前記金属塩は、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、リチウムおよびニッケルからなる群から選択された金属を含む、アクリレートの金属塩、ジアクリレートの金属塩、メタクリレートの金属塩およびジメタクリレートの金属塩からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物を作製する方法。
前記ベースゴム材料は、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン、天然ゴム、およびこれらの組合せからなる群から選択される材料を含むことを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物を作製する方法。
【背景技術】
【0002】
ゴルフは、アマチュアおよびプロのレベルの両方で人気が高まっているスポーツである。ゴルフボールの製造および設計に関連する様々な技術が、当該技術分野において公知である。このような技術により、様々なプレー特性および耐久性を有するゴルフボールが得られた。例えば、あるゴルフボールは、初期速度、スピン、および総距離に関して、他のゴルフボールより良好な飛行性能を有する。
【0003】
ゴルフボールは、通常、様々なタイプの材料から作製される。選択される材料は、完成したゴルフボールに要求されるプレー特性に応じて決まる。例えば、ゴルファーは、ドライバーまたはロングアイアンで打ったときに最大距離を提供するために、より硬質のゴルフボールを望むことがある。他の場合、ゴルファーは、より短いアイアンを用いてゴルフボールのスピンを制御するために、より軟質のゴルフボールを望むことがある。選択される材料は、ゴルフボールのプレー特性および感触に影響を与える。
【0004】
ゴルフボールを作製する方法は、ゴルフボールの特定の構成要素のために選択される材料によって難しくなることがある。例えば、ゴム材料が選択される場合、ゴム組成物の混合および硬化を補助するために、加工助剤が必要とされることが多い。ゴム材料に加えられる加工助剤は、ゴム組成物全体にわたって均一に分散するのが難しいことがある。さらに、一部の加工助剤は、装置への堆積またはゴム材料の処理中の飛散による材料の損失のため、処理するのが難しい。したがって、かなりの応力が、処理装置にかかることで、方法の効率が低下される。さらに、飛散による出発材料の損失により、出発材料を含む生成物を作製するための方法がより高コストになるだけでなく、生成物中に残る出発材料の量の不正確さまたは誤差ももたらす。
【0005】
より詳細には、ゴム組成物は、過酸化物遊離基開始剤などの架橋剤を含み得る。このような架橋剤を含有するゴム組成物は、架橋助剤(co−agent)も含む。ジアクリル酸亜鉛は、1つのこのような架橋助剤である。
【0006】
ジアクリル酸亜鉛は、ゴム組成物の調製の際に問題になり得る粉末材料である。この粉末材料の典型的な粒度により、ジアクリル酸亜鉛は、混合中に環境中に飛散する傾向を有し、これは、ジアクリル酸亜鉛の損失につながる。処理中の材料の損失は、必要な量より多い材料が混合デバイスに含まれることを必要とし、それにより、プロセスがより高コストになる。
【0007】
さらに、ジアクリル酸亜鉛は、装置の金属部分に粘着する傾向を有する。この問題は、プレートアウト(plating out)として公知である。飛散またはプレートアウトによるジアクリル酸亜鉛の損失は、ゴム組成物の調製に不要な問題をもたらす。ジアクリル酸亜鉛の使用により、プロセスが、より効率が低く、おそらくより高コストになる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
一般に、本開示は、油中の加工助剤の分散体を提供する。さらに、本開示は、加工助剤および油の分散体を形成するための方法を提供する。加工助剤および油の分散体は、ゴム組成物中に混入される前に調製される。予混合された分散体は、ゴム組成物の調製中にゴム材料に加えられる。さらにまた、本開示は、予混合された分散体を含有するゴム組成物を調製するための方法を提供する。
【0018】
本開示の実施形態において、ゴム組成物のベースゴム材料としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンコポリマー、メタロセンで触媒されたポリオレフィン、天然ゴム、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0019】
