【文献】
Silane-Crosskinking High-Performance Spray Foams,Organosilicon Chemistry VI:From Molecules to Materials,2008年 5月21日,813-817
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも、1つのポリエーテルポリオール、1つのポリイソシアネートおよび少なくとも1つのイソシアネート反応性基を有する1つのα−アルコキシシランの反応によって得ることができるα−アルコキシシラン末端化プレポリマーであって、ポリエーテルポリオールは、500〜7000g/モルの重量平均を有し、プロピレンオキシド単位を含み、ポリエーテルポリオールに基づいて3〜50重量%の比率のエチレンオキシド単位を有することを特徴とする、α−アルコキシシラン末端化プレポリマー。
エチレンオキシド単位の比率は、ポリエーテルポリオールに基づいて、30重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のα−アルコキシシラン末端化プレポリマー。
ポリエーテルポリオールの重量平均は、800〜6000g/モルの範囲、さらに好ましくは1000〜4500g/モルの範囲であることを特徴とする、請求項1または2に記載のα−アルコキシシラン末端化プレポリマー。
α−アルコキシシラン末端化プレポリマーはトリエトキシ−α−シラン基を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のα−アルコキシシラン末端化プレポリマー。
α−アルコキシシラン末端化プレポリマーは、α−アルコキシシランをNCO末端化ポリウレタンプレポリマーと反応させることによって得ることができ、ここで、NCO末端化ポリウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネートをポリエーテルポリオールと反応させることによって得ることができ、NCO末端化ポリウレタンプレポリマーの平均NCO官能価は、好ましくは4以下、特に2〜4の範囲であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のα−アルコキシシラン末端化プレポリマー。
組成物は圧力液化プロペラントガスを含み、ここでプロペラントガスは好ましくはそれぞれ少なくとも1つの1〜5個の炭素原子のアルカンまたはアルケン、特にエタン、プロパン、n-ブタン、イソブタン、ペンタンおよびその混合物の群からの少なくとも1つの化合物を含むことを特徴とする、請求項11および12のいずれかに記載の組成物。
【背景技術】
【0002】
噴霧可能な組成物は従来技術から既知である。例えば建築構造部門等において、空隙を満たすための噴霧可能なインサイチュフォームが存在する。これは、特に窓および扉のフレームと周囲のレンガ造りとの間の隙間および空洞を満たす際に特に適用され、良好な防湿特性および良好な断熱特性で知られている。この種の噴霧可能な組成物はさらに、配管ラインを防護するため、または技術的装置における空隙を満たすために用いられる。
【0003】
この上記のインサイチュフォームは、一般にポリウレタン(PU)フォームである。このフォームは、多量の遊離イソシアネート基を有する未架橋プレポリマーからなる組成物に基づく。遊離イソシアネート基は非常に反応性であり、水/湿気の存在下においてそれらを互いに反応させてプレポリマーからポリマーネットワークの構成を引き起こすのに、通常の気温で十分である。大気の湿度だけでなく、2以上のOH基を有するアルコール、対応するチオール、および第1級または第2級アミン、およびそれらの混合物も、上記のイソシアネートに対するあり得る共反応物である。ポリオールはこの使用のために特に一般的である。ポリオール/水との反応は、水素結合を形成し得る、そのため硬化フォーム中に部分的結晶構造を形成し得るウレタン/ウレア単位を生じさせる。この結果、フォーム硬度、圧縮強度、および引張強度は全て高められる。
【0004】
組成物は、加圧缶に入れられることが多く、それが加圧缶から出る際にプレポリマーの発泡化を促進する液体発泡剤を付与される。さらに、プレポリマーのイソシアネート基は大気の湿度と反応して二酸化炭素を放出し、これは同じく発泡に寄与する。この反応において、関連するイソシアネート基はアミンに転化され、次にこれは更なるイソシアネート基と反応してポリマーネットワークを形成し得、すなわち架橋反応から失われない。
【0005】
ポリウレタン組成物は、1Kフォームまたは他には2成分(2K)フォームとして製造することができる。1Kフォームは、硬化のために大気の湿度の影響を必要とするが、2Kフォームは、イソシアネートおよびポリオールの別個の貯蔵および放出直前にのみそれらを互いに混合することを伴う。この混合工程は、例えば、加圧缶の加圧本体において起き、フォームを放出するかどうかに関わらず重合が起きるため、この時その含有物を迅速に完全に使い尽くさなければならない。従って、この種の系は1.5Kフォームともよく言われる。
【0006】
別にあり得るのは、2室加圧缶の使用であり、ここでは、2つの成分が出口バルブの領域においてのみ互いに混合される。1Kフォームと比べた2Kフォームの主な利点は、硬化反応がかなり速いことにあり、これは、大気の湿度の不存在下においてさえ反応が生じるためである。それに対して、1Kフォームの有する硬化速度は大気の湿度および大気の湿度が発泡材料に拡散する速度によって決定される。
【0007】
一般に、上記の組成物にはまだ、プレポリマー成分に加えて、フォーム安定剤等の更なる助剤、および架橋反応を加速させる触媒も含まれる。用いられる触媒は、主に有機錫または有機チタン化合物、例えばジブチル錫ジラウレート等である。
【0008】
上記のポリウレタンフォームは、完全硬化状態において良好な機械的特性および断熱特性、および大部分の基材への良好な接着性を有する。
【0009】
しかし、上記のポリウレタンフォームは、まだモノマージイソシアネートを含み得、これはそのフォームを創傷処置のために用いる場合には望ましくない
【0010】
上記のスプレーフォームに関する危険潜在性を減少させるため、DE 4303848 A1には、たとえあったとしても、せいぜい最小限の濃度のモノマーイソシアネートしか含まないプレポリマーが記載されている。しかし、プレポリマーが医療用途に対して望ましくない遊離イソシアネート基をなおも有し得るという、ある種のリスクがまだ存在する。
【0011】
遊離イソシアネート基によって硬化しない重合性発泡性組成物は、上述の理由のために近年開発されている。例えば、US 6,020,389 A1には、アルコキシ-、アシルオキシ-、またはオシキモ(oximo)-末端化シリコーンプレポリマーを含むシリコーンフォームが開示されている。これらの化合物は、シロキサン基の縮合反応によって重合する。これらの化合物は、−1Kポリウレタンスプレーフォームのように−重合反応に対しては大気の湿度に依存するので、その効果時間が長いために不利である。従って、完全硬化には、特に比較的厚い発泡層を有しては、長い時間がかかる。これは不便であるだけでなく、スプレー法によって形成されるフォーム構造が、その孔壁が進行中の重合反応を通してそれ自体の十分な強度を達し得る前に、再度部分的に崩壊するという問題がある。
【0012】
WO 00/04069には、アルコキシシラン末端化ポリウレタンプレポリマーが開示されている。このプレポリマーは、2官能性イソシアネートとポリオールとの反応によって従来法で得られる、一般的なポリウレタン骨格を有する。プレポリマー鎖のそれぞれの末端基が遊離イソシアネート基を有することを確実とするために、過剰の多官能性イソシアネートが用いられる。このイソシアネート末端化プレポリマーを、次に更なる反応工程においてアミノアルキルトリアルコキシシランと反応させて所望のアルコキシシラン末端化ポリウレタンプレポリマーを生成する。アミノプロピルトリメトキシシランがこのために特に用いられる。これから得られるプレポリマーは、プロピレンスペーサーを通してポリウレタン骨格に結合したトリメトキシシラン末端化末端基を有する。ケイ素原子とポリウレタン骨格との間のプロピレン基のために、この種のシランはγ-シランとも言われる。
【0013】
