特許第6043878号(P6043878)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043878
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】車体上部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/06 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   B62D25/06 A
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-540419(P2015-540419)
(86)(22)【出願日】2014年8月20日
(86)【国際出願番号】JP2014071732
(87)【国際公開番号】WO2015049928
(87)【国際公開日】20150409
【審査請求日】2016年3月31日
(31)【優先権主張番号】特願2013-209417(P2013-209417)
(32)【優先日】2013年10月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】村上 源作
(72)【発明者】
【氏名】梅原 康平
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−280693(JP,A)
【文献】 特開2005−319940(JP,A)
【文献】 特開2012−224236(JP,A)
【文献】 特開2008−213694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側部のスライドドアをスライド可能に案内し、一方の端縁に車幅方向内側に斜めに傾斜する傾斜部を有するガイドレールと、
前記車体の上部側方に車体前後方向に沿って配置され、上部に前記ガイドレールが配置されるルーフサイドレール構成パネルと、
車幅方向に延出して、一端部が前記ルーフサイドレール構成パネルの膨出部に結合されるルーフ横梁部材と、
車体上下方向に延出して、上端部が前記ルーフサイドレール構成パネルに結合されるピラー構成パネルと、
前記ルーフサイドレール構成パネルにより開口上縁部が構成されるとともに、前記ピラー構成パネルにより開口縦縁部が構成される車体側部のドア開口と、を備え、
前記ルーフサイドレール構成パネルには、
水平方向に延出するレール底壁と、
前記レール底壁の車幅方向内側の端部から上方に立ち上がるレール縦壁と、が設けられ、
前記ルーフサイドレール構成パネルの前記ガイドレールの傾斜部が配置される領域には、前記レール底壁と前記レール縦壁とが車幅方向内側に膨出する膨出部が設けられている車体上部構造において、
一端が前記レール底壁に接合され、他端が前記膨出部の前記レール縦壁に接合される補強壁部材を備え、
前記補強壁部材は、
前記一端よりも前記他端が車体前方側に位置するように配置されて、
前記一端が、前記レール底壁のうちの、前記開口上縁部と前記開口縦縁部に挟まれた前記ドア開口の上部コーナ部の近傍位置に接合されるとともに、
前記他端が、上面視で前記ルーフ横梁部材と車幅方向で重なる位置で前記膨出部の前記レール縦壁に接合され、
前記レール底壁の車幅方向外側寄り位置から前記レール底壁に沿って延出する底壁部と、
前記底壁部の車幅方向内側の端部から前記レール縦壁に沿うよう湾曲して立ち上がり上方に延出する縦壁部と、
前記底壁部から前記縦壁部に亘る領域の側端部から上方に立ち上がる一対の側壁部と、を備え、
前記側壁部は、前記底壁部の前記車幅方向外側寄りの端部と前記縦壁部の上端部とを上面視で直線を成すように連結する
を特徴とする車体上部構造。
【請求項6】
前記補強壁部材は、前記補強壁部材の一端から前記補強壁部材の他端に向かう延出方向と交差する方向の幅が漸次拡大して形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の車体上部構造。
