特許第6043886号(P6043886)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6043886
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】ガス分離システム及び燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0662 20160101AFI20161206BHJP
【FI】
   H01M8/06 S
【請求項の数】8
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-116875(P2016-116875)
(22)【出願日】2016年6月13日
【審査請求日】2016年7月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多久 俊平
(72)【発明者】
【氏名】中村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】道幸 立樹
【審査官】 武市 匡紘
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5743639(JP,B2)
【文献】 特開2006−031989(JP,A)
【文献】 特開2013−045696(JP,A)
【文献】 特表2006−525626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00−8/24
C01B 3/00−6/34
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給側に供給された二酸化炭素及び水蒸気を含むガス中の二酸化炭素をガス透過側に透過させて二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離膜と、
前記二酸化炭素分離膜の前記ガス供給側に供給された前記ガスのガス流通方向下流に配置され、二酸化炭素が分離された前記ガス中の水蒸気を除去する水蒸気除去手段と、
を備え
前記水蒸気除去手段は、ガス供給側に供給された前記二酸化炭素が分離されたガス中の水蒸気をガス透過側に透過させて水蒸気を分離する水蒸気分離膜であり、
前記二酸化炭素分離膜及び前記水蒸気分離膜の前記ガス透過側に、スイープガスを供給するスイープガス供給経路を更に備え、前記スイープガスは、前記スイープガス供給経路を通じて、前記水蒸気分離膜の前記ガス透過側を流通した後、前記二酸化炭素分離膜の前記ガス透過側を流通するガス分離システム。
【請求項2】
前記二酸化炭素分離膜の前記ガス供給側を流通する前記ガス及び前記水蒸気分離膜の前記ガス供給側を流通する前記二酸化炭素が分離されたガスと、前記二酸化炭素分離膜及び前記水蒸気分離膜の前記ガス透過側を流通するスイープガスと、が対向流である請求項に記載のガス分離システム。
【請求項3】
前記二酸化炭素分離膜の前記ガス供給側を流通する前記ガスと、前記二酸化炭素分離膜の前記ガス透過側を流通する前記スイープガスと、が並行流であり、かつ、前記水蒸気分離膜の前記ガス供給側を流通する前記二酸化炭素が分離されたガスと、前記水蒸気分離膜の前記ガス透過側を流通する前記スイープガスと、が対向流である請求項に記載のガス分離システム。
【請求項4】
原料ガスを改質して生成された改質ガスを用いて発電を行なう第1燃料電池と、
前記第1燃料電池から排出された未反応の前記改質ガスを含むオフガスを流通するオフガス流通経路と、
前記オフガス流通経路に配置され、ガス供給側に供給された前記オフガス中の二酸化炭素をガス透過側に透過させて二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離膜と、
前記オフガス流通経路における前記二酸化炭素分離膜のガス流通方向下流に配置され、二酸化炭素が分離された前記オフガス中の水蒸気を除去する水蒸気除去手段と、
前記オフガス流通経路における前記水蒸気除去手段のガス流通方向下流に配置され、二酸化炭素及び水蒸気が分離された前記オフガスを用いて発電を行なう第2燃料電池と、
を備え
前記水蒸気除去手段は、ガス供給側に供給された前記二酸化炭素が分離されたオフガス中の水蒸気を、ガス透過側に透過させて水蒸気を分離する水蒸気分離膜であり、
前記二酸化炭素分離膜及び前記水蒸気分離膜の前記ガス透過側に、スイープガスを供給するスイープガス供給経路を更に備え、前記スイープガスは、前記スイープガス供給経路を通じて、前記水蒸気分離膜の前記ガス透過側を流通した後、前記二酸化炭素分離膜の前記ガス透過側を流通する燃料電池システム。
【請求項5】
原料ガスを改質して生成された改質ガスを用いて発電を行なう燃料電池と、
前記燃料電池から排出された未反応の前記改質ガスを含むオフガスを流通するオフガス流通経路と、
前記オフガス流通経路に配置され、ガス供給側に供給された前記オフガス中の二酸化炭素をガス透過側に透過させて二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離膜と、
前記オフガス流通経路における前記二酸化炭素分離膜のガス流通方向下流に配置され、二酸化炭素が分離された前記オフガス中の水蒸気を除去する水蒸気除去手段と、
前記オフガス流通経路における前記水蒸気除去手段のガス流通方向下流に設けられ、二酸化炭素及び水蒸気が分離された前記オフガスを前記燃料電池に供給するオフガス循環経路と、
を備え
前記水蒸気除去手段は、ガス供給側に供給された前記二酸化炭素が分離されたオフガス中の水蒸気を、ガス透過側に透過させて水蒸気を分離する水蒸気分離膜であり、
前記二酸化炭素分離膜及び前記水蒸気分離膜の前記ガス透過側に、スイープガスを供給するスイープガス供給経路を更に備え、前記スイープガスは、前記スイープガス供給経路を通じて、前記水蒸気分離膜の前記ガス透過側を流通した後、前記二酸化炭素分離膜の前記ガス透過側を流通する燃料電池システム。
【請求項6】
前記原料ガスを改質して前記改質ガスを生成する改質器を更に備える請求項又は請求項に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記二酸化炭素分離膜の前記ガス供給側を流通する前記オフガス及び前記水蒸気分離膜の前記ガス供給側を流通する前記二酸化炭素が分離されたオフガスと、前記二酸化炭素分離膜及び前記水蒸気分離膜の前記ガス透過側を流通するスイープガスと、が対向流である請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記二酸化炭素分離膜の前記ガス供給側を流通する前記オフガスと、前記二酸化炭素分離膜の前記ガス透過側を流通する前記スイープガスと、が並行流であり、かつ、前記水蒸気分離膜の前記ガス供給側を流通する前記二酸化炭素が分離されたオフガスと、前記水蒸気分離膜の前記ガス透過側を流通する前記スイープガスと、が対向流である請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分離システム及び燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素(CO)を含む混合ガスから二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離膜、及び二酸化炭素分離膜を備える二酸化炭素分離システムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、二酸化炭素と水蒸気が含まれる原料ガスから二酸化炭素を透過させて分離する、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合体ゲル膜に2,3−ジアミノプロピオン酸を添加して形成されたCO促進輸送膜と、原料ガスの水蒸気分圧を調整する圧力調整手段とを備える二酸化炭素分離装置が開示されている。
特許文献2には、温度湿度調節装置で温度及び相対湿度が調節されたガス体を、アミン化合物を有する分離膜の一方の面に供給するガス供給部、並びに分離膜を透過した透過ガス体から水蒸気を分離して分離膜の他方の面側に供給する加湿部を備える二酸化炭素ガス分離システムが開示されている。
特許文献3には、原料ガスに含まれる二酸化炭素を選択的に透過面側へ透過させる透過膜と、透過膜の透過面側の水分を維持する水分維持手段(加圧等の蒸発抑制手段、加湿等の水分供給手段)とを備える二酸化炭素分離装置が開示されている。
【0004】
特許文献1〜3に記載された二酸化炭素分離膜(所謂、CO促進輸送膜)は、二酸化炭素とのみ可逆的かつ選択的に反応する物質(キャリア)を組み込んだ膜であり、溶解拡散機構又は分子篩機構により分離する膜と比較して高い分離性能を有する。
非特許文献1には、CO促進輸送膜の特性として、二酸化炭素に加えて水蒸気の選択透過性を有することが示されている。すなわち、CO促進輸送膜によれば、二酸化炭素及び水蒸気を含むガスから、二酸化炭素及び水蒸気の両方を選択的に除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4965928号公報
【特許文献2】特許第5743639号公報
