(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アウターシェルの近位端は眼の前房に配置される一方、前記シャントは眼の生理的流出経路に配設される、請求項5〜13のいずれか1項に記載の薬物送達眼内インプラント。
前記薬剤は、ビマトプロスト、ラタノプロスト、トラボプロストおよびウノプロストンから成る群から選択される、請求項1〜17のいずれか1項に記載の薬物送達眼内インプラント。
【発明を実施するための形態】
【0051】
薬剤の局所的眼投与を達成するには、直接注射または直接適用が必要となることがあるのみならず、一部を、標的部位が存在する眼内または眼房内の標的作用部位(たとえば、前房、後房または両方同時に)に近接して配置し得る薬剤溶出インプラントの使用が含まれることもある。薬剤溶出インプラントを使用すると、たとえば、黄斑、網膜、毛様体、視神経など特定の眼組織へ薬剤を標的送達したり、または眼の特定の領域に血管を供給したりすることもできる。さらに、薬剤溶出インプラントを使用すると、病状に応じて、制御された量の薬剤を所望の期間投与する機会も得られる。たとえば、病状の中には、薬剤をほんの数日間一定の速度で放出する必要がある場合もあれば、一定の速度で最大数ヶ月間薬剤を放出する必要がある場合もあり、さらに一定期間周期的な放出または多様な放出が必要な場合もあり、さらには放出のない期間(たとえば、「休薬期間」)が必要な場合もある。さらに、インプラントは、薬剤の送達が終了したら、他の機能を果たすこともできる。インプラントは、眼腔(ocular cavity)内の流体の流通路の開通性を維持することができたり、将来同一または異なる治療薬を投与するための貯蔵所の役割を果たしたり、あるいは第1の位置から第2の位置への流体の流経路または流通路の開通性を維持する役割、たとえばステントとしての役割を果たしたりすることもできる。反対に、薬剤を短時間しか必要としない場合、インプラントは完全に生分解性にしてもよい。
【0052】
本明細書に開示された実施形態によるインプラントについては、好ましくは薬剤(単数または複数)の放出に浸透圧勾配またはイオン勾配を必要とせず、眼の健常組織に対する外傷を最小限に抑えることにより、眼の罹病率を低下させる装置と共に移植し、および/または、標的化および放出制御して1種または複数種の薬剤を送達し、複数の眼の病状、または単一の病状およびその症状を処置するために使用してもよい。しかしながら、ある種の実施形態では、浸透圧勾配またはイオン勾配を使用して、インプラントからの薬剤(単数または複数)の放出を開始したり、制御したり(全部または一部)、または調節したりする。
【0053】
本明細書で使用する場合、「薬剤」とは一般に、単独投与しても、1種または複数種の薬学的に許容される賦形剤(たとえばバインダー、錠剤分解物質、充填剤、希釈液、滑沢剤、薬剤放出制御ポリマーまたは他の作用物質等)、助剤、もしくは本明細書に記載するようなインプラント内に収納してもよい化合物と組み合わせて投与しても、および/または、1種または複数種の薬学的に許容される賦形剤(たとえばバインダー、錠剤分解物質、充填剤、希釈液、滑沢剤、薬剤放出制御ポリマーまたは他の作用物質等)、助剤、もしくは本明細書に記載するようなインプラント内に収納してもよい化合物と配合してもよい、1種または複数種の薬剤をいう。「薬剤」という用語は、「治療薬」および「医薬品」または「薬理作用物質」と同義で使われることがある広義の用語であり、そうした薬剤が天然のものであるか、合成であるか、または組換えであるかどうかにかかわらず、いわゆる小分子薬剤だけでなく、巨大分子薬剤、さらに以下に限定されるものではないが、タンパク質、核酸、抗体および同種のものなどの生物製剤も含む。薬剤とは、薬剤単独をいっても、または上述の賦形剤と組み合わせた薬剤をいってもよい。「薬剤」とはさらに、活性薬剤自体をいっても、または活性薬剤のプロドラッグもしくは塩をいってもよい。
【0054】
本明細書で使用する場合、「患者」は、通常の意味を持つものとし、さらに哺乳動物全般もいうものとする。よって「哺乳動物」という用語は、以下に限定されるものではないが、特にヒト、イヌ、ネコ、ウサギ、齧歯動物、ブタ、ヒツジおよび霊長類を含む。加えて、本明細書を通じて、個々のパラメーターに関する値の範囲は、値のリストと共に示す。こうした場合、そうした開示は、リストに記載された値を含むだけでなく、リストに記載された値の任意の2つの値の間の整数値および小数値を含む値の範囲も含むことに留意されたい。
【0055】
いくつかの実施形態では、眼腔(ocular space)に放出するための薬剤を収納する少なくとも1つの内部ルーメンを画定するように造形されるアウターシェルを含む、生体適合性薬物送達眼内インプラントを提供する。いくつかの実施形態では、アウターシェルは高分子であり、ある種の実施形態では、内部ルーメンから標的組織に薬剤がより流れやすい厚さが減少した区域を除き、厚さが実質的に均一である。言い換えれば、薬剤放出の領域は、厚さの減少に基づき設けてもよい。いくつかの他の実施形態では、インプラントのシェルは、薬剤透過性が増大した1つまたは複数の領域(たとえば、材料、オリフィス等のシェル部分の独特の特徴に基づく)を含み、それにより薬剤が優先的に放出される画定された領域を形成する。他の実施形態では、アウターシェルの材料が薬剤に対して実質的に透過性である場合、アウターシェル全体が薬剤放出の領域であってもよい。なお別の実施形態では、薬剤を入れるところを取り囲む、装置の内部ルーメンまたは空隙のアウターシェルの部分を、薬剤放出の領域と見なしてもよい。たとえば、薬剤を装置の遠位端または遠位部分(たとえば装置の遠位半分または遠位2/3)に充填する場合、薬剤に近接するアウターシェル部分を通じて薬剤が優先的に溶出しやすくなるため、装置の遠位部分が、薬剤放出の領域となる。したがって、本明細書で使用する場合、「薬剤放出の領域」という用語は、通常の意味を持つものとし、材料および/もしくは材料の厚さの特徴に基づく薬剤透過性または薬剤透過性が増大した領域、インプラントを通る1つもしくは複数のオリフィスまたは他の通路(下記にも記載する)、薬剤に近接する装置の領域、ならびに/または、これらの特徴のいずれかと、インプラントからの薬剤放出の制御に使用する材料の1つまたは複数の追加層との併用など、この段落に開示される実施形態を含むものとする。本開示においてこれらの用語および語句は、文脈に応じて同義で使用されることも、または明示的に使用されることもある。
【0056】
いくつかの実施形態では、アウターシェルは、眼液が、インプラントのルーメン(単数または複数)内の薬剤と接触させ、その結果、薬剤放出が起こるように1つまたは複数のオリフィスを含む。いくつかの実施形態では、以下でより詳細に検討するように、単層または複層の透過性または半透性材料を用いてインプラント(全部または一部)およびオリフィス(単数または複数)(全部または一部)を覆うことにより、インプラントからの薬剤の放出速度を制御できる。加えて、いくつかの実施形態では、1つまたは複数のオリフィスの組み合わせ、1つもしくは複数のオリフィスを覆う単層または複層、および厚さの減少した区域を用いて、インプラントからの薬剤の放出速度を調整する。
【0057】
なお他の実施形態では、材料の組み合わせを用いてインプラントを構築してもよい(たとえば、アウターシェルの高分子部分を、異なる材料を含むアウターシェルに結合するか、あるいは他の方法で連結する、接続する、または装着する)。
【0058】
いくつかの実施形態では、生体適合性薬物送達インプラントは、保持突起(たとえば、固定要素、グリッパー、爪部、またはシートもしくはディスクを眼内組織に持続的にもしくは一時的に固着する他の機構)に屈曲自在に任意に装着された(たとえば、つなぎ止められた)可撓性シートまたはディスクを含む。そうした実施形態の一部では、治療薬をシートまたはディスクと配合する、および/または、シートまたはディスクに被覆する。いくつかの実施形態では、可撓性シートまたはディスクのインプラントは、送達器具、たとえば小径の中空針、のルーメン内に配置されるように丸められる、または折り曲げられるような寸法にする。
【0059】
眼内の所望の部位への植え込み後、薬剤は、インプラントの様々な態様の設計に基づき標的化され、制御された形で、好ましくは長期間インプラントから放出される。本明細書に開示されるインプラントおよび関連する方法は、後眼房、前眼房または眼内の特定の組織、黄斑、毛様体または他の眼の標的組織への薬剤投与を必要とする病状の処置に使用してもよい。
【0060】
図1は、角膜縁21で角膜12に接合する強膜11、虹彩13、および虹彩13と角膜12との間の前房20を含む、眼の解剖学的構造を図示する。眼はさらに、虹彩13の後にある水晶体26、毛様体16、およびシュレム管22を含む。眼はさらに、脈絡膜28と強膜11との間にある脈絡膜上腔24を画定するぶどう膜強膜流出路24Aも含む。眼はさらに、黄斑32を含む眼の後方領域30も含む。
【0061】
<全般的な事項>
薬物送達装置単独として機能するいくつかの実施形態では、インプラントは、制御された形で1種または複数種の薬剤を眼の前方領域に送達するように構成されるのに対し、他の実施形態では、インプラントは、制御された形で1種または複数種の薬剤を眼の後方領域に送達するように構成される。なお他の実施形態では、インプラントは、制御された形で薬剤を眼の前方領域および後方領域の両方に同時に送達するように構成される。なお他の実施形態では、インプラントの構成は、標的化する形で特定の眼内組織、たとえば、黄斑または毛様体に薬剤を放出するような構成である。ある種の実施形態では、インプラントは、薬剤を毛様体突起および/または後房に送達する。他のある種の実施形態では、インプラントは、薬剤を毛様体筋および/または腱(または線維帯)の1つまたは複数に送達する。いくつかの実施形態では、インプラントは、シュレム管、小柱網、強膜上静脈、水晶体皮質、水晶体上皮、水晶体嚢、強膜、強膜岬、脈絡膜、脈絡膜上腔、網膜動脈および静脈、視神経乳頭、網膜中心静脈、視神経、黄斑、窩、および/または網膜の1つまたは複数に薬剤を送達する。なお他の実施形態では、インプラントからの薬剤の送達は、眼房全体を対象とする。本明細書に記載の各実施形態は、これらの領域の1つまたは複数を標的としてもよく、さらに任意にシャント特徴要素(以下に記載)と組み合わせてもよいことが理解されよう。
【0062】
いくつかの実施形態では、インプラントは、アウターシェルを含む。いくつかの実施形態では、アウターシェルは、管状である、および/または細長いのに対し、他の実施形態では、他の形状(たとえば、円形、卵形、円筒形等)を使用する。ある種の実施形態では、アウターシェルは生分解性ではないが、他の実施形態では、シェルは任意に生分解性である。いくつかの実施形態では、シェルは、少なくとも第1の内部ルーメンを持つように形成される。ある種の実施形態では、第1の内部ルーメンを、装置の遠位端または遠位端近傍に配置する。他の実施形態では、ルーメンは、アウターシェルの全長に及んでもよい。いくつかの実施形態では、ルーメンを細分する。ある種の実施形態では、第1の内部ルーメンを、装置の近位端または近位端近傍に配置する。加えてシャントとしても機能するこうした実施形態では、シェルは、シャントとして機能する装置の部分内に1つまたは複数の別のルーメンを有していてもよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、薬剤(単数または複数)を、インプラントシェルの内部ルーメン(単数または複数)内に配置する。いくつかの実施形態では、薬剤を、ルーメンのより遠位部分内に優先的に配置する。いくつかの実施形態では、インプラントのルーメン(単数または複数)の最も遠位側15mmに、放出される薬剤(単数または複数)を収納する。いくつかの実施形態では、内部ルーメン(単数または複数)の最も遠位側10mm、たとえば1、2、3、4、5、6、7、8および9mmに、放出される薬剤を収納する。
【0064】
いくつかの実施形態では、薬剤は、シェルを通り眼内環境に拡散する。いくつかの実施形態では、アウターシェル材料は、内部ルーメン内に位置する薬剤(単数または複数)に対して透過性があるか、または半透性であり、したがって、薬剤の全溶出量の少なくともある程度の部分は、透過性が増大した任意の領域、厚さが減少した任意の領域、オリフィスの任意の領域等を通って起こるだけでなく、シェル自体を通っても起こる。いくつかの実施形態では、薬剤の溶出量の約1%〜約50%は、シェル自体を通り起こる。いくつかの実施形態では、薬剤の溶出量の約10%〜約40%または約20%〜約30%は、シェル自体を通り起こる。いくつかの実施形態では、薬剤の溶出量の約5%〜約15%、約10%〜約25%、約15%〜約30%、約20%〜約35%、約25%〜約40%、約30%〜約45%または約35%〜約50%は、シェル自体を通り起こる。ある種の実施形態では、薬剤(単数または複数)の全溶出量の2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%および14%などの約1%〜15%は、シェルを通り起こる。本明細書の「透過性の」という用語および関連する用語(たとえば「不透過性」または「半透過性」)は、1種または複数種の薬剤または治療薬および/または眼液に対して材料に、ある程度透過性がある(または透過性がない)という意味で使用する。「不透過性」という用語は、必ずしも材料を経由した薬剤の溶出または透過がないということを意味するとは限らない。むしろ、そうした溶出または他の透過は、無視できる程度またはごくわずか、たとえば全量の約2%未満および約1%未満などの、約3%未満である。
【0065】
いくつかの実施形態では、インプラントシェルは、薬剤が制御された形で標的眼組織に放出される、薬剤透過性が増大した1つまたは複数の領域を有する。
【0066】
いくつかの実施形態では、薬剤(単数または複数)を、インプラントの内部ルーメン(単数または複数)内に配置し、インプラントシェルは、眼液がその作用物質(単数または複数)と接触し、その結果、薬剤を放出できるように1つまたは複数のオリフィスを含む。いくつかの実施形態では、インプラントは、シェルの外表面にポリマーコーティングを含む。他の実施形態では、インプラントは、シェルの内表面にポリマーコーティングを含む。なお他の実施形態では、ポリマーコーティングは、内表面と外表面との両方にある。なお他の実施形態では、ポリマーコーティングは、生分解性である。いくつかの実施形態は、ポリマーコーティングの代わりにまたはそれに加えて非ポリマーコーティング(たとえばヘパリン)を含む。加えて、いくつかの実施形態では、1つもしくは複数のオリフィス、1つもしくは複数のオリフィスを覆う単層または複層、および厚さの減少した区域の組み合わせを用いて、インプラントからの薬剤の放出速度を調整する。
【0067】
いくつかの実施形態では、眼の前部への薬剤の溶出を防止する内部ルーメン内の近位障壁によって、薬剤(単数または複数)を含む内部ルーメンを、インプラントの近位部分と隔てる。いくつかの実施形態では、眼の前部への薬剤の溶出を防止するが、眼の前部からの眼液は薬剤(単数または複数)を含む内部ルーメン(単数または複数)に到達できる内部ルーメン内の一方向弁によって、薬剤(単数または複数)を含む内部ルーメン(単数または複数)を、インプラントの近位部分と隔てる。
【0068】
いくつかの実施形態では、インプラントは、インプラントに同一もしくは追加の治療薬剤、複数の薬剤、または1種もしくは複数種のアジュバント化合物を再装填/再充填できるように構成された近位部分をさらに含む。
【0069】
シャントを含むいくつかの実施形態では、シャント部分は、植え込み部位への植え込み後、流体を眼房から生理的流出スペースに排水して、眼内圧を低下させる。いくつかの実施形態では、インプラントは、インプラントの近位端または遠位端のどちらかが、薬物送達の標的組織近傍の植え込み部位にある場合、眼液がインプラントの流出ポートから遠隔領域および/または生理的流出経路に排水されるような寸法にする。
【0070】
たとえば、いくつかの実施形態では、インプラントは、植え込み後、インプラントの遠位端が黄斑に十分に近接しているため、インプラントにより送達される薬剤が黄斑に達するような寸法にする。シャント特徴要素を組み込んだいくつかの実施形態では、インプラントは、インプラントの遠位端が十分に黄斑近傍に位置する場合、インプラントの近位端が前眼房に延びるような寸法にする。それらの実施形態では、以下により詳細に記載するインプラントの流出ポートが、房水がぶどう膜強膜流出路または他の生理的流出経路に排水するように位置する。
【0071】
なお他の実施形態では、薬物送達とシャントとを組み合わせたインプラントは、薬物送達と、第1の生理学的部位から第2の部位(患者の生理学的部位でも、または外部でもよい)への流体の輸送とを同時に必要とする任意の生理学的位置に配置してもよい。いくつかの実施形態では、シャント特徴要素は、薬物送達機能と一緒に働いて、送達される作用物質の治療効果を増強する。他の実施形態では、送達される作用物質の治療効果に、流体貯留または腫脹など望ましくない副作用を伴うことがある。いくつかの実施形態では、シャント特徴要素の機能が、送達される作用物質の副作用を軽減する。本明細書に開示されるインプラントの寸法および特徴は、生理的流出経路との連通を依然として可能にしたまま、眼の様々な領域への標的送達および/または制御送達を達成するように調整してもよいことを理解されたい。
【0072】
以下により詳細に記載する送達器具を用いて、眼の所望の位置への薬物送達インプラントの送達および/または植え込みを促進してもよい。送達器具を用いて、継続的に植え込みの力を適用することにより、送達器具の遠位部分を用いて所定の位置までインプラントを軽くたたくことにより、あるいはこれらの方法を組み合わせることにより、インプラントを、虹彩の下方部分、黄斑近傍の脈絡膜上腔、または他の眼内領域など所望の位置に留置してもよい。送達器具の設計は、たとえば、切開に対する植え込みの角度およびインプラントの位置を考慮に入れてもよい。たとえば、いくつかの実施形態では、送達器具については、一定の幾何形状を有していても、形状を調節しても、または駆動させてもよい。いくつかの実施形態では、送達器具は、たとえば、色素および/または粘弾性流体の注射、解剖、またはガイドワイヤーとしての使用などの付属または補助機能を有していてもよい。本明細書で使用する場合、「切開」という用語は、通常の意味を持つものとし、さらに切断、開口、スリット、切り込み、穿刺または同種のものをいうこともある。
【0073】
ある種の実施形態では、薬物送達インプラントは、生体内分解性ポリマーまたは生体内分解性ポリマーと少なくとも1種の他の作用物質と配合してもしなくてもよい1種または複数種の薬剤を含んでもよい。なお他の実施形態では、薬物送達インプラントを用いて複数の薬剤を連続的に送達してもよい。加えて、ある種の実施形態は、個別に対応した薬剤溶出プロファイルを得るため、異なるアウターシェル材料、および/または様々な透過性材料を用いて構築する。ある種の実施形態については、個別に対応した薬剤溶出プロファイルを得るため、インプラントシェルのオリフィスの数、寸法および/または位置を変えて構築する。ある種の実施形態については、個別に対応した薬剤溶出プロファイルを得るため、インプラント上のポリマーコーティングおよびコーティングの位置を変えて構築する。いくつかの実施形態は、一定の速度で薬剤を溶出し、他の実施形態は、0次放出プロファイルを持つ。なお他の実施形態は、可変性の溶出プロファイルを持つ。なお他の実施形態については、溶出を所定の期間完全にまたはほぼ完全に停止し(たとえば、「休薬期間」)、その後同一または異なる溶出速度または溶出濃度で溶出を再開するように設計する。いくつかのそうした実施形態は、休薬期間の前後で同一の治療薬を溶出するのに対して、他の実施形態は、休薬期間の前後で異なる治療薬を溶出する。
【0074】
<薬物送達インプラント>
本開示は、眼科用薬物送達インプラントであって、植え込み部位に植え込み後、眼内の所望の標的領域への1種または複数種の薬剤の放出を制御し、放出の制御が長期間にわたる、薬物送達インプラントに関する。
図2〜20に、インプラントの種々の実施形態を示し、本明細書に言及する。
【0075】
図2は、本明細書の説明によるインプラントの一実施形態の断面図を図示する。インプラントは、1種または複数種の生体適合性材料で作られたアウターシェル54を含む。インプラントのアウターシェルについては、押出、絞り成形、射出成形、焼結、マイクロマシニング、レーザー加工、および/もしくは放電加工、またはこれらの任意の組み合わせにより製造する。当該技術分野において公知の他の好適な製造および組立方法を使用してもよい。いくつかの実施形態では、アウターシェルの形状は管状であり、少なくとも1つの内部ルーメン58を含む。いくつかの実施形態では、内部ルーメンは、アウターシェルおよび間仕切り64により画定される。いくつかの実施形態では、間仕切りは不透過性であるのに対して、他の実施形態では、間仕切りは、透過性または半透性である。いくつかの実施形態では、間仕切りにより、インプラントに新規用量の薬剤(単数または複数)を再装填することが可能になる。いくつかの他の実施形態では、他のシェル形状を使用し、それでもなお少なくとも1つの内部ルーメンを作る。いくつかの実施形態では、インプラントのアウターシェル54を、インプラントが遠位部分50および近位部分52を有するように製造する。いくつかの実施形態では、アウターシェル54の厚さは実質的に均一である。他の実施形態では、シェルのいくつかの領域で厚さが異なる。眼内の植え込みの所望の部位に応じて、インプラントの構造の完全性を維持するために必要なところに、アウターシェル54のより厚い領域を配置する。
【0076】
いくつかの実施形態では、インプラントを可撓性材料で作る。他の実施形態では、インプラントの一部を可撓性材料から作る一方、インプラントの別の部分を硬質材料から作る。いくつかの実施形態では、インプラントは、1つまたは複数の屈曲部(たとえば、ヒンジ)を含む。いくつかの実施形態では、薬物送達インプラントは予め屈曲されていても、送達装置のまっすぐなルーメン内に入れるのに十分な可撓性がある。
【0077】
他の実施形態では、インプラントの少なくとも一部(たとえば、内部柱または固定具)を形状記憶が可能な材料で作る。形状記憶が可能な材料は、圧縮されてもよく、放出時に、軸方向にもしくは半径方向に、または軸方向と半径方向と両方に膨張して特定の形状をとってもよい。いくつかの実施形態では、インプラントの少なくとも一部は、予め形成した形状を有する。他の実施形態では、インプラントの少なくとも一部を超弾性材料で作る。いくつかの実施形態では、インプラントの少なくとも一部はニチノールからなる。他の実施形態では、インプラントの少なくとも一部を変形可能材料で作る。
【0078】
いくつかの実施形態では、インプラントのアウターシェルの表面の大部分は、眼液に対して実質的に不透過性である。いくつかの実施形態では、インプラントのアウターシェルの表面の大部分はさらに、インプラントの内部ルーメン(以下で検討)内に収納された薬剤62に対して実質的に不透過性である。他の実施形態では、アウターシェルは、薬剤および/または眼液に対して半透性であり、アウターシェル内またはアウターシェル上に配置されたコーティングもしくは層または不透過性の(または透過性の低い)材料によって、インプラントの一部の領域の透過性を高くしたり、または低くしたりする。
【0079】