架橋剤および充填剤などの加工助剤が、ゴム組成物に含まれていてもよい。好適な架橋剤は、過酸化物、ジアクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛、およびメタクリル酸マグネシウムからなる群から選択され得る。
【0020】
典型的に、過酸化物は、ゴム組成物における架橋剤として使用され得る。遊離基開始剤として好適な有機過酸化物としては、例えば、過酸化ジクミル(DCP);n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルペルオキシ)バレレート;1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(TMCH);2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン;ジ−t−ブチルペルオキシド;ジ−t−アミルペルオキシド;t−ブチルペルオキシド;t−ブチルクミルペルオキシド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3;ジ(2−t−ブチル−ペルオキシイソプロピル)ベンゼン;過酸化ジラウロイル;過酸化ジベンゾイル;t−ブチルヒドロペルオキシド;およびそれらの組合せが挙げられる。過酸化物遊離基開始剤は、一般に、0.05phr、または0.1phr、または0.25phr、または1重量部、または1.5phrの下限、および2.5phr、または3phr、または5phr、または6phr、または10phr、または15phrの上限を有する範囲内の量で、ゴム組成物中に存在する。
【0021】
架橋助剤が、ゴム組成物の硬化を向上させるために、過酸化物とともに使用され得る。好適な架橋助剤としては、例えば、3〜8個の炭素原子を有する不飽和カルボン酸の金属塩;不飽和ビニル化合物および多官能性モノマー(例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート);フェニレンビスマレイミド;およびそれらの組合せが挙げられる。特に好適な金属塩としては、例えば、アクリレート、ジアクリレート、メタクリレート、およびジメタクリレートの1つ以上の金属塩が挙げられ、ここで、金属は、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、リチウム、およびニッケルから選択される。特定の実施形態において、架橋助剤は、アクリレート、ジアクリレート、メタクリレート、およびジメタクリレートの亜鉛塩から選択される。別の特定の実施形態において、架橋助剤は、ジアクリル酸亜鉛(ZDA)である。
【0022】
架橋助剤が、ジアクリル酸亜鉛および/またはジメタクリル酸亜鉛である場合、架橋助剤は、典型的に、1phr、または5phr、または10phr、または20phrの下限、および25phr、または30phr、または35phr、または40phr、または50phr、または60phrの上限を有する範囲内の量で、ゴム組成物に含まれる。モノメタクリル酸亜鉛ならびに様々な液体アクリレートおよびメタクリレートなどの1つ以上の活性が低い架橋助剤が使用される場合、使用される活性が低い架橋助剤の量は、ジアクリル酸亜鉛およびジメタクリル酸亜鉛架橋助剤と同じであってもまたはそれより多くてもよい。
【0023】
金属アクリレートは、様々な粒度で利用可能である。金属アクリレートなどの粉末材料である場合、この粉末材料の粒度は、典型的に、300μm以下である。本開示の実施形態は、約100μm以下の数平均粒度を有する金属アクリレートを含む。ある実施形態において、約10μm以下の数平均粒度。他の実施形態において、約5μm以下の数平均粒度。より詳細には、金属アクリレートの数平均粒度は、約0.01μm〜約10μmの範囲であり得る。
【0024】
上記の硬化剤および架橋助剤に加えて、1つ以上の好適な充填剤が、ゴム組成物に含まれていてもよい。好適な充填剤としては、酸化亜鉛、タングステン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよびアルミナが挙げられる。開示される方法において、酸化亜鉛が、充填剤として使用され得る。
【0025】
分散剤および活性剤などのさらなる加工助剤が、任意選択で、本開示のゴム組成物に含まれていてもよい。特に、ステアリン酸亜鉛が、加工助剤として(例えば、活性剤として)加えられ得る。
