特許第6043841号(P6043841)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6043841ディスク装置用フレキシャのインターリーブ配線部
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043841
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】ディスク装置用フレキシャのインターリーブ配線部
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/60 20060101AFI20161206BHJP
   G11B 21/21 20060101ALI20161206BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20161206BHJP
   H05K 1/05 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   G11B5/60 P
   G11B21/21 C
   H05K1/02 J
   H05K1/05 B
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-148667(P2015-148667)
(22)【出願日】2015年7月28日
(62)【分割の表示】特願2012-531(P2012-531)の分割
【原出願日】2012年1月5日
(65)【公開番号】特開2015-195079(P2015-195079A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2015年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒井 肇
【審査官】 斎藤 眞
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−253583(JP,A)
【文献】 特開2008−003118(JP,A)
【文献】 特開平11−259813(JP,A)
【文献】 特開2002−289992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/56−5/60
G11B 21/16−21/26
H05K 1/00−1/02
H05K 1/05
H05K 3/02−3/26
H05K 3/38
H05K 3/44−3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の極のための第1の導体と、他方の極のための第2の導体とを有し、前記第1の導体と前記第2の導体とがそれぞれ磁気ヘッドの素子に接続されるディスク装置用フレキシャのインターリーブ配線部であって、
開口部を有するメタルベースと、
前記メタルベースの前記開口部を含む領域に重ねて配置され、前記メタルベースと対向する第1の面およびこの第1の面とは反対側の第2の面を有する電気絶縁性の絶縁層と、
前記第1の導体から分岐しかつ前記絶縁層の前記第2の面上にそれぞれ所定間隔を存して配置された一方の極の少なくとも3本の第1分岐導体と、
前記第1分岐導体と前記絶縁層を覆う電気絶縁性の第1のカバー樹脂層と、
前記第2の導体から分岐しかつ前記第1のカバー樹脂層上で互いに隣り合う前記第1分岐導体間にそれぞれ配置された他方の極の少なくとも2本の第2分岐導体と、
前記第2分岐導体と前記第1のカバー樹脂層を覆う電気絶縁性の第2のカバー樹脂層とを有し、かつ、
互いに隣り合う前記第1分岐導体と前記第2分岐導体との間の距離が、前記第1分岐導体と前記第2分岐導体の厚さ以下であることを特徴とするディスク装置用フレキシャのインターリーブ配線部。
【請求項2】
前記第2分岐導体は、前記第1のカバー樹脂層に接する第1平面部と、該第1平面部とは反対側の第2平面部と、両側面とを有し、該両側面は、前記第1平面部から前記第2平面部に向かって両側面間の距離が大きくなるよう傾斜した形状をなしていることを特徴とする請求項1に記載のディスク装置用フレキシャのインターリーブ配線部。
【請求項3】
前記第1分岐導体は、前記絶縁層に接する第1平面部と、該第1平面部とは反対側の第2平面部と、両側面とを有し、該両側面は、該第1分岐導体の前記第1平面部から前記第2平面部に向かって両側面間の距離が小さくなるよう傾斜した形状をなしていることを特徴とする請求項2に記載のディスク装置用フレキシャのインターリーブ配線部。
