特許第6043929号(P6043929)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アプタリス ファーマ リミテッドの特許一覧

特許6043929腸溶コーティングされた低力価パンクレリパーゼ製剤
<>
  • 特許6043929-腸溶コーティングされた低力価パンクレリパーゼ製剤 図000020
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043929
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】腸溶コーティングされた低力価パンクレリパーゼ製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/46 20060101AFI20161206BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20161206BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20161206BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20161206BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   A61K37/54
   A61K47/38
   A61K47/10
   A61K47/26
   A61K47/02
   A61K47/18
   A61K9/48
   A61P43/00 111
   A61P1/14
   A61P1/18
【請求項の数】37
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2013-530811(P2013-530811)
(86)(22)【出願日】2011年9月30日
(65)【公表番号】特表2013-538846(P2013-538846A)
(43)【公表日】2013年10月17日
(86)【国際出願番号】IB2011002419
(87)【国際公開番号】WO2012042372
(87)【国際公開日】20120405
【審査請求日】2014年5月16日
(31)【優先権主張番号】61/389,037
(32)【優先日】2010年10月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512279877
【氏名又は名称】アラガン ファーマシューティカルズ インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】オルテンツィ,ジョヴァンニ
(72)【発明者】
【氏名】デ フランザ,ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】クレメンティ,ダニロ
(72)【発明者】
【氏名】シュトルベルク,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ボルトリ,ルイージ
【審査官】 中尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−519217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/46
A61K 9/48
A61K 47/02
A61K 47/10
A61K 47/18
A61K 47/26
A61K 47/38
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腸溶コーティングを具えるパンクレリパーゼビーズの形態の少なくとも一の消化酵素と、少なくとも1種の担体を含む組成物において:
前記組成物中の消化酵素の総量が4乃至20重量パーセントであり、前記組成物中の少なくとも1種の担体が平均粒径100μmより大きい微結晶性セルロースを含み、前記パンクレリパーゼビーズが、4乃至20重量パーセントのパンクレリパーゼと、70乃至96パーセントの少なくとも1種の担体を含み、それぞれの前記重量パーセントがコーティングされていないビーズの総重量に基づくことを特徴とする組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物において、前記組成物中の前記消化酵素の総量が、5〜19重量%であることを特徴とする組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の組成物において、前記組成物中の前記消化酵素の総量が、10〜15重量%であることを特徴とする組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の組成物において、前記消化酵素が、ビーズの形態であることを特徴とする組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物において、腸溶コーティングされている前記ビーズが、5〜19重量%のパンクレリパーゼおよび71〜95%の少なくとも1種の担体を含み、それぞれの前記重量%が、コーティングされていないビーズの総重量に基づくものであることを特徴とする組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の組成物において、腸溶コーティングされている前記ビーズが、10〜15重量%のパンクレリパーゼおよび75〜90%の少なくとも1種の担体を含み、それぞれの前記重量%が、コーティングされていないビーズの総重量に基づくものであることを特徴とする組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の組成物において、腸溶コーティングされている前記ビーズが、10〜15重量%のパンクレリパーゼおよび80〜85%の少なくとも1種の担体を含み、それぞれの前記重量%が、コーティングされていないビーズの総重量に基づくものであることを特徴とする組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の組成物において、腸溶コーティングされている前記ビーズが、15重量%のパンクレリパーゼ、80%の前記担体および5%のさらなる賦形剤を含み、それぞれの前記重量%が、コーティングされていないビーズの総重量に基づくものであることを特徴とする組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の組成物において、腸溶コーティングされている前記ビーズが、10重量%のパンクレリパーゼ、85%の前記担体および5%のさらなる賦形剤を含み、それぞれの前記重量%が、コーティングされていないビーズの総重量に基づくものであることを特徴とする組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の組成物において、前記担体が、含水量5%未満、公称平均粒径160μm、メッシュサイズ38:残留量≦1.0%、メッシュサイズ94:残留量≦50.0%、メッシュサイズ300:残留量≦70.0%を有する微結晶性セルロースであることを特徴とする組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の組成物において、前記担体が、含水量5%以下、公称平均粒径180μm、メッシュサイズ60:残留量≧10.0%、メッシュサイズ100:残留量≧50.0%を有する微結晶性セルロースであることを特徴とする組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の組成物において、前記担体が、含水量5%未満、公称平均粒径160μm、メッシュサイズ38:残留量≦1.0%、メッシュサイズ94:残留量≦50.0%、メッシュサイズ300:残留量≦70.0%を有する微結晶性セルロースと、含水量5%以下、公称平均粒径50μm、メッシュサイズ60:残留量≦1.0%、メッシュサイズ200:残留量≦30.0%を有する微結晶性セルロースとの、それぞれ16:1w/wの混合物であることを特徴とする組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の組成物において、前記担体が、微結晶性セルロースと、トレハロースとの混合物であることを特徴とする組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の組成物において、前記担体が、含水量5%以下、公称平均粒径160μm、メッシュサイズ38:残留量≦1.0%、メッシュサイズ94:残留量≦50.0%、メッシュサイズ300:残留量≦70.0%を有する微結晶性セルロースとトレハロースとの1:1w/wの混合物であることを特徴とする組成物。
【請求項15】
請求項13に記載の組成物において、前記担体が、含水量5%以下、公称平均粒径180μm、メッシュサイズ60:残留量≧10.0%、メッシュサイズ100:残留量≧50.0%を有する微結晶性セルロースとトレハロースとの1:1w/wの混合物であることを特徴とする組成物。
【請求項16】
請求項1に記載の組成物を含むことを特徴とする製剤
【請求項17】
請求項16に記載の製剤において、前記製剤が、カプセル剤であることを特徴とする製剤
【請求項18】
請求項17に記載の製剤において、前記製剤のリパーゼ活性が、500〜5,000USP単位であることを特徴とする製剤
【請求項19】
請求項18に記載の製剤において、前記製剤の前記リパーゼ活性が、675〜825USP単位であることを特徴とする製剤
【請求項20】
請求項16に記載の製剤において、前記製剤のリパーゼ活性が、675〜825USP単位であり、プロテアーゼ活性が、1,250〜3,850USP単位であり、アミラーゼ活性が1,600〜6,575USP単位であることを特徴とする製剤
【請求項21】
シール容器を含むパッケージにおいて、前記シール容器が、防湿性材料、乾燥剤、および請求項17に記載の少なくとも1つの製剤を含み、前記乾燥剤および少なくとも1つの製剤が、前記シール容器の中にあることを特徴とするパッケージ。
【請求項22】
請求項21に記載のパッケージにおいて、前記防湿性材料が、金属、ガラス、プラスチック、および金属コーティングされたプラスチックからなる群から選択されることを特徴とするパッケージ。
【請求項23】
請求項21に記載のパッケージにおいて、前記乾燥剤が、モレキュラーシーブ、粘土、シリカゲル、活性炭、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とするパッケージ。
【請求項24】
請求項1に記載の組成物の調製方法において、以下のステップ:a)前記パンクレリパーゼと、前記少なくとも1種の担体と、さらなる賦形剤とを混合するステップと、b)前記混合物を圧縮してビーズにするステップと、c)前記ビーズを腸溶性ポリマーでコーティングするステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法において、前記ステップが、低湿環境において行われ、かつ前記1種または複数種の担体の水分が、5%以下であることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項24に記載の方法において、前記剤形が、5%未満の残留含水量を有するカプセル剤であることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項25に記載の方法において、前記剤形が、2%未満の残留含水量を有するカプセル剤であることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項24に記載の方法において、前記担体が、微結晶性セルロース、トレハロース、イノシトール、無水物形態のL−プロリン、無水第二リン酸カルシウム、無水ラクトース、ラクトース一水和物、イソマルト、マンニトールまたはそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法において、前記担体が、100μm以上の粒径の微結晶性セルロースを含むことを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項28に記載の方法において、前記担体が、含水量5%未満、公称平均粒径160μm、メッシュサイズ38:残留量≦1.0%、メッシュサイズ94:残留量≦50.0%、メッシュサイズ300:残留量≦70.0%を有する微結晶性セルロースであることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項28に記載の方法において、前記担体が、含水量5%以下、公称平均粒径160μm、メッシュサイズ38:残留量≦1.0%、メッシュサイズ94:残留量≦50.0%、メッシュサイズ300:残留量≦70.0%を有する微結晶性セルロースとトレハロースとの1:1w/wの混合物であることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項28に記載の方法において、前記担体が、含水量5%以下、公称平均粒径180μm、メッシュサイズ60:残留量≧10.0%、メッシュサイズ100:残留量≧50.0%を有する微結晶性セルロースとトレハロースとの1:1w/wの混合物であることを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項16に記載の製剤において、前記製剤が、5%未満の残留含水量を有することを特徴とする製剤
【請求項34】
請求項16に記載の製剤において、前記製剤が、2%未満の残留含水量を有することを特徴とする製剤
【請求項35】
請求項1に記載の組成物において、前記腸溶コーティングが腸溶性ポリマーとビーズの総重量に基づいた4%〜10%のタルクを含むことを特徴とする組成物。
【請求項36】
請求項1に記載の組成物において、前記組成物が促進安定性試験の6ヶ月後に、25%を超えない酵素活性消失を示すことを特徴とする組成物。
【請求項37】
請求項16に記載の製剤において、前記組成物が促進安定性試験の6ヶ月後に、25%を超えない酵素活性消失を示すことを特徴とする製剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2010年10月1日に出願された米国仮特許出願第61/389,037号明細書の優先権を主張しており、この仮特許出願は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
種々の実施形態において、本発明は、少なくとも1種の消化酵素および少なくとも1種の担体を含む、安定な低(希釈)消化酵素含有量を有する薬学的組成物、またはその剤形に関する。他の実施形態において、本発明はまた、当該組成物または剤形の調製方法に関する。さらなる実施形態において、本発明は、消化酵素不足に伴う障害の処置および予防を必要とする患者におけるその障害の処置および予防であって、安定な低消化酵素含有量を有する組成物またはその剤形の薬学的に許容可能な量を前記患者に投与することを含む処置および予防に関する。
【背景技術】
【0003】
患者に適した薬物投与は、医療分野における重要な課題である。特に乳幼児もしくはより小さい子供または老人患者については、さらに時には成人個体群についても、薬物の投与および投薬方法が、しばしば実質的な問題を呈する。当該技術分野においてよく知られているように、薬物は、多くの形態(例えば、液体、固体、および液体中固体の組み合わせ)で提供され、多くのやり方で(例えば、経口により、注入により、経皮により)患者に投与される。
【0004】
FDAは200,000人を超える米国人が膵外分泌機能不全(exocrine pancreatic insufficiency:EPI)を患っていると推定している。EPIは、膵臓により生成される消化酵素の不足により個体が食物を適切に消化することができない生理的障害を伴う。消化酵素のそうした不足は、栄養素の消化不良および吸収不良などの障害に繋がり、これらは、栄養失調およびそれと関連する他の結果として生じる望ましくない生理的状態に繋がる。これらの障害は、嚢胞性線維症(cystic fibrosis:CF)および膵臓の外分泌機能に欠陥を生じさせる他の状態(例えば、膵癌、膵切除、および膵炎)を患う人々に共通している。この栄養失調は、未処置のままにされると、特に乳幼児およびCF患者の場合には、生命を脅かし得、これらの障害は、成長障害、免疫応答障害(compromised immune response)、および平均余命の短縮に繋がり得る。
【0005】
消化酵素(例えば、パンクレリパーゼおよび他の膵酵素製品(pancreatic enzymes product:PEP)は、EPIを少なくとも部分的に治療するために投与され得る。投与される消化酵素は、より効果的に食物を消化することができるように患者に必要なものを与える。酵素療法は、CF個体群における栄養および消化の臨床的管理の肝要な局面である。最近発表された乳幼児指針は、症候性または慢性の膵不全のCF新生児における膵酵素補充療法(pancreatic Enzyme Replacement Therapy: PERT)の即時開始を推奨している。この枠組みの中で、最適な投薬レジメンが特定されなければならない。乳幼児におけるPERTの使用は、短期的および長期的な成長および栄養転帰を改善し得、次いで肺機能を高め、最終的に生存を増加させ得ると考えられる。
【0006】
膵酵素が、EPIの処置において消化機能の低下を補うために使用され、60年を超えて使用されている。それらの使用は、最近まで、安全性および有効性および製造管理に基づく薬物承認の基準となる現代の規制指針の影響を受けていなかった。最近になって、膵酵素補充療法は米国および欧州の規制当局のイニシアティブの対象となり、これは、販売されている膵酵素製品はその商取引が存続するためには現行の薬物承認過程を通過すべきであることを要求している。Zenpep(登録商標)、Creon(登録商標)およびPancreaze(登録商標)の3つは、FDAが定めた過程を成功裏に通過し、米国における販売が承認されている製品である。同様のイニシアティブがまだ進展しつつあるところであるかまたはまだ実施されていない他の地域/国においては、種々の膵酵素製品が依然として入手可能である。
【0007】