硬化反応において、γ-シランは水と反応してアルコールを放出し、それによってSi-O-Siネットワークを形成し、プレポリマーを硬化させる。たとえγ-シランが、毒物学的な観点からイソシアネート末端化ポリウレタンプレポリマーより安全であるとしても、これは、それでもやはり硬化反応が比較的遅いという不利な点を有する。この不利な点は、多量の架橋触媒、例えばポリウレタンプレポリマーのためにも用いられるジブチル錫ジラウレート等をγ-シラン系組成物に添加することによって、部分的にのみ補うことができる。しかし、これは場合によってこのような組成物の保存期限に悪影響を有する。
【0014】
比較的多量の架橋触媒でさえγ-シランの低い反応性を完全に補うことができないため、より反応性の化合物種が探し求められてきた。それは、例えばWO 02/066532 A1から知られている。そこに記載されているプレポリマーは、またシラン末端化ポリウレタンプレポリマーである。上記のγ-シランとの本質的な違いは、プロピレン基の代わりに、メチレンスペーサーがポリウレタン骨格とケイ素原子との間にあることである。そのため、このシランはα-シランとも呼ばれる。ケイ素原子からのポリウレタン骨格のより高い極性のウレア基への距離がより短いことが、ケイ素原子上のアルコキシ基の反応性を増加させ(α効果)、そのため、アルコキシシラン基の加水分解および次の縮合反応が非常に高い速度で進行する。
【0015】
しかし、α-シランおよびγ-シランの両方が有する不利な点は、噴霧可能なフォームの製造のためにこれらのプレポリマーを使用することが極めて難しいことである。特に、大きな孔容積のルーズ(loose)孔構造を発生させることができる缶充填可能なスプレーフォーム供給の問題は、ほとんど対処できない。この理由は、ポリウレタンフォームとは異なり、水存在下における架橋反応が気体状の反応生成物(ポリウレタンフォームを用いてCO
2のように)を生成せず、アルコール、例えばメタノールまたはエタノール等を放出するためである。これらの化合物は、気体状の反応生成物とは異なり、発泡効果を発揮することができず、そのため加圧缶から噴霧されたフォームは、硬化するまでそれ自体崩壊する傾向にある。この効果は、フォーム安定剤の使用によってさえも制御するのは非常に難しい。
【0016】
この問題はEP 1829908 A1によって対処され、ここでは2Kシランプレポリマーに基づく系を提案されている。ここでは第1成分においては、例えばシラン末端化ポリウレタンプレポリマー等のシランプレポリマー、触媒としてジブチル錫ジラウレート、および多量の炭酸カルシウムが用いられる。第2成分は高濃度のクエン酸水溶液からなる。この2Kフォームの生成のために、2つの成分を互いに混合し、スプレー塗布機によって所望の場所に出す。この方法において、第2成分中の水がシランプレポリマーの架橋反応を引き起こし、炭酸カルシウムが、高濃度のクエン酸溶液の作用下において生じ、CO
2を放出する。ポリウレタンプレポリマーから知られるように、二酸化炭素は、出したプレポリマー混合物の発泡効果を有する。
【0017】
しかし、この系は、高濃度のクエン酸溶液が約1〜2のpHを有し、そのため腐蝕性または少なくとも刺激性を示すという点で不利である。アエロゾル生成が、特にエアロゾルスプレー缶を用いて生じ得、これは使用者の目、皮膚、および特に気道を刺激する。さらに、クエン酸の腐蝕性/刺激性可能性は、組成物を使用できる場所にかなりの制限を課す。例えば、このような組成物を医療分野において噴霧可能な創傷被覆材として直接皮膚に、特に皮膚負傷または負傷した身体部位に塗布することは完全に不可能である。
【0018】
シラン-架橋フォームの噴霧が有する更なる既知の問題は、これが硬化する時にクラックがフォーム構造に現れ得ることである。文献「Silane-Crosslinking High-Performance Spray Foams、Barbara Poggenklas、Heinrich Sommer、Volker Stanjek、Richard Weidner、Johann Weis、Organosilicon Chemistry VI:From Molecules to Materials、[European Silicon Days]、Munich、独国、11-12 9月 2003年」によれば、クラッキングは、まだ新しいシランフォームからのプロペラントガスの過剰に速い拡散に起因した。プロパン/ブタン等のあまり極性のないプロペラントガスは、拡散速度の低下にはより適当であったが、これは既知のシラン末端化プレポリマーにわずかな溶解性でしかなかった。不十分なプロペラントガス溶解性は、発泡挙動に不利な効果も有した。この問題に対処するため、この文献では、ポリマーにおける無極性プロペラントの溶解性を改善し得るために、長いアルキル鎖、すなわち無極性基をα-シラン末端化プレポリマーの末端基の5〜10%に組み込むことが提案されている。しかし、この方法によって無極性プロペラントガスに対してどのように溶解性を達成できることに関する具体的な事項は提供されていない。いずれにしても、長いアルキル鎖の挿入は、シラン末端化プレポリマーの特性およびそこから得られるフォームにおいて望ましくない変化、例えばフォームの硬度の明確な増加をもたらすことがある。これは、一部の使用分野において望ましくない。
【0019】
WO 04/104078 A1は同じく、シラン-架橋性スプレーフォームにおけるクラッキングの上記の問題および関連するα-シラン末端化プレポリマーにおける無極性プロペラントガスの限定された溶解性に対処する。また、無極性プロペラントガスの溶解性を改善するために、α-シラン末端化プレポリマーの末端基の5〜10%を、長いアルキル鎖を用いて修飾することが提案されている。上述したように、これは、プレポリマーおよびそこから生成するフォームの特性において望ましくない変化をもたらすことがある。α-シラン末端化プレポリマーは、<450g/モルのモル質量を有する短鎖ポリエーテルポリオールを用いて構成される。このようなポリオールの使用によって硬質フォームがもたらされ、これは非常に限定された範囲の用途にしか用いることができない。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の好ましい実施態様は、最初に記載した種のα−アルコキシシラン末端化プレポリマーを含み、ここでは、ポリエーテルポリオールは500〜7000g/モルの重量平均ならびにエチレンオキシドおよびプロピレンオキシド単位を有し、エチレンオキシド単位の比率は、ポリエーテルポリオールに基づいて50重量%以下である。
【0025】
本発明は、α−アルコキシシラン末端化プレポリマーがα-シラン基を有することを提供する。これは、このプレポリマーがプレポリマー分子当たり少なくとも1つのα-シラン基の相加平均を含むことを意味すると理解される。しかし、本発明の組成物におけるアルコキシシラン末端化プレポリマーが専らα-シラン基を含むことも同様に提供され得る。
【0026】
既に説明したようなα-シラン基は、ケイ素原子とポリマー骨格との間にメチレンスペーサーを有する。α-シランは、縮合反応に関して特に良好な反応性で知られている。このため、本発明に関して、有機チタネートまたは有機錫(IV)化合物の重金属系架橋触媒の使用を完全になくすことが可能である。これは、本発明の組成物に対する医療用途に関して特に有利である。
【0027】
イソシアネート反応性基は、水素除去によってイソシアネート基と反応することができる官能性基である。イソシアネート反応性基は、好ましくはOH、SHおよび/またはアミン基である。
【0028】
驚くべきことに、上記の種のα−アルコキシシラン末端化プレポリマーが無極性プロペラント、例えばアルカンまたはアルケン、特に工業的に重要なプロパン/ブタン混合物に非常に溶解性であることが明らかとなった。従って、このプレポリマーは、缶加圧可能な1Kまたは2K反応性フォーム組成物として利用することができる。これらは発泡して微細気泡および強多孔質フォームとなることができ、ここで1Kフォーム組成物は大気の湿度の作用によって硬化し、一方、2Kフォーム組成物は、硬化剤成分−非常に簡単には、水またはアルコール等のプロトン性溶媒−を含み、このようにして重合させる。
【0029】
この種の2Kフォーム組成物を、2以上の室を有する加圧缶に充填することができ、プロペラントガスによって発泡させることができる。この種の加圧缶において、本発明による組成物の2つの成分は、発泡時直前まで互いに別個にし、ウォータートラップまたは他の安定剤の添加なしでさえ長い保存期限を要する。2K組成物が加圧缶から出る時、その混合は出口バルブの近くにおいて有利に起きる。第1および第2成分から生じる生成混合物は、そこにも含まれるプロペラントガスによって、加圧缶を出るとすぐに発泡させられる。