【請求項4】
前記絶縁層は、前記第1分岐導体間の前記第2の面に形成された凹部を有し、該凹部と対応した位置に、前記第1のカバー樹脂層を間に介して前記第2分岐導体が配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のディスク装置用フレキシャのインターリーブ配線部。
【請求項5】
前記第2分岐導体の数が前記第1分岐導体よりも1つ少なく、互いに隣り合う前記第1分岐導体間に前記第2分岐導体が配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のディスク装置用フレキシャのインターリーブ配線部。
【請求項6】
前記第2分岐導体の幅が前記第1分岐導体の幅よりも大きいことを特徴とする請求項5に記載のディスク装置用フレキシャのインターリーブ配線部。
【請求項7】
前記第1分岐導体と前記第2分岐導体の厚さが互いに等しいことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のディスク装置用フレキシャのインターリーブ配線部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばパーソナルコンピュータ等の情報処理装置のためのディスク装置に使用されるフレキシャのインターリーブ配線部に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に、ハードディスク装置(HDD)が使用されている。ハードディスク装置は、スピンドルを中心に回転する磁気ディスクと、ピボット軸を中心に旋回するキャリッジなどを含んでいる。キャリッジのアームに、ディスク装置用サスペンションが設けられている。
【0003】
ディスク装置用サスペンションは、ベースプレートと、ロードビーム(load beam)などを備えている。ロードビームにフレキシャ(flexure)が配置されている。このフレキシャの先端付近に形成されたジンバル部に、スライダが取付けられている。スライダには、データの読取りあるいは書込み等のアクセスを行なうための素子(トランスジューサ)が設けられている。これらサスペンションとフレキシャなどによって、ヘッドジンバルアセンブリ(head gimbals assembly)が構成されている。
【0004】
前記フレキシャは、要求される仕様に応じて様々な形態のものが実用化されている。例えば配線付フレキシャ(flexure with conductors)が知られている。配線付フレキシャの配線部は、薄いステンレス鋼板からなるメタルベースと、このメタルベース上に形成されたポリイミド等の電気絶縁材料からなる絶縁層と、この絶縁層上に形成された銅からなる複数の導体などを含んでいる。導体の一端はスライダの素子(例えばMR素子)に接続されている。導体の他端はディスク装置のアンプ等に接続されている。
【0005】
前記フレキシャの配線部は、アンプおよびスライダの素子とのマッチングをとる上で、また消費電力を小さくする上でも、インピーダンスを小さくすることが望まれている。また、低インダクタンス化も要求されている。さらにデータの高速転送を可能にするためには、高周波数帯域でも減衰が小さいという特性(低減衰性)も要求されている。
【0006】
このような要求に対し、マルチトレース伝送線(multi-trace transmission lines)を備えた配線付フレキシャが有効である。マルチトレース伝送線を備えた配線部はインターリーブ配線部とも称されている。下記特許文献1に、インターリーブ配線部を有するフレキシャが開示されている。インターリーブ配線部を備えたフレキシャは、高周波数帯域での減衰が小さいためデータの高速転送に適している。
【0007】
図13図14は従来のインターリーブ配線部100の一例を示している。このインターリーブ配線部100は、第1の導体101から2本に分岐した第1分岐導体101a,101bと、第2の導体102から2本に分岐した第2分岐導体102a,102bとを含んでいる。図14に示すように、メタルベース110上に絶縁層111が形成されている。この絶縁層111上に全ての分岐導体101a,101b,102a,102bが配置されている。これら分岐導体101a,101b,102a,102bはカバー樹脂層112によって覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5717547号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記従来例(図13図14)のインターリーブ配線部の各導体は、それぞれ2本に分岐している。しかし本発明者達の研究によれば、各導体の分岐数を増やすことによって、さらなる低インピーダンス化が図れること、そして各分岐導体間の距離を極力小さくすることにより、さらなる低インピーダンス化が可能であるという知見が得られている。