いくつかの実施形態では、アウターシェルはまた、1つまたは複数の薬剤放出の領域56を有する。いくつかの実施形態では、薬剤放出の領域は、アウターシェルの隣接する周囲の厚さと比較して厚さが減少している。いくつかの実施形態では、アブレーション、延伸、エッチング、研磨、成形、およびアウターシェルから材料を除去する他の類似の技法の1つまたは複数により、厚さが減少した領域を形成する。他の実施形態では、薬剤放出の領域を、周囲のアウターシェルと比較して厚さが異なる(たとえば、いくつかの実施形態はより薄く、他の実施形態はより厚い)が、薬剤62および眼液の1つまたは複数に対して透過性を増大させて製造する。なお他の実施形態では、アウターシェルを、厚さが均一または実質的に均一であるが、ルーメン内の眼液および薬剤に対する透過性が異なる材料を用いて構築する。したがって、これらの実施形態は、インプラントからの薬剤放出の画定された領域を有する。
【0080】
薬剤放出の領域は、眼の特定の標的組織への十分な薬剤の送達を達成するのに必要であれば、どのような形状であってもよい。たとえば、
図2の領域56は、画定されたより薄い材料の区域を示す。
図3Aは、他の実施形態で使用する薬剤放出の領域、すなわち厚さが減少した螺旋形状56を図示する。いくつかの実施形態では、螺旋は、実質的にインプラントの遠位端に設置するのに対し、他の実施形態では、螺旋は内部ルーメンの長さに及んでもよい。なお他の実施形態では、薬剤放出の螺旋領域は、インプラントの近位部分にある。いくつかの実施形態では、螺旋は、インプラントシェルの内面にある(すなわち、シェルに螺旋状の溝を設ける;
図3Aを参照)。他の実施形態では、螺旋は、シェルの外面にある(
図3Bを参照)。他の実施形態では、薬剤放出の領域を、インプラントシェルの周囲の円周方向の帯状とする。
【0081】
図4は、薬剤放出の領域が、インプラントの最も遠位側部分にある別の実施形態を図示する。いくつかのそうした実施形態は、眼のより後方領域を処置する際に使用する。その代わりに、または
図4の実施形態と共に、インプラントの近位部分は、最も近位側部分またはその近傍に薬剤放出の領域を有していてもよい。他の実施形態では、薬剤放出の領域を、インプラントの遠位部分および/または近位部分に沿って均一にまたは実質的に均一に配分する。いくつかの実施形態では、薬剤放出の領域は、インプラントの遠位端または遠位端近傍にある。ある種の実施形態では、インプラント(薬剤放出の領域に基づき(厚さ/透過性、オリフィス、層等に基づき)を、植え込み後に処置される標的組織に応じてインプラントから異なる薬剤溶出のパターンが得られるように戦略的に設置する。いくつかの実施形態では、薬剤放出の領域を、インプラントの遠位端から優先的に薬剤を溶出するように構成する。そうしたいくつかの実施形態では、薬剤放出の領域を、植え込み手順の終了後、眼のより後方領域の標的組織またはその近傍に戦略的に配置する。以下でより詳細に検討するように、いくつかの実施形態では、薬剤放出の領域は、インプラントの内部ルーメンとインプラントを移植する環境との間を連通させる1つ(または複数)のオリフィスを含む。さらに、ある種の実施形態では、薬剤放出プロファイルを調整するため、薬剤放出の領域(上記のような)の組み合わせを、1つまたは複数のオリフィスおよび/またはコーティング(下記)と組み合わせてもよいことも本明細書の開示から理解されたい。
【0082】
いくつかの実施形態では、ルーメンは、インプラントの近位部分および遠位部分の両方に存在する(
図5を参照;それぞれ58aおよび58)。そうした実施形態では、インプラントの近位部分52および遠位部分50の両方は、1つまたは複数の薬剤放出の領域を有する。そうしたいくつかの実施形態では、インプラントの近位部分および遠位部分は、ルーメンに2種類の薬剤62a(近位)および62(遠位)を収納する。
図5を参照されたい。他の実施形態では、インプラントの近位部分および遠位部分は、同一の薬剤を収納しても、あるいは異なる濃度でまたは別の賦形剤と組み合わせて同一の薬剤を収納してもよい。薬剤放出の領域の設置は、インプラントの近位部分内、遠位部分内、または両方の部分にかかわらず、ある種の眼内組織を特異的に標的化するのに有用であることが理解されよう。たとえば、いくつかの実施形態では、インプラントの最も遠位部分に薬剤放出の領域を設置すると、薬剤放出が黄斑などの特定の眼内領域を特異的に標的化するのに有用である。他の実施形態では、上記で論じたまたは当該技術分野において公知の毛様体、網膜、眼の血管系、または眼の標的のいずれかなど他の標的組織に薬剤を特異的に放出するように、薬剤放出の領域を設置する。いくつかの実施形態では、特定の薬剤放出の領域を設置することによって組織を特異的に標的化して、治療効果の達成に必要とされる薬剤の量を減少させる。いくつかの実施形態では、特定の薬剤放出の領域を設置することによって組織を特異的に標的化して、溶出される薬剤の非特異的副作用を抑制する。いくつかの実施形態では、特定の薬剤放出の領域を設置することによって組織を特異的に標的化して、インプラントから薬物送達の可能な全体的な期間を延長させる。
【0083】
薬剤放出の領域は、インプラントのアウターシェルにおけるその形状および位置(単数または複数)にかかわらず、画定された既知の区域である。画定された区域は、インプラントからの薬剤溶出の速度を算出するのに役立つ(以下に記載)。いくつかの実施形態では、いくつかの画定された区域のアウターシェルの厚さを減少させることにより、および/またはアウターシェルの特定の領域の透過性を制御することにより、薬剤放出の領域を形成する。
図6A〜Iは、薬剤放出の領域におけるある種の実施形態を表す。
図6AおよびBは、アウターシェル材料のより厚い54部分、およびより薄い54a部分が重なる領域を図示し、結果として、材料のより薄い領域である、薬剤放出の領域56が効率的に形成される。
図6Cおよび6Dは、アウターシェル材料のより厚い54部分とより薄い54a部分の結合を図示する。結果得られる、材料のより薄い領域が薬剤放出の領域56である。より厚い領域とより薄い領域との結合は、たとえば、突合せ溶接、接着、もしくは生体適合性接着剤を用いた他の方法での付着、様々な厚さを持つ単一ユニットとしてのシェルの流し込み成形、熱溶接、熱融合、圧縮融合、または熱と圧力との組み合わせによる領域の融合により達成すればよいことが理解されよう。さらに、当該技術分野において公知の他の好適な結合方法を使用してもよい。
【0084】
図6Eは、アウターシェル材料のより厚いスリーブが、より薄いシェル材料と少なくとも部分的に重なっているものを図示する。より薄く、重なっていない区域56が薬剤放出の領域である。材料の重なりの度合いは、重なっていないシェルの領域が、所望の溶出プロファイルにとって望ましい区域になるように制御可能であることが理解されよう。
【0085】
図6Fは、アブレーション、延伸、エッチング、研磨、成形、およびアウターシェルから材料を除去する他の類似の技法の1つまたは複数により形成された薄い区域56を持つアウターシェル材料を図示する。
【0086】
図6Gは、第1の厚さ54を持つチューブを、第2の厚さ54aを持つ第2のチューブの中に入れる「チューブ内チューブ」設計を図示する。第1のチューブには、シェルに1つまたは複数の切れ目または間隙があり、表面を覆われたより薄いシェル54aがその切れ目または間隙を覆い、それにより薬剤放出の領域が形成される。
図6Gに示す実施形態、および他のある種の実施形態では、第1の厚さ54を持つシェルの切れ目または間隙は、外部環境と直接連通していない。
【0087】
図6Hは、薬剤放出の領域がアウターシェル54と、不透過性マトリックス内に分散した連通のための粒子物質57を含む実質的に不透過性のマトリックス材料55との両方に接する実施形態を図示する。いくつかの実施形態では、連通のための粒子物質は、インプラントの製造中に不透過性マトリックス材料と配合する。次いでインプラントを溶媒と接触させてもよい。溶媒はその後、連通のための粒子物質を介して移動し、インプラントのルーメン内に収納された薬剤に達する。好ましい溶媒として、水、食塩水、もしくは眼液、または不透過性マトリックスの構造または透過性特性に影響を与えないと考えられる生体適合性溶媒が挙げられる。
【0088】
ルーメン中の薬剤は、溶媒に溶解すると、連通のための粒子物質を介してインプラントのルーメンから眼の標的組織に移動する。いくつかの実施形態では、眼に植え込む前にインプラントを溶媒に接触させて、植え込み中または植え込み後すぐに薬剤が即時放出しやすいようにする。他の実施形態では、インプラントを眼液のみに接触させて、眼液が連通のための粒子物質を介してインプラントのルーメンに移動する間、短期間インプラントからの薬剤放出がないようにする。
【0089】
そうしたいくつかの実施形態では、連通のための粒子物質は、ヒドロゲル粒子、たとえば、ポリアクリルアミド、架橋ポリマー、ポリ2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)ポリエチレンオキシド、ポリAMPSおよびポリビニルピロリドン、または天然由来のヒドロゲル、たとえばアガロース、メチルセルロース、ヒアルロナンを含む。当該技術分野において公知の他のヒドロゲルを使用してもよい。いくつかの実施形態では、不透過性材料はシリコーンである。他の実施形態では、不透過性材料は、テフロン(登録商標)、可撓性グラファイト、シリコーンゴム、ガラス繊維強化材を含むシリコーンゴム、neoprene(登録商標)、ガラス繊維、布入りゴム、ビニル、ニトリル、ブチル、天然ゴム状物質、ウレタン、炭素繊維、フルオロエラストマー、およびまたは、当該技術分野において公知の他のそうした不透過性または実質的に不透過性の材料でもよい。本明細書に開示された本実施形態および他の実施形態では、「実質的に不透過性の」または「不透過性の」のような用語は、目的の薬剤に対する材料の相対的な不透過性に関するものと解釈すべきである。これは、特定の薬剤に対する材料の透過性が、材料の特徴(たとえば結晶化度、親水性、疎水性、含水量、空隙率)、さらに薬剤の特徴によって異なるためである。
【0090】
図6Iは、薬剤放出の領域がアウターシェル54と、不透過性マトリックス内に分散した連通のための粒子物質57を含むシリコーンなど不透過性マトリックス材料55との両方に接するもう1つの実施形態を図示する。他の実施形態では、不透過性材料は、テフロン(登録商標)、可撓性グラファイト、ポリジメチルシロキサン、および他のシリコーンエラストマー、neoprene(登録商標)、ガラス繊維、布入りゴム、ビニル、ニトリル、ブチル、天然ゴム状物質、ウレタン、炭素繊維、フルオロエラストマー、およびまたは、当該技術分野において公知の他のそうした不透過性または実質的に不透過性の材料であってもよい。いくつかの実施形態では、連通のための粒子物質は、インプラントの製造中に不透過性マトリックス材料と配合する。得られるマトリックスは、連通のための粒子物質を溶解させる溶媒に加えられるまで、不透過性である。いくつかの実施形態では、連通のための粒子は、塩結晶(たとえば、重炭酸ナトリウム結晶または塩化ナトリウム結晶)である。他の実施形態では、連通のための粒子物質として他の可溶性および生体適合性材料を使用してもよい。好ましい連通のための粒子物質は、水、食塩水、眼液、または不透過性マトリックスの構造または透過性特性に影響を与えないと考えられる別の生体適合性溶媒などの溶媒に可溶である。ある種の実施形態、連通のための粒子物質と配合する不透過性マトリックス材料は、インプラントのアウターシェルを形成するのに十分な構造の完全性を有する(すなわち、追加のシェル材料が必要ない)ことが理解されよう。
【0091】
ある種の実施形態では、植え込みの前に連通のための粒子を溶媒で抽出する。こうして連通のための粒子を抽出すると、不透過性材料内に連通のための通路が形成される。不透過性材料中の細孔(または他の通路)により、眼液が粒子に入り、粒子がインプラントのルーメンにこの流体を連通することができる。同様に、粒子は、インプラントのルーメンから標的眼組織に薬剤を連通する。
【0092】
図6Hおよび6Iに示したような実施形態は、伝統的な細孔またはオリフィス(以下により詳細に記載する)と異なり、連通のための粒子を介して、または粒子の溶解後に得られる不透過性マトリックスの空間を介して、薬剤をインプラントのルーメンから眼組織に連通する。したがって、これらの実施形態は、インプラントのルーメンから眼への間接的な通路(すなわち通路の迂回経路または蛇行路)を形成する。このため、粒子材料、粒子材料が流体を連通する速度、または溶媒中の溶解速度を意図的に設計することにより、薬剤放出の速度およびカイネティクスをさらに制御することができる。
【0093】
いくつかの実施形態では、薬剤放出の領域は、1つまたは複数のオリフィスを含む。ある種の実施形態は、想定される治療に適した薬剤放出プロファイルの制御および標的化を達成するために、オリフィスではない薬剤放出の領域を単独で、または1つもしくは複数のオリフィスと組み合わせて利用することを理解されたい。
図7は、本明細書の説明によるインプラントの一実施形態の断面図を示す。上記で論じたように、インプラントは、遠位部分50、近位部分52、1種または複数種の生体適合性材料で作られたアウターシェル54、およびシェルを通る1つまたは複数のオリフィス56aを含む。いくつかの実施形態では、インプラントのアウターシェルは、眼液に対して実質的に不透過性である。いくつかの実施形態では、インプラントは、インプラントの内部ルーメン58内に薬剤62を収納する。
【0094】
以下でより詳細に検討するように、いくつかの実施形態では、薬剤は、特定の眼の病状に対して治療上有効な薬剤のみならず、ある形態の治療薬を調製するのに必要であり、薬剤との適合性がある任意の他の化合物も含む。いくつかの実施形態では、治療薬は、薬剤を含むペレットの形態である。治療薬のいくつかの実施形態は、ポリマー製剤と配合した薬剤を含む。ある種の実施形態では、ポリマー製剤は、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)もしくはPLGAコポリマー、または他の生分解性または生体内分解性ポリマーを含む。
図7では薬剤が、ルーメン58内に入れられたものとして示されているが、他のいくつかの図では、そうした実施形態の他の特徴を明確にさせるため、省略されている。しかしながら、本明細書のすべての実施形態は任意に1種または複数種の薬剤を含むことを理解すべきである。
【0095】
いくつかの実施形態では、インプラントは、下記のようにインプラントの中または上の様々な位置に配置してもよいコーティング60をさらに含む。いくつかの実施形態では、コーティング60は、ポリマーコーティングである。
図8は、コーティング60がインプラントの内側に配置されているが、ルーメン内に収納された治療薬を包むインプラントを図示しているのに対し、
図9は、シェル54の外面上にあるコーティング60を図示する。他のいくつかの実施形態は、ポリマーコーティングの代わりにまたはそれに加えて非ポリマーコーティングを用いたインプラントを含んでもよい。コーティングは、任意に生分解性である。他のいくつかの実施形態は、インプラント全体が経時的に分解するように、もっぱら生分解性材料で作られたインプラントを含んでもよい。いくつかの実施形態では、インプラントの上全体にコーティングを配置する(たとえば、インプラントを包む)のに対し、他の実施形態では、インプラントの一部のみを覆う。同様に、コーティングをインプラントの内側に配置するいくつかの実施形態では、コーティングは、ルーメンの内側表面全体を覆うのに対して、他の実施形態では、内側表面の一部のみを覆う。本明細書に開示されたいくつかの実施形態によるインプラントは、上述の薬剤放出の領域に加えて、薬剤放出の特性を制御するため、薬剤放出の領域を1つまたは複数のコーティングと組み合わせることを理解されたい。
【0096】
いくつかの実施形態では、アウターシェル54の厚さを横切る1つまたは複数のオリフィス56aが、インプラントの外側の環境とインプラントの内部ルーメン58との間の連通通路となる(
図7〜9)。1つまたは複数のオリフィスは、個々のインプラントの様々なシェルに穴を開けることによって、または当該技術分野において公知の任意の他の手法によって、インプラントシェルを通過して形成する。オリフィスは、球状、立方体、楕円体および同種のものなど、どのような形状でもよい。個々のインプラントに作製されるオリフィスの数、位置、大きさおよび形状により、オリフィスとインプラントとの表面積の比率が決定される。この比率は、下記のようにインプラントの特定の実施形態により送達される薬剤の所望の放出プロファイルに応じて、異なってもよい。いくつかの実施形態では、オリフィスとインプラントとの表面積の比率は、約1:100よりも大きい。いくつかの実施形態では、オリフィスとインプラントとの表面積の比率は、約1:10〜約1:50、約1:30〜約1:90、約1:20〜約1:70、約1:30〜約1:60、約1:40〜約1:50までの幅がある。いくつかの実施形態では、オリフィスとインプラントとの表面積の比率は、約1:70、1:80および1:90などの約1:60〜約1:100までの幅がある。
【0097】
他の実施形態では、アウターシェルは、
図10Aおよび10Bに示すように、インプラントの遠位先端に1つまたは複数のオリフィス(単数または複数)56bを含んでもよい。オリフィス(単数または複数)の形状および大きさは、所望の溶出プロファイルに基づき選択すればよい。なお他の実施形態は、遠位オリフィスと、アウターシェルのより近位に配置した複数のオリフィスとの組み合わせを含む。追加の実施形態は、アウターシェルの遠位オリフィス、近位オリフィス、および/または、上記のような薬剤放出の領域(および任意に1つまたは複数のコーティング)の組み合わせを含む。追加の実施形態は、閉鎖遠位端を有する。そうした実施形態では、薬剤放出の領域をインプラントの長軸に沿って(シェルの厚さ/透過性、オリフィス、コーティング、薬剤の配置等に基づき)配置する。そうした構成は、本明細書に開示される植え込み手順のいくつかの実施形態において生じる先進遠位端により起こる組織損傷の量を減らすのに有利である。
【0098】
いくつかの実施形態では、遠位オリフィスは、挿入/植え込み中に1つまたは複数のオリフィスが組織で塞がれた場合に、インプラントからの薬剤溶出を維持する複数のオリフィス(単数または複数)56bを含む生分解性または生体内分解性プラグ61を含む。他の実施形態では、オリフィス(単数または複数)は、透過性もしくは半透性膜、多孔性フィルムもしくはシート、または同種のものを含んでもよい。そうしたいくつかの実施形態では、透過性もしくは半透性膜、フィルムまたはシートは、シェルの外側にあってオリフィスを覆っても、シェルの内側にあってオリフィスを覆っても、あるいはその両方にあってもよい。インプラントからの薬剤の放出速度は、材料の透過性によりある程度決定される。これは、以下により詳細に記載する。そうした膜、シートまたはフィルムは、アウターシェルのオリフィスが細長い実施形態に有用である。
図10Bの矢印は、インプラントからの薬剤の流れを図示する。
【0099】
いくつかの実施形態では、ルーメンの内部内の追加構造(単数または複数)が、インプラントからの薬剤の溶出をある程度制御する。いくつかの実施形態では、近位障壁64aを薬剤62に対して近位に配置する(
図7および10C)。さらに、インプラントの近位領域52にある近位流入ルーメン68と連通した流出開口部66を含む、任意のシャント特徴要素を含ませてもよい。
図10Cは、上記で論じた薬剤を包むのに使用してもよい単層もしくは複層の透過性または半透性材料に加えて、ある種の実施形態で薬剤62と様々なオリフィス56aおよび56bとの間にある内部プラグ210を図示する。そうした実施形態では、内部プラグは、薬剤を完全に取り囲む必要がない。いくつかの実施形態では、内部プラグ210の材料は、シェル54の材料と異なるのに対して、いくつかの実施形態では、内部プラグ210の材料は、シェル54の材料と同一の材料である。内部プラグに好適な材料として、ポリアクリルアミド、ポリメチルメタクリレートまたはHEMA(hydroxyethyl methacrylate:メタクリル酸ヒドロキシエチル)などのアガロースまたはヒドロゲルがあるが、これに限定されるものではない。ある種の実施形態では、インプラントのシェルまたは他の部分に使用される、本明細書に開示された他の任意の材料も内部プラグに好適である。
【0100】
材料が同じであるそうした実施形態では、210の構築に使用する材料の物理的特徴は任意に、シェル54と異なる。たとえば、210の材料の大きさ、密度、空隙率または透過性は、シェル54と異なってもよい。いくつかの実施形態では、たとえば分注した液体、粉体またはゲルを現場で重合、成形または凝固することにより、内部プラグを所定の位置に(すなわちインプラントの内部ルーメン内に)形成する。他の実施形態では、シェルの外部に内部プラグを予め形成し、植え込みの前にシェル内に配置する。そうした実施形態では、個々の薬剤、患者、インプラント、または処置対象の疾患に基づき、予め形成した内部プラグの選択を最適化できるという点で、個別に対応したインプラントが構築される。いくつかの実施形態では、内部プラグは、生分解性または生体内分解性であるのに対して、いくつかの他の実施形態では、内部プラグは、耐久性がある(たとえば、非生分解性または非生体内分解性)。
【0101】
いくつかの実施形態では、内部プラグは、シェルの内壁に緊密に装着しても、または結合してもよい。そうした実施形態では、内部プラグは、好ましくは薬剤に対して透過性であり、それにより薬剤を、プラグを通し、オリフィスを介して標的組織に通過させることができる。いくつかの実施形態では、内部プラグは、体液に対しても透過性であるため、流体がインプラントの外側から薬剤に到達することができる。この場合、装置からの薬剤の全体的な放出速度については、以下に限定されるものではないが、オリフィスの面積および容積、任意の薬剤放出の領域の表面積、薬剤とオリフィスとの両方および/または薬剤放出の領域に対する内部プラグの大きさおよび位置、ならびに薬剤および体液に対する内部プラグの透過性など、インプラントの要素のいくつかの態様の物理的特徴により制御してもよい。さらに、いくつかの実施形態では、内部プラグは、薬剤およびオリフィスおよび/または薬剤放出の領域の間の路の長さを長くし、それにより薬剤の放出速度の追加の制御点となる。
【0102】
いくつかの他の実施形態では、内部プラグ210は、シェルの内部ルーメンにより緩く装着してもよく、それにより、プラグ周囲の薬剤の流れまたは輸送を可能にしてもよい。
図10Dを参照されたい。なお他の実施形態では、内部プラグは、2つ以上の断片またはフラグメントを含んでもよい。
図10Eを参照されたい。そうした装着がより緩いか、またはプラグが断片化された実施形態では、薬剤は、内部プラグとシェルの内部壁との間の間隙を通過することにより、インプラントから溶出することができる。薬剤はさらに、内部プラグの断片間またはフラグメント間の間隙を通過することにより、インプラントから溶出することもできる。薬剤はさらに、透過性の内側プラグを通過することにより、インプラントから溶出することもできる。同様に、体液も、これらまたは他の経路のいずれかによりインプラントの外側部分からインプラントに入り、薬剤まで到達することができる。薬剤の溶出は、これらの通路の経路または透過性のいずれかの組み合わせの結果として起こり得ることを理解されたい。
【0103】
いくつかの実施形態では、インプラントシェル54の内部ルーメン58からの薬剤62の放出の障壁となる1つまたは複数の溶出膜100で、オリフィス56a(全部または一部)を覆う。