【0026】
上述されるように、特定の加工助剤が、ゴム組成物の処理の際に問題になる。特に、金属アクリレートは、ゴム組成物中の加工助剤として使用され得る、問題を引き起こす粉末材料である。より詳細には、金属アクリレートに関連する1つの問題には、ゴム組成物を処理するのに使用される装置の金属表面における金属アクリレートの堆積またはプレートアウトが含まれていた。さらに、金属アクリレートを含む粉末材料は、埃っぽく、環境中に飛散する傾向を有し、これは、処理の際の材料の損失につながる。材料の損失により、ゴム組成物の処理がより高コストになり得る。さらに、出発材料の損失により、ゴム組成物中に残っている出発材料の量の測定の正確性が低下する。これらの欠点はさらに、ゴム組成物全体にわたる金属アクリレートの不十分な分散につながる。
【0027】
本発明者らは、金属アクリレートおよび油の分散体の使用により、ゴム組成物の処理の際の粉末材料の使用に関連する欠点が回避されることを発見した。より詳細には、金属アクリレートおよび油の分散体が、調製され、次に、ゴム組成物中に導入される。金属アクリレートおよび油を、ゴム組成物中への導入の前に予混合することによって、金属アクリレートの飛散が大幅に減少されるかまたはなくされる。さらに、装置の金属部分における金属アクリレートのプレートアウトも大幅に減少されるかまたはなくされる。出発材料の損失の減少により、ゴム組成物中の金属アクリレートのより正確な用量が得られ、ひいては、ゴム組成物を調製するコストが減少され得る。
【0028】
さらに、油中の分散体としての金属アクリレートの導入は、ゴム組成物全体にわたる金属アクリレートのより均等な分布を提供する。金属アクリレートのより均等な分布はさらに、ゴム組成物のより均等な硬化をもたらす。
【0029】
分散体の実施形態は、ジアクリル酸亜鉛などの金属アクリレート、およびゴム組成物に使用するのに好適な任意の油を含む。さらに、分散体の実施形態は、金属アクリレートと組み合わされるのに好適な油を含む。予混合された分散体のために選択される油は、任意の好適な粘度のものであり得る。本開示の実施形態において、金属アクリレートと予混合された分散体のために選択される油は、低粘度を有する。低粘度油の使用により、金属アクリレート粒子が、ゴム組成物の調製の際の飛散およびプレートアウトを減少させるかまたはなくすのに十分に湿潤しているようにする。
【0030】
分散体の油は、プロセス油、植物油、加硫または官能化植物油、動物油、官能化油、油性可塑剤、およびそれらのブレンドからなる群から選択される。典型的に、分散体の油は、プロセス油、植物油、官能化植物油、およびそれらのブレンドからなる群から選択される。
【0031】
好適なプロセス油としては、例えば、ASTM D2226によって分類される、芳香族油、ナフテン系油、およびパラフィン系油が挙げられる。当業者が認識しているように、このような油は、典型的に、芳香族油と、ナフテン系油と、パラフィン系油とのブレンドであり、油の主なタイプの特性および特徴によって分類される。一実施形態において、プロセス油は、パラフィン系油、ナフテン系油、およびそれらのブレンドから選択される。芳香族油は、同じ量のナフテン系油またはパラフィン系油よりゴム組成物の粘度を低下させるが、厳しく規制される可能性がより高いであろう。
【0032】
芳香族油としては、American Lubricants & Chemicals,LLC(Ohio,USA)を含む多くの供給源から入手可能な芳香族油のSundex(登録商標)系列が挙げられる。特に好適なパラフィン系油およびナフテン系油としては、例えば、Sunoco,Inc.(Pennsylvania,USA)およびHollyFrontier Refining and Marketingから市販されている油の系列であるSunpar(登録商標)パラフィン系油;Chevron Corporation(California,USA)から市販されている油の系列であるParalux(登録商標)パラフィン系油;Ergon,Inc.(Mississippi,USAから市販されている油の系列であるUnithene(登録商標)ナフテン系油;およびDiana Process Oil PSの名称でIdemitsu USAから市販されている油の系列が挙げられる。
【0033】
ある実施形態において、好適な油は、軽度抽出溶媒和物(MES)、処理留出物芳香族抽出物(TDAE)、および重質のナフテン系油を含む低PCA/PHA(多環式芳香族/多環芳香族炭化水素)油も含む。好適な低PCA油は、米国特許第6,977,276号明細書(第4欄第31行から第6欄第27行まで)にさらに開示されており、その全開示内容が、参照により本明細書に援用される。全開示内容が、参照により本明細書に援用される米国特許第6,939,910号明細書に開示されるものを含む水素化ナフテン系油も、ある実施形態において好適である。
【0034】
本開示の実施形態において使用するのに好適な植物油としては、例えば、ナタネ油、ヒマシ油、アマニ油、ダイズ油、およびキリ油が挙げられる。好適な加硫植物油としては、例えば、あめサブ(semi−translucent factice)、ブラックファクチス(black factice)、および黒サブ(brown factice);特に、「F14」および「F17」硫黄加硫ナタネ油、「K14D」硫黄加硫変性脂肪酸、「Gloria 17」硫黄加硫ナタネ油、「Hamburg 4」部分水素化ナタネ油、ならびに硫黄および塩素を含まない「WP」過酸化物架橋変性ヒマシ油が挙げられ、それらの全てが、R.T.Vanderbilt Company,Inc.(Norwalk,Conn.)から市販されている。
【0035】
本開示の実施形態は、官能化植物油も使用する。官能化植物油としては、例えば、エポキシ化ダイズ油、エポキシ化アマニ油、およびエポキシ化アルキル油が挙げられる。1つの好適なエポキシ化ダイズ油の系列は、Vikoflex(登録商標)という商標でArkema Inc.(Pennsylvania,USA)から入手可能である。官能化植物油は、エポキシ化油と、過酸化物、アミン、ポリアミド、またはイソシアネート含有分子との反応生成物も含む。本発明者らは、理論によって制約されるのを望まないが、エポキシ化油および官能化油は、ゴム組成物のポリマー構造に組み込まれ得る。いずれの場合も、官能化油は、油のかなり低い可動性を示すため、油のブルーミング(blooming)を減少させ、すなわち、ゴム組成物からの油の分離を減少される。
【0036】
官能化する部分は、典型的に、約0.5phr〜10phr、より典型的に、約1phr〜5phr、さらにより特定的に、約1.25〜3phrの量で存在する。また、官能化する部分は、典型的に、官能化油の重量を基準にして、約5重量パーセント〜約20重量パーセント、より典型的に、官能化油の重量を基準にして、約8重量パーセント〜約12重量パーセントを占める。
【0037】
好適な動物油としては、例えば、魚油が挙げられる。
【0038】
上に開示される油に加えて、好適な油性可塑剤も、金属アクリレートとともに分散体を調製するのに使用され得る。好適な可塑剤としては、アジピン酸ジオクチル(DOA)、フタル酸ジオクチル(DOP)、テレフタル酸ジオクチル(DOTP)、およびそれらのブレンドが挙げられる。
【0039】
油は、金属アクリレートに対して約10重量%〜約30重量%の範囲の量で、分散体中に存在する。さらに、本開示の実施形態において、ゴム組成物は、金属アクリレート油分散体から加えられる油に加えて、プロセス油、分散油および伸展油などのさらなる油を含有し得る。それらの実施形態において、ゴム中の油の総量、すなわち、ゴム中に既に存在するプロセス油、分散油、および伸展油の合計は、約20phr未満、典型的に、約1phr〜約18phr、より典型的に、約2phr〜約15phrである。油の総量が約20phrを超えない限り、様々な油が、存在する各油の量の任意の組合せでゴム組成物中に存在してもよい。本明細書に提供される指針により、当業者は、ゴム中に存在する油の量を制限するゴムの成分を選択することができる。
【0040】
本開示の実施形態において、分散体は、金属アクリレートおよび油を組み合わせて、分散体を形成することによって調製される。本開示にしたがって金属アクリレートを油と混合するのに好適な装置としては、パドルミキサーまたは塗料ミキサーが挙げられる。
【0041】
分散体を調製するために、10μm以下の粒度を有する金属アクリレートは、混合装置に加えられる。次に、油は、ジアクリル酸亜鉛に対して約10重量%〜30重量%の量で、金属アクリレート粒子に加えられる。次に、成分は、金属アクリレート粒子が油中に実質的に分散されるまで混合される。ある実施形態において、油および金属アクリレート分散体は、後に使用されるように貯蔵容器に移されてもよい。さらに、油および金属アクリレート分散体は、ゴム組成物が調製された直後または少し後にゴム組成物に加えられ得る。
【0042】
