特許第6043793号(P6043793)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6043793試料処理量を増やすための補間センサデータの外挿
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043793
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】試料処理量を増やすための補間センサデータの外挿
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/26 20060101AFI20161206BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   G01N27/26 371F
   G01N27/26 371D
   G01N27/416 300S
   G01N27/416 300T
【請求項の数】31
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-526209(P2014-526209)
(86)(22)【出願日】2012年8月16日
(65)【公表番号】特表2014-521984(P2014-521984A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】US2012051140
(87)【国際公開番号】WO2013025909
(87)【国際公開日】20130221
【審査請求日】2015年6月17日
(31)【優先権主張番号】13/210,810
(32)【優先日】2011年8月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/587,431
(32)【優先日】2012年8月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506391864
【氏名又は名称】インストゥルメンテーション ラボラトリー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】マンスーリ,ソフラブ
(72)【発明者】
【氏名】セルベラ,ホセ,マリア
(72)【発明者】
【氏名】モラスキー,アシュレイ
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0102441(US,A1)
【文献】 特表2005−520662(JP,A)
【文献】 特表2010−530531(JP,A)
【文献】 特開2008−082876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N27/00−27/49
G01N31/00−31/22
G01N5/00−9/36
G01N21/00−21/74
G01N33/00−33/46
G01N35/00−37/00
G01N25/00−25/72
G01N23/00−23/227
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料処理量を増やすためのシステムであって、
試料内の分析物への曝露に反応してデータ信号を生成するように構成されたセンサと、
プロセッサであって、
前記データ信号に関連付けられたデータ点を記録し、
記録された前記データ点から、動体領域時間範囲の一部分に対応する一連のデータ点を選択し、
前記一連のデータ点に適合する曲線適合式を時間の対数目盛として決定し、前記曲線適合式がs(t)=a*(log(t))2−2aV(log(t))+cという形式であり、式中、Vは極値が生じる時間の対数であり、tが時間を表し、a及びcが二次多項式の適合パラメータであり、
前記曲線適合式を使用して前記センサの外挿された反応を計算し、
外挿された前記反応を使用して、前記分析物に対応する値を計算し、
それによって前記試料処理量を増やすように構成されたプロセッサと、を備えるシステム。
【請求項2】
前記データ点が等間隔で記録される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記動体領域時間範囲が、前記センサが前記分析物に最初に曝露される第1の時間から、前記センサによって生成された前記データ信号が前記センサの実際の反応と略同様である第2の時間にまで及ぶ、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記曲線適合式を用いて前記センサの外挿された前記反応を計算することが、その際前記センサによって生成された前記データ信号が前記センサの実際の反応と略同様である時間についての前記曲線適合式を解くことを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサが、外挿された前記反応を用いて前記分析物の濃度を求め、前記分析物の所定の前記濃度を提示するようにさらに構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記プロセッサが、数値的に遠いデータ点を除去することによって前記分析物に対応する前記曲線適合式の有用性を判断及び改善し、それによって、分析された組のデータ点を構成して、分析された組の前記データ点に適合する別の曲線適合式を時間の対数目盛として決定するようさらに構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
試料を分析するためのシステムであって、
試料内の分析物への曝露に反応してデータ信号を生成するように構成されたセンサと、
プロセッサであって、
前記データ信号に関連付けられたデータ点を記録し、
記録された前記データ点から動体領域時間範囲の一部分に対応する一連のデータ点を選択し、
前記一連のデータ点に適合する曲線適合式を時間の対数目盛として決定し、前記曲線適合式がs(t)=a*(log(t))2−2aV(log(t))+cという形式であり、式中、Vは極値が生じる時間の対数であり、tが時間を表し、a及びcが二次多項式の適合パラメータであり、
数値的に遠いデータ点を除去することによって前記分析物に対応する前記曲線適合式の有用性を判断及び改善し、それによって、分析された組のデータ点を構成して、分析された組の前記データ点に適合する別の曲線適合式を時間の対数目盛として決定し、
それによって試料処理量を増やすように構成されたプロセッサと、を備えるシステム。
【請求項8】
前記曲線適合式の有用性を判断及び改善することが、
a)最大残差を有する外れ値候補を判断することと、
b)前記最大残差を有する前記外れ値候補の残差を所定の残差制限と比較することと、
c)前記最大残差を有する前記外れ値候補の前記残差が前記所定の残差制限より大きい場合に、前記最大残差を有する前記外れ値候補を外れ値として分類することと、
d)前記曲線適合式の前記パラメータに対する前記外れ値の影響度を取得することと、
e)前記外れ値の前記影響度を所定の測度制限と比較することと、
f)前記外れ値の前記影響度が前記所定の測度制限より大きい場合に、外れ値カウントを増分することと、
g)前記外れ値の前記影響度が前記所定の測度制限より大きい場合に、前記外れ値カウントを所定の外れ値数制限と比較することと、
h)前記外れ値の前記影響度が前記所定の測度制限より大きい場合に、前記データ点から前記外れ値を除去し、分析された組の前記データ点をもたらすことと、を含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサが、
分析された組の前記データ点から取得した一連のデータ点に適合する曲線適合式を時間の関数として決定し、
i)分析された組の前記データ点に対してステップa)からh)を繰り返すようさらに構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記プロセッサが、
前記外れ値の前記影響度が前記所定の測度制限と同等以下である場合に、前記外れ値を前記データ点から除去することにより、反復される組のデータ点を形成し、
分析された組の前記データ点から取得した一連のデータ点に適合する曲線適合式を時間の関数として決定し、
反復される組の前記データ点から取得した一連のデータ点に適合する曲線適合式を時間の関数として決定し、
i)反復される組の前記データ点に対してステップa)からh)を繰り返すようさらに構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記プロセッサが、前記外れ値カウントが前記所定の外れ値数制限より大きい場合に、前記データ点を見直しの対象として特定するようさらに構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記プロセッサが、
前記曲線適合式の適合パラメータの組の各適合パラメータを、前記各適合パラメータの所定の適合パラメータ制限と比較し、
