3,…と並ぶもので、最下段の(a)1,(b)1,(c)1,(d)1が、糸の消費量が最も少ない組織であり、これらが組織された領域が最も締付け力が低いソフトな生地領域となり、また最上段の(a)6,(b)8,(c)7,(d)8の領域が、糸の消費量が最も多い組織であり、最も締付け力が高いパワーのある生地領域となる。
【0022】
図6は、糸の消費が少ない1針オーバーラッピング組織と糸の消費が多い2針オーバーラッピング組織を含む、3種類のジャカード変化組織(a),(b),(c)を示す組織図である。各組織の最下段の破線は変化前のジャカード基本組織を示している。各ジャカード組織は、糸の消費が少ない組織から多い組織へと順に1,2,3,…と並ぶもので、最下段の(a)1,(b)1,(c)1が糸の消費量が最も少ない組織であり、これらが組織された領域が最も締付け力が低いソフトな生地領域となり、また最上段の(a)6,(b)7,(c)5の領域が糸の消費量が最も多い組織であり、最も締付け力が高いパワーのある生地領域となる。
【0023】
図7は、体型サポート機能を備えるショーツ用の生地の一部を示す図であり、図8は締付け力と変化組織との対応関係を示す図である。締付け力の変化を与える組織として、図8に示すように、図6(c)の組織を使っている例である。図8では各変化組織で必要とする糸量が明確に分るように、1リピート分の組織を実際の編地に近い形、ループを現す図としている。図から見ても分るように(c)1から(c)5へ進むにつれ、糸量を多く必要とする組織になる。
【0024】
本発明のジャカード経編機では、糸がビームから送られてくるため、どの組織も同じ糸量となる。結果的に弾性糸の伸縮性により吸収されることとなるが、(c)1は糸が緩んだ状態で編込まれ、(c)5は糸が最も強く張った状態で編込まれる。それが図8に示すように締付け力の違い、弱〜強となって現れる。
【0025】
例えば(c)5組織の領域は、ヒップをサポートする役目をするラインであり、(c)1、(c)2組織は凹凸のあるヒップ部や腰部をやさしく包む役目をする。この(c)5組織と(c)1、(c)2組織とが隣接する部分では、図7から分るように極端な締付け力の違いを表すこととなり、メリハリのあるパワー切換え生地であることが分る。
【0026】
伸縮性編地を生産するジャカードラッシェル編機は、ジャカード筬への糸の送りがビームから供給する仕様としている。ビームにはジャカードガイドバーのそれぞれに送り込む糸が、複数本数、通常約600本が、同じ長さ、同じ糸で巻かれ、それを6個分シャフトに差し込み連結して編機全域をカバーするように構成されている。そのシャフトが回転して、6個のビームからすべてのジャカードガイドバーに糸が送り込まれる。この送られる糸は、すべて同じ長さ、同じ糸量で供給される。
【0027】
前記非弾性糸としては、ナイロン糸、ポリエステル糸などの合成繊維糸、レーヨン糸、アセテート糸、キュプラ糸などの再生繊維糸、木綿糸、絹糸、麻糸、ウール糸などの天然繊維糸が挙げられる。また、弾性糸としては、ポリウレタン系弾性繊維のベアヤーン(裸糸)やポリウレタン系弾性繊維を他の繊維で被覆した被覆弾性糸などが挙げられる。
【0028】
ところがジャカード筬は、各ガイドバーが個別に変位する優れた機能を備えており、それぞれの糸が異なる動きによって変化組織を構成するため、各糸の消費量は一定ではない。前記のように糸の送りをビーム仕様とするジャカード筬では、全て同じ糸量で供給されるため、糸の消費量が異なるジャカード組織においては、糸の張力がばらつき、すなわち強く張る糸と緩む糸が現れることとなる。
【0029】
したがって、糸の消費量が多い組織では、糸が強く張り、生地には高い締付け力が生まれる。また糸の消費量が少ない組織では、糸が緩むことで、比較的締付け力の低いソフトな生地となる。
【0030】
ジャカードに弾性糸を使用することの利点としては、ジャカード編みで生産される生地には、非弾性糸が使用されていることが多く、伸縮性の無い糸それぞれが異なる動きをするため、糸の張力が揃わない状態が起こる。したがって、その張力のばらつきが許容される範囲、糸切れや誤動作編成などが起きない範囲内で生地を生産することが求められる。
【0031】
特に非弾性糸の場合、糸に吸収力がなくシビアな張力調整が必要になるため、使用される変化組織も張力のばらつきを極力抑えるために、糸の消費量が似かよった、消費量差の少ない組織を選択して生地を編成しなければならない。
【0032】
上記のような不具合を避けて無難な組織を選択した非弾性糸のジャカード編みでは、糸に大きな張力差を与えることができないため、締付け力の高い領域と締付け力の低い領域における生地のパワー差という点で十分な締付け力の差が得られない。
【0033】
