(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043814
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】自動車用ラジエータグリル
(51)【国際特許分類】
B60R 19/52 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
B60R19/52 K
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-559117(P2014-559117)
(86)(22)【出願日】2013年1月23日
(65)【公表番号】特表2015-508729(P2015-508729A)
(43)【公表日】2015年3月23日
(86)【国際出願番号】EP2013000201
(87)【国際公開番号】WO2013127483
(87)【国際公開日】20130906
【審査請求日】2014年8月28日
(31)【優先権主張番号】102012004041.5
(32)【優先日】2012年3月2日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102012013699.4
(32)【優先日】2012年7月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】メイアー,ハンス−ペーテル
(72)【発明者】
【氏名】ロアシュ,ヨーケン
(72)【発明者】
【氏名】コエラー,アキム
【審査官】
川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−226289(JP,A)
【文献】
意匠登録第1402614(JP,S)
【文献】
米国特許第8038204(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0148525(US,A1)
【文献】
特開2001−163124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/52
B60K 11/00 − 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム要素(5、7、9、11)によって自由空間(13)が画成され、内部に格子フィールド(G)が嵌め込まれる周囲フレーム(3)を有する自動車用ラジエータグリル(1)であって、
前記フレーム(3)に格子フィールド(G)を形成する複数の装飾グリル(27A〜27D)が取り付けられ、
前記装飾グリル(27A〜27D)は、それぞれの格子要素(31、33)を有する格子構造を備え、かつ前記格子構造の前記格子要素(31、33)の交差点にドーム(35)が前記格子要素(31、33)と一体に形成され、および
前記自由空間(13)は、実質的に中央に配置されたリング要素(15)を備え、前記リング要素(15)は、水平に延びるストラット(17)及び(19)、及び垂直に延びるストラット(21)及び(23)を介してフレーム(3)と接合される
ことを特徴とするラジエータグリル。
【請求項2】
それぞれの装飾グリル(27A及び27B;27C及び27D)が対応する接合箇所(41)を介して互いに接合されることを特徴とする請求項1に記載のラジエータグリル(1)。
【請求項3】
それぞれ一方の装飾グリル(27A及び27B;27C及び27D)の接合要素(43)と、それぞれ他方の装飾グリル(27A及び27B;27C及び27D)の相手部品(47)とが互いに噛合い連結及び/又は圧入連結されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のラジエータグリル(1)。
【請求項4】
少なくとも1つの装飾要素(29)が前記フレーム(3)と接合されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のラジエータグリル(1)。
【請求項5】
前記装飾グリル(29)を前方から取り付け可能であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のラジエータグリル(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載
の自動車用ラジエータグリルに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロント領域に取り付けられ、その後部に配置された部品、例えば冷却モジュールなどへの空気排出を可能にするためのこのようなラジエータグリルは、外部から視認できる配置であるため自動車の視覚的印象に影響を及ぼす。
【0003】