金属アクリレートおよび油分散体が使用前に貯蔵される実施形態において、分散体は、ゴム組成物中への導入の前に、撹拌または混合され得る。分散体の混合により、金属アクリレート粒子が油全体にわたって確実に均等に分布される。ひいては、油中への金属アクリレートの均等な分布により、適切な量の油および金属アクリレートが、ゴム材料中に導入され、また、ゴム組成物全体にわたって均一に分布されることが確実になる。
【0043】
一旦形成されると、油および金属アクリレート分散体は、任意の好適な方法で、ゴム組成物を形成するためにゴム組成物と混合され得る。分散体の調製と同様に、本開示のある実施形態において、油および金属アクリレート分散体およびゴム材料は、任意の好適な方法で混練または溶融混合される。本開示にしたがってゴム材料を油および金属アクリレート分散体と混合するのに好適な装置としては、二軸スクリュー押出機、Banbury型ミキサー、2ロールミル(2ロールシーターとしても知られている)、またはゴム材料を油および金属アクリレート分散体と混練する別の態様が挙げられる。典型的に、Banbury型ミキサー、2ロールミル、または任意の好適な混練デバイスによる混練を用いて、油および他の成分をゴム材料と混合する。
【0044】
油および金属アクリレート分散体に加えて、上記の架橋剤、加工助剤および充填剤などの他の成分が、装置に導入されて、ゴム組成物と混合される。
【0045】
本開示の実施形態において、成分の少なくとも1つ以上が、混練機、2ロールミル、または他の混合デバイスにそれぞれを導入する前に加熱される。ゴム材料は、焼点(scorch point)未満の温度に加熱されるべきであり、油および金属アクリレート分散体は、発煙点未満の温度に加熱されるべきである。ゴム組成物の他の成分は、必要に応じて加熱され得る。このように、成分を混合するのに必要な時間およびかなりのエネルギー投入量が、生成物の品質を低下させずに減少される。
【0046】
ゴルフボールは、複数の構成要素を有し得る。例えば、ゴルフボールは、1つ以上のコア層、任意選択で、1つ以上の中間またはマントル層、および1つ以上のカバー層を有し得る。様々なタイプの材料が、ゴルフボールの構成要素を形成するのに使用され得る。ある実施形態において、ゴルフボールの異なる部分が、同じ材料から形成され得る。他の実施形態において、ゴルフボールの各部分は、異なる材料から形成される。各構成要素に使用される材料は、様々な要因に応じて決まる。例えば、選択される材料は、完成したゴルフボールの所望のプレー特性に応じて決まるであろう。
【0047】
本開示の実施形態において、ゴルフボールの構成要素を形成するためのベース材料は、熱硬化性材料を含み得る。ある実施形態において、熱硬化性材料は、ゴム材料であり得る。一般に、ゴルフボールの部分、例えば、ゴルフボールコアを形成するのに使用される材料は、ゴルフボールコアに特定のプレー特性を与えるために、架橋または硬化可能な材料であり得る。
【0048】
本開示の実施形態において、ゴム組成物は、少なくとも2つの層を有するゴルフボール、典型的に、少なくとも3つの層、またはピースを有するゴルフボール、より典型的に、少なくとも4つの層を有するゴルフボールの部分に使用される。典型的に、本開示のゴム組成物は、ゴルフボール200のコア230(
図2);ゴルフボール300のコア330(
図3);およびゴルフボール400のコア440(
図4)などの、少なくとも3つの層、またはピースを有するゴルフボールのコアを形成する。本開示の実施形態は、開示されるゴム組成物を含み、5つ以上の層を有するコアを有するゴルフボールも含む。
【0049】
典型的に、ポリブタジエンが、ゴルフボールコア用のベースゴムとして使用され得る。より詳細には、1,4−シス−ポリブタジエンが、ゴルフボールコアのベースゴムとして使用され得る。
【0050】
当業者は、ポリブタジエンゴムが、高シス(典型的に、約4パーセント未満のトランスおよび約4パーセント未満のビニルとともに、約92パーセントを超えるシス構造);低シス(約35パーセント程度のシス構造)およびビニルを含む様々な形態(これらの構造の全てが、本開示の実施形態において好適である)で利用可能であることを認識している。
【0051】