【特許文献3】特許第5738704号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Zi Tong et al., "Water vapor and CO2 transport through amine-containing facilitated transport membranes." Reactive & Functional Polymer(2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、CO促進輸送膜では、特許文献1に示されているように、供給するガスの相対湿度が高いほどCOパーミアンスが高くなる。換言すると、CO促進輸送膜では、透過側への水蒸気の透過に伴い、供給側の相対湿度が低下すると、二酸化炭素の透過性が低下する。そのため、特許文献1〜3では、原料ガスに含まれる水蒸気の透過を抑制することにより二酸化炭素の透過を促進している。具体的には、特許文献1では、原料ガスの相対湿度を調整するために、二酸化炭素分離装置に原料ガス中の水蒸気分圧を調整する圧力調整手段を設けている。また、特許文献2では、分離膜を透過した水蒸気を再度透過側の上流に戻して透過側の相対湿度を上げることにより原料ガス中の水蒸気の透過を抑制している。さらに、特許文献3では、透過膜の透過面側の水分を維持するための水分維持手段(加圧等の水分蒸発抑制手段、加湿等の水分供給手段など)を設けることにより原料ガス中の水蒸気の透過を抑制している。
【0008】
一方、近年では、二酸化炭素及び水蒸気を含むガスから、二酸化炭素だけではなく、二酸化炭素及び水蒸気の両方を除去したいというニーズもある。
この点に関し、特許文献1〜3に記載された二酸化炭素分離装置では、二酸化炭素の透過を促進することはできるものの、水蒸気の透過性は低下することになる。
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、二酸化炭素及び水蒸気を含むガスから、二酸化炭素及び水蒸気の両方を効果的に除去することができるガス分離システム、並びに発電効率に優れる燃料電池システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の形態が含まれる。
<1> ガス供給側に供給された二酸化炭素及び水蒸気を含むガス中の二酸化炭素をガス透過側に透過させて二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離膜と、前記二酸化炭素分離膜の前記ガス供給側に供給された前記ガスのガス流通方向下流に配置され、二酸化炭素が分離された前記ガス中の水蒸気を除去する水蒸気除去手段と、を備えるガス分離システム。
【0011】
一般に、ガス供給側に供給されたガス中の二酸化炭素をガス透過側に透過させて分離する二酸化炭素分離膜が設けられたガス分離システムでは、二酸化炭素及び水蒸気を含むガスを二酸化炭素分離膜のガス供給側に供給することで、ガス中の二酸化炭素をガス透過側に透過させることができる。
【0012】
一方、本形態に係るガス分離システムでは、ガス供給側に供給されたガス中の二酸化炭素をガス透過側に透過させて分離する二酸化炭素分離膜と、ガス中の水蒸気を除去する水蒸気除去手段と、を備えており、水蒸気除去手段が二酸化炭素分離膜のガス供給側に供給されたガスのガス流通方向下流に配置されている。そのため、二酸化炭素分離膜のガス供給側に供給されるガスの相対湿度は、水蒸気除去手段が二酸化炭素分離膜のガス供給側に供給されたガスのガス流通方向上流に配置されている場合と比較して高くなる。このような位置関係で二酸化炭素分離膜と水蒸気除去手段とを配置することにより、二酸化炭素分離膜の二酸化炭素の透過性を維持しつつ、二酸化炭素及び水蒸気の両方の分離が可能となる。
したがって、本形態に係るガス分離システムでは、二酸化炭素及び水蒸気の両方を効果的に除去することができる。
【0013】
水蒸気除去手段としては、特に限定されず、例えば、水蒸気を分離する分離膜(水蒸気分離膜)、水蒸気を凝縮する凝縮器(水凝縮器)、水蒸気を吸着する吸着材等が挙げられる。
【0014】
<2> 前記水蒸気除去手段は、ガス供給側に供給された前記二酸化炭素が分離されたガス中の水蒸気をガス透過側に透過させて水蒸気を分離する水蒸気分離膜である<1>に記載のガス分離システム。
【0015】
本形態に係るガス分離システムでは、水蒸気除去手段として水蒸気分離膜を用いている。そのため、水蒸気の状態のままで水を除去することができる。本形態に係るガス分離システムでは、例えば、水凝縮器のようにガスを常温付近まで冷却したり、吸着材のように吸放出を繰り返して使用したりする必要がない。また、水蒸気分離膜は、ガス供給側に供給されたガス中の水蒸気をガス透過側に透過させて水蒸気を分離する膜であり、二酸化炭素分離膜と同様の機構によりガスを分離する膜である。したがって、本形態に係るガス分離システムでは、水蒸気除去手段を組み込むためにシステムを複雑化させることなく、二酸化炭素及び水蒸気の両方を効果的に除去することができる。
【0016】
<3> 前記二酸化炭素分離膜及び前記水蒸気分離膜の前記ガス透過側に、スイープガスを供給するスイープガス供給経路を更に備え、前記スイープガスは、前記スイープガス供給経路を通じて、前記水蒸気分離膜の前記ガス透過側を流通した後、前記二酸化炭素分離膜の前記ガス透過側を流通する<2>に記載のガス分離システム。
【0017】
前述したように、二酸化炭素分離膜が設けられたガス分離システムでは、二酸化炭素及び水蒸気を含むガスを二酸化炭素分離膜のガス供給側に供給することで、ガス中の二酸化炭素をガス透過側に透過させることができる。しかし、二酸化炭素分離膜は、二酸化炭素とともに水蒸気がガス透過側に透過してしまうため、ガス供給側の相対湿度が低下し易く、二酸化炭素分離膜の二酸化炭素透過性が低下する傾向がある。
【0018】
一方、本形態に係るガス分離システムでは、スイープガス供給経路に供給されたスイープガスは、水蒸気分離膜のガス透過側を流通した後、二酸化炭素分離膜のガス透過側を流通する。スイープガスは、水蒸気分離膜のガス透過側を流通する過程で、水蒸気分離膜のガス供給側からガス透過側に透過した水蒸気を含み、水蒸気濃度が高められた後、二酸化炭素分離膜のガス透過側に供給される。そのため、水蒸気濃度の高いスイープガスが供給された二酸化炭素分離膜のガス透過側では、相対湿度が高まる。これにより、ガス供給側からの水蒸気の透過が抑制されるため、二酸化炭素透過性を良好に維持することができる。むしろ、水蒸気濃度の高いスイープガスによって二酸化炭素分離膜が加湿されるため、ガス供給側からの二酸化炭素の透過が促進される。
また、本形態に係るガス分離システムでは、二酸化炭素分離膜及び水蒸気分離膜のガス透過側にスイープガスが供給されるため、二酸化炭素分離膜及び水蒸気分離膜のガス透過側では、二酸化炭素分圧及び水蒸気分圧が下がる。これにより、二酸化炭素分離膜での二酸化炭素透過性及び水蒸気分離膜での水蒸気透過性の両方がより向上する。
したがって、本形態に係るガス分離システムでは、二酸化炭素及び水蒸気の両方をより効果的に除去することができる。
【0019】
<4> 前記二酸化炭素分離膜の前記ガス供給側を流通する前記ガス及び前記水蒸気分離膜の前記ガス供給側を流通する前記二酸化炭素が分離されたガスと、前記二酸化炭素分離膜及び前記水蒸気分離膜の前記ガス透過側を流通するスイープガスと、が対向流である<3>に記載のガス分離システム。
【0020】
本形態に係るガス分離システムでは、二酸化炭素分離膜及び水蒸気分離膜のガス供給側を流通するガスと、二酸化炭素分離膜及び水蒸気分離膜のガス透過側を流通するガスと、が対向流であるため、並行流である場合と比較して、二酸化炭素分離膜での二酸化炭素透過性及び水蒸気透過性、並びに水蒸気分離膜での水蒸気透過性をより向上させることができる。
【0021】
<5> 前記二酸化炭素分離膜の前記ガス供給側を流通する前記ガスと、前記二酸化炭素分離膜の前記ガス透過側を流通する前記スイープガスと、が並行流であり、かつ、前記水蒸気分離膜の前記ガス供給側を流通する前記二酸化炭素が分離されたガスと、前記水蒸気分離膜の前記ガス透過側を流通する前記スイープガスと、が対向流である<3>に記載のガス分離システム。
【0022】
本形態に係るガス分離システムでは、水蒸気分離膜のガス供給側を流通するガスと、水蒸気分離膜のガス透過側を流通するスイープガスと、が対向流であるため、並行流である場合と比較して、水蒸気分離膜での水蒸気透過性をより向上させることができる。
また、本形態に係るガス分離システムでは、二酸化炭素分離膜のガス供給側を流通するガスと、二酸化炭素分離膜のガス透過側を流通するスイープガスと、が並行流であるため、対向流である場合と比較して、ガス透過側への水蒸気の透過を抑制することができる。これにより、二酸化炭素透過性の低下が抑制される。
【0023】
<6> 原料ガスを改質して生成された改質ガスを用いて発電を行なう第1燃料電池と、前記第1燃料電池から排出された未反応の前記改質ガスを含むオフガスを流通するオフガス流通経路と、前記オフガス流通経路に配置され、ガス供給側に供給された前記オフガス中の二酸化炭素をガス透過側に透過させて二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離膜と、前記オフガス流通経路における前記二酸化炭素分離膜のガス流通方向下流に配置され、二酸化炭素が分離された前記オフガス中の水蒸気を除去する水蒸気除去手段と、前記オフガス流通経路における前記水蒸気除去手段のガス流通方向下流に配置され、二酸化炭素及び水蒸気が分離された前記オフガスを用いて発電を行なう第2燃料電池と、を備える燃料電池システム。
【0024】
