特許第6043913号(P6043913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6043913
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】遊技機
(51)【国際特許分類】
   A63F 7/02 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   A63F7/02 304D
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-141117(P2015-141117)
(22)【出願日】2015年7月15日
【審査請求日】2015年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】599104196
【氏名又は名称】株式会社サンセイアールアンドディ
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100188226
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 俊達
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】宮永 真
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 忠
【審査官】 山本 一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−223751(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3026023(JP,U)
【文献】 特開2003−102289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材に演出用シート体がロール状に巻き取られた待機状態と、前記芯材から前記演出用シート体が繰り出されて広げられた演出状態とに変化する可動演出部材を備えた遊技機であって、
前記可動演出部材には、
前記演出用シート体の巻取方向における一端部を固定する固定ベースと、
前記演出用シート体の前記巻取方向における他端部から延設されて前記芯材に固定された樹脂シート部と、
前記待機状態では、前記芯材を前記固定ベースに近接配置し、前記待機状態から前記演出状態へ移行するときに前記芯材を巻き取り方向とは反対方向に回転させながら前記芯材を前記固定ベースから離間させる一方、前記演出状態から前記待機状態へ移行するときに前記芯材を巻き取り方向に回転させながら前記固定ベースに接近させる芯材駆動部と、が設けられ
前記樹脂シート部は、短尺シートと、前記短尺シートとの間に前記演出用シート体の他端部を挟み且つ前記短尺シートよりも前記芯材側に長くなった長尺シートとを備え、
前記長尺シートが前記芯材に固定されていることを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記樹脂シート部は、前記演出用シート体の他端部を挟む1対の樹脂シートを縫い合わせて形成されたことを特徴とする請求項1に記載の遊技機。
【請求項3】
前記芯材は、円筒における周方向一部を切除してなる断面円弧状の殻部にて円形シャフトを外側から覆った構造をなし、
前記樹脂シート部は、前記円形シャフトと前記殻部との間に挟まれて固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の遊技機。
【請求項4】
前記芯材駆動部は、
前記芯材を回転可能に支持する芯材支持部材と、
前記芯材支持部材を前記固定ベースに対して接離させる駆動源と、
前記芯材支持部材に対して前記芯材を前記巻き取り方向に付勢する芯材回転付勢手段と、を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のうち何れか1の請求項に記載の遊技機。
【請求項5】
前記演出用シート体が、網体であることを特徴とする請求項1乃至4のうち何れか1の請求項に記載の遊技機。
【請求項6】
前記網体には、前記芯材の軸方向で網地を形成する糸と糸の間の間隔が狭くなって網の目の面積が小さくなった小網目部が設けられ、