典型的に、高シス粘度ポリブタジエンゴムが、本明細書における本開示にしたがって使用される。主にトランス構造を有するポリブタジエンは、弾性製品ではなく、むしろ結晶性のプラスチック製品である。したがって、主にトランス構造を含むポリブタジエンは、典型的に、ゴム(弾性)製品として使用されないため、本開示に使用するのに好適でないが、エラストマーポリブタジエンゴム中の微量の結晶性トランスポリブタジエンは、除去するのが困難であり得、予測され得る。エラストマーポリブタジエンゴム中の微量の結晶性トランスポリブタジエンは、弾性ポリブタジエンゴム製品の特性および特徴に悪影響を与えない。
【0052】
本発明者らは、ゴム製のコアをHNPの層で実質的に取り囲むまたは実質的に覆うことが、高い反発係数(COR)を有するコアまたはゴルフボール部分を形成するのに特に有効であることを発見した。ここで、開示されるゴム組成物を中に含むコアを有する本開示の実施形態は、HNPを含むカバー110(2ピース)、内側カバー220(3ピース)、外側コア320(3ピース)、または内側カバー430(4ピース)を有するのが有利である。
【0053】
本開示の実施形態において使用するのに好適なHNPとしては、高度に中和されたターポリマーアイオノマーが挙げられる。HPF1000、HPF2000、HPF AD1024、HPF AD1027、HPF AD1030、HPF AD1035、HPF AD1040、およびE.I.DuPont de Nemours and Company製のHNPのHPF系列の他のものなどのHPF樹脂が、本開示の実施形態に好適に使用されるHNPの例である。本明細書に提供される指針により、当業者は、本明細書に開示されるゴム組成物を含むコアを実質的に覆うのに使用するのに好適なHNPを特定することができる。
【0054】
本開示の実施形態のゴム組成物はまた、外側コア層(320または430)またはマントル層としても知られている内側カバー層(220または420)を形成するのに使用され得る。本開示の実施形態のゴムは高密度であるため、薄い内側カバー層が、スピンを制御し、高い慣性モーメント(MOI)のゴルフボールを提供するのに有用であり得る。
【0055】
本明細書に特に記載されていない層の配置については、任意の層が、目的に適した任意の材料で作製され得る。例えば、外側カバー層は、丈夫でかつ耐擦り傷性であるべきである。したがって、熱可塑性ポリウレタン(TPU)および熱硬化性ポリウレタンが、HNPおよびアイオノマーと同様に、外側カバー層に使用するのに好適である。本来は耐擦り傷性でない熱可塑性ポリウレタンは、表面処理などによって、表面を硬化するように処理され得る。好適なアイオノマーとしては、E.I.DuPont de Nemours and Company製のアイオノマーポリマーのSurlyn(登録商標)系列のものおよびExxonMobil Chemical Corporation製の製品のIotek(登録商標)系列のものが挙げられる。
【0056】
本発明者らは、本開示のゴム組成物が、HNPと混合されて、ゴム組成物が使用され得る任意の層に使用され得る混合された材料が形成され得ることも発見した。ブレンドは、高CORを有するため、高性能ゴルフボールのコア、特に外側コアとして用いるのに特に適している。ブレンドは、ゴム組成物自体よりわずかに高い密度を有し得るため、好適なマントル(内側カバー)層を形成することもできる。
【0057】
混合された製品中のゴム組成物対HNPの相対重量割合は、約60:40〜約99.5:0.5、典型的に、約70:30〜約99:1、より典型的に、約75:25〜約99:1の範囲である。
【0058】
ゴム組成物およびHNPは、ゴム組成物が作製されるのと同じ方法で、すなわち、2ロールシーターまたは他の混練デバイスで混合され得る。ゴムおよびHNP用の相溶化剤またはリンカーが、これらの成分の密接なブレンドを形成するのに必要とされる可能性が高い。
【0059】
本明細書に開示されるゴム組成物、およびHNPとのゴム組成物のブレンドはまた、外側カバー層として好適に使用され得る。ゴム組成物またはブレンドが外側カバー層として使用される場合、含まれる油が「ブルーム(bloom)」せず、ゴム組成物から分離しないことを確実にするのが通常である。その場合、および優れた相溶性を維持することが重要である任意の他の状況では、相溶化剤が用いられ得る。
【0060】
相溶化剤としては、無水マレイン酸、シラン、およびチタネートが挙げられる。当業者は、シランが一般式Si
nH