図10Fを参照されたい。いくつかの実施形態では、溶出膜は、治療薬、体液、またはその両方に対して透過性がある。いくつかの実施形態では、膜はエラストマーであり、シリコーンを含む。他の実施形態では、生分解性または生体内分解性材料で膜の全部または一部を被覆して、体液の流入、またはインプラントからの治療薬の放出の開始を制御できるようにする。ある種の実施形態では、有利である他の作用物質、たとえば抗線維化剤、血管拡張剤、抗血栓薬、または透過性制御剤を膜に含浸させる。さらに、ある種の実施形態では、膜は、
図10Gの1つまたは複数の層100a、100bおよび100cを含み、たとえば、特有の透過性を持たせることができる。
【0104】
上述の内部プラグおよび薬剤放出の領域と同様に、溶出膜の特性が、少なくともある程度インプラントからの治療薬の放出速度を決定する。このため、インプラントからの薬剤の全体的な放出速度は、以下に限定されるものではないが、オリフィスの面積および容積、任意の薬剤放出の領域の表面積、薬剤とオリフィスとの両方および/または薬剤放出の領域に対する任意の内部プラグの大きさおよび位置、ならびに薬剤および体液に対する、任意のオリフィスの表面を覆う任意の層または薬剤放出の領域の透過性など、インプラントの物理的特徴により制御してもよい。
【0105】
いくつかの実施形態では、インプラントの内部ルーメン内に縦につなげて、単一または複数の薬剤(単数または複数)の複数のペレット62を配置する(
図11)。そうしたいくつかの実施形態では、インプラントシェルのより遠位の位置にオリフィス56a(または薬剤放出の領域)を配置する。他のそうした実施形態では、標的となる眼組織に応じて、インプラントシェルのより近位の位置にオリフィス56a(または薬剤放出の領域)を配置する。いくつかの他の実施形態では、治療薬を同一のインプラント内側ルーメン内に含ませる際に、相互に密封するため間仕切り64を利用する。いくつかの実施形態では、間仕切り64は、所定の速度で生体内で分解する。いくつかの実施形態では、望ましくない方向への薬剤溶出を防止するため、薬剤ペレットに間仕切り64を組み込み、インプラントのシェル54の内法寸法に対するシールを設ける。シャントをさらに含むある種の実施形態では、以下により詳細に記載するシャントの出口穴に対して遠位に、間仕切りを配置してもよい。
【0106】
ある種の代替の実施形態では、内部ルーメンを取り囲むアウターシェルの一部または実質的に全長に沿って、オリフィスまたは薬剤放出の領域を配置してもよく、送達する薬剤が1つまたは複数の間仕切りで隔てられても構わない。
【0107】
インプラントのいくつかの実施形態は、薬物送達装置としての役割に加えて、シャントをさらに含んでもよい。「シャント」という用語は、本明細書で使用する場合、広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味を持ち(さらに特殊なまたは個別の意味に限定されるものではなく)、多くの場合望ましくない第1の位置から、1つまたは複数の他の位置に流体を輸送するための1つまたは複数の流体通路を画定するインプラントの部分をいうが、これに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、シャントを、一般に
図12に示すように、房水を前眼房から流出経路に排水して眼内圧を低下させる流体流路となるように構成してもよい。他の実施形態では、房水を流出経路に排水する流体流路となるように、シャントを構成してもよい。なお他の実施形態は、眼液または間質液を眼および眼の周囲の区域から遠隔位置に排水するように構成してもよい。薬物送達とシャントとを組み合わせたなお他のインプラントについては、生理的流体を第1の生理学的部位から第2の部位(患者の生理学的部位でも、または外部でもよい)へ排水するように構成してもよい。
【0108】
インプラントのシャント部分には、流入部分68および1つまたは複数の流出部分66があってもよい。上記のように、流出部分は、インプラントの近位端52または近位端52近傍に配置してもよい。図示していないが、いくつかの実施形態では、シャント流出部分をインプラントの遠位端50または遠位端50近傍に配置し、その流入部分がインプラント上の異なる位置(単数または複数)にあってもよい。いくつかの実施形態では、インプラントを展開する場合、流入部分を、前眼房に保持されるような大きさにして構成してもよく、流出部分を、毛様体上腔または脈絡膜上腔に保持されるような大きさにして構成してもよい。いくつかの実施形態では、流出部分を、ぶどう膜強膜流出路の毛様体上の領域、脈絡膜上腔、眼の他の部分、または流体注入に適した他の生理的スペース内に保持されるような大きさにして構成してもよい。
【0109】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのルーメンは、インプラントのシャント部分を通過する。いくつかの実施形態では、インプラントのシャント部分を通して流体を導く働きをする少なくとも1つのルーメンがある。ある種の実施形態では、各ルーメンは、ルーメン軸に沿って流入端から流出端に延在する。いくつかの実施形態では、ルーメンは、実質的にシャントの縦方向の中心を通過して延在する。他の実施形態では、ルーメンは、シャントの縦方向の中心からずれていてもよい。
【0110】
装置の近位部分にシャントをさらに含むインプラントでは、インプラントの第1の(最も近位の)流出オリフィスを被検体の前房から1〜10mmに配置する。装置の近位部分にシャントをさらに含むいくつかの実施形態では、インプラントの第1の(最も近位の)流出オリフィスを好ましくは被検体の前房から2〜5mmに配置する。追加の流出オリフィスは、より遠位の位置に、薬剤または治療薬を収容する内部ルーメンの始点まで、あるいはそれを超えて配置してもよい。
【0111】
いくつかの実施形態では、アウターシェル内に長軸方向に配置した1つまたは複数の仕切りを用いてインプラントを形成して、シェルの内部ルーメン内に複数の追加サブルーメンを設ける。仕切り(単数または複数)は、インプラント内に装着して2つ以上のサブルーメンを形成するのであれば、どのような形状(たとえば矩形、円筒形)または大きさであってもよく、1種または複数種のポリマー、コポリマー、金属、またはこれらの組み合わせなど、アウターシェルと同一の材料で作っても、または異なる材料で作ってもよい。一実施形態では、仕切りは、生分解性または生体内分解性材料から作る。複数のサブルーメンは、相互にどのような構成であってもよい。いくつかの実施形態では、単一の仕切りを用いてインプラントシェル内に2つのサブルーメンを形成してもよい。たとえば、
図13Aを参照されたい。いくつかの実施形態では、2つのサブルーメンは寸法が等しい。他の実施形態では、仕切りを用いて寸法の不均等なサブルーメンを設けてもよい。なお他の実施形態では、複数の仕切りを用いてシェルの内部内に2つ以上のサブルーメンを設けてもよい。いくつかの実施形態では、ルーメンは寸法が等しくてもよい。たとえば
図13Bを参照されたい。あるいは、仕切りを、サブルーメンの寸法が均等でないように配置してもよい。
【0112】
いくつかの実施形態では、仕切りにより形成されるサブルーメンの1つまたは複数は、インプラントの全長を横切ってもよい。いくつかの実施形態では、横もしくは斜めに配置された仕切りまたは間仕切りにより、サブルーメンの1つまたは複数を画定しても、あるいは遮断してもよい。遮断されるサブルーメンは、薬剤の特定の用量または濃度に対応するのに必要であれば、どのような寸法で形成してもよい。
【0113】
他の実施形態では、
図13Cに示すように、相互に入れ子になって「チューブ内チューブ」設計を形成する、眼液に対して実質的に不透過性である1つまたは複数の管状シェル構造体54の組み合わせとして、インプラントを形成する。代替の実施形態では、円筒形仕切りを用いてインプラントの内部を入れ子状態の「チューブ」に間仕切る。そうした実施形態では、任意にポリマーベースであってもよいコーティング60が、管状インプラント中または上にあってもよい。そうした実施形態では、少なくとも第1の内部ルーメン58、および眼液流れルーメン70を形成する。いくつかの実施形態では、眼液流れルーメン70は、中心にある。他の実施形態では、眼液流れルーメン70は、インプラントシェルのより近くにあるように偏倚していてもよい。なお他の実施形態では、追加のシェル構造体を加えて、インプラント内に別のルーメンを設ける。薬剤62は、前記設けたルーメンの1つまたは複数内に配置してもよい。眼液を治療薬に接触させる必要に応じて、オリフィスまたは薬剤放出の領域を配置してもよい。ある種の実施形態では、アウターシェルの外側表面にコーティングを配置する。ある種の実施形態では、単一のインプラントに2つ以上の生分解性コーティングを使用して、各コーティングがインプラントの別の部分または重なっている部分を覆う。生分解性コーティングを利用するそうした実施形態では、各コーティングは任意に、眼液における生分解速度が特有である。
【0114】
いくつかの実施形態では、インプラントに芯82を加える(
図14)。芯は、薬剤放出の領域のオリフィス単独で達成すると考えられるよりも、眼液を装置の外側から内部ルーメンにより迅速に輸送するのに役立つのであれば、どのような形態をとってもよい。
図14は、オリフィスを通過する芯を図示しているが、薬剤放出の領域しか持たないインプラントも、芯を利用することができることを理解されたい。そうした実施形態では、インプラントの製造中にアウターシェルを通過するように芯を配置して、オリフィスを設けなくてもよい。いくつかの実施形態では、オリフィス中に、またはアウターシェルを通して繊維を配置して、芯のそうした部分が、インプラントのルーメン内の薬剤に隣接するようにする。他の実施形態では、芯の周囲に薬剤を形成して、作用物質の内部部分に眼液を直接送達するようにする。なお他の実施形態では、上記のような1つまたは複数の芯を使用し、それにより薬剤のペレットまたは塊の外面部分および内面部分から作用物質を溶解させる。
【0115】
図15は、本明細書の説明によるインプラントであり、インプラントを眼組織に固定する保持突起359をさらに含む一実施形態の断面図を示す。
図15および他の図では、遠位部分がインプラント端にあり、近位部分が保持突起359端にあるものとして示してあるが、いくつかの実施形態では、植え込みの部位および向きに応じて、
図15の向きに対して遠位部分および近位部分を逆にしてもよい。加えて、図示したインプラントは、アウターシェルを通過するオリフィスの存在を図示しているが、シェル材料の厚さおよび/または透過性に基づき薬剤放出の領域を含むインプラントの実施形態はさらに、保持特徴要素を併用してもよいことを理解されたい。加えて、いくつかの実施形態では、シェル材料の厚さおよび/または透過性に基づき、1つまたは複数のオリフィス、透過性および/または半透性材料の1つまたは複数の層、ならびに薬剤放出の1つまたは複数の区域の組み合わせを含むインプラントを使用する。
【0116】
いくつかの実施形態では、インプラントは、シート400および保持突起359を含む。
図16を参照されたい。いくつかの実施形態では、シートは、保持突起に接合していない。シートは、以下に限定されるものではないが、ポリマー、繊維、または複合材料など任意の生体適合性材料で作製してもよい。いくつかの実施形態では、シートは、1種または複数種の治療薬(単数または複数)と配合する。いくつかの実施形態では、1種または複数種の治療薬と配合した材料でシートを被覆する。他の実施形態では、第1の治療薬と配合したシートを、第2の治療薬、異なる濃度の第1の治療薬、または助剤と配合した材料で被覆する。いくつかの実施形態では、シートは生分解性であるのに対して、他の実施形態では、シートは生分解性ではない。他の実施形態では、シートの代わりにディスク402(
図17)を使用する。いくつかの実施形態では、シートまたはディスクは可撓性である。
【0117】
シートまたはディスクのインプラントのいくつかの実施形態を送達するため、シートまたはディスクは、丸めたり、折り曲げたり、あるいは他の方法で送達器具内に収めたりできるような寸法にする。いくつかの実施形態では、インプラント全体が可撓性である。いくつかの実施形態では、インプラントは、予め湾曲させても、または予め屈曲させても、送達機器の湾曲していないルーメン内に配置するのになお十分な可撓性がある。いくつかの実施形態では、可撓性シートまたはディスクの厚さは、約0.01mm〜約1.0mmまでの幅がある。好ましくは、送達器具の断面積は、眼から器具を除去すると、縫合せずに挿入部位が自己密封するのに十分小さく、たとえば外法寸法は、好ましくは約18ゲージ以下であり、約27または30ゲージ以上である。そうした実施形態では、丸めた、または折り曲げたシートまたはディスクは、眼組織に装着して送達器具を除去した後、実質的にその元の寸法に戻ることができる。ある種の実施形態では、約50〜200ミクロン、約100〜150ミクロン、約25〜100ミクロンおよび約100〜250ミクロンなどの約25〜250ミクロンの厚さを使用する。
【0118】
いくつかの実施形態では、インプラントは、前房水内の虹彩に固着し(たとえば、つなぎ止められ)、浮くような寸法にする。この文脈における「浮く」という用語は、インプラントの浮力をいおうとするものではなく、むしろインプラントのシート表面が、保持突起が許容する程度まで前房の眼液内で可動性があることをいおうとするものである。ある種の実施形態では、そうしたインプラントは眼内組織につなぎ止められず、眼内に浮遊している。ある種の実施形態では、生体適合性接着剤を用いてインプラントを虹彩に接着固定してもよい。いくつかの実施形態では、生体適合性接着剤を予め活性化してもよいのに対して、他の実施形態では、眼液との接触により接着剤を活性化してもよい。なお他の実施形態は、インプラントの留置後であるが、この送達機器の除去前に外部の刺激により接着剤を活性化することを含んでもよい。外部の刺激の例として、熱、超音波および高周波、またはレーザーエネルギーがあるが、これに限定されるものではない。ある種の実施形態では、虹彩の表面積が大きいため、虹彩にインプラントを定着させることが好ましい。他の実施形態では、インプラントは、虹彩に固着した保持突起に対して可撓性であるが、浮遊しない。本明細書に開示される実施形態については、瞳孔を通る通常の光の通路を許容する形で虹彩に固着する。
【0119】
上記で論じたように、本明細書に開示されたいくつかの実施形態は、インプラントからの薬剤の放出速度を制御するため、様々な透過性がある複数の材料を利用する。
図18A〜18Qは、インプラントからの薬剤の放出速度を制御するため、様々な透過性を持つ材料を利用した別のインプラントの実施形態を図示する。
図18Aは、
図18Bに示すインプラント本体53の上面図を示す。インプラント本体53は、アウターシェル54および保持突起359を含む。明示的に図示していないが、いくつかの実施形態では、さらに、保持突起を用いずに本体およびキャップを含むインプラントを構築してもよいことを理解されたい。
図18Cは、いくつかの実施形態でアウターシェル54と同一の材料で作られるインプラントキャップ53aを図示する。他の実施形態では、キャップ53aを、アウターシェルと異なる材料で作る。薬剤放出の領域56については、シェル54と異なる透過性を持つ材料を使用してキャップ中に形成する。本体およびキャップ(および任意に保持突起)を含むインプラントは、本体またはキャップを通るオリフィスを用いて構築してもよく、任意のオリフィスの全部または一部を覆う透過性または半透性材料の層またはコーティングを用いて構築してもよく、さらにシェル材料の厚さおよび/または透過性に基づき上記と薬剤放出の領域とを組み合わせて構築してもよいことも理解されたい。18E〜18Fを参照されたい。
【0120】
図18G〜18Jは、本明細書に開示されたいくつかの実施形態により組み立てられたインプラントを図示する。インプラント本体53をインプラントキャップ53aと接合し、それにより薬剤62で満たされたルーメン58を設ける。いくつかの実施形態では、インプラント本体54の材料は、キャップ54aの材料と異なる。このため、異なる材料のキャップおよび本体のアセンブリーにより薬剤放出の領域56が作られる。
【0121】
キャップの別の非限定的な実施形態を
図18Kおよび18Lに示す。
図18Kでは、薬剤放出の領域56を持つOリングキャップ53aの断面を示す。他の実施形態では、キャップに1つまたは複数の薬剤放出の領域があってもよい。組み立てる際に、キャップの周囲にOリング99(または他の密封機構)を配置して、流体不透過性シールをインプラントのキャップと本体との間に設ける。
図18Lに、クリンプキャップを示す。キャップのアウターシェルは、キャップがインプラントの本体にしっかりと配置され、密封されるように、圧縮性の領域98を含む。上記で論じたように、ある種の実施形態は、シェル材料の厚さおよび/または透過性に基づき、薬剤放出の領域の代わりにまたはそれに加えてオリフィスおよび層を利用する。さらに
図18Mにも、Oリングキャップ53aの断面を示す。キャップのアウターシェル54内にコーティング60が配置され、オリフィス56aを覆っている。他の実施形態では、キャップ中に1つまたは複数のオリフィスがあってもよい。
図18Nに、オリフィスおよびコーティングを含むクリンプキャップを示す。コーティングを、キャップ内に配置するように示してあるが、いくつかの実施形態では、キャップの外面、オリフィス内、またはこれらの組み合わせなど他の位置を使用することを理解されたい(
図18Oを参照されたい)。
【0122】
加えて、
図18Pおよび18Qに示すように、ある種の実施形態では、層を形成するように、薬剤材料内でコーティングを利用する。コーティングにより、ルーメン内で様々な薬剤62a、62b、62c、62dを隔ててもよい(
図18P)。ある種の実施形態では、コーティングを使用して、異なる濃度の同一の薬剤を隔てる(
図18Q)。そうした内部層はさらに、薬剤放出の領域(単独で、あるいは本明細書に開示される他の薬剤放出要素、たとえば、オリフィスと組み合わせて)を含む実施形態でも有用であることを理解されたい。ある種の実施形態では、この層により、特に所望の薬剤溶出プロファイルが得られる。たとえば、ゆっくりと侵食される層の使用を用いて、薬剤放出の減少期間、または薬剤の「休薬」期間を設ける。あるいは、層を配合して、以下でより詳細に検討するような0次(または他のカイネティックプロファイル)を得てもよい。
【0123】
各図に示したそれぞれの実施形態、および他の実施形態では、シェル材料のコーティングまたは外層は、吹き付け、浸漬により形成しても、あるいは当該技術分野において公知の他のいくつかの同等手段により加えてもよい。このため、いくつかの実施形態では、薬剤放出の領域、またはオリフィスを覆う層(単数または複数)の透過性(および、したがって溶出速度)は、インプラントの製造に使用する材料、インプラントのコーティング(ある場合)、およびインプラントのアウターシェルの有効厚さによって、少なくともある程度決定される。
【0124】
ある種の実施形態のインプラントの製造中に、インプラントのアウターシェル内に1つまたは複数の内部ルーメン58を形成する。いくつかの実施形態では、内部ルーメンをインプラントの近位部分に局在させるのに対して、他の実施形態では、内部ルーメンは、インプラントの全長または任意の中間長に及ぶ。いくつかの実施形態は、単一の内部ルーメンからなるのに対して、他の実施形態は、2つ以上の内部ルーメンを含む。いくつかの実施形態では、内部ルーメンの1つまたは複数は、眼房または領域、たとえば、前房と連通してもよい。いくつかの実施形態では、インプラントは、2つ以上の眼房または領域と連通するような寸法にする。いくつかの実施形態では、インプラントの近位端および遠位端を共に単一の眼房または領域内に配置する一方、他の実施形態では、インプラントの端を、異なる眼房または領域に配置する。
【0125】
薬剤62は、インプラントの内部ルーメン58内に収納する。薬剤62は、特定の眼の病状に対して治療上有効な作用物質のみならず、ある形態の薬剤を調製するのに必要であり、薬剤との適合性がある任意の他の化合物も含む。いくつかの実施形態では、内部ルーメンの1つまたは複数は、異なる薬剤または薬剤の濃度を含んでもよく、薬剤は同時に送達(併用療法)しても、または別々に送達してもよい。いくつかの好ましい実施形態では、内部ルーメンは、インプラント内に配置する薬剤の所望の量に比例した大きさにする。ある実施形態の内部ルーメンの最終的な寸法は、送達される薬剤(単数または複数)の種類、量および所望の放出プロファイル、ならびに薬剤(単数または複数)の組成に左右される。
【0126】
いくつかの実施形態では、薬剤は、薬剤含有ペレットの形態であるのに対して、他の実施形態では、薬剤は、液体、スラリー、マイクロペレットまたは粉体である。そうしたある種の実施形態では、こうした薬剤の形態は、インプラントが可撓性であることを許容する。いくつかの実施形態では、薬剤をポリマー製剤と配合する。いくつかの実施形態では、ルーメン中に配置された薬剤は、純粋な薬剤である。ある種の実施形態では、ポリマー製剤は、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)もしくはPLGAコポリマー、または他の生分解性もしくは生体内分解性ポリマーを含む。なお他の実施形態では、内部ルーメンは、薬剤のみを含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、単一または複数の薬剤(単数または複数)の複数のペレット62をインプラントの内部ルーメン内に配置する。いくつかの実施形態では、不透過性の間仕切り64を使用してルーメン内の薬剤(単数または複数)を密封し、インプラントからの唯一の出口経路が薬剤放出の領域を通るようにする。いくつかの実施形態では、不透過性の間仕切り64は、所定の速度で生体内で分解してもよい。いくつかの実施形態では、不透過性の間仕切り64を薬剤ペレットに組み込み、インプラントのシェル54の内法寸法に対するシールを設ける。他の実施形態では、ルーメン内に2つ以上の不透過性の間仕切りを使用し、それによりサブルーメンを設け、サブルーメンは、異なる薬剤、異なる濃度の同一の薬剤、または様々な賦形剤と配合した同一または別の薬剤等を含んでもよい。そうした実施形態では、連続的な薬剤放出、または、インプラント内では不活性で、そのそれぞれのサブルーメンの外側で混じり合うと活性になる2種の作用物質の放出、を達成してもよい。
【0128】
図19A〜19Wは、保持突起の薬剤の種々の実施形態の実施形態を図示する。本明細書で使用する場合、保持突起は、その通常の意味を持つものとし、さらに、持続的にあるいは一時的に、好適な標的眼内組織にインプラントを固着させる、固定させる、または他の方法で装着させる任意の機構または固定要素もいう(通常、
図19A〜19Gの15で示す)。たとえば、生体適合性接着剤を含むインプラントの部分は、保持突起と見なしてもよく、とげ、穴のあるとげ、ネジに似た要素、ローレット切り要素および同種のものも同様である。いくつかの実施形態では、インプラントを標的組織に縫合する。たとえば、いくつかの実施形態では、インプラントを虹彩、好ましくは下方部分に縫合する。図示した(および/または記載した)任意のインプラント(そのようなものとして明示的に図示または記載していなくても)と共に、どのような保持手段を使用してもよいことを理解すべきである。
【0129】