前記芯材のうち前記小網目部を巻き取る部分が、前記網体のうち前記小網目部以外の部分を巻き取る部分よりも大径になっていることを特徴とする請求項5に記載の遊技機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯材に演出用シート体がロール状に巻き取られた待機状態と、芯材から演出用シート体が繰り出されて広げられた演出状態とに変化する可動演出部材を備えた遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の遊技機として、紙を巻き取った状態と、紙を広げた状態とに変化する巻物を模した可動演出部材を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−45953号公報(段落[0079])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の巻物を模した可動演出部材では、巻物の芯材への紙の固定強度が弱いという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、演出用シート体の芯材への固定強度を向上させることが可能な遊技機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明は、芯材に演出用シート体がロール状に巻き取られた待機状態と、前記芯材から前記演出用シート体が繰り出されて広げられた演出状態とに変化する可動演出部材を備えた遊技機であって、前記可動演出部材には、前記演出用シート体の巻取方向における一端部を固定する固定ベースと、前記演出用シート体の前記巻取方向における他端部から延設されて前記芯材に固定された樹脂シート部と、前記待機状態では、前記芯材を前記固定ベースに近接配置し、前記待機状態から前記演出状態へ移行するときに前記芯材を巻き取り方向とは反対方向に回転させながら前記芯材を前記固定ベースから離間させる一方、前記演出状態から前記待機状態へ移行するときに前記芯材を巻き取り方向に回転させながら前記固定ベースに接近させる芯材駆動部と、が設けられ、前記樹脂シート部は、短尺シートと、前記短尺シートとの間に前記演出用シート体の他端部を挟み且つ前記短尺シートよりも前記芯材側に長くなった長尺シートとを備え、前記長尺シートが前記芯材に固定されていることを特徴とする遊技機である。
【0008】
請求項の発明は、前記樹脂シート部は、前記演出用シート体の他端部を挟む1対の樹脂シートを縫い合わせて形成されたことを特徴とする請求項1に記載の遊技機である。
【0009】
請求項の発明は、前記芯材は、円筒における周方向一部を切除してなる断面円弧状の殻部にて円形シャフトを外側から覆った構造をなし、前記樹脂シート部は、前記円形シャフトと前記殻部との間に挟まれて固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の遊技機である。
【0010】
請求項の発明は、前記芯材駆動部は、前記芯材を回転可能に支持する芯材支持部材と、前記芯材支持部材を前記固定ベースに対して接離させる駆動源と、前記芯材支持部材に対して前記芯材を前記巻き取り方向に付勢する芯材回転付勢手段と、を備えたことを特徴とする請求項1乃至のうち何れか1の請求項に記載の遊技機である。
【0011】
請求項の発明は、前記演出用シート体が、網体であることを特徴とする請求項1乃至のうち何れか1の請求項に記載の遊技機である。
【0012】
請求項の発明は、前記網体には、前記芯材の軸方向で網地を形成する糸と糸の間の間隔が狭くなって網の目の面積が小さくなった小網目部が設けられ、前記芯材のうち前記小網目部を巻き取る部分が、前記網体のうち前記小網目部以外の部分を巻き取る部分よりも大径になっていることを特徴とする請求項に記載の遊技機である。
【発明の効果】
【0013】
[請求項1の発明]
本発明によれば、演出用シート体が樹脂シート部を介して芯材に固定されるので、演出用シート体を直に芯材に固定する場合と比較して、演出用シート体の芯材への固定強度を向上させることが可能となる。
【0014】
また、本発明では、樹脂シート部に、演出用シート体の他端部を挟む短尺シート及び長尺シートを備えて、長尺シートを芯材に固定したので、演出用シート体と芯材との間を連絡する樹脂シート部に必要なシートの量を少なくすることが可能となる。
【0015】
[請求項の発明]