【請求項8】
前記側壁部の上端部には、前記側壁部の延在方向に対して直角に屈曲するフランジ部が設けられている
ことを特徴とする請求項1または6に記載の車体上部構造。
【請求項9】
前記補強壁部材は、
前記レール底壁の前記車幅方向の外側寄り位置に接合される第1接合部と、
前記レール縦壁に接合される第2接合部と、
前記第1接合部と前記第2接合部との間で前記レール底壁に接合される第3接合部と、により前記ルーフサイドレール構成パネルに接合されている
ことを特徴とする請求項1、6及び8のいずれか一項に記載の車体上部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体側部にスライドドアを採用する車両の車体上部構造に関する。
本願は、2013年10月4日に出願された日本国特願2013−209417号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
車体側部にスライドドアを採用する車両として、車体の上部側方に配置されるルーフサイドレール構成パネル(ルーフサイドレールのインナ側を構成するパネル)に、スライド案内用のガイドレールを配置したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の車両は、ガイドレールをレール支持フレームとともにルーフサイドレール構成パネルに配置している。そのために、ルーフサイドレール構成パネルが、略水平に延出するレール底壁と、そのレール底壁の車幅方向内側の端部から上方に立ち上がるレール縦壁と、を備えた略L字状の断面形状を有する。また、スライドドアのスライド軌道は、通常、ドア閉時の最後に車室内側に引き込まれる軌道とされる。そのため、スライドドアを案内するガイドレールの前縁部には、車幅方向内側に斜めに傾斜する傾斜部が設けられている。このため、ルーフサイドレール構成パネル上のガイドレールの傾斜部に対応する領域には、レール底壁とレール縦壁の一部が車幅方向内側に膨出する膨出部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国特開2005−319940号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の車両の車体上部構造においては、ルーフサイドレール構成パネルに車幅方向内側に膨出する膨出部が設けられ、ルーフサイドレール構成パネルの車体前後方向に延出する稜線部が膨出部によって途切れてしまう。そのうえ、ルーフサイドレール構成パネルの膨出部のレール底壁の車幅方向の幅が部分的に広がって強度の変化が大きくなってしまう。これらのことから、ルーフサイドレール構成パネルの膨出部の近傍部分のさらなる剛性の向上が望まれている。
【0006】
また、ルーフサイドレール構成パネルの膨出部の近傍部分は、スライドレールの前縁部を支持する部分である。そのため、スライドドアの開閉時における剛性感を高めるうえでも、さらなる剛性の向上が望まれている。
【0007】
この発明の態様は、ルーフサイドレール構成パネルに設けられる膨出部の近傍部分の剛性を効率良く高めることのできる車体上部構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る車体上部構造では、以下の構成を採用した。
(1)本発明の一態様に係る車体上部構造は、車体側部のスライドドアをスライド可能に案内し、一方の端縁に車幅方向内側に斜めに傾斜する傾斜部を有するガイドレールと、前記車体の上部側方に車体前後方向に沿って配置され、上部に前記ガイドレールが配置されるルーフサイドレール構成パネルと、補強壁部材と、を備え、前記ルーフサイドレール構成パネルには、水平方向に延出するレール底壁と、前記レール底壁の前記車幅方向の内側の端部から上方に立ち上がるレール縦壁と、が設けられ、前記ルーフサイドレール構成パネルにおける前記ガイドレールの傾斜部が配置される領域には、前記レール底壁と前記レール縦壁とが前記車幅方向の内側に膨出する膨出部が設けられ、前記補強壁部材の一端は、前記レール底壁に接合され、前記補強壁部材の他端は、前記膨出部の前記レール縦壁に接合されている。
