(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、
図1〜
図3を用いて本発明の実施の形態に係る駆動装置の概要について説明する。
【0012】
図1,
図2に示すように、駆動装置1は、車両の前後方向において、前側に搭載され、前輪側を駆動する。駆動源としてのエンジン3、及び駆動源又は電力エネルギーとして回生を行うモータジェネレータ5により駆動されるこの駆動装置1は、主にエンジン軸7と、モータ軸9と、動力伝達部11と、クラッチ機構75と、差動機構17とを備えている。
【0013】
図3に示すように、エンジン3(
図2参照)からの駆動力は、乾式単板クラッチなどからなる図示外の断続部に伝達され、断続部が接続状態であると、エンジン軸7に伝達される。モータジェネレータ5(
図2参照)からの駆動力は、モータ軸9に伝達され、変速ギヤ組41を介してエンジン軸7に伝達される。このエンジン3及びモータジェネレータ5から駆動力が入力されるエンジン軸7には、速比の異なる動力伝達部11における第1の動力伝達部77の入力ギヤ85と、第2の動力伝達部79の入力ギヤ93が配置されている。
【0014】
入力ギヤ85と出力ギヤ87とからなる第1の動力伝達部77に伝達された駆動力は、第1の断続部81に伝達され、第1の断続部81が接続状態であると、クラッチ軸15に伝達される。入力ギヤ93と出力ギヤ95とからなる第2の動力伝達部79に伝達された駆動力は、第2の断続部83に伝達され、第2の断続部83が接続状態であると、クラッチ軸15に伝達される。これらの動力伝達部11と第1の断続部81と第2の断続部83とでクラッチ機構75が構成されている。
【0015】
このクラッチ機構75における第1の断続部81と第2の断続部83とを選択的に接続させることにより、車両の走行状態に合わせて駆動源としてのエンジン3とモータジェネレータ5の適切な使用回転(駆動力)を適切に変速させ、クラッチ軸15に伝達させることができる。
【0016】
このクラッチ軸15に伝達された駆動力は、ピニオン143とリングギヤ145とからなる出力部13を介して差動機構17に伝達される。この差動機構17に伝達された駆動力は、一対のサイドギヤ55,57にそれぞれ連結されたシャフト67,69(
図2参照)を介して左右輪に分配される。このような差動機構17の回転軸心は、デフ軸19となっている。
【0017】
このような車両において、モータジェネレータ5のモータ機能のみで車両を駆動させるEVモードでは、図示外の断続部を切り離し、第1の断続部81又は第2の断続部83を接続して、モータジェネレータ5のモータ機能による駆動力を動力伝達部11を介して出力部13から差動機構17に出力する。なお、このモードにおけるモータジェネレータ5による電力の回生は、車両の減速時などの車両のブレーキエネルギーに対してモータジェネレータ5をジェネレータとして機能させることによって行われる。
【0018】
エンジン3のみ、モータジェネレータ5のモータ機能のみ、もしくはエンジン3とモータジェネレータ5のモータ機能とで車両を駆動させるパラレルモードでは、図示外の断続部を接続又は解除し、第1の断続部81と第2の断続部83とを選択的に接続して、車両の走行状態に合わせてエンジン3及びモータジェネレータ5のモータ機能による駆動力を選択された第1の動力伝達部77又は第2の動力伝達部79を介して出力部13から差動機構17に出力する。
【0019】
モータジェネレータ5のジェネレータ機能によってバッテリに蓄電させる発電モードでは、車両の停車時、或いはエンジン3のみの走行時に図示外の断続部を接続し、第1の断続部81及び第2の断続部83を切り離して(エンジン3のみの走行時ではいずれかの断続部を接続して)、エンジン軸7から変速ギヤ組41を介してモータ軸9を駆動し、エンジン3でモータジェネレータ5のジェネレータ機能を駆動し、図示外のバッテリに蓄電させる。なお、車両の停車時には、クラッチ軸15に設けられたパークロックギヤ149がパークロック機構21(
図4参照)によってロックされ、クラッチ軸15の回転が阻止される。
【0020】