インプラントを固定するための眼内の標的として、眼の線維組織があるが、これに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、インプラントを毛様体筋および/または腱(または線維帯)に固定する。いくつかの実施形態では、インプラントをシュレム管、小柱網、強膜上静脈、虹彩、虹彩根部、水晶体皮質、水晶体上皮、水晶体嚢、強膜、強膜岬、脈絡膜、脈絡膜上腔、前房の壁に固定するか、または前房隅角に配置する。本明細書で使用する場合、「脈絡膜上腔」という用語は、通常の意味を持つものとし、眼の様々な領域には、「脈絡膜上腔」という用語に包含され得る、他に有望な眼腔(ocular space)が存在することが理解されよう。たとえば、眼の前方領域にある脈絡膜上腔は、毛様体上腔とも呼ばれ、したがって、本明細書のある種の文脈では、「脈絡膜上腔」の使用は、毛様体上腔を包含することを意図するものとする。
【0130】
保持突起は、アウターシェルとして同一の生体適合性材料から配合してもよい。いくつかの実施形態では、生分解性保持突起を使用する。代わりの実施形態では、保持突起の1つまたは複数を、アウターシェルと異なる材料から形成してもよい。単一の装置にさらに、様々な種類の保持突起を含めてもよい。
【0131】
いくつかの実施形態では、保持突起359は、隆起部128、または基部130の表面に形成された一連の隆起部を含む隆起のあるピン126を含んでもよい。たとえば
図19Aを参照されたい。そうした隆起部は、以下に限定されるものではないが、インプラントの長軸から偏倚する、インプラントの周囲に螺旋状にする、またはインプラントを取り囲む(たとえば
図19Bを参照)など、インプラントの表面の任意の方向に形成してもよい。同様に、隆起部は、相互に分かれていても、または連続的でもよい。また、隆起したこぶ;円柱;
図19Cに示すような深いネジ山134;
図19Dに示すようなリブ140;
図19Eに示すようなリベット形状の基部146;
図19Fに示すような、保持要素359を取り囲み、眼組織を通る生体適合性接着剤150;または
図19Gに示すようなとげ170など他の固定要素を使用してもよい。いくつかの実施形態では、通常20として示す先在する眼内の空洞またはスペース内に保持突起を配置する。たとえば、
図19Hに示すように、細長いブレード34はシュレム管22内にあり、小柱網21を横切る基部130に装着される。他の実施形態では、
図19Iに示すように、当該技術分野において公知の眼内腔の寸法に基づき、より短い基盤130aを使用し、シュレム管22内にある細長いブレード34に装着する。
【0132】
ある種の実施形態では、物理的保持突起と共に、またはその代わりに膨張可能な材料100を使用する。たとえば、
図19Jでは、基盤130の特定の区域を膨張可能な材料100で覆う。
図19Jでは、この材料は、眼液を含む適切な溶媒と接触すると、膨張し(矢印で示すように)、したがって周囲の組織、たとえば小柱網21およびシュレム管22の基盤に圧力がかかる。
【0133】
いくつかの実施形態では、外部の刺激を使用して膨張可能な材料100の膨張を誘導する。
図19Kに示すように、基盤130の特定の区域を膨張可能な材料100で覆う。
図19Kでは、外部の刺激hvによる刺激を受けると、材料が膨張し(矢印で示すように)、したがって周囲の組織、たとえば小柱網21およびシュレム管22の基盤に圧力がかかる。好適な外部の刺激として、光エネルギー、電磁エネルギー、熱、超音波、高周波、またはレーザーエネルギーがあるが、これに限定されるものではない。
【0134】
いくつかの他の実施形態では、溶媒との接触に反応して膨張する膨張可能な材料100を、アウターシェル54上に被覆するか、または層状にする。
図19L〜19Qを参照されたい。いくつかの実施形態では、インプラントを完全に所望の眼内腔内に配置すると、体液との接触により膨張可能な材料が膨潤する、凝固する、もしくはゲル化する、または他の形で膨張する。(
図19L〜19Qの寸法DとD
1を比較されたい)。その結果、膨張した材料により、周囲の眼組織に圧力がかかり、インプラントを適切な位置で安定させる。
【0135】
いくつかの実施形態では、膨張している材料が、インプラントシェルと周囲の眼内組織との間の任意の空隙を満たす。そうしたいくつかの実施形態では、膨張した材料が、インプラントの一部分を密封する、満たす、または他の方法でインプラントのアウターシェルの周囲の容積を密封して、流体がインプラントの周囲に流れるのを防ぎ、必ずインプラントを通過して流れるようにする。
【0136】
図19Pおよび19Qに模式的に示したものなど他の実施形態では、膨張可能な材料100をインプラントシェル54の選択した区域に配置して、膨張した材料により、周囲の眼組織に圧力がかかるだけでなく、インプラントシェルおよび膨張可能な材料の周囲に流体流れのゾーン102を設けて天然の眼液通路の開通性を維持する。なお他の実施形態では、膨張可能な材料をインプラントのルーメン内に配置して、材料の膨張により、ルーメンの開通状態を維持するのを助けても、またはルーメンの開通状態を維持させてもよい。
【0137】
膨張可能な材料については、浸漬、成形、コーティング、吹き付け、または当該技術分野において公知の他の好適なプロセスによりインプラントに配置すればよい。
【0138】
いくつかの実施形態では、膨張可能な材料は、ヒドロゲルまたは類似の材料である。ヒドロゲルは、架橋した親水性ポリマー鎖の三次元網目構造である。ポリマー鎖の親水性により、ヒドロゲルは、十分な量の流体の存在下で膨潤する。他の実施形態では、膨張可能な材料は、泡状物質、コラーゲン、あるいは、膨潤する、凝固する、もしくはゲル化する、または他の形で膨張する任意の他の類似の生体適合性材料である。いくつかの実施形態では、膨張可能な材料は、適切な溶媒と接触後直ちに膨張し始める。他の実施形態では、材料の膨張前にインプラントが所望の標的部位に完全に配置され得るように、膨張は、短時間の経過後に起こる。膨張を誘導する好ましい溶媒として、水、食塩水、眼液、房水、またはアウターシェルの構造または透過性特性に影響を与えないと考えられる別の生体適合性溶媒が挙げられる。
【0139】
いくつかの実施形態では、膨張可能な材料の膨張は、様々である。いくつかの実施形態では、上記のように、材料をインプラントのアウターシェルに配置して、膨張した材料により周囲の眼組織に圧力がかかり、それによりインプラントを適切な位置に安定させる。他の実施形態では、膨張可能な材料は、膨張可能な材料の膨張により、固定要素が第1の収縮した状態から第2の膨張した状態に移行し、固定要素が、膨張した状態でインプラントを眼の構造に対して固定するように、別の固定要素(上述のものなど)に隣接して、別の固定要素(上述のものなど)を取り囲んで、または別の固定要素(上述のものなど)の下に配置してもよい。いくつかの実施形態では、膨張可能な材料は、2次元のみに膨張するように設計するのに対して、他の実施形態では、材料は、3次元に膨張する。
【0140】
図19Lおよび19Mは、膨張可能な材料を矩形の断面として図示しているが、ある種の実施形態では、断面の形状は、多様であってもよく、円形、卵形、不規則な形、および他の形状を含んでもよいことが理解されよう。いくつかの実施形態ではさらに、材料の相対的膨張率(寸法DからD
1への変化率)を制御する。ある種の実施形態では、DからD
1への変化率は、他の実施形態の場合より大きいのに対して、いくつかの実施形態では、材料の膨張時に、DからD
1へのより小さい変化率を実現する。
【0141】
図19Pおよび19Qは、インプラントの本体から半径方向外向きに延びる突出部を含み、膨張可能な固定要素100を有するインプラントの側面図を示す。そうしたいくつかの実施形態では、固定要素を個別にインプラント本体に連結するのに対して、他の実施形態では、インプラント本体に搭載した外装領域により固定要素を相互連結する。
【0142】
選択された実施形態では、インプラントおよび/または保持突起は、シャント特徴要素をさらに含む。「シャント」という用語は、本明細書で使用する場合、広義の用語であり、当業者にとって通常の慣用的な意味を持ち(さらに特殊なまたは個別の意味に限定されるものではなく)、多くの場合望ましくない第1の位置から1つまたは複数の他の位置に流体を輸送するための1つまたは複数の流体通路を画定するインプラントの部分をいうが、これに限定されるものではない。「ステント」という用語を、シャントという意味で使用することもある。いくつかの実施形態では、シャントを、たとえば、
図19Rおよび
図19Sと同様に、房水を前眼房から流出経路に排水して眼内圧を低下させるための流体流路となるように構成することができる。なお他の実施形態では、インプラントのシャント特徴要素を、薬物送達と、第1の生理学的部位から第2の部位(患者の生理学的部位でも、または外部でもよい)への流体の輸送とを同時に必要とする任意の生理学的位置に配置してもよい。
【0143】
インプラントのシャント部分は、流入部分38kおよび1つまたは複数の流出部分56kを有していてもよい。いくつかの実施形態では、流入部分および流出部分を配置する生理的空隙に応じて、流入部分および流出部分をインプラントの様々な位置に配置する。
図19Rに示すように、流出部分は、インプラントの近位端52または近位端52近傍に配置してもよい。インプラントを展開する際、流入部分が、前眼房に保持されるような大きさにして構成してもよく、流出部分が、小柱網23またはシュレム管22内に保持されるような大きさにして構成してもよい。他の実施形態では、流出部分は、ぶどう膜強膜流出路の毛様体上の領域、脈絡膜上腔、眼の他の部分、または流体注入に適した他の生理的スペース内に保持されるような大きさにして構成してもよい。
【0144】
少なくとも1つのルーメンは、インプラントのシャント部分を通過して延在してもよい。いくつかの実施形態では、インプラントのシャント部分を通して流体を導く働きをする少なくとも1つのルーメンがある。ある種の実施形態では、各ルーメンは、ルーメン軸に沿って流入端から流出端に延在する。いくつかの実施形態では、ルーメンは、実質的にシャントの縦方向の中心を通過して延在する。他の実施形態では、ルーメンは、シャントの縦方向の中心からずれていてもよい。
【0145】
シャントを含む追加の実施形態は、眼液を第1の位置から異なる位置に排水するために使用してもよい。
図19Tに示すように、シャント30pは、前房20から直接コレクターチャネル29に房水を誘導し、房水は、房水静脈に流れ込む。シャント30pは、シュレム管の後壁に載っている遠位端160を有する。着脱自在な整合ピン158を利用して、シャントルーメン42pをコレクターチャネル29と同心にする。使用時、ピン158は、インプラントルーメンおよびシャントルーメン42pを通過して延在し、基盤160を通って突出してコレクターチャネル29に入って延在し、シャント30pはコレクターチャネル29の中心に置かれ、および/または、コレクターチャネル29と同心となる。次いでシャント30pをシュレム管22の後壁92にしっかりと押し付ける。永久バイオ接着剤162をシャント基盤とシュレム管22の後壁92との間に使用して、適切な位置にシャント30pを着座させ、しっかりと保持する。配置したら、ピン158をシャントおよびインプラントルーメン42pから取り出して、房水を前房20からインプラントを経由して、シャントを通し、コレクター管29に流す。コレクター管の直径は、公称20〜100マイクロメートルであり、好適な顕微鏡法(超音波生体顕微鏡(UBM:ultrasound biomicroscopy)など)またはレーザーイメージングにより可視化して、シャント30pを留置するための指針とする。別の実施形態では、ピン158は、眼液において生分解性であり、手作業でインプラントから取り除く必要はない。
【0146】
いくつかの実施形態では、小柱網23の予め作製した切開からシャント30pを挿入する。他の実施形態では、シャント30pをブレード形状で形成し、自己穿孔能力を与えてもよい。こうした場合、基盤にまたは基盤に近接してブレードを有する自己穿孔型シャント装置により、小柱網23を通る切開を作製する。
【0147】
図19Uに示すように、前眼房20から、小柱網23を通り、眼のシュレム管22に延びるシャントを、通過する房水の流れと軸対称になるように構成してもよい。たとえば、
図19Uに示すように、シャント229Aは、前房20に配置され、かつ本明細書に開示された実施形態による薬物送達インプラントに装着されるように構成される入口端230を含む。シャント特徴要素が見やすいように、インプラントを示していない。シャント229Aの第2の端231については、シュレム管22中に配置されるように構成する。少なくとも1つのルーメン239は、シャント229Aを通って入口端および出口端230、232の間に延在する。ルーメン239は、入口端230の開口部232、および出口端231の出口233を画定する。
【0148】
図示した実施形態では、シャント229Aの外表面238は、円錐形である。このため、入口端230に隣接する外表面238の円周は、出口端231の外側表面238の円周より短い。
【0149】
小柱網23を通って延在するシャント229Aの場合、小柱網23の組織が、シャント229Aについて、その入口端230を前房に、その出口端231をシュレム管に保持する追加の固定力を与える。たとえば、小柱網23は、シャント229Aにより占められた開口部を自然に閉鎖しようとすると考えられる。したがって、小柱網23は、シャント229Aを圧迫しようとするであろう。外表面238は円錐形であるため、小柱網23により印加された圧迫力は、シャント229Aをシュレム管22の方に引き寄せようとすると考えられる。図示した実施形態では、シャント229Aは、入口端230に隣接するシャント229の部分234が前房20中にとどまる一方、出口端231に隣接するシャント229の部分235がシュレム管22中にとどまるような大きさにする。
【0150】
図示した実施形態では、シャント229Aの外側表面238は、平滑である。あるいは、外側表面238は、他の輪郭、たとえば、以下に限定されるものではないが、湾曲した輪郭または段付きの輪郭などを備えていてもよい。一実施形態では、外側表面238は、トランペットのような形状を作るため、凹面に湾曲していてもよい。あるいは、外側表面238は、凸面であってもよい。
【0151】
ある種の実施形態では、シャント229Aは、好ましくは出口開口部233とシュレム管22の壁との間のスペースを維持するように構成される1つまたは複数の柱または脚236を含む。したがって、脚236は、シュレム管の壁が完全にシャント229Aの出口開口部233を閉鎖するのを防ぐ。図示した実施形態では、脚236は、シャント229Aの最も遠位側表面に接続され、かつシャント229Aを通り、前房20とシュレム管22との間に延びるインプラント軸と実質的に平行である。
【0152】
この脚236および出口233の構成により、シャント229Aに対して軸対称の流れ特性が得られる。たとえば、房水は、出口233から任意の方向に流れることができる。このため、シャント229Aは、そのインプラント軸に対して任意の角度位置でシュレム管に移植してもよい。このため、植え込みの前にシャント229Aの角度向きを判定する必要も、植え込み手順の最中に特定の向きを保つ必要もない。
【0153】
図19Vは、通常、参照番号229Bで示すシャント229Aの改変を図示する。この実施形態では、シャント229Bは、部分234から半径方向に延びるフランジ237を含む。好ましくは、フランジ237を、第1の部分234を前房20内に保持するように構成する。一般に、房水は前房20からシュレム管22の方に流れるけれども、シャント229A、229B、または上記のシャントのいずれか、および以下に記載の他のシャントは、房水に全方向流れを与えることができると理解される。
【0154】
図19Wは、通常、参照番号229Cにより示されるシャント229Aのもう1つの改変を図示する。この実施形態では、外側表面238Cが円錐形ではない。どちらかといえば、外側表面238Cは円筒形である。シャント229Cは、大きさおよび形状がフランジ237と同一であってもよいフランジ240を含む。脚236Cは、フランジ240から延在する。
【0155】
このように構築すると、小柱網21の組織が、シャント229Cを配置する穴を自然に閉鎖しようとし、シャント229Cを適切な位置に固定するのを補助する。加えて、脚236Cは、シュレム管の壁が完全にルーメン239Cの出口233Cを閉鎖するのを防止するのに役立つ。
【0156】
図19Xでは、通常、参照番号229Fにより示す、軸対称の小柱分路装置の別の実施形態を図示する。
【0157】
シャント229Fは、第1のフランジ240Fを有する入口(近位)セクション、第2のフランジ237Fを有する出口(遠位)セクション、および入口セクションと出口セクションとを連結する中間セクション284を含む。装置229Fのルーメン239Fは、房水、液体または治療薬を入口セクションと出口セクションとの間に輸送するように構成する。
【0158】
シャント229Fの入口セクションは、少なくとも1つの入口開口部286を有し、出口セクションは、少なくとも1つの出口開口部287を含む。いくつかの実施形態では、入口開口部286をインプラントの近位端に直接装着して、インプラントのルーメンを通って流れる眼液が、シャントのルーメン239Fに入るようにする。他の実施形態では、最初にインプラントを通過せずに、入口開口部286が、眼液を眼腔(ocular cavity)から直接受け入れるように、シャントをインプラントに接合するか、または装着する。なお他の実施形態では、シャントは、両方の源から(たとえば、眼から、およびインプラントルーメンから)流体を運ぶ。
【0159】
こうした実施形態にはさらに利点がある。この場合、出口セクション237Fが、実質的に軸対称に房水、液体または治療薬を排出するのに好適な位置にある少なくとも1つの開口部287、288を含み、開口部287、288は、装置281のルーメン285と流体連通している。図示した実施形態では、開口部288が、ルーメン285から半径方向に延び、出口フランジ237Fの周囲を囲む外側表面で開口する。
【0160】
さらに、こうした固定要素および保持突起はすべて、可撓性にしてもよいことを理解すべきである。さらに、他の好適な形状を使用してもよく、かつここに列挙したものは、限定的なものではないことも理解すべきである。さらに、各図に図示したようにいくつかの装置は、可撓性でないように見えるかもしれないが、装置は、可撓性であってもよいことも理解すべきである。再装填型の装置に関するそうした実施形態では、保持突起が、インプラントを固定する働きをするだけでなく、動きにくくして再装填中にインプラントにおける眼内の位置的な安定性も高める。
【0161】
見やすいように、様々な保持突出部を持つインプラントの可能な実施形態を少数のみ示してある。任意のインプラントの実施形態は、本明細書に開示される保持突出部のいずれかと容易に組み合わせることができ、その逆も同様であることを理解すべきである。
【0162】
さらに、上述のいくつかの実施形態は、特定の眼内組織内、または特定の眼内組織に固定する場合を示してあるが、その各々の実施形態は、本明細書に開示される標的眼内組織内もしく組織上、または当該技術分野において公知の他の眼組織に固定または展開されるように容易に適合し得ることも理解されたい。
【0163】
加えて、上記と下記とに記載する実施形態は、保持突出部の考察を含むものであるが、本明細書に開示されるインプラントのいくつかの実施形態は、特定の保持突出部を含む必要がないことも理解されよう。そうした実施形態は、特定の固定点を必要としない眼の標的に薬剤を送達するために使用し、インプラントは、所望の眼内腔に単純に展開すればよい。そうした標的として、硝子体液、毛様体筋、毛様体腱、毛様体線維帯、シュレム管、小柱網、強膜上静脈、前房および前房隅角、水晶体皮質、水晶体上皮および水晶体嚢、毛様体突起、後房、脈絡膜、ならびに脈絡膜上腔が挙げられる。ある種の実施形態、特定の標的組織に対する保持突起の使用は、任意であることが理解されよう。
【0164】
本明細書に開示されたいくつかの実施形態は、被検体の眼内に全体が含まれるような寸法にし、その寸法は、標準的な眼科的技法により被検体ごとに得てもよい。植え込み手順の終了時、いくつかの実施形態では、装置の近位端を前眼房中または前眼房近傍に配置してもよい。インプラントの遠位端は、脈絡膜上腔内のどこに配置してもよい。いくつかの実施形態では、インプラントの遠位端は、角膜縁近傍にある。他の実施形態では、インプラントの遠位端を眼の後方領域の黄斑近傍に配置する。他の実施形態では、装置の近位端を眼の他の領域中またはその近傍に配置してもよい。そうしたいくつかの実施形態ではさらに、装置の遠位端を眼の他の領域中またはその近傍に配置してもよい。本明細書で使用する場合、「近傍に」という用語は、「で(at)」と同義で使用されることもあるが、他に使用する場合、文脈上、薬剤をインプラントから標的組織に拡散させるのに十分に隣接した距離を示すこともある。なお他の実施形態では、インプラントは、眼以外の第1の生理的スペースと眼以外の第2の生理的スペースとの間の距離に及ぶような寸法にする。
【0165】
一実施形態では、強膜岬の後方にある毛様体付着組織を通り前進させて、薬物送達インプラントを脈絡膜上腔中に配置する。毛様体付着組織は典型的には、線維状または多孔性であり、本明細書に開示される送達器具または他の外科的装置を用いて強膜岬から比較的容易に突き抜いたり、切断したり、または分離したりできる。そうした実施形態では、インプラントがぶどう膜強膜流出路に入ったら、この組織を通ってインプラントを前進させ、強膜に隣接させて置くか、または突合わせる。インプラントは、ぶどう膜強膜流出路の後方部分内の所望の植え込み部位に達するまで、強膜の内部壁に沿ってぶどう膜強膜流出路内で前進させる。
【0166】
いくつかの実施形態では、インプラントの全長は、長さ2〜30mmである。いくつかの実施形態では、インプラントの長さは、2〜25mm、6〜25mm、8〜25mm、10〜30mm、15〜25mmまたは15〜18mmである。いくつかの実施形態では、インプラントの長さは、約8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、16mm、17mm、18mm、19mm、20mm、21mm、22mm、23mm、24mmまたは25mmである。インプラントを含む送達装置は、角膜から挿入して虹彩まで前進させ、角膜に自己密封する穴のみを生じさせるため、いくつかの実施形態では、インプラントの外径は、約100〜600ミクロンである。いくつかの実施形態では、インプラントの直径は、約150〜500ミクロン、約125〜550ミクロンまたは約175〜475ミクロンである。いくつかの実施形態では、インプラントの直径は、約100ミクロン、125ミクロン、150ミクロン、160ミクロン、170ミクロン、180ミクロン、190ミクロン、200ミクロン、225ミクロン、250ミクロン、275ミクロン、300ミクロン、325ミクロン、350ミクロン、375ミクロン、400ミクロン、425ミクロン、450ミクロン、460ミクロン、470ミクロン、475ミクロン、480ミクロン、490ミクロンまたは500ミクロンである。いくつかの実施形態では、インプラントの内径は、約50〜500ミクロンである。いくつかの実施形態では、内径は、約100〜450ミクロン、150〜500ミクロンまたは75〜475ミクロンである。いくつかの実施形態では、内径は、約80ミクロン、90ミクロン、100ミクロン、110ミクロン、125ミクロン、150ミクロン、175ミクロン、200ミクロン、225ミクロン、250ミクロン、275ミクロン、300ミクロン、325ミクロン、350ミクロン、375ミクロン、400ミクロン、410ミクロン、420ミクロン、425ミクロン、430ミクロン、440ミクロンまたは450ミクロンである。以下に限定されるものではないが、装置がディスク形状、またはウエハー形状であるものなど、いくつかの実施形態では、その厚さは、約50〜200ミクロン、約100〜150ミクロン、約25〜100ミクロンおよび約100〜250ミクロンなどの約25〜250ミクロンである。