<7> 原料ガスを改質して生成された改質ガスを用いて発電を行なう燃料電池と、前記燃料電池から排出された未反応の前記改質ガスを含むオフガスを流通するオフガス流通経路と、前記オフガス流通経路に配置され、ガス供給側に供給された前記オフガス中の二酸化炭素をガス透過側に透過させて二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離膜と、前記オフガス流通経路における前記二酸化炭素分離膜のガス流通方向下流に配置され、二酸化炭素が分離された前記オフガス中の水蒸気を除去する水蒸気除去手段と、前記オフガス流通経路における前記水蒸気除去手段のガス流通方向下流に設けられ、二酸化炭素及び水蒸気が分離された前記オフガスを前記燃料電池に供給するオフガス循環経路と、を備える燃料電池システム。
【0025】
<8> 前記原料ガスを改質して前記改質ガスを生成する改質器を更に備える<6>又は<7>に記載の燃料電池システム。
<9> 前記水蒸気除去手段は、ガス供給側に供給された前記二酸化炭素が分離されたオフガス中の水蒸気を、ガス透過側に透過させて水蒸気を分離する水蒸気分離膜である<6>〜<8>のいずれか1つに記載の燃料電池システム。
<10> 前記二酸化炭素分離膜及び前記水蒸気分離膜の前記ガス透過側に、スイープガスを供給するスイープガス供給経路を更に備え、前記スイープガスは、前記スイープガス供給経路を通じて、前記水蒸気分離膜の前記ガス透過側を流通した後、前記二酸化炭素分離膜の前記ガス透過側を流通する<9>に記載の燃料電池システム。
<11> 前記二酸化炭素分離膜の前記ガス供給側を流通する前記オフガス及び前記水蒸気分離膜の前記ガス供給側を流通する前記二酸化炭素が分離されたオフガスと、前記二酸化炭素分離膜及び前記水蒸気分離膜の前記ガス透過側を流通するスイープガスと、が対向流である<10>に記載の燃料電池システム。
<12> 前記二酸化炭素分離膜の前記ガス供給側を流通する前記オフガスと、前記二酸化炭素分離膜の前記ガス透過側を流通する前記スイープガスと、が並行流であり、かつ、前記水蒸気分離膜の前記ガス供給側を流通する前記二酸化炭素が分離されたオフガスと、前記水蒸気分離膜の前記ガス透過側を流通する前記スイープガスと、が対向流である<10>に記載の燃料電池システム。
【0026】
これらの形態に係る燃料電池システムでは、前述のガス分離システムを備えているため、オフガスから二酸化炭素及び水蒸気の両方を効果的に除去することができる。また、多段式の燃料電池システムにおける第2燃料電池及び循環式の燃料電池システムにおける燃料電池では、二酸化炭素及び水蒸気が分離されたオフガスを用いて発電が行なわれる。そのため、第2燃料電池及び燃料電池では、電極間の酸素分圧差に起因する理論電圧が向上するとともに、オフガス中の二酸化炭素及び水蒸気に起因する濃度過電圧が低減され、特に高電流密度時に高い性能を発揮することができる。よって、多段式の燃料電池システム及び循環式の燃料電池システムは、ともに高い発電効率を発揮する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、二酸化炭素及び水蒸気を含むガスから、二酸化炭素及び水蒸気の両方を効果的に除去することができるガス分離システム、並びに発電効率に優れる燃料電池システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1実施形態に係るガス分離システムを示す概略構成図である。
図2】第2実施形態に係るガス分離システムを示す概略構成図である。
図3】第3実施形態に係るガス分離システムを示す概略構成図である。
図4】第4実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
図5】第5実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
図6】第6実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
図7】第7実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
図8】第8実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0030】
[ガス分離システム]
〔第1実施形態〕
以下、本発明のガス分離システムの一実施形態について、図1を用いて説明する。図1は、第1実施形態に係るガス分離システムを示す概略構成図である。
【0031】
第1実施形態に係るガス分離システム10は、分離対象ガスを含むガスを流通させるガス流通経路4と、ガス流通経路4に配置され、ガス供給側1Aに供給されたガス中の二酸化炭素をガス透過側1Bに透過させて二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離膜1Cを備える二酸化炭素分離膜モジュール1と、ガス流通経路4における二酸化炭素分離膜モジュール1のガス流通方向下流に配置され、ガス供給側2Aに供給されたガス中の水蒸気をガス透過側2Bに透過させて水蒸気を分離する水蒸気分離膜2Cを備える水蒸気分離膜モジュール2と、二酸化炭素分離膜1Cのガス透過側1B及び水蒸気分離膜2Cのガス透過側2Bにスイープガスを供給するスイープガス供給経路6と、を備える。
【0032】
一般に、ガス供給側に供給されたガス中の二酸化炭素をガス透過側に透過させて分離する二酸化炭素分離膜が設けられたガス分離システムでは、二酸化炭素及び水蒸気を含むガスを二酸化炭素分離膜のガス供給側に供給することで、ガス中の二酸化炭素をガス透過側に透過させることができる。この際、ガス供給側の水蒸気濃度(相対湿度)が低いと、二酸化炭素分離膜の二酸化炭素の透過性は低くなる場合がある。
【0033】
一方、本実施形態に係るガス分離システム10では、ガス供給側1Aに供給されたガス中の二酸化炭素をガス透過側1Bに透過させて二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離膜1Cを備える二酸化炭素分離膜モジュール1と、ガス供給側2Aに供給されたガス中の水蒸気をガス透過側2Bに透過させて水蒸気を分離する水蒸気除去手段である水蒸気分離膜2Cを備える水蒸気分離膜モジュール2と、を備えており、水蒸気分離膜モジュール2が二酸化炭素分離膜1Cのガス供給側1Aに供給されたガスのガス流通方向下流に配置されている。そのため、二酸化炭素分離膜1Cのガス供給側1Aに供給されるガスの相対湿度は、水蒸気分離膜モジュール2が二酸化炭素分離膜1Cのガス供給側1Aに供給されたガスのガス流通方向上流に配置されている場合と比較して高くなる。このような位置関係で二酸化炭素分離膜1Cと水蒸気分離膜2Cとを配置することにより、二酸化炭素分離膜1Cの二酸化炭素の透過性を維持しつつ、二酸化炭素と水蒸気との両方の分離が可能となる。
【0034】
また、本実施形態に係るガス分離システム10では、二酸化炭素分離膜1Cのガス透過側1B及び水蒸気分離膜2Cのガス透過側2Bにスイープガスを供給するスイープガス供給経路6を備えているため、ガス透過側1Bでは、二酸化炭素分圧が下がり、ガス透過側2Bでは、水蒸気分圧が下がる。これにより、二酸化炭素分離膜1Cでの二酸化炭素透過性及び水蒸気透過性、並びに水蒸気分離膜2Cでの水蒸気透過性を向上させることができる。
【0035】
したがって、本実施形態に係るガス分離システム10では、二酸化炭素及び水蒸気を含むガスから、二酸化炭素及び水蒸気の両方を効果的に除去することができる。
【0036】
本実施形態に係るガス分離システム10は、二酸化炭素及び水蒸気を含むガスから二酸化炭素及び水蒸気の両方を分離するために用いられ、例えば、水素製造プラントにて発生する改質ガス、天然ガスプラントでの採掘ガス;火力発電システム、燃料電池システム等にて発生する燃焼排ガス;燃料電池システムから発生するオフガスなどから二酸化炭素及び水蒸気を分離するために用いられる。
【0037】
(ガス流通経路)
本実施形態に係るガス分離システム10は、分離対象ガス(二酸化炭素及び水蒸気、又は水蒸気)を含むガスを流通させるガス流通経路4を備えている。ガス流通経路4には、二酸化炭素分離膜モジュール1が配置されており、ガス流通経路4における二酸化炭素分離膜モジュール1のガス流通方向下流には、水蒸気分離膜モジュール2が配置されている。
【0038】
ガス流通経路4を流通し、二酸化炭素分離膜1Cのガス供給側1Aに供給されるガスとしては、二酸化炭素及び水蒸気を含むガスであれば特に限定されず、例えば、前述の改質ガス、採掘ガス、燃焼前ガス、燃焼器から排出された燃焼排ガス、燃料電池のオフガス等であってもよい。
【0039】
二酸化炭素分離膜1Cのガス供給側1Aに供給されるガスの温度は、特に限定されず、二酸化炭素分離膜1Cの耐熱性、並びに性能の温度依存性及び相対湿度依存性を鑑みて、好適な温度領域に適宜設定するとよい。例えば、ガスの温度は、水が凝縮しないように露点以上、望ましくは100℃以上とする。
【0040】
(二酸化炭素分離膜モジュール)
本実施形態に係るガス分離システム10は、ガス供給側1Aに供給されたガス中の二酸化炭素をガス透過側1Bに透過させて二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離膜1Cを備える二酸化炭素分離膜モジュール1を備えている。そして、二酸化炭素分離膜1Cは、水蒸気の存在下で二酸化炭素を選択的に分離することができる膜である。
【0041】
二酸化炭素分離膜モジュール1は、図1に示すように、ガス供給側1Aに供給されたガス中の二酸化炭素をガス透過側1Bに透過させて二酸化炭素を矢印Aに示す方向に分離する二酸化炭素分離膜1Cを備えている。そのため、二酸化炭素分離膜1Cのガス供給側1Aに供給されたガス中の二酸化炭素は、二酸化炭素分離膜1Cを透過してガス透過側1Bに供給される。