前記適合パラメータの組の少なくとも1つの適合パラメータが前記各適合パラメータの前記所定の適合パラメータ制限より大きい場合に、前記データ点を見直しの対象として特定するようさらに構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記最大残差を有する外れ値候補を判断することが、最大スチューデント化残差を有するデータ点を判断することを含み、前記外れ値の前記影響度を取得することが、DFFITS値を取得することを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
試料処理量を増やすための方法であって、
試料内の分析物への曝露に反応して生成されたデータ信号をセンサから受け取ることと、
前記データ信号に関連付けられたデータ点を記録することと、
記録された前記データ点から動体領域時間範囲の一部分に対応する一連のデータ点を選択することと、
前記一連のデータ点に適合する曲線適合式を時間の対数目盛として決定することであって、前記曲線適合式がs(t)=a*(log(t))2−2aV(log(t))+cという形式であり、式中、Vは極値が生じる時間の対数であり、tが時間を表し、a及びcが二次多項式の適合パラメータである、決定することと、
前記曲線適合式を用いて前記センサの外挿された反応を計算することと、
外挿された前記反応を用いて前記分析物に対応する値を計算し、それによって前記試料処理量を増やすことと、を含む、方法。
【請求項15】
動体領域時間範囲の一部分に対応する一連のデータ点を、記録された前記データ点から選択することが、前記センサが最初に前記分析物に曝露されたときに始まり、前記センサによって生成された前記データ信号が前記センサの実際の反応と略同様となるときに終わる期間に対応するデータ点を選択することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
動体領域時間範囲の一部分に対応する一連のデータ点を、記録された前記データ点から選択することが、前記センサが前記分析物に曝露されてから約15秒後に始まり、前記センサが前記分析物に曝露されてから約30秒後に終わる期間に対応するデータ点を選択することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記曲線適合式を用いて前記センサの外挿された前記反応を計算することが、前記センサによって生成された前記データ信号が前記センサの実際の反応と略同様である時間についての前記曲線適合式を解くことを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
外挿された前記反応を用いて前記分析物の濃度を求めることと、
前記分析物の前記所定濃度を提示することと、をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
センサからのデータから取得された曲線適合式の有用性を判断及び改善するための方法であって、
a)試料内の分析物への曝露に反応して生成されるデータ信号を前記センサから受け取ることと、
b)前記データ信号に関連付けられたデータ点を記録することと、
c)記録された前記データ点から動体領域時間範囲の一部分に対応する一連のデータ点を選択することと、
d)前記一連のデータ点に適合する曲線適合式を時間の対数目盛として決定することであって、前記曲線適合式がs(t)=a*(log(t))2−2aV(log(t))+cという形式であり、式中、Vは極値が生じる時間の対数であり、tが時間を表し、a及びcが二次多項式の適合パラメータである、決定することと、
e)最大残差を有する外れ値候補を判断することと、
f)前記最大残差を有する前記外れ値候補の残差を所定の残差制限と比較することと、
g)前記最大残差を有する前記外れ値候補の前記残差が前記所定の残差制限より大きい場合に、前記最大残差を有する前記外れ値候補を外れ値として分類することと、
h)前記曲線適合式の前記パラメータに対する前記外れ値の影響度を取得することと、
i)前記外れ値の前記影響度を所定の測度制限と比較することと、
j)前記外れ値の前記影響度が前記所定の測度制限より大きい場合に、外れ値カウントを増分することと、
k)前記外れ値の前記影響度が前記所定の測度制限より大きい場合に、前記外れ値カウントを所定の外れ値数制限と比較し、
l)前記外れ値の前記影響度が前記所定の測度制限より大きい場合に、前記データ点から前記外れ値を除去し、分析された組のデータ点をもたらすことと、を含み、
それによって試料処理量を増やす、方法。
【請求項20】
分析された組の前記データ点から取得した一連のデータ点に適合する曲線適合式を時間の関数として決定することと、
m)分析された組の前記データ点に対してステップe)からl)を繰り返すことと、をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記外れ値の前記影響度が前記所定の測度制限と同等以下である場合に、前記外れ値を前記データ点から除去することにより、反復される組のデータ点を形成することと、
反復される組の前記データ点から取得した一連のデータ点に適合する曲線適合式を時間の関数として決定することと、
m)反復された組の前記データ点に対してステップe)からl)を繰り返すことと、をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記外れ値カウントが前記所定の外れ値数制限より大きい場合に、前記データ点を見直しの対象として特定することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記曲線適合式の適合パラメータの組の各適合パラメータを、前記各適合パラメータの所定の適合パラメータ制限と比較することと、
前記適合パラメータの組の少なくとも1つの適合パラメータが前記各適合パラメータの前記所定の適合パラメータ制限より大きい場合に、前記データ点を見直しの対象として特定することと、をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記最大残差を有する外れ値候補を判断することが、最大スチューデント化残差を有するデータ点を判断することを含み、前記外れ値の前記影響度を取得することが、DFFITS値を取得することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
コンピュータ実行可能な命令を記憶しているコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、コンピュータによって実行されると、前記コンピュータが、
試料内の分析物への曝露に反応して生成されたデータ信号をセンサから受け取り、
一連のデータ点に適合する曲線適合式を時間の対数目盛として決定し、前記曲線適合式がs(t)=a*(log(t))2−2aV(log(t))+cという形式であり、式中、Vは極値が生じる時間の対数であり、tが時間を表し、a及びcが二次多項式の適合パラメータであり、
前記曲線適合式を用いて前記センサの外挿された反応を計算し、
外挿された前記反応を用いて、前記分析物に対応する値を計算する、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項26】
コンピュータ実行可能な命令をさらに記憶しており、コンピュータによって実行されると、前記コンピュータが、
前記分析物に対応する計算値を用いて前記分析物の濃度を求め、
前記分析物の前記所定濃度を提示するようにする、請求項25に記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項27】
コンピュータ実行可能な命令を記憶しているコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、コンピュータによって実行されると、前記コンピュータが、
a)試料内の分析物への曝露に応じて生成されるデータ信号をセンサから受け取り、
b)一連のデータ点に適合する曲線適合式を時間の関数として決定し、前記曲線適合式がs(t)=a*(log(t))2−2aV(log(t))+cという形式であり、式中、Vは極値が生じる時間の対数であり、tが時間を表し、a及びcが二次多項式の適合パラメータであり、
c)最大残差を有する外れ値候補を判断し、
d)前記最大残差を有する前記外れ値候補の残差を所定の残差制限と比較し、
e)前記最大残差を有する前記外れ値候補の前記残差が前記所定の残差制限より大きい場合に、前記最大残差を有する前記外れ値候補を外れ値として分類し、
f)前記曲線適合式のパラメータに対する前記外れ値の影響度を取得し、
g)前記外れ値の前記影響度を所定の測度制限と比較し、
h)前記外れ値の前記影響度が前記所定の測度制限より大きい場合に、外れ値カウントを増分し、
i)前記外れ値の前記影響度が前記所定の測度制限より大きい場合に、前記外れ値カウントを所定の外れ値数制限と比較し、