【0010】
しかし従来のインターリーブ配線部のように、全ての分岐導体が同一平面上に配置されているものでは、分岐導体をエッチングあるいはめっきによって形成する際に使用するレジストの関係から、分岐導体間の距離を小さくすることに限界がある。例えば前記従来例(図14)のように、絶縁層111上に全ての分岐導体101a,101b,102a,102bが形成されている場合、各分岐導体間に形成されるレジストの幅を小さくすることに限界があるため、分岐導体間の距離Gが15μm以上となっている。
【0011】
このため低インピーダンス化を図るために全ての分岐導体を絶縁層の同一平面上に配置すると、インターリーブ配線部の幅が大きくなり、配線付フレキシャのデザイン上の自由度が制約されるなどの問題が生じた。
【0012】
従って本発明の目的は、低インピーダンス化が図れるとともに、幅が大きくなることを抑制できるディスク装置用フレキシャのインターリーブ配線部を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、一方の極のための第1の導体と、他方の極のための第2の導体とを有し、前記第1の導体と前記第2の導体とがそれぞれ磁気ヘッドの素子に接続されるディスク装置用フレキシャのインターリーブ配線部であって、開口部を有するメタルベースと、電気絶縁性の絶縁層と、前記第1の導体から分岐した一方の極の少なくとも3本の第1分岐導体と、前記第2の導体から分岐した他方の極の少なくとも2本の第2分岐導体と、電気絶縁性の第1のカバー樹脂層と、電気絶縁性の第2のカバー樹脂層とを有している。前記絶縁層は、前記メタルベースの前記開口部を含む領域に重ねて配置され、前記メタルベースと対向する第1の面およびこの第1の面とは反対側の第2の面を有している。前記第1分岐導体は、前記絶縁層の前記第2の面上にそれぞれ所定間隔を存して配置されている。前記第1のカバー樹脂層は、前記第1分岐導体と前記絶縁層を覆っている。前記第2分岐導体は、それぞれ前記第1のカバー樹脂層上で互いに隣り合う前記第1分岐導体間に配置されている。互いに隣り合う前記第1分岐導体と前記第2分岐導体との間の距離が、前記第1分岐導体と前記第2分岐導体の厚さ以下である。前記第2のカバー樹脂層は、前記第2分岐導体と前記第1のカバー樹脂層とを覆っている。
【0014】
本発明の1つの実施形態において、前記第2分岐導体は、前記第1のカバー樹脂層に接する第1平面部と、該第1平面部とは反対側の第2平面部と、両側面とを有し、該両側面は、前記第1平面部から前記第2平面部に向かって両側面間の距離が大きくなるよう傾斜した形状をなしている。また前記第1分岐導体が、前記絶縁層に接する第1平面部と、該第1平面部とは反対側の第2平面部と、両側面とを有し、該両側面は、該第1分岐導体の前記第1平面部から前記第2平面部に向かって両側面間の距離が小さくなるよう傾斜した形状をなしていてもよい。
【0015】
前記絶縁層は、前記第1分岐導体間の前記第2の面に形成された凹部を有し、該凹部と対応した位置に、前記第1のカバー樹脂層を間に介して前記第2分岐導体が配置されていてもよい。あるいは前記第2分岐導体の数が前記第1分岐導体よりも1つ少なく、互いに隣り合う前記第1分岐導体間にそれぞれ前記第2分岐導体が配置されていてもよい。この場合、前記第2分岐導体の幅が前記第1分岐導体の幅よりも大きくてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、インターリーブ配線部の低インピーダンス化が図れるとともに、インターリーブ配線部の幅が大きくなることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】サスペンションを備えたディスク装置の一例を示す斜視図。
図2図1に示されたディスク装置の一部の断面図。
図3】本発明の第1の実施形態に係るディスク装置用フレキシャを有するヘッドジンバルアセンブリの平面図。
図4図3に示されたディスク装置用フレキシャのインターリーブ配線部を模式的に示す回路図。
