【実施例】
【0025】
調製例1
2−(4−ブロモ−2−ピリジル)プロパン−2−オール
【化5】
【0026】
添加漏斗付き3L三口丸底フラスコ、還流冷却器、窒素導入口、および温度プローブを設置する。臭化メチルマグネシウム(2−メチルテトラヒドロフラン中の3.2M、239.07mL、765.01mmol)を篭めて、氷浴中で冷却する。添加漏斗に、THF(800.0mL)中のエチル−4−ブロモピリジン−2−カルボキシレート(80.0g、347.73mmol)溶液を加える。内部温度を25℃以下に保ちながら、その溶液を臭化メチルマグネシウム溶液に滴下する。冷却浴を取り外し、25℃で30分間撹拌する。反応混合物を5℃に冷却し、内部温度を30℃以下に保ちながら、塩酸水溶液(1M)を慎重に滴下して反応停止する。さらに、塩酸水溶液(1M)を、混合物のpHが約7に到達するまで加える。冷却浴を取り外し、酢酸エチル(EtOAc、200mL)で希釈する。有機層を分離して、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、CELITE(登録商標)を通してろ過し、そしてEtOAcでゆすぐ。ろ液を濃縮してオレンジ色のオイルを得る。ヘキサン/EtOAc(3/1)で溶出するシリカゲルプラグを使用して精製し、標題の化合物(63.15g、収率84.0%)を無色オイルとして得る。MS(m/z):216/218(M+1/M+3)。
【0027】
基本的には調製例1の方法により、次の化合物を調製する。
【0028】
【表1】
【0029】
調製例3
2−(4−アミノ−2−ピリジル)プロパン−2−オール
【化6】
【0030】
撹拌子を使って、2LのParr反応炉に、銅(パウダーメッシュ、12.6g、198.6mmol)、2−(4−ブロモ−2−ピリジル)プロパン−2−オール(63.1g、292.0mmol)および水酸化アンモニウム(水中で28wt/wt%、757.2mL)を篭める。反応混合物を、濃い青色になるまで30分間外気へ開放下で撹拌する。撹拌子を取り除き、機械式撹拌用天板を装着し、密封し、そして、攪拌器を設置する。混合物を100℃(内部、120℃の加熱浴)に加熱し、一晩撹拌する。反応混合物を室温へと冷却し、2−メチルテトラヒドロフラン(600mL)を加える。CELITE(登録商標)プラグを通してろ過し、2−メチルテトラヒドロフランでゆすぐ。有機層を分離し、2−メチルテトラヒドロフラン(200mL)を使って水層を抽出する。有機層を合わし、無水硫酸ナトリウム上で乾燥する。ろ過、濃縮、一晩真空下で乾燥させて、標題の化合物(31.3g、収率70.4%)を黄色オイルとして得る。MS(m/z):153(M+1)。
【0031】
基本的には調製例3の方法により、次の化合物を調製する。
【0032】
【表2】
【0033】
調製例5
2−ブロモ−1−テトラヒドロピラン−4−イル−エタノン
【化7】
【0034】
方法1:
DCM(250mL)およびDMF(15滴)中のテトラヒドロピラン−4−カルボン酸(39.13g,300.67mmol)混合物へ、塩化オキサリル(28.69mL、330.73mmol)を滴下する。反応物を、窒素下にて2.5時間室温で撹拌する。減圧濃縮し、そして、DCM(250mL)中に残渣を溶解する。−10℃で(トリメチルシリル)ジアゾメタン(ヘキサン中2M、450mL、900.00mmol)へ、得られる溶液を滴下し、混合物を一晩室温で撹拌する。混合物を0℃へと冷却し、臭化水素酸(水中で48wt/wt%、52mL、462.73mmol)を滴下する。混合物を、2時間室温で撹拌する。混合物を0℃へと冷却し、臭化水素酸(水中で48wt/wt%、26mL、231.36mmol)を滴下する。混合物を、2時間室温で撹拌する。水(250mL)、DCM(250mL)を加え、有機層を分離する。水層をDCM(2×250mL)で抽出する。有機層を合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液と飽和塩化ナトリウム水溶液とで洗浄する。無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下で濃縮して、標題の化合物(58.2g、収率93.48%)を褐色固形物として得る。
1HNMR(300MHz,CDCl
3)δ4.00(m,2H),3.95(s,2H),3.45(m,2H),2.98(m,1H),1.78(m,4H)。
【0035】
方法2:
メタノール(MeOH、50mL)中の1−テトラヒドロピラン−4−イルエタノン(10g、78.02mmol)溶液を−10℃に冷却する。臭素(4.01mL、78.02mmol)を滴下する。混合物を0℃で45分間、その後、10℃で45分間撹拌する。硫酸水溶液(11M、27.5mL、302.50mmol)を加え、得られる混合物を一晩室温で撹拌する。水を加え、3回ジエチルエーテルで抽出する。有機層を合わせる。炭酸水素ナトリウム水溶液と水で洗浄する。無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下で濃縮して、標題の化合物(12g、収率74.28%)を白色固形物として得る。
1HNMR(400.13MHz,CDCl
3)δ4.00(m,2H),3.95(s,2H),3.45(m,2H),2.98(m,1H),1.78(m,4H)。
【0036】
調製例6
2−[(2−クロロ−4−ピリジル)オキシ]−1−テトラヒドロピラン−4−イル−エタノン
【化8】
【0037】
方法1:
DMF(50mL)中の2−ブロモ−1−テトラヒドロピラン−4−イル−エタノン(24.35g、117.60mmol)溶液を、DMF(380mL)中の2−クロロピリジン−4−オール(13.85g、106.91mmol)と炭酸セシウム(69.67g、213.82mmol)との撹拌溶液へと室温で滴下する。得られる混合物を2.5時間90℃で撹拌する。室温へと冷却して、粗混合物を得る。上記したような、別の2.85g(2−クロロピリジン−4−オール)容量の反応実施物の粗混合物と合わせる。合わせた混合物を水(200mL)およびEtOAc(300mL)で希釈する。有機層を分離し、EtOAc(3×250mL)を使って水層を抽出する。有機層を合わせ、水(100mL)と飽和塩化ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄する。無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、ろ液を減圧濃縮して、標題の化合物(29.32g、収率88.96%)を褐色オイルとして得る。MS(m/z):256(M+1)。
【0038】
方法2:
2−ブロモ−1−テトラヒドロピラン−4−イル−エタノン(10.03g、48.42mmol)および炭酸カリウム(10.14g、72.62mmol)を、アセトン(150mL)中の2−クロロピリジン−4−オール(6.40g、48.42mmol)溶液に加え、得られる混合物を一晩室温で撹拌する。ろ過して固形物を除去し、その固形物をDCMで洗浄する。ろ液を減圧濃縮して標題の化合物を定量的に得る。MS(m/z):256(M+1)。
【0039】
基本的には調製例6の
方法2により、次の化合物を調製する。
【0040】
【表3】
【0041】
調製例13
2−クロロ−4−[(3−テトラヒドロピラン−4−イル−1H−ピラゾール−4−イル)オキシ]ピリジン
【化9】
【0042】