本発明では、演出用シート体の他端部を挟む1対の樹脂シートを縫い合わせて樹脂シート部が形成されるので、演出用シート体と樹脂シート部との間の固定の安定化が図られる。
【0016】
[請求項の発明]
本発明では、樹脂シート部が円形シャフトと殻部の間に挟まれて芯材に固定されるので、樹脂シート部と芯材との間の固定の安定化が図られる。
【0017】
[請求項の発明]
本発明によれば、演出用シート体を巻き取るときの演出用シート体の弛みを抑制して、演出用シート体の巻き取りをスムーズに行うことが可能となる。
【0018】
[請求項の発明]
本発明によれば、遊技者に演出用シート体の向こう側を視認させることが可能となる。
【0019】
[請求項の発明]
本発明では、芯材のうち網体の小網目部を巻き取る部分が、網体における小網目部以外の部分を巻き取る部分よりも大径になっているので、糸同士の間隔が密になった小網目部の巻き残しが抑えられ、網体の巻き取りをスムーズに行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る遊技機の正面図
図2】遊技盤の正面図
図3】機構枠の正面図
図4】通常状態の可動役物装置の正面図
図5】通常状態の可動役物装置の前方斜視図
図6】通常状態の可動役物装置の後方斜視図
図7】落下状態の可動役物装置の正面図
図8】落下状態の可動役物装置の前方斜視図
図9】樹脂シート部及び芯材の側断面図
図10図9におけるA−A断面図
図11】芯材及び網体の正面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明をパチンコ遊技機に適用した一実施形態を、図1図11に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態の遊技機10は、前面枠10Zを前面に備え、その前面枠10Zに形成されたガラス窓10Wを通して、図2に示す遊技盤11の前面に形成された遊技領域R1が視認可能になっている。遊技盤11の後側には、図3に示す機構枠17が取り付けられ、その機構枠17には種々の装置が取り付けられている。
【0022】
図1に示すように、前面枠10Zのうちガラス窓10Wより下方には、上皿26と下皿27が上下2段にして設けられ、下皿27の右側には、操作ハンドル28が備えられている。そして、操作ハンドル28を回動操作すると、上皿26に収容された遊技球が遊技領域R1に向けて弾き出される。
【0023】
図2に示すように、遊技盤11の前面からは、遊技領域R1を包囲するガイドレール12が突出している。なお、ガイドレール12は、遊技盤11の外縁部を周回するように配置され、ガイドレール12の下端部には、下方に膨むように湾曲し、流下する遊技球を受け止めて遊技領域R1の中央へと案内可能な湾曲ガイド部12Gが備えられている。
【0024】
遊技盤11のうち遊技領域R1の中央には、表示開口11Hが貫通形成されており、その表示開口11Hに遊技盤11の裏面側から表示装置13が対向している。表示装置13は、例えば、液晶モジュールで構成され、その前面が遊技に関する演出を行う表示画面13Gとなっている。なお、詳細には、表示画面13Gは、機構枠17(図3参照)の後側から機構枠17の開口部17Kと遊技盤11の表示開口11Hを通して遊技者に視認可能となっている。
【0025】
遊技盤11の前面中央には、表示画面13Gを囲むように表示装飾枠23が取り付けられている。表示装飾枠23は、遊技盤11の前面側から表示開口11Hに嵌め込まれて、表示開口11Hの内側に張り出すと共に、遊技盤11の前面から突出している。そして、遊技領域R1を流下する遊技球が、表示装飾枠23の前側を通過して表示装飾枠23の内側に進入しないように構成されている。
【0026】
表示装飾枠23の右側には、始動ゲート18が設けられている。また、表示装飾枠23の右下には、大入賞口15と複数のサイド入賞口21が設けられている。なお、複数のサイド入賞口21は、始動ゲート18の下方且つ大入賞口15の右側に配置されている。
【0027】
表示装飾枠23の横方向中央の下方には、第1の始動入賞口14Aと第2の始動入賞口14Bとが上下2段に並べて配置され、それら始動入賞口14A,14Bの左側には、ガイドレール12の湾曲ガイド部12Gに沿って一般入賞口20が複数設けられている。
【0028】
