(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記押圧部材(34,41)は、前記カム溝(33)に当接する当接部品(34)と、当該当接部品(34)を前記カム溝(33)に向けて付勢する皿ばね(41)と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗り型車両の変速操作伝達装置。
前記変位検出センサ(39A,39B)と前記付勢部品(41)とは、車両搭載状態において、車両側方に向くように前記出力側部材(30)または前記入力側部材(29)に設けられ、
前記入力側部材(29)と前記出力側部材(30)とは、車両搭載状態において、前記シフトペダル(25)の操作部よりも下方に配置されていることを特徴とする請求項3または4に記載の鞍乗り型車両の変速操作伝達装置。
【背景技術】
【0002】
自動二輪者等の鞍乗り型車両として、変速機の変速段をシフトペダルの操作によって変更するものがある。この種の鞍乗り型車両の場合、シフトペダルと変速機本体の変速操作部とは、シフトリンク等の変速操作伝達装置によって連結されている。この鞍乗り型車両の場合、運転者がつま先によってシフトペダルを押し下げ操作したり、押し上げ操作したりすると、その操作が変速操作伝達装置を介して変速機本体の変速操作部に伝達され、その結果、変速機の変速段が変更される。
【0003】
また、この種の鞍乗り型車両において、運転者がクラッチの断接操作やアクセルの戻し操作を行うことなく、変速機の変速段を瞬時に変更できる機構を備えたものが知られている。この機構は、シフト操作時の微少な操作挙動をセンサによって検出できるようにし、そのセンサがシフトペダルのアップ操作やダウン操作を検出したときに、エンジンの点火カット等によって変速機内の動力伝達系のトルクを減少させ、その間に変速機のギヤの噛み合いを変更する。
【0004】
このような鞍乗り型車両に用いられる変速操作伝達装置として、シフトペダルの変速操作に伴う微小な挙動を検出する機構を内部に組み込んだものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載の変速操作伝達装置は、シフトペダルに連結される入力側部材と、変速機本体の変速操作部に連結される出力側部材とが軸方向に沿って相対変位可能に嵌合され、入力側部材と出力側部材とが、相反方向に作用する一対のスプリングによって中立位置に維持されるように付勢されている。そして、入力側部材と出力側部材の間には、両者の間の相対変位を検出する変位検出センサが設けられている。
この変速操作伝達装置の場合、シフトペダルのアップ操作時やダウン操作時に、入力側部材と出力側部材が圧縮方向や引っ張り方向に相対変位すると、その相対変位を変位検出センサによって検出することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の変速操作伝達装置においては、入力側部材と出力側部材とが、相反方向に作用する一対のスプリングによって中立位置に維持されるように付勢されているため、部品点数が多くなって製造コストの高騰が懸念されるとともに、装置全体の大型化の原因となり易い。
【0008】
そこでこの発明は、構造の複雑化を招かない簡素な構造によって入力側部材と出力側部材を中立位置に付勢できるようにして、製造コストの低減と装置全体の小型化を図ることができる鞍乗り型車両の変速操作伝達装置及び変速機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る鞍乗り型車両の変速操作伝達装置は、上記課題を解決するために、シフトペダル(25)に連結される入力側部材(29)と、変速機本体の変速操作部(23)に連結される出力側部材(30)と、前記入力側部材(29)と前記出力側部材(30)の間に圧縮側反力と引っ張り側反力を作用させる反力生成手段(40)と、前記反力生成手段(40)の反力に抗した前記入力側部材(29)と前記出力側部材(30)の相対変位を検出する変位検出センサ(39A,39B)と、を備えた鞍乗り型車両の変速操作伝達装置(28)において、前記反力生成手段(40)は、前記入力側部材(29)と前記出力側部材(30)との少なくとも一方に設けられ、中立線(L1)を挟んで傾斜が変化する圧縮側傾斜面(33a)と引っ張り側傾斜面(33b)を有するカム溝(33)と、前記入力側部材(29)と前記出力側部材(30)とのいずれか他方に設けられ、前記カム溝(33)に弾性的に押し付けられる押圧部材(34,41)と、