このように車両は、走行状況によってエンジン3とモータジェネレータ5との駆動源を選択すると共に、図示外の断続部や、第1の断続部81及び第2の断続部83の断続を選択的に行うことによって、動力伝達部11における第1の動力伝達部77及び第2の動力伝達部79で適切に変速された駆動力により駆動される。
【0021】
以下、
図3〜
図8を用いて、このような車両に搭載された本発明の実施の形態に係る駆動装置について説明する。なお、
図4〜
図8において、車両の前後方向は、紙面上に記載の前、後の方向であり、車両の上下方向は、紙面上に記載の上、下の方向に対応している。
【0022】
本実施の形態に係る駆動装置1は、車両に搭載され駆動源となるエンジン3と、車両に搭載され駆動源となるモータジェネレータ5と、エンジン3の動力を伝達するエンジン軸7と、このエンジン軸7にモータジェネレータ5の動力を伝達するモータ軸9と、エンジン軸7から伝達される動力を異なる速比で伝達する動力伝達部11と、この動力伝達部11に伝達される動力を出力する出力部13を有するクラッチ軸15と、このクラッチ軸15の出力部13から出力される動力を差動機構17に伝達するデフ軸19とを備えている。
【0023】
そして、クラッチ軸15は、車両の前後方向のエンジン軸7とデフ軸19との間に配置されている。
【0024】
また、モータ軸9は、車両の前後方向のエンジン軸7とデフ軸19との間に配置されている。
【0025】
さらに、クラッチ軸15は、車両の上下方向のモータ軸9より下側に配置されている。
【0026】
また、モータ軸9は、車両の上下方向のエンジン軸7の高さ以上に配置されている。
【0027】
さらに、車両の前後方向のクラッチ軸15より前側には、クラッチ軸15の回転を阻止するパークロック機構21が配置されている。
【0028】
図3に示すように、駆動装置1は、エンジン軸7と、モータ軸9と、クラッチ軸15と、差動機構17の回転軸線であるデフ軸19とが平行に配置されている。
【0029】
エンジン軸7は、軸方向両側を一対のベアリング23,25を介してケーシング27に回転可能に支持されている。また、エンジン軸7の端部外周には、連結部29が形成され、図示外の断続部を構成するクラッチ部材が一体回転可能に連結される。また、エンジン軸7とケーシング27との径方向間には、ケーシング27の内部と外部とを区画するシール部材31が配置されている。
【0030】
このエンジン軸7には、図示外の断続部を介してエンジン3(
図2参照)からの駆動力が入力されると共に、変速ギヤ組41とモータ軸9とを介してモータジェネレータ5(
図2参照)のモータ機能による駆動力が入力される。なお、モータジェネレータ5がジェネレータとして機能している場合には、エンジン軸7に入力された駆動力が変速ギヤ組41とモータ軸9とを介してモータジェネレータ5に出力される。
【0031】
モータ軸9は、中空状に形成され、軸方向両側を一対のベアリング33,35を介してケーシング27に回転可能に支持されている。また、モータ軸9の端部内周には、連結部37が形成され、モータジェネレータ5の出力軸が一体回転可能に連結される。また、モータ軸9の中央部には、エンジン軸7と一体回転可能に形成された第1の動力伝達部77の大径の入力ギヤ85と噛み合う小径のギヤ部39が形成されている。このギヤ部39と入力ギヤ85とは、互いに平行に配置され、変速ギヤ組41を構成している。なお、モータ軸9のギヤ部39を第2の動力伝達部79の入力ギヤ93と噛み合わせて変速ギヤ組41を構成してもよい。また、モータ軸9とケーシング27との径方向間には、ケーシング27の内部と外部とを区画するシール部材43が配置されている。
【0032】
このモータ軸9には、モータジェネレータ5がモータとして機能したとき、モータジェネレータ5からの駆動力が入力され、変速ギヤ組41を介してエンジン軸7に出力する。また、モータジェネレータ5がジェネレータとして機能したとき、変速ギヤ組41を介して入力されるエンジン軸7側からの駆動力をモータジェネレータ5に出力する。このようなエンジン3及びモータジェネレータ5のモータ機能による駆動力は、エンジン軸7を介してクラッチ軸15に出力される。
【0033】