【0030】
本発明のα−アルコキシシラン末端化プレポリマーは、原理上、当業者にそれ自体既知の≧2のNCO官能価を有する任意の芳香族、芳香脂肪族、脂肪族または脂環族ポリイソシアネートを用いて適当に調製することができる。この種のポリイソシアネートの例は、1,4-ブチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,2,4-および/または2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、異性体ビス(4,4'-イソシアナトシクロヘキシル)メタンまたは任意の所望の異性体含有量のそれらの混合物、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-および/または2,6-トリレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、2,2'-および/または2,4'-および/または4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-および/または1,4-ビス(2-イソシアナトプロプ-2-イル)ベンゼン(TMXDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(XDI)、C1〜C8アルキル基を有するアルキル2,6-ジイソシアナトヘキサノエート(リシンジイソシアネート)、および4-イソシアナトメチル-1,8-オクタンジイソシアネート(ノナントリイソシアネート)およびトリフェニルメタン4,4',4''-トリイソシアネートである。
【0031】
上記のポリイソシアネートに加えて、ウレトジオン、イソシアヌレート、ウレタン、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造の修飾ジイソシアネートまたはトリイソシアネートを部分的に用いてもよい。
【0032】
好ましくは、専ら脂肪族的および/または脂環族的に結合したイソシアネート基および混合物に対して2〜4、好ましくは2〜2.6、より好ましくは2〜2.4の平均NCO官能価を有する、上記の種のポリイソシアネートまたはポリイソシアネート混合物である。
【0033】
本発明によって有用なポリエーテルポリオールとして、例えば、ポリウレタン化学においてそれ自体既知であり、例えばカチオン性開環によるテトラヒドロフランの重合によって得ることができる、ポリテトラメチレングリコールポリエーテルが挙げられる。同じく適当であるのは、スチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、および/またはエピクロロヒドリンの、2または多官能性スターター分子へのよく知られた付加生成物である。有用なスターター分子として、従来技術において有用であると知られる任意の化合物、例えば水、ブチルジグリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、プロピレングリコール、ソルビトール、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、1,4-ブタンジオールが挙げられる。好ましいスターター分子は、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコールおよびブチルジグリコールである。
【0034】
本発明によるα−アルコキシシラン末端化プレポリマーの更なる改良において、エチレンオキシド単位の比率は、ポリエーテルポリオールを基準として、30重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下である。より好ましくは、エチレンオキシド単位の比率は、それぞれポリエーテルポリオールを基準として、3〜30重量%、特に5〜20重量%である。他のアルキレンオキシド単位は、非常に大部分はプロピレンオキシド単位であってよいが、他の構造単位が存在してもよい。このような構造を有するプレポリマーは、アルカンに関して特に良好なプロペラントガス溶解性と、得られるフォームの部分において良好な柔軟性とを兼ね備える。
【0035】
しかし、ポリエーテルにおけるエチレンオキシド単位の比率を高すぎるように設定しないことが有利であり、これは、さもなければ創傷被覆材の重大な膨潤をもたらすためである。さらに、プロペラントガス溶解性は、エチレンオキシド含有量の増加と共に減少する。従って、本発明によるα−アルコキシシラン末端化プレポリマーの好ましい実施態様は、上記の範囲内のエチレンオキシド単位の比率によって規定される。エチレンオキシド基の下限値は、例えば約5重量%にあり得る。いずれにしても、エチレンオキシド単位を有しないポリエーテルを用いるともできる。
【0036】
本発明によるα−アルコキシシラン末端化プレポリマーの更なる実施態様において、ポリエーテルポリオールの重量平均は、800〜6000g/モルの範囲、特に1000〜4500g/モルの範囲である。このようなプレポリマーは同じく、上記のアルカンに関して良好なプロペラントガス溶解性、同時にフォーム硬度の所望の要件への柔軟な調整を可能とすることで知られている。ここで比較的短鎖のプレポリマーは一般に、長鎖のプレポリマーよりも硬質のフォームをもたらす。
【0037】
従って、得られるポリマーフォームの硬度を、α−アルコキシシラン末端化プレポリマーのポリマー骨格に対する化学的性質および/または鎖長の選択によって変えることができることは、特に上記の医療用途に有利である。上記のパラメーターに加えて、フォームの硬度は、架橋度等の更なる手段を通して修正することもできる。従って、非常に軟質でそのために適合性のポリマーフォーム、またはサポート性を示す硬質ポリマーフォームを生成することができる。従って、医療的使用は直接の創傷処置に限定されない;それどころか、例えば骨折、靱帯損傷、捻挫等の場合における四肢の固定も可能である。化粧品部門における応用が同じくあり得る。
【0038】
本発明の更なる好ましい実施態様において、α−アルコキシシラン末端化プレポリマーは、α−アルコキシシランとNCO末端化ポリウレタンプレポリマーとの反応によって得ることができ、NCO末端化ポリウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネートとポリエーテルポリオールとの反応によって得ることができる。NCO末端化ポリウレタンプレポリマーの平均NCO官能価は、好ましくは4以下、特に2〜4の範囲にあってよい。NCO末端化ポリウレタンプレポリマーが23℃において200〜10000mPas、特に1500〜4500mPasの動的粘度を有することが、同じくこの場合好ましい。
【0039】
粘度は、便利なことに、18s
-1の回転数でAnton Paar Germany GmbH(Ostfildern、独国)製の回転粘度計を用いて23℃において独国標準規格DIN 53019に従って回転粘度測定を用いて測定することができる。
【0040】
上記の種のα−アルコキシシラン末端化プレポリマーは、その粘度がそれを容易に発泡可能であるのに十分低いため、医療用途に特に有利である。
【0041】
さらに好ましい方法において、本発明によるα−アルコキシシラン末端化プレポリマーのα-シラン基はトリエトキシ-α-シラン基である。これは、よく用いられるトリメトキシ-α-シランから放出されるメタノールの代わりに、架橋反応中に比較的害のないエタノールが放出されるため、有利である。たとえトリメトキシ-α-シランの反応性およびそれにより硬化速度がトリエトキシ-α-シランのそれより高くても、トリエトキシ-α-シランの反応性はほとんどの用途に対して十分高い。特に組成物を水等のプロトン性溶媒と混合する場合、塗布前に、アルコキシシラン末端化プレポリマーの硬化は、一般に数分以内、一部の場合には1分未満後でさえ、完了するであろう。
【0042】
用いるアルコキシシラン末端化プレポリマーのα-シラン基がジエトキシ-α-シラン基であることが同じく好ましい。
【0043】
従って、本発明はさらに、
・ポリエーテルポリオールをポリイソシアネートと反応させてNCO末端化ポリウレタンプレポリマーを生成する工程、および
・NCO末端化ポリウレタンプレポリマーをα−アルコキシシランと反応させてα−アルコキシシラン末端化プレポリマーを生成する工程
を含む、本発明によるα−アルコキシシラン末端化プレポリマーの製造方法を提供する。