2−[(2−クロロ−4−ピリジル)オキシ]−1−テトラヒドロピラン−4−イル−エタノン(29.3g、114.59mmol)と1,1−ジメトキシ−N,N−ジメチル−メタンアミン(65mL、486.83mmol)との混合物を、100℃で2時間撹拌する。室温へと冷却し、減圧濃縮し、EtOAc(400mL)中に残渣を溶解する。水(100mL)と飽和塩化ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄する。無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下で濃縮して、褐色固形物を得る。酢酸(350mL)中に溶解させて、0℃へと冷却する。ヒドラジン一水和物(16.8mL、345.66mmol)を加え、窒素下で一晩室温で撹拌する。混合物を氷/水混合物(250mL)に注ぎ入れ、そして、EtOAc(4×200mL)で抽出する。有機層を合わせ、水(200mL)と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)と飽和塩化ナトリウム水溶液(100mL)とで洗浄する。無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、ろ液を減圧下で濃縮して、褐色オイルを得る。その褐色オイルを、EtOAcで溶出するシリカゲルプラグを使用して、精製する。適切な画分を合わせて、減圧濃縮する。真空下で乾燥させて、標題の化合物(24.43g、収率76.22%)を黄色固形物として得る。MS(m/z):280(M+1)。
【0043】
基本的には調製例13の方法により、次の化合物を調製する。
【0044】
【表4】
【0045】
調製例20
2−クロロ−4−(1−シクロプロピル−3−テトラヒドロピラン−4−イル−ピラゾール−4−イル)オキシ−ピリジン
【化10】
【0046】
方法1:
1,2−ジクロロエタン(244.3mL)中の2,2’−ビピリジン(13.73g、87.90mmol)と酢酸銅(II)(15.97g、87.90mmol)との混合物を、75℃で25分間還流し、その後、室温へと冷却する。1,2−ジクロロエタン(335.30mL)中の2−クロロ−4−[(3−テトラヒドロピラン−4−イル−1H−ピラゾール−4−イル)オキシ]ピリジン(24.43g、79.91mmol)溶液を加え、その後、シクロプロピルボロン酸(13.73g、159.82mmol)および炭酸ナトリウム(16.94g、159.82mmol)を加える。反応混合物を75℃で2時間酸素環境下で加熱し、そして室温へと冷却する。EtOAc(200mL)で希釈し、シリカゲルプラグを通してろ過し、そして、EtOAc(250mL)でゆすぐ。ろ液を、水(200mL)と飽和塩化ナトリウム水溶液(200mL)で洗浄する。無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、ろ液を減圧濃縮し、残渣を真空下、室温で一晩乾燥させる。DCM中の6〜27%EtOAcを用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、標題の化合物(20.75g、収率81.2%)を黄色固形物として得る。MS(m/z):320(M+1)。
【0047】
方法2:
1,2−ジクロロエタン(50mL)中の2,2’−ビピリジン(28.8g、56.5mmol)と酢酸銅(II)(8.2g、45.2mmol)との懸濁物を、70℃に加熱し、3分間窒素でパージする。ろ過し、そのろ液を、1,2−ジクロロエタン(50mL)中の2−クロロ−4−[(3−テトラヒドロピラン−4−イル−1H−ピラゾール−4−イル)オキシ]ピリジン(8g、22.6mmol)、シクロプロピル(トリフルオロ)ホウ酸カリウム(6.7g、45.2mmol)、および炭酸ナトリウム(4.8g、45.2mmol)の混合物へと加える。反応混合物を、4日間70℃で加熱する。室温へと冷却する。ろ過し、DCMでゆすぐ。ろ液を、飽和塩化アンモニウム水溶液と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液とで洗浄する。無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、ろ液を減圧下で濃縮する。DCM中の1〜10%MeOHを用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、標題の化合物(6.0g、収率82.2%)を得る。MS(m/z):320(M+1)。
【0048】
基本的には調製例20の
方法1により、次の化合物を調製する。作業過程における変更点を示す。
【0049】
【表5】
【0050】
基本的には調製例20の
方法2により、次の化合物を調製する。
【0051】
【表6】
【0052】
調製例27
2−クロロ−4−(1−シクロプロピル−3−テトラヒドロフラン−3−イル−ピラゾール−4−イル)オキシ−ピリジン、異性体1
【化11】
【0053】
キラルクロマトグラフィーを使って、2−クロロ−4−(1−シクロプロピル−3−テトラヒドロフラン−3−イル−ピラゾール−4−イル)オキシ−ピリジン(調製例25)のラセミ混合物を精製し、第一溶出エナンチオマーを標題化合物として得る。MS(m/z):306(M+1)。
【0054】
精製条件:CHIRALPAK(登録商標)IC、移動相:二酸化炭素中の20%エタノール(EtOH)、流速:300g/分、UVW:240nm、保持時間:2.44分。
【0055】
調製例28
2−クロロ−4−(1−シクロプロピル−3−テトラヒドロフラン−3−イル−ピラゾール−4−イル)オキシ−ピリジン、異性体2
【化12】
【0056】
キラルクロマトグラフィーを使って、2−クロロ−4−(1−シクロプロピル−3−テトラヒドロフラン−3−イル−ピラゾール−4−イル)オキシ−ピリジン(調製例25)のラセミ混合物を精製し、第二溶出エナンチオマーを標題化合物として得る。MS(m/z):306(M+1)。
【0057】
精製条件:CHIRALPAK(登録商標)IC、移動相:二酸化炭素中の20%EtOH、流速:300g/分、UVW:240nm、保持時間:2.93分。
【0058】
調製例29
2−クロロ−4−[1−(ジフルオロメチル)−3−(2−ピリジル)ピラゾール−4−イル]オキシ−ピリジン
【化13】
【0059】
DMF(73.34mL)中の2−クロロ−4−[[3−(2−ピリジル)−1H−ピラゾール−4−イル]オキシ]ピリジン(2.0g、7.33mmol)溶液を氷浴中で冷却し、水素化ナトリウム(鉱油中で60%、880.02mg、22.00mmol)をポーションとして加えた。混合物を0℃で10分間撹拌し、室温へと温まるようにし、そして、10分間撹拌する。ジフルオロヨードメタン(THF中で10wt%、27.19mL、36.67mmol)を加え、反応混合物を45℃で一晩撹拌する。室温へと冷却し、そして、EtOAcで希釈する。まず、5%塩化リチウム水溶液で洗浄し、次に、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄する。無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、ろ液を減圧下で濃縮する。残渣を、DCM中の0〜50%EtOAcを使ってシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製する。適切な画分を合わせて、減圧濃縮する。残渣を、DCM中の0〜10%EtOAcを用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、標題の化合物(1.56g、収率65.9%)を得る。MS(m/z):323(M+1)。
【0060】
基本的には調製例29の方法により、次の化合物を調製する。溶媒、塩基、および/または反応温度の変更点を示す。
【0061】
【表7-1】
【表7-2】
【0062】
調製例41
2−クロロ−4−{[3−(ピリジン−2−イル)−1−{[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}−1H−ピラゾール−4−イル]オキシ}ピリジン
【化14】
【0063】
水素化ナトリウム(鉱油中で60%の懸濁物、484mg、12.10mmol)を、0℃のTHF(110mL)中の2−クロロ−4−[[3−(2−ピリジル)−1H−ピラゾール−4−イル]オキシ]ピリジン(3.0g、11.00mmol)溶液へと加える。15分間0℃で撹拌し、そして、2−(トリメチルシリル)エトキシメチルクロリド(2.02g、12.10mmol)を加える。反応混合物を室温で一晩撹拌する。混合物を濃縮する。残渣をDCMと水との間に分離する。有機層を単離し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥する。混合物をろ過し、そのろ液を減圧下で濃縮する。残渣を、ヘキサン中の0〜30%EtOAcを用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、標題の化合物(3.64g、収率82.1%)を得る。MS(m/z):403(M+1)。