j)前記外れ値の前記影響度が前記所定の測度制限より大きい場合に、前記データ点から前記外れ値を除去し、分析された組のデータ点をもたらすようにする、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項28】
コンピュータ実行可能な命令をさらに記憶しており、コンピュータによって実行されると、前記コンピュータが、
分析された組の前記データ点から取得した一連のデータ点に適合する曲線適合式を時間の関数として決定し、
前記分析された組のデータ点に対してステップc)からj)を繰り返すようにする、請求項27に記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項29】
コンピュータ実行可能な命令をさらに記憶しており、コンピュータによって実行されると、前記コンピュータが、
前記外れ値の前記影響度が前記所定の測度制限と同等以下である場合に、前記外れ値を前記データ点から除去することにより、反復される組のデータ点を形成し、
反復される組の前記データ点から取得した一連のデータ点に適合する曲線適合式を時間の関数として決定し、
前記反復された組のデータ点に対してステップc)からj)を繰り返すようにする、請求項27に記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項30】
コンピュータ実行可能な命令をさらに記憶しており、コンピュータによって実行されると、前記コンピュータが、
前記外れ値カウントが前記所定の外れ値数制限より大きい場合に、前記データ点を見直しの対象として特定するようにする、請求項27に記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項31】
コンピュータ実行可能な命令をさらに記憶しており、コンピュータによって実行されると、前記コンピュータが、
前記曲線適合式の適合パラメータの組の各適合パラメータを、前記各適合パラメータの所定の適合パラメータ制限と比較し、
前記適合パラメータの組の少なくとも1つの適合パラメータが前記各適合パラメータの前記所定の適合パラメータ制限より大きい場合に、前記データ点を見直しの対象として特定する、請求項27に記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料処理量の増大又は測定値の信頼度の向上に関するものである。一事例において、本発明は、具体的には、これに限定されないものの、血液などの体液の臨床分析機器を含む装置と、体液試料内の分析物の存在に反応する電気化学センサの終点反応を予測することにより、又は、外れ値を除去して回帰が想定範囲内かどうかを判断して回帰(曲線適合とも呼ばれる)を改善することによって測定値信頼度を高めることにより、分析機器を通じて試料処理量を増大させる方法と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
様々な臨床状況で、pH、ヘマトクリット、カルシウムのイオン濃度、カリウム、塩化物、ナトリウム、グルコース、乳酸塩、クレアチニン、クレアチン、尿素、酸素及び/又は二酸化炭素の分圧など、患者の血液における特定の化学的特性を測定することは重要である。これらの状況は、診療室への日常訪問、手術室、集中治療室又は緊急治療室で生じる。分析反応が得られる速度は、治療法と治療成績とを判断する上で重要である。センサの反応時間に遅れが出れば診断が遅くなり、それによって適切な治療法の適用も遅れる。そのような遅れは、予後診断及び臨床結果に影響を及ぼし得る。
【0003】
米国特許第6,652,720号明細書、米国特許第7,632,672号明細書、米国特許第7,022,219号明細書及び米国特許第7,972,280号明細書などに記載されている電気化学センサを使用して、患者の血液の血液化学分析を提供するのが一般的である。これらの特許は、参照により、その開示内容全体があらゆる目的で本明細書に援用される。
【0004】
従来の微小電極は、血液試料の化学的特性に比例する電気信号を生成する。これらの電気信号を生成するために、センサシステムは、酵素などの化学的又は生化学的な識別部品をプラチナ電極などの物理的トランスデューサと結合し得る。伝統的な化学的又は生化学的な識別部品は、対象となる分析物と選択的に相互作用して、必要な電気信号をトランスデューサを通じて直接的に又は間接的に生成する。
【0005】
特定の生化学的識別部品の選択性により、血液などの合成分析物混合体の場合であっても、電気化学センサが特定の生物学的分析物を正確に検出することができる。これらのセンサが反応を提供する精度及び速度は臨床分析機器の重要な特徴である。
【0006】
臨床試料分析システムメーカーの目標の1つは、試料処理量を増やすことである。最近の技術革新では、センサの終点反応時間、すなわちセンサが終点反応を提供するまでに要する時間の短縮に注力されてきた。従来の臨床分析システムでは、センサが終点反応を提供すると、その反応はコンピュータに提供され、コンピュータが各種の数学演算を実行して、終点反応を体液試料内の分析物の濃度に変換する。センサが終点反応を提供するまでに要する時間は、試料の分析にかかる時間を意味し、究極的には試料処理量を決定する。したがって、診断と治療介入とを早める目的で体液試料の分析に要する時間を減らす必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、先行技術の装置及び方法の欠点を解消しており、また、試料内の分析物を分析するためのセンサの終点反応時間を予測することによって体液試料などの試料の処理能力を高めるための技術に関する。本明細書に記載された各種実施形態によると、本発明は、試料内の分析物への曝露に応じてセンサによって生成されたデータ信号から導出した曲線適合式を判断することによってセンサの終点反応を外挿するための技法について説明している。各種実施形態で、曲線適合式は時間(log(t))の対数の多項式であり、臨界点が生じる時間の対数の所定値が提供され、この所定値が多項式係数間の関係を提供する。信頼できる外挿を得るために、外れ値を除去し、回帰が想定内であるかどうか判断することによって曲線適合の信頼性が判断及び改善される。
【0008】
各種実施形態で、曲線適合式は、s(t)=a(log(t))+b(log(t))+cという一般形式を有する二次対数多項式である。式中、a、b、及びcは多項式係数であり、臨界点は極点であり、所定値(V)は式b=−2aVの多項式係数bとaとの間の関係を提供し、多項式係数a及びcは変換されたデータ点に基づいて求められ、s(t)は特定時間tにおける計算されたセンサ出力である。
【0009】
一態様では、試料処理量を増やすためのシステムが、試料内の分析物の測定値に関連付けられた複数のデータ信号を生成するように構成されたセンサを含む。このシステムは、動体領域内の特定の時間範囲に対応するデータ点を記録し、記録されたデータ点を時間の関数の尺度に変換し、変換されたデータ点を描画するプロセッサをさらに含む。プロセッサはその後、描画されたデータ点に適合する曲線を判断し、その曲線の曲線適合式を判断する。曲線適合式が判断されると、プロセッサはその曲線適合式を用いてセンサの終点反応を外挿する。その後、外挿された終点反応を用いて分析物の濃度などの値が計算される。
【0010】
1つ又は複数の事例では、試料処理量を増やすためのシステムのプロセッサは、分析物に対応する曲線適合式の有用性を判断及び改善するようさらに構成されている。1つ又は複数の実施形態で、曲線適合式の有用性を判断及び改善することは、最大残差を有する外れ値候補を判断することと、最大残差を有する外れ値候補の残差を所定の残差制限と比較することと、最大残差を有する外れ値候補の残差が所定の残差制限より大きい場合に、最大残差を有する外れ値候補を外れ値として分類することと、曲線適合式のパラメータに対する外れ値の影響度を取得することと、外れ値の影響度を所定の測度制限と比較することと、外れ値の影響度が所定の測度制限より大きい場合に外れ値カウントを増分することと、外れ値の影響度が所定の測度制限より大きい場合に、外れ値カウントを所定の外れ値数制限と比較し、データ点からその外れ値を除去することと、外れ値の影響度が所定の測度制限より大きい場合に、分析された組のデータ点をもたらすことと、を含む。曲線適合式の有用性を判断及び改善する一実施形態で、プロセッサは、分析された組のデータ点から得られた一連のデータに適合する曲線適合式を時間の関数として判断するように、かつ、分析された組のデータ点に対する曲線適合式の有用性の判断及び改善を繰り返すようにさらに構成されている。
【0011】
別の態様では、試料処理量を増やすための方法が、試料内の分析物への曝露に応じてセンサによって生成されたデータ信号を受け取ることを含む。データ信号が受け取られると、データ信号に関連付けられたデータ点が記録される。記録されたデータ点の動体領域時間範囲の一部分に対応する一連のデータ点が選択された後、時間の対数関数の尺度に変換され、描画される。データ点に適合する曲線が生成され、その曲線の二次対数方程式が判断される。曲線適合式が判断されると、プロセッサはその曲線適合式を用いてセンサの終点反応を外挿する。その後、外挿された終点反応を用いて分析物の濃度などの値が計算される。