【0044】
本発明はまださらに、本発明によるα−アルコキシシラン末端化プレポリマーを含む、特に発泡性創傷被覆材等の医療用途の、イソシアネート不含有発泡性組成物を提供する。
【0045】
ここでイソシアネート不含有とは、イソシアネート含有成分を0.5重量%未満含む系をいう。
【0046】
本発明の組成物は高い硬化速度を有する。その結果、混合物は、混合物の発泡直後に程度の差はあるが自己サポート性のフォーム構造を生成することができ、そのため一般に数分しかかからないその完全硬化前に、フォームが崩壊するのは実際には不可能である。言い換えれば、本発明は、1K系に加えて、ガス発生反応剤、例えば炭酸カルシウムおよびクエン酸の組み合わせ等の更なる使用を必要とすることなく、高い孔容積を有するポリマーフォームを得ることができる有用な2Kシランフォーム系も提供する。
【0047】
改善されたプロペラントガス溶解性に加えて、本発明による組成物は、これがEO-PO単位から構成されるポリマー骨格を有し、そのため均一な構造を有するという更なる利点を有する。従って、本発明による組成物は、無極性側鎖を有する従来技術のシランポリマーと比較して、明らかにより軟質のフォームを製造するために用いることができ、ここで、これは原理上、ブロックコポリマー/ターポリマーの構造を有する。
【0048】
組成物のイソシアネートの除去は、当業者にそれ自体既知の様々な可能な方法において達成できる。本発明による特に適当な選択肢は、薄膜蒸留によってプレポリマーを精製することである。この精製手段は、組成物の粘度の調整がより簡単であり、あまり粘性でないプレポリマーが得られるため、そのプレポリマーが薄膜蒸留によってポリイソシアネートを含んでいない組成物が、より良好な発泡特性を有することが明らかとなったために特に有利である。例えばポリエーテル骨格およびそこに結合するポリイソシアネート単位を有するプレポリマーの場合における薄膜蒸留は、ポリエーテルポリオールとポリイソシアネートとの反応後、すなわちシラン基を中間体に結合させる前に行ってよい。
【0049】
本発明による組成物は多様な用途に使用できる。例えば、従来技術の上記のポリウレタンフォームおよびα-/γ-シランフォームが提案される全ての応用分野、すなわち建築構造部門に対して、配管ラインの断熱または他には機械における空隙の充填のために有用である。
【0050】
驚くべきことに、これらの目的に加えて、本発明の組成物は、毒性または刺激性化合物を使用する必要がないため、医療分野における応用にも使用し得ることが見出された。
【0051】
医療分野の使用として、例えば、インサイチュで製造できる創傷被覆材の提供が挙げられる。このため、本発明の組成物を、上記の種の1Kまたは2Kフォーム系として、皮膚損傷または一部の他の種の損傷にスプレーまたは塗布することができる。発泡組成物は、例えば創傷組織等の有機組織への顕著な接着を示さず、一方で、その多孔質構造によって、それが創傷分泌液または血液を吸収することが可能となる。これに対する理由は、本発明の組成物は、上記の条件下においてスプレー放出した場合に、少なくともある程度は連続気泡構造を形成し、そのため吸収性であることと思われる。
【0052】
本発明による組成物およびそこから得ることができるフォームの極性は、特に無極性側鎖を有する従来技術のシランポリマーと比較して、このためにまた有利である。従って、例えば血液または創傷分泌液等の液体に対するより良好な吸収性を示すように、ポリエーテルまたはより正確にはその極性の選択によって、得られるフォームの親水性を必要に応じて修飾することができる。
【0053】
しかし、加圧缶における本発明の組成物の提供は便利な選択肢ではあるが、本発明はそれに限定されない。従って、本発明の組成物は、空気中においてまたは水等のプロトン性溶媒との事前混合において硬化可能である流延化合物の形状で容易に利用することもできる。
【0054】
しかし、本発明による組成物は、加圧缶からのフォーム適用に特に適当である。従って、この組成物は好ましくは圧力液化プロペラントガスを含む。プロペラントガスは、好ましくは少なくとも1つのアルカンまたはアルケン(それぞれ1〜5個の炭素原子)、特にエタン、プロパン、n-ブタン、イソブタン、ペンタンおよびその混合物の群からの少なくとも1つの化合物を含んでよい。例えばジメチルエーテル等の他のプロペラントガスも原理上可能であるが、用いられるプロペラントガスは、より好ましくは上記のアルカン/アルケンから用いられる。本発明の組成物におけるこれらのプロペラントガスの上記の良好な溶解性に加えて、これらは、−ジメチルエーテルとは異なり−開放創に接触して患者においてあまり灼熱感をもたらさない
【0055】
例えば、1.5barの圧力および20℃の温度における組成物は、その組成物に基づいて少なくとも3重量%のプロペラントガスを含み得、一方でプロペラントガスは組成物に完全に溶解する。完全溶解性は、Pamasol Willi Maeder AG, CH製の「エアロゾルの光学チェック用の試験管(test glasses for optical checks of aerosols)」において20℃で解明することができる。プロペラントガスが持続時間(>1時間)の間に視覚的に知覚可能な第2相を形成しない場合において、本発明の目的に対する完全溶解が存在する。
【0056】
特に好ましい実施態様において、溶解したプロペラントガスの含有量レベルは、組成物を基準として、10〜30重量%、好ましくは15〜30重量%である。
【0057】
本発明はさらに、特に創傷被覆材等の医療用品のためのフォームの製造のための、少なくとも2つの別個の成分を有するイソシアネート不含有多成分系を提供し、ここで、第1成分は請求項10〜12のいずれかに記載の組成物を含み、第2成分はプロトン性化合物、好ましくはプロトン性溶媒、特に水性成分を含む。
【0058】
第2成分は、非常に単純には水性成分であってよく、または水からなってさえよい。しかし、有利なことには、水性成分は更なる成分を含む。従って、これが約pH 4.0〜9.5のpHを有することが特に有利である。これは、驚くべきことに、α−アルコキシシラン末端化プレポリマーが上記のpH値において水性成分と非常に速く硬化でき、その結果、この種の組成物を2室または多室加圧缶に充填でき、プロペラントガスを用いて安定な微細気泡フォームに発泡させることができることが明らかになったためである。水性成分の約4.0〜9.5のpHの穏和なpH範囲のために、本発明の組成物を例えば人または動物の皮膚に直接塗布することもできる。
【0059】
皮膚適合性をさらに改善するために、水性成分のpHは、好ましくは4.5〜8.0、特に5.0〜6.5の範囲であってよい。このpH範囲において、敏感肌の場合においてさえも皮膚炎が実質的に全くない。同時に、第1および第2成分を混合して得られる組成物は上記の高い速度で硬化する。
【0060】
上記のpH範囲は、原理上、任意のあり得る方法において設定してよい。従って、水性成分は少なくとも1つの酸、塩基または緩衝剤系を含んでよく、この場合、緩衝剤系の添加が好ましい。例えば、一方は水性成分に酸を含み、他方は水性成分に同じpHで緩衝剤系を含む2つの組成物の比較によって、緩衝剤系を含む組成物が、特により微細な気泡フォームを形成してシラン末端化プレポリマーの硬化に良い影響を有することが示される。
【0061】
有用な酸として、少なくとも部分的に水溶性であり、溶解の際にpHを酸性領域に移す有機および無機化合物が挙げられる。この例は、いくつか例を挙げると、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、またはリン酸等の鉱酸である。有用な有機酸として、例えばギ酸、酢酸、種々のα-クロロ酢酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸等が挙げられる。上記の化合物の混合物を用いてもよい。
【0062】
本発明の目的に対して有用な塩基は、同じく有機および無機系で、少なくとも部分的に水溶性であってよく、溶解の際にpHをアルカリ性領域に移す。これらの例は、いくつか例を挙げると、水酸化ナトリウムまたはカリウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物、およびアンモニアである。有用な有機塩基として、例えば第1級、第2級、第3級脂肪族または脂環族アミンおよび芳香族アミン等の窒素化合物が挙げられる。具体的にはメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、メチルジエタノールアミン(MDEA)、ピペリジンおよびピリジンを単に例として挙げることができる。さらに、同じく上記の化合物の混合物を用いてよい。