【0167】
さらなる実施形態では、インプラントの製造中に形成される内部ルーメンのいずれかまたは全部を親水性材料の層で被覆し、それにより眼液と、ルーメン内に配置された治療薬または作用物質との接触速度を高めてもよい。一実施形態では、親水性材料は、眼液および/または薬剤に対して透過性がある。逆に、内部ルーメンのいずれかまたは全部を疎水性材料の層で被覆し、それにより眼液と、ルーメン内に位置する治療薬または作用物質との接触を協調的に抑制してもよい。一実施形態では、疎水性材料は、眼液および/または薬剤に対して透過性がある。
【0168】
本明細書に記載の薬物送達インプラントの選択された実施形態は、インプラントの再装填、すなわちインプラントに追加の(同一または異なる)治療薬を再充填することを可能にする。
図20A〜20Cに示す実施形態では、インプラントの近位端52が開口しており、再装填装置80と相互に作用する。再装填装置80は、インプラントの近位端52と相互に作用する可撓性クランピンググリッパー74を収納するクランピングスリーブ72を含む。バネ荷重であってもよい可撓性プッシャーチューブ76は、インプラントルーメン58に送達するため新しい治療薬62を収容する小さい内部凹み78を含む。
図20Aでは、シェルに被覆され、近位障壁でキャップされた新規用量の作用物質をインプラントのルーメンに挿入する。
図20Bおよび20Cは、インプラントに複数の薬剤ペレットを再装填しているところを図示する。そうした実施形態では、一方向通路70があると、薬剤ペレットをインプラントのルーメンに運ぶ再装填装置を挿入できるようになる一方、再装填装置の除去の際に、通路が閉じて薬剤がルーメンから逃げ出すのを防止する。インプラントに複数のペレットを再装填すると、インプラント中の薬剤の用量を新しいのと取り替える能力を与えるのとは別に、1つまたは複数の他の利点が得られることがある。いくつかの実施形態では、ペレットは、眼液にさらされる薬剤の表面積を増加させるような大きさにする(固形薬の核の入ったインプラントと比較して)。眼液にさらすことは、薬剤の溶出速度全体の1変数であるため、そうした実施形態では、ペレットの大きさを必要に応じて調整して特定の所望の放出速度を得てもよい。さらに、ある種の実施形態では、十分な薬剤充填量が存在するときでも、複数のペレットの大きさを調整して、流体がインプラントのルーメンを通過して流れる速度または能力を高める。たとえば、眼の状態が、眼液の除去/迂回に加えて薬剤治療を必要としていることが分かっている場合、ペレットは、十分な量の薬剤を送達して治療効果を得ると同時に、眼液がインプラントのルーメンを通り第1の位置から第2の位置に流れるような大きさにしてもよい。加えて、複数のペレットまたは複数の粒子が存在する場合、ある種の実施形態では、単一の固形薬の核と異なり、インプラントは可撓性であってもよい。そうした実施形態では、ペレットの形状は、インプラントが所望の生理的空隙内またはそれに隣接して適合するように必要に応じて連結でき、ペレット間の接触によりこの連結を妨げないよう、ペレットの周囲を囲むスペースを得るように設計してもよい。そうした実施形態では、ペレットは、ある程度相互に接触してもよいが、なおインプラントに薬剤を充填する際にかなりの程度の効率を可能にすることを理解されたい。インプラントの可撓性が不必要または望ましくないある種の実施形態では、ペレットは、相互により十分に接触し、それによりインプラントの剛性を補うように造形してもよいことも理解されたい。
【0169】
上記で論じた要素は、インプラントを、記載された特定の組み合わせまたは実施形態に限定するものと解釈してはならないことが理解されよう。むしろ、記載した特徴は、本開示による薬物送達インプラントの構築に柔軟性を与えるため、自由に交換できるものである。
【0170】
<送達器具>
本明細書に記載の系および方法の別の態様は、薬剤を眼に送達し、任意に流体を前房から生理的流出スペースに排水するためのインプラントを移植するための送達器具に関する。いくつかの実施形態では、インプラントは、植え込み部位から眼を通って位置する部位から眼に挿入する。送達器具は、挿入部位から前房を横切って植え込み部位まで眼を通ってインプラントを前進させるのに十分に長いものである。器具の少なくとも一部は、可撓性であってもよい。器具は、相互に長軸方向に移動できる複数の部材を含んでもよい。いくつかの実施形態では、送達器具の少なくとも一部は、湾曲している。いくつかの実施形態では、送達器具の一部は、剛性であり、器具の別の部分は、可撓性である。
【0171】
いくつかの実施形態では、送達器具は、遠位湾曲を有する。いくつかの実施形態では、送達器具の遠位湾曲は、半径が約10〜30mmであることを特徴としてもよい。いくつかの実施形態では、遠位湾曲の半径は、約20mmである。
【0172】
いくつかの実施形態では、送達器具は、遠位角88(
図21のχで示す大きさを持つ)を有する。角度の大きさχは、送達器具の近位区画94に対して約90〜180度を特徴としてもよい。いくつかの実施形態では、角度の大きさχは、約145〜約170度を特徴としてもよい。いくつかの実施形態では、角度の大きさは、約150〜約170度、または約155〜約165度である。この角度部は、送達器具の近位区画から遠位区画までを滑らかに移行させるため、「肘」に小半径の湾曲を備えていてもよい。いくつかの実施形態では、遠位区画の長さは、約0.5〜7mmであってもよいのに対し、いくつかの他の実施形態では、遠位区画の長さは約2〜3mmである。
【0173】
他の実施形態では、湾曲した遠位端が好ましい。そうした実施形態では、いくつかの実施形態で、送達器具/シャントアセンブリーの高さ(
図22の寸法90)が約3mm未満であり、他の実施形態では、2mm未満である。
【0174】
いくつかの実施形態では、器具は、前端に尖った特徴要素を持ち、切開、穴または開口部を予め形成せずに組織を通過するように、自己穿孔する、すなわち、自己貫入する。あるいは、トロカール、小刀、スパチュラまたは類似の器具を用いて、シャントを眼組織に通す前にそうした組織に切開を予め形成してもよい。
【0175】
薬剤溶出眼内インプラントのいくつかの実施形態を送達するため、器具は、眼から器具を除去する際に縫合せずに、挿入部位が自己密封するように十分に小さい断面積を持つ。送達器具の外法寸法は、好ましくは約18ゲージ以下で、約27または30ゲージ以上である。
【0176】
角膜組織の切開については、薬剤溶出眼内インプラントのいくつかの実施形態を送達するため、中空針を用いて、インプラントが通るように作製する。針の直径の大きさが小さい(たとえば、18または19または20または21または22または23または24または25または26または27ゲージ)ため、切開は自己密封しており、粘弾性を用いてあるいは用いずに閉鎖した房で植え込みを行う。また、切開の自己密封は、従来の「トンネル」手順を用いスパチュラのような形の小刀を使用して一般に角膜を通る逆V字型の切開を設けて、形成してもよい。好ましい態様では、角膜を通る切開の形成に使用する器具は、この手順の間適切な位置にとどまり(すなわち、角膜の切開を通過しており)、植え込み後まで除去されない。そうした切開形成器具は、切開形成器具を除去せずに同一の切開を通して植え込みを行うため、眼内インプラントを留置するために使用しても、あるいは、送達器具と協力してもよい。言うまでもなく、他の態様では、様々な外科的器具を1つまたは複数の角膜の切開に複数回を通してもよい。
【0177】
いくつかの実施形態は、バネ荷重プッシャー系を含む。いくつかの実施形態では、バネ荷重プッシャーは、ヒンジロッド装置に作動可能に連結されたボタンを含む。ヒンジロッド装置のロッドは、プッシャーの表面の凹部に係合し、プッシャーのバネを圧縮された形に保つ。使用者がボタンを押すと、ロッドが凹部から離脱し、それによりバネが復元することで、プッシャーが前方に進む。
【0178】
いくつかの実施形態では、オーバーザワイヤー系を使用してインプラントを送達する。インプラントは、ワイヤーで送達してもよい。いくつかの実施形態では、ワイヤーは、自己穿孔する。ワイヤーはまた、トロカールとしても機能し得る。ワイヤーは超弾性でも、可撓性でも、またはインプラントに対して相対的に非可撓性でもよい。ワイヤーは、ある種の形状を持つように予め形成してもよい。ワイヤーは、湾曲していてもよい。ワイヤーは、形状記憶を有しても、または弾性でもよい。いくつかの実施形態では、ワイヤーは、プルワイヤーである。ワイヤーはまた、先端可動カテーテルであってもよい。
【0179】
いくつかの実施形態では、ワイヤーを、インプラントのルーメン内に配置する。ワイヤーは、ルーメン内で軸方向に可動性であってもよい。ルーメンは、弁または他の流れ調整装置を含んでも、あるいは含まなくてもよい。
【0180】
いくつかの実施形態では、送達器具は、トロカールである。トロカールは、角度が付いていても、または湾曲していてもよい。いくつかの実施形態では、トロカールは、可撓性である。他の実施形態では、トロカールは、相対的に剛性である。他の実施形態では、トロカールは硬直である。トロカールが硬直である実施形態では、インプラントは、相対的に可撓性である。トロカールの直径は、約0.001インチ〜約0.01インチである。いくつかの実施形態では、トロカールの直径は、0.001インチ、0.002インチ、0.003インチ、0.004インチ、0.005インチ、0.006インチ、0.007インチ、0.008インチ、0.009インチまたは0.01インチである。
【0181】
いくつかの実施形態では、インプラントの送達を、インプラントの近位端またはその近傍に駆動力を印加することにより、達成する。駆動力は、インプラントの端に印加される引く力でも、または押す力でもよい。
【0182】
この器具は、器具が眼中にあるとき、房水が送達器具をおよび/または器具の部材の間を通過するのを防止するためのシールまたはコーティングを含んでもよい。シールは、逆流を防ぐのに役立つ。いくつかの実施形態では、コーティング、および親水性または疎水性作用物質で器具を被覆する。いくつかの実施形態では、コーティングと親水性作用物質とで、器具の一領域を被覆し、コーティングと疎水性作用物質とで、器具の別の領域を被覆する。送達器具は、器具を構成する様々な部材間にシールをさらに含んでもよい。シールは、器具の部材の滑り嵌めの表面間に疎水性または親水性コーティングを含んでもよい。送達器具により運ばれる際、インプラントの近位にシールを配置してもよい。いくつかの実施形態では、シールは、相互に緊密に装着するように機械加工された2つの装置のそれぞれの少なくとも一部に存在する。
【0183】
送達器具は、ベベル形状を有する遠位端を含んでもよい。送達器具は、スパチュラ形状を有する遠位端を含んでもよい。ベベルまたはスパチュラ形状は、インプラントを収める凹みを含んでも、あるいは含まなくてもよい。凹みは、インプラントを押し出すもしくは吐き出すプッシャーまたは他の好適な手段を含んでもよい。
【0184】
送達器具は、複数のインプラントを送達するように構成してもよい。そうしたいくつかの実施形態では、インプラントは、装置内に縦列に(またはインプラントの数が2を超える場合、一続きに)配置してもよい。
【0185】
<手順>
眼内インプラントのいくつかの実施形態を送達するための植え込みについては、粘弾性を用いてあるいは用いずに閉鎖した房で行う。
【0186】
インプラントは、プッシャーなどのアプリケーターを用いて留置してもよいし、あるいはインプラントは、その全体を参照によって本明細書に援用し、本明細書および開示の一部とする、2002年8月28日に出願された米国特許出願公開第2004/0050392号、現在は2008年2月19日に発行された米国特許第7,331,984号に開示されたものなど、エネルギーを器具中に貯蔵させた送達器具を用いて留置してもよい。いくつかの実施形態では、インプラントの前端で高い流体圧力を生み出すアプリケーターにより流体を注入して、植え込みやすくしてもよい。
【0187】
本発明の一実施形態では、眼の小柱網を通過して小柱ステントを留置するために使用するものと類似した送達機器(または「アプリケーター」)を使用する。そうした送達機器のある種の実施形態については、各々を参照によって援用し、本明細書および開示の一部とする、2002年8月28日に出願された米国特許出願公開第2004/0050392号、現在は2008年2月19日に発行された米国特許第7,331,984号;緑内障処置のため小柱シャントを留置するためのアプリケーターおよび方法(APPLICATOR AND METHODS FOR PLACING A TRABECULAR SHUNT FOR GLAUCOMA TREATMENT)を発明の名称とする米国特許出願公開第2002/0133168号、現在は放棄;および2001年3月16日に出願され、緑内障処置のため小柱シャントを留置するためのアプリケーターおよび方法(APPLICATOR AND METHODS FOR PLACING A TRABECULAR SHUNT FOR GLAUCOMA TREATMENT)を発明の名称とする米国特許仮出願第60/276,609号、現在は期間満了に開示されている。
【0188】
送達機器は、ハンドピース、細長いチップ、ホルダーおよびアクチュエーターを含む。ハンドピースは、遠位端および近位端を有する。細長いチップは、ハンドピースの遠位端に連結される。細長いチップは遠位部分を有し、角膜の切開を通り、前眼房に留置されるように構成される。ホルダーは、細長いチップの遠位部分に装着される。ホルダーは、薬物送達インプラントを保持および放出するように構成される。アクチュエーターは、ハンドピース上にあり、ホルダーを駆動して薬物送達インプラントをホルダーから放出する。一実施形態では、送達機器内の展開機構は、プッシュプル型プランジャーを含む。
【0189】
いくつかの実施形態では、ホルダーは、クランプを含む。いくつかの実施形態では、機器は、ハンドピース内にバネをさらに含み、このバネは、薬物送達インプラントがホルダーにより保持されているときに荷重が加えられ、アクチュエーターの駆動時に少なくとも一部の荷重が解除され、ホルダーから薬物送達インプラントの放出を可能にするように構成される。
【0190】
種々の実施形態では、クランプは、薬物送達インプラントの少なくとも近位部分にクランプ力をかけるように構成される複数の爪部を含む。ホルダーは、複数のフランジをさらに含んでもよい。
【0191】
いくつかの実施形態では、細長いチップの遠位部分は、可撓性材料で作られる。これは、可撓性ワイヤーであってもよい。遠位部分は、好ましくはハンドピースの長軸から約45度の偏向範囲を有していてもよい。送達機器は、細長いチップに洗浄ポートをさらに含んでもよい。
【0192】
いくつかの実施形態では、この方法は、遠位端および近位端を持つハンドピースと、ハンドピースの遠位端に連結された細長いチップとを含む送達機器を使用することを含む。細長いチップについては、遠位部分を持ち、角膜の切開を通り、前眼房に留置されるように構成する。機器はさらに、細長いチップの遠位部分に装着されたホルダーを有し、ホルダーについては、薬物送達インプラントを保持および放出するように構成し、ホルダーを駆動するハンドピース上のアクチュエーターが、ホルダーから薬物送達インプラントを放出する。
【0193】
送達器具は、角膜の挿入部位を通過して前進させ、さらに眼を通ってあるいは後方から前房角度に前進させ、前房隅角の付け根に配置してもよい。前房隅角を基準点として使用すると、送達器具を全体的に後方方向にさらに前進させ、インプラントを前房隅角の内側の虹彩に進めることができる。
【0194】
インプラントは任意に、インプラントの構造に基づき、前房隅角の環状形状に合うような湾曲形状をとり、前房隅角内に置いてもよい。
【0195】
いくつかの実施形態では、インプラントを、前房隅角の組織または虹彩組織に隣接して配置し、プッシャーチューブを送達器具の遠位端の方に軸方向に前進させてもよい。プッシャーチューブを前進させると、インプラントも前進する。インプラントを、組織を通過して前進させると、それによりインプラントは、もはや送達器具のルーメン中に存在しなくなり、送達器具は収縮して、インプラントが眼組織に残る。
【0196】
インプラントの留置および植え込みは、ゴニオスコープまたは他の従来の撮像装置を使用して行ってもよい。いくつかの実施形態では、送達器具を使用して、継続的に植え込みの力を適用することにより、送達器具の遠位部分を用いて所定の位置までインプラントを軽くたたくことにより、あるいはこれらの方法を組み合わせることにより、インプラントを所望の位置に移動させる。インプラントが所望の位置にきたら、インプラントを送達器具の遠位部分を用いて軽くたたいてさらに着座させてもよい。
【0197】
一実施形態では、インプラントの定着を助けるため、虹彩の別の部分または他の眼内組織に薬物送達インプラントを固着させる。一実施形態では、この別の定着を、生体適合性接着剤を使用して行ってもよい。他の実施形態では、1つまたは複数の縫合材を使用してもよい。別の実施形態では、インプラント本体の外側表面と前房隅角の周囲の組織との相互作用により薬物送達インプラントを実質的に適切な位置に保持する。
【0198】
図23は、本明細書の実施形態に記載されているような薬物送達インプラントを眼に移植するための外科的方法の一実施形態を図示する。第1の切開またはスリットについては、角膜縁21の後方の位置の結膜および強膜11を通過して、すなわち、乳白色の強膜11が透明な角膜12になり始める強膜11の領域の後方に作製する。いくつかの実施形態では、第1の切開は、角膜縁の約3mm後方など角膜縁21の後方にある。いくつかの実施形態では、
図23に示すように、浅い角度(前後軸に対して)で手術道具を前房に挿入しても良いように切開を作製する。他の実施形態では、第1の切開を、器具の挿入の角度を大きくして作製してもよい(たとえば
図24〜26を参照)。また、第1の切開は、薬物送達インプラントの幅より若干大きく作製する。一実施形態では、第1の切開から毛様体上腔に従来の毛様体解離術用スパチュラを挿入して、正確な解剖学的位置を確認してもよい。
【0199】
薬物送達インプラントの上表面および下表面の一部については、インプラントの前端が適切な向きに置かれるように、手術道具、たとえば、鉗子でしっかりと把持してもよい。インプラントはさらに、粘弾性により、またはプッシャーチューブもしくはインプラント送達装置の壁との機械的連動により、固定してもよい。一実施形態では、インプラントを、インプラントの縦軸が実質的に手術道具の把持端の縦軸と同軸になるように向ける。薬物送達インプラントは、第1の切開を通して配置する。
【0200】
送達器具は、挿入部位から眼を通って前房隅角に前進させ、強膜岬近傍の位置に配置してもよい。強膜岬を基準点として使用すると、送達器具を全体的に後方方向にさらに前進させ、虹彩方向に強膜岬のちょうど内側に位置する眼組織にインプラントを進めることができる。
【0201】
任意に、インプラントの構造に基づき、インプラントの挿入頭部の剪断刃は、強膜岬と小柱網の後方の毛様体16との間を通してもよい。
【0202】
薬物送達インプラントは、その挿入頭部の一部、および導管の第1の端を眼の前房20に配置するまで後方に連続して前進させてもよい。このため、導管の第1の端は、眼の前房20と流体連通することになる。薬物送達インプラントの細長い本体の遠位端は、導管の第2の端が脈絡膜上腔24と流体連通するように、眼の脈絡膜上腔24に配置してもよい。あるいは、インプラントを、前房隅角の組織に隣接して配置し、プッシャーチューブを送達器具の遠位端の方に軸方向に前進させてもよい。プッシャーチューブを前進させると、インプラントも前進する。インプラントを、組織を通過して前進させると、それによりインプラントは、もはや送達器具のルーメン中に存在しなくなり、送達器具は収縮して、インプラントが眼組織に残る。
【0203】
インプラントの留置および植え込みは、ゴニオスコープまたは他の従来の撮像装置を使用して行ってもよい。いくつかの実施形態では、送達器具を使用して、継続的に植え込みの力を適用することにより、送達器具の遠位部分を用いて所定の位置までインプラントを軽くたたくことにより、あるいはこれらの方法を組み合わせることにより、インプラントを所望の位置に移動させる。インプラントが所望の位置にきたら、インプラントを送達器具の遠位部分を用いて軽くたたいてさらに着座させてもよい。
【0204】
一実施形態では、インプラントの定着を助けるため、薬物送達インプラントを強膜11の一部に縫合する。一実施形態では、その後第1の切開を縫合して閉じる。薬物送達インプラントの定着に使用する縫合材は、第1の切開を閉じるのに使用してもよいことが理解されよう。別の実施形態では、薬物送達インプラントは、インプラント本体の外側表面と、強膜11および毛様体16および/または脈絡膜12の組織との相互作用により、インプラントを強膜11に縫合せずに実質的に適切な位置に保持する。加えて、一実施形態では、第1の切開は十分に小さいため、切開は、薬物送達インプラントの植え込み後、手術道具の除去時に切開を縫合せずに自己密封する。
【0205】
本明細書に検討したように、いくつかの実施形態では、薬物送達インプラントは、前房20と脈絡膜上腔24との間に排水装置を与えるように構成された、ルーメンを含むシャントをさらに含む。排水装置は、植え込み時に、インプラントと共に毛様体解離を形成し、シャントの長さに沿ってシャントを通る房水の永久的な開通連通を与えてもよい。こうして、房水は、脈絡膜上腔に送達され、そこで吸収され得、さらに眼内の圧力の低下も達成され得る。
【0206】
いくつかの実施形態では、角膜縁またはその近傍の小さい切開を通り、眼を横切ってアブインテルノに薬物送達インプラントを送達すると望ましい(
図24)。この系の全体的な幾何形状は、送達器具が遠位湾曲部または遠位角度部を備えていると有利になる。前者の場合、薬物送達インプラントは、湾曲部に沿って送達を促進する可撓性であってもよいし、あるいは、経路に沿って正確に動きやすいように、より緩く保持されていてもよい。後者の場合、インプラントは、相対的に剛性であってもよい。送達器具は、遠位角度部を通過するのに十分な可撓性があるインプラント前進要素(たとえばプッシャー)を備えていてもよい。
【0207】
いくつかの実施形態では、インプラントおよび送達器具は、角膜縁21またはその近傍の切開から前房20を通り、虹彩13を越えて、さらに毛様体筋アタッチメントを通り、薬物送達インプラントの出口部分がぶどう膜強膜流出路24aに位置する(たとえば、強膜11と脈絡膜12との間を画定する脈絡膜上腔24にさらされる)まで、一緒に前進させる。
図24は、送達器具を角膜縁21のかなり上方に挿入して使用してもよい、眼を通る植え込みアプローチを図示する。他の実施形態では(たとえば、
図25を参照されたい)、切開を、角膜縁21のより後方、かつより近くに作製してもよい。一実施形態では、切開を、眼の鼻側に設け、薬物送達インプラント40の移植位置を眼の耳側にする。別の実施形態では、切開を耳側に作製して、薬物送達インプラントの移植位置を眼の鼻側にしてもよい。いくつかの実施形態では、手術者は、送達器具を引き戻しながら、プッシャー装置を同時に押して、薬物送達インプラントの出口部分が、
