(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043904
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】超音波クランプオン式流量測定のための方法及び該方法を実行するための装置
(51)【国際特許分類】
G01F 1/66 20060101AFI20161206BHJP
G01F 25/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
G01F1/66 101
G01F1/66 A
G01F25/00 Q
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-557081(P2013-557081)
(86)(22)【出願日】2012年3月7日
(65)【公表番号】特表2014-507667(P2014-507667A)
(43)【公表日】2014年3月27日
(86)【国際出願番号】EP2012053909
(87)【国際公開番号】WO2012120039
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2015年2月4日
(31)【優先権主張番号】102011005170.8
(32)【優先日】2011年3月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506124619
【氏名又は名称】フレクシム フレクシブレ インドゥストリーメステヒニーク ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】フンク、ベルンハルト
【審査官】
山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−504543(JP,A)
【文献】
特開平08−261809(JP,A)
【文献】
実開昭63−113920(JP,U)
【文献】
特開昭63−304117(JP,A)
【文献】
特開昭56−158912(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/004560(WO,A1)
【文献】
特公平06−003384(JP,B2)
【文献】
特開昭55−027936(JP,A)
【文献】
特開2007−322186(JP,A)
【文献】
特開2009−270882(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/000577(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/66
G01F 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定管上に取り付けられ且つ変換器要素を備えた2つの音響変換器を用いた走行時間法による方法であり、少なくとも1つの変換器要素が少なくとも2つのアレー要素から構成され、流れに乗って及び/又は流れに抗して伝播する2つの音響信号の走行時間の差が測定され、それから容積流が計算される、超音波クランプオン式流量測定のための方法であって、
校正係数Kafのための分析段階において、以下のステップ、即ち、
a.第1音響変換器(1)の変換器要素(3)と、第2音響変換器(2)の第1アレー要素(4a)との間の走行時間t1を測定するステップと、
b.第1音響変換器(1)の変換器要素(3)と、第2音響変換器(2)の第2アレー要素(4b)との間の走行時間t2を測定するステップと、
c.前記走行時間t1及びt2の間の時間差delta_tcを計算するステップと、
を含み、計算された前記時間差delta_tcを用い、校正係数Kafが検出され、
そして該校正係数Kafは、容積流Qの測定のための後続の稼働段階において、前記測定管の音響影響を補償するために使用されること
を特徴とする方法。
【請求項2】
測定管上に取り付けられ且つ変換器要素を備えた2つの音響変換器を用いた走行時間法による方法であり、少なくとも1つの変換器要素が少なくとも2つのアレー要素から構成され、流れに乗って及び/又は流れに抗して伝播する2つの音響信号の走行時間の差が測定され、それから容積流が計算される、超音波クランプオン式流量測定のための方法であって、
校正係数Kafのための分析段階において、少なくとも2つの受信信号(s1、s2)の相互相関関数が計算され、但し、第1受信信号(s1)は、第1音響変換器(1)の変換器要素(3)により送信され且つ第2音響変換器(2)の第1アレー要素(4a)により受信され且つデジタル化された信号であり、第2受信信号(s2)は、第1音響変換器(1)の変換器要素(3)により送信され且つ第2音響変換器(2)の第2アレー要素(4b)により受信され且つデジタル化された信号であり、前記相互相関関数の最大値の時間的な位置が検出され、この時間的な位置は、時間差delta_tcであり、該時間差delta_tcを用い、校正係数Kafが検出され、
そして該校正係数Kafは、容積流Qの測定のための後続の稼働段階において、前記測定管の音響影響を補償するために使用されること
を特徴とする方法。
【請求項3】
音響変換器プリトラベル部内の既知の音速度caを前記時間差delta_tcと乗じることにより行路差delta_lcが前記時間差delta_tcから計算され、それにより前記音響変換器プリトラベル部内の入射角alphaの角度変化delta_alphaがdelta_alpha=arcsin(delta_lc/delta_s)により得られ、但し、delta_sは、前記アレー要素(4a、4b)の互いの間隔であり、従って前記校正係数Kafは、Kaf=ca/sin(alpha+delta_alpha)により計算されること
を特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記校正係数Kafは、前記時間差delta_tcを用い、Kaf=Ka/(1+Ka×cos(alpha)×delta_tc/delta_s)の式により計算され、但し、Kaは、音響変換器プリトラベル部内の入射角alphaのサインに対する音響変換器プリトラベル部内の音速度caの比率であり、delta_sは、前記アレー要素(4a、4b)の互いの間隔であり、delta_tcは、前記時間差であること
を特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記校正係数Kafは、以下の近似関数fc(delta_tc)を介し、計算された前記時間差delta_tcから検出されること、即ち、
前記近似関数fc(delta_tc)は、前記音響変換器が当該超音波クランプオン式流量測定にとって通常どおり取り付けられている総数Nの管iにおいて各々前記校正係数Kaf_iと前記時間差delta_tc_iが測定されることにより、前記校正係数と前記時間差のための、測定前に獲得される総数Nの値ペア(Kaf_i、delta_tc_i)から計算され、