【0063】
本発明によって用いられる緩衝剤系は一般に、弱酸およびその共役塩基の混合物、またはその逆を含む。両性電解質を用いてもよい。本発明に関して用いられる緩衝剤は、特に酢酸塩緩衝剤、リン酸塩緩衝剤、炭酸塩緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、酒石酸塩緩衝剤、コハク酸緩衝剤、TRIS、HEPES、HEPPS、MES、ミカエリス緩衝剤またはその混合物から選択される。しかし、本発明は上記の系に限定されない。原理上、特許請求されたpH範囲に設定できるように調節可能な任意の緩衝剤系が使用可能である。
【0064】
本発明による組成物の更なる改良において、緩衝剤系の濃度は0.001〜2.0モル/l、特に0.01〜0.5モル/lの範囲である。一方では十分な緩衝能が利用可能であり、他方では一般的な貯蔵条件下において水性成分からの緩衝剤の結晶化がないため、これらの濃度が特に好ましい。例えば、結晶化した成分が加圧缶の混合装置またはノズルを詰まらせ得るため、これは加圧缶における使用に不利であろう。
【0065】
さらに好ましくは、緩衝能は少なくとも0.01モル/l、特に0.02〜0.1モル/lの範囲である。
【0066】
例えば2室加圧缶の混合装置におけるシラン末端化プレポリマーとのその混和を促進できるためには、水性成分の粘度を調整することが本発明に関して有利であり得る。従って、23℃における水性成分の動的粘度は、10〜4000mPasの範囲、特に300〜1000mPasの範囲であってよい。粘度は、便利なことに、18s
-1の回転数でAnton Paar Germany GmbH(Ostfildern、独国)製の回転粘度計を用いて23℃において独国標準規格DIN 53019に従って回転粘度測定を用いて測定することができる。
【0067】
本発明による組成物の特に好ましい改良において、水性成分は増粘剤を含んでよい。増粘剤は、上記の粘度に設定するために用いることができる。フォームにおいてある程度の安定化効果を有し、そのためそれが自重をサポートすることができる点に達するまでフォーム構造を維持するのを促進できるという、増粘剤に対する更なる利点がある。
【0068】
さらに驚くべきことに、増粘剤の添加、特にデンプン系またはセルロース系増粘剤の添加は、一連の非常に多くの市販のプロペラントガスが水相に溶解性となる効果を有することが明らかになった。シランプレポリマーを含む第1成分におけるこれらのプロペラントガスの溶解性はあまり問題とならない傾向であるため、これは多室加圧缶の個々の室におけるプロペラントガスと第1/第2成分との間の相分離を妨げる。従って、一方ではプロペラントガスおよび第1成分、ならびに他方ではプロペラントガスおよび第2成分は、加圧缶からの放出時まで非常に大部分が均一な混合物を生成する。缶において分けて保持された2つの第1および第2成分を、加圧缶の混合ノズルにおいて混合させた後、それが加圧缶から出る時に、混合物に溶解したプロペラントガスによってこの混合物の実質的な発泡が引き起こされ、それにより微細気泡フォームが得られる。従って、特定の利点のために用いられる増粘剤は、デンプン、デンプン由来物、デキストリン由来物、多糖由来物、例えばグアルガム、セルロース、セルロース由来物、特にセルロースエーテルおよびセルロースエステル、ポリアクリル酸に基づく有機完全合成増粘剤、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸化合物またはポリウレタン(会合性増粘剤)および無機増粘剤、例えばベントナイトまたはシリカ、またはその混合物から選択される。具体例は、例えばナトリウム塩としてのメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースである。
【0069】
水性成分がポリウレタン分散体を含むまたはからなることが、本発明に関してさらに提供され得る。従って、例えば市販のポリウレタン分散体を用いることができ、その濃度を、必要に応じて更なる水を用いて下げることもでき、その場合上記した可能であることによって上記のpH範囲にする。水相におけるプロペラントガス溶解性が特に上記のアルカンおよびアルケンに関してこのように増加するので、ポリウレタン分散体の使用が有利である。
【0070】
ポリウレタン分散体と組み合わせた上記のpH値の更なる利点は、この範囲において一般にポリウレタン分散体のポリマー粒子の凝固がないことである;言い換えれば、分散体はこれらの条件下における貯蔵において安定である。驚くべきことに、ポリウレタン分散体の使用が水性成分における市販のプロペラントガスの溶解性をさらに増加できることが明らかになった。従って、ポリウレタン分散体および上記の種の増粘剤を用いることが特に好ましい。
【0071】
用いられるポリウレタン分散体は、原理上、あらゆる市販のポリウレタン分散体であってよい。しかし、ここでは芳香族不含有のイソシアネートから調製されたポリウレタン分散体を用いることがまた有利であるが、これは、これらが特に医療用途にあまり影響しないためである。さらに、ポリウレタン分散体は更なる成分を含んでもよい。ポリウレタン分散体のポリウレタン含有量は、より好ましくは5〜65重量%の範囲、特に20〜60重量%の範囲である。
【0072】
本発明による組成物の発展において、ポリウレタン分散体におけるポリウレタンの重量平均は、10000〜1000000g/モル、特に20000〜200000g/モルの範囲であり、すべて23℃でテトラヒドロフランにおいてポリスチレンスタンダードに対してゲルパーミエーションクロマトグラフィによって測定される。このようなモル質量を有するポリウレタン分散体は、これらが、貯蔵安定性のポリウレタン分散体を構成し、さらに加圧缶に充填する際に第2成分におけるプロペラントガスに対する良好な溶解性をもたらすため、特に有利である。
【0073】
本発明による組成物の特に好ましい実施態様において、多成分系は活性医療および/または化粧品成分を含む。2または多成分組成物の場合、この活性医療および/または化粧品成分を、第1および/または第2成分において付与してよい。多くの活性医療成分は化粧品の効果も有するため、活性成分の2つの群の間に明確な境界はない。
【0074】
活性成分を、更なる、すなわち第3または第4の成分の形で付与し、組成物の塗布直前に初めて第1および第2成分と混合することは、これに関して同じくあり得る。しかし、個別の成分の数が増えるために組成物の複雑さが増えるため、用いられる活性成分が第1成分だけでなく第2成分にも不溶性である場合にのみ、一般にこの手段は合理的である。
【0075】
例えば放出の時間を遅らせることを達成するために、活性成分を、純粋な活性成分の形状で、または他にカプセル化形状で用いてよい。
【0076】
有用な活性化粧品成分として、特にスキンケア特性を有するもの、例えば活性保湿または肌沈静(skin-calming)成分が挙げられる。
【0077】
本発明の目的に対する有用な活性医療成分として、多様な種類およびクラスの活性成分が挙げられる。
【0078】
このような活性医療成分は、例えばインビボ条件下において一酸化窒素を放出する成分、好ましくはL-アルギニンまたはL-アルギニン含有またはL-アルギニン放出成分、より好ましくはL-アルギニン塩酸塩を含んでよい。プロリン、オルニチンおよび/または他の生体起源中間体、例えば生体ポリアミン(スペルミン、スペルミチン、プトレッシンまたは生体活性人工ポリアミン)等を用いてもよい。この種の成分は、創傷治癒を高めることで知られているが、一方で、その連続的で、実質的に均一な放出速度は創傷治癒を特にもたらす。
【0079】
本発明によって用いることができる更なる活性成分は、ビタミンまたはプロビタミン、カロテノイド、鎮痛剤、消毒剤、止血剤、抗ヒスタミン剤、抗菌性金属またはその塩、植物系創傷治癒促進剤物質または物質混合物、植物抽出物、酵素、成長因子、酵素阻害剤、およびその組み合わせの群から選択される少なくとも1つの物質を含む。
【0080】