クラッチ軸15は、軸方向両側を一対のベアリング45,47を介してケーシング27に回転可能に支持されている。このクラッチ軸15には、第1の断続部81及び第2の断続部83を介してエンジン軸7側から駆動力が入力され、出力部13を介して差動機構17に出力する。
【0034】
差動機構17は、デフケース49と、ピニオンシャフト51と、ピニオン53と、一対のサイドギヤ55,57とを備えている。デフケース49は、軸方向両側に形成されたボス部でそれぞれベアリング59,61を介してケーシング27に回転可能に支持されている。このデフケース49は、出力部13を介して駆動力が伝達されてデフ軸19を回転軸心として回転駆動される。このようなデフケース49には、ピニオンシャフト51とピニオン53と一対のサイドギヤ55,57とが収容されている。
【0035】
ピニオンシャフト51は、端部をデフケース49に係合してピンで抜け止めされデフケース49と一体に回転駆動される。このピニオンシャフト51には、ピニオン53が支承されている。
【0036】
ピニオン53は、ピニオンシャフト51に支承されてデフケース49の回転によって公転する。また、ピニオン53は、一対のサイドギヤ55,57に駆動力を伝達すると共に、噛み合っている一対のサイドギヤ55,57に差回転が生じると回転駆動されるようにピニオンシャフト51に自転可能に支持されている。
【0037】
一対のサイドギヤ55,57は、デフケース49に相対回転可能に支持され、ピニオン53と噛み合っている。この一対のサイドギヤ55,57は、内周側にスプライン形状の連結部63,65が設けられ、左右輪側に連結されたシャフト67,69(
図2参照)がサイドギヤ55,57と一体回転可能に連結されている。また、シャフト67,69とケーシング27との径方向間には、ケーシング27の内部と外部とを区画するシール部材71,73が配置されている。このように一対のサイドギヤ55,57は、デフケース49に入力された駆動力をシャフト67,69を介して左右輪側へ出力する。
【0038】
このようなエンジン軸7とモータ軸9とクラッチ軸15とデフ軸19とは、クラッチ機構75を介して動力伝達可能に配置されている。このクラッチ機構75は、動力伝達部11を構成する第1の動力伝達部77及び第2の動力伝達部79と、第1の断続部81と、第2の断続部83と、出力部13とを備えている。
【0039】
第1の動力伝達部77は、互いに平行に配置された入力ギヤ85と出力ギヤ87とからなる。入力ギヤ85は、エンジン軸7に連続する一部材で形成され、エンジン軸7と一体回転される。この入力ギヤ85は、出力ギヤ87よりも大径に形成され、出力ギヤ87と噛み合っている。出力ギヤ87は、クラッチ軸15上にニードルベアリング89,91を介してクラッチ軸15と相対回転可能に配置されている。
【0040】
この第1の動力伝達部77は、図示外の断続部からエンジン軸7を介して伝達される動力を第1の速比で第1の断続部81に伝達する。詳細には、図示外の断続部が接続状態であるとき、エンジン3からの駆動力を第1の速比で第1の断続部81に伝達する。図示外の断続部が接続解除状態であるときには、モータジェネレータ5のモータ機能による駆動力をモータ軸9から変速ギヤ組41を介してエンジン軸7に伝達し、第1の速比で第1の断続部81に伝達する。このような第1の動力伝達部77には、第2の動力伝達部79が軸方向に隣接配置されている。
【0041】
第2の動力伝達部79は、互いに平行に配置された入力ギヤ93と出力ギヤ95とからなる。入力ギヤ93は、エンジン軸7に連結部97を介してエンジン軸7と一体回転可能に連結されている。この入力ギヤ93は、出力ギヤ95よりも大径で且つ入力ギヤ85よりも小径に形成され、出力ギヤ95と噛み合っている。出力ギヤ95は、出力ギヤ87よりも大径に形成され、出力ギヤ87の外周上にニードルベアリング99を介して出力ギヤ87及びクラッチ軸15と相対回転可能に配置されている。
【0042】
この第2の動力伝達部79は、図示外の断続部からエンジン軸7を介して伝達される動力を第2の速比で第2の断続部83に伝達する。詳細には、図示外の断続部が接続状態であるとき、エンジン3からの駆動力を第2の速比で第2の断続部83に伝達する。図示外の断続部が接続解除状態であるときには、モータジェネレータ5のモータ機能による駆動力をモータ軸9から変速ギヤ組41を介してエンジン軸7に伝達し、第2の速比で第2の断続部83に伝達する。