但し、前記校正係数Kaf_iの測定は、各々、第2音響変換器(2)が第1ポジションx1又は第2ポジションx2にあるときに超音波信号の走行時間tx1及びtx2が測定されることにより行われ、該走行時間は、各々、第1音響変換器(1)の変換器要素(3)と第2音響変換器(2)の変換器要素(4)との間の走行時間であり、また前記ポジションx1及びx2は、ゼロポジションx0に対して対称に位置し、前記校正係数Kaf_iは、Kafxi=(x2−x1)/(tx2−tx1)に対して計算され、前記時間差delta_tc_iの測定は、第2音響変換器(2)が前記ゼロポジションx0にあるときに行われること
を特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
測定管上に取り付けられ且つ変換器要素を備えた2つの音響変換器を有し、流れに乗って及び/又は流れに抗して伝播する2つの音響信号の走行時間の差が測定され、それから容積流が計算される走行時間法による超音波クランプオン式流量測定のための方法を実行する装置であって、
該装置は、送信ユニットと、少なくとも2つの入力部を有する少なくとも1つのアレーマルチプレクサと、方向切替器と、受信増幅器と、評価ユニットと、制御ユニットと、計算ユニットとから構成され、
第1アレー要素(4a)か又は第2アレー要素(4b)か又は両方のアレー要素(4a、4b)が、前記アレーマルチプレクサ(AMUX)を介して前記方向切替器(DMUX)の1つのチャネルと接続されており、
前記方向切替器(DMUX)の第2のチャネルが前記変換器要素(3)と接続されており、
前記方向切替器(DMUX)の両方の残りの端子が、各々、前記送信ユニット(S)と、前記受信増幅器(V)とに接続されており、
前記受信増幅器(V)は、請求項1又は請求項2に記載の方法により時間差delta_tcを検出し且つ前記計算ユニット(CALC)へ転送する前記評価ユニット(SPU)と接続されており、
前記制御ユニット(CTRL)は、校正係数Kafのための分析段階も、容積流Qの測定のための稼働段階も、同じコンポーネントで実現するために、前記方向切替器(DMUX)も前記アレーマルチプレクサ(AMUX)も、そして前記受信増幅器(V)と前記評価ユニット(SPU)と前記計算ユニット(CALC)を管理し、
前記分析段階中、前記方向切替器(DMUX)は、前記送信ユニット(S)が第1音響変換器(1)の端子及び第1音響変換器(1)に割り当てられた変換器要素と接続されており且つ前記受信増幅器(V)が前記アレーマルチプレクサ(AMUX)と接続されているように切り替えられており、
前記アレーマルチプレクサ(AMUX)は、第2音響変換器(2)の第1アレー要素(4a)か又は第2アレー要素(4b)だけが前記受信増幅器(V)と接続されているように制御され、
前記稼働段階中、前記アレーマルチプレクサ(AMUX)は、前記制御ユニット(CTRL)により、前記アレー要素(4a、4b)が並列接続されているように切り替えられること
を特徴とする装置。
【請求項7】
前記評価ユニット(SPU)は、アナログデジタル変換器(ADC)と、バッファメモリ(MEM)と、デジタル相関器(KORR)とから構成されること
を特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記相関器(KORR)は、プログラミング可能なデジタル信号プロセッサにより実現されること
を特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記評価ユニット(SPU)は、時間測定装置(TDC)と、バッファメモリ(MEM)と、2つの走行時間t1とt2の間の前記時間差delta_tcを計算する差分構成器(MINUS)とから構成されること
を特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項10】
前記変換器要素(3)は、少なくとも2つのアレー要素(3a、3b)から構成され、第2のアレーマルチプレクサ(AMUX2)が、第1アレー要素(3a)か又は第2アレー要素(3b)か又は両方のアレー要素を、前記方向切替器(DMUX)の1つのチャネルと接続すること
を特徴とする、請求項6〜9のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
クランプオン式流量測定装置(Clamp-on-Durchflussmessgeraete)は、多くの産業分野において幅広く使用されている。その本質的な利点の1つは、流量測定が流れる媒体との接触を伴わずに行われることにある。
【背景技術】
【0002】
クランプオン式流量測定時に使用される音響変換器(センサ)は、音響変換器プリトラベル部(音響変換器の予走行部 Schallwandlervorlauf)と、該音響変換器プリトラベル部上に固定された電気機械的な音響変換器要素とから構成され、該音響変換器要素は、以下簡略して変換器要素と称するものとし、該変換器要素は、特にピエゾセラミックにより実現されている。
【0003】
流量が測定されるべき管上に外側で2つの音響変換器が固定される。該管は、以下では測定管と称するものとする。2つの音響変換器は、超音波信号が一方の音響変換器から測定管を通して他方の音響変換器へと送信可能であり且つ音響ビームが流れる媒体内で管軸線に対して90°よりも小さい角度を有するように位置決めされる。
【0004】
走行時間法(Laufzeitverfahren)に基づくクランプオン式流量測定装置では、流れに乗って或いは流れに抗して伝播する2つの音響信号の走行時間の差が測定され、それから容積流(Volumenstrom)が計算される。
[より詳しく述べると、所謂走行時間差法は、超音波信号の伝播速度が流体(液体や気体等)の流れ速度に依存するという事実を利用する。超音波信号は流体の流れ方向の反対方向では流れ方向よりも低速で移動する。この走行時間差法では、第1の超音波パルスが流れ方向において送信され、第2の超音波パルスが流れ方向の反対方向において送信される。この際、一対のセンサが交互に送信機及び受信機として作動する。流れ方向において流体を通過する音響信号の走行時間(トランジットタイム)は、流れ方向の反対方向において流体を通過する音響信号の走行時間よりも短い。それにより走行時間差Δtが測定され、音が通過した経路上の平均流れ速度の決定が可能となる。分布修正により流れ速度の面平均値を計算することができ、この面平均値は容積流に比例する。超音波は固体も貫通するので、測定すべき流体の流れる導管の外壁上に前記センサを固定することができる。]
測定された走行時間と、流れ速度との間の関係は、例えば下記特許文献1に記載されている。音響経路上の平均流れ速度VIは、走行時間差Δtと流体内の走行時間tlとから、以下の式で計算することができる:
【0005】
VI=Ka×(Δt/2tl) 式(1)
【0006】
この際、Kaは、流体内の入射角を決定するセンサ定数である:
【0007】
Ka=c_alpha/sin(alpha) 式(2)
【0008】
ここに、alpha並びにc_alphaは、入射角並びに音響変換器プリトラベル部内の音速度である。容積流を計算するためには、更に流体力学的な校正係数KFを知る必要があり、該校正係数は、音響経路上の平均流れ速度VIに対する流れ速度の面平均値VAの比率を意味する:
【0009】
KF=VA/VI 式(3)
【0010】
そして、管の横断面積Aを用い、容積流Qが得られる:
【0011】
Q=KF×A×Ka×(Δt/2tl) 式(4)
【0012】