備え、前記圧縮側傾斜面(33a)と前記引っ張り側傾斜面(33b)とは、前記入力側部材(29)の中心軸線(c)となす傾斜角度の絶対値が異なって設定されるようにした。
【0010】
この場合、シフトペダル(25)が運転者によって操作されると、シフトペダル(25)から入力側部材(29)に圧縮方向または引っ張り方向の荷重が入力される。これにより、カム溝(33)内の中立線位置に位置されていた押圧部材(34,41)が、弾性的な押し付け力に抗してカム溝(33)の圧縮側傾斜面(33a)または引っ張り側傾斜面(33b)に沿って変位しつつ、入力側部材(29)に入力された荷重が出力側部材(30)を通して変速機本体の変速操作部(23)に伝達される。このとき、出力側部材(30)と入力側部材(29)の間の相対変位は変位検出センサ(39A,39B)によって検出される。
【0011】
この場合、入力側部材(29)と出力側部材(30)を圧縮方向に変位させるときと、引っ張り方向に変位させるときとで反力が異なることになる。このため、シフトペダル(25)の押し下げ操作時の反力と押し上げ操作時の反力を変えることができる。
【0012】
前記押圧部材(34,41)は、前記カム溝(33)に当接する当接部品(34)と、当該当接部品(34)を前記カム溝(33)に向けて付勢する皿ばね(41)と、を有する構成にしても良い。
この場合、当接部品(34)が厚みの薄い皿ばね(41)により、カム溝(33)に弾性的に押し付けられることになる。
【0013】
前記押圧部材(34,41)は、前記カム溝(33)に当接する当接部品(34)と、当該当接部品(34)を前記カム溝(33)に向けて付勢する付勢部品(41)と、を有し、前記変位検出センサ(39A,39B)と前記付勢部品(41)とは、前記入力側部材(29)のシフトペダル(25)側の連結点(P1)と前記出力側部材(30)の変速機側の連結点(P2)を結ぶ中心軸線(c)を挟んで同じ側に配置されるようにしても良い。
この場合、変位検出センサ(39A,39B)と付勢部品(41)が中心軸線(c)を挟んで同じ側に配置されるため、中心軸線(c)と直交する方向の膨出量が抑えられ、その結果、全体のより小型化が可能になる。
【0014】
また、この発明に係る鞍乗り型車両の変速操作伝達装置は、上記課題を解決するために、シフトペダル(25)に連結される入力側部材(29)と、変速機本体の変速操作部(23)に連結される出力側部材(30)と、前記入力側部材(29)と前記出力側部材(30)の間に圧縮側反力と引っ張り側反力を作用させる反力生成手段(40)と、前記反力生成手段(40)の反力に抗した前記入力側部材(29)と前記出力側部材(30)の相対変位を検出する変位検出センサ(39A,39B)と、を備えた鞍乗り型車両の変速操作伝達装置(28)において、前記反力生成手段(40)は、前記入力側部材(29)と前記出力側部材(30)との少なくとも一方に設けられ、中立線(L1)を挟んで傾斜が変化する圧縮側傾斜面(33a)と引っ張り側傾斜面(33b)を有するカム溝(33)と、前記入力側部材(29)と前記出力側部材(30)とのいずれか他方に設けられ、前記カム溝(33)に弾性的に押し付けられる押圧部材(34,41)と、備え、前記押圧部材(34,41)は、前記カム溝(33)に当接する当接部品(34)と、当該当接部品(34)を前記カム溝(33)に向けて付勢する付勢部品(41)と、を有し、前記変位検出センサ(39A,39B)と前記付勢部品(41)とは、前記入力側部材(29)のシフトペダル(25)側の連結点(P1)と前記出力側部材(30)の変速機側の連結点(P2)を結ぶ中心軸線(c)を挟んで同じ側に配置されるようにした。