【0042】
二酸化炭素分離膜は、水蒸気の存在下で二酸化炭素を選択的に分離することができる膜であることが好ましい。二酸化炭素分離膜としては、従来公知の二酸化炭素分離膜を用いることができ、例えば、以下に示すような二酸化炭素分離膜を用いてもよい。
二酸化炭素分離膜としては、有機高分子膜(ゴム状高分子膜、イオン交換樹脂膜等)、無機材料膜、有機高分子−無機材料複合膜、液体膜(アミン水溶液膜、イオン液体膜等)などが挙げられる。二酸化炭素分離膜は、ゴム状高分子膜、イオン交換樹脂膜、アミン水溶液膜又はイオン液体膜であることがより好ましい。
【0043】
有機高分子膜の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリピロール、ポリフェニレンオキシド、ポリアニリン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコールなどの各種有機材料が挙げられる。
有機高分子膜は、1種の有機材料から構成される膜であってもよく、2種以上の有機材料から構成される膜であってもよい。
【0044】
また、二酸化炭素分離膜のより好ましい例としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩共重合体、ポリエチレングリコール等の吸水性を有する有機高分子と、二酸化炭素と親和性を有し、かつ水溶性を示す二酸化炭素キャリアとを含む有機高分子膜が挙げられる。
【0045】
二酸化炭素キャリアとしては、無機材料及び有機材料が用いられる。
無機材料としては、アルカリ金属塩(好ましくは、アルカリ金属炭酸塩又はアルカリ金属重炭酸塩)、アンモニア、アンモニウム塩等が挙げられる。
有機材料としては、アミン、アミン塩、ポリアミン、アミノ酸等が挙げられる。
なお、二酸化炭素キャリアは、無機材料膜、有機高分子−無機材料複合膜、液体膜等に含まれていてもよい。
【0046】
二酸化炭素分離膜の厚さは、特に限定されないが、機械的強度の観点からは、通常、10μm〜3000μmの範囲が好ましく、10μm〜500μmの範囲がより好ましく、15μm〜150μmの範囲が更に好ましい。
【0047】
なお、二酸化炭素分離膜は、多孔質性の支持体に支持されていてもよい。支持体の材質としては、紙、セルロース、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、金属、ガラス、セラミック等が挙げられる。
なお、支持体を設けた場合、二酸化炭素分離膜の厚さは、二酸化炭素透過性を好適に確保する点から、100nm〜100μmの範囲が好ましく、100nm〜50μmの範囲がより好ましい。
【0048】
また、二酸化炭素分離膜として、特許第5329207号公報に記載の高分子膜、特許第4965928号公報に記載のCO促進輸送膜、特許第5743639号公報に記載の分離膜、特許第5738704号公報に記載の透過膜等を用いてもよい。
【0049】
(水蒸気分離膜モジュール)
本実施形態に係るガス分離システム10は、ガス供給側2Aに供給されたガス中の水蒸気をガス透過側2Bに透過させて水蒸気を分離する水蒸気分離膜2Cを備える水蒸気分離膜モジュール2を備えている。本実施形態に係るガス分離システム10において、水蒸気分離膜モジュール2は、ガス流通経路4における二酸化炭素分離膜モジュール1のガス流通方向下流に配置されている。
【0050】
水蒸気分離膜モジュール2は、図1に示すように、ガス供給側2Aに供給されたガス中の水蒸気をガス透過側2Bに透過させて矢印Aに示す方向に水蒸気を分離する水蒸気分離膜2Cを備えている。そのため、水蒸気分離膜2Cのガス供給側2Aに供給されたガス中の水蒸気は、水蒸気分離膜2Cを透過してガス透過側2Bに供給される。
【0051】
本実施形態に係るガス分離システム10では、水蒸気除去手段として水蒸気分離膜2Cを用いているため、水蒸気の状態のままで水を除去することができる。よって、例えば、水凝縮器のようにガスを常温付近まで冷却したり、吸着材のように吸放出を繰り返して使用したりする必要がない。
したがって、本実施形態に係るガス分離システム10では、水蒸気除去手段を組み込むためにシステムを複雑化させることなく、二酸化炭素及び水蒸気の両方を効果的に除去することができる。
【0052】
水蒸気分離膜は、水蒸気を透過する膜であれば、特に限定されない。
水蒸気分離膜としては、有機高分子膜、無機材料膜、有機高分子−無機材料複合膜、液体膜等が挙げられる。
【0053】
有機高分子膜としては、ガラス状高分子膜、ゴム状高分子膜、イオン交換樹脂膜等が挙げられる。
有機高分子膜の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂、ポリスチレン、酢酸セルロース、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリピロール、ポリフェニレンオキシド、ポリアニリン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコールなどの各種有機材料が挙げられる。
有機高分子膜は、1種の有機材料から構成される膜であってもよく、2種以上の有機材料から構成される膜であってもよい。
【0054】
また、水蒸気分離膜は、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩共重合体、ポリエチレングリコール等の吸水性を有する有機高分子であってもよい。
【0055】
無機材料膜としては、アルミナ膜、シリカ膜、炭素膜、ゼオライト膜、セラミック膜等が挙げられる。これらの中でも、無機材料膜としては、ゼオライト膜が好ましい。ゼオライトとしては、A型、Y型、T型、ZSM−5型、ZSM−35型、モルデナイト系等が挙げられる。
無機材料膜は、1種の無機材料から構成される膜であってもよく、2種以上の無機材料から構成される膜であってもよい。
【0056】
水蒸気分離膜は、有機高分子−無機材料複合膜であってもよい。
有機高分子−無機材料複合膜としては、有機材料及び無機材料から構成される膜であれば特に限定されないが、例えば、前述した有機材料から選択される少なくとも1種の有機材料及び前述した無機材料から選択される少なくとも1種の無機材料から構成される複合膜であることが好ましい。
【0057】
液体膜としては、アミン水溶液、イオン液体等が挙げられる。これら液体膜は、前述の有機高分子膜、無機材料膜、又は有機高分子−無機材料複合膜に、アミン水溶液又はイオン液体を含浸させたものであってもよい。
【0058】
アミン水溶液としては、モノエタノールアミン等のアミノアルコールなどが挙げられる。イオン液体は、150℃以下の比較的低温の融点を有する塩であり、例えば、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン等の陽イオンと、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン等の陰イオンと、から構成される。
【0059】
水蒸気分離膜としては、ガラス状高分子膜、ゴム状高分子膜、イオン交換樹脂膜、アルミナ膜、シリカ膜、炭素膜、ゼオライト膜、セラミック膜、アミン水溶液膜又はイオン液体膜であることがより好ましい。
【0060】
水蒸気分離膜の厚さは、特に限定されないが、機械的強度の観点からは、通常、10μm〜3000μmの範囲が好ましく、10μm〜500μmの範囲がより好ましく、15μm〜150μmの範囲が更に好ましい。
【0061】
なお、水蒸気分離膜は、多孔質性の支持体に支持されていてもよい。支持体の材質としては、紙、セルロース、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、金属、ガラス、セラミック等が挙げられる。
【0062】
本実施形態において、水蒸気分離膜としては、例えば、「Catalysis Today Vol. 132 (2008)182-187, Selective permeation and separation of steam from water-methanol-hydrogen gas mixtures through mordenite membrane」に記載の膜を用いてもよい。
【0063】
(スイープガス供給経路)
本実施形態に係るガス分離システム10は、ガス透過側1B、2Bにスイープガスを供給するスイープガス供給経路6を備えている。
【0064】
本実施形態に係るガス分離システム10では、二酸化炭素分離膜1Cのガス透過側1B及び水蒸気分離膜2Cのガス透過側2Bにスイープガスを供給するスイープガス供給経路6を備え、二酸化炭素分離膜1Cで分離された二酸化炭素及び水蒸気分離膜2Cで分離された水蒸気が、ガス透過側1B、2Bから除去されるので、ガス透過側1B、2Bでは、二酸化炭素及び水蒸気の分圧が下がる。これにより、二酸化炭素分離膜1Cでの二酸化炭素透過性及び水蒸気透過性、並びに水蒸気分離膜2Cでの水蒸気透過性を向上させることができる。
【0065】
また、本実施形態に係るガス分離システム10では、ガス流通経路4を流通するガスと、スイープガス供給経路6を流通するスイープガスとが並行流となるように、ガス流通経路4及びスイープガス供給経路6が配置されている。
【0066】
ガス流通経路4を流通するガスと、スイープガス供給経路6を流通するスイープガスとが並行流である場合、対向流である場合と比較して、二酸化炭素分離膜モジュール1におけるガス透過側1Bへの水蒸気の透過を抑制することができる。これにより、二酸化炭素透過性の低下が抑制される。