2n+2で表されることを認識している。典型的に、nは約8未満であるが、これは、より大きい分子が、稀にしか形成されないためである。チタネートは、当業者に公知の化合物である。例えば、Kenrich Petrochemical,Inc.(New Jersey,USA)から入手可能なチタネートカップリング剤のKen−React(登録商標)系列が、好適なチタネートである。好適なチタネートとしては、KR(登録商標)TTS(チタンIV2−プロパノラト、トリスイソオクタデカノアト−O)およびKR 7(チタンIVビス2−メチル−2−プロペノアト−O、イソオクタデカノアト−O 2−プロパノラト)などのモノアルコキシチタネート;KR(登録商標)134S(チタンIVビス[4−(2−フェニル)2−プロピル−2]フェノラト、オキソエチレンジオラト)およびKR 138S(チタンIVビス(ジオクチル)ピロホスファト−O、オキソエチレンジオラト、(付加物)、亜リン酸(水素)(ジオクチル))などのオキシアセテートキレートチタネート;KR(登録商標)212(チタンIVビス(ジオクチル)ホスファト−O、エチレンジオラト)およびKR238S(チタンIVビス(ジオクチル)ピロホスファト−O、エチレンジオラト(付加物)、亜リン酸水素ビス(ジオクチル))などのA,Bエチレンキレートチタネート;KR(登録商標)138D(チタンIVビス(ジオクチル)ピロホスファト−O、オキソエチレンジオラト、(付加物)2モルの2−N,N−ジメチルアミノ−2−メチルプロパノール)およびKR 158D(チタンIVビス(ブチルメチル)ピロホスファト−O、(付加物)2モルの2−N,N−ジメチルアミノ−2−メチルプロパノール)などの第四級チタネート(quaternary titanate);KR(登録商標)41B(チタンIVテトラキス2−プロパノラト、付加物2モルのリン酸水素(ジオクチル))およびKR 46B(チタンIVテトラキスオクタノラト付加物2モルの亜リン酸水素(ジ−トリデシル))などの配位チタネート(coordinate titanate);LICA(登録商標)01(チタンIV2,2(ビス2−プロペノラトメチル)ブタノラト、トリスネオデカノアト−O)およびLICA 09(チタンIV2,2(ビス2−プロペノラトメチル)ブタノラト、トリス(ドデシル)ベンゼンスルホナト−O)などのネオアルコキシチタネート;およびKR(登録商標)OPPR(チタンIVビスオクタノラト、シクロ(ジオクチル)ピロホスファト−O,O)およびKR OPP2(チタンIVビスシクロ(ジオクチル)ピロホスファト−O,O)などのシクロヘテロ原子チタネート(cycloheteroatom titanate)が挙げられる。本明細書に提供される指針により、当業者は、本開示の実施形態に使用するのに好適なチタネートを特定することができる。
【0061】
当業者は、層、またはピースが、充填剤および/または添加剤などのさらなる成分も含み得ることを認識している。充填剤および添加剤は、物理的特性、耐紫外線性、および他の特性の向上などの、様々な所望の特徴のいずれかに基づいて使用され得る。例えば、耐紫外線性を向上させるために、光安定剤が加えられる。光安定剤としては、ヒンダードアミン、紫外線安定剤、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0062】
無機または有機充填剤も、任意の層に加えられ得る。好適な無機充填剤としては、ケイ酸塩鉱物、金属酸化物、金属塩、粘土、金属シリケート、ガラス繊維、天然繊維状鉱物、合成繊維状鉱物またはそれらの混合物が挙げられる。好適な有機充填剤としては、カーボンブラック、フラーレンおよび/またはカーボンナノチューブ、メラミンコロフォニー、セルロース繊維、ポリアミド繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリウレタン繊維、芳香族および/脂肪族ジカルボン酸エステルをベースとするポリエステル繊維、炭素繊維またはそれらの混合物が挙げられる。無機および有機充填剤は、個別にまたはそれらの混合物として使用され得る。充填剤の総量は、層の約0.5〜約50重量パーセントであり得る。
【0063】
低い密度を有する中空ビーズなどの他の密度調節剤も、選択された層に使用され得る。
【0064】
当業者は、特に、密度調節剤を含むこれらの添加剤が、層の性能特性および特徴に影響を与えることを認識している。したがって、任意の充填剤の量は、ゴルフボールの性能に悪影響を与える量を超えてはならない。
【0065】