この場合、変位検出センサ(39A,39B)と付勢部品(41)が中心軸線(c)を挟んで同じ側に配置されるため、中心軸線(c)と直交する方向の膨出量が抑えられ、その結果、全体のより小型化が可能になる。
前記変位検出センサ(39A,39B)と前記付勢部品(41)とは、車両搭載状態において、車両側方に向くように前記出力側部材(30)または前記入力側部材(29)に設けられ、前記入力側部材(29)と前記出力側部材(30)とは、車両搭載状態において、前記シフトペダル(25)の操作部よりも下方に配置されることが望ましい。
この場合、シフトペダル(25)の操作時にシフトペダル(25)の操作部や運転者の足が変位検出センサ(39A,39B)や付勢部品(41)の収納部と干渉し難くなる。
【0015】
この発明に係る鞍乗り型車両の変速機は、上記課題を解決するために、前記いずれかに記載の変速操作伝達装置を備えるようにした。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、圧縮側傾斜面と引っ張り側傾斜面を有するカム溝が入力側部材と出力側部材のいずれか一方に設けられ、カム溝に弾性的に押し付けられる押圧部材が入力側部材と出力側部材のいずれか他方に設けられているため、極めて簡素な構造でありながら、これらによって入力側部材と出力側部材を中立位置に付勢することができる。したがって、この発明によれば、製造コストの低減と装置全体の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、図面において、矢印FRは車両の前方を指し、矢印UPは車両の上方を指し、矢印LHは車両の左側方を指すものとする。また、以下の説明においては、特別に断らない限り上下や前後、左右については、車両に取り付けた状態での上下や前後、左右を意味するものとする。さらに、以下で説明する各実施形態においては、共通部分に同一符号を付すものとする。
【0019】
最初に、
図1〜
図5に示す第1の実施形態について説明する。
図1は、鞍乗り型車両の一形態である自動二輪車に採用された変速機20左側面を示す図である。この実施形態の変速機20は、パワーユニットPUとしてエンジン10と一体に形成されている。パワーユニットPUは、クランク軸11を回転自在に支持するエンジン10のクランクケース12が変速機20の変速機ケースを兼ねている。クランクケース12の前側上部には、エンジン10のシリンダ部13が前部上方側に向かって突設されている。クランクケース12内のクランク軸11の後部下方側には、変速機20のメイン軸21が配置され、メイン軸21の後部斜め上方側には変速機20のカウンタ軸22が配置されている。
【0020】
クランクケース12内のメイン軸21の設置部の後部下方には、変速機20の図示しないシフトドラムを操作するため変速操作軸23が配置されている。この実施形態の場合、変速操作軸23が変速機本体の変速操作部を構成している。変速操作軸23の一端部はクランクケース12の左端面から外側に突出している。変速操作軸23の左側の突出部には、入力アーム24がセレーション結合等によって一体回転可能に結合されている。入力アーム24は、変速操作軸23からほぼ鉛直下方に向かって延出している。
【0021】
また、クランクケース12の左側の後部下端にはシフトペダル25のピボット軸26が回動可能に軸支されている。シフトペダル25は、ピボット軸26から車体前方側に向かって延出する操作アーム片25aと、ピボット軸26から車体後方側に向かって斜め下方に延出する連結アーム片25bと、を有している。操作アーム片25aの延出端には、車幅方向外側に突出するペダル軸27(操作部)が支持されている。
【0022】