遊技領域R1には、各入賞口14A,14B,15,20,21とは別に、特典(賞球)を付与することなく遊技領域R1の外側に排出するためのアウト口16が設けられている。また、遊技領域R1には、遊技球の流下方向をランダムに変更するための障害釘が多数植設されている。なお、本実施形態では、アウト口16として、遊技領域R1の下端部中央に配置された中央アウト口16Aと、左側一般入賞口20の左側に配置されたサイドアウト口16Bの2種類が設けられている。
【0029】
次に、遊技領域R1の各部位についてさらに詳説する。一般入賞口20及びサイド入賞口21は、所謂、ポケット構造をなし、遊技球が1つずつ入ることが可能な大きさで上方に開口している。一般入賞口20又はサイド入賞口21へ入球(入賞)すると、その遊技球は遊技盤11の裏側に取り込まれ、例えば、1個の入球につき10個の賞球が上皿26に払い出される。
【0030】
始動ゲート18は、遊技球が潜って通過可能な門形構造をなしている。始動ゲート18を遊技球が通過すると、普通図柄の当否判定が行われる。
【0031】
第1の始動入賞口14Aは、ポケット構造をなして遊技球が1つずつ入球可能な大きさで上方に開口している。第2の始動入賞口14Bは、遊技球が1つずつ入球可能な大きさで前方に開口し、回動扉14Tによって開閉される。回動扉14Tは、通常は、閉状態となっていて、上述した普通図柄の当否判定が当りになると、開状態となる。第1と第2の始動入賞口14A,14Bに遊技球が入球(入賞)すると、例えば、1個の入球につき4個の賞球が上皿26に払い出されると共に、特別図柄の当否判定が行われる。そして、特別図柄の当否判定が当りになると、通常の遊技状態から大当り遊技状態へ移行し、大当り遊技が実行される。
【0032】
大入賞口15は、横長矩形状をなし、通常の遊技状態では、可動扉15Tにて閉塞されている。そして、遊技状態が大当たり遊技状態となって大当り遊技が実行されると、可動扉15Tが所定期間に亘って前側に倒される。すると、大入賞口15が前方に開放し、可動扉15Tを案内にして大入賞口15に多くの遊技球が入賞可能となる。大入賞口15に遊技球が入賞すると、例えば、1個の入賞につき15個の遊技球が上皿26に払い出される。
【0033】
なお、各入賞口14A,14B,15,20,21及びアウト口16に取り込まれた遊技球は、球排出ダクト80(図3参照)を介して遊技機10の外部に排出され、図示しない球回収装置に回収される。
【0034】
ところで、図3に示すように、本実施形態の遊技機10は、可動演出部材110の動作により遊技に関する演出を行う可動役物装置110Sを機構枠17に固定して備えている。可動演出部材110は、表示画面13Gの上部前方に寄せて配置される通常状態(図4参照)と、表示画面13Gの全体を前側から覆うように配置される落下状態(図7参照)とに変化する。以下、可動役物装置110Sについて詳説する。
【0035】
図4に示すように、可動役物装置110Sは、上下方向に直線状に延びた1対の昇降ガイド132,132を間隔をあけて横並びにして備え、それら1対の昇降ガイド部材132,132の間に可動演出部材110を差し渡した構造になっている。なお、1対の昇降ガイド部材132,132は、表示画面13Gを左右方向に挟むように機構枠17(図3参照)の左右の辺部に固定され、遊技盤11及び表示装飾枠23(図2参照)の後側に隠れるように配置されている。
【0036】
図4及び図5に示すように、1対の昇降ガイド部材132,132のうち一方の昇降ガイド部材132には、可動演出部材110を上下動させるための昇降機構130が備えられている。本実施形態の例では、昇降機構130は、ボール螺子機構によって構成されていて、昇降ガイド部材132内で上下方向に延在するボール螺子133と、ボール螺子133と螺合した図示しないボールナットと、ボール螺子133を回転駆動する昇降用モータ134と、を備えている。
【0037】
なお、詳細には、図6に示すように、昇降ガイド部材132には、第1可動部材110が通常状態のときに、第1可動部材110の下方への移動を許容する落下許容位置と、可動演出部材110の下方への移動を禁止する落下禁止位置と、に配置される落下用ストッパ139が備えられていて、落下用ストッパ139が落下禁止位置に配置されているときには、上述のボールナットがボール螺子133の下端寄り位置に配置される。そして、落下用ストッパ139が落下許容位置に配置されることにより、第1可動部材110が自重により落下する。
【0038】