【0064】
調製例42
4−[[4−(1−シクロプロピル−3−テトラヒドロピラン−4−イル−ピラゾール−4−イル)オキシ−2−ピリジル]アミノ]ベンゾニトリル
【化15】
【0065】
1,4−ジオキサン(15mL)中の2−クロロ−4−(1−シクロプロピル−3−テトラヒドロピラン−4−イル−ピラゾール−4−イル)オキシ−ピリジン(400mg、1.2mmol)、p−アミノベンゾニトリル(219.9mg、1.9mmol)、炭酸セシウム(568.5mg、1.7mmol)、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン(134.6mg、0.23mmol)の溶液を、5分間窒素でパージする。得られる混合物を酢酸パラジウム(II)(26.1mg、0.12mmol)で処理し、そして、5分間窒素でパージする。バイアルを閉じ、100℃で2時間、その後、80℃で週末をまたいで撹拌する。室温へと冷却し、CELITE(登録商標)プラグを通してろ過し、そして、DCM中の5%MeOHで洗浄する。ろ液を濃縮して標題の化合物(467mg、収率100%)を得る。MS(m/z):402(M+1)。
【0066】
基本的には調製例42の方法により、次の化合物を調製する。触媒および/または溶媒の変更点を示す。
【0067】
【表8-1】
【表8-2】
【0068】
実施例1
2−{4−[(4−{[1−シクロプロピル−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]オキシ}ピリジン−2−イル)アミノ]ピリジン−2−イル}プロパン−2−オール
【化16】
【0069】
方法1:
1,4−ジオキサン(456mL)中の2−クロロ−4−(1−シクロプロピル−3−テトラヒドロピラン−4−イル−ピラゾール−4−イル)オキシ−ピリジン(45.6g、142.6mmol)、2−(4−アミノ−2−ピリジル)プロパン−2−オール(26.0g、171.1mmol)、およびナトリウムフェナート(26.5g、228.2mmol)の溶液を、20分間窒素でパージする。得られる混合物を、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン(8.25g、14.3mmol)およびビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(4.10g、7.13mmol)で処理する。21時間還流する。反応物を室温に冷却し、そして、一晩撹拌する。CELITE(登録商標)プラグを通してろ過し、DCM(500mL)で洗浄する。ろ液をシリカゲル上に濃縮する。EtOAc中の0〜10%MeOHを使ってシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製する。適切な画分を濃縮、一晩真空下で乾燥させて、標題の化合物(58.7g、収率91.7%)を得る。MS(m/z):436(M+1)。生成物のいくつかのバッチを、上記方法を使用して作製する。標題の化合物(92.4g)のバッチを合わせたものをEtOH(1L)に溶解する。その溶液を、QUADRASIL(登録商標)MP(100g、1.0〜1.5mmol/g)で処理し、1時間60℃で激しく撹拌する。室温へと冷却し、そしてろ過して固形物を除去する。濃縮して、溶媒を除去する。残渣を、100℃で加熱しながら、EtOH(500mL)中に溶解する。その後、混合物をゆっくり室温へと冷却し、そして、水(500mL)をゆっくり加える。混合物を、撹拌しながら5℃へと冷却する。ろ過により固形物を回収し、45℃で一晩真空下で乾燥させて、標題の化合物(81.8g)を得る。MS(m/z):436(M+1)。
【0070】
方法2:
2−クロロ−4−(1−シクロプロピル−3−テトラヒドロピラン−4−イル−ピラゾール−4−イル)オキシ−ピリジン(400mg、1.2mmol)を、バイアル中の1,4−ジオキサン(15mL)に溶解する。2−(4−アミノ−2−ピリジル)プロパン−2−オール(266.5mg、1.6mmol)、炭酸セシウム(568.5mg,1.7mmol)、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン(134.6mg、0.23mmol)を加えて、5分間窒素でパージする。酢酸パラジウム(II)(26.1mg、0.12mmol)を加え、そして、5分間窒素でパージする。バイアルを密封して、100℃で一晩撹拌する。反応物を室温へと冷却し、CELITE(登録商標)プラグを通してろ過し、そして、DCM中の5%MeOHで洗浄する。濃縮し、そして、逆相クロマトグラフィー(Redisep Rf Gold高速C18逆相カラム、ギ酸/水中のギ酸/アセトニトリル(ACN)が0〜100%)により精製する。適切な画分を濃縮、真空下で乾燥させて、標題の化合物(341mg、収率67.3%)を得る。MS(m/z):436(M+1)。
【0071】
基本的には実施例1の
方法2により、次の化合物を調製する。塩基、触媒、リガンド、および/または溶媒の変更点を示す。
【0072】
【表9-1】
【表9-2】
【表9-3】
【表9-4】
【表9-5】
【表9-6】
【表9-7】
【表9-8】
【表9-9】
【表9-10】
【0073】
実施例62
4−[(4−{[1−シクロプロピル−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]オキシ}ピリジン−2−イル)アミノ]ベンズアミド
【化17】
【0074】
炭酸カリウム(80.4mg、0.58mmol)を、DMSO(5mL)中の4−[[4−(1−シクロプロピル−3−テトラヒドロピラン−4−イル−ピラゾール−4−イル)オキシ−2−ピリジル]アミノ]ベンゾニトリル(467mg、1.16mmol)溶液に加える。30%過酸化水素(1.77mL、17.45mmol)を加え、そして、反応混合物を外気温で一晩撹拌する。水で希釈し、そして、DCMで4回抽出する。有機層を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄する。無水硫酸ナトリウム上で乾燥する。混合物をろ過し、そのろ液を減圧下で濃縮する。残渣を、逆相クロマトグラフィー(Redisep Rf Gold高速C18逆相カラム、ギ酸/水中のギ酸/アセトニトリル(ACN)が0〜100%)により精製して、標題の化合物(220mg、収率45.9%)を得る。MS(m/z):420(M+1)。
【0075】
基本的には実施例62の方法により、次の化合物を調製する。
【0076】
【表10】
【0077】
実施例70
2−{4−[(4−{[3−シクロプロピル−1−(プロパン−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]オキシ}ピリジン−2−イル)アミノ]ピリジン−2−イル}プロパン−2−オール
【化18】
【0078】
THF(6mL)中のメチル4−[[4−(3−シクロプロピル−1−イソプロピル−ピラゾール−4−イル)オキシ−2−ピリジル]アミノ]ピリジン−2−カルボキシレート(298mg、0.76mmol)溶液を、密封バイアル中、窒素でパージする。臭化メチルマグネシウム(ジエチルエーテル中の3M、1.01mL、3.03mmol)を滴下し、そして、混合物を室温で2時間撹拌する。混合物を減圧下で濃縮し、そして、残渣をDCMと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で希釈する。有機層を分離し、DCMを使って水層を抽出する。有機層を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄する。硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そしてろ液を濃縮する。DCM中の5〜10%MeOHを用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、標題の化合物(160mg、収率53.69%)を得る。MS(m/z):394(M+1)。