また、変速操作軸23から下方に延出する入力アーム24の端部と、シフトペダル25の連結アーム片25bの延出端とは、変速操作伝達装置28によって連結されている。変速操作伝達装置28は、シフトペダル25の連結アーム片25bに回動可能に連結される入力側部材29と、入力アーム24に回動可能に連結される出力側部材30と、を備えている。
【0023】
図2は、変速操作伝達装置28を中心とした変速機20の一部の側面図であり、
図3〜5は、
図2のIII−III断面に対応する変速操作伝達装置28の断面図である。なお、この実施形態では、入力側部材29とシフトペダル25との連結点P1と、出力側部材30と変速機20側の入力アーム24との連結点P2を結ぶ直線を、入力側部材29と出力側部材30の中心軸線cと呼ぶものとする。
図2〜
図5に示すように、入力側部材29は、後端部にシフトペダル25との連結点P1を有する入力ロッド31と、入力ロッド31の前部に同軸に連結される入力ブロック32と、を備えている。入力ブロック32は、前縁部の左側面に窪み部32aが設けられるとともに、前端部に窪み部32aに隣接する起立壁32bが設けられている。また、入力ブロック32の軸方向の中間部には、圧縮側傾斜面33aと引っ張り側傾斜面33bを有するカム溝33が形成されている。
【0024】
カム溝33は、略V字状に窪む溝であり、最大に窪んだ部分が中立線L1とされ、その中立線Lを挟んで後方側の傾斜面が圧縮側傾斜面33a、中立線L1を挟んで前方側の傾斜面が引っ張り側傾斜面33bとされている。カム溝33には、当接部品である後述する球34が押し付けられるようになっている。
ここで、圧縮側傾斜面33aと引っ張り側傾斜面33bが中心軸線cとなす傾斜角の絶対値は同じではなく、引っ張り側傾斜面33bが中心軸線cとなす傾斜角の絶対値は、圧縮側傾斜面33aが中心軸線cとなす傾斜角の絶対値よりも大きく設定されている。
【0025】
一方、出力側部材30は、前端側が入力アーム24との連結点P2とされる有底円筒状の筒状ブロック35と、筒状ブロック35の後端側の開口を閉塞する蓋部材36と、を有している。筒状ブロック35には、入力側部材29の入力ブロック32の一部が収容されている。入力ブロック32は摺動自在に蓋部材36を貫通している。
【0026】
また、筒状ブロック35の後縁部側の左側面には、前述の球34をカム溝33に押し付けた状態で保持するホルダユニット37が取り付けられている。ホルダユニット37は、中空円板状のケース38内に付勢部品である皿ばね41が収容され、ケース38の底部に摺動自在に保持された押圧ブロック42が皿ばね41によって突出方向に付勢されるようになっている。押圧ブロック42は、筒状ブロック35内に臨む側の面に円錐状に窪む保持溝42aを有し、その保持溝42aによって球34を転動可能に保持できるようになっている。
【0027】
押圧ブロック42に保持された球34は、皿ばね41の付勢力を受けてカム溝33に押し付けられている。カム溝33は、中立線L1を挟んで相反方向に傾斜する圧縮側傾斜面33aと引っ張り側傾斜面33bとを有しているため、外力の作用しない初期状態では、球34が中立線L1上に位置されるように、皿ばね41の付勢力との協働によって入力側部材29と出力側部材30を軸方向に相対移動させる。つまり、球34は、皿ばね41の力を受けてカム溝33に押し付けられることにより、入力側部材29と出力側部材30を中立位置に向けて付勢する。
この実施形態においては、カム溝33と、押圧部材である球34及び皿ばね41とが、入力側部材29と出力側部材30の間に反力を作用させる反力生成手段40を構成している。
【0028】
また、入力ブロック32の外周面には規制フランジ43が突設されている。この規制フランジ43は、筒状ブロック35と蓋部材36の規制壁35a,36aに対して微小隙間をもって対峙し、これらの規制壁35a,36aに当接することによって入力側部材29と出力側部材30の間の軸方向の相対変位を規制する。
【0029】
実際にシフトペダル25が運転者によって押し上げ操作され、入力側部材29の入力ブロック32に前進方向(圧縮方向)の操作力か入力されると、