図26に図示したように、黄斑34近傍の脈絡膜上腔24の後方領域にその位置を維持するようにする。インプラントは、送達器具から放出され、送達器具は、近位が収縮する。送達器具は、切開を通して前房から取り除く。
【0208】
いくつかの実施形態では、緑内障の患者の眼内圧を下げるため、線維性アタッチメントゾーンを通過して房水が連続的に流出するように、薬物送達インプラントを移植し、そうして前房20をぶどう膜強膜流出路24aに連結すると望ましい。いくつかの実施形態では、角膜縁21の小さな切開を通過して内側に(アブインテルノに)眼を横切る装置を用いて、薬物送達インプラントを送達すると望ましい。
【0209】
図27は、本明細書に教示または示唆された様々なインプラントの実施形態のいずれかを、眼10内の移植部位に留置するための例示的な眼を通す方法を示す。送達機器100bは一般に、シリンジ部116およびカニューレ部118を含む。カニューレ118の遠位セクションは任意に、少なくとも1つの洗浄用穴120、および薬物送達インプラント30を保持するための遠位スペース122を含む。遠位スペース122のルーメンの近位端124については、カニューレ部118の残りのルーメンから密封する。
図27の送達機器は、本明細書に教示または示唆された様々な薬物送達インプラントの実施形態のいずれかと一緒に利用してもよい。いくつかの実施形態では、標的のインプラント部位は、虹彩の下方部分である。
図27に示した送達機器の角度は、例示的なものであり、いくつかの実施形態では、示した角度より浅い、または浅くない角度が好ましいこともあることを理解すべきである。
【0210】
図28は、本明細書に教示または示唆された様々なインプラントの実施形態のいずれかを、眼と同一側のインプラント部位に留置するための例示的な方法を示す。一実施形態では、外側から眼に小さな穿刺を形成するアプリケーターまたは送達機器100cを用いて、薬物送達インプラントを、虹彩に対して眼10の前房20に挿入する。いくつかの実施形態では、標的のインプラント部位は、虹彩の下方部分である。
【0211】
図29は、本明細書に開示されたいくつかの実施形態に沿った薬物送達インプラントを、本明細書に開示されるいくつかの植え込み方法に沿って眼10の虹彩13に固着したところを図示する。虹彩は、本明細書に記載するインプラントを固定してもよい多くの組織の1つに過ぎないことを理解されたい。
【0212】
図30は、本明細書に開示されたいくつかの実施形態に沿った薬物送達インプラントを留置することが可能な別の実施形態を図示する。一実施形態では、本明細書に開示されたいくつかの実施形態に沿ったインプラントのアウターシェル54を、前房隅角に配置させることを示す。一実施形態では、眼を通す送達方法および機器を用いて、薬物送達インプラントを実質的に前房角の湾曲をたどらせ、薬物送達インプラント全体を前房隅角に配置してもよい。いくつかの実施形態では、インプラントを、虹彩の下方部分に沿って実質的に前房隅角内に配置する。
【0213】
いくつかの実施形態では、インプラントの留置の結果、薬物標的が、眼における房水の自然な流れの上流になることがある。たとえば、房水は、毛様体突起から前房隅角へ流れており、これが、ある種の実施形態の植え込みの部位によっては、インプラントから放出される薬剤が、標的組織と接触するために移動する必要があり得る流れと、反対の流体の流れを形成することがある。このため、ある種の実施形態では、たとえば、標的組織が毛様体突起である場合、溶出する薬剤は、前房から後房の毛様体突起の標的受容体まで虹彩組織を通過して拡散する必要がある。虹彩を通る薬剤の拡散の条件、および房水の流れの条件が、場合によっては、毛様体に到達する溶出薬剤の量を限定する場合がある。
【0214】
これらの問題を解決するため、ある種の実施形態は、薬剤を目的の作用部位(すなわち、標的組織)に直接送達しやすくするように、薬剤溶出インプラントに隣接する位置に周辺虹彩切開(PI:peripheral iridotomy)、またはステント装置を装着したPIを加えることを含む。PIを設けると、後房と前房との間に相対的に大きな連通通路が開口する。全体として後房から前房への房水の流れは依然として存在するものの、PIの直径が相対的に大きいため、直線的流速は実質的に低下する。このため、溶出する薬剤は、房水の流れによる大きな抵抗なく、PIを通過して拡散することができる。そうしたある種の実施形態では、インプラントの一部については、虹彩を貫入し、薬剤を毛様体で直接後房に溶出するように構築する。他の実施形態では、インプラントを虹彩に移植および/または固定し、インプラントが薬剤を直接後房および隣接する毛様体に溶出する。
【0215】
図22は、ヒトの眼の前方区画の子午線セクションを示し、本明細書に記載の薬物送達インプラントの実施形態と一緒に使用してもよい送達器具38の別の実施形態を模式的に図示する。
図22の矢印82は、毛様体筋84と強膜11との線維性アタッチメントゾーンを示す。毛様体筋84は、脈絡膜28と同一の広がりを持つ。脈絡膜上腔24は、脈絡膜28と強膜11との界面である。眼の他の構造体として、水晶体26、角膜12、前房20、虹彩13およびシュレム管22がある。
【0216】
送達器具/インプラントアセンブリーは、虹彩13と角膜12との間を通り虹彩角膜角に到達してもよい。したがって、いくつかの実施形態では、送達器具/シャントアセンブリーの高さ(
図22の寸法90)は、約3mm未満であり、他の実施形態では2mm未満である。
【0217】
脈絡膜28と強膜11との間の脈絡膜上腔24は一般に、眼の光軸98と約55°の角度96を形成する。この角度は、前述の段落に記載した高さ条件に加えて、送達器具/インプラントアセンブリーの幾何的設計において考慮すべき特徴である。
【0218】
薬物送達インプラント系の全体の幾何形状は、送達器具38が、
図22に示すような遠位湾曲部86、
図21に示すような遠位角度部88、またはこれらの組み合わせを備えていると有利になる。遠位湾曲部(
図23)は、角膜縁の角膜または強膜の切開を通ってより滑らかに通過することが予想される。この実施形態では、薬物送達インプラントは、湾曲していても、または可撓性であってもよい。あるいは、
図21の設計では、薬物送達インプラントは、送達器具の直線区画、「肘」の遠位、または角度部88に搭載してもよい。この場合、薬物送達インプラントは、直線かつ相対的に非可撓性であってもよく、送達器具は、角度部を通って前進するのに十分な可撓性がある送達機構を備えていてもよい。いくつかの実施形態では、薬物送達インプラントは、硬質チューブであってもよく、ただし、インプラントは、遠位区画92の長さより長くないものとする。
【0219】
いくつかの実施形態では、送達器具38の遠位湾曲部86は、約10〜30mmの半径を、ある種の実施形態では約20mmを特徴としてもよい。
図21に示すような実施形態の送達器具の遠位角度は、送達器具の近位区画94の軸に対して約90〜170度を特徴としてもよい。他の実施形態では、角度は、約145〜約170度であってもよい。角度部は、送達器具の近位区画94から遠位区画92に滑らかな移行を行うように、「肘」に小半径の湾曲を備えている。いくつかの実施形態では、遠位区画92の長さは、約0.5〜7mm、ある種の実施形態では約2〜3mmであってもよい。
【0220】
いくつかの実施形態では、脈絡膜上腔に粘弾性または他の流体を注射して、薬物送達インプラントが到達できる脈絡膜と強膜との間に房またはポケットを設ける。そうしたポケットは、薬物送達インプラントがシャントを含み、眼内圧(IOP:intraocular pressure)を低下させる実施形態では、脈絡膜組織区域および強膜組織区域のより多くの部分を露出させ、植え込み中の組織を潤滑し、かつ保護し、さらにぶどう膜強膜路を増加させる。いくつかの実施形態では、25または27Gカニューレを用いて、たとえば、毛様体筋アタッチメントの切開を通すか、または強膜を通して(たとえば眼の外側から)粘弾性材料を注射する。粘弾性材料は、植え込みの前、植え込み中、あるいは植え込みの終了後に、インプラント自体を通して注射してもよい。
【0221】
いくつかの実施形態では、脈絡膜上腔に高浸透圧剤を注射する。そうした注射は、IOPの低下を遅延させることができる。このため、脈絡膜の吸収を一時的に低下させることにより、術後急性期における低張を回避することができる。高浸透圧剤は、たとえばグルコース、アルブミン、HYPAQUE(登録商標)媒体、グリセロール、またはポリ(エチレングリコール)であってもよい。高浸透圧剤は、患者が治癒するにつれ、分解またはウォッシュアウトして安定で許容可能な低IOPにし、一過性の低張を回避させることができる。
【0222】
<制御された薬剤放出>
本明細書に記載するような薬物送達インプラントは、薬剤を収納し、インプラントの様々な要素の設計に基づき制御された形で、長期間インプラントから薬剤を溶出する働きをする。インプラントの組成の様々な要素、インプラントの物理的特徴、眼におけるインプラントの位置、および薬剤の組成が組み合わされて働き、所望の薬剤放出プロファイルが得られる。
【0223】
上記のような薬物送達インプラントは、所望の特性を持つ任意の生物学的に不活性な材料および生体適合性材料から作ってもよい。いくつかの実施形態では、望ましい特性として、液体水または水蒸気に対する透過性、インプラントを製造し、薬剤を充填し、乾燥状態で滅菌し、その後植え込み時に薬剤の再水和が可能であることが挙げられる。また、ポリマー鎖間に微視的な孔を含む材料から構築されたインプラントも望ましい。これらの孔は相互に連結して、インプラント材料を通る水のチャネルを形成してもよい。いくつかの実施形態では、得られるチャネルは回旋状であり、それにより、可溶化された(solublized)薬剤が溶出プロセスにおいて移動する蛇行路を形成する。インプラント材料はさらに、有利には、薬剤に対して十分な透過性を有するため、インプラントは、植え込みに実用的な大きさであり得る。このため、いくつかの実施形態では、インプラント材料は、送達される薬剤に対して十分な透過性があるため、インプラントは、被検体の眼内に全体が収容されて存在する寸法にする。インプラント材料はまた、理想的には、植え込み中、および植え込み後の標的の解剖学に適合するのみならず、植え込み中、および植え込み後に開通ルーメンが、よじれが解けている、引き裂かれていない、穴が開いていない状態であるのに十分な弾性、可撓性、および伸長可能性を有する。いくつかの実施形態では、インプラント材料は、有利には、たとえば、成形、押出、熱成形および同種のものなどにより、実用的に加工可能であると考えられる。
【0224】
アウターシェルの例示的な好適な材料の例として、ポリプロピレン、ポリイミド、ガラス、ニチノール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、コラーゲン、化学処理コラーゲン、ポリエーテルスルホン(PES:polyethersulfone)、ポリ(スチレン−イソブチル−スチレン)、ポリウレタン、エチルビニルアセテート(EVA:ethyl vinyl acetate)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK:polyetherether ketone)、Kyner(登録商標)(ポリフッ化ビニリデン;PVDF:Polyvinylidene Fluoride)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:Polytetrafluoroethylene)、ポリメチルメタクリレート(PMMA:Polymethylmethacrylate)、Pebax(登録商標)、アクリル酸、ポリオレフィン、ポリジメチルシロキサンおよび他のシリコーンエラストマー、ポリプロピレン、ヒドロキシアパタイト、チタン、金、銀、白金、他の金属および合金、セラミックス、プラスチック、ならびにこれらの混合物または組み合わせが挙げられる。インプラントのある種の実施形態の構築に使用するのに好適な別の材料として、ポリ(乳酸)、ポリエチレン−酢酸ビニル、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド−コ−トリメチレンカルボナート)、コラーゲン、ヘパリン化コラーゲン、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(グリコール酸)、および/または他のポリマー、コポリマーもしくはブロックコポリマー、熱可塑性ポリウレタン、シリコーン修飾ポリエーテルウレタン、ポリ(カルボナートウレタン)、またはポリイミドがあるが、これに限定されるものではない。熱可塑性ポリウレタンは、ポリマーまたはコポリマーであり、脂肪族ポリウレタン、芳香族ポリウレタン、ポリウレタンヒドロゲル形成材料、親水性ポリウレタン、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。非限定的な例として、Elasthane(登録商標)80A、ルーブリゾル(Lubrizol)、Tecophilic(登録商標)、Pellethane(登録商標)、carbothane(登録商標)、Tecothane(登録商標)、Tecoplast(登録商標)およびEstane(登録商標)などのエラスタン(ポリ(エーテルウレタン))が挙げられる。シリコーン修飾ポリエーテルウレタンは、Carbosil(登録商標)20またはPursil(登録商標)20 80Aおよび同種のものを含んでもよい。ポリ(カルボナートウレタン)は、Bionate(登録商標)80Aまたは類似のポリマーを含んでもよい。いくつかの実施形態では、1種または複数種の生分解性材料を使用して、インプラントの全部もしくは一部、または本明細書に開示される任意の他の装置を構築する。そうした材料は、ヒトまたは動物の体内に留置されると、経時的に分解または侵食する任意の好適な材料を含む。したがって、本明細書で使用する場合、生分解性材料という用語は、生体内分解性材料を含む。そうした生分解性の実施形態では、生分解性アウターシェルの分解速度は、インプラントからの薬剤溶出速度の調整に使用してもよい、(多くの変数の)もう1つの変数である。
【0225】
処置の用量または持続期間を制御するため、可撓性のつなぎ止められたインプラント(たとえば、
図16〜17を参照)により治療薬を送達する実施形態では、1つもしくは複数の可撓性シートまたはディスクを同時に使用する。同様に、シートもしくはディスクおよび/またはそれらを覆うコーティングの構築に使用する材料は、以下に検討するのと同様に、薬剤の放出速度を制御するように調製してもよい。
【0226】
薬物送達インプラントにより運ばれる薬剤は、少なくとも数日間、いくつかの実施形態では最大数週間、ある好ましい実施形態では最大数年間持続する期間にわたり、装置内に合理的に保持でき、結果として、収容された薬剤(単数または複数)の溶出を制御するのであれば、どのような形態であってもよい。ある種の実施形態は、眼液中で容易に溶ける薬剤を利用するのに対して、他の実施形態は、眼液中で一部が溶ける薬剤を利用する。
【0227】
たとえば、治療薬は、以下に限定されるものではないが、圧縮ペレット、固形、カプセル、複数の粒子、液体、ゲル、懸濁液、スラリー、エマルジョン、および同種のものなどどのような形態であってもよい。ある種の実施形態では、薬剤粒子は、マイクロペレット、微細粉体、またはスラリーの形態であり、各々が流体のような特性を有し、内側ルーメン(単数または複数)への注射により再装填が可能である。
【0228】
特定の病状の処置のため2種以上の薬剤が望ましい場合、あるいは、第1の薬剤の副作用を軽減するためなど第2の薬剤を投与する場合、いくつかの実施形態は、同一形態の2種の作用物質を利用してもよい。他の実施形態では、異なる形態の作用物質を使用してもよい。同様に、1種または複数種の薬剤が、たとえば安定性を高めるため、または溶出プロファイルを調整するため、アジュバント化合物、賦形剤化合物、または補助化合物を利用する場合、1種または複数種の化合物はやはり、薬剤との適合性があり、インプラントで合理的に保持され得るどのような形態であってもよい。
【0229】
いくつかの実施形態では、インプラントから放出される薬剤を用いた特定の病状の処置は、病状を処置するだけでなく、ある種の望ましくない副作用を誘導することもある。場合によっては、ある種の薬剤の送達は、病理学的状態を処置するけれども、間接的に眼内圧を上昇させることがある。たとえば、ステロイドは、そうした作用を有することがある。ある種の実施形態では、薬物送達シャントは、網膜または本明細書に記載するような他の標的組織など、眼の標的組織にステロイドを送達し、それにより網膜の病状を処置するだけでなく、局所炎症または流体貯留に起因することがある眼内圧の上昇を引き起こす可能性もある。そうした実施形態では、シャント特徴要素は、貯留した流体を運び去ることにより望ましくない眼内圧の上昇を低下させる。このため、いくつかの実施形態では、薬物送達装置としてもシャントとしても機能するインプラントは、治療薬を送達する働きをするだけでなく、同時に貯留した流体を排水し、それにより薬剤の副作用を軽減する働きをすることもできる。そうした実施形態は、眼の環境に展開しても、あるいは、薬剤の送達が、インプラントのシャント特徴要素により抑制する必要がある流体貯留を協調的に引き起こす、任意の他の生理的環境に展開してもよい。そうしたいくつかの実施形態では、貯留した流体の排水に伴う組織損傷または機能の喪失を回避する必要があり、特に標的組織が圧力を受けやすいか、または貯留した流体に呼応して膨張するスペースまたは容積が限られている場合にそうである。眼および脳は、そうした組織の2つの非限定的な例である。
【0230】
本明細書に記載するような実施形態は、生分解性材料、賦形剤、もしくは薬剤の放出特性を改変する他の作用物質と混合または配合した薬剤を含んでもよいことが理解されよう。好ましい生分解性材料として、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)またはPLGAとも呼ばれる乳酸とグリコール酸とのコポリマーがある。本明細書の一部の開示は、PLGAの使用について詳細に記載しているが、そうした実施形態では、他の好適な生分解性材料を、PLGAの代わりに使用してもよいし、またはPLGAと組み合わせて使用してもよいことが、当業者には理解されよう。本明細書に記載するようなある種の実施形態では、インプラントのルーメン内に配置された薬剤は、任意の他の化合物または材料と配合または混合されておらず、それにより、ルーメン内に配置された薬剤の容積が最大化されることも理解されよう。
【0231】
いくつかの実施形態では、PLGAコポリマーまたは他の高分子材料からの特定の薬剤の放出速度を得ることが望ましい場合がある。ポリマーからの薬剤の放出速度は、そのポリマーの分解速度と相関するため、分解速度の制御は、治療薬内に含まれる薬剤の送達速度を制御する手段になる。PLGAコポリマーまたは他のポリマーを構成するポリマー鎖またはコポリマー鎖の平均分子量の変化を用いて、コポリマーの分解速度を制御し、それにより眼への治療薬送達の所望の持続期間または他の放出プロファイルを達成してもよい。
【0232】
PLGAコポリマーを利用する他のある種の実施形態では、PLGAコポリマーの生分解速度を、コポリマー中の乳酸とグリコール酸単位との比率を変化させることにより、制御してもよい。
【0233】
なお他の実施形態は、コポリマーの構成要素の平均分子量を変化させることと、コポリマー中の乳酸とグリコール酸との比率を変化させることとの組み合わせを利用して、所望の生分解速度を達成してもよい。
【0234】
上記のように、いくつかの実施形態では、インプラントのアウターシェルは、ポリマーを含む。加えて、シェルは、インプラント上またはインプラント内の様々な位置に1つまたは複数のポリマーコーティングをさらに含んでもよい。アウターシェルおよび任意のポリマーコーティングは、任意に生分解性である。生分解性アウターシェルおよび生分解性ポリマーコーティングは、以下に限定されるものではないが、ポリ(乳酸)、ポリエチレン−酢酸ビニル、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド−コ−トリメチレンカルボナート)、コラーゲン、ヘパリン化コラーゲン、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(グリコール酸)、および/または他のポリマーもしくはコポリマーなどの任意の好適な材料であってもよい。
【0235】
上記のように、インプラントのいくつかの実施形態は、シェルの形成に使用する構成要素に応じて制御された形で、眼液に対して透過性がある高分子アウターシェルを含む。たとえば、高分子サブユニットの濃度が、得られるシェルの透過性を左右する。したがって、高分子シェルを構成するポリマーの組成が、ポリマーを通る眼液の通過速度、生分解性である場合は、眼液の生分解速度を決定する。シェルの透過性はまた、シェルからの薬剤の放出にも影響を与える。さらに上記のように、シェル上に設けられた薬剤放出の領域も、インプラントからの薬剤の放出プロファイルを変化させる。薬剤の放出の制御はさらに、薬剤放出の領域を形成するか、または薬剤放出の領域の特性を変化させる、シェル中またはシェル上のコーティングにより制御することもできる(たとえば、薬剤放出の領域を覆うコーティングにより、その領域をより厚くし、それにより薬剤の放出速度を遅延させる)。
【0236】
たとえば、薬剤とポリマーとの一定の組み合わせにより、下記のように特徴的な拡散係数Dが得られる。
【0238】
式中、D=拡散係数(cm
2/sec)
【0239】
A=薬剤放出の領域の面積
(Ci−Co)=装置の内側と外側との薬剤濃度の差。
【0241】
このため、薬剤放出の領域の面積および厚さは、インプラントからの薬剤の溶出の速度をある程度決定する変数であり、インプラントの製造プロセスにおいて制御できる変数でもある。高度に不溶性の薬剤を使用するいくつかの実施形態では、薬剤放出の領域を薄く(dが小さい)製造しても、もしくは全体の面積を大きく(Aが大きい)製造しても、または2つを組み合わせて(アウターシェルの構造の充足性により左右される)製造してもよい。いずれの場合も、最終結果は、インプラントの構造および設計に基づき、薬剤の溶出速度を高めて、薬剤の低溶解性を補うものである。
【0242】
これに対し、高度に可溶性の薬剤を使用するいくつかの実施形態では、薬剤放出の領域を、アウターシェルの残部と実質的に同一の厚さで作るか、小さい面積で作るか、またはこれらを組み合わせて作る。
【0243】
加えて、ある種の実施形態は、別のポリマーコーティングを使用して、(i)薬剤放出の領域の有効厚さ(d)を増大させるか、あるいは(ii)インプラントのその部分(薬剤放出の領域とコーティングとを合わせた部分)の全体の透過性を低下させ、薬剤溶出を減少させる。なお他の実施形態では、複数の別のポリマーコーティングを使用する。インプラントと、関連するアウターシェルの薬剤放出の領域との別個の部分、あるいは重なる部分を覆うことにより、インプラントの様々な領域からの薬剤放出を制御し、その結果、インプラント全体からの薬剤放出の制御されたパターンを得る。たとえば、少なくとも2つの薬剤放出の領域を持つインプラントを2種の追加ポリマーで被覆してもよく、この場合、2種の追加ポリマーが放出の一方(over)の領域を覆い、1種のみのポリマーが他方の領域を覆う。このため、2つの薬剤放出の領域からの薬剤の溶出速度が異なり、たとえば、2つの領域から連続的に薬剤が放出されるように制御することができる。他の実施形態では、2つの領域が、異なる速度で放出してもよい。また、複数の内部ルーメンを持つこうした実施形態では、異なる濃度、または異なる薬剤を放出してもよい。これらの変数は制御可能であり、インプラントからの薬剤放出の速度または持続期間に対して変数を変更すると、所望の溶出プロファイルまたは処置レジメンが得られることが理解されよう。