図6及び図7に示すように、可動演出部材110は、前後方向にずれて配置された前側落下部材111と後側落下部材121とがシート状の網体141(本発明の「演出用シート体に相当する。)を介して連絡された構造になっていて、通常状態では、前側落下部材111と後側落下部材121とは、前後に重ねられて、表示画面13Gの上部前方に配置されている。
【0039】
図6及び図8に示すように、前側落下部材111は、上方から見た形状が後側に開放したコの字状のフレーム部112と、フレーム部112の前面に固定された装飾プレート113と、を備え、フレーム部112のうち左右方向で対向する1対の支持対向壁112T,112T(図6及び図8には、一方の支持対向壁112Tのみが示されている。)が、昇降ガイド部材132,132に上下動可能に支持されている。1対の支持対向壁112T,112Tのうち一方の支持対向壁112Tには、昇降ガイド132に取り付けられた前側スライドレール135(図4参照)を上下動するスライダ136が固定されていて、そのスライダ136が、上述したボール螺子133(図5参照)に螺合する図示しないボールナットによって下方から受け止められている。
【0040】
図6に示すように、後側落下部材121は、前後方向で対向した前面壁121A及び後面壁121Bの上端部同士が天井壁121Cで連絡された構造になっていて、前面壁121Aと後面壁121Bの側部が1対の昇降ガイド部材132,132に上下動可能に支持されている。詳細には、前面壁121Aは後面壁121Bよりも横長に形成されていて、後面壁121Bは、前面壁121Aの横方向の一端部(図6では左側の端部)に重ねて配置されている。そして、後面壁121Bの横方向の一端部と前面壁121Aの横方向の他端部とがそれぞれ、昇降ガイド部材132,132に上下動可能に支持されている。
【0041】
後側落下部材121は、昇降ガイド部材132に対し上下動自在に構成されていて、通常は、前側落下部材111により落下が防止されている。具体的には、図8に示すように、前側落下部材111の支持対向壁112Tの上端部には、後側落下部材121の前面壁121Aに下方から当接可能な当接部115が設けられていて、前側落下部材111の当接部115が後側落下部材121の前面壁121Aを下方から受け止めることで、後側落下部材121の落下が防止されている。
【0042】
また、後側落下部材121は、前側落下部材111が下方へ移動したときに、昇降ガイド部材132に備えられた受止ストッパ137(図6参照)によって落下が防止される。具体的には、後側落下部材121の後壁121Bの側部は、昇降ガイド部材132に後側から重ねられ、昇降ガイド部材132の後面に形成された後側スライドレール138に支持されている。受止ストッパ137は、昇降ガイド部材132の後面から突出し、後側落下部材121の後壁121Bに下方から当接する。
【0043】
このように、本実施形態では、後側落下部材121の可動ストロークは、前側落下部材111の可動ストロークよりも小さくなっている。ここで、前側落下部材111の可動ストロークの上端及び下端を「前側上端位置」及び「前側下端位置」と称し、後側落下部材121の可動ストロークの上端及び下端を「後側上端位置」及び「後側下端位置」と称することにすると、可動演出部材110は、前側落下部材111が前側上端位置に配置され且つ後側落下部材121が後側上端位置に配置されたときに通常状態(図4参照)となり、前側落下部材111が前側下端位置に配置され且つ後側落下部材121が後側下端位置に配置されたときに落下状態(図7参照)となる。
【0044】
図11に示すように、網体141は、複数の糸142を格子状に張り巡らせて網地が構成された構造になっていて、四角形状の空洞部である網の目143を有している。また、図6及び図9に示すように、網体141は、前側落下部材111の後面側で前側落下部材111に取り付けられた芯材150にロール状に巻き取られる。芯材150は、前側落下部材111における1対の支持対向壁112T,112Tの間に回転可能に支持されている。なお、図6では、網体141が省略して示されている。
【0045】