【0009】
これにより、補強壁部材がルーフサイドレール構成パネルのレール底壁と膨出部のレール縦壁との間で突っ張り、ルーフサイドレール構成パネルの膨出部の近傍部分の変形を抑制するようになる。
【0010】
(2)上記(1)の態様において、前記膨出部の前記レール縦壁には、前記膨出部の頂部前方側から前記車幅方向の外側に延出する側方延出領域が設けられ、前記補強壁部材の他端は、前記側方延出領域に接合されていてもよい。
【0011】
この場合、補強壁部材がレール底壁と膨出部の側方延出領域のレール縦壁とに接続されるため、ガイドレールとの干渉を容易に回避できる位置に補強壁部材を配置することが可能になる。このため、補強壁部材との干渉を回避するためにガイドレールの形状や配置を大幅に設計変更する必要が無くなり、スライドドアに影響を与えることなく膨出部を補強することが可能になる。
【0012】
(3)上記(1)または(2)において、前記車幅方向に延出して、一端部が前記ルーフサイドレール構成パネルの前記膨出部に結合されるルーフ横梁部材を更に備え、前記補強壁部材の他端は、上面視で前記ルーフ横梁部材と前記車幅方向で重なる位置で前記膨出部の前記レール縦壁に接合されていてもよい。
【0013】
これにより、ルーフサイドレール構成パネルのレール底壁とルーフ横梁部材とが、膨出部のレール縦壁のうちの補強壁部材によって剛性を高められた部分を介して連結されることになる。したがって、ルーフサイドレール構成パネルとルーフ横梁部材との間では、膨出部のレール縦壁のうちの剛性の高い部分を介して車幅方向の荷重伝達が行われる。
【0014】
(4)上記(1)〜(3)のいずれか一項の態様において、車体上下方向に延出して、上端部が前記ルーフサイドレール構成パネルに結合されるピラー構成パネルを更に備え、前記ルーフサイドレール構成パネルは、前記車体側部のドア開口の開口上縁部を構成し、前記ピラー構成パネルは、前記ドア開口の開口縦縁部を構成し、前記補強壁部材の一端は、前記レール底壁のうちの、前記開口上縁部と前記開口縦縁部に挟まれた前記ドア開口の上部コーナ部の近傍位置に接合されていてもよい。
【0015】
これにより、ドア開口の上部コーナ部が、補強壁部材を介して膨出部のレール縦壁に連結されることにより補強される。このため、ドア開口の上部コーナ部の剛性が高まるとともに、ピラー構成パネルとルーフ側の部材との間の荷重伝達効率も高まる。
【0016】
(5)上記(1)または(2)の態様において、車幅方向に延出して、一端部が前記ルーフサイドレール構成パネルの前記膨出部に結合されるルーフ横梁部材と、車体上下方向に延出して、上端部が前記ルーフサイドレール構成パネルに結合されるピラー構成パネルと、を更に備え、前記ルーフサイドレール構成パネルは、前記車体側部のドア開口の開口上縁部を構成し、前記ピラー構成パネルは、前記ドア開口の開口縦縁部を構成し、前記補強壁部材の他端は、前記補強壁部材の一端よりも車体前方側に位置するように配置され、前記補強壁部材の一端は、前記レール底壁のうちの、前記開口上縁部と前記開口縦縁部に挟まれた前記ドア開口の上部コーナ部の近傍位置に接合され、前記補強壁部材の他端は、上面視で前記ルーフ横梁部材と前記車幅方向で重なる位置で前記膨出部の前記レール縦壁に接合されていてもよい。
【0017】
この場合、補強壁部材の一端が、レール底壁のうちのドア開口の上部コーナ部の近傍位置に接合され、補強壁部材の他端が、ドア開口の上部コーナ部よりも前方側において、上面視でルーフ横梁部材と車幅方向で重なる位置で膨出部のレール縦壁に接合される。この結果、ドア開口の上部コーナ部とルーフ横梁部材の間が、補強壁部材と膨出部のレール縦壁を介して補強される。このため、ドア開口の上部コーナ部の剛性が高まるとともに、ピラー構成パネルとルーフ横梁部材との間の荷重伝達効率も高まる。
【0018】
(6)上記(1)〜(5)のいずれか一項の態様において、前記補強壁部材は、前記補強壁部材の一端から前記補強壁部材の他端に向かう延出方向と交差する方向の幅が漸次拡大して形成されていてもよい。