特許文献1から、そのフレーム要素によってそれぞれの自由空間が画成される併置された2つの周囲フレームをそれぞれ含むラジエータグリルが明らかにされている。両方の自由空間内にはそれぞれ、関連する周囲フレームに取り付けられた格子フィールド又は格子要素が嵌め込まれる。しかし、格子要素のこのような配置では、格子フィールドが比較的大きい場合、衝突が起きた際に対応するコストを伴う大規模な修理作業が必要になるという問題点が生じる。加えて、公知の配置の比較的大きい格子フィールドは製造コストが高い。それぞれのフレームに嵌め込まれる両方の装飾グリルは各々、交差する格子要素を有する格子構造を備えている。しかし、その場合、全体として安定した装飾グリルを得るには個々の格子要素を互いに安定的に接合することが問題となる。その上、ある特定の自動車では流体技術的に最適化する必要性が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第103 06 158 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、衝突時及び流体技術的な態様に関して最適化された、冒頭に記載の
装飾グリル及び
ラジエータグリルを製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は本発明により、請求項
1の特徴を有す
るラジエータグリルによって解決される。本発明の有利な実施形態はその他の請求項に記載されている。
【0007】
衝突時及び流体技術的な態様に関して最適化された、冒頭に記載の装飾グリルを製造するため、本発明により、装飾グリルがそれぞれの格子構造を含み、格子要素の交差点にドームが備えられる。このドームによって、個々の格子要素とそれぞれの交差点とのより強固で安定した接合、ひいては衝突時に全体として安定した装飾グリルが可能になるだけではなく、更には流体技術的な利点も生じる。ドームを適切に形成することによって、例えば装飾グリルを貫流する空気量を調整し、自動車の空気力学全体に影響を及ぼすことができる。更に、ドームによって装飾グリルの知覚価値を高めることができる。
【0008】
好適な実施形態では、装飾グリルは樹脂部品、特に射出成形樹脂部品であり、そのため特に有利に一体製造可能である。その際、格子要素の製造時に、それぞれのドームは格子要素の交差点で一体形成、射出成形、又は一体射出成形、又は成形などがなされる。したがって、ドームと格子要素とは互いに一体に形成される。
【0009】
これに関連して、ドームが格子構造の格子要素に対して前方に突起する本発明の実施形態は特に有利であることが実証されている。そのため、流体技術的な利点と装飾グリルの知覚価値とが特に高まる。
【0010】
加えて、ドームが高光沢研磨され、及び/又はコーティングが施された前面を有していれば有利である。それによって、ドームの継続的に高性能な表面だけではなく、装飾グリルの特に高い知覚価値が得られる。
【0011】
課題を解決するため、請求項
1に記載の特徴を有するラジエータグリル
が提案される。衝突時に関して最適化されたこのラジエータグリルは周囲フレームを備え、そのフレーム要素によって、複数の装飾グリルを有する格子フィールドが嵌め込まれる自由空間が画成される。フレームには
、自由空間を覆う複数の装飾グリルを取り付けるようにされる。格子フィールドのこのような多部品構造は、衝突時に損傷した装飾グリルだけを交換すればよいという利点をもたらす。それによって修理コストを低減できる。本発明による各装飾グリルは、格子要素が交差点でドームによってより強固に接合されるためより高い安定性を有するので、複数の装飾グリルを備える格子フィールドも対応して高い剛性を備えている。
【0012】
ラジエータグリルの有利な実施形態では、それぞれの装飾グリルは対応する接合箇所で互いに接合されるように構成される。この接合箇所で、例えばそれぞれ1つの装飾グリルの接合要素と、それぞれ別の装飾グリルの相手部品とが互いに噛合い連結及び/又は圧入連結される。それによって、装飾グリルは周囲フレームに固定されるだけではなく、相互にも固定される。
【0013】
ラジエータグリルの発展形態によれば、装飾グリル間の少なくとも1つの接合箇所は、互いに接合される装飾グリルの一方に備えられた受け部品の形態の接合要素と、互いに接合される装飾グリルの他方に備えられ、受け部品に適合し、受け部品内に差し込まれ、場合によってはそこでロックされ、接着され、又は溶接される噛合い連結要素の形態の相手部品とによって形成されるように構成される。
【0014】
ラジエータグリルの更なる実施形態は、周囲フレームに接合された自由空間内の複数のストラットを備えている。それによって、周囲フレームのフレーム構造が補強され、ひいては衝突時の安定性が向上する。
【0015】
ラジエータグリルの更なる有利な実施形態は、装飾グリルのフレームへの、及び/又は相互の接合箇所を覆うことができる少なくとも1つの装飾要素を提供する。装飾要素は更に、ラジエータグリルの知覚価値を更に高める。