【0067】
スイープガス供給経路6を流通するスイープガスとしては、特に限定されないが、二酸化炭素分離膜モジュール1における二酸化炭素透過性を高める点から、二酸化炭素濃度が低いガスであることが好ましい。また、システム構成の簡略化のため、ガス分離システム10を備えるシステムから排出される排ガスを流通させる排ガス経路をスイープガス供給経路としてもよく、特に二酸化炭素及び水蒸気を反応に用いる場合、原料ガスを流通させる原料ガス供給経路をスイープガス供給経路としてもよい。
【0068】
また、スイープガスは、ガス供給側1Aからガス透過側1Bへの水蒸気の透過を抑制し、かつ二酸化炭素分離膜1Cの加湿による二酸化炭素透過性を向上させる観点から、水蒸気濃度が高いガスであってもよい。
【0069】
二酸化炭素分離膜1Cのガス供給側1Aに供給されるガスの温度は、特に限定されず、二酸化炭素分離膜1Cの耐熱性、並びに性能の温度依存性及び相対湿度依存性を鑑みて、好適な温度領域に適宜設定するとよい。例えば、ガスの温度は、水が凝縮しないように露点以上、望ましくは100℃以上とする。
【0070】
本実施形態では、1つの二酸化炭素分離膜モジュールを備えるガス分離システムについて説明したが、本発明はこれに限定されず、2つ以上の二酸化炭素分離膜モジュールを備える構成であってもよい。このような構成であっても、水蒸気分離膜モジュールが、最も下流に配置された二酸化炭素分離膜モジュールのガス流通方向下流に配置されていればよい。これにより、最上流に配置された二酸化炭素分離膜以外の二酸化炭素分離膜においても、二酸化炭素の透過性がガス中の水蒸気の除去による影響を受けて低下することを防止できる。
【0071】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態に係るガス分離システムについて、図2を用いて説明する。図2は、第2実施形態に係るガス分離システムを示す概略構成図である。
【0072】
第2実施形態に係るガス分離システム20は、ガス流通経路4を流通するガスと、スイープガス供給経路6を流通するスイープガスとが対向流となるように、ガス流通経路4及びスイープガス供給経路6が配置されている点で、第1実施形態に係るガス分離システム10と相違する。第2実施形態に係るガス分離システム20では、スイープガス供給経路6は、二酸化炭素分離膜1Cのガス透過側1B及び水蒸気分離膜2Cのガス透過側2Bに配置されており、水蒸気分離膜2Cのガス透過側2Bから二酸化炭素分離膜1Cのガス透過側1Bにスイープガスを供給する。なお、本実施形態では、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付しており、その詳細な説明を省略する。
【0073】
第2実施形態に係るガス分離システム20では、ガス流通経路4を流通するガスと、スイープガス供給経路6を流通するスイープガスとが対向流であるため、並行流である場合と比較して、二酸化炭素分離膜モジュール1における二酸化炭素透過性及び水蒸気透過性、並びに水蒸気分離膜モジュール2における水蒸気透過性をより向上させることができる。
【0074】
前述したように、二酸化炭素分離膜が設けられたガス分離システムでは、二酸化炭素及び水蒸気を含むガスを二酸化炭素分離膜のガス供給側に供給することで、ガス中の二酸化炭素をガス透過側に透過させることができる。二酸化炭素分離膜は、二酸化炭素とともに水蒸気がガス透過側に透過してしまうため、ガス供給側の相対湿度が低下し易く、二酸化炭素分離膜の二酸化炭素の透過性が低下する傾向がある。
【0075】
本実施形態に係るガス分離システム20では、スイープガス供給経路6に供給されたスイープガスは、水蒸気分離膜2Cのガス透過側2Bを流通した後、二酸化炭素分離膜1Cのガス透過側1Bを流通する。スイープガスは、水蒸気分離膜2Cのガス透過側2Bを流通する過程で、ガス供給側2Aからガス透過側2Bに透過した水蒸気を含み、水蒸気濃度が高められた後、二酸化炭素分離膜1Cのガス透過側1Bに供給される。そのため、水蒸気濃度の高いスイープガスが供給された二酸化炭素分離膜1Cのガス透過側1Bでは、相対湿度が高まる。これにより、二酸化炭素分離膜1Cのガス供給側1Aからの水蒸気の透過が抑制されるため、二酸化炭素透過性を良好に維持することができる。むしろ、水蒸気濃度の高いスイープガスによって二酸化炭素分離膜1Cが加湿されるため、ガス供給側1Aからの二酸化炭素の透過が促進される。
【0076】
〔第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態に係るガス分離システムについて、図3を用いて説明する。図3は、第3実施形態に係るガス分離システムを示す概略構成図である。
【0077】
第3実施形態に係るガス分離システム30は、水蒸気分離膜モジュール2においてガス流通経路4を流通するガスと、スイープガス供給経路6を流通するスイープガスとが対向流となるように、かつ、スイープガスが、水蒸気分離膜2Cのガス透過側2Bを流通した後、二酸化炭素分離膜1Cのガス透過側1Bを、ガス流通経路4を流通するガスに対して並行流で流通するように、スイープガス供給経路6が配置されている点で、第1実施形態に係るガス分離システム10と相違する。なお、本実施形態では、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付しており、その詳細な説明を省略する。
【0078】
本実施形態に係るガス分離システム30では、第2実施形態に係るガス分離システム20と同様に、スイープガス供給経路6に供給されたスイープガスは、水蒸気分離膜2Cのガス透過側2Bを流通した後、二酸化炭素分離膜1Cのガス透過側1Bを流通する。スイープガスは、水蒸気分離膜2Cのガス透過側2Bを流通する過程で、ガス供給側2Aからガス透過側2Bに透過した水蒸気を含み、水蒸気濃度が高められた後、二酸化炭素分離膜1Cのガス透過側1Bに供給される。そのため、水蒸気濃度の高いスイープガスが供給された二酸化炭素分離膜1Cのガス透過側1Bでは、相対湿度が高まる。これにより、二酸化炭素分離膜1Cのガス供給側1Aからの水蒸気の透過が抑制されるため、二酸化炭素透過性を良好に維持することができる。むしろ、水蒸気濃度の高いスイープガスによって二酸化炭素分離膜1Cが加湿されるため、ガス供給側1Aからの二酸化炭素の透過が促進される。
【0079】
また、本実施形態に係るガス分離システム30では、水蒸気分離膜2Cのガス供給側2Aを流通するガスと、ガス透過側2Bを流通するスイープガスと、が対向流であるため、並行流である場合と比較して、水蒸気分離膜2Cでの水蒸気透過性をより向上させることができる。さらに、本実施形態に係るガス分離システム30では、二酸化炭素分離膜1Cのガス供給側1Aを流通するガスと、ガス透過側1Bを流通するスイープガスと、が並行流であるため、対向流である場合と比較して、二酸化炭素分離膜1Cでの水蒸気の透過をより抑制することができる。これにより、二酸化炭素分離膜1Cでの二酸化炭素透過性の低下を抑制することができる。
【0080】
二酸化炭素分離膜1Cでの二酸化炭素透過性の相対湿度依存性が大きい場合は、本実施形態に係るガス分離システム30の構成とすることで、二酸化炭素分離膜1Cにおける水蒸気の透過を抑制することで、二酸化炭素透過性を向上させることができる。
【0081】
[燃料電池システム]
〔第4実施形態〕
以下、本発明に係るガス分離システムが組み込まれた本発明に係る燃料電池システムの一実施形態について、図4を用いて説明する。図4は、第4実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
【0082】
第4実施形態に係る燃料電池システム100は、原料ガスを二酸化炭素改質して改質ガスを生成する改質器14と、改質ガスを用いて発電を行なう第1燃料電池11と、未反応の改質ガスを含むオフガスを流通するオフガス流通経路52と、二酸化炭素分離膜1Cを備える二酸化炭素分離膜モジュール1と、水蒸気分離膜2Cを備える水蒸気分離膜モジュール2と、二酸化炭素分離膜1Cにより分離された二酸化炭素、水蒸気分離膜2Cにより分離された水蒸気、及び原料ガスを改質器14に供給する原料ガス供給経路24と、を備える。なお、本実施形態では、第1実施形態〜第3実施形態と同様の構成については、同一の符号を付しており、その詳細な説明を省略する。
【0083】
本実施形態に係る燃料電池システム100は、第2実施形態に係るガス分離システム20が組み込まれた燃料電池システムである。より詳細には、ガス分離システム20におけるガス流通経路4として、オフガス流通経路52(二酸化炭素分離膜モジュール1の上流側)、及びオフガス流通経路54(水蒸気分離膜モジュール2の下流側)が設けられており、かつ、ガス分離システム20におけるスイープガス供給経路6として、原料ガス供給経路24が設けられている。
【0084】
本実施形態に係る燃料電池システム100は、二酸化炭素分離膜1Cを備える二酸化炭素分離膜モジュール1と、水蒸気除去手段である水蒸気分離膜2Cを備える水蒸気分離膜モジュール2と、を備えており、水蒸気分離膜モジュール2が二酸化炭素分離膜1Cのガス供給側1Aに供給されたガスのガス流通方向下流に配置されている。そのため、二酸化炭素分離膜1Cのガス供給側1Aに供給されるガスの相対湿度は、水蒸気分離膜モジュール2が二酸化炭素分離膜1Cのガス供給側1Aに供給されたガスのガス流通方向上流に配置されている場合と比較して高くなる。このような位置関係で二酸化炭素分離膜1Cと水蒸気分離膜2Cとを配置することにより、二酸化炭素分離膜1Cの二酸化炭素の透過性を維持しつつ、二酸化炭素及び水蒸気の両方の分離が可能となる。