【0019】
この場合、補強壁部材の形状は、レール底壁側の一端から膨出部のレール縦壁側の他端に向かって末広がり状に幅が広がったものとなる。このため、補強壁部材の一端に入力された荷重は膨出部のレール縦壁の広い範囲に分散されて伝達されることになる。したがって、補強部材の一端から他端にかけての荷重伝達効率が高まる。
【0020】
(7)上記(1)〜(6)のいずれか一項の態様において、前記補強壁部材は、前記レール底壁の前記車幅方向の外側寄り位置から前記レール底壁に沿って延出する底壁部と、前記底壁部の前記車幅方向の内側の端部から前記レール縦壁に沿うように上方に延出する縦壁部と、前記底壁部の側端部から上方に立ち上がる側壁部と、を備え、前記側壁部は、前記底壁部の前記車幅方向の外側寄りの端部と前記縦壁部の上端部とを上面視で直線を成すように連結されてもよい。
【0021】
これにより、補強部材がレール底壁と膨出部のレール縦壁との間で直線状に荷重を伝達するようになり、荷重の伝達効率が高まる。
【0022】
(8)上記(7)の態様において、前記側壁部の上端部には、前記側壁部の延在方向に対して直角に屈曲するフランジ部が設けられていてもよい。
【0023】
この場合、側壁部の上端部のフランジ部との連接位置に側壁部の延出方向に沿う稜線部が形成されるようになる。したがって、レール底壁と膨出部のレール縦壁との間で、稜線部を通して荷重をより効率良く伝達することが可能になる。
【0024】
(9)上記(1)〜(8)のいずれか一項の態様において、前記補強壁部材は、前記レール底壁の前記車幅方向の外側寄り位置に接合される第1接合部と、前記レール縦壁に接合される第2接合部と、前記第1接合部と前記第2接合部との間で前記レール底壁に接合される第3接合部と、により前記ルーフサイドレール構成パネルに接合されていてもよい。
【0025】
これにより、レール縦壁に入力された荷重が第2接合部を通して補強壁部材に伝達され、その荷重が第1接合部と第3接合部を通してレール底壁に分散して伝達されるようになる。
【発明の効果】
【0026】
この発明の態様によれば、一端がレール底壁に接合され、他端が膨出部のレール縦壁に接合される補強壁部材により、ルーフサイドレール構成パネルの膨出部の近傍部分の剛性をより高めることができる。したがって、車体上部側方の車体剛性を高めることができるとともに、スライドドアの開閉時における剛性感も高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】この発明の一実施形態の車両の車体構造を示す斜視図である。
図2】この発明の一実施形態の車両の分解斜視図である。
図3】この発明の一実施形態の車両の車体骨格を示す斜視図である。
図4】この発明の一実施形態の車両の図3のIV部を拡大した斜視図である。
図5】この発明の一実施形態の車両の図4のV矢視に対応する斜視図である。
図6】この発明の一実施形態の車両の図5のVI矢視に対応する斜視図である。
図7】この発明の一実施形態の車両の図6のVII矢視に対応する斜視図である。
図8図5にレール支持フレーム・ロアとガイドレールを追加した斜視図である。
図9図8にレール支持フレーム・アッパを追加した斜視図である。
図10】この発明の一実施形態の車両の図9のX矢視に対応する斜視図である。
図11】この発明の一実施形態の補強壁部材の斜視図である。
図12】この発明の一実施形態の補強壁部材の平面図である。
図13】この発明の一実施形態の補強壁部材の図12のXIII−XIII断面に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1図3は、この実施形態にかかる車両1の左側部とルーフ部の構造を示す図である。