図4に示すように、カム溝33の圧縮側傾斜面33a上に球34が乗り上げ、そのとき入力側部材29と出力側部材30の間に皿ばね41の付勢力による軸方向の反力が作用する。このとき入力ブロック32の変位は規制フランジ43が規制壁35aに当接することによって規制される。
【0030】
また、シフトペダル25が押し下げ操作され、入力ブロック32に後退方向(引っ張り方向)の操作力が入力されると、
図5に示すように、カム溝33の引っ張り側傾斜面33b上に球34が乗り上げ、そのとき入力側部材29と出力側部材30の間に皿ばね41の付勢力による軸方向の反力が作用する。このとき入力ブロック32の変位は規制フランジ43が規制壁36aに当接することによって規制される。
【0031】
また、筒状ブロック35の内部のうちの、入力ブロック32の起立壁32bの前面に対向する位置と、起立壁32bの後面に対向する位置には、入力側部材29と出力側部材30の軸方向の相対変位を検出する変位検出センサであるマイクロスイッチ39A,39Bが設置されている。一方のマイクロスイッチ39Aは、入力ブロック32が基準位置から前方(圧縮方向)に変位したときにオンにされ、他方のマイクロスイッチ39Bは、入力ブロック32が基準位置から後方(引っ張り方向)に変位したときにオンにされる。
したがって、シフトペダル25の押し上げ操作や押し下げ操作の有無は、これらのマイクロスイッチ39A,39Bによって検出することができる。また、この実施形態の場合、一方のマイクロスイッチ39Aは、検出部が起立壁32bの前面に対向するように筒状ブロック35の底壁の中央に設置され、他方のマイクロスイッチ39Bは、窪み部32a内において、検出部が起立壁32bの後面に対向するように筒状ブロック35の側壁に設置されている。
【0032】
ところで、この実施形態に係る自動二輪車は、変速機20の変速段を変更するときに、運転者がクラッチの断接操作やアクセルの戻し操作を行うことなく、シフトペダル25のアップ操作やダウン操作のみによって変速段を変更できる機構を備えている。この機構は、変速操作伝達装置28のマイクロスイッチ39A,39Bでの検出結果に基づき、シフトペダル25がアップ操作されたか、またはダウン操作されたかをコントローラが判断する。コントローラは、シフトペダル25がアップ操作されたり、ダウン操作されたりしたものと判断したときには、エンジンの点火をカットする等して変速機20内の動力伝達系のトルクを減少させ、その間にシフトペダル25による変速段の変更(ギヤの噛み合いの変更)を許容する。
【0033】
なお、この実施形態においては、変速機20は、変速機構を有する変速機本体の他、変速操作軸23と、入力アーム24と、変速操作伝達装置28とを含んでいる。
【0034】
また、この実施形態の変速操作伝達装置28では、皿ばね41と球34を保持するホルダユニット37は、車両搭載状態において、車両外側に向くように出力側部材30の外側左面に設置さけている。さらに、変速操作伝達装置28は、車両搭載状態において、シフトペダル25の操作部であるペダル軸27よりも下方となる位置に配置されている。
【0035】
以上のように、この実施形態に係る変速操作伝達装置28は、圧縮側傾斜面33aと引っ張り側傾斜面33bを有するカム溝33が入力側部材29に設けられ、カム溝33上を転動する球34とその球34を押圧付勢する皿ばね41とが出力側部材30に設けられ、球34及び皿ばね41とカム溝33との協働によって入力側部材29と出力側部材30が中立位置に向けて付勢されるようになっている。このため、この実施形態に係る変速操作伝達装置28においては、極めて簡素な構造でありながら、入力側部材29と出力側部材30とを確実に中立位置に向けて付勢し、シフトペダル25の変速挙動を変位検出センサであるマイクロスイッチ39A,39Bによって検出することができる。したがって、この変速操作伝達装置28を採用することにより、製造コストの低減と装置全体の小型化を図ることができる。