【0043】
このような動力伝達部11から伝達される駆動力は、それぞれ第1の速比と第2の速比とで第1の断続部81と第2の断続部83とに伝達され、第1の断続部81及び第2の断続部83の接続によってクラッチ軸15に伝達される。
【0044】
第1の断続部81は、出力ギヤ87と連結部101で一体回転可能に連結された第1クラッチハウジング103と、第1クラッチハウジング103の内周とクラッチ軸15の外周とにそれぞれ軸方向移動可能で一体回転可能に連結された複数のクラッチ板とからなる。この第1の断続部81は、接続されると第1の動力伝達部77によって第1の速比に変速された駆動力をクラッチ軸15に伝達する。この第1の断続部81の外径側には、第2の断続部83が径方向にオーバーラップして配置されている。
【0045】
第2の断続部83は、出力ギヤ95とボルトで一体回転可能に固定された第2クラッチハブ105と、クラッチ軸15と溶接などの固定手段によって一体回転可能に固定された第2クラッチハウジング107と、第2クラッチハブ105の外周と第2クラッチハウジング107の内周とにそれぞれ軸方向移動可能で一体回転可能に連結された複数のクラッチ板とからなる。この第2の断続部83は、接続されると第2の動力伝達部79によって第2の速比に変速された駆動力をクラッチ軸15に伝達する。
【0046】
このような第1の断続部81と第2の断続部83とは、クラッチ軸15の端部に配置された操作部109によって断続操作される。
【0047】
操作部109は、ピニオン143と同軸的に設けられ、油圧機構111と、第1押圧部材113と、第2押圧部材115とを備え、油圧機構111やオイルポンプ119がクラッチ軸15と同軸的に連結配置されている。操作部109の作動を制御する制御機構としての油圧機構111は、ケーシング27の内部に配置される内装タイプの2分割からなるバルブボディ117内に配置され、図示外の小型電動モータで駆動されるオイルポンプ119と、バルブボディ117内に設けられた油圧回路121とを備えている。
【0048】
オイルポンプ119は、2つのポンプギヤが組み合わされたギヤポンプからなる。このオイルポンプ119は、バルブボディ117内でクラッチ軸15の端部側に配置されている。このオイルポンプ119は、ケーシング27内の油溜まりに貯留されたオイルを、異物をろ過するオイルストレーナを介して吸入し、オイルに油圧を付与して油圧回路121を流通させる。
【0049】
油圧回路121は、バルブボディ117内に設けられ、複数の油路などで形成され、図示外の小型電動モータで駆動されるオイルポンプ119により、規定油圧を油圧室123内に蓄え、図示外のソレノイドバルブにより油圧が制御されたオイルが、径方向孔125,127から軸方向孔129,131と径方向孔133,135を介して第1油圧シリンダ137及び第2油圧シリンダ139へ供給され、第1押圧部材113及び第2押圧部材115が移動操作される。
【0050】
第1押圧部材113及び第2押圧部材115は、それぞれクラッチ軸15上に軸方向相対移動可能に配置されている。第1押圧部材113は、スナップリングなどの固定手段によって軸方向位置が固定され、第1の断続部81の複数のクラッチ板と軸方向に対向配置されている。第2押圧部材115は、第2クラッチハウジング107によって軸方向位置が固定され、第2の断続部83の複数のクラッチ板と軸方向に対向配置されている。また、第1押圧部材113と第2押圧部材115とには、それぞれを第1の断続部81及び第2の断続部83の接続解除方向に付勢するリターンスプリング141が配置されている。
【0051】
この第1押圧部材113は、油圧機構111から油圧が制御されたオイルが第1油圧シリンダ137に供給されることによって第1の断続部81の接続方向に軸方向移動される。この第1押圧部材113の軸方向移動により、第1の断続部81が押圧操作されて接続状態となる。この第1の断続部81の接続により、エンジン軸7から第1の動力伝達部77を介して第1の速比に変速された駆動力がクラッチ軸15に伝達される。