網体141の巻き取り方向における芯材150と反対側の端部は、後側落下部材121に固定されている。そして、網体141は、前側落下部材111が下方へ移動して後側落下部材121から分離したときに、芯材150から繰り出されて、表示画面13Gの前方を覆うように広げられる。ここで、本実施形態では、図9及び図10に示すように、芯材150の内部に、芯材150を巻き取り方向へ回転付勢する回転付勢バネ158が備えられていて、前側落下部材111が上方へ移動すると、芯材150が網体141を自動的に巻き取るようになっている。なお、本実施形態では、網体141は、天井壁121Cの上面に固定されて前面壁121Aを前側から覆っている。
【0046】
次に、可動役物装置110Sの動作について説明する。可動役物装置110Sは、常には、可動演出部材110を通常状態に保持し、所定の落下演出条件が成立すると、後側落下部材121と前側落下部材111を落下させる。具体的には、落下演出条件が成立すると、落下用ストッパ139(図6参照)が落下許容位置へ移動し、後側落下部材121及び前側落下部材111が昇降ガイド部材132に沿って一体に下降する。後側落下部材121は、下降の途中で昇降ガイド部材132に備えられた受止ストッパ137にて下方から受け止められ、後側下端位置に位置決めされる。後側落下部材121が後側下端位置に位置決めされると、前側落下部材111が後側落下部材121から分離して下降し、後側落下部材121と前側落下部材111との間の間隔が広がっていく。
【0047】
前側落下部材111が後側落下部材121から分離して下降すると、芯材150に巻き取られていた網体141が芯材150から繰り出されて、後側落下部材121と前側落下部材111との間に広げられる。そして、前側落下部材111が前側下端位置に配置されると、可動演出部材110が落下状態(図7参照)となる。
【0048】
可動演出部材110が落下状態となった後、所定の落下演出終了条件が成立すると、可動役物装置110Sは、昇降用モータ134を駆動して前側落下部材111を上昇させる。前側落下部材111は上昇の途中で後側落下部材121を押し上げて後側落下部材121と一体に移動し、前側落下部材111と後側落下部材121とが前側上端位置と後側上端位置とに配置されると、可動演出部材110が通常状態(図4参照)へと戻る。このとき、網体141は、回転付勢バネ158の付勢力によって芯材150に巻き取られる。第1可動部材110が通常状態になると、落下用ストッパ139が落下禁止位置に配置され、昇降用モータ134がボールナット(図示せず)をボール螺子133の下端寄り位置まで下降させる。可動役物装置110Sの動作に関する説明は以上である。
【0049】
ここで、網体141は、上述の如く、複数の糸142が間隔をあけて配置された構成になっているので、網体141を直に芯材150に固定すると、網体141のうち糸142が配置されている部分のみが芯材150に固定されることとなり、網体141を芯材150に安定的に固定することが困難となる。この問題を解決すべく、本実施形態の遊技機10では、以下に説明するように、網体141と芯材150との間の固定に工夫が施されている。
【0050】
即ち、図9に示すように、網体141のうち巻き取り方向における芯材150側の端部からは樹脂シート部170が延設され、この樹脂シート部170が芯材150に固定されている。樹脂シート部170は、網体141と略等幅をなして巻き取り方向の長さが異なった長尺シート171と短尺シート172とで網体141を厚さ方向に挟んでなる。詳細には、樹脂シート部170は、網体141の厚さ方向の一方側に1枚の長尺シート171と1枚の短尺シート172とを備えると共に、他方側に1枚の短尺シート172を備えている。そして、それら1枚の長尺シート171と2枚の短尺シート172とが網体141と共に縫合糸173で縫い付けられることで、樹脂シート部170が網体141に固定されている。
【0051】
短尺シート172は、網体141における芯材150側の端縁部に重ねられる。また、長尺シート171は、網体141の芯材150側の端縁部から芯材150側へ延びて芯材150に固定されている。長尺シート171と芯材150との固定態様は以下のようになっている。即ち、芯材150は、円形シャフト151の外周面を半円筒状の殻部154で覆った構造になっていて、長尺シート171は、円形シャフト151と殻部154との間に挟まれて固定されている。
【0052】