【0079】
実施例71
2−{5−[(4−{[3−(ピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]オキシ}ピリジン−2−イル)アミノ]ピリジン−2−イル}プロパン−2−オール
【化19】
【0080】
トリフルオロ酢酸(3mL)中の2−[5−[[4−[3−(2−ピリジル)−1−(2−トリメチルシリルエトキシ−メチル)ピラゾール−4−イル]オキシ−2−ピリジル]アミノ]−2−ピリジル]プロパン−2−オール(500mg、0.96mmol)溶液を、氷浴中で0℃へと冷却する。トリエチルシラン(1mL、6.24mmol)を加える。反応混合物を室温で一晩撹拌する。濃縮し、そして、残渣を逆相クロマトグラフィー(Redisep Rf Gold高速C18逆相カラム、0〜100%の10mM炭酸水素アンモニウム(ACN中))により精製する。適切な画分を濃縮して、ACNを除去する。残った水性混合物を、DCMで抽出し、有機層を単離し、そして、硫酸ナトリウム上で乾燥させる。ろ過し、ろ液を減圧下で濃縮して標題の化合物(168mg、収率44.9%)を得る。MS(m/z):389(M+1)。
【0081】
実施例72
N−[4−({1−(ジフルオロメチル)−3−(テトラヒドロフラン−3−イル)−1H−ピラゾール−4−イル}オキシ)ピリジン−2−イル]ピリダジン−3−アミン、異性体1
【化20】
【0082】
キラルクロマトグラフィーを使って、N−[4−[1−(ジフルオロメチル)−3−テトラヒドロフラン−3−イル−ピラゾール−4−イル]オキシ−2−ピリジル]ピリダジン−3−アミン(調製例49)のラセミ混合物を精製し、第一溶出エナンチオマーを標題化合物として得る。MS(m/z):375(M+1)。
【0083】
精製条件:CHIRALPAK(登録商標)IC、移動相:二酸化炭素中の0.2%イソプロピルアミン含有30%イソプロパノール、流速:70g/分、UVW:280nm、保持時間:3.93分。
【0084】
基本的には実施例72の方法により、次の化合物を調製する。代わりの精製条件を示す。
【0085】
【表11】
【0086】
実施例77〜79用の粉末X線回折収集手順
結晶性固形物のXRDパターンを、CuKa源(λ=1.54060Å)とVantec検出器を備えたBruker D4 Endeavor粉末X線回折装置上で35kVおよび50mAで稼働しながら得る。サンプルを、4〜40°の範囲の2θにて、2θのステップサイズ0.009°及びスキャン速度0.5秒/ステップを用い、並びに0.6mmの発散、5.28の固定アンチスキャッターおよび9.5mmの検出器スリットを用いてスキャンする。乾燥粉末を石英サンプルホルダーに詰め、そして、ガラススライドを使用して平滑面を得る。外気温および相対湿度での結晶形の回折パターンを収集する。
【0087】
実施例77
2−{4−[(4−{[1−シクロプロピル−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]オキシ}ピリジン−2−イル)アミノ]ピリジン−2−イル}プロパン−2−オール、(2Z)−ブト−2−エン二酸(1:1)
【化21】
【0088】
ACN(2mL)中に、2−{4−[(4−{[1−シクロプロピル−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]オキシ}ピリジン−2−イル)アミノ]ピリジン−2−イル}プロパン−2−オール(142mg)を加える。固形物は、80℃/1000rpmで撹拌させて完全に溶解する。マレイン酸(48mg、1.20当量(80℃の1mLのACN中))を、得られた溶液に加える。混合物は初期には濁っているが、すぐに澄んだ溶液となる。加熱と撹拌を中止する。溶液を室温へと冷却する。さらに2mLのACNを加え、固形物を懸濁する。白色固形物を真空ろ過により単離し、その固形物をフィルタの上で、15分間空気流の下で乾燥する。得られる固形物を65℃の真空オーブン中で一晩乾燥させて、標題の化合物(132mg、収率73.4%)を得る。単塩に対する形成塩中のマレイン酸イオンの理論的パーセンテージは、21.0%である。HPLCによる対イオン解析は、形成塩中のマレイン酸イオンの実測パーセンテージは17.2%であることを確認する。対イオン解析は、単塩であることを示す。
【0089】
実施例77の粉末X線回折
実施例77の調製サンプルをCuKa線源を使用してXRDパターンにより特徴解析したところ、以下の表13に示すような回折ピーク(2θ値)を有している。特に、12.5°、17.5°、および16.9°からなる群より選択される一又は複数のピークと組み合わせて9.6°のピークを有している。回折角度の許容誤差は、0.2°である。
【表12】
【0090】
実施例78
2−{4−[(4−{[1−シクロプロピル−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]オキシ}ピリジン−2−イル)アミノ]ピリジン−2−イル}プロパン−2−オール、メタンスルホネート(1:1)
【化22】
【0091】
アセトン(2mL)中に、2−{4−[(4−{[1−シクロプロピル−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]オキシ}ピリジン−2−イル)アミノ]ピリジン−2−イル}プロパン−2−オール(113mg)を加える。固形物は、60°C/1000rpmで撹拌させて完全に溶解する。メタンスルホン酸(21μL、1.24当量)を得られた溶液に加える。加熱と撹拌を中止する。溶液を室温へと冷却する。さらに3mLのアセトンを加え、固形物を懸濁する。白色固形物を真空ろ過により単離し、その固形物をフィルタの上で、15分間空気流の下で乾燥する。得られる固形物を65℃の真空オーブン中で一晩乾燥させて、標題の化合物(87mg、収率63.08%)を得る。単塩に対する形成塩中のメタンスルホン酸イオンの理論的パーセンテージは、18.1%である。HPLCによる対イオン解析は、形成塩中のメタンスルホン酸イオンの実測パーセンテージは16.2%であることを確認する。対イオン解析は、単塩であることを示す。
【0092】
実施例78の粉末X線回折
実施例78の調製サンプルをCuKα線源を使用してXRDパターンにより特徴解析したところ、以下の表14に示すような回折ピーク(2θ値)を有している。特に、14.1°、10.8°、および18.6°からなる群より選択される一又は複数のピークと組み合わせて7.0°のピークを有している。回折角度の許容誤差は、0.2°である。
【0093】
【表13】
【0094】
実施例79
2−{4−[(4−{[1−シクロプロピル−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]オキシ}ピリジン−2−イル)アミノ]ピリジン−2−イル}プロパン−2−オール、4−メチルベンゼンスルホネート(1:1)
【化23】
【0095】
EtOAc(2mL)中に、2−{4−[(4−{[1−シクロプロピル−3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)−1H−ピラゾール−4−イル]オキシ}ピリジン−2−イル)アミノ]ピリジン−2−イル}プロパン−2−オール(122mg)を加える。固形物を、80℃/1000rpmで撹拌させて完全に溶解させる。p−トルエンスルホン酸一水和物(1.23当量(80℃の1mLのEtOAc中))を、得られた溶液に加える。混合物を80℃/1000rpmで30分間スラリー状にする。加熱を止め、そして、混合物が室温へ冷めるように、混合物を1000rpmで撹拌を維持する。得られる白色固形物を真空ろ過により単離し、その固形物をフィルタの上で、15分間空気流の下で乾燥する。得られる固形物を65℃の真空オーブン中で一晩乾燥させて、標題の化合物(159mg、収率93.40%)を得る。単塩に対する形成塩中のp−トルエンスルホン酸イオンの理論的パーセンテージは、29.3%である。HPLCによる対イオン解析は、形成塩中のp−トルエンスルホン酸イオンの実測パーセンテージは28.3%であることを確認する。対イオン解析は、単塩であることを示す。