【0052】
第2押圧部材115は、油圧機構111から油圧が制御されたオイルが第2油圧シリンダ139に供給されることによって第2の断続部83の接続方向に軸方向移動される。この第2押圧部材115の軸方向移動により、第2の断続部83が押圧操作されて接続状態となる。この第2の断続部83の接続により、エンジン軸7から第2の動力伝達部79を介して第2の速比に変速された駆動力がクラッチ軸15に伝達される。
【0053】
このように第1の断続部81及び第2の断続部83を介してクラッチ軸15に伝達された駆動力は、出力部13からデフ軸19を回転軸心とする差動機構17側に出力される。なお、第1油圧シリンダ137と第2油圧シリンダ139は、クラッチ軸15と同軸上に配置されているが、第1油圧シリンダ137と第2油圧シリンダ139をケーシング27側に形成し、ロッドとベアリングなどの相対回転吸収手段を介して第1の断続部81及び第2の断続部83の断続制御を行うこともできる。
【0054】
出力部13は、互いに平行に配置されたピニオン143とリングギヤ145とからなる。ピニオン143は、操作部109が配置されたクラッチ軸15の反対側の端部に連結部147を介してクラッチ軸15と一体回転可能に連結されている。また、ピニオン143は、第1の動力伝達部77の出力ギヤ87と軸方向に隣接配置されている。このピニオン143は、リングギヤ145よりも小径に形成され、リングギヤ145と噛み合い、車輪側への出力系路としては減速ギヤ機構をなしている。
【0055】
リングギヤ145は、差動機構17のデフケース49とボルトなどの固定手段によって一体回転可能に固定されている。このリングギヤ145は、差動機構17の回転軸心であるデフ軸19を回転軸心とし、クラッチ軸15に伝達された駆動力をピニオン143を介して差動機構17に伝達する。
【0056】
この出力部13は、クラッチ軸15に伝達された駆動力を差動機構17に出力する。この差動機構17に伝達された駆動力は、一対のサイドギヤ55,57に連結されたシャフト67,69(
図2参照)を介して左右輪側へ出力される。このような出力部13のピニオン143には、パークロックギヤ149が一体回転可能に設けられており、このパークロックギヤ149は、車両の停車時にパークロック機構21によってロックされ、クラッチ軸15の回転を阻止する。
【0057】
図4,
図5に示すように、パークロック機構21は、アクチュエータ151と、回動部材153と、付勢部材155と、移動部材157と、操作部材159と、ロック部材161とを備えている。アクチュエータ151は、電動モータからなり車体フレームなどの静止系部材に固定され、ドライバなどのユーザがシフトレンジを切り替えることによって作動される。このアクチュエータ151は、作動により回転軸163を回転駆動させて回動部材153を回動させる。
【0058】
回動部材153は、薄板状のプレートからなり、回動中心にアクチュエータ151の回転軸163が一体回転可能に挿通され、アクチュエータ151の回転により回転軸163の軸心周りを回動する。この回動部材153は、回転軸163、すなわちアクチュエータ151の正逆回転により、ロック部材161がクラッチ軸15の回転を阻止するロック位置と、ロック部材161によるクラッチ軸15の回転の阻止を解除するロック解除位置との間を回動される。このときの回動部材153の回動は、規制部材165,167と当接することによって規制される。このような回動部材153は、付勢部材155によって段階的に付勢力が付与される。
【0059】
付勢部材155は、板バネからなり、静止系部材に対してボルトで固定され、一端側が回動部材153に係合されている。この付勢部材155の一端は、コロとなっており、回動部材153に形成された2つの凹部と係合部169を構成している。この係合部169は、回動部材153の回動により、コロが回動部材153に形成された2つの凹部の間を変動していずれかに係合される。
【0060】