【0012】
さらに別の態様では、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体が、試料内の分析物への曝露に応じてセンサによって生成されたデータ信号を受け取るためのコンピュータ実行可能な命令を含む。データ信号が受け取られると、そのデータ信号に関連付けられたデータ点が記録される。記録されたデータ点の動体領域時間範囲の一部分に対応する一連のデータ点が選択された後、時間の対数関数の尺度に変換され、描画される。データ点に適合する曲線が生成され、その曲線の二次対数方程式が判断される。曲線適合式が判断されると、プロセッサはその曲線適合式を用いてセンサの終点反応を外挿する。その後、外挿された終点反応を用いて分析物の濃度などの値が計算される。
【0013】
1つ又は複数の実施形態では、試料を分析するためのシステムが、試料内の分析物の測定値と関連付けられた複数のデータ信号を生成するように構成されたセンサを含む。このシステムは、動体領域内の少なくとも1つの特定の時間範囲に対応するデータ点を記録し、一連のデータに適合する曲線適合式を時間の関数として判断するプロセッサをさらに含む。このプロセッサは、分析物に対応する曲線適合式の有用性の判断及び改善も行う。
【0014】
試料を分析するためのシステムを使用するための方法と、試料内の分析物への曝露に応じてセンサによって生成されたデータ信号を受け取るための、かつ分析物に対応する曲線適合式の有用性を判断及び改善するためのコンピュータ実行可能な命令を有するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体と、が開示されている。
【0015】
これらの実施形態及び本発明の他の態様は、下記の詳細な説明及び添付の図面から容易に明らかとなるであろう。なお、添付の図面は、例示を意図するものであり、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る試料濃度測定システムのブロック図例を表す。
図2】本発明の一実施形態に係る、グルコースの濃度を測定するためのセンサによって生成された実験データの電圧対時間のグラフ例を表す。
図3】本発明の一実施形態に係る、図2の実験データの一部分を使用した電圧対時間の対数関数のグラフ例を表す。
図4】本発明の一実施形態に係る、センサの終点反応を予測するための論理フロー図例である。
図5a】本発明の実施形態に係る試料分析の論理フロー図例である。
図5b】本発明の実施形態に係る試料分析の論理フロー図例である。
図6a】本発明の実施形態に係る、曲線適合式の有用性を判断及び改善するための論理フロー図例である。
図6b】本発明の実施形態に係る、曲線適合式の有用性を判断及び改善するための論理フロー図例である。
図7a】本発明の実施形態例によって曲線適合式の有用性を判断及び改善するための別の論理フロー図例である。
図7b】本発明の実施形態例によって曲線適合式の有用性を判断及び改善するための別の論理フロー図例である。
図8a】本発明の一実施形態に係る、ナトリウムの濃度を測定するためのセンサによって生成された実験データに関する電圧対時間のグラフ例を表す。
図8b】本発明の一実施形態に係る、ナトリウムの濃度を測定するためのセンサによって生成された実験データに関する電圧対時間のグラフ例を表す。
図8c】本発明の一実施形態に係る、ナトリウムの濃度を測定するためのセンサによって生成された実験データに関する電圧対時間のグラフ例を表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、試料内の分析物を分析するためのセンサの終点反応時間を予測することによって体液試料などの試料の処理能力を高めるための、かつ、外れ値を検出して曲線適合式におけるパラメータを適切化することによって測定値信頼性を改善するための技術に関する。本明細書に記載された各種実施形態によると、本発明は、試料への曝露に応じてセンサによって生成されたデータ信号から導出した曲線適合式を判断することによってセンサの終点反応を外挿するための技法について記載している。各種実施形態で、曲線適合式は、s(t)=a(log(t))+b(log(t))+cという一般形式を有する二次対数多項式である。式中、a、b、及びcは、変換されたデータ点に基づいて求められる多項式係数であり、s(t)は特定時間tにおける計算されたセンサ出力である。これにより、試料を分析し、センサによって試料で測定された分析物の濃度の決定を提供するのに、センサ終点反応時間全体が終了するのを試料分析システムが待つ必要がなくなり得る。その上、センサ反応時間、つまりは試料曝露時間を短縮することにより、センサ回復時間、すなわちセンサの回復に要する時間も短縮され、処理量の増大が可能となる。
【0018】
以降の説明により、本発明に対する理解が深まるであろう。以降の説明は、添付の図面と併せて読むべきである。説明中、同様の番号は、本発明の各種実施形態内の同様の要素を指す。この説明の中では、特許請求された発明が、実施形態を参照しながら説明される。本明細書に記載された方法及びシステムが単なる例であり、本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り変更が可能であることは、当業者であれば容易に理解できるであろう。
【0019】
本発明の教示をさらに明瞭にするために、次のように定義する。
【0020】
本明細書で使用される「臨界点」は局所的極点及び変曲点を表す。
【0021】
本明細書で使用される「局所的極点」は、一次導関数が存在し、かつゼロである関数の点を表す。
【0022】
本明細書で使用される「変曲点」は、二次導関数が正弦を変える関数の点を表す。
【0023】
本明細書で使用される「外れ値」は、残りのデータから数値的に遠い試料データ点を表す。
【0024】
本明細書で使用される「残差」とは、試料データ点と、曲線適合式によって得られた推定関数の値との間の差のことである。
【0025】
本明細書で使用される「スチューデント化残差」とは、残差をその標準偏差の推定値で割って得られた量のことである。
【0026】
本明細書で使用される「DFFITS」とは、統計的回帰における点の影響度を定量化する式である。古典的な定義では、DFFITSはスチューデント化された残差を
【数1】

倍したものに等しい。式中、hiiはその点のテコ値である。テコ値はハット行列Hの要素hiiと定義され、Hは、i番目の適合値でi番目の観察値yによって用いられたテコ値の大きさを特定する。統計的回帰における点の影響度を定量化する別の式は、回帰適合から個別点を除去することによって得られた外挿点における変化を示す測度である。以下に示すのは、このような測度の例は、
【数2】

であり、式中、55は、外挿点に対応する時間である。
【0027】
log(t)における線形適合の場合(式中、Aは、ハット行列に関連する行列で、A=(X×X)−1)、
【数3】

である。
【0028】
log(t)における二次適合の場合、上記の式は、古典的なDFITTS又はDFFITSの変形である。
【0029】
本明細書で使用される「DFFITS」は、古典的な定義、又は、回帰適合から個別点を除去することによって得られた外挿点における変化を表す測度のことをいう。
【0030】
本明細書で使用される「ハット行列H」は、投影行列と呼ばれることもあり、観察された値のベクトルを、適合した値のベクトルにマッピングする行列である。
【0031】
ここで図を参照すると、図1は、本発明の一実施形態に係る試料濃度測定システム102のブロック図を表す。特に、試料濃度測定システム102は、プロセッサ104と、メモリ106と、メモリ106に記憶された分析物濃度測定アプリケーション110と、を含み得る。分析物濃度測定アプリケーション110は、1つ又は複数のセンサ140A−Nと通信するように構成されているのが一般的であり、以降は概してセンサ140と称する。各種実施形態で、センサ140は、分析物への曝露に応じて容積測定信号又は電流測定信号を生成し得る電気化学センサであり得る。各種実施形態で、第1のセンサ140Aが、試料内の第1の分析物に、第2の140Bが試料内の第2の分析物に、そしてn番目のセンサ140Nが試料内のn番目の分析物に、という具合に反応し得る。センサ140について、以下でさらに詳しく説明する。
【0032】
分析物濃度測定アプリケーション110は、試料内の分析物の濃度を求めるために特定の関数又はタスクを実行するように構成された1つ又は複数のモジュールを含み得る。各種実施形態で、分析物濃度測定アプリケーション110は、センサ通信モジュール112と、データ点報告モジュール114と、データ点選択モジュール116と、曲線適合モジュール118と、外挿モジュール120と、検証モジュール122と、分析物濃度報告モジュール124と、曲線適合質モジュール126と、を含み得る。各種実施形態で、分析物濃度測定アプリケーション110は、追加タスクを実行するための追加モジュールを含み得るか、上記モジュールの一部だけを含み得るものと理解されるべきである。