【0096】
実施例79の粉末X線回折
実施例79の調製サンプルをCuKa線源を使用してXRDパターンにより特徴解析したところ、以下の表15に示すような回折ピーク(2θ値)を有している。特に、19.7°、18.4°、および22.0°からなる群より選択される一又は複数のピークと組み合わせて17.8°のピークを有している。回折角度の許容誤差は、0.2°である。
【0097】
【表14】
【0098】
TGFβ経路を介する情報伝達は、いくつかの適応症のがん及び腫瘍の進行に関連している(Elliott et.al.(2005)J Clin Oncol 23:2078;Levy et.al.(2006)Cytokine&Growth Factor Rev 17:41−58)。腫瘍微小環境中の間質または腫瘍により生産されるTGFβリガンドが腫瘍の進行に関与する可能性のあるいくつかの型のがんがある。MATLyLuラット前立腺がん細胞(Steiner and Barrack(1992)Mol.Endocrinol6:15−25)およびMCF−7ヒト乳がん細胞(Arteaga,et al.(1993)Cell Growth and Differ.4:193−201)は、マウスTGFβ1の発現ベクターをトランスフェクション後に、より腫瘍化しおよび転移性となる。TGF−β1は、ヒト前立腺がんおよび進行胃がんにおける、血管新生、転移、および予後不良と関連する(Wikstrom,P.,et al.(1998)Prostate 37:19-29;Saito,H.et al.(1999)Cancer 86:1455-1462)。乳がんでは、予後不良は、TGF−βの上昇と関連する(Dickson,et al.(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA84:837−841;Kasid,et al.(1987)Cancer Res.47:5733−5738;Daly,et al.(1990)J.Cell Biochem.43:199−211;Barrett−Lee,et al.(1990)Br.J Cancer61:612−617;King,et al.(1989)J.Steroid Biochem.34:133−138;Welch,et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA87:7678−7682;Walker,et al.(1992)Eur.J.Cancer238:641−644)。そして、タモキシフェン治療(Butta,et al.(1992)Cancer Res.52:4261−4264)によるTGF−β1の誘導は、タモキシフェン治療が乳がんに効かないことと関連する(Thompson,et al.(1991)Br.J.Cancer63:609−614)。抗TGFβ1抗体(すい臓のナチュラルキラー細胞活性の増加と相関する治療用のもの)は、胸腺欠損マウスにおけるMDA−231ヒト乳がん細胞の増殖を阻害する(Arteaga,et al.(1993)J.Clin.Invest.92:2569−2576)。潜在型のTGFβ1をトランスフェクションしたCHO細胞をヌードマウス中に入れると、NK活性が減少し、腫瘍増殖が増加したことが示された(Wallick,et al.(1990)J.Exp.Med.172:1777−1784)。従って、乳がんにより分泌されるTGF−βは、内分泌性免疫抑制を引き起こす場合がある。TGFβ1の血漿中濃度が高いことは、進行型乳がん患者の予後不良を示唆することが示された(Anscher,et al.(1993)N.Engl.J.Med.328:1592−1598)。高用量化学療法および骨髄自家移植前に循環TGFβが高い患者は、肝静脈閉塞性疾患(50%までの死亡率を有する全患者の内15〜50%)および特発性間質性肺炎(全患者の内40〜60%)のリスクが高い。これらの所見の意味するところは、1)TGFβの血漿レベルの上昇を利用してリスクのある患者を同定可能であること、2)TGFβシグナリングの減少により、乳がん患者に対するこれら一般的治療による疾病率および死亡率を減少できるかもしれないことである。
【0099】
最近の文献はまた、TGFβシグナリングが、腫瘍の(化学療法を含む)標準的なケア治療に対する耐性および受容体型チロシンキナーゼ治療に対する耐性を促進するのに重要となる可能性があることを示唆している(WO2012138783)。具体的には、大腸がんでは、特定の遺伝子発現様式が、一般的第一治療に耐性となる患者群を選び出すことが示された。これらの腫瘍細胞は、TGFβRI特異的小分子阻害剤を用いてTGFβ経路をブロックした場合に、治療への感受性を再獲得する(Huang,et.al.(2012)Cell 151:937−950;Sadanandam et.al.(2013)Nat Med 19:619−625;Vermeulen et.al.(2013)Nat Med 19:614−618;Roepman et.al.(2014)134:552−562)。
【0100】
骨髄異形成症候群(MDS)は、骨髄区画中の造血系の疾患であって、骨髄系細胞の生産が非効率的となることを特徴とする。MDSは、TGFβ経路の変化(SMAD7レベルの減少に相当する)にリンクしている。SMAD7は、阻害性SMADであって、TGFβが媒介するSMAD情報伝達を阻害するように機能し、そして、TGFβRIおよびTGFβRIIを介するリガンド活性化シグナリングの下流に位置している。SMAD7の過剰発現は、従って、MDS中でのTGFβ情報伝達の過剰活性化を導くと考えられている。この表現型は、TGFβRI小分子阻害剤で処理することで逆転可能である(Zhou et.al.(2011)Cancer Res.71:955−963)。同様に、膠芽腫(GBM)では、TGFβリガンドレベルが上昇し、疾患の進行と関連する。アンチセンスオリゴヌクレオチド治療剤AP1002は、ある種のGBM患者に潜在的に作用があることが示された(Bogdahn et.al.(2011)Curr Pharm Biotechnol)。メラノーマでは、TGFβ経路の情報伝達活性化は、BRAFおよびMEK阻害剤への抵抗性にも関係していた(Sun et.al.(2014)Nature.508:118−122)。
【0101】
多くの悪性細胞は、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)(強力な免疫抑制剤)を分泌する。このことは、TGFβの生産が宿主の免疫監視から腫瘍が逃れる重要なメカニズムとなる可能性を示唆する(Flavell et.al.(2010)Nat Rev Immunol 10:554−567;Kast et.al.(1999)Leukemia 13:1188−1199)。腫瘍を有する宿主においてTGFβ情報伝達が攪乱された白血球亜集団を確立することにより、がんの免疫療法に関する潜在的手段を単独または一若しくは複数の他の免疫療法と組み合わせて(例、一若しくは複数のPD−1阻害剤(例、ニボルマブ(nivolumab)、ペンブロリズマブ(pembrolizumab))、PD−L1阻害剤、がんワクチン、および両特異性免疫結合分子(bispecific immune engaging molecule)(例、IMCgp100)と組み合わせて)提供する。リンパ球により生産されるTGFβリガンドは、前臨床段階ではあるが、腫瘍の免疫監視と拮抗することが示されている(Donkor et.al.