超音波クランプオン式流量測定の有利な構成は、例えば以下特許文献2に記載されている。管横断面のレイアウト(Gestaltung)により流体力学的な校正係数KFは、該校正係数が流れ状態に依存しないように構成される。以下特許文献3では、互いに連続し、幾度も測定管を通過する超音波信号を検知することにより流体走行時間tlの特に正確な決定を可能とする超音波流量測定法が記載されている。
【0013】
下記特許文献4は、流体音速度の決定と、屈折の法則による流体内の音響経路の適合とにより、超音波クランプオン式流量測定装置に対し、流体の圧力及び温度依存性を補償するための方法を記載している。この際、音響変換器プリトラベル部の音速度と、温度依存性を有する管壁部の音速度とが、既知であることが前提とされる。
【0014】
下記特許文献5は、超音波クランプオン式流量測定装置の測定変換器を校正するための方法が記載されている。そこでは、測定管と音響変換器の音響特性に依存しない校正であって上記式(1)により必要な時間測定の校正が可能である。この方法では、センサ定数Kaが既知で且つ不変であることが前提とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】WO 88/08516 A1
【特許文献2】DE 198 08 642 C1
【特許文献3】DE 103 12 034 B3
【特許文献4】EP 0 733 885 A1
【特許文献5】DE 10 2009 046 871 A1
【特許文献6】DE 10 2004 031 274 B4
【特許文献7】DE 102 21 771 A1
【特許文献8】DE 10 2008 029 772 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
原則的に流体内の入射角は、屈折の法則を介し、センサ定数Kaと流体内の音速度から得られることが前提とされる。しかし測定管の管壁部は、屈折の法則による音響伝播から無視することのできないずれをもたらす可能性がある。その際には上記式(1)で使用されたセンサ定数Kaが流れ速度VIと走行時間差Δtと走行時間tlとの間の関係を正確には再現しないことが測定から分かった。つまり上記式(2)により音響変換器のパラメータから計算されたセンサ定数Kaに代わり、上記式(1)では、更に管壁部の影響をも含む係数(ファクタ)が使用される必要があるだろう。この係数は、一般的に音響校正係数と称することもできる。管壁部の影響がない理想的なケースにおいて、音響校正係数はKaと同一であろうが、概して音響校正係数は、多かれ少なかれKaとはかなりずれている。管壁部は音響変換器プリトラベル部内の音速度に影響を及ぼさないので、そのずれは入射角alphaの変化としてのみ解することができる。
【0017】
クランプオン式流量測定の本質的な利点は、音響変換器が、測定箇所にある管へ取り付け可能であるということにある。つまりこの利点が利用されるべき場合には、流量測定装置を工場内で測定管と共に校正することはできないのである。つまり測定管による音響校正係数の生じうる影響は、測定箇所で測定管上に音響変換器を取り付けた後に補償されなくてはならない。そのためには、この影響を定量化する、即ち上記の音響校正係数を検出することが必要である。
【0018】
既に測定箇所にある測定装置のための校正係数の検出は、現場校正(フィールド校正)とも称される。この際、測定装置の表示内容と基準測定装置の表示内容とが比較される。しかし多くの場合、測定箇所に基準測定装置はない。つまり音響校正係数を基準測定装置を利用しないで検出することが望まれる。
【0019】
上記特許文献6に記載された方法は、原則的にそのために適している。しかしこの方法の適用は、そのために必要とされる複数の音響変換器の互いに対向する並進運動のために、もしもこの方法が校正用ラボではなく測定箇所で適用されるのであれば、多大な手間と費用と結び付いている。
【0020】
上記特許文献7は、1つのピエゾアレーにまとめられている複数のピエゾ素子を備えた超音波流量測定装置のための音響変換器を示している。一般的にアレーとは、一平面内において、互いに依存しないで駆動制御可能な複数の変換器要素を配列構成したものであり、また該複数の変換器要素は、共同でそれらの相互接続により1つの変換器要素を形成する。アレーを構成するこれらの変換器要素は、アレー要素とも称される。1つのピエゾアレーにおいて複数のアレー要素は、複数のピエゾ素子である。従って測定管壁部上へ平らに装着された音響変換器を用い、測定管軸線に対し、測定媒体内へ入射され且つ波面(等位相面 Wellenfront)を有する超音波信号の様々な角度を達成することができる。しかしタイミングをずらした駆動制御は、極めて計算に手間がかかる。また該角度の変化は、制限された範囲内においてのみ有意義である。超音波が極めて平坦に入射されると、縦波の励起が起こり、管壁部を通した透過が減少し、音波の実質的な部分が反射される。
【0021】
上記特許文献8は、1つの第1音響変換器と少なくと1つの第2音響変換器を用いて測定管を通る測定媒体の流量を決定及び監視するための測定システム及び方法を開示している。第2音響変換器は、少なくとも2つの変換器要素を有する。診断段階で獲得された信号が、測定段階で使用すべき第2音響変換器の変換器要素を選択するために使用される。従って例えば取り付け後に変化する音速度の影響を軽減することができる。この方法において現場校正は不可能である。
【0022】
本発明の基礎を成す課題は、測定管に起因する音響校正係数のずれを補償し、基準測定装置を使用しなくてすみ、音響変換器を測定管上のそれらの取付ポジションにそのまま置いておくことのできる、クランプオン式流量測定のための方法及び該方法を実行するための装置を創作することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の第1の視点により、測定管上に取り付けられ且つ変換器要素を備えた2つの音響変換器を用い
た走行時間法による方法であり、少なくとも1つの変換器要素が少なくとも2つのアレー要素から構成され
、流れに乗って及び/又は流れに抗して伝播する2つの音響信号の走行時間の差が測定され、それから容積流が計算される、超音波クランプオン式流量測定のための方法であって、
校正係数Kafのための分析段階において、以下のステップ、即ち、
a.第1音響変換器の変換器要素と、第2音響変換器の第1アレー要素との間の走行時間t1を測定するステップと、
b.第1音響変換器の変換器要素と、第2音響変換器の第2アレー要素との間の走行時間t2を測定するステップと、
c.前記走行時間t1及びt2の間の時間差delta_tcを計算するステップと、
を含み、計算された前記時間差delta_tcを用い、校正係数Kafが検出され、
そして該校正係数Kafは、容積流Qの測定のための後続の稼働段階において、前記測定管の音響影響を補償するために使用されることを特徴とする方法が提供される。
また本発明の第2の視点により、測定管上に取り付けられ且つ変換器要素を備えた2つの音響変換器を用い
た走行時間法による方法であり、少なくとも1つの変換器要素が少なくとも2つのアレー要素から構成され
、流れに乗って及び/又は流れに抗して伝播する2つの音響信号の走行時間の差が測定され、それから容積流が計算される、超音波クランプオン式流量測定のための方法であって、