【0033】
分析物濃度測定アプリケーション110は一般に、試料内の分析物に曝露されるとセンサによって生成されたデータ信号を受け取るように、データ信号から抽出されたデータ点を記録するように、時間の関数の尺度すなわち一実施形態における時間の対数関数の尺度でデータ点を評価するように、評価されたデータ点に一致する曲線を判断するように、センサの終点反応を外挿する目的で利用できる曲線適合式を判断するように、かつセンサの外挿された終点反応に基づいて分析物の濃度を正確に推定するように、構成され得る。
【0034】
各種実施形態で、センサ通信モジュール112は、センサ140からデータ信号を受け取るように構成され得る。センサが電気化学センサであり得るいくつかの実施形態で、データ信号はアンペアで測定され得る電流測定出力又はボルトで測定され得る容積測定出力を表し得る。各種実施形態で、これらのデータ信号は、時間の経過とともに変わり得る。そして時間の経過とともに最終的には安定する出力値を一般に生成し得る。安定した出力値は、一般にセンサの終点反応であり得る。分析物への曝露に応じてデータ出力信号を生成できる任意の種類のセンサがセンサ140として利用され得るものと理解されるべきである。
【0035】
データ点記録モジュール114は、生成されたデータ信号からデータ点を捕捉して記録するように構成され得る。データ点は、試料濃度測定システム102のメモリに又は分析物濃度測定アプリケーション110によってアクセス可能なその他任意の記憶媒体に記憶され得る。各種実施形態で、データ点記録モジュール114は、時間のn番目の一定期間が経過するごとにデータ信号の測定値を記録し得る。この一定期間は、分析物濃度測定アプリケーション110によって事前に定義され得る。この一定期間は、既存のシステムの技術的制限によって定義され得ること、及び、特定の範囲にも制限されることを意図するものではないということを理解すべきである。ただしいくつかの実施形態で、この一定期間は、ミリ秒から数秒の範囲であり得る。代替実施形態では、データ点記録モジュール114は、ランダムな期間又は可変的な期間が経過した後にデータ信号の測定値を記録し得る。
【0036】
データ点選択モジュール116は、記録されたデータ点から関連データ点を選択するように構成され得る。各種実施形態で、データ点選択モジュール116は、時間の関数の尺度すなわち一実施形態における時間の対数関数の尺度で描画されたときにデータ信号を選択し得る。そして選択されたデータ点に厳密に適合し、許容限度内であるセンサの終点反応の予測も行う曲線を分析物濃度測定アプリケーションが判断できるようにする。各種実施形態で、最も正確な結果を提供し得るデータ点が、帰納的に判断される時間範囲から選択され得る。そしてこれらのデータ点は、センサ及び分析物の特性に応じて異なり得る。
【0037】
各種実施形態で、データ点選択モジュール116は、記録されたデータ点から動体領域時間範囲に対応する一連のデータ点を選択し得る。動体領域時間範囲とは、データ点がセンサ反応の動体領域内である任意の時間範囲を表す。一般に、動体領域は、センサが分析物に曝露される第1の時間から、センサによって生成されたデータ信号がそのセンサの終点反応と略同様でない第2の時間、すなわちセンサ反応が平衡に達する前の時間にかけて生じる。言い換えれば、センサによって生成されたデータ信号がセンサの終点反応と略同様になれば、そのデータ信号は平衡領域で生成されているということになる。各種実施形態で、データ点選択モジュール116は、動体領域時間範囲の一部分に対応する一連のデータ点を選択し得る。一実施形態で、この時間範囲は、センサが分析物に曝露されてから約15秒後に開始し得る。さらに、この時間範囲は、センサが分析物に曝露されてから約30秒後に終了し得る。選択するデータ点については、下記図4を参照しながらさらに詳しく説明されている。
【0038】
一実施形態で、曲線適合モジュール118は、選択されたデータ点を、時間の関数の尺度(一実施形態では時間の対数関数の尺度)に変換するように構成され得るため、変換されたデータ点を時間の関数の尺度で評価することができる。曲線適合モジュールはその後、評価されたデータ点と厳密に一致する曲線を判断し得る。曲線適合モジュールは、回帰分析法や最小二乗法など、従来の曲線適合法を使用し得る。
【0039】
各種実施形態で、曲線を表す方程式(曲線適合式とも称される)は、時間の関数(一実施形態では時間の対数(log(t))の多項式であり、臨界点が生じる時間の関数(一実施形態では時間の対数)の所定値が提供され、この所定値が多項式係数間の関係を提供する。
【0040】
各種実施形態で、曲線適合モジュール118は、選択されたデータ点を時間の対数関数の尺度で描画し得るとともに、描画されたデータ点に厳密に一致又は適合する曲線を判断し得る。
【0041】
曲線適合モジュールは、曲線を判断すると、その曲線に対応する曲線適合式を判断し得る。各種実施形態で、曲線適合式はs(t)=a*(log(t))=b*log(t)+cという形式であり、式中、tは時間を表し、a、b及びcは、二次多項式の適合パラメータであり、臨界点は極点であり、所定値(V)は、b=−2aVという形式の適合パラメータbとaとの間の関係を提供し、適合パラメータa及びcは、初回センサ反応に基づいて求められる。使用されたセンサ構成ごとに帰納的に判断されるa、b、及びcの正確な値は、分析物の濃度、試料のサイズ、温度、センサ機器構成の形状、及び他のパラメータに一部依存する。
【0042】
一事例において、本発明はその事例に制限されず、臨界点が生じる時間の所定値は、終点が所望される時間として選択される。本発明を制限するものではない他の事例では、終点時間を上回る時間が所定の時間として選択され得る。
【0043】
外挿モジュール120は、曲線の平衡領域内の時間についての曲線適合式を解くことによってセンサの終点反応を外挿するように構成され得る各種実施形態で、分析物濃度測定アプリケーション102は、帰納的な方法を用いて曲線の平衡領域内の時間を判断し、その後、判断された平衡領域時間を、曲線適合式を解く場合の事前に定義された時間として記憶する。
【0044】
検証モジュール122は、変動係数(CV)と決定係数(R)とを求めることにより、計算された終点反応を検証するように構成され得る。変動係数(CV)と決定係数(R2)とを求めるための次の式は、当該技術分野において周知のものであり、計算された終点反応を検証する目的で検証モジュール122によって使用され得る。
CV=標準偏差(y)/平均(y)、及び、
=1−(合計((y−f)/(合計((y−平均(y)))、
式中、y及びfはそれぞれ、指定された時間に観察及び計算された値である。
【0045】
曲線適合質モジュール126は、分析物に対応する曲線適合式の有用性を判断及び改善するように構成され得る。1つ又は複数の実施形態で、曲線適合質モジュール126は、本明細書における下記の分析を、曲線適合式が取得された後に実行するように構成され得る。曲線適合質モジュール126は、最大残差を有する外れ値候補を判断するように構成され得る。スチューデント化残差やディクソン法など、最大残差を有する外れ値候補を判断するための従来の方法が使用できる。最大残差を有する外れ値候補が選択されると、その外れ値候補の残差は残差制限と比較される。残差制限は、過去の経験や解析的考察又は他の手法から事前に決めておくことができる。外れ値候補の残差が残差制限を上回る場合、その外れ値候補は外れ値として分類される。最大残差を有する外れ値候補の残差が残差制限以下である場合、曲線適合質モジュール126は、同様の残差を有する他の残差候補も残差制限内にあることから、別のモジュールに演算を渡すことができる。外れ値候補が外れ値として分類された場合、曲線適合質モジュール126は、外れ値が曲線適合式のパラメータに及ぼす影響度を得るように構成されている。外れ値の影響度を得るための従来の方法であるクック距離、DFFITS、DFBETASなどが使用され得る。外れ値の影響度は、所定の測度制限と比較される。測度制限は、過去の経験や解析的考察又は他の手法から事前に決めておくことができる。外れ値の影響度が事前に定義された測定値制限を上回る場合には、最初にゼロに設定された外れ値カウントが増分され、この外れ値カウントが、所定の外れ値制限と比較され、その外れ値がデータ点から除去される。データ点から外れ値又は外れ値候補を除去することにより、修正されたデータ点の組が取得され、上記分析が再び実行される。
【0046】
本開示により、センサ反応時間の短縮に応じて試料曝露時間も短縮されるものと理解されるべきである。試料曝露時間が短縮された結果、センサ、特にグルコース及び乳酸塩を測定するためのセンサなどの酵素センサは、短縮されたセンサ回復時間を有し得る。センサが速やかに回復できるため、処理量の増大を達成することができる、
【0047】
例証
以下の実施形態例は、本発明をさらに明瞭にする目的で提示されるが、本発明が実施形態例のみに制限されるものではないことに留意すべきである。
【0048】