具体的には、図10に示すように、円形シャフト151は、軸方向全体に亘って等径なシャフトコア152と、シャフトコア152を外側から覆う筒状ケース153と、で構成され、筒状ケース153には、軸方向の一端側(図10の右側)を段付き状に拡径する段差部153Dが設けられている。筒状ケース153のうち段差部153Dより他端側の小径筒部153Aの内径とシャフトコア152の外形とが略同一となっている。そして、筒状ケース153のうち段差部153Dより一端側の大径筒部153Bとシャフトコア152との間に形成された環状の隙間に、上述した回転付勢バネ158が収容されている
【0053】
また、殻部154は、図10に示すように、筒状ケース153の小径筒部153Aを外側から覆う小径殻部154Aと、大径筒部153Bを外側から覆う大径殻部154Bと、で構成されていて、小径筒部153A及び大径筒部153Bと、小径殻部154A及び大径殻部154Bとの間に、樹脂シート部170(詳細には、長尺シート171)が挟まれている。
【0054】
なお、詳細には、小径殻部154Aは、小径筒部153Aよりも他端側(図10の左側)に短くなっていて、小径殻部154Aの一端部は段付き状に拡径されている。他方、大径殻部154Bは、大径筒部153Bよりも他端側(図10の左側)に長くなっていて、大径殻部154Bの他端部は段付き状に縮径されている。そして、小径殻部154Aの拡径部分の内側に大径殻部154Bの縮径部分が収まることで、殻部154に筒状ケース153と同様の段差が形成され、芯材150に小径部150Aと大径部150Bとが形成されている。
【0055】
ところで、本実施形態では、図11に示すように、網体141の幅方向の一方側(図11の右側)では、幅方向で隣り合う糸142,142同士の間隔が狭くなっていて、網体141の幅方向一方側に備えられた網の目143の面積は、網体141の幅方向他方側に備えられた網の目143の面積よりも小さくなっている。即ち、網体141の幅方向における一方側部分には、網の目143の面積が比較的小さい小網目部141Bが形成され、他方側部分には、網の目143の面積が比較的大きい大網目部141Aが形成されている。
【0056】
ここで、網体141の小網目部141Bでは、大網目部141Aに比べて単位面積当たりの糸142の本数が多くなるため、網体141を巻き取るときに絡まり易くなっている。従って、本実施形態では、網体141を巻き取る際に小網目部141Bで弛みが生じ難くするため、網体141の小網目部141Bが芯材150の大径部150Bに巻き取られ、大網目部141Aが芯材150の小径部150Aに巻き取られるように、網体141と芯材150が配置されている。
【0057】
以上が、可動役物装置110Sに関する説明である。なお、本実施形態では、可動演出部材110が本発明の「可動演出部材」に相当し、後側落下部材121が「固定ベース」に相当する。また、前側落下部材111、昇降用モータ134及び回転付勢バネ158がそれぞれ、本発明の「芯材支持部材」、「駆動源」及び「芯材回転付勢手段」に相当し、前側落下部材111、昇降機構130及び回転付勢バネ158によって本発明の「芯材回転付勢手段」が構成されている。
【0058】
次に、本実施形態の遊技機10の作用効果について説明する。本実施形態の遊技機10では、可動演出部材110は、通常は、図4に示す通常状態に保持されていて、所定の落下演出条件が成立すると、図7に示す落下状態へと変化する。具体的には、落下演出条件が成立すると、可動演出部材110を構成する前側落下部材111と後側落下部材121とが一体になって下降し、後側落下部材121が後側下端位置に配置されると、前側落下部材111が後側落下部材121から分離して前側下端位置まで下降し、可動演出部材110が落下状態となる。前側落下部材111が後側落下部材121から分離すると、芯材150に巻き取られていた網体141が両落下部材111,121の間に繰り広げられる。
【0059】
可動演出部材110が落下状態となった後、所定の落下演出終了条件が成立すると、前側落下部材111が上昇し、その上昇の途中で後側落下部材121を押し上げる。そして、前側落下部材121と後側落下部材111とが前側上端位置と後側上端位置とに配置されて、可動演出部材110が通常状態へと戻る。前側落下部材111が上昇すると、網体141は、回転付勢バネ158の付勢力によって芯材150に巻き取られる。
【0060】