本実施形態の伸縮経編地の編成方法では、非弾性糸が挿通される一部のジャガード筬と弾性糸が挿通される残余のジャガード筬とによって編成することができる、締付け力が異なる複数の変化組織から組合せを選択して、地組織とともに編成するので、ジャカード糸に弾性糸を使用した場合、緩んでもたわみがなく、張っても伸びがあって糸が切れることがなく、そして高いパワーを発揮し、張力調整も容易になる。したがって糸の消費量が大きく異なる組織が混在する組織構成も可能となり、パワー切換え生地におけるパワー強弱の範囲において、広いパワー領域を得ることができる。
【0034】
締付け力の低い領域と締付け力の高い領域それぞれの経伸張時におけるパワー差を比較すると、前記従来技術のジャカード編みの生地では、1.2〜1.5倍程度が限界であるのに対し、実施形態の伸縮経編地によって実現される生地では、2倍を悠に超えるパワー差を得ることが可能となる。
【0035】
非弾性糸によるジャカード筬では、柄やネットのなどの組織及び、体型や運動姿勢を維持するために高いサポート力が必要となる領域に締付け力を高める組織を配置、生地面となる主たる部分の組織を構成することができる。また、弾性糸によるジャカード筬では、前記非弾性糸で表現される柄部やネット部、または高いサポート力を必要とする各部に求められる生地の弾性、締付け力の高低が最適となるようなジャカード変化組織を選択して配置することで、強弱のある伸縮機能を与えることができる。
【0036】
締付け力が高い領域と低い領域のパワーの違いを明確にするために、それぞれの領域に選択される弾性糸のジャカード変化組織は、糸の消費が多い組織と糸の消費が少ない組織を使い分ける。例えば、締付け力の低い領域となる柄部やネット部などの組織は、糸の消費の少ない挿入組織とし、高いサポート力が必要な締付け力の高い部分の組織は、糸の消費の多いルーピング組織を選択する。また、締付け力の低い領域となる柄部やネット部などの組織は、糸の消費の少ない1針オーバーラッピング組織とし、高いサポート力が必要な締付け力の高い領域の組織は、糸の消費の多い2針オーバーラッピング組織を選択する。
【0037】
前記のジャカード変化組織は、図5および図6のように実現されるが、インナー用のジャカード編機、例えばカールマイヤー社製のRSJ4/1編機やRSJ5/1編機などに備えるジャカードの機能、すなわち1コースに1回アンダーラッピングのタイミングで組織に変化を与える機能では実施することができない。そのため、本実施形態では、編機に1コースに2回、ジャカード組織に変化を与える機能として、アンダーラッピングに加え、オーバーラッピングのタイミングでも変化させる機能を編機に付与することによって、挿入組織をルーピング組織に変化させ、またルーピング組織を挿入組織に変化させ、また1針オーバーラップ組織を2針オーバーラップ組織に変化させて、これにより挿入組織と1針オーバーラップ組織または2針オーバーラップ組織が混在する組織の生地を実現することができる。
【0038】
本発明のさらに他の実施形態では、複数の変化組織を弾性系の組織によって構成し、非弾性糸によって編まれる地組織を、規則性のあるトリコット組織またはネット組織としてもよい。
【0039】
このように非弾性糸および弾性糸とともに複数のジャカード筬を使用し、多彩な変化組織を多彩に組み合わせることができるため、締付け力が低い領域と締付け力が高い領域とを、求められる伸縮パワーに合わせて最適な状態に作り上げることができる。
【0040】
また、複雑な形で点在する強化部形状が自由に表現でき、また締付け力の高い領域と締付け力の低い領域の境界部においては、明確なパワーの差を示す、パワー切換え機能を備える伸縮性経編地を実現することが可能となる。
【0041】
前述のジャカード変化組織は、サテン調ネット組織によって実現されてもよく、メッシュ調ネット組織によって実現されてもよく、サテン調トリコット組織によって実現されてもよく、さらにメッシュ調トリコット組織によって実現されてもよい。
【0042】
以上のように本実施形態によれば、非伸縮糸による編成組織に伸縮糸を挿入また編み込みして編地全体に伸縮性を付与してなる伸縮経編地において、自在に組織変化して自由に柄模様を演出できるジャカード機能を備える複数の筬により、一方のジャカード筬には非弾性糸、他方のジャカード筬には弾性糸を使用し、それぞれの変化組織を組み合わせて、部分的に締付け力の異なる領域を備える生地の編成組織を構成するもので、生地の締付け力が高い領域と締付け力が低い領域が隣接する境界部において、それぞれの締付け力が明らかに異なる、メリハリのあるパワー切換え機能を備えた伸縮性経編地から構成される生地を実現し、このような生地によって、所望の部位毎に締付け力の差を明確に異ならせた、たとえばショーツ、ガードル、ブラジャー等のファンデーション、その他女性用下着、スポーツ用インナー、サポーターなどの衣類を製造することができる。
【符号の説明】
【0043】
JB1,JB1−1,JB1−2 非弾性糸の変化組織
JB2,JB2−1,JB2−2 弾性糸の変化組織
GB3 非弾性糸の変化組織
GB4 弾性糸の変化組織
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8