特許第6043828号(P6043828)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6043828-焦電型赤外線センサ 図000002
  • 特許6043828-焦電型赤外線センサ 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043828
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】焦電型赤外線センサ
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/02 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   G01J1/02 Y
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-72193(P2015-72193)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-191644(P2016-191644A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2016年6月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000134257
【氏名又は名称】NECトーキン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 正博
(72)【発明者】
【氏名】藤原 茂美
【審査官】 蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−035238(JP,A)
【文献】 特開2015−049073(JP,A)
【文献】 特開2013−050359(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3049276(JP,U)
【文献】 特開2014−82452(JP,A)
【文献】 特開2007−171170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00−1/60、5/00−5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板と、
前記ベース基板上に搭載された焦電センサ素子と、
前記ベース基板上に搭載され、前記焦電センサ素子を囲む筒状の枠体と、
を備え、
前記枠体は、多層プリント基板によって構成されており、
前記枠体の内側側面の全域、前記枠体の前記ベース基板に対向する面であるベース対向面、前記枠体の前記ベース対向面と反対側の面である光学フィルタ搭載面に金属膜が形成されている、
焦電型赤外線センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の焦電型赤外線センサであって、
前記ベース基板には、前記焦電センサ素子が電気的に接続される電極が形成されており、
前記電極と前記焦電センサ素子の間には、バンプを形成している、
焦電型赤外線センサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の焦電型赤外線センサであって、
前記ベース基板は、前記枠体の前記内側側面よりも外側に広がる金属膜を有する、
焦電型赤外線センサ。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の焦電型赤外線センサであって、
前記焦電センサ素子は、前記ベース基板の略中央に配置されている、
焦電型赤外線センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦電型赤外線センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、回路素子が実装されたベースの上に中空構造の多層プリント基板から成る第1スペーサを積層し、第1スペーサ上に焦電センサ素子を設置することで、焦電センサ素子の下方に回路素子を実装するための空間を確保した焦電型赤外線センサを開示している。第1スペーサの内側側面には金属膜層が形成されている。この金属膜層には、焦電センサ素子の両極をベースに導通させるべく、切れ目が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−50359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の構成では、第1スペーサの内側側面に形成されている金属膜層に切れ目があるので、第1スペーサの内側側面で発生したガスや粉塵によって焦電センサ素子が汚染されてしまう虞がある。
【0005】
本発明の目的は、焦電センサ素子が汚染するのを抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の観点によれば、ベース基板と、前記ベース基板上に搭載された焦電センサ素子と、前記ベース基板上に搭載され、前記焦電センサ素子を囲む筒状の枠体と、を備え、前記枠体の内側側面の全域に渡って金属膜が形成されている、焦電型赤外線センサが提供される。以上の構成によれば、前記焦電センサ素子を前記ベース基板上に搭載することにしたので、前記枠体の前記内側側面の全域に渡って前記金属膜を切れ目なく形成することができるようになる。また、前記枠体の前記内側側面の全域に渡って前記金属膜が形成されているので、前記枠体の前記内側側面で発生したガスや粉塵によって前記焦電センサ素子が汚染するのを抑制することができる。
前記ベース基板には、前記焦電センサ素子が電気的に接続される電極が形成されており、前記電極と前記焦電センサ素子の間には、バンプが介在している。以上の構成によれば、前記ベース基板と前記焦電センサ素子の間に隙間が確保されるので、前記焦電センサ素子が前記ベース基板から遠ざかり、もって、前記ベース基板自体の発熱による前記焦電センサ素子の感度低下を抑制することができる。
前記ベース基板は、前記枠体の前記内側側面よりも外側に広がる金属膜を有する。以上の構成によれば、前記焦電センサ素子の耐電磁ノイズ性が向上する。
前記焦電センサ素子は、前記ベース基板の略中央に配置されている。以上の構成によれば、前記焦電センサ素子の視野角を効果的に確保することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、前記枠体の前記内側側面の全域に渡って前記金属膜が形成されているので、前記枠体の前記内側側面で発生したガスや粉塵によって前記焦電センサ素子が汚染するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】焦電型赤外線センサの分解斜視図である。