【0244】
本明細書に記載するようないくつかの実施形態では、薬剤溶出を特に促進または制御するために必要とされる、または利用する、直通の穴または貫入する開口部が存在しない。したがって、それらの実施形態では、薬剤の核(非常に高濃度であることがある)と、インプラントを配置する部位に隣接する眼組織との間の直接的な接触がない。場合によっては、インプラント内にある高濃度の薬剤と眼組織を直接接触させると、局所的な細胞毒性が生じることがあり、局所的な細胞死の恐れがある。
【0245】
しかしながら、本明細書に開示されるいくつかの他の実施形態では、所望の薬剤溶出プロファイルを得るため、インプラントのアウターシェルを通る1つまたは複数のオリフィスの数、大きさおよび配置を変化させてもよいことを理解すべきである。インプラントの表面積に対してオリフィスの数、大きさ、またはその両方を増加させると、アウターシェルを通過し、インプラントの内部の治療薬に接触する眼液の量が増加する。同様に、オリフィス:アウターシェルの面積の比率を低下させると、インプラントに入る眼液が減少し、それによりインプラントからの薬剤の放出の速度が低下する。加えて、植え込み中、または眼中に留置した後に、1つまたは複数のオリフィスが遮断された場合、オリフィスが複数あると、インプラントを移植する眼の環境と、インプラント内部との間の余剰な連通手段となる。他の実施形態では、アウターシェルは、インプラントの遠位先端に1つ(または複数)のオリフィス(単数または複数)を含んでもよい。上記のように、このオリフィスの形状および大きさについては、所望の溶出プロファイルに基づき選択する。いくつかの実施形態では、生分解性ポリマープラグを遠位オリフィス内に配置し、それにより生分解性ポリマープラグが、合成コルクとして働く。また、植え込みのプロセスにおける組織の外傷または眼組織のコアリングも抑制され、これにより遠位オリフィスの閉塞または部分的な閉鎖が防止される。加えて、ポリマープラグは、既知の期間で生分解するように調整できるため、プラグにより、薬剤の任意の溶出が起こる前にインプラントを完全に配置できるようになる。なお他の実施形態は、遠位オリフィスと上記のようなアウターシェルのより近位に配置した複数のオリフィスとの組み合わせを含む。
【0246】
さらに、インプラント(オリフィスあるいは薬剤放出の領域を含む)上への1つまたは複数の透過性または半透性コーティングの付加を使用して、溶出プロファイルを調整してもよい。加えて、いくつかの実施形態では、これらの様々な要素の組み合わせを用いて、薬剤放出プロファイルを制御する複数の方法を得てもよい。
【0247】
さらに、本明細書に記載の実施形態に利益となるのは、一部の眼の治療剤の使用範囲を拡大し得ることである。たとえば、眼液に高溶解性の薬剤は、その有効性が、薬剤の急性投与で処置が可能な病状に限定されるため、処置法に対する適用性が狭い場合がある。しかしながら、そうした薬剤を、本明細書に開示されるインプラントと連結すると、長期的な治療法に利用することができる。1つまたは複数の薬剤放出の領域を含むインプラントの遠位部分内に配置された高溶解性薬剤を作って、特定の長期間の制御された放出プロファイルを得てもよい。
【0248】
あるいは、または1つまたは複数の薬剤放出の領域に加えて、1つまたは複数のポリマーコーティングを、インプラントのシェルの外側、または内部ルーメン内側に設置して、薬剤を包むか、または部分的に包んでもよい。1つまたは複数のオリフィスを含むいくつかの実施形態では、ポリマーコーティングは、眼液と接触するインプラントの最初の部分であり、したがって、薬剤を含むインプラントの内部ルーメンへの眼液の流入速度の主要な制御要素となる。ポリマーコーティングの組成、生分解速度(生分解性である場合)、およびポリマーコーティングの空隙率を変更することにより、薬剤が眼液にさらされ、可溶化(solublized)される速度を制御してもよい。このため、そうしたインプラントの実施形態から眼の標的組織に薬剤が放出される速度が、高度に制御される。同様に、眼液に対する溶解性が低い薬剤については、速やかに生分解される、または高度に多孔性のポリマーコーティングで被覆したインプラント内に配置し、インプラント内の薬剤を覆う眼液の流れを増加させてもよい。
【0249】
本明細書に記載のある種の実施形態では、ポリマーコーティングが、インプラントのルーメン内の治療薬を包む。そうしたいくつかの実施形態では、眼液が、インプラントのアウターシェルを通過し、ポリマー層と接触する。そうした実施形態は、ポリマー層が、薬剤の溶出を制御するだけでなく、オリフィスから外部への制御されない薬剤の漏出または損失を防止する構造障壁を与えるのを助けるとも考えられるため、インプラントが1つまたは複数のオリフィスを含む、および/または送達される薬剤が液体、スラリー、エマルジョン、または粒子である場合、特に有用である場合がある。しかしながら、ポリマー層の内部配置はまた、薬剤がどのような形態のインプラントに使用してもよい。
【0250】
一部の眼の障害の治療には、眼への薬剤の投与に関する規定のカイネティックプロファイルが必要になる。種々の実施形態に関する上記の検討から、インプラントからの薬剤の放出速度を調整する能力を用いて、所望のカイネティックプロファイルを同様に達成できることが理解されよう。たとえばアウターシェルおよび任意のポリマーコーティングの組成を操作して、薬剤の放出の特定のカイネティックプロファイルを得てもよい。加えて、シェル材料の厚さ、薬剤放出の領域のシェルの厚さ、薬剤放出の領域の面積、ならびにシェル中の任意のオリフィスの面積および/または数を含むインプラント自体の設計は、特定の薬剤放出プロファイルを得る手段となる。同様に、PLGAコポリマーおよび/または他の放出制御材料および賦形剤を使用して、配合された薬剤の放出の特定のカイネティックプロファイルを得てもよい。コポリマー中の乳酸とグリコール酸との比率、および/もしくは中に薬剤を含む(任意に1種または複数種の他の賦形剤を含む)ポリマーまたはコポリマーの平均分子量を調整することにより、薬剤の徐放、または他の望ましい放出プロファイルを達成してもよい。
【0251】
ある種の実施形態では、上記で論じた特徴および/または変数のいずれかを単独で、または組み合わせて操作して、インプラントの特性が、インプラントからの薬剤放出を制御する主要因となるようにすることにより、薬剤の0次放出を達成してもよい。同様に、薬剤と配合したPLGAを利用するそうした実施形態では、乳酸とグリコール酸との比率、および/またはコポリマー−薬剤組成物の平均分子量を調整して、インプラント構造とPLGAコポリマーの生分解性との組み合わせに基づき、放出カイネティクスを調整してもよい。
【0252】
他の実施形態では、インプラントシェルの組成、薬剤放出の領域の構造および寸法、組成の任意のポリマーコーティング、およびある種の賦形剤または配合製剤(PLGAコポリマー)の使用、真の0次カイネティクスを再現する時間に対する相加作用、の調整により、擬0次放出(または他の所望の放出プロファイル)を達成してもよい。
【0253】
たとえば、一実施形態では、眼液を既知の速度でインプラントに流入させるポリマーコーティングを含むインプラントは、PLGAを1種または複数種の薬剤と配合した一連のペレットを含んでもよく、ペレットには、少なくとも2種類のPLGAコポリマー製剤を含ませる。第1の治療薬の製剤に基づき、既知量の薬剤が一定の時間単位に放出されるように、次の作用物質をそれぞれPLGAと配合してもよい。各コポリマーは、その個々の速度および所望の速度で生分解するか、または侵食するため、一定期間に眼に放出される薬剤の総量は、実質的に、0次カイネティクスで放出される。さらに本明細書に記載するような薬剤間仕切りを利用し、複数のPLGA製剤を含むペレットと併用して機能する実施形態であれば、得られる薬剤の放出速度およびカイネティックプロファイルに対する別のレベルの制御を付加すると考えられることが理解されよう。
【0254】
非連続的またはパルス放出が、望ましいこともある。これは、たとえば、各々が1つまたは複数の薬剤放出の領域に装着された複数のサブルーメンを持つインプラントを製造することにより、達成してもよい。いくつかの実施形態では、追加のポリマーコーティングを使用して、一部の薬剤放出の領域からの薬剤放出を一定時間防止しながら、その時間に他の薬剤放出の領域から薬剤を溶出させる。他の実施形態では、さらに上記のような1つまたは複数の生分解性間仕切りを利用して、インプラント内に半永久または一時的な物理的障壁を与えて、さらに、インプラントからの薬剤の放出が少ない期間または非放出期間の振幅または持続期間を微調整する。加えて、間仕切りの生分解速度を制御することにより、休薬期間の長さを制御してもよい。いくつかの実施形態では、間仕切りの生分解を、外部の刺激により誘導したり、あるいは増強したりしてもよい。いくつかの実施形態では、流体の眼内注射により、障壁の生分解を刺激または増強する。いくつかの実施形態では、外部由来の刺激は、熱、超音波および高周波、もしくはレーザーエネルギーの印加の1つまたは複数である。
【0255】
ある種の実施形態は、薬剤放出の領域が開口オリフィスではないことから、植え込みプロセスにおける組織外傷または眼組織のコアリングを最小限に抑えるのに、特に有利である。加えて、この領域は厚さおよび面積が既知(したがって薬剤放出プロファイルが既知)であるため、任意に、薬剤の任意の溶出が起こる前にインプラントを完全に配置できるように製造してもよい。
【0256】
また、アウターシェルの内部への薬剤の収容については、薬剤放出を制御する機構として使用してもよい。処置対象の病状に応じて、いくつかの実施形態では、ルーメンは遠位位置にあってもよく、他の実施形態では、ルーメンはより近位の位置にあってもよい。入れ子状または同心円状のチューブ装置を利用するこうした実施形態では、作用物質(単数または複数)を、入れ子状または同心円状の高分子シェルの間に形成されたルーメンのいずれかの中に入れてもよい
【0257】
薬剤放出のさらなる制御については、複数のルーメンを持つ特定の実施形態における薬剤の収容位置によって得る。たとえば、植え込み後直ちに薬剤の放出を所望する場合、植え込みから眼液への治療薬の曝露までの期間が短い、インプラントの第1の放出ルーメン内に薬剤を入れる。これは、たとえば第1の放出ルーメンを、アウターシェルの厚さが薄い(または面積が大きい、またはその両方)薬剤放出の領域と並置することにより達成される。眼液への曝露の時間がより長い第2の放出ルーメンに入れられる第2の作用物質は、第1の薬剤の放出の開始後に薬剤を眼に溶出する。これは、第2の放出ルーメンを、シェルがより厚いか、またはより面積がより小さい(またはその両方)薬剤放出の領域と並置することにより達成することができる。任意に、この第2の薬剤は、第1の薬剤の放出および活性により引き起こされる副作用を処置する。
【0258】
さらに、上記のような複数のルーメンは、放出される薬剤の特定の濃度プロファイルを達成するのに有用であることも理解されよう。たとえば、いくつかの実施形態では、第1の放出ルーメンが、第1の濃度の薬剤を含む薬剤を含み、第2の放出ルーメンが、異なる濃度の同一の薬剤を含んでもよい。所望の濃度プロファイルについては、異なる薬剤濃度を持つ薬剤を利用して、薬剤の溶出開始時期、およびそれに伴う眼組織の濃度を制御するように、それらをインプラントに入れることにより調整すればよい。
【0259】
さらに、薬剤の収容位置を使用して、薬剤放出の期間後に薬剤の放出のない期間を達成してもよい。例として、植え込み後直ちに薬剤が眼に放出されるように、第1の放出ルーメンに薬剤を入れてもよい。第2の放出ルーメンは、薬剤を含まないままでもよいし、あるいは、薬剤を放出しない期間が得られる不活性な生体内分解性物質を含んでもよい。次いで薬剤を含む第3の放出ルーメンを眼液にさらして、そうして薬剤放出の第2の期間を開始してもよい。
【0260】
インプラントによる薬物送達の速度を制御する際は、シェルの特性のいずれか1つまたはシェルの特性の組み合わせを変化させる能力、任意のポリマーコーティングの特性、任意のポリマー−薬剤の混合物、薬剤放出の領域の寸法および数、オリフィスの寸法および数、ならびにインプラント内の薬剤の位置により、広範囲の柔軟性が得られることが理解されよう。
【0261】
薬剤溶出プロファイルはまた、1つまたは複数のプラグにより隔てられた、インプラントの同一の内部ルーメン内に含まれる複数の薬剤の利用により、制御してもよい。例として、インプラントの遠位先端に単一の薬剤放出の領域を含むインプラントでは、インプラントに流入する眼液は主に、最も遠位側の薬剤が実質的に侵食され、溶出する時点まで、最も遠位側の薬剤と接触する。この期間に、眼液は、第1の半透性間仕切りを通過し、プラグの近位に設置された第2の薬剤を侵食し始める。以下で検討するように、これらの最初の2つの薬剤および第1のプラグの組成、ならびに薬剤放出の領域の特性をそれぞれ制御すると、2種類の用量の薬剤の経時的な濃度の上昇、または時間依存性の送達など、全体として所望の溶出プロファイルを得ることができる。また、類似のインプラントの実施形態を用いて、連続的に様々な薬剤を展開してもよい。
【0262】
2種の薬剤を分離することが望ましい場合、間仕切りを使用してもよい。間仕切りは任意に、インプラントにより送達される薬剤と同等またはそれより遅い速度で生分解する。間仕切りは、間仕切りが、インプラントの内部ルーメン内の適切な位置に置かれたとき、ルーメンのより近位の部分をルーメンの遠位部分から密封するように、個々のインプラントの実施形態の内部寸法に合わせて設計する。したがって、間仕切りは、内部ルーメン内の個々のコンパートメントを作る。第1の薬剤は、より近位のコンパートメントに入れてもよく、一方第2の薬剤もしくは第2の濃度の第1の薬剤、またはアジュバント剤は、より遠位のコンパートメントに入れてもよい。したがって、上記のように、眼液の流入および薬剤の放出速度は、制御可能であり、薬剤は、縦列にして放出させても、順々に放出させても、または一定期間交互に放出させてもよい。
【0263】
また、間仕切りを使用すれば、相互に反応してもよいが、その反応が、単純にインプラントルーメン内ではなく、眼組織またはその近傍で起こることが望ましい治療薬または化合物のために別々のコンパートメントを設けることができる。実用的な例として、2種の化合物が、他方の化合物(たとえばプロドラッグおよびモディファイヤー)が存在するまで不活性であった場合、これらの2種の化合物を、一方の薬剤を含むルーメンとのみ関連する少なくとも1つの薬剤放出の領域を有する単一のインプラントで、やはり送達することができる。インプラントから眼腔(ocular space)への各化合物の溶出後、各化合物は混じり合い、標的組織に近接して活性になると考えられる。上記の説明から判断できるように、このようにして2種を超える薬剤を送達する場合、薬剤を隔離するのに適したより多くの数の間仕切りを利用することが望ましい。
【0264】
ある種の実施形態では、近位障壁が、遠位に設置したインプラントの内部ルーメン内に治療薬を密封する働きをする。そうした障壁の目的は、より遠位に設置された任意の眼液の流入地点からの眼液が確実に、治療薬に接触する眼液の一次供給源となることにある。同様に、前方方向への薬剤の溶出を防止する薬剤不透過性シールも形成される。前方への溶出を防止すると、眼の前部に由来する眼液による薬剤の希釈が防止されるだけでなく、装置により送達される薬剤の潜在的な副作用も抑制される。インプラントの遠位領域から生じる部位への薬剤の溶出を制限すると、眼のより後方領域の標的部位への薬剤の送達が改善される。十分に生分解性である実施形態では、近位キャップまたは障壁は、そのインプラントにより送達されるどの薬剤よりも生分解速度が遅いことを特徴とする、生体適合性生分解性ポリマーを含んでもよい。第1の用量の薬剤が完全に溶出した後にインプラントへの再装填を可能にする、インプラントの長さにわたる単一の中央ルーメンを持つこうした実施形態では、近位キャップが有用であることが理解されよう。それらの実施形態では、単一の中央ルーメンが存在して、新たな薬剤を装置の遠位部分内に入れることができる。しかし、単一の中央ルーメンについては、前方方向での薬剤の希釈または溶出を回避するため、近位端または近位端近傍で密封することが好ましい。
【0265】
インプラント内に形成してもよい縦軸方向に設置する複数のコンパートメントと同様に、薬剤も、相互に入れ子になった1つまたは複数のルーメン内に配置してもよい。特に望ましい薬剤または特に望ましい濃度の薬剤を入れ子状のルーメンに順序よく配置することにより、上記のような放出制御またはカイネティックプロファイルを同様に達成することができる。
【0266】
また、インプラント内の様々な薬剤の放出特性を制御するには、上記のような芯を利用してもよい。インプラントの別の内部ルーメンに入っている1つまたは複数の芯は、眼液が薬剤と相互作用し得るルーメンに、眼液を速やかに移動させるのを助ける。その放出に、より多くの眼液を必要とする薬剤は任意に、芯が、オリフィスが単独で可能であると考えられるより多くの眼液をもたらすルーメンに配置してもよい。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の芯を使用してもよい。
【0267】
いくつかの実施形態では、薬剤を調節可能な寸法にして、薬剤と内部ルーメンの壁との間のスペースへの眼液の流れを増加させるか、または制限することにより、放出プロファイルをさらに調整する。たとえば、第1の固形または半固形薬剤が、もう1つの固形または半固形薬剤より迅速に溶出することが最適であった場合、薬剤と内部ルーメンの壁との間に実質的な隙間ができる寸法に第1の薬剤を形成すると、インプラントに入る眼液が、より大きな表面積にわたり薬剤と接触するため、望ましい場合がある。そうした薬剤の寸法は、各薬剤の溶出および溶解性特性に基づき、容易に調整できる。逆に、薬剤を、治療薬と内部ルーメンの壁との間に最小量の残余スペースが残るような寸法にする実施形態では、最初の薬剤溶出を遅延させてもよい。なお他の実施形態では、インプラントルーメンの全体を薬剤で満たし、薬剤放出の持続期間を最大化したり、あるいは、インプラントに再装填する必要性を低下させたりする。
【0268】
ある種の実施形態は、インプラントの薬物送達部分に加えてシャントを含んでもよい。たとえば、インプラントを所望の眼内腔に(前後方向に)配置したならば、少なくとも1つの流出チャネルを含むインプラントのシャント部分を、生理的流出スペースに挿入してもよい(たとえば小柱網に固定し、流体をシュレム管に放出する)。いくつかの実施形態では、こうして複数の開口部が、インプラントの排水シャント部分の開通性および作動性を維持するのに役立つ。さらに、上記のような複数の開口部は、インプラントにより送達される治療薬の作用に起因し得る過剰な流体の生成または貯留に関連する望ましくない副作用を軽減することもできる。
【0269】
上記のように、薬剤放出の持続期間は、長期間にわたると望ましい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の実施形態に従うインプラントは、制御された速度で標的組織に数(すなわち少なくとも3)ヶ月間薬剤を送達することができる。ある種の実施形態では、インプラントは、再装填の必要なしに制御された速度で薬剤を標的組織に3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、15ヶ月、18ヶ月および24ヶ月などの約6ヶ月以上送達することができる。なお他の実施形態では、制御された薬剤放出の持続期間(インプラントに再装填せずに)は、2年を超える(たとえば、3年、4年、5年またはそれ以上)。また、ある種の実施形態では、上述の2つ以上の値が接する、重なる、またはそれらを含む範囲など、別の時間枠も使用することを理解されたい。
【0270】
ある種の実施形態では、標的組織への薬剤の放出制御との関連で、薬剤(単数または複数)は、一定期間にわたりある種の用量であるのが望ましい。したがって、いくつかの実施形態では、薬剤の総負荷量、たとえば、インプラントの寿命にわたり標的組織に送達されるステロイドの総負荷量は、約10〜約1000μgまでの幅がある。ある種の実施形態では、薬剤の総負荷量は、約100〜約900μg、約200〜約800μg、約300〜約700μg、または約400〜約600μgまでの幅がある。いくつかの実施形態では、薬剤の総負荷量は、約10〜約300μg、約10〜約500μg、または約10〜約700μgまでの幅がある。他の実施形態では、薬剤の総負荷量は、約200〜約500μg、400〜約700μg、または約600〜約1000μgまでの幅がある。なお他の実施形態では、薬剤の総負荷量は、約200〜約1000μg、約400〜約1000μg、または約700〜約1000μgまでの幅がある。いくつかの実施形態では、薬剤の総負荷量は、約500〜約700μg、約550〜約700μg、または575μg、590μg、600μg、610μgおよび625μgなどの約550〜約650μgまでの幅がある。また、ある種の実施形態では、上述の各範囲が接する、重なる、またはそれらを含む範囲など、別の範囲の薬剤も使用することを理解されたい。
【0271】
同様に、他の実施形態では、制御された薬物送達量を、インプラントからの薬剤の溶出速度に基づき算出する。そうしたある種の実施形態では、薬剤、たとえば、ステロイドの溶出速度は、約0.05μg/日〜約10μg/日である。他の実施形態では、約0.05μg/日〜約5μg/日、約0.05μg/日〜約3μg/日、または約0.05μg/日〜約2μg/日の溶出速度を達成する。他の実施形態では、約2μg/日〜約5μg/日、約4μg/日〜約7μg/日、または約6μg/日〜約10μg/日の溶出速度を達成する。他の実施形態では、約1μg/日〜約4μg/日、約3μg/日〜約6μg/日、または約7μg/日〜約10μg/日の溶出速度を達成する。なお他の実施形態では、0.06μg/日、0.07μg/日、0.08μg/日、0.09μg/日、0.1μg/日、0.2μg/日、0.3μg/日、0.4μg/日、0.5μg/日、0.6μg/日、0.7μg/日、0.8μg/日または0.9μg/日などの約0.05μg/日〜約1μg/日の溶出速度を達成する。また、ある種の実施形態では、上述の各範囲が接する、重なる、またはそれらを含む範囲など、別の範囲の薬剤も使用することを理解されたい。
【0272】
あるいは、または上記のパラメーターの1つまたは複数に加えて、インプラントからの薬剤の放出については、標的組織での薬剤の所望の濃度に基づいて制御してもよい。いくつかの実施形態では、標的組織での薬剤、たとえば、ステロイドの所望の濃度は、約1nm〜約100nmまでの幅がある。他の実施形態では、作用部位での薬剤の所望の濃度は、約10nm〜約90nm、約20nm〜約80nm、約30nm〜約70nmまたは約40nm〜約60nmまでの幅がある。なお他の実施形態では、作用部位での薬剤の所望の濃度は、約1nm〜約40nm、約20nm〜約60nm、約50nm〜約70nmまたは約60nm〜約90nmまでの幅がある。なお他の実施形態では、作用部位での薬剤の所望の濃度は、約1nm〜約30nm、約10nm〜約50nm、約30nm〜約70nmまたは約60nm〜約100nmまでの幅がある。いくつかの実施形態では、作用部位での薬剤の所望の濃度は、46nm、47nm、48nm、49nm、50nm、51nm、52nm、53nmおよび54nmなどの約45nm〜約55nmまでの幅がある。また、ある種の実施形態では、上述の各範囲が接する、重なる、またはそれらを含む範囲など、別の範囲の薬剤も使用することを理解されたい。