【0036】
また、この実施形態に係る変速操作伝達装置28の場合、カム溝33の圧縮側傾斜面33aが中心軸線cとなす傾斜角の絶対値と、引っ張り側傾斜面33bが中心軸線cとなす傾斜角の絶対値とが異なって設定されている。このため、入力側部材29と出力側部材30が圧縮方向に変位するときと引っ張り方向に変位するときとで、反力を異ならせることができる。
この変速操作伝達装置28においては、例えば、運転者が操作荷重を加え難いシフトペダル25の押し上げ操作時に、押し下げ操作時よりも反力を小さくすることができる。したがって、この変速操作伝達装置28を採用することにより、変速機20の操作性を高めることができる。
【0037】
この実施形態においては、カム溝33に押し当てられる球34を付勢する付勢部品として皿ばね41を採用している。カム溝33に押し当てられる球34を付勢する付勢部品としては、皿ばね41に限らずコイルスプリングやゴム弾性体等の他の弾性部材を採用することができる。ただし、この実施形態のように付勢部品として皿ばね41を採用した場合には、付勢方向の占有スペースを小さくできることから、出力側部材30の径方向の膨出量を抑制することができる。したがって、この実施形態の構造を採用することにより、変速操作伝達装置28の車体側方への膨出量を抑え、車両のコンパクト化を図ることができる。
【0038】
また、この実施形態に係る変速操作伝達装置28は、皿ばね41を保持するホルダユニット37が、車両搭載状態において、車両側方に向くように筒状ブロック35に取り付けられ、変速操作伝達装置28全体が、車両搭載状態において、シフトペダル25の操作部であるペダル軸27よりも下方となる位置に配置されているため、シフトペダル25の変速操作時にペダル軸27や運転者の足がホルダユニット37と干渉し難くくなるという利点がある。
【0039】
図6は、第2の実施形態に係る変速操作伝達装置128の
図3と同様の断面図である。
この第2の実施形態に係る変速操作伝達装置128は、基本的な構成は第1の実施形態とほぼ同様であるが、入力側部材29の引っ張り方向の変位を検出するマイクロスイッチ139Bの構造とその配置が第1の実施形態のものと異なっている。
【0040】
第2の実施形態に係る変速操作伝達装置128では、入力側部材29の圧縮方向と引っ張り方向の変位を検出するためのマイクロスイッチ39A,139Bが、筒状ブロック35内の入力ブロック32の先端面に対応する位置に左右に並んで設置されている。圧縮方向の変位を検出する一方のマイクロスイッチ39Aは先端部を押圧されることによってオンになるスイッチであるが、引っ張り方向の変位を検出する他方のマイクロスイッチ139Bは先端部を引っ張られることによってオンになるスイッチが採用されている。他方のマイクロスイッチ139Bの先端部は入力ブロック32の先端部に連結されている。
【0041】
したがって、この第2の実施形態に係る変速操作伝達装置128は、第1の実施形態と同様の効果を得ることができるうえ、マイクロスイッチ39A,139Bの軸方向の占有スペースを縮小できるという利点がある。
【0042】
図7は、第3の実施形態に係る変速操作伝達装置228の
図3と同様の断面図である。
この第2の実施形態に係る変速操作伝達装置228は、基本的な構成は第1の実施形態とほぼ同様であるが、マイクロスイッチ39A,39Bの配置が第1の実施形態のものと異なっている。
【0043】
第3の実施形態に係る変速操作伝達装置228では、一対のマイクロスイッチ39A,39Bが、出力側部材30の筒状ブロック35の左側部の内面に直列並んで配置されている。そして、入力側部材29の入力ブロック32の先端部には径方向外側に突出する検出片44が突設され、その検出片44が一対のマイクロスイッチ39A,39Bの検出部間に配置されている。
この実施形態の場合、変位検出センサである一対のマイクロスイッチ39A,39Bと、付勢部品である皿ばね41を収容するホルダユニット37とが、入力側部材29側の連結点P1と出力側部材30側の連結点P2を結ぶ中心軸線cを挟んで同じ側(車体外方側)に配置されている。