分析物濃度記録モジュール124は、計算された終点反応を用いて試料内の分析物の濃度を求め、CV及びR2が許容限度内にないと検証モジュール122が判断した場合には、分析物の濃度をフラグ付きで報告する。逆に、CVとRが許容限度内である場合、分析物濃度記録モジュール124は、分析物の濃度をフラグなしで報告し得る。本発明の方法によって測定され得る分析物として、例えば、ヘマトクリット、カルシウム、カリウム、塩化物、ナトリウム、グルコース、乳酸塩、クレアチニン、クレアチン、尿素のイオン濃度、O2及び/又はCO2の分圧、測定可能なセンサが存在するその他任意の分析物が挙げられるが、これらに限定されない。各種実施形態で、フラグは、フラグ、記号として視覚的に表され得るデータビット、ビープ音やトーンなど聴覚的に表され得るデータビット、又は、CV又はRが許容限度内にないことをユーザーに明示し得るその他任意の明示手段であり得る。
【0049】
次に図2を参照すると、グルコースの濃度を測定するためのセンサによって生成された実験データの電圧対時間のグラフ例が示されている。特に、このグラフは、センサ140によって生成されたデータ信号から捕捉される一連のデータ点202A−Nを示している。データ点は、電圧や電流、電荷などの出力値を表す。各種実施形態で、生成された信号からのデータ点は、時間の経過とともに記録され、時間軸で描画され得る。図2に示すグラフは、記録されたデータ点202A−Nを描画することによって時間軸で生成される。本実施形態では、データ点が毎秒記録される。ただし、各種実施形態で、データ点は秒以下の時間間隔でも記録され得る。
【0050】
秒未満の時間間隔でデータ点を記録することにより、生成されるデータが増え、それによって正確なグラフ作成が可能となり得るが、使用し得るコンピューティングリソースが増えるため、システムリソースによっては好ましくない場合があるという点が理解されるべきである。代わりに、秒よりも大幅に大きな時間間隔でデータ点が記録されると、グラフの精度が下がる場合がある。いずれにせよ、データ点間の時間間隔の長さは、センサの終点反応時間、コンピューティングリソースの制限、センサ及び分析物の性質など、各種要因に基づいて判断され得る実施選択肢である。
【0051】
次に図3を参照すると、図2の実験グルコースデータの一部分を用いて電圧対時間の対数関数を表したグラフ例が示されている。上記のとおり、センサから受け取られたデータ信号に対応するデータ点が記録されると、データ点選択モジュール114が、記録されたデータ点から関連データ点を選択し得る。選択されたデータ点はその後、底10又は自然対数などの対数目盛に変換され得る。データ点を対数目盛に変換すると、変換されたデータ点302A−Nが、電圧値対時間の対数関数として描画される。
【0052】
図3に示すとおり、変換されたデータ点が電圧対時間の対数関数の尺度で描画されると、グラフ300が示され得る。これにより、曲線適合モジュール118が、変換されたデータ点302A−Nに厳密に一致する曲線306を判断することができる。曲線適合モジュール118はその後、曲線306に基づき、センサ技術で利用された既存の曲線適合式よりも単純な曲線適合式を判断し得る。既存の曲線適合式は非線形方程式の底を見つける必要がるが、本明細書で開示されている技法に関しては、このような底を必要としない。非線形方程式の底を見つけることは計算負荷が大きく、高スループットのシステムを扱うと、問題の深刻度がさらに明らかとなる。そのため、非線形方程式の底を見つける必要がない曲線適合式を利用することにより、試料濃度測定システム102は、必要な演算リソースが既存のシステムよりも少なくて済む。これにより、処理量の増大、製造コストの削減、身体的及びエネルギーフットプリントの低減など、既存のシステムを上回る各種利点が得られる。さらに、データ点を描画したり、データ点に適合する曲線を描いたりせずに曲線適合式が判断され得るため、表示ステップが不要となり得るということも理解すべきである。
【0053】
各種実施形態によると、曲線適合式は一般に、次のような一般形式を有する二次対数方程式であり得る。
s(t)=a(log(t))+b(log(t))+c
式中、a、b及びcは、変換されたデータ点に基づいて求められる多項式係数であり、s(t)は、特定時間tにおける計算されたセンサ出力である。一実施形態では、臨界点が生じる時間の対数の所定値が提供され、この所定値は、多項式係数間の関係を提供する。使用されたセンサ構成ごとに実験的又は分析的に求められるa、b及びcの正確な値は、分析物の濃度、試料のサイズ、温度、センサートランスデューサ構成の形状及び他のパラメータに一部依存する。一事例において、臨界点は極点であり、そして、所定値(V)は、b=−2aVという形式の適合パラメータbとaとの間の関係を提供する。適合パラメータa及びcは、曲線適合技法(回帰分析及び最小二乗法などだが、これらに限定されない)によってセンサ反応に基づいて求められる。あるセンサ構成で値a、b及びcが求められると、試料内の分析物の濃度を速やかに推定するのに、曲線適合式が用いられ得る。本発明によると、分析物の濃度を求めるためにセンサが最終読み取り値を提供するのを待つ必要がない。
【0054】
変換されるデータ点を選択することが曲線適合式の精度を判断する上で重要な役割を果たすということを理解すべきである。しかしながら、従来の常識では、曲線適合を判断する目的で使用されるデータ点の数が多いほど良いとされる。
【0055】
本発明は、その常識が必ずしも該当しないということを明らかにしており、むしろ、データ点の選択元範囲の方が重要な役割を果たし得る。各種実施形態で、時間の対数関数の尺度に変換されるように選択されたデータ点は、分析物が最初にセンサに曝露されてから15〜30秒後から生成されるデータ点であった。他の実施形態では、分析物が最初にセンサに曝露されてから15〜35秒後から生成されたデータ点が使用されたが、精度に大きな向上は見られなかった。同様に、分析物が最初にセンサに曝露されてから10〜25秒後から生成されたデータ点も使用されたが、生成された一部の結果については、精度が不十分であった。選択されたデータ点は、センサ及び分析物の種類、終点反応時間、そして他の要因に基づいて変わり得るということを理解すべきである。各種実施形態で、データ点を選択するための時間範囲は、帰納的な方法によって判断され得る。
【0056】
上記のとおり、センサの終点反応値は、センサ反応曲線の平衡領域内の時間についてこの方程式を解くことによって計算され得る。曲線適合式を用いて終点分析物関連の値が計算されると、終点反応値は、較正値(割り当て(ration)、較正点、相違値など)を含む方法などを用いて分析物の濃度に対応する値に変換される。
【0057】
次に図4を参照すると、試料内の分析物の濃度を推定するための論理フロー図が示されている。処理402でルーチン400が始まり、そこでセンサ140が、分析物を含有する試料に曝露される。上記のとおり、電気化学センサ140は、試料内の分析物の濃度レベルに反応し得る。
【0058】
処理402の後、ルーチン400は処理404へと進み、そこでセンサ140が分析物への曝露に応じて1つ又は複数のデータ信号を生成し得る。各種実施形態で、データ信号は、電圧、電流、電荷又はその他任意の種類の測定可能な出力という形態であり得る。これらのデータ信号は、分析物に曝露されている間、センサ140によって連続的に生成されている。
【0059】
処理404の後、ルーチン400は処理406に進み、そこでデータ点記録モジュール114がデータ信号からデータ点を記録し得る。これらのデータ点の記録密度は、センサの種類、分析物の量、試料のサイズ、温度、及び他の要因によって決定され得る。一実施形態では、データ信号が毎秒記録される。ただし、これらのデータ点が記録される頻度が毎秒1データ点より多い場合や少ない場合があり得るということを理解すべきである。データ点は、試料濃度測定システム102のメモリに記憶され得るか、又は、分析物濃度測定アプリケーション110によってアクセス可能な箇所に遠隔記憶され得る。
【0060】
処理406の後、ルーチン400は処理408に進み、そこでデータ点選択モジュール116が、データ点記録モジュール114によって記録されたデータ点の一部分を選択し得る。各種実施形態で、データ点選択モジュール116は、未来のある時間に外挿された際にセンサ140の実際の結果に近似する結果を生成する方程式を有する曲線を描画時に確定し得るデータ点を選択し得る。各種実施形態で、データ点選択モジュール116は、任意の数のデータ点を選択し得る。データ点の選択時にデータ点選択モジュール116が考慮する必要のある相殺バランスがある。選択するデータ点が多すぎると、外れ値の数も増え、適合する曲線の精度に悪影響を及ぼす可能性があり、あまりに遠い未来のデータ点を選択すると、試料濃度測定システム102が分析物の濃度を求め得る時間が遅れる可能性がある。特に、最初に記録されるいくつかのデータ点を選択すると、試料濃度測定システムが正確な結果を生成しない場合がある。これは、センサ140が、最初に分析物に曝露されたときに、ノイズ信号を始めとする好ましくない影響を生成し得るからである。そのため、センサ140の初回反応後に動体領域から選択されたデータ点は、帰納的な方法に基づいて、精度について大きく妥協することなく、最短時間で分析物の濃度を求める必要性のバランスをとりながら、最も正確な結果を生成し得る。