図5図3中のF5−F5線に沿うインターリーブ配線部の一部の断面図。
図6】本発明の第2の実施形態に係るインターリーブ配線部の断面図。
図7】本発明の第3の実施形態に係るインターリーブ配線部の断面図。
図8】比較例のインターリーブ配線部の断面図。
図9】前記各実施形態と比較例の作動インピーダンスを示す図。
図10】本発明の第4の実施形態に係るインターリーブ配線部の断面図。
図11】本発明の第5の実施形態に係るインターリーブ配線部の断面図。
図12】本発明の第6の実施形態に係るインターリーブ配線部の断面図。
図13】従来のインターリーブ配線部を模式的に示す回路図。
図14図13に示されたインターリーブ配線部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の第1の実施形態について、図1から図5を参照して説明する。
図1に示すハードディスク装置(以下、ディスク装置と称する)1は、ケース2と、スピンドル3を中心に回転する磁気ディスク4と、ピボット軸5を中心に旋回可能なキャリッジ6と、キャリッジ6を旋回させるためのポジショニング用モータ7とを有している。ケース2は、図示しない蓋によって密閉される。
【0019】
図2は、ディスク装置1の一部を模式的に示す断面図である。図2に示されるようにキャリッジ6は、複数(例えば3つ)のアクチュエータアーム8を有している。これらアクチュエータアーム8の先端部に、それぞれサスペンション10が取付けられている。各サスペンション10の先端に、磁気ヘッドを構成するスライダ11が設けられている。
【0020】
磁気ディスク4がスピンドル3を中心に高速で回転すると、磁気ディスク4とスライダ11との間にエアベアリングが形成される。ポジショニング用モータ7によってキャリッジ6を旋回させることにより、スライダ11を磁気ディスク4の所望トラックまで移動させることができる。スライダ11には、例えばMR素子のように電気信号と磁気信号とを変換することができる素子が設けられている。これらの素子によって、磁気ディスク4の記録面に対するデータの書込みあるいは読取り等のアクセスが行なわれる。
【0021】
図3は、サスペンション10を備えたヘッドジンバルアセンブリの一例を示している。サスペンション10は、ベースプレート20と、ロードビーム21と、ヒンジ部22などを備えている。ベースプレート20のボス部20aは、前記アクチュエータアーム8に固定される。
【0022】
サスペンション10に、配線付フレキシャ(flexure with conductors)30が設けられている。これ以降は、配線付フレキシャ30を単にフレキシャ30と称する。フレキシャ30は、ロードビーム21に沿って配置されている。フレキシャ30はロードビーム21にレーザ溶接等の固定手段によって固定されている。フレキシャ30の先端部付近に、ジンバル部として機能するタング31が形成されている。タング31に前記スライダ11が取付けられている。フレキシャ30の後部(テール部)30aは、アンプ35に向かってベースプレート20の後方に延びている。
【0023】
このフレキシャ30には、フレキシャ30の長手方向(図3に矢印Lで示す方向)に延びる配線部40が設けられている。配線部40の一端側は、磁気ヘッドとして機能するスライダ11の素子に接続されている。配線部40の他端側は、図示しない回路基盤あるいは中継回路等を介してディスク装置1のアンプ35(図3に示す)に接続される。この配線部40は、以下に説明するインターリーブ配線部40Aを含んでいる。
【0024】
図4は、インターリーブ配線部40Aを模式的に示す回路図である。図4中の矢印Lがフレキシャ30の長手方向すなわちインターリーブ配線部40Aの長手方向である。インターリーブ配線部40Aは、例えばプラス極の第1の導体41と、例えばマイナス極の第2の導体42とを有している。第1の導体41は3本に分岐し、それぞれ第1分岐導体41a,41b,41cをなしている。第2の導体42は2本に分岐し、それぞれ第2分岐導体42a,42bをなしている。すなわち第2分岐導体42a,42bの数は第1分岐導体41a,41b,41cよりも1つ少ない。
【0025】
図5は、インターリーブ配線部40Aの幅方向に沿う断面を示している。図5中の矢印Wがインターリーブ配線部40Aの幅方向、矢印Zはインターリーブ配線部40Aの厚さ方向を示している。
【0026】