消化酵素(例えば、パンクレリパーゼ)を含有するカプセルが、経口投与用に開発されている。しかしながら、患者がそうしたカプセルを嚥下できない場合は、それぞれのカプセルが開けられ、その内容物が、少量の食物、通常は、柔らかい酸性の食物(例えば、市販のアップルソース)に振り掛けられ、患者にスプーンで経口投与され得る。あるいは、乳幼児および小児には、そのような薬物は、その内容物をシリンジデバイスでの投与に適した媒体中に懸濁させて含有するシリンジデバイスを用いて経口投与され得る。
【0008】
パンクレリパーゼ製品は、概して、3つの酵素クラス:リパーゼ、アミラーゼ、およびプロテアーゼを含有するとラベル表示され、それらのレベルまたは効力が記載される。これらの酵素は、グリセロールおよび脂肪酸への脂肪の加水分解、デキストリンおよび糖へのデンプンの加水分解、ならびにアミノ酸および誘導物質へのタンパク質の加水分解を触媒する。しかしながら、消化は、適切な消化機能に寄与する多くの他の酵素および物質が関与して一連の消化産物を生成する、複雑な過程である。パンクレリパーゼに含有される他の酵素には、とりわけ、トリプシン、カルボキシペプチダーゼ、エラスターゼ、ホスホリパーゼ、およびコレステラーゼが含まれ、そして種々の補因子および補酵素が含まれる。これらの物質は、膵臓で自然に産生され、同様に、適切な消化機能に寄与するものである。
【0009】
パンクレリパーゼは、典型的にはブタの膵腺から調製されるが、他の供給源、例えば、それぞれあらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に援用される、米国特許第6,051,220号明細書、米国特許出願公開第2004/0057944号明細書、米国特許出願公開第2001/0046493号明細書、および国際公開第2006044529号パンフレットに記載されているものもまた使用され得る。
【0010】
膵酵素は、ほぼ中性の条件および僅かにアルカリ性の条件下で最適な活性を示す。胃条件下においては、膵酵素は不活性化され得、結果として生物学的活性を失うことになり得る。したがって、外因的に投与される酵素は、一般的に、胃不活性化から保護され、それらが胃を通って十二指腸へ移行する間、元のままの状態を保つ。したがって、膵酵素をコーティングすることが望ましい。膵リパーゼは、胃不活性化に対して最も感受性が高く、かつ吸収不良の処置における最も重要なクラスの酵素である。リパーゼを含有する酵素組成物の安定性を決定するためには、典型的には、リパーゼ活性がモニタリングされる。
【0011】
Ortenziらに対して発行された米国特許第7,658,918号明細書の全内容が、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に明示的に援用される。米国特許第7,658,918号明細書は、安定な消化酵素組成物について記述するものであり、経口投与される特定の粒状薬物を、患者の胃を通過しその後腸内で放出するように設計することを説明している。前記特許に開示されている組成物または経口剤形に含まれる粒子のコア中のパンクレリパーゼの総量(重量による)は、68〜90%である。
【0012】
Aptalis Pharmaは、少なくともいくつかの、多粒子の腸溶コーティングされたパンクレリパーゼ酵素ビーズ薬物を販売している。例えば、Aptalis Pharmaは、EUR−1008という名称およびZenpep(登録商標)という登録商標で、患者における膵外分泌機能不全(EPI)の処置のための遅延放出カプセル剤を販売している。いずれの経口投与用Zenpep(登録商標)カプセルも、高パンクレリパーゼ含有量を有する腸溶コーティングされたビーズ(3,000、5,000USP単位のリパーゼについては1.8〜1.9mm、10,000、15,000および20,000および25,000USP単位のリパーゼについては2.2〜2.5mm)を含有する。
【0013】
販売されているパンクレリパーゼ製品は全て、非常に高いパンクレリパーゼ含有量を有している。
【0014】
一部の市販されている消化酵素組成物は、約35%までまたはそれ以上のリパーゼ活性の経時的低下を示す。貯蔵の間のそのような酵素活性の低下を補うため、およびラベルで述べられている効力を製品が確実に貯蔵寿命の終わりに提供するようにするために、製造業者は、典型的に、剤形を5%〜60%過剰充填しており、また、パンクレリパーゼ緩効性カプセル(Pancrelipase Delayed−Release Capsules)についての現行のUSP規格は、ラベル表示されたリパーゼ活性の90%以上かつ165%以下に相当するパンクレリパーゼを考慮に入れている。実際には、これは、患者および処方者が用量力価を正確に判定できないことがあり、その実際的結果として、新たな処方ごとに適切な投与量が経験的に決定される必要があるということを意味している。膵外分泌機能不全障害の患者は、食物を適切に消化するのに必要な酵素の供給をこれらの薬物に頼っている。ラベルが個々の製品の効力に関して不正確な記載を含む場合には、患者は、多すぎるかまたは少なすぎる薬剤を受ける危険性がある。
【0015】
また、低用量が必要とされ、適切な薬物投与が既存の高用量製剤を用いては達成され得ないいくつかの状況が存在する。これは、パンクレリパーゼが乳幼児において体重1kg当たり1食当たり500単位のリパーゼ〜1kg当たり1食当たり2,000単位のリパーゼの範囲の用量で投与されるべきである場合に特に問題となり、したがって、低用量のまたは希釈されたパンクレリパーゼの剤形が投与に利用可能であるべきである。
【0016】
均一な薬物含有量を有する低用量形態の調製は、いくつかの問題に直面することが一般的に知られている。それに加えて、パンクレアリパーゼの場合においては、最終希釈製剤の組成および調製方法の両方が、不安定な酵素の適切な貯蔵時安定性を確保するようなものであるべきである。
【0017】
したがって、高い含量均一性を有しかつ酵素調合薬の予想貯蔵寿命にわたって必要な活性を維持することが可能である、低用量のまたは希釈された消化酵素の安定な組成物を提供することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0018】
これらおよび他の目的を達成するため、ならびにこれらおよび他の必要性を満たすために、その目的に鑑みて、本発明は、安定な低用量消化酵素組成物およびそれからなる剤形に関する。
【0019】