適当な鎮痛剤は、特に非ステロイド系の鎮痛剤、特にサリチル酸、アセチルサリチル酸およびその由来物、例えばAspirin(登録商標)、アニリンおよびその由来物、アセトアミノフェン、例えばParacetamol(登録商標)、アントラニル酸およびその由来物、例えばメフェナム酸、ピラゾールまたはその由来物、例えばメタミゾール、Novalgin(登録商標)、フェナゾン、Antipyrin(登録商標)、イソプロピルフェナゾン、および非常に好ましくはアリール酢酸およびその由来物、ヘテロアリール酢酸およびその由来物、アリールプロピオン酸およびその由来物、およびヘテロアリールプロピオン酸およびその由来物、例えばIndometacin(登録商標)、Diclophenac(登録商標)、Ibuprofen(登録商標)、Naxoprophen(登録商標)、Indomethacin(登録商標)、Ketoprofen(登録商標)、Piroxicam(登録商標)である。
【0081】
適当な成長因子として、特にaFGF(酸性線維芽細胞成長因子)、EGF(表皮)成長因子)、PDGF(血小板由来成長因子)、rhPDGF-BB(ベカプレルミン)、PDECGF(血小板由来内皮細胞成長因子)、bFGF(塩基性線維芽細胞成長因子)、TGF α;(トランスフォーミング成長因子α)、TGF β(トランスフォーミング成長因子β)、KGF(ケラチノサイト成長因子)、IGF1/IGF2(インスリン様成長因子)、およびTNF(腫瘍壊死因子)が挙げられる。
【0082】
適当なビタミンまたはプロビタミンは、特に脂溶性または水溶性ビタミン類ビタミンA、レチノイドの群、プロビタミンA、カロテノイドの群、特にβ-カロテン、ビタミンE、トコフェロールの群、特にα-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール、およびα-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、およびδ-トコトリエノール、ビタミンK、フィロキノン、特にフィトメナジオンまたは植物系ビタミンK、ビタミンC、L-アスコルビン酸、ビタミンB1、チアミン、ビタミンB2、リボフラビン、ビタミンG、ビタミンB3、ナイアシン、ニコチン酸およびニコチンアミド、ビタミンB5、パントテン酸、プロビタミンB5、パンテノールまたはデクスパンテノール、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンH、ビオチン、ビタミンB9、葉酸、およびその組み合わせである。
【0083】
有用な消毒剤は、殺菌性、殺バクテリア性、静バクテリア性、殺菌性(fungicidal)、殺ウィルス性、ウィルス抑止性および/または一般に殺微生物性効果を有するあらゆる消毒剤である。
【0084】
特に適当であるのは、レゾルシノール、ヨウ素、ヨウ素-ポビドン、クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、ベンゾイル酸、過酸化ベンゾイルまたは塩化セチルピリジニウムの群から選択される消毒剤である。さらに、消毒剤として特に抗菌性金属も有用である。有用な抗菌性金属として、特に銀、銅または亜鉛およびその塩、酸化物、または錯体で、その組み合わせまたはそれ自体が挙げられる。
【0085】
本発明に関して植物系活性創傷治癒促進剤成分は、特にカモミールの抽出物、ハマメリス抽出物、例えばハマメリスバージニア(Hamamelis virgina)、カレンジュラ抽出物、アロエ抽出物例えばアロエベラ、アロエバーバデンシス、アロエフェロックスオーダー、またはアロエバルガリス、緑茶抽出物、海藻抽出物、例えば紅藻類または緑藻類抽出物、アボカド抽出物、ミルラ抽出物、例えばモツヤクジュ(Commophora molmol)、竹抽出物、およびその組み合わせである。
【0086】
本発明による組成物の特に好ましい実施態様は、インビボ条件下において一酸化窒素を放出する物質から選択される活性医療成分、およびビタミンまたはプロビタミン、カロテノイド、鎮痛剤、消毒剤、止血剤、抗ヒスタミン剤、抗菌性金属またはその塩、植物系創傷治癒促進剤物質または物質混合物、植物抽出物、酵素、成長因子、酵素阻害剤、およびその組み合わせの群から選択される物質を少なくとも含む。
【0087】
活性成分の含有量は、原理上、主として医療的な必要容量および本発明による組成物の残りの成分との相溶性に依存する。
【0088】
本発明の組成物はさらなる助剤物質を含有してもよい。ここであり得るものとして、例えばフォーム安定剤、チキソトロープ剤、増粘剤、酸化防止剤、光防護剤、乳化剤、可塑剤、顔料、フィラー、パック安定化添加物、殺生物剤、補助溶媒、および/または流動制御剤が挙げられる。
【0089】
フォーム安定剤として、例えばアルキルポリグリコシドが有用である。これは、当業者に既知の従来法において比較的長鎖のモノアルコールと単糖、二糖または多糖との反応によって得ることができる(Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、John Wiley & Sons、第24巻、第29頁)。比較的長鎖のモノアルコールは、必要に応じて分岐状であってもよく、4〜22個の炭素原子、好ましくは8〜18個の炭素原子、より好ましくは10〜12個の炭素原子のアルキル基を好ましく含む。比較的長鎖のモノアルコールの具体例は、1-ブタノール、1-プロパノール、1-ヘキサノール、1-オクタノール、2-エチルヘキサノール、1-デカノール、1-ウンデカノール、1-ドデカノール(ラウリルアルコール)、1-テトラデカノール(ミリスチルアルコール)、および1-オクタデカノール(ステアリルアルコール)である。また上記の比較的長鎖のモノアルコールの混合物を用いることも望ましい。
【0090】
これらのアルキルポリグリコシドは、好ましくはグルコース由来の構造を有する。特に好ましくは式(I)のアルキルポリグリコシドを用いる。
式(I)
【化1】
【0091】
mは好ましくは6〜20、より好ましくは10〜16である。
【0092】
アルキルポリグリコシドは、好ましくは20未満、より好ましくは16未満、非常に好ましくは14未満のHLB価を有し、ここでHLB価は、式HLB=20・Mh/M〔式中、Mhは分子の親水性部分のモル質量であり、Mは分子全体のモル質量である〕を用いて計算される(Griffin、W.C.:HLBによる界面活性剤の分類、J. Soc. Cosmet. Chem. 1、1949年)。
【0093】
更なるフォーム安定剤として、従来のアニオン性、カチオン性、両性、および非イオン性界面活性剤、ならびにその混合物が挙げられる。好ましくは、アルキルポリグリコシド、EO-POブロックコポリマー、アルキルまたはアリールアルコキシレート、シロキサンアルコキシレート、スルホコハク酸のエステルおよび/またはアルカリまたはアルカリ土類金属アルカノエートを用いる。特に好ましくは、EO-POブロックコポリマーを用いる。
【0094】
さらに、生成するフォームのフォーム特性を改善するために、従来の1価および多価アルコール、ならびにその混合物を用いてよい。これらは、1価または多価のアルコールまたはポリオール、例えばエタノール、プロパノール、ブタノール、デカノール、トリデカノール、ヘキサデカノール、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、デカンジオール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、単官能性ポリエーテルアルコールおよびポリエステルアルコール、ポリエーテルジオールおよびポリエステルジオールである。
【0095】
化学反応がそれぞれの成分とで生じなければ、これらのフォーム安定剤を、第1成分および/または好ましくは第2成分に添加してよい。これらの化合物の全含有量は、本発明の組成物を基準として、特に0.1〜20重量%の範囲、好ましくは1〜10重量%の範囲である。
【0096】
本発明による2または多成分組成物の第1および第2成分の混合比率は、第1成分がここで理想的に定量的に転化される完全な重合が起きるように互いに調整することが有利である。従って、例えば、本発明による組成物の第1および第2成分はここで、互いに容積比率が1:10〜10:1、好ましくは互いに容積比率が1:1〜5:1、特に2:1〜3:1、より好ましくは約2.5:1において存在する。
【0097】
本発明はさらに、特に創傷被覆材の形状をとり、本発明によるα−アルコキシシラン末端化プレポリマー、本発明による組成物または本発明による多成分系の完全な重合によって得ることができる造形品を提供する。上記の最初の場合において、重合は例えば大気の湿度の作用によって起きる。多成分系の場合においては、まず成分を混合し、生成した混合物を次に完全に重合させる。室温におけるこの混合物の完全な重合は、好ましくは5分以下、より好ましくは3分以下、さらにより好ましくは1分以下で起きる。1成分組成物の場合においては、完全な重合までの時間は出された層の厚みに主に依存する。