図5に示すようにインターリーブ配線部40Aは、メタルベース50と、メタルベース50上に形成されたポリイミド等の電気絶縁性の樹脂からなる絶縁層51と、第1分岐導体41a,41b,41cと、第2分岐導体42a,42bと、第1のカバー樹脂層61と、第2のカバー樹脂層62とを含んでいる。カバー樹脂層61,62は、例えばポリイミド等の電気絶縁性を有する樹脂からなる。メタルベース50には開口部50aが形成されている。開口部50aはフレキシャ30の長手方向に延びている。
【0027】
メタルベース50は例えばステンレス鋼板等の金属板からなる。メタルベース50の厚さはロードビーム21の厚さよりも小さく、15〜20μm(例えば18μm)である。ロードビーム21の厚さは、例えば30〜62μmである。
【0028】
第1分岐導体41a,41b,41cの幅W1の一例は、それぞれ30μmである。第2分岐導体42a,42bの幅W2の一例は、それぞれ45μmである。すなわち第2分岐導体42a,42bの幅W2は、第1分岐導体41a,41b,41cの幅W1よりも大きい。第1分岐導体41a,41b,41cと第2分岐導体42a,42bの厚さは、それぞれ、例えば5μmである。第1分岐導体41a,41b,41cと第2分岐導体42a,42bの断面は、それぞれ、ほぼ長方形である。絶縁層51の厚さは、例えば10μmである。カバー樹脂層61,62の厚さは、例えば4μmである。
【0029】
絶縁層51は、メタルベース50の開口部50aを覆う領域に重ねて配置されている。この絶縁層51は、メタルベース50と対向する第1の面51aと、第1の面51aとは反対側に位置する第2の面51bとを有している。
【0030】
図5に示されるように第1分岐導体41a,41b,41cは、絶縁層51の第2の面51b上に互いに所定間隔(例えば55μm)を存してほぼ平行に配置されている。これら第1分岐導体41a,41b,41cと絶縁層51は、第1のカバー樹脂層61によって覆われている。
【0031】
第2分岐導体42a,42bは、第1のカバー樹脂層61上に形成されている。一対の第2分岐導体42a,42bのうち、一方の第2分岐導体42aは、互いに隣り合う第1分岐導体41a,41b間に互いにほぼ平行に配置されている。他方の第2分岐導体42bは、互いに隣り合う第1分岐導体41b,41c間に互いにほぼ平行に配置されている。第2分岐導体42a,42bと第1のカバー樹脂層61は、第2のカバー樹脂層62によって覆われている。
【0032】
第1分岐導体41a,41b,41cと第2分岐導体42a,42bは、例えばめっき銅などの高導電率の金属からなる。第1分岐導体41a,41b,41cは、絶縁層51の第2の面51bに沿って所定のパターンとなるように、例えばめっきによって形成されている。第2分岐導体42a,42bは、第1のカバー樹脂層61に沿って所定のパターンとなるように、例えばめっきによって形成されている。第1分岐導体41a,41b,41cと第2分岐導体42a,42bは、互いにほぼ平行に配置され、かつ、インターリーブ配線部40Aの長手方向L(基準配線方向)に沿って、フレキシャ30の長手方向に延びている。
【0033】
次に、インターリーブ配線部40Aの製造工程について説明する。
絶縁層51上に所定パターンの第1分岐導体41a,41b,41cをめっきまたはエッチングによって形成する。そののち、第1分岐導体41a,41b,41cと絶縁層51を覆うために第1のカバー樹脂層61をコーティングする。そののち、第1のカバー樹脂層61上に、第2分岐導体42a,42bのパターンに対応したレジストを形成する。
【0034】
このレジストは、第1分岐導体41a,41b,41cを覆っている第1のカバー樹脂層61上に形成される。このため、第1分岐導体41a,41b,41cから第2分岐導体42a,42bまでの距離が十分近付くようにレジストを形成することができる。このため、第1のカバー樹脂層61上に形成される第2分岐導体42a,42bから第1分岐導体41a,41b,41cまでの距離(図5に示す導体間距離G1)を、例えば3〜5μmの小さな値にすることが可能である。このように導体間距離G1を小さくすることにより、インターリーブ配線部40Aのインピーダンスを大幅に下げることができる。
【0035】
本実施形態では、第1分岐導体41a,41b,41cの厚さ(例えば5μm)と第2分岐導体42a,42bの厚さ(例えば5μm)がそれぞれ等しく、かつ、第1分岐導体41a,41b,41cと第2分岐導体42a,42bとの間の距離(導体間距離G1)を前記厚さ以下(例えば3〜5μm)としている。
【0036】
第2分岐導体42a,42bがめっきによって第1のカバー樹脂層61上に形成されたのち、第2分岐導体42a,42bと第1のカバー樹脂層61を覆うために第2のカバー樹脂層62をコーティングする。
【0037】
図6は、本発明の第2の実施形態に係るインターリーブ配線部40Bを示している。このインターリーブ配線部40Bの第2分岐導体42a´,42b´は、断面が逆台形状をなしている。すなわち図6に示す第2分岐導体42a´,42b´は、第1のカバー樹脂層61に接する第1平面部71と、第1平面部71とは反対側の第2平面部72と、両側面73,74とを有し、この両側面73,74は、第1平面部71から第2平面部72に向かって両側面73,74間の距離が大きくなるよう傾斜した形状をなしている。このため、第1平面部71の幅W3は第2平面部72の幅W4よりも小さい。W3の一例は45μmであり、W4の一例は55μmである。第1分岐導体41a,41b,41cの断面は長方形であり、幅W1の一例は30μmである。
【0038】
このように構成されたインターリーブ配線部40Bによれば、第1分岐導体41a,41b,41cと第2分岐導体42a´,42b´との間の距離(導体間距離)を、第1の実施形態の導体間距離G1よりも小さくすることが可能である。それ以外の構成は第1の実施形態のインターリーブ配線部40A(図5)と同様であるため、第1の実施形態と共通の箇所に共通の符号を付して説明を省略する。
【0039】
図7は、本発明の第3の実施形態に係るインターリーブ配線部40Cを示している。このインターリーブ配線部40Cの第1分岐導体41a´,41b´,41c´は、断面が台形状をなしている。すなわち図7に示す第1分岐導体41a´,41b´,41c´は、それぞれ、絶縁層51に接する第1平面部81と、第1平面部81とは反対側の第2平面部82と、両側面83,84とを有し、この両側面83,84は、第1平面部81から第2平面部82に向かって両側面83,84間の距離が小さくなるよう傾斜した形状をなしている。このため第2平面部82の幅W6が第1平面部81の幅W5よりも小さい。W5の一例は30μm、W6の一例は23μmである。第2分岐導体42a´,42b´は、第2の実施形態と同様に断面が逆台形状をなしており、第1平面部71の幅W3が第2平面部72の幅W4よりも小さい。W3の一例は45μm、W4の一例は62μmである。
【0040】
このように構成されたインターリーブ配線部40Cによれば、第1分岐導体41a´,41b´,41c´と第2分岐導体42a´,42b´との間の距離(導体間距離)を、第2の実施形態よりもさらに小さくすることが可能である。それ以外の構成は第2の実施形態のインターリーブ配線部40B(図6)と同様であるため、第2の実施形態と共通の箇所に共通の符号を付して説明を省略する。
【0041】
図8は、比較例のインターリーブ配線部100Aを示している。このインターリーブ配線部100Aは、低インピーダンス化を図るために、3本の第1分岐導体101a,101b,101cと、3本の第2分岐導体102a,102b,102cとを有している。開口部110aを有するメタルベース110上に絶縁層111が形成されている。そして全ての分岐導体101a〜101c,102a〜102cが絶縁層111上に配置されている。この場合、めっきあるいはエッチングによって分岐導体101a〜101c,102a〜102cを形成する際に使用するレジストの幅を小さくすることに限界があるため、分岐導体間の距離Gが15μm以上となっている。
【0042】
図9のEX1〜EX4は、それぞれ前記第1〜第3の実施形態のインターリーブ配線部40A,40B,40Cと、比較例のインターリーブ配線部100Aの作動インピーダンスとを示している。比較例(図8)のインターリーブ配線部100Aは、約16オームと低い値である。しかし分岐導体間の距離Gが15μm以上と大きいため、インピーダンスを小さくするには各分岐導体の幅を大きくする必要があり、配線部100Aの幅W8が554μmと大きくなってしまっている。
【0043】
第1,第2,第3の実施形態のインターリーブ配線部40A,40B,40Cの作動インピーダンスは、それぞれ19オーム、15オーム、14オームであり、低インピーダンス化が図れている。配線部の幅に関しては、第1,第2,第3の実施形態のインターリーブ配線部40A,40B,40Cの幅W7は260μmであり、比較例の幅W8の半分以下となっている。これは第1,第2,第3の実施形態のインターリーブ配線部40A,40B,40Cの導体間距離G1が5μm以下と、比較例の導体間距離G(15μm)の3分の1以下であることによる。