より特定的には、種々の実施形態において、本発明は、複数の消化酵素ビーズ、より特定的には、腸溶コーティングされたビーズを含む、安定な高希釈酵素組成物および剤形に関する。希釈消化酵素ビーズは、高い含量均一性を有し、かつ貯蔵時に酵素活性の最小限の低下を示す。
【0020】
本発明は、防湿性材料でできたシール容器、乾燥剤、および少なくとも1つの本発明に従う剤形を含む、好適なパッケージを提供する。
【0021】
さらに、本発明は、安定な低用量消化酵素組成物およびその剤形を調製する方法を提供する。当該方法は、消化酵素含有量の高い均一性を確保するのに好適な、少なくとも1種の担体との希釈消化酵素ブレンドを調製するステップと、次いで、腸溶性ポリマーを含む溶液でビーズをコーティングし、それにより複数の安定な、腸溶コーティングされた希釈消化酵素含有ビーズを形成するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、パンクレリパーゼおよび担体からなる錠剤(ブレンド1:パンクレリパーゼ;ブレンド2:パンクレリパーゼおよび微結晶性セルロースB;ブレンド3:パンクレリパーゼおよびトレハロース;ブレンド4:パンクレリパーゼおよびイソマルト;ブレンド5:パンクレリパーゼおよび二塩基性カルシウム(calcium bibasic);ブレンド6:パンクレリパーゼおよびイノストール(inostol);ブレンド7:パンクレリパーゼおよび微結晶性セルロースA)の硬度を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、少なくとも1種の消化酵素および少なくとも1種の担体を含む安定な組成物において、
a)組成物中の消化酵素の総量が、約4〜約20重量%である、または
b)組成物の少なくとも1種の担体が、大きな粒径を有している、または
c)組成物中の消化酵素の総量が、約4〜約20重量%であり、かつ組成物の少なくとも1種の担体が、大きな粒径を有している、
ことを特徴とする組成物に関する。
【0024】
別の実施形態において、組成物中の消化酵素の総量は、約5〜約19重量%の範囲にある。
【0025】
別の実施形態において、組成物中の消化酵素の総量は、約10〜約15重量%の範囲にある。本発明の別の実施形態において、組成物中の消化酵素の総量は、約4重量%、または約5重量%、または約10重量%、または約15重量%、または約19重量%からの範囲(これらの間の全ての範囲および部分範囲を含む)にある。
【0026】
本発明の組成物において、消化酵素は、ビーズの形態、好ましくは、腸溶コーティングされたパンクレリパーゼビーズの形態である。
【0027】
本発明の種々の実施形態において、希釈消化酵素ビーズは、約4〜約20重量%のパンクレリパーゼおよび約70〜約96%の少なくとも1種の担体;または約5〜約19重量%のパンクレリパーゼおよび約71〜約95%の少なくとも1種の担体、または約10〜約15重量%のパンクレリパーゼおよび約75〜約90%の少なくとも1種の担体を含み、それぞれの前記重量%は、コーティングされていないビーズの総重量に基づくものである。
【0028】
本発明の1つのさらなる実施形態において、腸溶コーティングされているビーズは、約10〜約15重量%のパンクレリパーゼおよび約80〜約85%の少なくとも1種の担体を含み、それぞれの前記重量%は、コーティングされていないビーズの総重量に基づくものである。
【0029】
本発明において、高い含量均一性および非常に小さい偏析を有すると同時に、優れた流動性をも示す、低パンクレリパーゼ含有量の粉末ブレンドが開示される。このブレンドは、低含量のまたは希釈されたパンクレリパーゼのビーズを生成するのに特に好適である。
【0030】
本発明において、消化酵素ビーズは、任意の種類の粒子を含む。用語「ビーズ」は、顆粒、錠剤、球体、ミニ錠剤、マイクロ錠剤、微粒子、微小球、ミニ微小球、マイクロカプセル、マイクロペレット、および直径約5mmまでの粒子を包含する。当該ビーズは、任意の好適な粒径または形状であり得る。例えば、ビーズは、約50μm〜約5,000μm、または約50μm〜約2,000μmの粒径範囲を有し得、それらは、約2〜約5mm、または約2mm未満(例えば、約0.5〜約2mm)の範囲内の公称(例えば、平均)粒子直径を有し得る。ビーズは、例えば、約0.7〜約1.6mm、または約0.7〜約1.25mm、または約0.7〜約1.25mmの直径を有し得る。約1.15mmの最小メジアン粒径を有する「ミニ微小球」または約2.63mmに最大メジアン粒径を有する「マイクロ錠剤」もまた、本方法に好適である。当該ビーズは、約800μm未満、好ましくは約500μm未満、好ましくは約400μm〜約600μmまたは約250μm〜約500μmの平均粒径を有し得る。これらのビーズは、400μm以上の体積径(d(v,0.1)(体積分布の10%がこの値よりも低く、かつ90%がこの値よりも高くなるところの直径として定義される)および900μm以下の体積径d(v,0.9)(体積分布の90%がこの値よりも低く、かつ10%がこの値よりも高くなるところの直径として定義される)を有し得る。
【0031】
薬学的製品の調製に好適なこれらの希釈消化酵素ビーズ、より特定的にはパンクレリパーゼ酵素ビーズは、全て、腸溶コーティングされたビーズであり得る。腸溶コーティングが存在する実施形態において、このコーティングは、胃の酸性環境から原薬を保護するバリヤーとして機能し、その薬物が小腸に到達する前の薬物放出を実質的に妨げる(すなわち、胃での酵素放出は、組成物中の酵素の総量の約10%未満〜約20%である)。腸溶コーティング用組成物と他のコーティング用組成物との好適な組み合わせが、所望の種類の薬物放出制御または治療効果を提供するために使用され得る。腸溶コーティングは、少なくとも1種の腸溶性ポリマーおよびさらなる賦形剤を含む。語句「腸溶性ポリマー」とは、消化酵素を胃内容物から保護するポリマー、例えば、酸性pHでは安定であるがより高いpHでは急速に分解し得るポリマー、または、胃腸管の残部とは対照的に、消化酵素が胃の中にある間は確実に胃内容物と消化酵素との接触が比較的少なくなるようにするのに十分に水和または浸食の速度が遅いポリマーを意味する。
【0032】
本発明の組成物および剤形は、少なくとも1種の消化酵素を含む。
【0033】