この実施形態の車両1は、所謂ミニバンタイプの車両であり、車両側部には車体前後方向にスライドして開閉するスライドドア2が取り付けられている。なお、この実施形態の車両1は、前席側方のドアはヒンジ開閉式のドア(図示せず)が採用され、後席側方のドアにスライドドア2が採用されている。この車両1の車体は、複数の鋼板を溶接して形成された車体骨格3の側面にボディサイドパネル4が取り付けられるとともに、車体骨格3のルーフ部の上面にルーフパネル5が取り付けられている。
【0029】
車体骨格3の側面構成部は、図3に示すように、フロントピラー・インナ6と、センターピラー・インナ7(ピラー構成パネル)と、リヤクォータピラー・インナ10と、リヤピラー・インナ11と、リヤルーフサイドレール・インナ9(ルーフサイドレール構成パネル)と、フロントルーフサイドレール・インナ8と、を備えている。フロントピラー・インナ6は、ルーフ部の前端側から斜め前方に延出する。センターピラー・インナ7は、ルーフ部の前部寄りの中央領域から下方に延出する。リヤクォータピラー・インナ10及びリヤピラー・インナ11は、ルーフ部の後部から下方に延出する。リヤルーフサイドレール・インナ9は、車体前後方向に沿って延出してセンターピラー・インナ7の上端部とリヤクォータピラー・インナ10の上端部とを連結する。フロントルーフサイドレール・インナ8は、リヤルーフサイドレール・インナ9の前端部とフロントピラー・インナ6の前端部を連結する。これらの車体骨格3を成すパネル材の車幅方向外側には適宜スチフナを挟み込んだ状態でボディサイドパネル4が接合される。
【0030】
フロントピラー・インナ6とフロントルーフサイドレール・インナ8とセンターピラー・インナ7とに囲まれた領域は、図示しない前部側のドアが配置されるドア開口16Fとされる。また、センターピラー・インナ7とリヤルーフサイドレール・インナ9とリヤクォータピラー・インナ10とに囲まれた領域は後部側のスライドドア2(図1参照)が配置されるドア開口16Rとされている。
【0031】
また、車体骨格3のルーフ構成部は、フロントルーフレール12と、リヤルーフレール13と、ルーフアーチ14(ルーフ横梁部材)と、を備えている。フロントルーフレール12は、車幅方向に延出して両端部が左右のフロントピラー・インナ6の後縁部に結合される。リヤルーフレール13は、車幅方向に延出して両端部が左右のリヤピラー・インナ11の後縁部に結合される。ルーフアーチ14は、車幅方向に延出して両端部が左右のリヤルーフサイドレール・インナ9の前縁部に結合される。なお、図中符号15で示される部材は、車体骨格3の左右のルーフ側部同士を相互に連結する補助的なクロスメンバである。
【0032】
後部側のドア開口16Rの上方に配置されるリヤルーフサイドレール・インナ9の上面側には、図2に示すように、スライドドア2の上部をスライド可能に案内するためのガイドレール17が取り付けられている。ガイドレール17は、レール支持フレーム・ロア18Lと、レール支持フレーム・アッパ18Uとに上下を覆われた状態で支持固定され、これらのレール支持フレーム・ロア18Lとレール支持フレーム・アッパ18Uを介してリヤルーフサイドレール・インナ9の上面側に取り付けられている。
【0033】
図4は、図3のIV部を拡大示した斜視図である。図5図7は、図4に対応する部位を角度を変えて見た斜視図である。また、図8は、リヤルーフサイドレール・インナ9にレール支持フレーム・ロア18Lを介してガイドレール17を取り付けた状態を示す斜視図である。また、図9図10は、レール支持フレーム・ロア18L及びレール支持フレーム・アッパ18Uを、ガイドレール17とともにリヤルーフサイドレール・インナ9に取り付けた状態を示す斜視図である。
【0034】
ここで、図8図9に示すガイドレール17について先に説明する。ガイドレール17は、全体が車体前後方向に略沿って延出し、前方側の端縁に、車幅方向内側に斜めに傾斜する傾斜部17aが設けられている。この傾斜部17aは、スライドドア2が車体前方側に移動して完全に閉じられる直前に、車室内側(車幅方向内側)に引き込まれる動作を得るために設けられている。また、ガイドレール17は、前端部と後端部がレール支持フレーム・ロア18Lの上面にブラケット19(図8図9では前端部側のブラケット19のみ図示。)を介して取り付けられ、前端部と後端部の間の中間領域で、スライドドア2の前部上端側をスライド可能に支持するようになっている。