【0044】
図10は、本発明の第4の実施形態に係るインターリーブ配線部40Dを示している。このインターリーブ配線部40Dは、絶縁層51の第2の面51bに凹部90を有している。これらの凹部90は、第1分岐導体41a,41b,41c間に形成されている。そして第1のカバー樹脂層61の一部が凹部90に入り込んでいる。それぞれの凹部90と対応した位置に、第1のカバー樹脂層61を間に介して、第2分岐導体42a,42bが配置されている。
【0045】
このように第4の実施形態のインターリーブ配線部40Dは、凹部90に第2分岐導体42a,42bを配置したことにより、第1分岐導体41a,41b,41cと第2分岐導体42a,42bの高さを揃えることができる。それ以外の構成は第1の実施形態のインターリーブ配線部40A(図5)と同様であるため、第1の実施形態と共通の箇所に共通の符号を付して説明を省略する。
【0046】
図11は、本発明の第5の実施形態に係るインターリーブ配線部40Eを示している。このインターリーブ配線部40Eも、絶縁層51の第2の面51bに凹部90を有している。これらの凹部90は、第1分岐導体41a,41b,41c間に形成されている。そして第1のカバー樹脂層61の一部が凹部90に入り込んでいる。それぞれの凹部90と対応した位置に、第1のカバー樹脂層61を間に介して、第2分岐導体42a´,42b´が配置されている。
【0047】
このように第5の実施形態のインターリーブ配線部40Eは、凹部90に第2分岐導体42a´,42b´が配置されていることにより、第1分岐導体41a,41b,41cと第2分岐導体42a´,42b´の高さを揃えることができる。それ以外の構成は第2の実施形態のインターリーブ配線部40B(図6)と同様であるため、第2の実施形態と共通の箇所に共通の符号を付して説明を省略する。
【0048】
図12は、本発明の第6の実施形態に係るインターリーブ配線部40Fを示している。このインターリーブ配線部40Fも、絶縁層51の第2の面51bに凹部90を有している。これらの凹部90は、第1分岐導体41a´,41b´,41c´間に形成されている。そして第1のカバー樹脂層61の一部が凹部90に入り込んでいる。それぞれの凹部90と対応した位置に、第1のカバー樹脂層61を間に介して、第2分岐導体42a´,42b´が配置されている。
【0049】
このように第6の実施形態のインターリーブ配線部40Fは、凹部90に第2分岐導体42a´,42b´が配置されていることにより、第1分岐導体41a´,41b´,41c´と第2分岐導体42a´,42b´の高さを揃えることができる。それ以外の構成は第3の実施形態のインターリーブ配線部40C(図7)と同様であるため、第3の実施形態と共通の箇所に共通の符号を付して説明を省略する。
【0050】
以上説明したように、第1〜第6の実施形態のインターリーブ配線部40A〜40Fによれば、低インピーダンス化を図ることができ、しかも配線部の幅を従来よりも小さくすることができる。このためインターリーブ配線部を有するフレキシャのデザイン上の自由度が大きくなるとともに、幅が小さい配線付フレキシャに用いることが可能である。
【0051】
なお本発明を実施するに当たり、フレキシャを構成するメタルベースや絶縁層をはじめとして、第1および第2の導体、第1分岐導体、第2分岐導体、第1のカバー樹脂層、第2のカバー樹脂層などの発明の構成要素を、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更して実施できることは言うまでもない。また第1分岐導体と第2の分岐導体の数が同じであってもよいし、第1分岐導体の幅と第2分岐導体の幅が同じであってもよい。
【符号の説明】
【0052】
30…フレキシャ
40A,40B,40C,40D,40E,40F…インターリーブ配線部
41…第1の導体
41a,41b,41c,41a´,41b´,41c´…第1分岐導体
42…第2の導体
42a,42b,42a´,42b´…第2分岐導体
50…メタルベース
50a…開口部
51…絶縁層
61…第1のカバー樹脂層
62…第2のカバー樹脂層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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