【0044】
したがって、この第3の実施形態に係る変速操作伝達装置228は、第1の実施形態と同様の効果を得ることができるうえ、入力ブロック32の先端側の構造を簡素化することができる。このため、この実施形態に係る変速操作伝達装置228を採用した場合には、変速操作伝達装置228の構造の簡素化と低コスト化を図ることができる。
【0045】
図8は、第4の実施形態に係る変速操作伝達装置328の
図3と同様の断面図である。
この第4の実施形態に係る変速操作伝達装置328は、基本的な構成は第1の実施形態とほぼ同様であるが、筒状ブロック35に取り付けられるホルダユニット337が第1の実施形態のものと異なっている。この実施形態のホルダユニット337は、球34を保持する押圧ブロック42がケース338に摺動自在に嵌合され、押圧ブロック42を介して球34を付勢する付勢部品であるコイルスプリング45がケース338の内部に配置されている。
【0046】
この第4の実施形態に係る変速操作伝達装置328は、第1の実施形態とほぼ同様の基本的な効果を得ることができるうえ、球34を付勢する付勢部品としてコイルスプリング45を採用していることから、球34に対する付勢力の設定精度を高めることができる、という利点がある。
【0047】
図9は、第5の実施形態に係る変速操作伝達装置428の
図3と同様の断面図である。
この第5の実施形態に係る変速操作伝達装置328は、入力側部材29を構成する入力ブロック32の前部側が、出力側部材30を構成する中空の出力ブロック47内に挿入され、入力ブロック32の側面に形成されたカム溝33に、回転可能なカムローラ48が押し付けられるようになっている。カムローラ48は出力ブロック47内に揺動可能に支持された揺動アーム49の先端部に回転可能に支持され、揺動アーム49がコイルスプリング45によってカムローラ48をカム溝33に押し付ける方向に付勢されている。そして、コイルスプリング45は、出力ブロック47に取り付けられた推力調整機構50によって支持されており、推力調整機構50の調整ナット51を出力ブロック47の外部から操作することにより、カムローラ48に対する付勢力を調整できるようになっている。また、出力ブロック47内の入力ブロック32の先端面と対向する位置には、第2の実施形態と同様と一対のマイクロスイッチ39A,139Bが取り付けられている。
なお、
図9中の符号52は、入力ブロック32に回転可能に支持され、出力ブロック47の内面に当接してカムローラ48から入力ブロック32に入力される押圧力を受け止める支持ローラである。
【0048】
この第4の実施形態に係る変速操作伝達装置428は、第4の実施形態とほぼ同様の基本的な効果を得ることができることに加え、カムローラ48が揺動アーム49に支持されてカム溝33に安定して押し付けられることと、コイルスプリング45の付勢力を推力調整機構50によって微調整できることから、反力の設定精度をより高めることができる、という利点がある。
【0049】
なお、この発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態においては、カム溝33が入力側部材29側に設けられ、カム溝33に弾性的に押し付けられる押圧部材が出力側部材30側に設けられているが、逆に、カム溝を出力側部材側に設け、押圧部材を入力側部材側に設けるようにしても良い。
また、上記の実施形態においては、入力側部材29と出力側部材30の相対変位を検出する変位検出センサがマイクロスイッチ39A,39B(139B)によって構成されているが、変位検出センサはこれに限らず、例えば、近接スイッチ等によって構成するようにしても良い。
また、この発明を適用する車両は、自動二輪車(原動機付自転車及びスクータ型車両を含む)に限らず、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)又は四輪の小型車両も含まれる。