【0016】
更なる有利な実施形態は、装飾グリルを前方から取り付け可能とすることを提供する。そのため、ラジエータグリルを据え付けた状態で、個々の装飾グリルの取り外しが簡単な方法で可能となる。
【0017】
本発明の更なる利点及び詳細は、好適な実施形態の以下の説明から、及び図面を参照して明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】自動車のフロント領域に配置され、周囲フレームを備え、そのフレーム要素によって自由空間が画成される、全体としてラジエータグリルとして示されたアセンブリの前面図である。
【
図2】フレームに4つの平坦な装飾グリルが取り付けられた
図1のラジエータグリルの前面斜視図である。
【
図3】
図2のラジエータグリルの一部の拡大前面斜視図である。
【
図4】
図2と同類のラジエータグリルの前面斜視図である。
【
図5】
図2のラジエータグリルの一部の軽く斜視化した前面図である。
【
図6】
図5の装飾グリル間の接合箇所の水平断面図である。
【
図7】
図5と類似したラジエータグリルの一部の前面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、自動車のフロント領域に配置される、全体としてラジエータグリル1で示されるアセンブリの前面図を示す。ラジエータグリル1は、自動車に取り付けられた状態で実質的に水平に延びる条片形の上部フレーム要素5と、少なくとも実質的に水平に、すなわちフレーム要素5と平行に延びる条片形の下部フレーム要素7と、上部フレーム要素5、7を互いに接合する2つの側部フレーム要素9及び11とを含む周囲フレーム3を備えている。それによって形成される周囲フレーム3はラジエータグリル1のベースを成している。フレームは例えば樹脂製である。
【0020】
フレーム要素5〜11の間に画成される自由空間13は、好適にはエンブレム(図示せず)を受容する、実質的に中央に配置されたリング要素15を備えている。リング要素15は、水平に延びるストラット17及び19、及び垂直に延びるストラット21及び23を介してフレーム3と接合される。リング要素15は水平及び垂直に延びるストラット17〜23によって補強される。更に、この実施形態では、前述のフレーム構造を補足的に補強する役割を果たす湾曲した補助ストラット25A〜25Dが備えられている。補助ストラット25A及び25Bは、実質的に重なって配置され、互いにずらしてフレームのストラット17及び上部フレーム要素5、又は下部フレーム要素7に連結されている。補助ストラット25C及び25Dについても同様である。
【0021】
本発明によるラジエータグリル1、特に前述のフレーム構造によって、材料を適切に選択すれば個々の部品、すなわちフレーム3の高い剛性が得られる。したがって、フレームの上に、又はフレームに固定された装飾要素は、ラジエータグリルの剛性に寄与せず、又は少なくとも実質的に寄与しないためその剛性は極めて低い。フレーム3が剛性であるため、形状に関してバンパの構造全体の剛性に悪影響を及ぼす従来の広い装飾グリル/ラジエータグリルと比較して、バンパアセンブリの寸法安定性がより高くなる。
【0022】
フレーム3は基本的に一体に形成することができ、又は代替として複数の別個の部品から組み立てることができる。
【0023】
図2は、
図1のラジエータグリル1を軽く斜視化して示しており、この場合、フレーム3にはラジエータグリル1の一部である全部で4つの平坦な格子要素、又は装飾グリル27A〜27Dが取り付けられている。装飾グリル27A〜27Dは全体で少なくとも見た目には一体の格子フィールドGを形成し、これはリング要素15及びストラット17〜23以外の自由空間13を完全に埋め、又は覆う。装飾グリル27A〜27Dは適宜に、好適には破壊することなく取り外し可能に、フレーム3に例えばクリップ止め、スナップ止めなどで連結される。
【0024】
フレーム3、特にフレーム要素5〜11が、装飾グリル27A〜27Dの対応する係止手段を効果的に嵌め込む幾つかの開口を備えていることが
図1から分かる。補足的に、リング要素15及びこれを自由空間13の所定位置に保持するストラット17及び19は、装飾グリルとフレームとの間の係止接合を形成するための係止開口をも設けることができる。
【0025】
図2では更に、ここでは単なる例として一体部品として形成された、水平のフレーム要素17及び19、及びその間に配置されたリング要素15を覆う装飾要素29が取り付けられている。
【0026】
装飾グリル27A〜27Dは、好適にはそれぞれ一体部分として実現される。それぞれの格子構造は装飾グリル27A〜27Dの背景を形成する。そのために、水平に延びる格子要素31と垂直に延びる格子要素33との間の交差点はそれぞれ、突起した、すなわち自動車の外側の前方方向に突出した、例えば特に