【0061】
処理408の後、ルーチン400は処理410に進み、そこで曲線適合モジュール118が、特定時間に対応する出力値を有する選択されたデータ点を時間の対数関数の単位に変換する。各種実施形態で、対数目盛の底は、底10又は自然対数(ln e)であり得る。それにより、変換されたデータ点によって描画された曲線の精度が向上し得るとともに、使用するデータ点が既存の曲線適合式よりも減少する。
【0062】
処理410の後、ルーチン400は処理412に進み、そこで曲線適合モジュール118が、変換されたデータ点をグラフ上に描画し得る。各種実施形態で、Y軸はセンサ140によって生成されたデータ信号から収集された出力値であり、X軸は時間の対数関数である。処理412の後、ルーチン400は処理414に進み、そこで曲線適合モジュール118が、描画されたブラフの曲線適合式を判断し得る。各種実施形態で、曲線適合モジュール118は、s(t)=a(log(t))+b(log(t))+cという形式を有する二次対数多項式である曲線適合式を判断し得る。式中、a、b及びcは、変換されたデータ点に基づいて求められる多項式係数であり、s(t)は特定時間tにおける計算されたセンサ出力である。使用されたセンサ構成ごとに実験的又は分析的に求められるa、b及びcの正確な値は、分析物の濃度、試料のサイズ、温度、構成の形状、及び他のパラメータに一部依存する。曲線適合モジュールがデータ点に適合する曲線を判断するのにデータ点を必ずしも描画するとは限らないということを理解すべきである。いくつかの実施形態で、曲線適合モジュール118は、データ点を描画しなくても、データ点に適合する曲線を判断でき得る。市販の曲線適合ソフトウェアを利用して、選択されたデータ点に適合する曲線及び対応する方程式を判断し得る。
【0063】
処理414の後、ルーチン400は処理416に進み、そこで外挿モジュール120が、平衡領域内の期間についての曲線適合式を解くことにより、センサ140の計算された終点反応を外挿する。処理416の後、ルーチン400は処理418に進み、そこで検証モジュール122が、終点反応の精度を検証する。いくつかの実施形態によると、検証プロセスは、変動係数(CV)及び決定係数(R)の式を用いて、(CV)及び(R)を求めることを含む。
【0064】
処理418の後、ルーチン400は処理420に進み、そこで、CV及びRが試料濃度測定システム102によって事前に定義された許容限度内どうかを検証モジュールが判断する。各種実施形態で、これらの限度により、CV及びRは許容範囲に収まる。この許容範囲は、当業者によって公知であり得る。一実施形態では、この限度により、Rが0.98〜1の間に収まり得る。決定係数(R)は、データと曲線適合関数との一致度を表す。Rの値が近いほど、一致度が高い。
【0065】
処理420で、CV若しくはR、又はCVとRとの両方が許容範囲内にないと検証モジュール122が判断した場合には、ルーチン400が処理422に進み、そこで分析物濃度報告モジュール124が、外挿された終点反応を使用して分析物の濃度を求め、その結果が許容限度内にないことを表すフラグを付けてその分析物濃度を報告する。
【0066】
ただし、処理420で、CVとRとの両方が許容範囲内にあると検証モジュール122が判断した場合には、ルーチン400が処理424に進み、そこで分析物濃度報告モジュール124が、外挿された終点反応を使用して分析物の濃度を求め、フラグを付けずにその分析物濃度を報告する。ルーチン400は、処理422及び424の後、処理426で終了する。
【0067】
各種実施形態によると、センサ140を較正するためのシステムを用意するのが望ましい場合がある。センサの製造時に不正確を矯正する目的で分析物の濃度を測定するための自己較正システムを使用しても良く、それによって製造時間と製造コストを下げることができる。自己較正システムはさらに、試料濃度測定システム102のセンサ又は他の部品によって生成された小さなノイズを補正する目的でも使用され得る。
【0068】
図5aを参照すると、曲線適合式の有用性を判断及び改善するための流れ図例が示されている。処理402でルーチンが開始され、そこでセンサ140が、分析物を含有する試料に曝露される。上記のとおり、電気化学センサ140は、試料内の分析物の濃度レベルに反応し得る。
【0069】
処理402の後、ルーチンは処理404へと進み、そこでセンサ140が分析物への曝露に応じて1つ又は複数のデータ信号を生成し得る。各種実施形態で、データ信号は、電圧、電流、電荷又はその他任意の種類の測定可能な出力という形態であり得る。これらのデータ信号は、分析物に曝露されている間、センサ140によって連続的に生成されている。本明細書に既述のとおり、ルーチンはその後、処理406〜410へと進む。
【0070】
処理410の後、ルーチンは処理415に進み、そこで、選択されたデータ点の曲線適合式が判断される。この曲線適合式は、回帰分析又は最小二乗法をはじめとする従来の方法によって判断され得るが、これらの方法に限定されない。各種実施形態によると、曲線適合式は一般に、次のような一般形式を有する二次対数方程式であり得る。
s(t)=a(log(t))+b(log(t))+c
式中、a、b及びcは、変換されたデータ点に基づいて求められる多項式係数であり、s(t)は、特定時間tにおける計算されたセンサ出力である。一実施形態では、臨界点が生じる時間の対数の所定値が提供され、この所定値は、多項式係数間の関係を提供する。使用されたセンサ構成ごとに実験的又は分析的に求められるa、b、及びcの正確な値は、分析物の濃度、試料のサイズ、温度、センサートランスデューサ構成の形状、及び他のパラメータに一部依存する。一事例において、臨界点は極点であり、所定値(V)は、b=−2aVという形式の適合パラメータbとaとの間の関係を提供する。適合パラメータa及びcはセンサ反応に基づいて求められる。
【0071】
処理415の後、ルーチンは処理416に進み、そこで外挿モジュール120が、平衡領域内の時間についての曲線適合式を解くことにより、センサ140の計算された終点反応を外挿する。処理416の後、ルーチンは処理430に進み、そこで曲線適合質モジュール126が曲線適合式の有用性を判断及び改善する。処理430の論理流れ図の実施形態が、図6a、図6b、図7a、図7cに示されている。
【0072】
分析物のデータを分析するための論理流れ図の別の実施形態が、図5bに示されている。上記のとおり、図1に示す試料濃度測定システムのモジュールの一部だけが使用される実施形態は、本発明の範囲内である。曲線適合式が外挿に使用されない場合でも、データ点への適合を表す曲線が使用可能な試料濃度測定システムは無数にある。図5bに示す実施形態では、外挿が存在しない実施形態もこの教示の範囲内であることを強調するために、処理416が省略されている。
【0073】
曲線適合式の有用性を判断及び改善するための論理流れ図の一実施形態が、図6a及び図6bに示されている。図6aを参照すると、同図に示す論理流れ図は、図5a若しくは図5bに示す流れ図から得られた曲線適合及びデータ点から、又は、図1データ点記録モジュール114、データ点選択モジュール116並びに曲線適合モジュール118から等しく得られた曲線適合及びデータ点から開始される。外れ値カウントは、まずゼロに設定される。最大残差を有する外れ値候補が判断される(処理440)。論理流れ図はその後、外れ値候補の残差と所定の残差制限との比較へと進む(処理444)。外れ値候補の残差はその後、所定の残差制限と比較される。最大残差を有する外れ値候補の残差が所定の残差制限以下である場合には、その他任意の外れ値候補の残差が小さく、所定の残差制限内であるため、処理が停止する。外れ値候補の残差が所定の残差制限より大きい場合、最大残差を有する外れ値候補は外れ値として分類される(処理448)。論理流れ図はその後、外れ値が曲線適合式のパラメータに及ぼす影響度の取得へと進む(処理450)。この論理流れ図は図6bへと続く。図6bを参照すると、外れ値が処理450で得られた曲線適合式のパラメータに及ぼす影響度が、所定の測度制限と比較される。外れ値が曲線適合式のパラメータに及ぼす影響度と所定の測度制限とを比較した結果が、外れ値が曲線適合式のパラメータに有意な影響を及ぼすことを表す場合には、外れ値カウントが1増分され(処理454)、その外れ値カウントが所定の外れ値数制限と比較され(処理458)、その外れ値がデータ点(処理460)から除去される。外れ値カウントが外れ値数より大きい場合、そのデータ集合は見直しの対象として特定される。論理流れ図はその後、外れ値が除去された新たなデータ点の集合を形成する(処理464)。一事例では、曲線適合式用の新たな曲線適合パラメータの集合が、曲線適合モジュール118で新たなデータ点の集合を用いて取得される。論理流れ図はその後、新たなデータ点のデータ集合の最大残差を有する新たな外れ値候補の判断に戻る(図6aの処理440)。外れ値が曲線適合式のパラメータに及ぼす影響度と所定の測度制限とを比較した結果が、外れ値が曲線適合式のパラメータに有意な影響を及ぼさないことを表す場合、論理流れ図は、新たな点のデータ集合の形成に進み、外れ値候補が除去される(処理464)。一事例では、曲線適合式用の新たな曲線適合パラメータの集合が、曲線適合モジュール118で新たなデータ点の集合を用いて取得される。この論理流れ図はその後、新たなデータ点のデータ集合の最大残差を有する新たな外れ値候補の判断に戻る(図6aの処理440)。ルーチンは、すべての外れ値が特定されるまで進むが、外れ値カウントが所定の外れ値数制限を上回る場合には停止され得る。