【0085】
また、本実施形態に係る燃料電池システム100では、スイープガスは、水蒸気分離膜2Cのガス透過側2Bを流通した後、二酸化炭素分離膜1Cのガス透過側1Bを流通する。スイープガスは、水蒸気分離膜2Cのガス透過側2Bを流通する過程で、ガス供給側2Aからガス透過側2Bに透過した水蒸気を含み、水蒸気濃度が高められた後、二酸化炭素分離膜1Cのガス透過側1Bに供給される。そのため、水蒸気濃度の高いスイープガスが供給された二酸化炭素分離膜1Cのガス透過側1Bでは、相対湿度が高まる。これにより、二酸化炭素分離膜1Cのガス供給側1Aからの水蒸気の透過が抑制されるため、二酸化炭素透過性を良好に維持することができる。むしろ、水蒸気濃度の高いスイープガスによって二酸化炭素分離膜1Cが加湿されるため、ガス供給側1Aからの二酸化炭素の透過が促進される。
【0086】
さらに、本実施形態に係る燃料電池システム100では、二酸化炭素分離膜1Cのガス供給側1A及び水蒸気分離膜2Cのガス供給側2Aを流通するガスと、二酸化炭素分離膜1Cのガス透過側1B及び水蒸気分離膜2Cのガス透過側2Bを流通するスイープガスとが対向流となるように、オフガス流通経路52及び原料ガス供給経路24が配置されている。オフガス流通経路52を流通するガスと、原料ガス供給経路24を流通するスイープガスとが対向流である場合、並行流である場合と比較して、二酸化炭素分離膜モジュール1における二酸化炭素透過性及び水蒸気透過性、並びに水蒸気分離膜モジュール2における水蒸気透過性をより向上させることができる。
【0087】
したがって、本実施形態に係る燃料電池システム100では、システムを複雑化させることなく、簡易な構成で、オフガスから二酸化炭素及び水蒸気の両方を効果的に除去することができる。以下、本実施形態に係る燃料電池システム100の各構成について説明する。
【0088】
(原料ガス供給経路)
本実施形態に係る燃料電池システム100は、二酸化炭素分離膜1Cのガス透過側1B及び水蒸気分離膜2Cのガス透過側2Bに配置され、二酸化炭素分離膜1Cにより分離された二酸化炭素、水蒸気分離膜2Cにより分離された水蒸気、及び原料ガスを、改質器14に供給する原料ガス供給経路24を備えている。また、原料ガス供給経路24には、二酸化炭素分離膜1Cにより分離された二酸化炭素、水蒸気分離膜2Cにより分離された水蒸気、及び原料ガスを、改質器14へ送るためのブロワ25が設置されている。
【0089】
原料ガス供給経路24を流通する原料ガスとしては、二酸化炭素改質が可能なガスであれば特に限定されず、例えば、炭化水素燃料が挙げられる。炭化水素燃料としては、天然ガス、LPガス(液化石油ガス)、石炭改質ガス、低級炭化水素ガス等が例示される。低級炭化水素ガスとしては、メタン、エタン、エチレン、プロパン、ブタン等の炭素数4以下の低級炭化水素が挙げられ、特にメタンが好ましい。なお、炭化水素燃料としては、上述した低級炭化水素ガスを混合したものであってもよく、上述した低級炭化水素ガスを含む天然ガス、都市ガス、LPガス等のガスであってもよい。
【0090】
(改質器)
本実施形態に係る燃料電池システム100は、原料ガスを二酸化炭素改質して改質ガスを生成する改質器14を備えている。改質器14は、例えば、バーナ又は燃焼触媒を配置した燃焼部18と、改質用触媒を備える改質部19とにより構成される。
【0091】
改質部19は、上流側にて原料ガス供給経路24と接続しており、下流側にて改質ガス流通経路42と接続している。そのため、原料ガス供給経路24を通じてメタン(CH)等の原料ガスが改質部19に供給され、改質部19にて原料ガスを二酸化炭素改質した後に、生成された改質ガスが改質ガス流通経路42を通じて第1燃料電池11に供給される。
【0092】
燃焼部18は、上流側にて空気供給経路44及びオフガス流通経路46と接続されており、下流側にて排気経路48と接続されている。燃焼部18は、空気供給経路44を通じて供給された酸素を含むガスと、オフガス流通経路46を通じて供給されたオフガスとの混合ガスを燃焼させ、改質部19内の改質用触媒を加熱する。燃焼部18からの排ガス(燃焼排ガス)は、排気経路48を通じて排出される。
【0093】
排気経路48及び空気供給経路44には熱交換器22が設置されており、熱交換器22により、排気経路48を流通する排ガスと、空気供給経路44を流通する酸素を含むガス(空気)と、の間で熱交換を行なう。これにより、排気経路48を流通する排ガスは冷却された後に排出され、空気供給経路44を流通する酸素を含むガスは、第1燃料電池11の作動温度に適した温度に加熱された後に第1燃料電池11のカソードに供給される。
【0094】
改質部19で起こる二酸化炭素改質は大きな吸熱を伴うので、反応の進行のためには外部から熱の供給が必要である。そのため、燃焼部18で発生する燃焼熱により改質部19を加熱することが好ましい。あるいは、燃焼部18を設置せずに各燃料電池から放出される熱を用いて改質部19を加熱してもよい。
【0095】
原料ガスの一例であるメタンを二酸化炭素改質させた場合、改質部19では、以下の式(a)の反応により一酸化炭素及び水素が生成される。
CH+CO→2CO+2H・・・・(a)
【0096】
改質部19内に設置される改質用触媒としては、二酸化炭素改質反応の触媒となるものであれば特に限定されない。例えば、改質用触媒としては、Ni、Rh、Ru、Ir、Pd、Pt、Re、Co、Fe及びMoの少なくとも一つを触媒金属として含む二酸化炭素改質用触媒が好ましい。
【0097】
改質部19に供給される原料ガス(好ましくはメタン)の炭素原子数(A)と二酸化炭素の分子数(B)との比(A:B)は、二酸化炭素改質を効率良く行なう観点から、1:1.5〜3.0が好ましく、1:2.0〜2.5がより好ましい。
【0098】
また、燃焼部18は、二酸化炭素改質を効率良く行なう観点から、改質部19を、600℃〜800℃に加熱することが好ましく、600℃〜700℃に加熱することがより好ましい。
【0099】
本発明に係る燃料電池システム(特に、高温型の燃料電池を備える燃料電池システム)では、改質器が第1燃料電池の外部に取り付けられている必要はなく、第1燃料電池に原料ガス及び二酸化炭素を直接供給し、第1燃料電池の内部で二酸化炭素改質(内部改質)を行ない、生成された改質ガスを第1燃料電池での発電に用いる構成であってもよい。特に第1燃料電池が高温型の燃料電池である場合、内部での反応温度は600℃〜800℃と高温であるため、第1燃料電池内で二酸化炭素改質を行なうことが可能である。
【0100】
(第1燃料電池)
本実施形態に係る燃料電池システム100は、改質ガス流通経路42を通じて改質器14から供給された改質ガスを用いて発電を行なう第1燃料電池11を備えている。第1燃料電池11としては、例えば、空気極(カソード)、電解質及び燃料極(アノード)を備える燃料電池セルであってもよく、燃料電池セルを複数積層した燃料電池スタックであってもよい。また、第1燃料電池としては、600℃〜800℃程度で作動する高温型の燃料電池、例えば、700℃〜800℃程度で作動する固体酸化物形燃料電池、及び600℃〜700℃程度で作動する溶融炭酸塩形燃料電池が挙げられる。
【0101】
第1燃料電池11が固体酸化物形燃料電池の場合、第1燃料電池11のカソード(図示せず)には、空気供給経路44を通じて酸素を含むガス(空気)が供給される。酸素を含むガスがカソードに供給されることにより、以下の式(b)に示す反応が起こり、その際、酸素イオンが固体酸化物電解質(図示せず)の内部を移動する。
+4e→2O2−・・・・(b)
【0102】
第1燃料電池11が固体酸化物形燃料電池の場合、第1燃料電池11のアノード(図示せず)には、改質ガス流通経路42を通じて水素を含む改質ガスが供給される。固体酸化物電解質の内部を移動する酸素イオンからアノードと固体酸化物電解質との界面にて水素が電子を受け取ることにより、以下の式(c)に示す反応が起こる。
+O2−→HO+2e・・・・(c)
【0103】
第1燃料電池11が溶融炭酸塩形燃料電池の場合、第1燃料電池11のカソード(図示せず)には、空気供給経路44を通じて酸素及び二酸化炭素を含むガス(空気と二酸化炭素との混合ガスであってもよい)が供給される。酸素及び二酸化炭素を含むガスがカソードに供給されることにより、以下の式(d)に示す反応が起こり、その際、炭酸イオンが電解質(図示せず)の内部を移動する。
+2CO+4e→2CO2−・・・・(d)
【0104】
第1燃料電池11が溶融炭酸塩形燃料電池の場合、第1燃料電池11のアノード(図示せず)には、改質ガス流通経路42を通じて水素を含む改質ガスが供給される。電解質の内部を移動する炭酸イオンからアノードと電解質との界面にて水素が電子を受け取ることにより、以下の式(e)に示す反応が起こる。
+CO2−→HO+CO+2e・・・・(e)
【0105】
上記式(c)及び式(e)に示すように、第1燃料電池11での改質ガスの電気化学的な反応により、固体酸化物形燃料電池では主に水蒸気が生成され、溶融炭酸塩形燃料電池では主に水蒸気及び二酸化炭素が生成される。また、アノードで生成された電子は、外部回路を通じてカソードに移動する。このようにして電子がアノードからカソードに移動することにより、第1燃料電池11にて発電が行なわれる。なお、固体酸化物形燃料電池であっても、一部の一酸化炭素が発電に用いられることで、二酸化炭素が生成される。
【0106】
カソードから排出された未反応の酸素を含むガスは、下流側の空気供給経路44を通じて、第2燃料電池12のカソード(図示せず)に供給される。
【0107】