【0035】
図4図7に示すように、リヤルーフサイドレール・インナ9には、略水平方向に延出するレール底壁9aと、レール底壁9aの車幅方向内側の端部から上方に立ち上がるレール縦壁9bと、が設けられている。また、リヤルーフサイドレール・インナ9の前端部にはジョイント部20が設けられている。このジョイント部20は、前方延出片20aと下方延出片20bとを備えている。前方延出片20aは、フロントルーフサイドレール・インナ8の後端部に溶接固定されるとともに、下方延出片20bは、センターピラー・インナ7の上端部に溶接固定されている。
【0036】
リヤルーフサイドレール・インナ9のレール底壁9aは、その上面側にレール支持フレーム・ロア18Lを介してガイドレール17が配置される部分であるため、レール底壁9aのうちの、ガイドレール17の傾斜部17aが配置される前縁部側の領域は、傾斜部17aの形状に対応して車幅方向外側に膨出している。この膨出形状は頂部が丸みを帯びた略三角形状とされている。また、レール縦壁9bの前縁部領域は、レール底壁9aの膨出形状に沿って車幅方向外側に略三角形状に膨出している。以下、レール底壁9aとレール縦壁9bの一般部に対して車幅方向内側に膨出する領域を膨出部21と呼ぶ。また、膨出部21のレール縦壁9bのうちの、膨出部21の頂部前方側から斜めに車幅方向外側に延出する領域を側方延出領域9bAと呼ぶものとする。
【0037】
また、リヤルーフサイドレール・インナ9のレール縦壁9bとジョイント部20の上端部には、車幅方向内側に屈曲する上縁フランジ22が一体に設けられ、リヤルーフサイドレール・インナ9のレール底壁9aの車幅方向外側の端部には、下方に屈曲する下縁フランジ23が一体に設けられている。
【0038】
また、リヤルーフサイドレール・インナ9のジョイント部20に溶接固定されたセンターピラー・インナ7は、リヤルーフサイドレール・インナ9とともに後部側のドア開口16Rを構成している。リヤルーフサイドレール・インナ9はドア開口16Rの開口上縁部を構成し、センターピラー・インナ7はドア開口16Rの開口縦縁部を構成している。
【0039】
ここで、リヤルーフサイドレール・インナ9のレール底壁9aの上面と、膨出部21のレール縦壁9bの外側面には、補強壁部材であるバルクヘッド24の一端と他端とが結合されている。より具体的には、バルクヘッド24の一端は、レール底壁9aの上面のうちの、後部側のドア開口16Rの開口上縁部と開口縦縁部とに挟まれた上部コーナ部Cの近傍位置に結合され、バルクヘッド24の他端は、膨出部21のレール縦壁9bのうちの、側方延出領域9bAの車幅方向外側面に結合されている。この実施形態の場合、バルクヘッド24は、上面視で、他端が一端よりも車体前方側、かつ車体幅方向内側となるように傾斜してリヤルーフサイドレール・インナ9に結合されている。
【0040】
ところで、ルーフ横梁部材であるルーフアーチ14は、図6に示すように、上面視でセンターピラー・インナ7と重なる前後位置に配置され、その両端部は、リヤルーフサイドレール・インナ9の膨出部21のうちの側方延出領域9bAの上端部(上縁フランジ22)にボルト締結等によって結合されている。バルクヘッド24の他端は、図6に示すように、上面視でルーフアーチ14と車幅方向で重なる位置で膨出部21(側方延出領域9bA)のレール縦壁9bに結合されている。
【0041】
図11図13は、バルクヘッド24の詳細形状を示す図である。
バルクヘッド24は、金属製の板材をプレス成形して造形されている。バルクヘッド24は、レール底壁9aに結合される一端からレール縦壁9bに結合される他端に向かう延出方向において、延出方向と直交する方向の幅が漸次末広がり状に拡大して形成されている。そして、バルクヘッド24は、レール底壁9aの上面に重合される底壁部24aと、レール縦壁9bの車幅方向外側の側面に重合される縦壁部24bと、底壁部24aから縦壁部24bに亘る領域の両側部から立ち上がる一対の側壁部24cと、を備えている。底壁部24aはレール底壁9aの上面に沿って形成され、縦壁部24bは底壁部24aから緩やかに湾曲して立ち上がり、上縁部がレール縦壁9bの側面に沿うように形成されている。両側の側壁部24cは、底壁部24aの端部と縦壁部24bの上端部とを、上面視で直線を成すように連結している。