(2012)Development.Oncoimmunology 1:162−171,Donkor et.al.(2011)Cytokine Immunity 35:123−134)。この軸を攪乱することは、前臨床段階ではあるが、マウスモデルとイン・ビトロにおいて抗腫瘍作用を提供することも示されている(Zhong et.al.(2010)Cancer Res 16:1191−1205;Petrausch et.al.(2009)J Immunol 183:3682−3689);Wakefield et.al.(2013)Nat.Rev Cancer 13:328−341)。T細胞中でTGFβ情報伝達が攪乱したトランスジェニック動物モデルでは、通常、致死的レベルのTGFβを過剰発現するリンパ腫瘍EL4を根絶可能である(Gorelik and Flavell,(2001)Nature Medicine 7(10):1118−1122)。腫瘍細胞においてTGFβの分泌をダウンレギュレーションすることにより、宿主中の免疫原性が回復する一方で、T細胞がTGFβへ非感受性となることにより、分化と自己免疫(それらの構成要素は、腫瘍に寛容な宿主中の自己抗原発現腫瘍と闘うために必要な場合がある)が加速する。TGFβの免疫抑制作用は、CD4/CD8T細胞の数に基づいて予想されるより低い免疫応答をするHIV患者の亜集団においても関与が示唆されてもいる(Garba,et al. J.Immunology(2002)168:2247−2254)。TGFβ中和抗体は、培養系で作用を逆転させることができ、TGFβ情報伝達阻害剤が、このHIV患者サブセットに存在する免疫抑制を逆転させるのに有用性がある場合があることを示す。
【0102】
発がん過程の初期段階中では、TGFβ1は強力ながん抑制分子として働くことができ、いくつかの化学防御剤の作用機構を媒介する場合がある。しかしながら、悪性新生物の発症および進行途中のある時点では、腫瘍細胞はTGFβ依存性増殖阻害から逃れるのと並行して、生物学的活性のあるTGFβが微小環境中に出現する。TGFβのがん抑制/がん促進という二面的役割は、角化細胞でTGFβを過剰発現するトランスジェニック系において、最も明らかに解明された。トランスジェニック体は良性皮膚病変の形成に抵抗性がよりある一方で、そのトランスジェニック体内で転移性へと変化する率は劇的に増加した(Cui,et al(1996)Cell 86(4):531−42)。原発腫瘍中の悪性細胞によるTGFβ1の生産は、腫瘍進行のステージが進行するにつれて増加するように見える。多くの主要な上皮がんの研究は、ヒトがんによるTGFβの生産の増加は、腫瘍進行中の比較的後期イベントとして起こるということを示唆している。さらに、この腫瘍関連TGFβは、腫瘍細胞に選択的優位性を与え、腫瘍進行を促進する。細胞/細胞相互作用および細胞/間質相互作用へのTGFβの効果により、浸潤および転移傾向がより大きくなる。腫瘍関連TGFβは、腫瘍細胞が免疫監視から逃れることを可能にするかもしれない。なぜなら、それは活性化リンパ球のクローン増殖の強力な阻害剤であるからだ。TGFβは、アンジオスタチンの生産を阻害することも示された。がん治療様式(例、放射線療法および化学療法)は、腫瘍における活性化型TGFβの生産を誘導し、それにより、TGFβの増殖阻害効果に耐性のある悪性細胞の増生が選択される。従って、これらの抗がん治療は、増殖と浸潤性が高い腫瘍のリスクを増加させ、そして、その発生を早める。このような状況において、TGFβ媒介情報伝達を標的とする薬剤は、非常に効果的な治療戦略となり得る。TGFβへの腫瘍細胞の抵抗性は、放射線療法および化学療法の細胞毒性効果の多くを無いものとすることが示されている。そして、間質におけるTGFβの治療依存的活性化は、有害でさえもある。というのは、それは、微小環境により腫瘍進行をさらに促し、そして、線維症につながる組織ダメージに資するからである。TGFβ情報伝達阻害剤の開発は、それ単独および他の療法と組み合わせると進行したがんの治療に役立つ可能性がある。
【0103】
さらに、当該技術分野で既知なのは、TGFβシグナリングが、線維症(例、肝線維症および慢性腎疾患)の症状と関係があることである。例えば、Ueha S.,et.al.2012.Front Immunol.3:71.Cellular and molecular mechanisms of chronic inflammation−associated organ fibrosis;Bottinger et al.2002.J Amer Soc Nephrol.13:2600.TGF−β Signaling in Renal Disease;Trachtman H.,et al.2011.Kidney International 79:1236.A phase 1, single−dose study of fresolimumab, an anti−TGF−β antibody, in treatment−resistant primary focal segmental glomerulosclerosis;およびRosenbloom J,et.al.2010.Narrative review:fibrotic diseases:cellular and molecular mechanisms and novel therapies.Ann Intern Med 152:159-166を参照されたい。
【0104】
以下のアッセイは、生化学アッセイにおいて、細胞レベルで、および動物モデルにおいて、例示化合物がTGFβR1を阻害することを実証する。
【0105】
TGFβR1活性の生化学的アッセイ
このインビトロアッセイの目的は、TGFβR1を阻害する化合物を同定することである。
【0106】
タンパク質発現と精製
アミノ酸204位のThrをAspに変えたヒトTGFβR1(NM_004612.2)のアミノ酸200〜503番をコードするヌクレオチド配列を、PFASTBAC(商標)1(インビトジェン、カタログ#10360−014)ベクターに、N末端にHISタグを付けて挿入した。BAC−TO−BAC(登録商標)バキュロウイルス発現システム(インビトロジェン、カタログ#10359−016)のプロトコルに従って、バキュロウイルスを作製する。1リットルの培養当たり、15mLのP1ウイルスを使用して1.5×10
6細胞/mLのSf9に感染させ、28℃で48時間インキュベートする。細胞を回収し、引き続くタンパク質精製のために−80℃で保管する。タンパク質精製を4℃で実施する。0.2%TritonX−100およびRocheコンプリートEDTA不含有プロテアーゼ阻害剤カクテルを含む100mLの緩衝液A(50mMのTris−HCl、pH8、200mMのNaCl、1mMのDTT、5mMのイミダゾール、10%グリセロール)中に、2L培養物由来のペレットを懸濁し、ホモジェナイズする。45分間、16,500rpmでベックマンJA−18ローターで遠心分離することにより、細胞溶解物を澄ませる。上清を、3時間、5mLのNi−NTAメタルアフィニティー樹脂(Qiagen)とインキュベートする。その樹脂をカラムに充填し、緩衝液Aで洗浄する。HIS−TGFβR1(200−503)(T204D)タンパク質を、緩衝液A中の0〜400mMのイミダゾール勾配を使って溶出する。HIS−TGFβR1(200−503)(T204D)含有画分をプール、濃縮し、そして、HiLoad 16.600 Superdex200カラム(GEHealthcareBioscience)上にロードする。カラムを、保存緩衝液(50mMのTris−HCl、pH7.5、150mMのNaCl、1mMのDTT)で溶出する。HIS−TGFβR1(200−503)(T204D)含有画分を溜めてし、濃縮する。タンパク質濃度をUV280で測定する。タンパク質を分注し、−80℃で保管する。
【0107】
TR−FRETアッセイ条件