図2】焦電型赤外線センサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1及び図2を参照して、焦電型赤外線センサ1を説明する。
【0010】
図1に示すように、焦電型赤外線センサ1は、素子収容体2と、焦電センサ素子3、回路部品4、光学フィルタ5を備える。
【0011】
素子収容体2は、焦電センサ素子3及び回路部品4を収容する。図2に示すように、素子収容体2は、ベース基板6と、筒状の枠体7と、を有する。
【0012】
ベース基板6は、多層プリント基板によって構成されている。ベース基板6は、素子搭載面8と、素子搭載面8と反対側の面である底面9と、を有する。ベース基板6は、平面視で、枠体7の内側側面10よりも外側に広がる金属膜11を有する。金属膜11は、ベース基板6内に埋設されている。ベース基板6の底面9には、少なくとも3つの電極12が形成されている。ベース基板6の素子搭載面8には、2つの素子電極19が形成されている。
【0013】
枠体7は、多層プリント基板によって構成されている。枠体7は、角筒状に形成されている。枠体7は、ベース基板6の素子搭載面8に搭載されている。枠体7は、上記の内側側面10と、光学フィルタ搭載面13と、ベース対向面14と、を有する。ベース対向面14は、ベース基板6に対向する面である。光学フィルタ搭載面13は、ベース対向面14と反対側の面である。そして、枠体7の内側側面10の全域に渡って、例えば銅めっきなどの金属膜15(金属膜)が形成されている。金属膜15は、環状に切れ目なく形成されている。金属膜15は、環状に切れ目なく形成されているので、焦電センサ素子3に対するシールド効果が高いレベルで発揮される。金属膜15は、内側側面10に加えて、光学フィルタ搭載面13及びベース対向面14にも形成されている。従って、内側側面10の断面形状は、略U字状となっている。金属膜15の厚みは、例えば、10〜100マイクロメートルとすることが好ましい。なお、金属膜15は、光学フィルタ搭載面13の外側の領域には形成されていない。換言すれば、光学フィルタ搭載面13は、外側の領域において露出している。光学フィルタ搭載面13には、環状のレジスト16が形成されている。レジスト16は、光学フィルタ搭載面13の露出した部分に形成されている。
【0014】
光学フィルタ5は、導電性を有する接着剤17を用いて、枠体7の光学フィルタ搭載面13に搭載されている。具体的には、光学フィルタ5は、接着剤17と金属膜15を介して、光学フィルタ搭載面13に搭載されている。光学フィルタ5は、環状のレジスト16によって、水平方向において位置決めされる。接着剤17は、環状のレジスト16の存在により外側へ流出しない。光学フィルタ5とレジスト16の間に、封止樹脂18が充填される。また、環状のレジスト16の存在により、焦電型赤外線センサ1の高い封止性が実現される。
【0015】
焦電センサ素子3及び回路部品4は、ベース基板6の素子搭載面8に搭載される。焦電センサ素子3と回路部品4が同じ素子搭載面8上に搭載されているので、焦電型赤外線センサ1の低背化に寄与している。
【0016】
焦電センサ素子3は、ベース基板6の素子搭載面8に形成されている2つの素子電極19(電極)に、バンプ20を介して搭載される。バンプ20は、例えば銅メッキを数度重ねることにより形成される。バンプ20は、例えば50〜200マイクロメートル以上の厚みを有することが好ましい。バンプ20の存在により、焦電センサ素子3とベース基板6の素子搭載面8との間には、空隙21が形成される。空隙21の存在により、焦電センサ素子3は、ベース基板6への熱伝達に起因して感度が低下してしまうことが抑えられる。また、焦電センサ素子3は、ベース基板6の略中央に配置されている。従って、焦電センサ素子3の視野角θを効果的に確保できる。回路部品4は、FETや抵抗素子である。回路部品4は、焦電センサ素子3の周囲に配置される。
【0017】
焦電型赤外線センサ1の製造手順としては、先ず、ベース基板6に回路部品4を実装し、その後焦電センサ素子3を実装する。次に、ベース基板6に枠体7を接合する。そして、光学フィルタ5を枠体7に搭載後、封止樹脂18を充填する。焦電型赤外線センサ1は複数個同時に製造することができる。最後に、焦電型赤外線センサ1を切り分ける。焦電型赤外線センサ1は、各構成要素を下から順番に積み上げることができるので、製造し易い。
【0018】
また、光学フィルタ5を枠体7の金属膜15に接着しようとすると、温度変化や湿度変化などの環境変化によって接着面が弱まる虞がある。これに対し、本実施形態では、枠体7の光学フィルタ搭載面13全域に金属膜15を形成するのではなく、光学フィルタ搭載面13の外周の領域は金属膜15を形成せずあえて露出するようにしている。これにより、光学フィルタ5と枠体7との接着性、焦電型赤外線センサ1の気密性、及び、光学フィルタ5と枠体7との電気的な接続の3つを同時に満たしている。
【0019】
以上に、本願の好適な実施形態を説明した。上記実施形態は、以下のような特徴を有する。
【0020】
焦電型赤外線センサ1は、ベース基板6と、ベース基板6上に搭載された焦電センサ素子3と、ベース基板6上に搭載され、焦電センサ素子3を囲む筒状の枠体7と、を備える。枠体7の内側側面10の全域に渡って金属膜15が形成されている。以上の構成によれば、焦電センサ素子3をベース基板6上に搭載することにしたので、枠体7の内側側面10の全域に渡って金属膜15を切れ目なく形成することができるようになる。また、枠体7の内側側面10の全域に渡って金属膜15が形成されているので、枠体7の内側側面10で発生したガスや粉塵によって焦電センサ素子3が汚染するのを抑制することができる。
【0021】
ベース基板6には、焦電センサ素子3が電気的に接続される素子電極19(電極)が形成されている。素子電極19と焦電センサ素子3の間には、バンプ20が介在している。以上の構成によれば、ベース基板6と焦電センサ素子3の間に空隙21(隙間)が確保されるので、焦電センサ素子3がベース基板6から遠ざかり、もって、ベース基板6への熱伝達による焦電センサ素子3の感度低下を抑制することができる。
【0022】
ベース基板6は、枠体7の内側側面10よりも外側に広がる金属膜15を有する。以上の構成によれば、焦電センサ素子3の耐電磁ノイズ性が向上する。
【0023】
焦電センサ素子3は、ベース基板6の略中央に配置されている。以上の構成によれば、焦電センサ素子3の視野角θを効果的に確保することができる。
【0024】
また、上記実施形態では、焦電センサ素子3をベース基板6上に搭載しているので、焦電型赤外線センサ1の低背化に寄与している。
【符号の説明】
【0025】
1 焦電型赤外線センサ
2 素子収容体
3 焦電センサ素子
4 回路部品
5 光学フィルタ
6 ベース基板
7 枠体
8 素子搭載面
9 底面
10 内側側面
11 金属層
12 電極
13 光学フィルタ搭載面
14 ベース対向面
15 金属膜
16 レジスト
17 接着剤
18 封止樹脂
19 素子電極
20 バンプ
21 空隙
図1
図2