【0273】
上述のある種の実施形態は、再装填可能である。そうしたいくつかの実施形態では、新しい薬剤をルーメン(単数または複数)に注射することにより、再装填を達成する。いくつかの実施形態では、移植した薬物送達インプラントへの再充填には、前房を通り、クランピングスリーブがインプラントの近位端上を摺動できるインプラントの近位端まで、再装填装置を前進させる必要がある。たとえば、
図20Aを参照されたい。次いで手術者は、インプラントの近位端を可撓性クランピンググリッパーで把持して、しっかりと保持する。次いで、インプラント内のその位置に、バネ荷重式であってもよい可撓性プッシャーチューブにより、治療薬の新規用量の薬剤、または新しい薬剤を押し込む。いくつかの実施形態では、プッシャーチューブは、治療薬をしっかりと保持しつつ、インプラントへの送達を準備するための小さな内部凹みを含む。他の実施形態では、平面が、治療薬をインプラント内の位置に推進する。
【0274】
プッシャーのバネの動きについては任意に予め決めておき、治療薬を既知の距離、インプラントの内部ルーメンの最も遠位側部分に押し込む。あるいは、たとえば、とどまっている治療薬がインプラントから完全に溶出する時間以前に、新しい治療薬が入っている場合、バネの動きを手動で設定してもよく、それにより距離を縮めて、新しい治療薬を前進させる必要がある。再装填プロセスは、任意の固定要素と協力して、インプラントをその元の位置から大きく移動させずに達成してもよい。
【0275】
任意に、再装填装置には、再装填中の漏出を防止するシールを含ませてもよい。そうしたシールは、たとえば、再充填される薬剤の形態が液体である場合、望ましいことがある。漏出を防止するのに好適なシールとして、たとえば、Oリング、コーティング、親水性作用物質、疎水性作用物質、およびこれらの組み合わせがある。コーティングは、たとえば、MDX(登録商標)シリコーン油などのシリコーンコートであってもよい。
【0276】
他の実施形態では、再装填の際は、前房を通り、一方向弁によって再装填装置を前進させる必要がある。
図20Bおよび20Cを参照されたい。弁は、近位端で開口し、遠位端で可逆的に閉鎖する2つ以上のフラップ70を含む。再装填装置が前進すると、後方端でフラップが開口し、後房への薬剤の注入が可能になる。再装填装置の除去時に、フラップは、閉鎖位置(遠位端で)に戻り、それにより注入された薬剤をルーメン内に保持する。いくつかの実施形態では、ルーメンからの液体(液体に似た流れ特性を持つ粉体またはマイクロペレットを含む)薬剤の逆流を防止するためのシールが作成されるように、一方向弁を形成する。他の実施形態では、流体密封シールを形成しない。
【0277】
他の好適な保持方法を用いて、新たに入れられた薬剤ペレットを適切な位置に保持してもよい。たとえば、いくつかの実施形態では、新たに入れられたペレットより内径が小さい変形可能なOリングを使用する。そうした実施形態では、再装填装置の代わりに、薬剤ペレットを通過させるのに十分なOリングを使用する。ただし、装置の除去時に、Oリングは、その元の直径に戻り、それによりペレットをルーメン内に保持する。
【0278】
なお他の実施形態では、再装填装置が貫通できる「自己治癒」材料で作られたプラグを使用する。そうした実施形態では、再装填装置からの圧力により、装置がプラグを貫入し、新しい薬剤を内部ルーメンに注入する。再装填装置の除去時に、プラグは、薬剤を再密封し、ルーメン内に保持する
【0279】
新しい薬剤をルーメンに挿入および保持させるのに十分な可撓性がある任意の材料の一方向弁を設けてもよい。そうした材料として、シリコーン、テフロン(登録商標)、可撓性グラファイト、スポンジ、シリコーンゴム、ガラス繊維強化材を含むシリコーンゴム、neoprene(登録商標)、レッドラバー、ワイヤー挿入レッドラバー、cork & neoprene(登録商標)、植物繊維、コルク/ラバー、コルク/ニトリル、ガラス繊維、布入りゴム、ビニル、ニトリル、ブチル、天然ゴム状物質、ウレタン、炭素繊維、フルオロエラストマーおよび同種のものがあるが、これに限定されるものではない。
【0280】
<薬剤>
薬物送達インプラントと共に使用する治療薬として、以下に記載する1種または複数種の薬剤単独、あるいは、組み合わせたものを挙げることができる。また、利用する薬剤は、以下に記載する薬剤の1つまたは複数の等価物、誘導体、またはアナログであってもよい。薬剤としてさらに、医薬剤、たとえば抗緑内障薬、眼剤、制菌剤(たとえば、抗生物質、抗ウイルス薬、抗寄生虫薬、抗真菌薬)、抗炎症薬(ステロイドまたは非ステロイド性抗炎症剤など)、生物学的製剤、たとえばホルモン、酵素または酵素関連成分、抗体または抗体関連成分、オリゴヌクレオチド(DNA、RNA、低分子干渉RNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよび同種のものなど)、DNA/RNAベクター、ウイルス(野生型あるいは遺伝子改変)またはウイルスベクター、ペプチド、タンパク質、酵素、細胞外マトリックス成分、ならびに1種または複数種の生物学的成分を産生するように構成される生細胞があるが、これに限定されるものではない。任意の特定の薬剤の使用は、その主要効果または規制機関の承認した処置適応、または使用法に限定されるものではない。薬剤はまた、別の薬剤もしくは治療薬の1つまたは複数の副作用を軽減あるいは処置する化合物または他の材料も含む。多くの薬剤が複数の作用機序を持つため、下記の任意の一治療薬クラスのうち任意の特定の薬剤を記載することは、その薬剤の考えられる1つの使用を示すものにすぎず、眼科用インプラント系との併用の範囲を限定することを意図するものではない。
【0281】
上記で論じたように、治療薬は、当該技術分野において公知のどのような数の賦形剤と組み合わせてもよい。上記で論じた生分解性高分子賦形剤に加えて、以下に限定されるものではないが、ベンジルアルコール、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、セチルアルコール、クロスカルメロースナトリウム、デキストラン、デキストロース、フルクトース、ゼラチン、グリセリン、モノグリセリド、ジグリセリド、カオリン、塩化カルシウム、ラクトース、ラクトース一水和物、マルトデキストリン、ポリソルベート、アルファ化デンプン、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、シリコンジオキシド、コーンスターチ、タルクおよび同種のものなど他の賦形剤を使用してもよい。1種または複数種の賦形剤は、総量で約1%、5%、または10%という少量で含めてもよく、他の実施形態では、総量で50%、70%または90%という多くの量で含めてもよい。
【0282】
薬剤の例として、様々な抗分泌薬;有糸分裂阻害薬および他の抗増殖剤、たとえば特に、血管形成抑制剤、たとえばアンジオスタチン、酢酸アネコルタブ、トロンボスポンジン、VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤および抗血管内皮細胞増殖因子(抗VEGF)薬、たとえばラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標))およびベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、ペガプタニブ(MACUGEN(登録商標))、スニチニブおよびソラフェニブ、ならびに血管形成抑制作用を有する様々な公知の小分子、および転写阻害剤のいずれか;公知の眼科用薬剤のクラス、たとえば、緑内障薬、たとえばアドレナリンアンタゴニスト、たとえば、β遮断薬、たとえばアテノロール プロプラノロール、メチプラノロール、ベタキソロール、カルテオロール、レボベタキソロール、レボブノロールおよびチモロール;アドレナリンアゴニストまたは交感神経様作用薬、たとえばエピネフリン、ジピベフリン、クロニジン、アプラクロニジンおよびブリモニジン;副交感神経刺激薬またはコリン作動性(cholingeric)アゴニスト、たとえばピロカルピン、カルバコール、フォスフォリンヨウ素およびフィゾスチグミン、サリチラート、塩化アセチルコリン、エゼリン、フルオロリン酸ジイソプロピル、臭化デメカリウム);ムスカリン作用薬;カルボニックアンヒドラーゼ阻害剤、たとえば局所薬および/または全身薬、たとえばアセトゾラミド、ブリンゾラミド、ドルゾラミドおよびメタゾラミド、エトキシゾラミド、ダイアモックスならびにジクロフェナミド;散瞳薬/毛様体筋麻痺薬、たとえばアトロピン、シクロペントラート、サクシニルコリン、ホマトロピン、フェニレフリン、スコポラミンおよびトロピカミド;プロスタグランジン、たとえばプロスタグランジンF2α、抗プロスタグランジン、プロスタグランジン前駆体、またはプロスタグランジンアナログ剤、たとえばビマトプロスト、ラタノプロスト、トラボプロストおよびウノプロストンを挙げることができる。
【0283】
薬剤の他の例としてさらに、抗炎症薬、たとえば糖質コルチコイドおよびコルチコステロイド、たとえばベタメタゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、デキサメタゾン21−ホスファート、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン21−ホスファート、酢酸プレドニゾロン、プレドニゾロン、フルオロメトロン、ロテプレドノール、メドリゾン、フルオシノロンアセトニド、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、ベクロメタゾン、ブデソニド、フルニソリド、フルオロメトロン、フルチカソン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ロテプレドノール、リメキソロン、ならびに非ステロイド系抗炎症薬、たとえば、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ブロムフェナク、ネパフェナクおよびケトロラク、サリチラート、インドメタシン、イブプロフェン、ナキソプレン、ピロキシカムおよびナブメトン;感染症治療薬または制菌剤、たとえば抗生物質、たとえば、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラミシジン、セファレキシン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、リファンピシン、シプロフロキサシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシン、ペニシリン、スルホンアミド、スルファジアジン、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルフイソキサゾール、ニトロフラゾン、プロピオン酸ナトリウム、アミノグリコシド、たとえばゲンタマイシンおよびトブラマイシン;フルオロキノロン、たとえばシプロフロキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン;バシトラシン、エリスロマイシン、フシジン酸、ネオマイシン、ポリミキシンB、グラミシジン、トリメトプリムおよびスルファセタミド;抗真菌薬、たとえばアムホテリシンBおよびミコナゾール;抗ウイルス剤、たとえばイドクスウリジン トリフルオロチミジン、アシクロビル、ガンシクロビル、インターフェロン;抗真菌剤;免疫調節薬、たとえば抗アレルギー薬、たとえば、クロモグリク酸ナトリウム、アンタゾリン、メタピリリン、クロルフェニラミン、セトリジン、ピリラミン、プロフェンピリダミン 抗ヒスタミン剤、たとえばアゼラスチン、エメダスチンおよびレボカバスチン;免疫薬(ワクチンおよび免疫刺激剤など);マスト細胞安定薬、たとえばクロモリンナトリウム、ケトチフェン、ロドキサミド、ネドクロミル、オロパタジンおよびペミロラスト毛様体切除剤、たとえばゲンチマイシンおよびシドホビル;ならびに他の眼科用作用物質、たとえばベルテポルフィン、プロパラカイン、テトラカイン、シクロスポリンおよびピロカルピン;細胞表面糖タンパク質受容体の阻害剤;鬱血除去剤、たとえばフェニレフリン、ナファゾリン、テトラヒドラゾリン;脂質または降圧脂質;ドーパミン作動性アゴニストおよび/またはアンタゴニスト、たとえばキンピロール、フェノルドパムおよびイボパミン;血管痙攣阻害剤;血管拡張剤;降圧薬;アンジオテンシン変換酵素(ACE:angiotensin converting enzyme)阻害剤;アンジオテンシン−1受容体アンタゴニスト、たとえばオルメサルタン;微小管重合阻害剤;分子モーター(ダイニンおよび/またはキネシン)阻害剤;アクチン細胞骨格制御因子、たとえばサイトカラシン、ラトランクリン、スウィンホリドA、エタクリン酸、H−7およびRho−キナーゼ(ROCK)阻害剤;リモデリング阻害剤;細胞外マトリックスのモジュレーター、たとえばtert−ブチルヒドロ−キノロンおよびAL−3037A;アデノシン受容体アゴニストおよび/またはアンタゴニスト、たとえばN−6−シクロヘキシルアデノシンおよび(R)−フェニルイソプロピルアデノシン;セロトニンアゴニスト;ホルモン薬、たとえばエストロゲン、エストラジオール、プロゲステロンホルモン、プロゲステロン、インスリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、ペプチドおよびバソプレシン視床下部放出因子;増殖因子アンタゴニストまたは増殖因子、たとえば、上皮増殖因子、線維芽細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、トランスフォーミング増殖因子β、ソマトトロピン、フィブロネクチン、結合組織増殖因子、骨形態形成タンパク質(BMP:bone morphogenic protein);サイトカイン、たとえばインターロイキン、CD44、コクリンおよび血清アミロイド、たとえば血清アミロイドAを挙げることができる。
【0284】
他の治療薬として、神経保護薬、たとえばルベルゾール、ニモジピンおよび関連化合物、たとえば血流改善薬、ナトリウムチャネル遮断薬、グルタミン酸阻害剤、たとえばメマンチン、神経栄養因子、一酸化窒素合成酵素阻害剤;フリーラジカルスカベンジャーまたは酸化防止剤;キレート化化合物;アポトーシス関連プロテアーゼ阻害剤;新たなタンパク質合成を抑制する化合物;放射線治療薬;光線力学的治療薬;遺伝子治療薬;遺伝子修飾因子;ならびにドライアイ薬、たとえばシクロスポリンA、デルムルセントおよびヒアルロン酸ナトリウムを挙げることができる。
【0285】
使用してもよい他の治療薬として、他のβ遮断薬、たとえばアセブトロール、アテノロール、ビソプロロール、カルベジロール、アスモロール、ラベタロール、ナドロール、ペンブトロールおよびピンドロール;他のコルチコステロイドおよび非ステロイド系抗炎症薬、たとえばアスピリン、ベタメタゾン、コルチゾン、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、フルドロコルチゾン、フルルビプロフェン、ヒドロコルチゾン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナメート、メフェナム酸、メロキシカム、メチルプレドニゾロン、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、プレドニゾロン、プリオキシカム、サルサラート、スリンダクおよびトルメチン;COX−2阻害剤、たとえばセレコキシブ、ロフェコキシブおよびバルデコキシブ;他の免疫調節薬、たとえばアルデスロイキン、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))、アザチオプリン、バシリキシマブ、ダクリズマブ、エタネルセプト(ENBREL(登録商標))、ヒドロキシクロロキン、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、レフルノミド、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチルおよびスルファサラジン;他の抗ヒスタミン剤、たとえばロラタジン、デスロラタジン、セチリジン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、デクスクロルフェニラミン、クレマスチン、シプロヘプタジン、フェキソフェナジン、ヒドロキシジンおよびプロメタジン;他の抗感染症薬、たとえばアミノグリコシド系薬、たとえばアミカシンおよびストレプトマイシン;抗真菌薬、たとえばアムホテリシンB、カスポファンギン、クロトリマゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ボリコナゾール、テルビナフィンおよびニスタチン;抗マラリア薬、たとえばクロロキン、アトバコン、メフロキン、プリマキン、キニジンおよびキニーネ;抗マイコバクテリウム薬、たとえばエタンブトール、イソニアジド、ピラジナミド、リファンピンおよびリファブチン;抗寄生虫剤、たとえばアルベンダゾール、メベンダゾール、チオベンダゾール、メトロニダゾール、ピランテル、アトバコン、ヨードキノール、イベルメクチン、パロマイシン、プラジカンテルおよびトリメトレキサート;他の抗ウイルス薬、たとえば抗CMVまたは抗ヘルペス薬、たとえばアシクロビル、シドホビル、ファムシクロビル、ガングシクロビル、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビダラビン、トリフルリジンおよびホスカルネット;プロテアーゼ阻害剤、たとえばリトナビル、サキナビル、ロピナビル、インジナビル、アタザナビル、アンプレナビルおよびネルフィナビル;ヌクレオチド/ヌクレオシド/非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、たとえばアバカビル、ddI、3TC、d4T、ddC、テノホビルおよびエムトリシタビン、デラビルジン、エファビレンツおよびネビラピン;他の抗ウイルス薬、たとえばインターフェロン、リバビリンおよびトリフルリジン;他の抗菌薬、たとえばカバペネム、たとえばエルタペネム、イミペネムおよびメロペネム;セファロスポリン、たとえばセファドロキシル、セファゾリン、セフジニル、セフジトレン、セファレキシン、セファクロル、セフェピム、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフォテタン、セフォキシチン、セフポドキシム、セフプロジル、セフタキシジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシムおよびロラカルベフ;他のマクロライド系薬およびケトライド系薬、たとえばアジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシンおよびテリスロマイシン;ペニシリン(クラブラン酸を含む、および含まない)、たとえばアモキシシリン、アンピシリン、ピバンピシリン、ジクロキサシリン、ナフシリン、オキサシリン、ピペラシリンおよびチカルシリン;テトラサイクリン系薬、たとえばドキシサイクリン、ミノサイクリンおよびテトラサイクリン;他の抗菌剤、たとえばアズトレオナム、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リネゾリド、ニトロフラントインおよびバンコマイシン;α遮断薬、たとえばドキサゾシン、プラゾシンおよびテラゾシン;カルシウム−チャネル遮断薬、たとえばアムロジピン、ベプリジル、ジルチアゼム、フェロジピン、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニソルジピンおよびベラパミル;他の降圧薬、たとえばクロニジン、ジアゾキシド、フェノルドパン、ヒドララジン、ミノキシジル、ニトロプルシド、フェノキシベンザミン、エポプロステノール、トラゾリン、トレプロスチニルおよびニトラートを用いた作用物質;抗凝固薬、たとえばヘパリンおよびヘパリノイド、たとえばヘパリン、ダルテパリン、エノキサパリン、チンザパリンおよびフォンダパリナックス;他の抗凝固薬、たとえばヒルジン、アプロチニン、アルガトロバン、ビバリルジン、デシルジン、レピルジン、ワルファリンおよびキシメラガトラン;抗血小板薬、たとえばアブシキシマブ、クロピドグレル、ジピリダモール、エプチフィバチド、チクロピジンおよびチロフィバン;プロスタグランジンPDE−5阻害剤および他のプロスタグランジン剤、たとえばアルプロスタジル、カルボプロスト、シルデナフィル、タダラフィルおよびバルデナフィル;トロンビン阻害剤;抗血栓薬;抗血小板凝集剤;血小板溶解薬および/または線維素溶解薬、たとえばアルテプラーゼ、アニストレプラーゼ、レテプラーゼ、ストレプトキナーゼ、テネクテプラーゼおよびウロキナーゼ;抗増殖剤、たとえばシロリムス、タクロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、パクリタキセルおよびミコフェノール酸;ホルモン関連薬、たとえばレボチロキシン、フルオキシメストロン、メチルテストステロン、ナンドロロン、オキサンドロロン、テストステロン、エストラジオール、エストロン、エストロピペート、クロミフェン、ゴナドトロピン、ヒドロキシプロゲステロン、レボノルゲストレル、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、ミフェプリストン、ノルエチンドロン、オキシトシン、プロゲステロン、ラロキシフェンおよびタモキシフェン;抗腫瘍薬、たとえばアルキル化剤、たとえばカルムスチン ロムスチン、メルファラン、シスプラチン、フルオロウラシル、およびプロカルバジン抗生物質に似た薬、たとえばブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、マイトマイシンおよびプリカマイシン;抗増殖薬(1,3−シスレチノイン酸、5−フルオロウラシル、タキソール、ラパマイシン、マイトマイシンCおよびシスプラチンなど);代謝拮抗薬、たとえばシタラビン、フルダラビン、ヒドロキシ尿素、メルカプトプリンおよび5−フルオロウラシル(5−FU);免疫調節薬、たとえばアルデスロイキン、イマチニブ、リツキシマブおよびトシツモマブ;有糸分裂阻害剤、たとえばドセタキセル、エトポシド、ビンブラスチンおよびビンクリスチン;放射性薬、たとえばストロンチウム−89;ならびに他の抗腫瘍薬、たとえばイリノテカン、トポテカンおよびミトタンがある。
【0286】
本開示のある種の実施形態について記載してきたが、これらの実施形態は、単に例示として提示したものにすぎず、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。実際に、本明細書に記載の新規な方法、系および装置については、様々な他の形態で実施してもよい。たとえば、例示または説明されたあるインプラントの実施形態を、例示または説明された別のシャントの実施形態と組み合わせてもよい。さらに、上述のインプラントを他の目的のために利用してもよい。たとえば、インプラントは、流体を前房から眼の他の位置または眼の外側に排水するために使用してもよい。さらに、本開示の精神を逸脱しない範囲で、本明細書に記載の方法、系および装置の形態において様々な省略、代用および変更を行ってもよい。