【0098】
本発明の目的に対して完全な重合とは、ただスキンが外側に形成されるだけではない;すなわち、造形品の外側表面がもはや粘着質でないだけではなく、プレポリマーは非常に大部分が完全に反応することを意味すると理解される。得られた造形品を指で数秒間十分にへこませ、その後、指の圧力を取り除いた時に元の状態に自動的に戻る場合に、これが本発明に関する事実であることが確かめられる。
【0099】
この種の素早い硬化は、特に医療用途、具体的には噴霧可能な発泡性創傷被覆材として使用するのに有利である。これは、患者が創傷被覆材を迅速に包帯において包み込み、機械的荷重をかけることができることを最初の段階において可能となるのは、極めて素早い硬化だけであるからである。その結果、長い待ち時間を避けることができる。
【0100】
従って、本発明はさらに、本発明によるα−アルコキシシラン末端化プレポリマー、本発明による組成物または本発明による多成分系の特に発泡した反応生成物の、創傷被覆材としての使用を提供する。この種の創傷被覆材は、フォーム構造が創傷分泌液を吸収できるだけなく、同時に衝撃等に対する創傷への機械的保護も提供できるという利点を有する。創傷における衣服圧でさえ、フォーム構造によって部分的に吸収される。
【0101】
噴霧された創傷被覆材はさらに、理想的に通常不規則な創傷の外形に適合し、それによって不適切な創傷被覆材のフィットによる圧痛から非常に大部分が免れる創傷の被覆が確かとなる。さらに、本発明によって得られる創傷被覆材は、時間のかかるサイズおよび形状への切断の必要がないため、従来の創傷被覆材を使用するケアと比較して創傷ケアに必要な時間を短くする。
【0102】
本発明はさらに、本発明によるα−アルコキシシラン末端化プレポリマー、本発明による組成物または本発明による多成分系を含む加圧缶を提供し、ここで、加圧缶は、特に液体プロペラントガスを用いて少なくとも1.5barの圧力に加圧される。有用なプロペラントガスとして特に、既により具体的に規定した圧力液化アルカンおよびアルケンが挙げられる。
【0103】
好ましくは、さらに、充填圧力での組成物におけるプロペラントガスの溶解性に対応する十分なプロペラントガスを用いて加圧缶を充填することだけが必要である。溶解性は、上述した1時間後において相分離がないことによって決定することができる。
【0104】
加圧缶は、特に出口バルブおよび混合ノズルを有する2室または一般に多室加圧缶として構成されてよく、この場合、本発明による組成物は2室加圧缶の第1室に導入され、第2室は水性成分または一部の他のプロトン性溶媒を含み、ここで第1室または両方の室は過大気圧、特に1.5bar以下の圧力下において液化プロペラントガスを含む。2つの室における液化プロペラントガスは同一または異なってよい。
【0105】
この目的に特に適当な2室加圧缶は、例えば出願番号PCT/EP2011/063910およびPCT/EP2011/063909を有する現在まだ出版されていないPCT出願から知られ、それぞれこの内容は完全に援用される。
【0106】
本発明による加圧缶の更なる実施態様において、プロペラントガスは、第1成分だけでなく第2成分にも溶解性であり、ここで溶解性とは、少なくとも1.5barの充填圧力および20℃の温度において3重量%以上であり、特に、導入されるプロペラントガスの量はその溶解性に対応するもの以下である。これはスプレー放出したフォームが一貫した品質にあることを確かにするが、これは、スプレー操作の開始においてプロペラントガスのみが室の1つから出て、それにより第1および第2成分の間の混合比率が最適でなくなることは事実ではないためである。これに特に適当な組成物は、水性成分において上記の増粘剤の1つおよび/またはポリウレタン分散体を含む。
【0107】
加圧缶の室におけるプロペラントガスの溶解性のために、第1/第2成分およびプロペラントガスの間において相分離が生じないという更なる利点がある。従って、加圧缶を作動させ、第1および第2成分が混合する時にのみプロペラントガスが出て、この方法においてこの混合物を発泡させる。本発明による組成物の非常に素早い硬化時間は、プロペラントガスによって製造されるフォーム構造が「固まり(freeze)」、それ自体崩壊しないという効果を有する。
【0108】
増粘剤および分散体の両方がある程度フォームにおける安定化特性を有するため、上記の効果は、水性成分における上記の種の増粘剤および/またはポリウレタン分散体の使用によって増幅される。3重量%以下のプロペラントガス溶解性が、出される混合物の十分な発泡を確実にするのに有利である。プロペラントガス含有量は、第1成分の場合においては、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは15〜25重量%であり、第2成分の場合においては、好ましくは3〜20重量%、より好ましくは5〜15重量%であり、全て生じる特定の混合物の全量を基準とする。缶に導入し、および/または個々の成分に溶解させるプロペラントガスの量は、フォーム構造に影響を与えるために使用してもよい。そのため、組成物におけるプロペラントガスのより多い量は一般に、より低い密度のフォームをもたらす。
【0109】
本発明はさらに、発泡または未発泡ポリマー造形品、特に創傷被覆材等のシート状造形品を製造するための、本発明によるα−アルコキシシラン末端化プレポリマー、本発明による組成物または本発明による多成分系の使用を提供する。
【0110】
ここで本発明を、例となる実施態様を参照してより具体的に説明する:
【実施例】
【0111】
一般:
以下のあらゆる量、比率および百分率は、他に記載されない限り、組成物の重量および全量、すなわち全重量に基づく。
【0112】
他に記載されない限り、分析方法は全て、23℃の温度における測定に関する。
【0113】
NCO含有量は、他に明確に記述されない限り、DIN-EN ISO 11909によって電位差測定で測定した。
【0114】
遊離のNCO基に対するチェックは、IR分光法(2260cm
-1におけるバンド)を用いて行った。
【0115】
報告される粘度は、18s
-1の回転数においてAnton Paar Germany GmbH(Ostfildern、独国)製の回転粘度計によって、独国標準規格DIN 53019に従って23℃において回転粘度測定を用いて測定した。
【0116】
分散体の貯蔵安定性は、室温における貯蔵によって、製造後6ヶ月間にわたってテストした。
【0117】
最大可溶プロペラントガス量は、Pamasol Willi Maeder AG, CH製の「エアロゾルの光学チェック用の試験管(test glasses for optical checks of aerosols)」において20℃で測定した。最大可溶プロペラントガス量は、調査される物質/混合物に対するプロペラントガスの重量比率に関し、プロペラントガスがただ恒久的(>1時間)に第2相を形成できないときにすぐに達した。
【0118】
プロペラントガス条件下における粘度測定は技術的に実現可能でないので、STP/プロペラントガス溶液の粘度は、予め測定した粘度の参照溶液(異なった濃度のWalocel CRT 30 Gの水溶液)と比較して、試験管において5%勾配における流速に基づいて見積もられる。
【0119】
混合物は、出願番号PCT/EP2011/063910およびPCT/EP2011/063909を有する現在まだ出版されていないPCT出願に記載されるように充填された2Kスプレー装置を用いて発泡した。
【0120】
用いた物質および略号:
HDI: ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート
Geniosil(登録商標)XL 926: [(シクロヘキシルアミノ)メチル]トリエトキシシラン(Wacker Chemie AG、Munich、独国)
Walocel CRT 30G: カルボキシメチルセルロース、ナトリウム塩(Dow Deutschland Anlagengesellschaft mbH、Schwalbach、独国)
P/B 3.5: 20℃において3.5barのガス圧力を与えるプロパンおよびイソブタンの混合物
【0121】
次の実施例によってシラン末端化プレポリマーの調製を説明される。
【0122】