任意の層、特に、熱可塑性ポリウレタンの難燃性を向上させるために、難燃剤も使用され得る。好適な難燃剤としては、有機リン酸塩、金属リン酸塩、金属ポリリン酸塩、金属酸化物(酸化アルミニウム水和物、三酸化アンチモン、酸化ヒ素など)、金属塩(硫酸カルシウム、膨張性黒鉛など)、およびシアヌル酸誘導体(シアヌル酸メラミンなど)が挙げられる。これらの難燃剤は、個別にまたはそれらの混合物として使用され得、難燃剤の総量は、例えば、ポリウレタン成分の約10〜約35重量パーセントであり得る。
【0066】
熱可塑性ポリウレタンエラストマーの靭性および圧縮反発を向上させるために、熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、不飽和結合を含むモノマーまたはオリゴマーなどの少なくとも1つの分散剤を含んでいてもよい。好適なモノマーの例としては、スチレン、アクリル酸エステルが挙げられ;好適なオリゴマーの例としては、ジ−およびトリ−アクリレート/メタクリレート、エステルアクリレート/メタクリレート、ウレタン、または尿素アクリレート/メタクリレートが挙げられる。
【0067】
ゴルフボールの最外層は、より良好な可視性を補助するために少なくとも1つの白色顔料も含み得る。白色顔料は、二酸化チタン、酸化亜鉛またはそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0068】
本明細書に提供される指針により、当業者は、ゴルフボールの各層またはピースのための添加剤を選択することができる。
【実施例】
【0069】
10個のゴルフボールコアを、本開示の実施形態にしたがって作製する。ゴルフボールコアの組成物は、表1のとおりであり、油の割合および属性は、表2に記載されるとおりである。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
329°Fで8分間ゴムを硬化することによって、コアを調製する。
【0073】
本発明者らの経験では、本開示の実施形態に係るゴム組成物の調製は、ゴム組成物の調製中の金属アクリレートの飛散をほとんどまたは全く生じないことが予測される。さらに、ジアクリル酸亜鉛は、ゴム組成物中により均等に分布される。さらに、装置の金属部分における金属アクリレートのプレートアウトも大幅に減少されるかまたはなくされる。出発材料の損失の減少により、ゴム組成物中の金属アクリレートのより正確な用量が得られ、ひいては、ゴム組成物を調製するコストが減少され得る。
【0074】
さらに、上記の実施例を、開示される数平均粒度範囲のそれぞれで、ジアクリル酸亜鉛を用いて調製する。約100μm以下、約10μm以下、および約5μm以下の平均粒度を有するジアクリル酸亜鉛を有する各実施例を調製する。
【0075】
上述されるように、約100μm以下、約10μm以下、および約5μm以下の粒度を有する実施例が、ゴム組成物の調製中のジアクリル酸亜鉛の飛散をほとんどまたは全く生じないことが予測される。さらに、ジアクリル酸亜鉛は、ゴム組成物中により均等に分布される。さらに、装置の金属部分における金属アクリレートのプレートアウトも大幅に減少されるかまたはなくされる。出発材料の損失の減少により、ゴム組成物中の金属アクリレートのより正確な用量が得られ、ひいては、ゴム組成物を調製するコストが減少され得る。
【0076】
全ての引用される粒度範囲における油中の金属アクリレートの分散は、上記の利点を提供するが、油中の金属アクリレートの分散の影響は、100μm以下の平均粒度を有する金属アクリレートを含む分散体より、約10μm以下の平均粒度を有する金属アクリレートを含む分散体についてより容易に観察され得る。さらに、油中の金属アクリレートの分散の影響は、10μm以下の平均粒度を有する金属アクリレートを含む分散体より、約5μm以下の平均粒度を有する金属アクリレートを含む分散体についてより容易に観察され得る。しかしながら、全ての粒度範囲における全ての実施例が、飛散をほとんどまたは全く生じず、ゴム組成物中の金属アクリレートのより均等な分布、大幅に減少されたプレートアウト、および金属アクリレートが加えられる組成物中の金属アクリレートのより正確な用量が得られる。
【0077】
本開示の様々な実施形態が説明されてきたが、説明は、限定的ではなく、例示的であることが意図され、本開示の範囲内にある多くのさらなる実施形態および実装例が可能であることが、当業者に明らかであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲およびその均等物を考慮することを除いて限定されるものではない。また、様々な変更および変形が、添付の特許請求の範囲内で行われ得る。