一方、アノードから排出された未反応の改質ガスを含むオフガスは、オフガス流通経路52を通じて二酸化炭素分離膜1Cのガス供給側1Aへ供給される。ここで、未反応の改質ガスを含むオフガスは、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気等を含む混合ガスである。
【0108】
オフガス流通経路52及びオフガス流通経路54には熱交換器21が設置されており、熱交換器21により、オフガス流通経路52を流通するオフガスと、オフガス流通経路54を流通する二酸化炭素及び水蒸気を分離した後のオフガスと、の間で熱交換を行なう。これにより、オフガス流通経路52を流通するオフガスは、冷却されることにより相対湿度が上昇して二酸化炭素分離膜1Cにおける二酸化炭素分離に適した温度まで冷却され、オフガス流通経路54を流通する二酸化炭素及び水蒸気を分離した後のオフガスは、第2燃料電池12の作動温度に適した温度に加熱される。そのため、システム全体において、二酸化炭素透過性、発電効率、及び熱効率がより向上する。
【0109】
(二酸化炭素分離膜モジュール及び水蒸気分離膜モジュール)
本実施形態に係る燃料電池システム100は、第1燃料電池11から排出された未反応の改質ガスを含むオフガスから、二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離膜1Cを備える二酸化炭素分離膜モジュール1及び水蒸気を分離する水蒸気分離膜2Cを備える水蒸気分離膜モジュール2を備えている。
【0110】
オフガス流通経路52を流通するオフガスは、二酸化炭素分離膜1Cのガス供給側1Aに供給され、オフガス中の二酸化炭素は、ガス供給側1Aからガス透過側1Bへ矢印A方向に二酸化炭素分離膜1Cを透過する。二酸化炭素を分離した後のオフガスは、ガス供給側1Aからオフガス流通経路52を流通し、水蒸気分離膜2Cのガス供給側2Aへ供給される。そして、ガス供給側2Aに供給されたオフガス中の水蒸気は、ガス供給側2Aからガス透過側2Bへ矢印A方向に水蒸気分離膜2Cを透過する。なお、燃料電池システム100に設けられた二酸化炭素分離膜モジュール1及び水蒸気分離膜モジュール2は、前述のガス分離システム20と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0111】
二酸化炭素分離膜モジュール1にて二酸化炭素を分離し、次いで、水蒸気分離膜モジュール2にて水蒸気を分離した後のオフガスは、ガス供給側2Aからオフガス流通経路54を流通し、第2燃料電池12へ供給される。分離された二酸化炭素及び水蒸気は、ガス透過側1B、2Bを流れる原料ガスと混合され、ガス透過側1B、2Bから原料ガス供給経路24を流通し、改質器14の改質部19へ供給される。
【0112】
燃料電池システム100では、分離された二酸化炭素及び水蒸気は、原料ガスとともに改質器14に供給される。したがって、二酸化炭素及び水蒸気を改質器14に供給するための供給経路及びブロワを別途設ける必要は無く、システムが簡略化されている。
【0113】
また、燃料電池システム100では、水蒸気分離膜2Cを透過した水蒸気は、原料ガスとともに原料ガス供給経路24を流通する。これにより、水蒸気分離膜2Cのガス透過側2Bの水蒸気分圧が低くなるため、ガス供給側2Aとガス透過側2Bとの水蒸気分圧の差が大きくなる。よって、より多くの水蒸気をガス透過側2Bへ透過させることができ、水蒸気の分離が促進される。
【0114】
また、燃料電池システム100では、原料ガス供給経路24は、二酸化炭素分離膜1Cのガス透過側1B及び水蒸気分離膜2Cのガス透過側2Bに配置されており、ガス透過側2Bからガス透過側1Bに原料ガスを供給する。これにより、原料ガスの流通方向下流に配置された二酸化炭素分離膜1Cのガス透過側1Bに、水蒸気濃度の高いスイープガスが供給される。そのため、水蒸気濃度の高いスイープガスが供給された二酸化炭素分離膜1Cのガス透過側1Bでは、相対湿度が高まる。これにより、ガス供給側1Aからの水蒸気の透過が抑制されるため、二酸化炭素透過性を良好に維持することができるとともに、水蒸気濃度の高いスイープガスによって二酸化炭素分離膜1Cが加湿されるため、ガス供給側1Aからの二酸化炭素の透過を促進することができる。
【0115】
また、燃料電池システム100では、オフガス流通経路52を流通するオフガスと、原料ガス供給経路24を流通する原料ガスとが対向流である。よって、並行流の場合と比較して、ガス透過側1Bへの二酸化炭素の透過性及びガス透過側2Bへの水蒸気の透過性をより向上させることができる。
【0116】
二酸化炭素及び水蒸気を分離した後のオフガスは、ガス供給側2Aからオフガス流通経路54を流通し、第2燃料電池12へ供給される。このとき、前述のように、オフガス流通経路52及びオフガス流通経路54に設置された熱交換器21により、オフガス流通経路54を流通する二酸化炭素及び水蒸気を分離した後のオフガスは、第2燃料電池12の作動温度に適した温度に加熱される。
【0117】
(第2燃料電池)
本実施形態に係る燃料電池システム100は、水素分離膜モジュール2の下流に配置され、二酸化炭素及び水蒸気が分離されたオフガスを用いて発電を行なう第2燃料電池12を備えている。第2燃料電池12としては、例えば、空気極(カソード)、電解質及び燃料極(アノード)を備える燃料電池セルであってもよく、燃料電池セルを複数積層した燃料電池スタックであってもよい。なお、第2燃料電池12は、上述の第1燃料電池11と同様の構成であるため、共通する事項に関する説明は省略する。
【0118】
燃料電池システム100では、第2燃料電池12は、二酸化炭素及び水蒸気が分離されたオフガスを用いて発電を行なう。そのため、第2燃料電池12では、電極間の酸素分圧差に起因する理論電圧が向上するとともに、オフガス中の二酸化炭素及び水蒸気に起因する濃度過電圧が低減され、特に高電流密度時に高い性能を発揮することができる。よって、燃料電池システム100は、後段の燃料電池にて二酸化炭素及び水蒸気が分離されていないオフガスを用いて発電を行なう通常の多段式の燃料電池システムと比較して、高い発電効率を得ることができる。
【0119】
第2燃料電池12のカソードから排出された未反応の酸素を含むガスは、下流側の空気供給経路44を通じて改質器14の燃焼部18へ供給される。一方、第2燃料電池12のアノードから排出されたオフガスは、オフガス流通経路46を通じて改質器14の燃焼部18へ供給される。
【0120】
本実施形態では、2つの燃料電池(第1燃料電池11及び第2燃料電池12)を備える燃料電池システムについて説明したが、本発明はこれに限定されず、3つ以上の燃料電池を備える燃料電池システムであってもよく、例えば、第2燃料電池12の下流に第3燃料電池を備える構成であってもよい。
【0121】
また、本実施形態に係る燃料電池システム100では、改質器14は、原料ガスの二酸化炭素改質及び水蒸気改質の少なくとも一方を行なう構成であればよく、例えば、原料ガスの二酸化炭素改質及び水蒸気改質の両方を行なう構成であってもよい。改質器14の改質部19に、二酸化炭素分離膜1Cにより分離された二酸化炭素及び水蒸気分離膜2Cにより分離された水蒸気が供給されるため、原料ガスの一例であるメタンを二酸化炭素改質及び水蒸気改質させた場合、改質部19にて、上述の式(a)の反応とともに以下の式(f)の反応により一酸化炭素及び水素が生成される。
CH+HO→CO+3H・・・・(f)
【0122】
また、本発明に係る燃料電池システム(特に、高温型の燃料電池を備える燃料電池システム)では、改質器が第1燃料電池の外部に取り付けられている必要はなく、第1燃料電池に原料ガス、二酸化炭素及び水蒸気を直接供給し、第1燃料電池の内部で二酸化炭素改質及び水蒸気改質を行ない、生成された改質ガスを第1燃料電池での発電に用いる構成であってもよい。
【0123】
〔第5実施形態〕
以下、本発明の第5実施形態に係る燃料電池システムについて、図5を用いて説明する。図5は、第5実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
第5実施形態に係る燃料電池システム200は、二酸化炭素及び水蒸気が分離されたオフガスを燃料電池31に再度供給するオフガス循環経路56、57を備える循環式燃料電池システムである。上述の第4実施形態に係る燃料電池システム100と共通する構成については、その説明を省略する。また、燃料電池31は、前述の第1燃料電池11と同様の構成であるため、その説明を省略する。
【0124】
燃料電池システム200では、二酸化炭素分離膜1Cによって、燃料電池31から排出された未反応の改質ガスを含むオフガスから二酸化炭素を分離し、水蒸気分離膜2Cによって、二酸化炭素が分離されたオフガスから水蒸気を分離し、二酸化炭素及び水蒸気が分離されたオフガスを用いて燃料電池31で発電を行なう。そのため、燃料電池31では、電極間の酸素分圧差に起因する理論電圧が向上するとともに、オフガス中の二酸化炭素及び水蒸気に起因する濃度過電圧が低減される。よって、燃料電池システム300は、二酸化炭素及び水蒸気を分離せずにオフガスを再利用する循環式の燃料電池システムよりも、高い発電効率を得ることができる。
【0125】
オフガス循環経路57には、オフガスを流通させるためのリサイクルブロワ28が配置されている。なお、リサイクルブロワの配置は、特に限定されず、二酸化炭素分離膜1Cの上流であってもよく、水蒸気分離膜2Cの下流であってもよいが、二酸化炭素分離膜1Cの上流に設ける場合には、熱交換器21と二酸化炭素分離膜1Cとの間に配置することが好ましく、水蒸気分離膜2Cの下流に設ける場合には、水蒸気分離膜2Cと熱交換器21との間に配置することが好ましい。