【0074】
曲線適合式の有用性を判断及び改善するための論理流れ図の実施形態例が、図7a及び図7bに示されている。図7aを参照すると、同図に示す論理流れ図は、図5a若しくは図5bに示す流れ図から得られた曲線適合及びデータ点から、又は、図1データ点記録モジュール114、データ点選択モジュール116、並びに曲線適合モジュール118から等しく得られた曲線適合及びデータ点から開始される。外れ値カウントは、まずゼロに設定される。外れ値カウントは、まずゼロに設定される。最大スチューデント化残差を有する外れ値候補が判断される(処理470)。論理流れ図はその後、外れ値候補のスチューデント化残差と所定のスチューデント化残差制限との比較へと進む(処理474)。最大スチューデント化残差を有する外れ値候補のスチューデント化残差が所定のスチューデント化残差制限以下である場合には、その他任意の外れ値候補のスチューデント化残差が小さく、所定の残差制限内であるため、処理が停止する。外れ値候補のスチューデント化残差が所定のスチューデント化残差制限より大きい場合には、最大スチューデント化残差を有する外れ値候補が外れ値として分類される(処理478)。論理流れ図はその後、外れ値のDFFITS値を取得し始める(処理480)。この論理流れ図は図6bへと続く。図7bを参照すると、処理480で取得された外れ値のDFFITS値は、所定のDFFITS制限と比較される。外れ値のDFFITS値と所定のDFFITS制限とを比較した結果が、外れ値が曲線適合式のパラメータに有意な影響を及ぼすことを表す場合、外れ値カウントが1増分され(処理484)、外れ値カウントが所定の外れ値数制限と比較され(処理488)、その外れ値がデータ点から除去される(処理490)。外れ値カウントが外れ値数より大きい場合には、そのデータ集合が見直しの対象として特定される。論理流れ図はその後、外れ値が除去された新たな点のデータ集合を形成する(処理494)。一事例では、曲線適合式用の新たな曲線適合パラメータの集合が、曲線適合モジュール118で新たなデータ点の集合を用いて取得される。論理流れ図はその後、新たなデータ点のデータ集合の最大スチューデント残差を有する新たな外れ値候補の判断に戻る(図7aの処理470)。外れ値のDFFITS値と所定のDFFITS制限とを比較した結果、外れ値が曲線適合式のパラメータに有意な影響を及ぼさないことを表す場合、論理流れ図は、外れ値候補が除去された新たな点のデータ集合の形成に進む(処理494)。一事例では、曲線適合式用の新たな曲線適合パラメータの集合が、曲線適合モジュール118で新たなデータ点の集合を用いて取得される。論理流れ図はその後、新たなデータ点のデータ集合の最大残差を有する新たな外れ値候補の判断に戻る(図7aの処理470)。ルーチンは、すべての外れ値が特定されるまで進むが、外れ値カウントが所定の外れ値数制限を上回る場合には停止され得る。
【0075】
ナトリウム濃度を測定するセンサによって生成された実験データの電圧対時間のグラフ例が図8aに示されている。このグラフ例は、ナトリウムセンサ140によって生成されたデータ信号から捕捉された一連のデータ点を示している。このグラフ例に示す出力値は、ミリボルトで示されたデータ点を表している。a=0でtype ax+bx+cという曲線適合式が曲線適合モジュール118から取得される。この図に示すグラフ例の場合、曲線適合式は−0.1126x−280.24である。本明細書に開示された下記実施形態例では、最大残差を有する外れ値候補を判断することが、最大スチューデント化残差を有するデータ点を判断することによって実行され、外れ値の影響度を取得することが、DFFITS値を取得することによって実行される(本実施形態例で、DFFITSとは、回帰適合から個別点を除去することによって得られた外挿点における変化を表す測定値のことをいう)。スチューデント化残差制限の絶対値は5で、スチューデント化残差は、我々が外れ値とみなす値よりも大きな絶対値を有する。DFFITS限度の絶対値は0.04で、この限度よりも大きなDFFITS絶対値はいずれも、外れ値が曲線適合式のパラメータに有意な影響を及ぼすため、除去する必要があることを表す。外れ値の最大数は、2に等しくなるように設定される。外れ値が3つ以上の試料を有する場合、その試料は、エラーとみなされ得るため、見直し対象として確保される。下記の表1は、測定値の更新時間ごとのセンサ出力、スチューデント化残差、及びDFFITS値を示している。
【0076】
【表1】
【0077】
表1からわかるとおり、28秒時点におけるスチューデント化残差は最大絶対値−33.7で、最大絶対値を有するスチューデント化残差はスチューデント化残差の絶対限度より大きい。28秒時点における値は外れ値として分類される。最大絶対値を有するスチューデント化残差のDFFITS値は0.499で、DFFITS限度から外れている。そのため、この外れ値は除去される。外れ値カウントは1に設定される。
【0078】
図8bは、図8aにおけるデータのグラフ例を示しており、28秒時点における外れ値が除去されている。28秒時点における外れ値が除去されたデータ集合に対し、a=0でtype ax+bx+cという曲線適合式が曲線適合モジュール118から取得される。この図に示すグラフ例の場合、曲線適合式は0.9299x−281.55である。下記表2からわかるとおり、16秒時点におけるスチューデント化残差は最大絶対値−38.7で、最大絶対値を有するスチューデント化残差はスチューデント化残差の絶対限度より大きい。16秒時点における値は外れ値として分類される。最大絶対値を有するスチューデント化残差のDFFITS値は−0.5で、DFFITS限度から外れている。そのため、この外れ値は除去される。外れ値カウントは2に設定される。
【0079】
【表2】
【0080】
図8cは、図8aにおけるデータのグラフ例を示しており、28秒時点における外れ値と16秒時点における外れ値とが除去されている。28秒時点における外れ値と16秒時点における外れ値とが除去されたデータ集合に対し、a=0でtype ax+bx+cという曲線適合式が曲線適合モジュール118から取得される。この図に示すグラフ例の場合、曲線適合式は0.7705x−281.33である。下記の表3からわかるとおり、スチューデント化残差値はすべて制限範囲内であり、DFFITS計算は不要である。外れ値カウントは、外れ値数制限より大きくない。
【0081】
【表3】
【0082】
外れ値の検出が完了した後、最終群の適合パラメータ(a=0、b=0.7705、c=−281.33)の各適合パラメータが、対応する適合パラメータ制限と比較される。いずれかのパラメータがそのパラメータの適合パラメータ制限から外れていれば、その試料は、エラーであるとみなされ得るため、見直し対象として確保される。3つのパラメータがいずれも対応する適合パラメータ制限内であれば、外挿が行われ、その試料の結果が報告される。図8a〜図8cに示す実施形態例で、パラメータ「b」の適合パラメータ制限は0.6〜1.0であり、パラメータ「c」の適合パラメータ制限は−290〜−260である。最終群の適合パラメータの各適合パラメータ(a=0、b=0.7705、c=−281.33)を適合パラメータ制限と比較すると、最終群の適合パラメータの各適合パラメータは、対応する適合パラメータ制限内である。そのため、この試料値は報告される。第1の2つの群の適合パラメータが対応する適合パラメータ制限と比較されている場合、これらの適合パラメータが適合パラメータ制限から外れていることが分かっていることに留意されるべきである。
【0083】
各種実施形態によれば、本明細書の開示内容は、電気化学センサの重要な反応時間を判断するための時間を短縮する目的で利用され得る。いくつかの実施形態で、電気化学センサは、例えば拡散制御反応環境で、pO2、pCO2、グルコース、乳酸塩の濃度レベルを計算するなどの目的で使用され得る。加えて、この方法論は、Na、K、Cl、Caなどのイオン選択性電極の終点を検出する目的でも使用され得る。一部のセンサは一般に反応が速いため、終点センサ反応予測が不要な場合もあるが、曲線適合は依然として有用であり得、曲線適合式の改善は依然として重要である。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b
図8c