本明細書で使用される用語「消化酵素」とは、食物の成分が生物によって摂取または吸収され得るようにそれらの成分を分解する消化管中の酵素を意味する。消化酵素の非限定的な例としては、パンクレリパーゼ(パンクレアチンとも称される)、リパーゼ、補リパーゼ、トリプシン、キモトリプシン、キモトリプシンB、膵ペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼA、カルボキシペプチダーゼB、グリセロールエステルヒドロラーゼ、ホスホリパーゼ、ステロールエステルヒドロラーゼ、エラスターゼ、キニノゲナーゼ、リボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、α−アミラーゼ、パパイン、キモパパイン、グルテナーゼ(glutenase)、ブロメライン、フィシン、β−アミラーゼ、セルラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、イソマルターゼ、およびそれらの混合物が挙げられる。それらは、膵臓または膵液からの抽出により得られるか、または人工的に生成されるか、または膵臓以外の供給源から(例えば、微生物、細菌、カビ、真菌、植物または他の動物組織、遺伝子改変された微生物、真菌または植物から)得られる。
【0034】
用語「パンクレリパーゼ」または「パンクレリパーゼ酵素」または「パンクレアチン」とは、アミラーゼ、リパーゼおよびプロテアーゼ酵素を含む数種類の酵素の混合物、または膵臓に由来するそのような酵素の混合物を意味する。パンクレリパーゼは、例えば、Nordmark Arzneimittel GmbH、Scientific Protein Laboratories LLCまたはSigma Aldrichから市販されており、ブタ、ウシまたは他の哺乳動物源からの同様な抽出物も使用され得る。
【0035】
用語「リパーゼ」とは、グリセロールおよび単純な脂肪酸への脂質の加水分解を触媒する酵素を意味する。本発明に好適なリパーゼの例としては、動物リパーゼ(例えば、ブタリパーゼ)、細菌リパーゼ(例えば、シュードモナス(Pseudomonas)リパーゼおよび/またはバークホルデリア(Burkholderia)リパーゼ)、真菌リパーゼ、植物リパーゼ、組換えリパーゼ(例えば、組換えDNA技術により、培養下の微生物、細菌、酵母、真菌、植物、昆虫または哺乳動物の宿主細胞のいずれか1つから選択される、好適な宿主細胞によって産生されたもの、すなわち、天然に存在する配列と相同または実質的に同一であるアミノ酸配列を含む組換えリパーゼ、天然に存在するリパーゼコード核酸と相同または実質的に同一である核酸によってコードされるリパーゼなど)、合成リパーゼ、化学的に変性されたリパーゼ、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。用語「脂質」は、脂肪、蝋、ステロール、脂溶性ビタミン(例えば、ビタミンA、D、EおよびK)、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、リン脂質などを含む、天然に存在する分子を広く包含する。
【0036】
用語「アミラーゼ」とは、デンプンを分解するグリコシドヒドロラーゼ酵素(例えば、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、γ−アミラーゼ、酸性α−グルコシダーゼ、唾液アミラーゼ(例えば、プチアリン)など)をいう。本発明における使用に適したアミラーゼとしては、動物アミラーゼ、細菌アミラーゼ、真菌アミラーゼ(例えば、アスペルギルス(Aspergillus)アミラーゼ、例えば、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)アミラーゼ)、植物アミラーゼ、組換えアミラーゼ(例えば、組換えDNA技術により、培養下の微生物、細菌、酵母、真菌、植物、昆虫または哺乳動物の宿主細胞のいずれか1つから選択される、好適な宿主細胞によって産生されたもの、すなわち、天然に存在する配列と相同または実質的に同一であるアミノ酸配列を含む組換えアミラーゼ、天然に存在するアミラーゼコード核酸と相同または実質的に同一である核酸によってコードされるアミラーゼなど)、化学的に変性されたアミラーゼ、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
用語「プロテアーゼ」とは、一般的に、タンパク質のアミノ酸間のペプチド結合を破壊する酵素(例えば、プロテイナーゼ、ペプチダーゼ、またはタンパク質分解酵素)をいう。プロテアーゼは、一般的に、それらの触媒型(例えば、アスパラギン酸ペプチダーゼ、システイン(チオール)ペプチダーゼ、メタロペプチダーゼ、セリンペプチダーゼ、トレオニンペプチダーゼ)、アルカリもしくはセミアルカリプロテアーゼ、中性ペプチダーゼ、および未知の触媒機構のペプチダーゼによって特定される。本発明における使用に適したプロテアーゼの非限定的な例としては、セリンプロテアーゼ、トレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ(例えば、プラスメプシン(plasmepsin))メタロプロテアーゼおよびグルタミン酸プロテアーゼが挙げられる。また、本発明における使用に適したプロテアーゼとして、動物プロテアーゼ、微生物プロテアーゼ、細菌プロテアーゼ、真菌プロテアーゼ(例えば、アスペルギルス・メレウス(Aspergillus melleus)プロテアーゼ)、植物プロテアーゼ、組換えプロテアーゼ(例えば、組換えDNA技術により、培養下の細菌、酵母、真菌、植物、昆虫または哺乳動物の宿主細胞のいずれか1つから選択される、好適な宿主細胞によって産生されたもの、すなわち、天然に存在する配列と相同または実質的に同一であるアミノ酸配列を含む組換えプロテアーゼ、天然に存在するプロテアーゼコード核酸と相同または実質的に同一である核酸によってコードされるプロテアーゼなど)、化学的に変性されたプロテアーゼ、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