【0126】
本実施形態に係る燃料電池システム200では、燃料電池31のカソードから排出された未反応の酸素を含むガスは、下流側の空気供給経路44を通じて改質器14の燃焼部18へ供給される。一方、燃料電池31のアノードから排出されたオフガスについては、一部はオフガス流通経路46を通じて改質器14の燃焼部18へ供給され、それ以外はオフガス循環経路56を通じて、二酸化炭素分離膜1Cのガス供給側1Aへ供給される。
【0127】
前述の第4実施形態に係る燃料電池システム100、及び第5実施形態に係る燃料電池システム200は、原料ガス供給経路24をスイープガス供給経路とし、かつ原料ガス供給経路24を流通する原料ガスをスイープガスとしていたが、本発明は、このような構成に限定されず、原料ガス以外のガスを流通する経路をスイープガス供給経路とし、かつ原料ガス以外のガスをスイープガスとしてもよく、二酸化炭素分離膜及び水蒸気分離膜の少なくとも一方のガス透過側にスイープガスを供給しない構成としてもよい。
以下、第6実施形態〜第8実施形態にて、原料ガス以外のガスを流通する経路をスイープガス供給経路とし、かつ原料ガス以外のガスをスイープガスとする構成について、具体的に説明する。なお、第6実施形態〜第8実施形態では、第4実施形態と同様の構成については、同一の符号を付しており、その詳細な説明を省略する。
【0128】
〔第6実施形態〕
以下、本発明の第6実施形態に係る燃料電池システムについて、図6を用いて説明する。図6は、第6実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
第6実施形態に係る燃料電池システム300は、排気経路48をスイープガス供給経路とし、かつ排気経路48を流通する排ガス(燃焼排ガス)をスイープガスとする点、及び改質器14の改質部19に水蒸気を供給する水蒸気供給経路26を備え、かつ改質部19にて原料ガスの水蒸気改質を行なう点で、第4実施形態に係る燃料電池システム100と相違する。
燃焼排ガスは、スイープガスとして用いられる他のガス(前述の原料ガス、並びに後述のカソードオフガス及び空気)と比較して水蒸気濃度が高い。そのため、第6実施形態に係る燃料電池システム300では、他のガスをスイープガスとする場合と比較して、二酸化炭素分離膜1Cのガス透過側1Bの相対湿度が高くなり、ガス供給側1Aからガス透過側1Bへの水蒸気の透過が抑制され、二酸化炭素透過性が向上するため、二酸化炭素をより効果的に除去することができる。
【0129】
〔第7実施形態〕
以下、本発明の第7実施形態に係る燃料電池システムについて、図7を用いて説明する。図7は、第7実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
第7実施形態に係る燃料電池システム400は、空気供給経路44をスイープガス供給経路とし、第2燃料電池12のカソードから排出され、かつ空気供給経路44を流通する未反応の酸素を含むガス(カソードオフガス)をスイープガスとする点、及び改質器14の改質部19に水蒸気を供給する水蒸気供給経路26を備え、かつ改質部19にて原料ガスの水蒸気改質を行なう点で、第4実施形態に係る燃料電池システム100と相違する。
【0130】
〔第8実施形態〕
以下、本発明の第8実施形態に係る燃料電池システムについて、図8を用いて説明する。図8は、第8実施形態に係る燃料電池システムを示す概略構成図である。
第8実施形態に係る燃料電池システム500は、空気供給経路44をスイープガス供給経路とし、空気供給経路44を流通し、かつ第1燃料電池11のカソードに供給される空気をスイープガスとする点、及び改質器14の改質部19に水蒸気を供給する水蒸気供給経路26を備え、かつ改質部19にて原料ガスの水蒸気改質を行なう点で、第4実施形態に係る燃料電池システム100と相違する。
例えば、二酸化炭素分離膜及び水蒸気分離膜を常温〜数百℃の温度にて使用する場合、カソードオフガスをスイープガスとして用いると、燃料電池の発電温度(600℃〜1000℃程度)からの降温幅が大きいため、熱交換器の大きさが大きくなる。一方、空気をスイープガスとして用いると、スイープガスの温度と膜の使用温度との差が小さいため、カソードオフガスをスイープガスとして用いる場合と比較して、熱交換器の大きさを小さくすることができる。
【0131】
第6実施形態〜第8実施形態に係る燃料電池システム300、400、500では、スイープガスを流通するスイープガス供給経路を別途設ける必要がない。そのため、燃料電池システム300、400、500では、システムを複雑化させることなく、簡易な構成で二酸化炭素透過性及び水蒸気透過性を向上させることができる。
【0132】
さらに、第7実施形態、第8実施形態に係る燃料電池システム400、500では、空気供給経路44を流通するガスは、最終的に改質器14の燃焼部18に供給されるため、二酸化炭素分離膜1C及び水蒸気分離膜2Cを透過したガスも空気供給経路44を通じて改質器14の燃焼部18に供給される。したがって、オフガス流通経路52を流通するオフガス中に含まれる水素や一酸化炭素が、二酸化炭素分離膜1C及び/又は水蒸気分離膜2Cを透過してしまう場合、あるいは、二酸化炭素分離膜1C及び/又は水蒸気分離膜2Cが破損して水素や一酸化炭素がガス透過側1B、2Bにリークしてしまう場合であっても、透過又はリークした水素や一酸化炭素は、改質器14の燃焼部18にて燃焼される。そのため、二酸化炭素分離膜1C及び/又は水蒸気分離膜2Cを透過した水素や一酸化炭素は、システム外にそのまま放出されず、燃焼された後に排出され、安全性に優れる。
【0133】
なお、二酸化炭素分離膜1Cのガス透過側1B及び水蒸気分離膜2Cのガス透過側2Bにスイープガスを供給しない構成とする場合、二酸化炭素分離膜1C及び/又は水蒸気分離膜2Cを透過したガスが、改質器14の燃焼部18に供給されるように経路を配置することが好ましい。これにより、前述のように、二酸化炭素分離膜1C及び/又は水蒸気分離膜2Cを透過した水素や一酸化炭素は、燃料電池システム外にそのまま放出されず、燃焼された後に排出されるため、安全性に優れる。
【0134】
第6実施形態〜第8実施形態に係る燃料電池システム300、400、500において、水蒸気供給経路26は、改質器14の改質部19と接続しており、改質部19に水蒸気を供給するための経路である。原料ガス供給経路24を通じて原料ガスが改質部19に供給され、水蒸気供給経路26を通じて水蒸気が改質部19に供給される。そして、改質部19にて原料ガスを水蒸気改質した後に、生成された改質ガスが改質ガス流通経路42を通じて第1燃料電池11に供給される。
【0135】
なお、本実施形態に係る燃料電池システム300では、気化器によって水が気化されて生じた水蒸気が、水蒸気供給経路26を通じて供給される構成であってもよく、水蒸気供給経路26の代わりに水供給経路を配置し、水供給経路を通じて水蒸気改質用の水が改質部19に供給される構成であってもよい。また、水蒸気分離膜2Cによって分離された水蒸気が、水蒸気供給経路26を通じて供給される構成であってもよい。
【0136】
なお、第6実施形態〜第8実施形態に係る燃料電池システム300、400、500の変形例として、原料ガス供給経路24又は二酸化炭素供給経路を通じて改質部19に二酸化炭素を供給し、二酸化炭素改質を単独で行なう構成(水蒸気供給経路26を設けない構成)であってもよく、あるいは、二酸化炭素改質を水蒸気改質と組み合わせて行なう構成であってもよい。
【0137】
本発明は、前述の第1実施形態〜第8実施形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で、当業者によって、前述の各実施形態を組み合わせて実施される。
【符号の説明】
【0138】
10、20、30・・・ガス分離システム、1・・・二酸化炭素分離膜モジュール、2・・・水蒸気分離膜モジュール、1A、2A・・・ガス供給側、1B、2B・・・ガス透過側、1C・・・二酸化炭素分離膜、2C・・・水蒸気分離膜、4・・・ガス流通経路、6・・・スイープガス供給経路、11・・・第1燃料電池、12・・・第2燃料電池、14・・・改質器、18・・・燃焼部、19・・・改質部、21、22・・・熱交換器、24・・・原料ガス供給経路(スイープガス供給経路)、25・・・ブロワ、26・・・水蒸気供給経路、31・・・燃料電池、42・・・改質ガス流通経路、44・・・空気供給経路(スイープガス供給経路)、46、52、54・・・オフガス流通経路、48・・・排気経路(スイープガス供給経路)、56、57・・・オフガス循環経路、100、200、300、400、500・・・燃料電池システム
【要約】
【課題】二酸化炭素及び水蒸気を含むガスから、二酸化炭素及び水蒸気の両方を効果的に除去することができるガス分離システム、並びに発電効率に優れる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】ガス供給側に供給された二酸化炭素及び水蒸気を含むガス中の二酸化炭素をガス透過側に透過させて二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離膜と、前記二酸化炭素分離膜の前記ガス供給側に供給された前記ガスのガス流通方向下流に配置され、二酸化炭素が分離された前記ガス中の水蒸気を除去する水蒸気除去手段と、を備えるガス分離システム、並びにその応用。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8