ハーフエリアブラックプレート(half−area black plate)中に、組換えHis−TGFβR1(200−503)(T204D)とEu−抗HIS検出抗体(インビトロジェン、カタログ#PV5597)と共に化合物をプレインキュベートする。DMSO中の1mMストック試験化合物から化合物の希釈系列を調製する。DMSO中に、ストック溶液の3倍希釈系列を作製して、化合物終濃度が2μM〜0.1nMの範囲にある10点希釈曲線を得る。このアッセイのDMSOの終濃度は、4%である。キナーゼトレーサー(Kinase Tracer 178、Life Technologies PR9080A、インビトロジェン)を添加して、反応を開始する。45〜60分後に、プレートリーダー上で蛍光を読み取る。
【0108】
最小阻害群(DMSO単独、未処理)に対する化合物処理群の阻害パーセンテージを計算する。IC
50絶対値=50%阻害を生じる濃度であるとして、4−パラメータ非線形ロジスティック方程式を使用し、ActivityBaseデータ解析ソフトウエアを使用して、IC
50絶対値を計算する。これらのアッセイの結果は、例示化合物がTGFβR1の効果的阻害剤であることを実証する。例えば、全ての例示化合物は、1μM未満のIC
50値を示す。具体的には、実施例1のIC
50値は0.027μMである。
【0109】
TGFβR1活性用の細胞ベース・ルシフェラーゼ・レポーター・アッセイ
このアッセイの目的は、細胞ベースのアッセイ中でSMAD2,3依存性遺伝子発現と選択的に干渉する化合物を同定し、その化合物が細胞レベルでTGFβR1を阻害することを実証することである。
【0110】
TGFβ刺激に応答して、SMAD2,3応答性プロモーターからホタル・ルシフェラーゼを発現するようにHEK293細胞(ATCC、CRL−1573)を設計する。そのような細胞株をレンチウイルス粒子(SA Biosciences)で感染して作製し、ピュロマイシン抵抗性に関して選抜する。アッセイ用に準備された凍結ストック由来のHEK293_SMAD2/3細胞を、10%ウシ胎児血清含有OPTI−MEM(登録商標)培地中で、96穴プレートの各ウエルに15,000細胞で蒔く。72時間後、培地を、0.1%ウシ血清アルブミン含有OPTI−MEM(登録商標)培地に変える。DMSO中の試験化合物を調製して、10mMのストック溶液を作製する。DMSO中に、ストック溶液の3倍希釈系列を作製して、化合物終濃度が20μM〜1nMの範囲にある10点希釈曲線を得る。このアッセイのDMSOの終濃度は、0.5%である。試験化合物を加え、一時間の平衡化の後、TGFβ(終濃度=2nM、R&D Systems)を加える。
【0111】
24時間後、溶解緩衝液[Glo Lysis Buffer(カタログ#E2661)]およびルシフェラーゼ試薬[Promega Bright Glo Luciferase Reagent(カタログ#E2620)]を各ウエルに加えて、ウエル容量を二倍にする。アリコート(80μL)を、白色ソリッドボトムプレート(solid bottom plate)に移し、プレートリーダー(エミッションフィルター:Luminescence 700、1秒読み取り)上で発光を測定する。最小阻害群(DMSO単独、未処理)に対する化合物処理群の阻害パーセンテージを計算する。用量反応試験から、各化合物の相対的IC
50を計算し、50%阻害を達成するのに必要な濃度を計算する。用量反応試験から得られたデータを、ActivityBaseデータ解析ソフトウエアを使用して、4−パラメータロジスティック方程式に当てはめる。これらのアッセイの結果は、例示化合物が、TGFβで刺激したHEK293_SMAD2/3細胞のルシフェラーゼレポーター活性の効果的阻害剤であることを実証する。例えば、全ての例示化合物は、1μM未満のIC
50値を示す。具体的には、実施例1のIC
50は0.0824μMである(±0.005、n=2)。
【0112】
IVTIアッセイ
このアッセイの目的は、試験化合物が、EMT6−LM2同一遺伝子型動物モデル内の腫瘍においてpSMAD2発現を阻害する能力を測定することである。換言すると、このアッセイは、試験化合物が、固形がん動物モデル中でTGFβR1シグナリングを阻害する能力を測定する。
【0113】
EMT6−LM2細胞作製
EMT−6細胞(ATCC、CRL−2755)(5×10
5/動物)を、免疫機能のあるBALB/cAnNHsdマウス(Harlan Laboritories)のわき腹の皮下に移植する。腫瘍が約3000mm
3に達すると、動物をCO
2で窒息させて屠殺する。腫瘍を保持する動物から肺を取り出して、培養する。肺を穏やかにホモジェナイズして、単細胞の懸濁物を作製する。細胞を培養培地(IMDM、10%FBS)中で増殖させ、腫瘍細胞を単離してEMT6−LM1を得る。移植用のEMT6−LM1細胞を使用して上記プロセスを繰り返して、EMT−LM2細胞を作製する。
【0114】
精製リン酸化HIS−SMAD2(pSMAD2)
ヒトSMAD2全長(NM_005901.5)をコードするヌクレオチド配列を、PFASTBACHTA(商標)(インビトロジェン、カタログ#10584−027)に挿入し、HIS−SMAD2タンパク質を発現するバキュロウイルス・コンストラクトを作る。アミノ酸204位のThrをAspに変えたヒトTGFβR1(NM_004612.2)のアミノ酸148〜503番をコードするヌクレオチド配列を、PFASTBACHTA(商標)(インビトロジェン、カタログ#10584−027)ベクターに挿入し、HIS−TGFβR1(148−503)(T204D)タンパク質を発現するバキュロウイルス・コンストラクトを作る。BAC−TO−BAC(登録商標)バキュロウイルス発現システム(インビトロジェン)のプロトコルに従って、バキュロウイルスを作製する。1リットルの培養当たり、10mLのHIS−SMAD2のP1ウイルスとHIS−TGFβR1(148−503)(T204D)のP1ウイルスとを使用して1.5×10
6細胞/mLのSf9に感染させ、28℃で45時間インキュベートする。オカダ酸を終濃度0.1μMとなるように加える。さらに3時間インキュベーションした後、細胞を回収し、引き続くタンパク質精製のために−80℃で保管する。タンパク質精製を4℃で実施する。0.1%TRITON(登録商標)X−100およびRocheコンプリートEDTA不含有プロテアーゼ阻害剤カクテルを含む300mLの冷却緩衝液A(50mMリン酸ナトリウム、pH7.5、300mMのNaCl、2mMのβ−メルカプトエタノール、5mMのイミダゾール、10%グリセロール、0.1μMのオカダ酸)中で撹拌しながらインキュベートおよびホモジェナイズすることにより、6L培養物由来の凍結細胞ペレットを溶解する。45分間、16,500rpmでベックマンJA−18ローターで遠心分離することにより、細胞溶解物を澄ませる。上清を、10mLのTALONメタルアフィニティー樹脂(Clontech、カタログ#635504)と、2時間インキュベートする。そのバッチを、0.1%TRITON(登録商標)X−100含有緩衝液Aの100mLで洗浄する。樹脂をカラムに充填し、緩衝液Aで洗浄する。HIS−SMAD2タンパク質を、緩衝液A中の0〜100mMのイミダゾール勾配を使って溶出する。リン酸化HIS−SMAD2を含む画分を溜め、0.1μMオカダ酸と5mMのEDTAとを添加する。BSAを標準として使用して、BioRadタンパク質アッセイ(BioRad DCタンパク質アッセイキット#500−0116)により、タンパク質濃度を測定する。タンパク質を分注し、−80℃で保管する。
【0115】
生体フェーズ
EMT6−LM2細胞を、10%FBS、2mMのGlutamaxおよび0.1mM非必須アミノ酸を添加したイスコフ改変ダルベッコ培地(MDM)中で培養し、37℃、5%CO
2でインキュベートする。細胞をトリプシン処理し、培養物から細胞を単離する。細胞を、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)に再懸濁し、その後、MATRIGEL(登録商標)(1:1)と混ぜる。細胞(5×10
5/動物)を、マウス(雌BALB/cマウス、Harlan)のひ腹に皮下移植する。カリパスで腫瘍体積を測定し、体重を週に二回測定する。腫瘍体積が約200〜250mm