本発明の組成物または本発明の組成物の経口剤形のパンクレリパーゼ酵素は、1種以上のリパーゼ(すなわち、1種のリパーゼ、または2種以上のリパーゼ)、1種以上のアミラーゼ(すなわち、1種のアミラーゼ、または2種以上のアミラーゼ)、1種以上のプロテアーゼ(すなわち、1種のプロテアーゼ、または2種以上のプロテアーゼ)、ならびに、これらの酵素の異なる組み合わせおよび比での混合物を含み得る。特定の実施形態において、組成物中のアミラーゼ/リパーゼ活性の比は、約1〜約10(例えば、約2.38〜約8.75)の範囲にあり得る(例えば、USPプロトコルに準じて行われる酵素アッセイにより測定される)。さらに別の実施形態において、プロテアーゼ/リパーゼの比は、約1〜約8(例えば、約1.86〜約5.13)の範囲にあり得る(USPプロトコルに準じて行われる酵素アッセイにより測定される)。さらに他の実施形態において、アミラーゼ/リパーゼ活性の比は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、または約10である。
【0039】
本発明の組成物または経口剤形中のリパーゼ活性は、約500〜約5,000USP単位、好ましくは約750からおよび約3,000USP単位であり得る。本発明の1つの実施形態において、リパーゼ活性は約675〜約825USP単位の範囲にあり、アミラーゼ活性は約1,600〜約6,575USP単位の範囲にあり、かつプロテアーゼ活性は約1,250〜約3,850USP単位の範囲にあり得る。
【0040】
担体(1種または複数種)が、錠剤化において、錠剤の嵩を圧縮のために実用的な大きさに増大するために使用される。本発明のビーズにおいて使用されるこれらの成分は、ブレンド流動性および作業性をもたらしかつ偏析を防ぐ、優れたドライブレンド用担体の特徴を有しており、パンクレリパーゼ含量均一性をもたらす。十分に限定された粒度分布は、優れた流れ特性および混合特性を提供するのに重要である。さらに、担体は、低い残留含水量(低い「遊離水」含有量)を有していなければならない。
【0041】
担体は、ポリオール、糖、糖アルコール、セルロース、リン酸カルシウム塩、およびアミノ酸からなる群から選択され得る。より具体的には、本発明の特定の実施形態において、担体は、微結晶性セルロース、トレハロース、イノシトール、無水物形態のL−プロリン、無水第二リン酸カルシウム、無水ラクトース、ラクトース一水和物、イソマルト、マンニトールおよびそれらの混合物、ならびに当該技術分野において知られている他の担体からなる群から選択される。
【0042】
本発明の特定の実施形態において、担体は、大きな粒径を有している。用語「大きな径(large size)」は、100μmより大きく;特には、約100μm〜約300μm、さらに特定的には、約160μm、約180μm、約280μmであり、これらの間の全ての範囲および部分範囲(例えば、約160μm〜約280μm、約160μm〜約180μm、約180μm〜約280μm)を含むと定義される。
【0043】
微結晶性セルロースは、洗浄した酸処理したセルロースを噴霧乾燥することによって得られるセルロースの一形態である。微結晶性セルロースは、平均粒径が20〜100μmの範囲にあるいくつかのグレードのものが入手可能である。さらに、100μmより大きい平均粒径を有する微結晶性セルロース(大きな粒径の微結晶性セルロース)もまた入手可能である;例えば、約160μmまたは約180μmの大きな粒径の微結晶性セルロース。
【0044】
本発明の1つの特定の実施形態において、担体は、大きな粒径の微結晶性セルロースである。
【0045】
大きな粒径の微結晶性セルロースは、含水量5%以下、公称平均粒径約160μm、メッシュサイズ38:残留量≦1.0%、メッシュサイズ94:残留量≦50.0%、メッシュサイズ300:残留量≦70.0%を有し得る。当該微結晶性セルロースは、好ましくは、3.8%以下のLoD(乾燥減量)を有している。
【0046】
別の実施形態において、大きな粒径の微結晶性セルロースは、含水量5%以下、公称平均粒径約180μm、メッシュサイズ60:残留量≧10.0%、メッシュサイズ100:残留量≧50.0%を有し得る。当該微結晶性セルロースは、好ましくは、1.5%以下のLoDを有している。
【0047】
さらなる実施形態において、含水量5%以下、公称平均粒径約50μm、メッシュサイズ60:残留量≦1.0%、メッシュサイズ200:残留量≦30.0%を有する微結晶性セルロースが、大きな粒径を有する微結晶性セルロースとの混合において非常に低量(例えば、全担体重量の約5.8重量%)で使用される。
【0048】
別の好適な担体は、天然に存在する非還元性の二糖である、水和または無水のトレハロース(α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシドであり得る。トレハロースは、例えば、昆虫の血液中、真菌中、特定の酵母中、および特定の耐乾燥性植物中に認められる。トレハロースは、酵母の特定の菌株の発酵によって製造され得る。トレハロースは、甘い味がするものであり、チューインガムなどにおける低減した齲蝕原性を有する甘味料としての使用のために提案された。トレハロースは、通常、結晶性脱水物として製造され、使用される。非晶質の粒状のトレハロースは、約180μm〜約280μmの範囲内にある粒径を有し得る。本発明に従って使用される特定のトレハロースは、9.5%二水和物形態のトレハロースであり、低い吸湿性プロファイルを有する。本発明の1つの実施形態において使用される販売されているトレハロースは、Trehalose Gである。
【0049】
本発明における使用に適した担体の他の例は、イノシトール、無水物形態のL−プロリン、無水第二リン酸カルシウム(0.1〜0.2%のLoD)、ラクトース、無水ラクトース(LoD:4.5〜5.5%を有する一水和物)、およびイソマルト(0.12%のLoD)である。
【0050】
本発明の組成物において、1つの単一の担体が使用され得るが、2つ以上の異なる担体の組み合わせもまた使用され得る。
【0051】
本発明の1つの実施形態において、大きな粒径の微結晶性セルロースのみが使用される。
【0052】
別の実施形態において、微結晶性セルロースとトレハロースとの二成分ブレンドが使用される。
【0053】
さらなる実施形態において、2種のセルロースのブレンドが使用される。