図3に見られるような、
図2のラジエータグリル1の一部の拡大図として示されているドーム35を備えている。
【0027】
ドーム35は、実質的に垂直方向に延びる格子要素31と、実質的に水平方向に延びる格子要素33とから突出する、この図では実質的に6角形の平坦面/前面37を備えている。交差点/ドーム35は見た目を引きたてるために端面、すなわち前面/視認面、又は平坦面/前面37の領域が高光沢研磨され、且つ/又は場合によっては更にホットエンボス技術又はインサート成形でコーティングを施すことができる。コーティングとして、例えば単色、多色、又は金属コーティングを実施できよう。それによって、例えば平坦面/前面37をクロム又は金属調、又は車のカラーにより際立たせることができる。例えばグレイン構造などの適宜の表面構造を備えることも可能である。
【0028】
適宜のコーティングなど、及び格子要素31、33から突起した配置によるドーム35の視覚的変化により、自動車の知覚価値を高めることができる。装飾グリル27A〜27Dから突起したドーム35によって、いわゆるピンポイントの外見が実現され、すなわち交差点/接合点は点状要素の形態で格子要素31及び33から視覚的に際立たされる。
【0029】
格子要素31及び33は一般に、自動車の走行中に装飾グリルを通って流れる空気が明確に偏向され、且つ/又は気流速度が影響されるように、薄板に類似した空気誘導要素として形成可能である。それによって、気流方向から見て装飾グリルの後方に配置された集合体に、空気抵抗に対して最適化された本発明の他の実施形態の格子要素の場合よりも多量の冷却空気を意図的に当てることができる。
【0030】
図4が
図2と異なっているのは、装飾グリル27A〜27Dの区分が示されている点だけである。
図4では、装飾グリル27Aは第1の象限に、装飾グリル27Bは第2の象限に、装飾グリル27Cは第3の象限に、又は装飾グリル27Dは第4の象限に位置する。装飾グリル27A〜27Dは全体で少なくとも外見は一体の格子フィールドGを形成している。
【0031】
フレーム3内に嵌め込まれた状態で、装飾グリル27A〜27Dは観察者には単一の広い装飾グリルであるとの印象を与え、エンブレム(図示せず)を受容するために中央に配置されたリング要素15はこれを外見上区分する。4つの個別部品、すなわち装飾グリル27A〜27Dは、一体の広い装飾グリルと比較して交絡が少ないという利点を有している。それによって、これらの装飾グリルを例えばホットエンボスにより簡単な工程で装飾することが可能である。
【0032】
図5から7を参照して、装飾グリル27A〜27Dのフレーム3への固定をより詳細に説明する。
【0033】
それぞれが視認側から前方の視線方向でラジエータグリル1の一部を示す
図5及び7から分かるように、装飾グリル27A〜27Dは前側からフレーム3に載置され、これに固定される。そのために先ず、両方の装飾グリル27Aと27Dとが、次いで装飾グリル27Bと27Cとが、そして最後にカバー要素/装飾要素29が置かれ、必要に応じて、フレームと相互接合される。
【0034】
装飾グリル27Aと27Bとの接合箇所41と、装飾グリル27Cと27Dとの接合箇所41とは前側から見えないようにされている。したがって、上部と下部の装飾グリル27Aと27B、又は27Cと27Dとの間の接合箇所41はそれぞれ、好適には係止接合又はその他の接合要素として実施される接合ピンを備えている。
【0035】
図5の装飾グリル27Aと27Bとの間の接合箇所41の水平断面を示す
図6から分かるように、装飾グリル27Bに備えられた接合要素43は受け部品45を備え、この図では対応する受け部品に適合する噛合い連結要素から形成される、装飾要素27Aに備えられた相手部品47がこの受け部品内に差し込まれ、場合によってはそこで固締、接着又は溶接される。接合箇所41は、観察者が交差点/接合箇所41を視認できないか、簡単には視認できないように構成されている。
【0036】
装飾要素29によって、装飾グリル27A〜27Dのそれぞれの接合箇所をフレーム3により、及び/又は相互に覆うことが可能である。
【0037】
装飾グリル27A〜27Dの取り付けは前方から行われるため、ラジエータグリル1の据え付け状態でも、例えば装飾グリル27A〜27Dの交換時にこれらを簡単に取り外しできることは重要である。
【0038】
要約すると、交差点で格子構造を形成する格子要素がドームを備える本発明の装飾グリルは、公知の装飾グリルよりも安定性が高く、適宜に配置すれば流体技術的な利点ももたらすことを指摘しておく必要がある。それによって例えば、自動車の空気力学全体に影響を及ぼすことができる。ドームによって、格子要素の交差点に疑似接合部又は接合点が形成され、これは好適にはそれぞれ一体の装飾グリルに高い安定性を与える。