3に達すると、動物をランダムに、ビヒクルコントロール群と化合物処置群にグループ分けする。化合物(1%ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、0.25%TWEEN(登録商標)80、および0.05%消泡剤中に処方したもの)およびビヒクルコントロール(1%HEC、0.25%TWEEN(登録商標)80、および0.05%消泡剤)を、経口経管栄養により投与する。2.7、8.3、25、75、または150mg/kgの単回投薬後、単一時点(2時間)において化合物を試用して、用量反応を生み出す。単回投薬後1時間〜16時間の間の複数時点でマウスを屠殺して、用量反応試験から計算(方法は以下に記載)されたTED
50またはTED
80用量での時間推移(タイムコース)を求める。
【0116】
組織処理
腫瘍組織を回収し、以下に記載するように均質化する。腫瘍組織(各約100mg)を液体窒素中で凍らせ、乳棒で粉末に砕く。粉末化組織を、ドライアイス上のチューブ(溶解用Matrix Aチューブ、MPBio#6910−100)中に入れて、溶解緩衝液(各0.6mL)(150mMのNaCl;20mMのTris、pH7.5;1mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA);1mMのエチレングリコール四酢酸(EGTA);1%TRITON(登録商標)X−100;プロテアーゼ阻害剤カクテル(シグマP8340);ホスファターゼ阻害剤カクテルII(シグマP5726);ホスファターゼ阻害剤カクテルIII(シグマP0044))中で、25秒間、Bio101 FASTPREP(登録商標)FP120ホモジナイザー(設定4.5)を使用して均質化する。細胞の破片とビーズを、4℃、10分間、14,000rpmで遠心分離してペレット化する。溶解物を新たな微量遠心管に移して、4℃、10分間、14,000rpmで再度遠心分離する。遠心分離した溶解物を深いウエルの96穴プレートに移し、氷上で保つ。以下のようにして、BioRadタンパク質アッセイ(BioRad DCタンパク質アッセイキット#500−0116)を使用して、各溶解物のタンパク質濃度を測定する。キット試薬S(20μL)を、アッセイに必要なキット試薬Aの1mLずつに加えることにより、作業用試薬を調製する。0.2mg/mL〜1.5mg/mLのタンパク質範囲のタンパク質標準の3〜5倍希釈液を調製して、検量線を作成する。5μLの標準とサンプルをピペットで取り分けて、きれいで乾燥したマイクロタイタープレートに入れる。25μLの作業用試薬を各ウエルに加える。200μLの試薬Bを各ウエルに加え、5秒間激しく撹拌する。15分後に、各ウエルの750nMでの吸光度を読み取る。各ウエルのタンパク質レベルを、標準ウエル由来の検量線とサンプルウエルの吸光度を比較することにより決定する。以下に記載する方法であるELISAによるpSMAD2およびSMAD2/3全体の解析の準備で、腫瘍溶解物を溶解緩衝液で10mg/mLに標準化する。
【0117】
SMADのELISA
独立した複数のELISAプレートを使用して、腫瘍溶解物をアッセイする。1つのプレートは、SMAD2/3全体レベルを測定するために使用し、別のプレートをリン酸化SMAD2レベルを測定するために使用する。コーティング抗体は、両方のプレートで同じであるが、二次抗体は、SMAD2/3全体またはリン酸化SMAD2に特異的である。これらのプレートは、総称的に「ELISAプレート」と呼び、個別的には、それぞれ「トータルELISAプレート」または「ホスホELISAプレート」と呼ぶ。コーティング抗体を、BupHカーボネート−バイカーボネート緩衝液(抗SMAD2/3、BD Biosciences#610843;BupHカーボネート−バイカーボネートは、Pierce#28382)中に2.5μg/mLで調製する。そして、各ウエル当たり100μLで96穴イムノプレート(Thermo Scientific#439454)に加え、プラットフォーム振とう機上で4℃一晩インキュベートして、ELISAプレートを作製する。次に、洗浄緩衝液(0.5%TWEEN(登録商標)20をトリス緩衝液(TBS)、pH8.0(シグマ#T−9039)に入れたもの)で4回ELISAプレートを洗浄し、それに引き続いて各ウエル当たり200μLのブロッキング緩衝液(1%ウシ血清アルブミン(BSA)を1×TBSに入れたもの)で、2時間プラットフォーム振とう機上で、室温にてブロッキングする。洗浄緩衝液で4回洗浄する。ホスホSMAD ELISAプレートの適当なウエルに、各ウエル当たり10mg/mlの腫瘍溶解物またはビヒクル溶解物を100μL加える。トータルELISAプレートの適当なウエルに、各ウエル当たり98μLの溶解緩衝液と各ウエル当たり2μLの10mg/mlの腫瘍溶解物またはビヒクル溶解物を加える(最終的には0.02mgのタンパク質溶解物)。精製pSMAD2を使用して、各ELISAプレート(ホスホおよびトータルの両方とも)に検量線も追加する。一晩インキュベートする。洗浄緩衝液で、再度4回ELISAプレートを洗浄する。1%BSAを添加した溶解緩衝液中に、1:500希釈で、二次抗体(ミリポア抗リン酸化SMAD2ウサギモノクローナル抗体#04−953;ミリポア抗SMAD2/3ウサギポリクローナル抗体#07−408)を調製する。そして、適当なプレートに各ウエル当たり100μLを加える。2〜3時間室温で、プレートをインキュベートする。洗浄緩衝液で4回洗浄し、プレートに各ウエル当たり100μLのレポーター抗体(抗ウサギHRP、GE Healthcare#NAV934V、ブロッキング緩衝液中に1:10,000で希釈したもの)を加える。室温で1時間インキュベートし、洗浄緩衝液で、最終的に4回プレートを洗浄する。そして、室温の3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB;Surmodics/BioFX#TMBW−0100−01)を各ウエル当たり100μL加える。最高30分まで37℃でプレートをインキュベートする。100μLの停止溶液(1NのH
2SO
4)を加えて、反応を停止させる。プレートリーダーで、450nmでの吸光度(OD)を測定する。
【0118】
ビヒクル群のリン酸化SMAD(pSMAD)に対するSMAD全体(tSMAD)の比率を利用して、pSMADシグナルの最小阻害(0%)を決定する。ビヒクル群のpSMAD最小阻害に対する化合物処理群の阻害パーセンテージを計算する。SAS(バージョン9.3、Cary、NC)中でNLIN法を使用して、用量反応試験からTED
50およびTED
80(それぞれ、この時点で50%および80%阻害を達成するのに必要な用量)を計算する。このアッセイが実証するのは、1回の投薬後2時間での実施例1のTED
50値が10.8mg/kgであり、TED
80が24.1mg/kgであることである。TED
50用量(11pmk)でのタイムコース試験では、実施例1は、投薬後1時間で48%の阻害、2時間で39%の阻害を示す。(25mpk)でのタイムコース試験では、実施例1は、投薬後1時間で71%の阻害、2時間で70%の阻害を示す。
【0119】
本発明の化合物は、広い投与量範囲に渡り全体的に効果がある。例えば、1日当たりの投与量は、通常、約1〜2000mgの一日当たり範囲内に収まる。好ましくは、そのような用量は、10〜1000mgの一日当たり範囲内に収まる。より好ましくは、そのような用量は、10〜100mgの一日当たり範囲内に収まる。さらにより好ましくは、そのような用量は、10〜80mgの一日当たり範囲内に収まる。最も好ましくは、そのような用量は、10〜50mgの一日当たり範囲内に収まる。いくつかの例では、前記した範囲の下限以下の投与量レベルが、充分以上である場合がある。一方で、他のケースでは、それよりずっと多い用量が採用される場合もある。従って、上記投与量範囲は、いかなる意味でも本発明の範囲を限定する意図はない。実際に投与される化合物量は、医師が適切な状況(治療される状態、選択される投与経路、投与される実際の化合物(複数可)、個々の患者の年齢、体重、および反応、ならびに患者の症状の重症度を含むもの)を鑑みて決定することになる。