校正係数Kafのための分析段階において、少なくとも2つの受信信号の相互相関関数が計算され、但し、第1受信信号は、第1音響変換器の変換器要素により送信され且つ第2音響変換器の第1アレー要素により受信され且つデジタル化された信号であり、第2受信信号は、第1音響変換器の変換器要素により送信され且つ第2音響変換器の第2アレー要素により受信され且つデジタル化された信号であり、前記相互相関関数の最大値の時間的な位置が検出され、この時間的な位置は、時間差delta_tcであり、該時間差delta_tcを用い、校正係数Kafが検出され、
そして該校正係数Kafは、容積流Qの測定のための後続の稼働段階において、前記測定管の音響影響を補償するために使用されることを特徴とする方法が提供される。
更に本発明の第3の視点により、測定管上に取り付けられ且つ変換器要素を備えた2つの音響変換器を
有し、流れに乗って及び/又は流れに抗して伝播する2つの音響信号の走行時間の差が測定され、それから容積流が計算される走行時間法による超音波クランプオン式流量測定のための方法を実行する装置であって、
該装置は、送信ユニットと、少なくとも2つの入力部を有する少なくとも1つのアレーマルチプレ
クサと、方向切替器と、受信増幅器と、評価ユニットと、制御ユニットと、計算ユニットとから構成され、
第1アレー要素か又は第2アレー要素か又は両方のアレー要素が、前記アレーマルチプレクサを介して前記方向切替器の1つのチャネルと接続されており、
前記方向切替器の第2のチャネルが前記変換器要素と接続されており、
前記方向切替器の両方の残りの端子が、各々、前記送信ユニットと、前記受信増幅器とに接続されており、
前記受信増幅器は、
前記第1の視点又は前記第2の視点に記載の方法により時間差delta_tcを検出し且つ前記計算ユニットへ転送する前記評価ユニットと接続されており、
前記制御ユニットは、
校正係数Kafのための分析段階も
、容積流Qの測定のための稼働段階も
、同じコンポーネントで実現するために、前記方向切替器も前記アレーマルチプレ
クサも、そして前記受信増幅器と前記評価ユニットと前記計算ユニットを管理し、
前記分析段階中、前記方向切替器は、前記送信ユニットが第1音響変換器の端子及び第1音響変換器に割り当てられた変換器要素と接続されており且つ前記受信増幅器が前記アレーマルチプレクサと接続されているように切り替えられており、
前記アレーマルチプレクサは、
第2音響変換器の第1アレー要素か又は第2アレー要素だけが前記受信増幅器と接続されているように制御され、
前記稼働段階中、前記アレーマルチプレクサは、前記制御ユニットにより、前記アレー要素が並列接続されているように切り替えられることを特徴とする装置が提供される。
尚、本願の特許請求の範囲に付記されている図面参照符号は、専ら本発明の理解の容易化のためのものであり、本発明を以下の具体的な実施形態に限定するものではないことを付言する。
【0024】
前記課題は、
上記のように、本発明に従い、以下の方法により解決される。
即ち、測定管上に取り付けられ且つ変換器要素を備えた2つの音響変換器を用いる方法であり、少なくとも1つの変換器要素が少なくとも2つのアレー要素から構成される、超音波クランプオン式流量測定のための方法が、
分析段階において、以下のステップ、即ち、
a.第1音響変換器(1)の変換器要素(3)と、第2音響変換器(2)の第1アレー要素(4a)との間の走行時間t1を測定するステップと、
b.第1音響変換器(1)の変換器要素(3)と、第2音響変換器(2)の第2アレー要素(4b)との間の走行時間t2を測定するステップと、
c.前記走行時間t1及びt2の間の時間差delta_tcを計算するステップと、
を含み、
計算された前記時間差delta_tcを用い、校正係数Kafが検出され、該校正係数Kafは、容積流Qの測定のための後続の稼働段階において、前記測定管の音響影響を補償するために使用されることにより特徴付けられている。
【0025】
代替的な一解決策として、以下の方法がある。
即ち、測定管上に取り付けられ且つ変換器要素を備えた2つの音響変換器を用いる方法であり、少なくとも1つの変換器要素が少なくとも2つのアレー要素から構成される、超音波クランプオン式流量測定のための方法が、分析段階において、少なくとも2つの受信信号(s1、s2)の相互相関関数が計算され、但し、第1受信信号(s1)は、第1音響変換器(1)の変換器要素(3)により送信され且つ第2音響変換器(2)の第1アレー要素(4a)により受信され且つデジタル化された信号であり、第2受信信号(s2)は、第1音響変換器(1)の変換器要素(3)により送信され且つ第2音響変換器(2)の第2アレー要素(4b)により受信され且つデジタル化された信号であり、前記相互相関関数の最大値の時間的な位置が検出され、この時間的な位置は、時間差delta_tcであり、計算された該時間差delta_tcを用い、校正係数Kafが検出され、該校正係数Kafは、容積流Qの測定のための後続の稼働段階において、前記測定管の音響影響を補償するために使用されることにより特徴付けられている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明において、以下の形態が可能である。
(形態1)測定管上に取り付けられ且つ変換器要素を備えた2つの音響変換器を用いる方法であり、少なくとも1つの変換器要素が少なくとも2つのアレー要素から構成される、超音波クランプオン式流量測定のための方法であって、
分析段階において、以下のステップ、即ち、
a.第1音響変換器の変換器要素と、第2音響変換器の第1アレー要素との間の走行時間t1を測定するステップと、
b.第1音響変換器の変換器要素と、第2音響変換器の第2アレー要素との間の走行時間t2を測定するステップと、
c.前記走行時間t1及びt2の間の時間差delta_tcを計算するステップと、
を含み、
計算された前記時間差delta_tcを用い、校正係数Kafが検出され、該校正係数Kafは、容積流Qの測定のための後続の稼働段階において、前記測定管の音響影響を補償するために使用されること。
(形態2)測定管上に取り付けられ且つ変換器要素を備えた2つの音響変換器を用いる方法であり、少なくとも1つの変換器要素が少なくとも2つのアレー要素から構成される、超音波クランプオン式流量測定のための方法であって、
分析段階において、少なくとも2つの受信信号の相互相関関数が計算され、但し、第1受信信号は、第1音響変換器の変換器要素により送信され且つ第2音響変換器の第1アレー要素により受信され且つデジタル化された信号であり、第2受信信号は、第1音響変換器の変換器要素により送信され且つ第2音響変換器の第2アレー要素により受信され且つデジタル化された信号であり、前記相互相関関数の最大値の時間的な位置が検出され、
この時間的な位置は、時間差delta_tcであり、該時間差delta_tcを用い、校正係数Kafが検出され、該校正係数Kafは、容積流Qの測定のための後続の稼働段階において、前記測定管の音響影響を補償するために使用されること。