詳細には、この係合部169は、回動部材153がロック位置に位置したときは一方の凹部に係合され、回動部材153がロック解除位置に位置したときには他方の凹部に係合される。このとき、付勢部材155は、ロック位置又はロック解除位置の2段階に回動部材153に付勢力を付与する。このような回動部材153には、移動部材157が係合されている。
【0061】
移動部材157は、長尺状のロッドからなり、一端側が回動部材153に連結部171を介して係合され、回動部材153の回動により軸方向移動される。この移動部材157の他端側には、操作部材159が挿通されている。
【0062】
操作部材159は、端部を溶接などの固定手段によって操作部材159の移動部材157に対する軸方向位置が位置決めされている。この操作部材159には、ロック部材161と当接してロック部材161を操作するカム面が形成されている。また、操作部材159には、移動部材157に挿通され、ロック部材161がクラッチ軸15の回転を阻止する際に、ロック部材161の待ち機構となる待ちバネ173が当接されている。
【0063】
この操作部材159は、静止系部材に対してボルトで固定されたスリーブ175内に軸方向移動可能に配置され、スリーブ175に設けられた開口で軸方向移動により、カム面がロック部材161と当接する、もしくは当接を解除することによってロック部材161を操作する。
【0064】
ロック部材161は、静止系部材に軸支部177で回動可能に組み付けられ、当接部179とロック部181とを備えている。当接部179は、ロック部材161の一端側に設けられ、ロック部材161のロック解除位置ではスリーブ175の内部に配置されており、ロック部材161のロック位置では操作部材159のカム面が当接されてロック部材161がクラッチ軸15の回転を阻止する方向に回動される。ロック部181は、ロック部材161の他端側に設けられ、ロック部材161がクラッチ軸15の回転を阻止する方向に回動されたときに、クラッチ軸15と一体回転可能に設けられたパークロックギヤ149と噛み合い、クラッチ軸15の回転を阻止する。
【0065】
なお、ロック部材161を軸支する軸支部177には、巻きバネからなるリターンスプリング183が設けられ、一端が静止系部材に係合され、他端側がロック部材161に当接されている。このリターンスプリング183は、ロック部材161をロック部181とパークロックギヤ149との噛み合い解除方向に付勢してロック部材161の初期位置を規定している。
【0066】
このようなパークロック機構21は、アクチュエータ151の作動により回動部材153がロック位置に回動したとき、移動部材157がロック部材161側に移動され、操作部材159がロック部材161の当接部179と当接する。このとき、操作部材159のカム面がロック部材161の当接部179をリターンスプリング183の付勢力に抗して押圧する。これにより、ロック部材161のロック部181が軸支部177を支点として回動されてパークロックギヤ149と噛み合い、クラッチ軸15の回転が阻止される。なお、ロック部181がパークロックギヤ149の歯面に位置してパークロックギヤ149と噛み合っていない場合には、待ち機構としての待ちバネ173によってロック部181がパークロックギヤ149の歯底に向けて付勢されており、ロック部181がパークロックギヤ149との噛み合い位置に位置したときにパークロックギヤ149と噛み合う。
【0067】
このロック部材161のロック状態からアクチュエータ151の作動により回動部材153がロック解除位置に回動したとき、移動部材157が回動部材153側に移動され、操作部材159とロック部材161の当接部179との当接が解除される。このとき、リターンスプリング183の付勢力によってロック部材161の当接部179がスリーブ175の内部に収容される。これにより、ロック部材161のロック部181が軸支部177を支点として回動されてパークロックギヤ149との噛み合いが解除され、クラッチ軸15の回転の阻止が解除される。
【0068】