実施例1:シラン末端化プレポリマーSTP1の調製
1,2-プロピレングリコールから出発し、47%のエチレンオキシド重量比率および49%のプロピレンオキシド重量比率を有し、予め80℃で0.1mbrの圧力において1時間乾燥した2000g/モルのモル質量を有するポリアルキレンオキシド800g、および塩化ベンゾイル2.8gの混合物を、80℃において1000gのHDIと混合、45分にわたって滴下し、次に2時間攪拌した。過剰のHDIを、130℃および0.4mbarにおいて薄膜蒸留によって除去して3.43%のNCO含有量および1250mPasの粘度を有するプレポリマーを得た。
【0123】
次に、得られたプレポリマー498gを、30〜40℃において104.5gのGeniosil XL 926と15分にわたって混合した。30℃においてさらに60分攪拌後、NCOプレポリマーのSTPへの完全な転化をIR分光法によって確かめた。生成したSTPは、貯蔵安定法において18%のP/B 3.5を溶解させた。
【0124】
実施例2:シラン末端化プレポリマーSTP2の調製
1,2-プロピレングリコールから出発し、13%のエチレンオキシド重量比率および86%のプロピレンオキシド重量比率を有し、予め80℃で0.1mbrの圧力において1時間乾燥した4000g/モルのモル質量を有するポリアルキレンオキシド1032g、および塩化ベンゾイル1.8gの混合物を、80℃において650gのHDIと混合、30分にわたって滴下し、次に4時間攪拌した。過剰のHDIを、130℃および0.03mbarにおいて薄膜蒸留によって除去して1.82%のNCO含有量および2100mPasの粘度を有するプレポリマーを得た。
【0125】
次に、得られたプレポリマー207.5gを、30〜40℃において24.8gのGeniosil XL 926と15分にわたって混合した。30℃においてさらに30分攪拌後、NCOプレポリマーのSTPへの完全な転化をIR分光法によって確かめた。生成したSTPは、9300mPasの粘度を有し、貯蔵安定法において28%のP/B 3.5を溶解させた。この溶液の粘度は、比較により26℃において400mPasと見積もられた。
【0126】
実施例3:シラン末端化プレポリマーSTP3の調製
1,2-プロピレングリコールから出発し、0%のエチレンオキシド重量比率および92%のプロピレンオキシド重量比率を有し、予め80℃で0.1mbrの圧力において1時間乾燥した1000g/モルのモル質量を有するポリアルキレンオキシド201g、および塩化ベンゾイル0.8gの混合物を、80℃において588gのHDIと混合、30分にわたって滴下し、次に2時間攪拌した。過剰のHDIを、140℃および0.05mbarにおいて薄膜蒸留によって除去して6.09%のNCO含有量を有するプレポリマーを得た。
【0127】
次に、得られたプレポリマー200gを、30〜40℃において80gのGeniosil XL 926と10分にわたって混合した。30℃においてさらに60分攪拌後、NCOプレポリマーのSTPへの完全な転化をIR分光法によって確かめた。生成したSTPは貯蔵安定法において22%のP/B 3.5を溶解させた。
【0128】
実施例4:シラン末端化プレポリマーSTP4の調製
実施例1において調製したNCOプレポリマー270gおよび実施例2において調製したNCOプレポリマー1349gの混合物を、30〜40℃において217gのGeniosil XL 926と混合、30分にわたって滴下し、30℃においてさらに30分間攪拌した。NCOプレポリマーのSTPへの完全な転化をIR分光法によって確かめた。生成したSTP混合物は貯蔵安定法において41%のP/B 3.5または27%のn-ブタンを溶解させた。
【0129】
実施例5:シラン末端化プレポリマーSTP5の調製
トリメチロールプロパンから出発し、13%のエチレンオキシド重量比率および83%のプロピレンオキシド重量比率を有し、予め80℃で0.1mbrの圧力において1時間乾燥した3825g/モルのモル質量を有するポリアルキレンオキシド423g、および塩化ベンゾイル0.8gの混合物を、80℃において420gのHDIと混合、30分にわたって滴下し、次に2時間攪拌した。過剰のHDIを、140℃および0.05mbarにおいて薄膜蒸留によって除去して2.49%のNCO含有量を有するプレポリマーを得た。
【0130】
次に、得られたプレポリマー200gを、30〜40℃において37gのGeniosil XL 926と10分にわたって混合した。30℃においてさらに60分攪拌後、NCOプレポリマーのSTPへの完全な転化をIR分光法によって確かめた。生成したSTPは貯蔵安定法において37%のイソブタンを溶解させた。
【0131】
実施例6:シラン末端化プレポリマーSTP6の調製
グリセロールから出発し、13%のエチレンオキシド重量比率および85%のプロピレンオキシド重量比率を有し、予め80℃で0.1mbrの圧力において1時間乾燥した4800g/モルのモル質量を有するポリアルキレンオキシド398g、および塩化ベンゾイル0.7gの混合物を、80℃において315gのHDIと混合、30分にわたって滴下し、次に2時間攪拌した。過剰のHDIを、140℃および0.05mbarにおいて薄膜蒸留によって除去して1.94%のNCO含有量を有するプレポリマーを得た。
【0132】
次に、得られたプレポリマー200gを、30〜40℃において28gのGeniosil XL 926と10分にわたって混合した。30℃においてさらに60分攪拌後、NCOプレポリマーのSTPへの完全な転化をIR分光法によって確かめた。生成したSTPは貯蔵安定法において39%のP/B 3.5または36%のイソブタンを溶解させた。
【0133】
比較実施例1:アルカンプロペラントガスに対する溶解性がないSTPの調製
1000gのHDIおよび1gの塩化ベンゾイルの混合物を、グリセロールから出発し、71%のエチレンオキシド重量比率および26%のプロピレンオキシド重量比率を有し、予め100℃で0.1mbarの圧力において6時間乾燥した4680g/モルのモル質量を有するポリアルキレンオキシド1000gと80℃において混合、3時間にわたって滴下し、次に12時間攪拌した。過剰のHDIを、130℃および0.1mbarにおいて薄膜蒸留によって除去して2.42%のNCO含有量および3500mPasの粘度を有するプレポリマーを得た。
【0134】
次に、得られたプレポリマー200gを、30〜40℃において31.7gのGeniosil XL 926と10分にわたって混合した。30℃においてさらに60分攪拌後、NCOプレポリマーのSTPへの完全な転化をIR分光法によって確かめた。生成したSTPはP/B 3.5を溶解させなかった。
【0135】
次のテストは、フォームについての硬化テストの結果を示す。2つの成分の同時の放出は、Adchem GmbH(Wendelstein、独国)製のMAH 0.5-0.7T静的ミキサーにおいて行った。
【0136】
実施例7:スプレー塗布
本発明による全てのSTP/プロペラント溶液は、貯蔵(>2ヶ月)において安定性であり、市販のスプレー容器から容易に出された。溶液をこの方法において発泡させて完全に硬化するまで安定であるフォームを生成した。同様に、室の1つにおいてはSTP/プロペラント溶液によって、第2室においてはプロトン性液体、例えば水、水性酸、緩衝剤水溶液、水性触媒混合物またはアルコール等によって、室がそれぞれ別個に充填され、互いに2.5:1の好ましい容積比率で出される、圧縮空気駆動2Kスプレー装置からの塗布は、問題なく達成され、約5〜120秒以内に、特定のSTPが完全に硬化するまで安定なフォームをもたらした。得られたフォームは軟質の微細気泡であって、とりわけ医療用創傷被覆材として有用であった。
【0137】
EP 1829908の実施例1による比較実施例:
この比較テストは、本発明の組成物を従来技術の2K系、具体的にはEP 1829908の実施例1と比較するために設計した。本発明によって用いたSTP1と同時に2Kスプレー装置によって成分2(水8部、クエン酸13部)を出すことを試みたが、混合物はまだ静的ミキサー内の間に完全な硬化がすでに生じ、それを完全に詰まらせたため失敗した。そのため、塗布は不可能であった。
【0138】
さらに、成分2を生成する水8部およびクエン酸13部は、成分2のpHが約1であり、それによってこの系に対してpH敏感性の塗布、例えば医療用途等を除外することを意味する。さらには、このpHは、塗布の場合に使用者に引き起こされる潜在的な腐食危険性を示す。