(形態3)行路差delta_lcの計算が、音響変換器プリトラベル部内の既知の音速度caを前記時間差delta_tcと乗じることにより前記時間差delta_tcを基礎にして行われ、それにより入射角の角度変化delta_alphaがarcsin(delta_lc/delta_s)により得られ、但し、delta_sは、前記アレー要素(4a、4b)の互いの間隔であり、従って前記校正係数Kafは、ca/sin(alpha+delta_alpha)により計算されることが好ましい。
(形態4)前記校正係数Kafは、前記時間差delta_tcを基礎とし、Kaf=Ka/(1+Ka×cos(alpha)×delta_tc/delta_s)の式により計算され、但し、Kaは、音響変換器プリトラベル部内の入射角alphaのサインに対する音響変換器プリトラベル部内の音速度caの比率であり、delta_sは、前記アレー要素の互いの間隔であることが好ましい。
(形態5)前記校正係数Kafは、近似関数fc(delta_tc)を介し、計算された前記時間差delta_tcから検出されることが好ましい。
(形態6)前記近似関数fc(delta_tc)は、前記音響変換器が当該超音波クランプオン式流量測定にとって通常どおり取り付けられている総数Nの管iにおいて各々Kaf_iとdelta_tc_iが測定されることにより、測定前に獲得される総数Nの値ペア(Kaf_i、delta_tc_i)から計算され、但し、Kaf_iの測定は、各々、前記音響変換器がポジションx1又はx2にあるときに走行時間tx1及びtx2が測定されることにより行われ、該走行時間は、各々、第1音響変換器の変換器要素と第2音響変換器の変換器要素との間の走行時間であり、また点x1及びx2は、点x0に対して対称に位置し、Kaf_iは、Kafxi=(x2−x1)/(tx2−tx1)に対して計算され、delta_tc_iの測定は、前記音響変換器がポジションx0にあるときに、形態1による前記ステップa〜cの後に行われることが好ましい。
(形態7)測定管上に取り付けられ且つ変換器要素を備えた2つの音響変換器を用いる超音波クランプオン式流量測定のための方法を実行する装置であって、
該装置は、送信ユニットと、少なくとも2つの入力部を有する少なくとも1つのアレーマルチプレスサと、方向切替器と、受信増幅器と、評価ユニットと、制御ユニットと、計算ユニットとから構成され、
第1アレー要素か又は第2アレー要素か又は両方のアレー要素が、前記アレーマルチプレクサを介して前記方向切替器の1つのチャネルと接続されており、
前記方向切替器の第2のチャネルが前記変換器要素と接続されており、
前記方向切替器の両方の残りの端子が、各々、前記送信ユニットと、前記受信増幅器とに接続されており、
前記受信増幅器は、時間差delta_tcを検出し且つ前記計算ユニットへ転送する前記評価ユニットと接続されており、
前記制御ユニットは、分析段階も稼働段階も同じコンポーネントで実現するために、前記方向切替器も前記アレーマルチプレスサも、そして前記受信増幅器と前記評価ユニットと前記計算ユニットを管理し、
前記分析段階中、前記方向切替器は、前記送信ユニットが第1音響変換器の端子及び第1音響変換器に割り当てられた変換器要素と接続されており且つ前記受信増幅器が前記アレーマルチプレクサと接続されているように切り替えられており、
前記アレーマルチプレクサは、前記変換器要素の第1アレー要素か又は第2アレー要素だけが前記受信増幅器と接続されているように制御され、
前記稼働段階中、前記アレーマルチプレクサは、前記制御ユニットにより、前記アレー要素が並列接続されているように切り替えられること。
(形態8)前記評価ユニットは、アナログデジタル変換器と、バッファメモリと、デジタル相関器とから構成されることが好ましい。
(形態9)前記相関器は、プログラミング可能なデジタル信号プロセッサにより実現されることが好ましい。
(形態10)前記評価ユニットは、時間測定装置と、バッファメモリと、差分構成器とから構成されることが好ましい。
(形態11)前記変換器要素は、少なくとも2つのアレー要素から構成され、アレーマルチプレクサが、第1アレー要素か又は第2アレー要素か又は両方のアレー要素を、前記方向切替器の1つのチャネルと接続することが好ましい。
【0027】
行路差delta_lcの計算が、音響変換器プリトラベル部内の既知の音速度caを前記時間差delta_tcと乗じることにより前記時間差delta_tcを基礎にして行われ、それにより入射角の角度変化delta_alphaがarcsin(delta_lc/delta_s)により得られ、但し、delta_sは、前記アレー要素(4a、4b)の互いの間隔であり、従って前記校正係数Kafは、ca/sin(alpha+delta_alpha)により計算される。
【0028】
前記校正係数Kafは、前記時間差delta_tcを基礎とし、Kaf=Ka/(1+Ka×cos(alpha)×delta_tc/delta_s)の式により計算され、但し、Kaは、音響変換器プリトラベル部内の入射角alphaのサインに対する音響変換器プリトラベル部内の音速度caの比率であり、delta_sは、前記アレー要素(4a、4b)の互いの間隔である。
【0029】
選択的に、前記校正係数Kafは、近似関数fc(delta_tc)を介して時間差delta_tcから計算され、該近似関数fc(delta_tc)は、総数Nの値ペア(Kaf_i、delta_tc_i)から計算され、該値ペア(Kaf_i、delta_tc_i)は、前記音響変換器が当該超音波クランプオン式流量測定にとって通常どおり取り付けられている総数Nの管iにおいて各々Kaf_iとdelta_tc_iが測定されることにより、測定前に獲得され、但し、Kaf_iの測定は、各々、前記音響変換器(2)がポジションx1又はx2にあるときに走行時間tx1及びtx2が測定されることにより行われ、該走行時間は、各々、第1音響変換器(1)の変換器要素(3)と第2音響変換器(2)の変換器要素(4)との間の走行時間であり、また(前記ポジションの)点x1及びx2は、点x0に対して対称に位置し、Kaf_iは、Kafxi=(x2−x1)/(tx2−tx1)に対して計算され、delta_tc_iの測定は、前記音響変換器(2)がポジションx0にあるときに、請求項1による前記ステップa〜cの後に行われる。
【0030】
本方法は、クランプオン式流量測定装置において実行される。
【0031】
本方法を実行するための装置は、送信ユニットと、少なくとも2つの入力部を有する少なくとも1つのアレーマルチプレスサ(アレー多重化装置)と、方向切替器と、受信増幅器と、評価ユニットと、制御ユニットと、計算ユニットとから構成され、アレーマルチプレクサは、第1アレー要素(4a)か又は第2アレー要素(4b)か又は両方のアレー要素を前記受信増幅器と接続し、前記制御ユニットは、前記方向切替器も前記アレーマルチプレクサも、そして時間差delta_tcを決定する前記評価ユニットと、時間差delta_tcから校正係数Kafを検出し且つ稼働段階において使用する前記計算ユニットCALCとを管理することにより特徴付けられている。
【0032】
前記評価ユニットは、アナログデジタル変換器と、バッファメモリと、デジタル相関器(デジタルコリレータ)とから構成される。該デジタル相関器は、一実施形態においてプログラミング可能なデジタル信号プロセッサにより実現される。
【0033】
選択的に、前記評価ユニットは、時間測定装置と、バッファメモリと、差分構成器(Differenzbilder)とから構成される。
【0034】