ここで、本実施形態の遊技機10によれば、網体141が樹脂シート部170を介して芯材150に固定されているので、網体141を直に芯材150に固定する場合と比較して、網体141の芯材150への固定強度を向上させることが可能となる。しかも、樹脂シート部170は、長尺シート171と短尺シート172とを縫い合わせて形成されているので、網体141と樹脂シート部170との間の固定の安定化が図られる。さらに、樹脂シート部170は、芯材150を構成する円形シャフト151と殻部154の間に挟まれることで芯材150に固定されるので、樹脂シート部170と芯材150との間の固定の安定化が図られる。
【0061】
また、本実施形態では、芯材を巻き取り方向に回転付勢する回転付勢バネ158を備えたので、網体141を巻き取るときの網体141の弛みを抑制して、網体の巻き取りをスムーズに行うことが可能となる。さらに、本実施形態では、芯材150のうち網体141の小網目部141Bを巻き取る部分が、大網目部141Aを巻き取る部分よりも大径になっているので、糸142同士の間隔が密になった小網目部141Bの巻き残しが抑えられ、網体141の巻き取りをスムーズに行うことが可能となる。
【0062】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0063】
(1)上記実施形態では、本発明をパチンコ遊技機に適用した例を示したが、アレンジボールやスロットマシンに適用してもよい。
【0064】
(2)上記実施形態では、水平方向に延びた芯材150を上下方向に移動させて網体141を巻き取ったり繰り出したりする構成であったが、鉛直方向に延びた芯材150を水平方向に移動させて網体141を巻き取ったり繰り出したりする構成としてもよい。
【0065】
(3)上記実施形態では、樹脂シート部170を構成する樹脂シートが、1枚の長尺シート171と2枚の短尺シート172であったが、1枚の長尺シート171と1枚の短尺シート172であってもよいし、複数枚の長尺シート171と複数枚の短尺シート172であってもよい。
【0066】
(4)上記実施形態では、樹脂シート部170に、網体141を長尺シート171と短尺シート172で挟んで、長尺シート171を芯材150に固定した構成であったが、網体141を1対の長尺シート171で挟んで、それら1対の長尺シート171を芯材150に固定した構成としてもよい。なお、上記実施形態によれば、樹脂シート部170に必要なシートの量を少なくすることが可能となる。
【0067】
(5)上記実施形態において、樹脂シート部170を、網体141を厚さ方向で挟む複数の樹脂シート(長尺シート171と短尺シート172)を接着又は溶着した構成としてもよい。
【0068】
(6)上記実施形態では、本発明に係る「演出用シート体」が、網体であったが、芯材への巻き取りと芯材からの繰り出しができるものであれば網体以外であってもよく、例えば、布、紙、薄膜フィルム等であってもよいし、本発明の「固定ベース」と「樹脂シート部」とを繋ぐ糸や紐が複数設けられて全体がシート状になったものであってもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 遊技機
110 可動演出部材
111 前側落下部材(芯材支持部材)
121 後側落下部材(固定ベース)
130 昇降機構
135 昇降用モータ(駆動源)
141 網体(演出用シート体)
141A 大網目部
141B 小網目部
150 芯材
150A 小径部
150B 大径部
151 円形シャフト
154 殻部
158 回転付勢バネ(芯材回転付勢手段)
170 樹脂シート部
171 長尺シート
172 短尺シート
【要約】      (修正有)
【課題】演出用シート体の芯材への固定強度を向上させることが可能な遊技機を提供する。
【解決手段】遊技機は、芯材150に網体141がロール状に巻き取られた待機状態と、芯材150から網体141が繰り出されて広げられた演出状態とに変化する可動演出部材を備えている。この可動演出部材は、網体141の巻取方向の一端部を固定する後側落下部材と、網体141の巻取方向側の端部から延設されて芯材150に固定された樹脂シート部170と、を備え、待機状態から演出状態へ移行するときには、芯材150を巻取方向とは反対方向に回転させながら芯材150を後側落下部材から離間させる一方、演出状態から待機状態へ移行するときには、芯材150を巻取方向に回転させながら後側落下部材に接近させる。
【選択図】図9
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11