【0042】
また、車幅方向外側の側壁部24cの上端部には、側壁部24cの延在方向に対して略直角に屈曲するフランジ部24dが一体に形成されている。このフランジ部24dは、図11図12に示すように、側壁部24cとの連接コーナ部分において側壁部24cの延出方向に沿う稜線部aを形成している。
【0043】
また、バルクヘッド24は、底壁部24a上の2箇所と縦壁部24b上の1箇所が、それぞれレール底壁9aとレール縦壁9bにスポット溶接されている。具体的には、図12に示すように、バルクヘッド24は、レール底壁9aの車幅方向外側寄り位置に溶接される第1接合部W1と、レール縦壁9bの上端部寄り位置に溶接される第2接合部W2と、第1接合部W1と第2接合部W2との間でレール底壁9aに溶接される第3接合部W3と、によってリヤルーフサイドレール・インナ9に接合されている。
【0044】
また、図8図10に示すように、リヤルーフサイドレール・インナ9の上面側に取り付けられるレール支持フレーム・ロア18Lとレール支持フレーム・アッパ18Uは、リヤルーフサイドレール・インナ9の膨出部21の形状に対応して同位置に同様の膨出部21L,21Uが形成されている。ただし、レール支持フレーム・ロア18Lとレール支持フレーム・アッパ18Uの前端部長さは、リヤルーフサイドレール・インナ9の膨出部21の側方延出領域9bAに完全に重ならない長さとされている。また、図10に示すように膨出部21の側方延出領域9bAのレール縦壁9bとレール底壁9aに接合されたバルクヘッド24がレール支持フレーム・ロア18Lやレール支持フレーム・アッパ18Uと干渉することがないように設定されている。
【0045】
以上のように、この実施形態の車両1の車体上部構造は、リヤルーフサイドレール・インナ9の上部において、一端がレール底壁9aに接合され他端が膨出部21のレール縦壁9bに接合されるバルクヘッド24が設けられている。そのため、バルクヘッド24が、レール底壁9aと膨出部21のレール縦壁9bとの間で突っ張り、リヤルーフサイドレール・インナ9の膨出部21の近傍部分の変形を抑制するように機能する。
【0046】
したがって、リヤルーフサイドレール・インナ9の膨出部21の近傍部分は、車体前後方向に沿って延出する稜線部が膨出部21によって途切れ、しかも、膨出部21で車幅方向の幅が広がって強度の変化が大きくなる部分であるが、この車体上部構造では、新たに追加したバルクヘッド24によって膨出部21の近傍部分の剛性を効率良く高めることができる。よって、この車体上部構造を採用することにより、車体上部側方の車体剛性を高めることが可能になるとともに、スライドドア2の開閉時における剛性感を高めることが可能になる。
【0047】
また、この実施形態の車両1の車体上部構造の場合、膨出部21のレール縦壁9bに、膨出頂部から車幅方向外側に延出する側方延出領域9bAが設けられ、バルクヘッド24の他端がこの側方延出領域9bAのレール縦壁9bに接合される。そのため、バルクヘッド24を、レール支持フレーム・ロア18Lやレール支持フレーム・アッパ18Uの前端部と干渉することのない位置に容易に配置することができる。したがって、既存の車体上部構造に、この実施形態のようにバルクヘッド24を追加しても、バルクヘッド24との干渉を回避するためにガイドレール17や支持フレームの形状や配置を大幅に変更する必要がない。
【0048】
また、この実施形態の車体上部構造は、バルクヘッド24の他端が、上面視でルーフアーチ14と車幅方向で重なる位置で膨出部21のレール縦壁9bに接合されることにより、レール底壁9aとルーフアーチ14とが、膨出部21のレール縦壁9bのうちのバルクヘッド24によって剛性を高められた部分を介して連結される。そのため、リヤルーフサイドレール・インナ9のレール底壁9aとルーフアーチ14の間で効率良く荷重を伝達することができる。したがって、リヤルーフサイドレール・インナ9とルーフアーチ14の交差する部分の剛性を高めることができる。