本方法及び本方法を実行するための本装置の利点は、流量測定装置が基準容積流を用いることなく校正可能なことである。従って音響変換器は、それらの取付ポジションにそのまま置いておくことが可能である。
【0035】
以下、本発明の実施例を図面に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図2】測定管上の音響変換器装置を示す図であり、音響変換器2の変換器要素がアレーとして実施されている。
【
図3】測定管上の音響変換器装置を示す図であり、音響変換器2の変換器要素がアレーとして実施されている。
【
図4】測定管上の音響変換器装置を示す図であり、両方の音響変換器の変換器要素がアレーとして実施されている。
【
図6】本方法を実行するための回路装置を示す図である。
【
図8】評価ユニットの別の実施形態を示す図である。
【
図9】更なるアレーマルチプレクサを備えた、アレーとしての音響変換器の変換器要素の別の実施形態を示す図である。
【実施例】
【0037】
図1の装置は、変換器要素3及び4を備えた両方の音響変換器1及び2と、測定管5とから構成される。それらの変換器要素の放射面が波長に比べて充分に大きい場合には、音伝播は、ほぼ平面波のかたちで行われる。
図1には、そのような平面波面6が図示されている。測定管については、管がその(幾何学的)形状及びその材料特性に関して軸線対称であることが前提とされる。つまり
図1に示された断面において管壁境界部は互いに平面平行である。つまり波が音響変換器1から管を通って音響変換器2へ送信される場合には、両方の音響変換器プリトラベル部(音響変換器の予走行部 Schallwandlervorlauf)内の入射角は同じ大きさである。このことは、変換器要素3から送信された波面が変換器要素4に対して平行に到達することを意味する。さて管壁部のフィルタ作用が、この理想的な特性からずれをもたらすことになる。管壁部の通過時に波の伝播方向に変化が起こり、この変化は、到達する音波を受信する変換器要素4に対して波面が正確に平行には到達しないことにより表われる。
【0038】
本発明の考えは、音波を受信する音響変換器の変換器要素に対する波面の平行性からのこのずれを、受信する変換器要素の(幾何学的)形状に沿って得られる走行時間差に基づいて測定することを基礎としている。そのために、両方の音響変換器の少なくとも一方の変換器要素を、少なくとも2つのアレー要素から成るアレーとして実施することが提案される。
【0039】
図2は、そのような装置を示している。該装置は、
図1に示された装置とは、音響変換器2の変換器要素がアレー要素4a及び4bを有するアレーとして実施されていることにより区別される。この例において波面6は、測定管により、その伝播方向について、波面6が音響変換器2の変換器要素に対して平行には到達しないように変化されている。この際、その効果の図解のために角度変化は誇張して図示されているものとする。通常発生するこの影響は、
図2では見ることのできないほど小さいものである。第1音響変換器1の変換器要素3と、第2音響変換器2のアレー要素4aとの間の走行時間t1と、第1音響変換器1の変換器要素3と、第2音響変換器2のアレー要素4bとの間の走行時間t2とが測定される。受信する変換器要素に対する平行性からの波面のずれは、これらの両方の走行時間の間の時間差delta_tcとして表される:
【0040】
delta_tc=t2−t1 式(5)
【0041】
従って分析段階において、先ずは時間差delta_tcの測定値を獲得するために、両方の走行時間t1及びt2が測定され、時間差delta_tcが計算される。時間差の測定値は、校正係数Kafを検出するために使用される。分析段階に続く稼働段階において流量測定(Durchflussmessung)が行われる。この際、分析段階中に検出された校正係数Kafが、測定管の音響影響を補償するために使用される。そのために式(4)におけるセンサ定数KaがKafにより置き換えられる。
【0042】
稼働段階中には、変換器要素4の両方のアレー要素4a及び4bは電気的に並列接続される。好ましくは変換器要素4の両方のアレー要素は、合わせて変換器要素3と同じ大きさの1つの変換器要素を形成する。その際、並列接続は、変換器要素4が変換器要素3とほぼ同じ音響特性をもつように作用する。
【0043】
本発明の有利な一形態は、時間差delta_tcが、予め走行時間t1及びt2を測定することなく直接的に受信信号から決定されることにより得られる。そのために受信信号s1及びs2の相互相関関数(Kreuzkorrelationsfunktion)が計算され、この際、s1は、第1音響変換器1の変換器要素3により送信され、第2音響変換器2のアレー要素4aにより受信され、デジタル化された信号であり、s2は、第1音響変換器1の変換器要素3により送信され、第2音響変換器2のアレー要素4bにより受信され、デジタル化された信号である。両方の信号s1及びs2が同じ走行時間をもつ場合には、相互相関関数の時間経過の最大値(Maximum)が箇所t=0のところに位置している。両方の信号の走行時間の差は、正にこの差の分だけの相互相関関数の最大値の移動(シフトないしスライド Verschiebung)により示される。つまり時間差delta_tcは、信号s1及びs2の相互相関関数の最大値が決定されることにより決定することができる。
【0044】
本発明の別の有利な一形態を以下に説明する。時間差delta_tcから、音響変換器プリトラベル部内の音速度caを介し、行路差delta_lcが計算される:
【0045】
delta_lc=ca×delta_tc 式(6)
【0046】
音響変換器プリトラベル部内の音速度caは、既知のものとして前提とすることができる。この際、角度変化delta_alphaは、以下の値となる:
【0047】
delta_alpha
=arcsin(delta_lc/delta_s) 式(7)
【0048】
この際、delta_sでは、
図2のような複数のアレー要素の間隔が定義されている。取り付けられた音響変換器の音響校正係数Kafは、式(2)において角度alphaに角度変化delta_alphaを加算することにより得られる:
【0049】
Kaf
=ca/sin(alpha+delta_alpha) 式(8)
【0050】
本発明の別の可能な一形態は、校正係数Kafの計算のための式が、時間差delta_tcを基礎にして、以下の考察から導き出されることにより得られる。
【0051】
図3に示された、長さdelta_x分のアレー要素4aの仮想上の移動(スライド)は、大きさdelta_tx分の変換器要素3とアレー要素4aとの間の音伝播の走行時間変化をもたらす。この際、上記特許文献6に示されているように、delta_txとdelta_xの比率が正に音響校正係数である。そのために音響変換器が実際に管上で移動されるのであれば、それにより音響校正係数Kafxが決定可能であり、該音響校正係数Kafxは、管壁の場合による影響を含んでいる:
【0052】
Kafx=delta_x/delta_tx 式(9)
【0053】
物理的な移動(スライド)を回避するために、それに代わり走行時間t2が測定され、それから仮想上のポジションにおいて変換器要素3とアレー要素4との間の走行時間t20が計算される。走行時間t20は、t2から、音響変換器プリトラベル部を介する区間delta_lに沿った走行時間taを減算することにより得られる:
【0054】
t20=t2−ta 式(10)
【0055】
つまり時間差delta_txは、式(5)を用い、以下の値となる:
【0056】
delta_tx
=t1−t20
=t1−(t2−ta)
=delta_tc+ta 式(11)
【0057】
従って式(9)から、次のようにKafxが得られる:
【0058】
Kafx=delta_x/(delta_tc+ta) 式(12)
【0059】
走行時間taは、区間delta_lと音響変換器プリトラベル部内の音速度caとから、次の式で得られる:
【0060】
ta=delta_l/ca 式(13)
【0061】
この際、delta_l、delta_s、delta_xは、直角三角形を形成する。従ってdelta_xは、角度alphaを介し、delta_sにより置き換えることができる。即ち次の式が当てはまる:
【0062】
delta_x=delta_s/cos(alpha) 式(14)
【0063】
式(13)においてdelta_lが、tan(alpha)とdelta_sとの積により置き換えられる:
【0064】
ta=tan(alpha)×delta_s/ca 式(15)
【0065】
式(14)と式(15)を式(12)に代入すると、次の式が得られる:
【0066】
Kafx
=delta_s/(cos(alpha)(delta_tc+tan(alpha)×delta_s/ca)) 式(16)
【0067】
式(2)によるKaを用い、式(16)は、次のように簡素化される:
【0068】
Kafx
=Ka/(1+Ka×cos(alpha)×delta_tc/delta_s) 式(17)
【0069】
つまり式(17)による校正係数Kafxの測定は、場所的な移動(スライド)delta_xを、音響変換器のパラメータを使用した時間差delta_tcの等価の測定により置き換える。つまり式(17)を用い、校正係数Kafを決定するための式が次のように得られる:
【0070】
Kaf
=Ka/(1+Ka×cos(alpha)×delta_tc/delta_s) 式(18)
【0071】
式(8)及び式(18)は、校正係数Kafを記述する選択的な可能性である。純粋なセンサ特性から得られるセンサ定数Kaに対するKafの違いは、管壁部の影響により発生する。もしも管壁部の影響がまるでない場合には、特別なケースがあることになり、この際にはdelta_tc=0である。その際には、式(8)及び式(18)から各々Kaf=Kaが得られる。
【0072】
式(8)は、式(18)と同じ結果をもたらす。つまりsin(alpha+delta_alpha)がテイラー級数の第1項により近似され、arcsin(delta_lc/delta_s)が独立変数delta_lc/delta_sにより置き換えられることにより、式(8)は式(18)へ変えられる。
【0073】
本発明の別の一形態は、時間差delta_tcと校正係数Kafとの間の関係が実験的に検出されることにより得られる。この際、Kafは、上記特許文献6に記載された方法により決定することができる。該方法は、ラボにおいて、実際の適用において生じうる複数の測定管の充分な選択肢(選択肢の群)に対して適用される。そのために音響変換器は、各々、
図5に示されているように管5上に位置決めされる。そして音響変換器2のポジションx1ないしx2における走行時間tx1及びtx2が測定され、この際、点x1及びx2は、点x0に対して対称に位置している。(即ち点x1とx2の間の間隔の中心に点x0が位置している。従って点x1とx0の間の間隔と点x2とx0の間の間隔は同じである。)ここで、走行時間tx1及びtx2は、各々、音響変換器1の変換器要素3と音響変換器2の変換器要素4との間の走行時間である。この際、変換器要素4の両方のアレー要素4a及び4bは、電気的に並列接続されている。
【0074】
管壁部の影響を既に含む校正係数Kafは、上記特許文献6に記載されているように、次の式で得られる:
【0075】
Kaf=(x2−x1)/(tx2−tx1) 式(19)
【0076】
引き続き、音響変換器2がポジションx0に位置決めされ、時間差delta_tcが測定される。このようにして、検査された管iのために、Kaf_iとdelta_tc_iという値ペアが得られる。校正係数に対して様々に強く影響を及ぼすように選択される総数Nの更なる管部分(管セグメント)のために試行が反復される。このようにして総数Nの値ペア(Kaf_i、delta_tc_i)が得られる。従ってそのために通常の方法の1つにより、Kafをdelta_tcから近似するのに適した近似関数fc(delta_tc)が計算される。
【0077】
従ってその後、稼働段階中に校正係数Kafを測定値delta_tcから計算することができる:
【0078】
Kaf=fc(delta_tc) 式(20)
【0079】
関数fcは、実際において発生するKafの変動範囲(バリエーション範囲)をできるだけ充分に網羅すべきである。そのためには、実験で使用される複数の管の特性の変動範囲が、流量測定装置の実際の適用において存在する複数の管の変動範囲に対応しなくてはならない。音響変換器が、例えば、4mm〜8mmの壁厚の鋼材製(スチール製)及び特殊鋼材製(ステンレススチール製)の管に適している場合には、各々鋼材製及び特殊鋼材製の4mm、6mm、8mmの壁厚の管を検査することができるであろう。異なる弾性特性を有する各々異なる鋼材製箇所或いは特殊鋼材製箇所が検査されることにより、データベースを拡張することができるであろう。
【0080】
本発明の有利な一形態は、
図2に示された変換器要素4が2つのアレー要素ではなく4つのアレー要素から構成されることにより得られる。この際、直接的には隣接しない各々2つのアレー要素を並列接続することができる。値delta_xは、アレーの全幅の四分の一に減少する。この接続状態(配線)により発生する変換器要素の各々は、アレーの幅の3/4をもち、従ってその開口面(アパーチャ面)は、同様に、流量測定のために使用される、相互接続された全てのアレー要素の開口面の3/4の大きさである。
【0081】
アレー要素の総数は、上述の方式で先へ進めることができる。この際、アレー要素の総数が増加した、分析段階において使用される変換器要素は、流量測定のために使用される、相互接続された全てのアレー要素に益々と似てくる。他方では、波面の所定の角度ずれを発生させる時間差delta_tcが減少し、従って時間差の測定精度は、やや低くなる。
【0082】
流量測定装置において走行時間法により使用される両方の音響変換器は、ゼロ点誤差を僅かに保つために、それらの特性に関してできるだけ類似しているべきである。それ故、本発明の有利な一形態は、稼働段階において両方のアレー要素4a及び4bが並列接続され、それにより音響変換器2の変換器要素が大きさに関して音響変換器1の変換器要素に充分に同等化されることにより得られる。更に音響変換器1の変換器要素3をアレーとして実施することも可能である。そのような装置が
図4に示されている。音響変換器1の変換器要素のアレー要素3a及び3bは、分析段階において、そして稼働段階においても並列接続される。それにより音響変換器1及び2の変換器要素の電気機械的特性は、充分に同一である。