このような駆動装置1におけるエンジン軸7と、モータ軸9と、クラッチ軸15と、デフ軸19とは、それぞれの配置がコンパクト化されるように位置されている。詳細には、クラッチ軸15は、車両の前後方向のエンジン軸7とデフ軸19との間に配置されている。また、モータ軸9は、車両の前後方向のエンジン軸7とデフ軸19との間に配置されている。この配置により、動力伝達部11、第1の断続部81及び第2の断続部83、出力部13などを有するクラッチ機構75と、モータジェネレータ5の外径を示すモータフランジ185とがエンジン3の外径を示すエンジンフランジ187よりも車両の前側に配置されることがなくなる。このため、車両の前側にパークロック機構21を配置する配置スペースを確保することができ、
図4に示すようなパークロック機構21の配置や
図5に示すようなパークロック機構21の配置など、パークロック機構21のレイアウトの自由度を向上することができる。
【0069】
また、クラッチ軸15は、車両の上下方向のモータ軸9より下側に配置されている。この配置により、モータジェネレータ5がクラッチ機構75よりも車両の上下方向の上側に配置されることになり、モータジェネレータ5の車両の上下方向における最低地上高さを確保することができる。
【0070】
また、モータ軸9は、車両の上下方向のエンジン軸7の高さ以上に配置されている。この配置においては、モータ軸9が車両の前後方向のエンジン軸7とデフ軸19との間に配置されていないが、例えば、
図6〜
図8に示すようなモータ軸9の配置であってもよい。
図6に示すようなモータ軸9がエンジン軸7の上方に位置する配置であれば、車両の前側のスペースを確保することができ、
図8に示すようなモータ軸9がエンジン軸7の前側に位置する配置であれば、車両の上方のスペースを確保することができる。また、
図8に示すように、パークロック機構21の配置を変更することによって他の機構との干渉を防止することができる。このような配置により、モータジェネレータ5の車両の上下方向における最低地上高さを確保しつつ、車両の前側及び上側のスペースを確保することができ、周辺部材のレイアウトの自由度を向上することができる。
【0071】
このような駆動装置1では、クラッチ軸15が車両の前後方向のエンジン軸7とデフ軸19との間に配置されているので、動力伝達部11と出力部13とがエンジン3と差動機構17との間に配置されることになる。
【0072】
従って、このような駆動装置1では、車両の前後方向に大きな機構がコンパクトに配置されることになり、小型化することができる。加えて、車両の前後方向にコンパクトに搭載されるので、周辺部材の配置設計の自由度を向上することができる。
【0073】
また、モータ軸9は、車両の前後方向のエンジン軸7とデフ軸19との間に配置されているので、車両の前側にスペースを確保することができ、周辺部材の配置設計の自由度を向上することができる。
【0074】
さらに、クラッチ軸15は、車両の上下方向のモータ軸9より下側に配置されているので、モータジェネレータ5が動力伝達部11や出力部13よりも車両の上下方向の上側に配置されることになり、モータジェネレータ5の車両の上下方向における最低地上高さを確保することができる。
【0075】
また、モータ軸9は、車両の上下方向のエンジン軸7の高さ以上に配置されているので、モータジェネレータ5の車両の上下方向における最低地上高さを確保しつつ、車両の上側のスペースを確保することができ、周辺部材の配置設計の自由度を向上することができる。
【0076】
さらに、車両の前後方向のクラッチ軸15より前側には、クラッチ軸15の回転を阻止するパークロック機構21が配置されているので、スペースが確保された車両の前側にパークロック機構21を配置することができ、パークロック機構21の配置設計の自由度を向上することができる。
【0077】
なお、本発明の実施の形態に係る駆動装置では、車両の前側に駆動装置が適用されているが、これに限らず、車両の後側に駆動装置を適用してもよい。この場合にも、車両の後側がコンパクト化され、周辺部材の配置設計の自由度を向上することができる。
【0078】
また、本発明の実施の形態に係る駆動装置は、前後車軸間搭載の後輪駆動車(MR車)や後車軸後方搭載の後輪駆動車(RR車)などに適用してもよい。
【0079】
さらに、本発明の実施の形態に係る駆動装置は、前後方向を逆にして車両搭載しても上記同様にコンパクト化を果たすことができる。