【0049】
さらに、この実施形態の車体上部構造は、バルクヘッド24の一端が、レール底壁9aのうちの、ドア開口16Rの上部コーナ部Cの近傍位置に接合されている。そのため、種々の荷重が作用し易いドア開口16Rの上部コーナ部Cの剛性を高めることができる。
【0050】
特に、この実施形態の車体上部構造では、バルクヘッド24の一端が、レール底壁9aのうちの、ドア開口16Rの上部コーナ部Cの近傍位置に接合される一方で、バルクヘッド24の他端が、ドア開口16Rの上部コーナ部Cよりも前方側において、上面視でルーフアーチ14と車幅方向で重なる位置で膨出部21のレール縦壁9bに接合されている。そのため、ドア開口16Rの上部コーナ部Cとルーフアーチ14の間をバルクヘッド24と膨出部21のレール縦壁9bを介して効率良く補強することができるとともに、センターピラー・インナ7とルーフアーチ14との間の荷重伝達効率を高めることができる。
【0051】
また、この実施形態の車体上部構造で採用するバルクヘッド24は、レール底壁9a側の一端からレール縦壁9b側の他端に向かって末広がり状に幅が漸次拡大する形状とされている。そのため、バルクヘッド24の一端に入力された荷重をレール縦壁9bの広い範囲に分散させて伝達することができる。したがって、このバルクヘッド24を採用することにより、バルクヘッド24の一端側から他端側にかけての荷重伝達効率が高くなる。
【0052】
さらに、この実施形態の車体上部構造で採用するバルクヘッド24は、レール底壁9aに接合される底壁部24aと、レール縦壁9bに接合される縦壁部24bと、底壁部24aから縦壁部24bに亘る領域の両側の側部から立ち上がる側壁部24cと、を備え、側壁部24cが底壁部24aの車幅方向外側寄りの端部と縦壁部24bの上端部とを上面視で直線を成すように連結する形状とされている。そのため、レール底壁9aと膨出部21のレール縦壁9bとの間で、効率良く直線的に荷重を伝達することができる。
【0053】
また、この実施形態のバルクヘッド24は、一方の側壁部24cの上端部に、側壁部24cの延在方向に対して略直角に屈曲するフランジ部24dが設けられている。そのため、側壁部24cとフランジ部24dの連接コーナ部分に形成される稜線部aを利用して、底壁部24aと縦壁部24bの間の荷重伝達効率をより高めることができる。
【0054】
さらに、この実施形態のバルクヘッド24においては、レール底壁9aの車幅方向外側寄り位置に溶接される第1接合部W1と、レール縦壁9bの上端部寄り位置に溶接される第2接合部W2と、第1接合部W1と第2接合部W2との間でレール底壁9aに溶接される第3接合部W3と、によってリヤルーフサイドレール・インナ9に接合される。そのため、レール縦壁9bから第2接合部W2を通してバルクヘッド24に入力された荷重を、第1接合部W1と第3接合部を通してレール底壁9a側に分散して伝達することができる。したがって、レール縦壁9bからレール底壁9a側への荷重伝達効率を高めることができる。
【0055】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
2…スライドドア
7…センターピラー・インナ(ピラー構成パネル)
9…リヤルーフサイドレール・インナ(ルーフサイドレール構成パネル)
9a…レール底壁
9b…レール縦壁
9bA…側方延出領域
14…ルーフアーチ(ルーフ横梁部材)
16R…ドア開口
17…ガイドレール
17a…傾斜部
21…膨出部
24…バルクヘッド(補強壁部材)
24a…底壁部
24b…縦壁部
24c…側壁部
24d…フランジ部
W1…第1接合部
W2…第2接合部
W3…第3接合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13