【0083】
図4に示された装置では、流量測定中の信号伝達のために、アレー要素3a及び4aだけ又は3b及び4bだけを利用することができる。校正のために必要とされる走行時間t1及びt2は、アレー要素3aと4aの間ないし3aと4bの間、又はアレー要素3bと4aの間ないし3bと4bの間で測定することができる。
【0084】
本発明の更なる可能な種々形態は、複数のアレー要素の総数の上述の増加により得られる。
【0085】
時間差delta_tcの測定は、受信変換器要素に対する平行性からの波面のずれの影響だけを検知すべきである。しかし媒体が管内を流れる場合、音走行時間は流れにも影響を及ぼされる。流れ速度がt1及びt2の測定中に一定であるならば、その際に流れは差に影響を及ぼさない。しかしこのことは、実際には理想的なかたちとして保証されることはない。流れは、実際には多くの場合、みだれた(乱流)状態にある。その際、流れ速度は、平均値の周辺で予期せずに変動する。流れ速度の平均値が一定の場合におけるこの種の予期せぬ変動の影響は、相前後して獲得される時間差の複数の測定値が平均化されることにより排除することができる。しかし流れ速度の平均値が一定でない場合には、この措置は助けにならない。流れ速度の時間線形的な増加は、例えば走行時間t1が走行時間t2よりも系統的により強く流れ速度によって影響を及ぼされることをもたらす。休止時間は、個々の測定の間においてできるだけ小さく保たれるべきである。この措置は、本発明においても適用することができる。t1及びt2の測定の間の時間的間隔がより小さいほど、流れの変化の影響は明らかに小さくなる。
【0086】
既述の方法を実行するために、送信ユニットSと、少なくとも1つのアレーマルチプレスサAMUXと、方向切替器DMUXと、受信増幅器Vと、評価ユニットSPUと、制御ユニットCTRLと、計算ユニットCALCとから構成される装置が提案される(
図6)。アレーマルチプレクサ(アレー多重化装置)AMUXは、アレー要素4aか又はアレー要素4bか又は両方のアレー要素を受信増幅器Vと接続する。制御ユニットCTRLは、方向切替器DMUXもアレーマルチプレクサAMUXも、そして評価ユニットSPUと計算ユニットCALCを管理する。
【0087】
分析段階中、方向切替器DMUXは、送信ユニットSが音響変換器1の端子(ターミナル)及び音響変換器1に付属の変換器要素と接続されており且つ受信増幅器VがアレーマルチプレクサAMUXと接続されているように切り替えられている。アレーマルチプレクサAMUXは、音響変換器2のアレー要素4aか又はアレー要素4bだけが受信増幅器Vと接続されているように制御される。
【0088】
受信増幅器Vに接続された評価ユニットSPUは、検出すべき時間差delta_tcを決定する。評価ユニットSPU(
図7)は、アナログデジタル変換器ADCと、バッファメモリMEMと、相関器(コリレータ)KORRとから構成される。delta_tcの測定のために第1ステップでは、アレー要素4aがアレーマルチプレクサAMUXと受信増幅器Vを介して評価ユニットSPUと接続され、送信信号が送信ユニットSにより発生される。アレー要素4aにおいて発生した受信信号は、評価ユニットSPUにおいてアナログデジタル変換器ADCによりデジタル化され、バッファメモリMEM内に保存される。第2ステップでは、アレー要素4bが受信増幅器Vを介して評価ユニットSPUと接続されており且つ更なる送信信号が送信ユニットSにより発生されるように、制御ユニットCTRLによりアレーマルチプレクサAMUXが切り替えられる。アレー要素4bにおいて発生した受信信号は、評価ユニットSPUにおいてアナログデジタル変換器ADCによりデジタル化され、同様にバッファメモリMEM内に保存される。デジタル化されてバッファメモリMEM内に保存されたアレー要素4a及び4bの受信信号から、デジタル相互相関器により時間差delta_tcが直接的に決定される。このデジタル相関器KORRは、例えばプログラミング可能なデジタル信号プロセッサ(DSP)により実現される。
【0089】
計算ユニットCALCにおいて、式(8)又は式(18)による校正係数Kafが、相関器KORRにおいて決定された時間差delta_tcから計算される。
【0090】
別の一実施形態(
図8)において評価ユニットSPUは、極めて高い分解能を有する時間測定装置TDC、例えば所謂「Time to Digital Converter」と、バッファメモリMEMとから構成される。この形態では、各々の受信信号からデジタル化を用いることなく直接的に走行時間t1ないしt2が測定され、バッファメモリMEM内に保存される。両方の走行時間t1及びt2が測定された後、それらの差が差分構成器(Differenzbilder)MINUSにより算出され、校正係数Kafを決定するために計算ユニットCALCへ転送される。
【0091】
稼働段階においてアレーマルチプレクサAMUXは、制御ユニットCTRLにより、アレー要素4a及び4bが並列接続されているように切り替えられる。方向切替器DMUXにより、交互に各々、音響変換器1が送信器として且つ音響変換器2が受信器として、或いは音響変換器2が送信器として且つ音響変換器1が受信器として稼働される。そして評価ユニットSPUは、流れにより生じる走行時間差Δtを測定し、流体走行時間tflを測定し、それから計算ユニットCALCにおいて式(4)により流量を決定するために使用され、この際、センサ定数Kaは、分析段階において検出された校正係数Kafにより置き換えられる。
【0092】
別の一形態(
図9)では、音響変換器1の変換器要素が同様にアレーとして実施され、音響変換器1の端子(ターミナル)と方向切替器DMUXとの間に別のアレーマルチプレクサAMUX2が挿入される。稼働段階において両方のアレーマルチプレクサAMUX及びAMUX2は、アレー要素3a及び3bが並列接続されておりアレー要素4a及び4bも並列接続されているように制御される。分析段階において両方のアレーマルチプレクサの1つは、付属のアレー要素が並列接続されているように制御され、他方のアレーマルチプレクサは、受信増幅器Vと評価ユニットSPUとのアレー要素(複数)の連続した接続を実現する。
【0093】
別の一形態では、変換器要素3及び4の少なくとも1つが2つよりも多くのアレー要素から構成される。その際、
図6及び
図9による装置の付属のアレーマルチプレクサは、アレー要素と同数の入力部を有する。分析段階において各々のアレーマルチプレクサは、第1ステップで、隣接していない少なくとも2つのアレー要素が並列接続されており、それらの受信信号が評価されるように制御される。第2ステップでは、隣接していない残りのアレー要素が並列接続され、それらの受信信号が評価される。
【符号の説明】
【0094】
1 音響変換器
2 音響変換器
3 変換器要素
3a アレー要素
3b アレー要素
4 変換器要素
4a アレー要素
4b アレー要素
5 測定管
6 平面波面
S 送信ユニット
AMUX アレーマルチプレクサ
AMUX2 アレーマルチプレクサ
DMUX 方向切替器
V 受信増幅器
SPU 評価ユニット
CTRL 制御ユニット
CALC 計算ユニット
ADC アナログデジタル変換器
MEM バッファメモリ
KORR 相関器(コリレータ)
TDC 時間測定装置
MINUS 差分構成器