【0054】
本発明の別の実施形態において、担体は、含水量5%以下、公称平均粒径約160μm、メッシュサイズ38:残留量≦1.0%、メッシュサイズ94:残留量≦50.0%、メッシュサイズ300:残留量≦70.0%を有する微結晶性セルロースとトレハロースとの1:1w/wの混合物である。
【0055】
本発明の別の実施形態において、担体は、含水量5%以下、公称平均粒径約180μm、メッシュサイズ60:残留量≧10.0%、メッシュサイズ100:残留量≧50.0%を有する微結晶性セルロースとトレハロースとの1:1w/wの混合物である。
【0056】
別の実施形態において、担体は、2種の微結晶性セルロース(MC)の1:1w/wの混合物であり、一方のMCは、含水量5%未満、公称平均粒径約160μm、メッシュサイズ38残留量≦1.0%、メッシュサイズ94残留量≦50.0%、メッシュサイズ300:残留量≦70.0%を有し、他方のMCは、含水量5%以下、公称平均粒径約180μm、メッシュサイズ60残留量≧10.0%、メッシュサイズ100残留量≧50.0%を有している。
【0057】
別の実施形態において、担体は、16:1w/wの2種の微結晶性セルロースの混合物であり、それぞれ、最初のMCは、含水量5%未満、公称平均粒径約160μm、メッシュサイズ38:残留量≦1.0%、メッシュサイズ94:残留量≦50.0%、メッシュサイズ300:残留量≦70.0%を有し、他方のMCは、含水量5%以下、公称平均粒径約50μm、メッシュサイズ60:残留量≦1.0%、メッシュサイズ200:残留量≦30.0%を有している。
【0058】
パンクレリパーゼおよび担体(1種または複数種)および必要に応じてさらなる賦形剤を含むブレンドは、優れた流れ特性および一貫した粒径を有していなければならない。この流れ特性は、困難なしの錠剤ダイの充填を可能にすべきである。篩分け処理が、さらに制御された一様な粒径を確保するために組み込まれ得る。これは、成分の完全な混合およびブレンドの最終的な均質性を保証するために重要である。
【0059】
消化酵素および担体に加えて、本発明の組成物のビーズまたは経口剤形は、1種以上の薬学的に受容可能な賦形剤をさらに含み得る。本発明の1つの実施形態において、賦形剤の量は、ブレンドの約5%w/wである。用語「賦形剤」は、加工、安定性、嗜好性などを改善するために、組成物(例えば、希釈消化酵素)の活性成分(1種または複数種)に添加される他の薬学的に受容可能な成分を包含する。好適な賦形剤の非限定的な例としては、薬学的に受容可能な結合剤、安定剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、希釈剤、染料(着色剤)、安定剤、およびそれらの混合物などが挙げられる。特定の賦形剤が組成物中で複数の機能を果たし得ることが、薬学的製剤分野の当業者により理解される。当該賦形剤は、低い含水量を有し得、特に、当該賦形剤は、非常に低い「遊離水」含有量(15%未満、10%未満、約3%以下)を有するべきである。「遊離水」は、結合していない水である。
【0060】
好適な結合剤および希釈剤の非限定的な例としては、デンプン、変性セルロース(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、アルギン酸、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、アミノ酸(プロリン)およびそれらの混合物が挙げられる。
【0061】
好適な崩壊剤の非限定的な例としては、第二リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム二水和物、第三リン酸カルシウム、アルギン酸、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、L−HPC)、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、膨張性イオン交換樹脂、アルギネート、ホルムアルデヒド−カゼイン、セルロース、クロスカルメロースナトリウム(例えば、Ac−Di−Sol(登録商標))、クロスポビドン(例えば、架橋ポリビニルピロリドン)(例えば、Kollidon(登録商標)、CL、Polyplasdone(登録商標)XL、Polyplasdone(登録商標)XL−10)、カルボキシメチルスターチナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム(例えば、Explotab(登録商標)、Explotab(登録商標)CV)、デンプン(トウモロコシデンプン、コメデンプン、メイズデンプン)、およびそれらの混合物が挙げられる。これらの崩壊剤は、低量の、好ましくは15%未満、さらにより好ましくは10%未満の含水量(LoD)を有しており、例えば、クロスカルメロースナトリウムは15%未満のLoDを有し得、デンプングリコール酸ナトリウムは約7〜10%のLoDを有し得、メイズデンプンは15%未満のLoDを有し得る。
【0062】
好適な滑沢剤の非限定的な例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムステアリルフマレート、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、タルク、蝋、Sterotex(登録商標)、Stearowet(登録商標)、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0063】
好適な流動促進剤の非限定的な例としては、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0064】
好適な安定剤の非限定的な例としては、トレハロース、プロリン、デキストラン、マルトース、スクロース、マンニトール、ポリオール、シリカゲル、アミノグアニジン、ピリドキサミン、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0065】
染料および着色化合物(例えば、無機または有機顔料)もまた、ブレンドに添加され得る。非限定的な例は、金属酸化物(例えば、TiO、Fe/FeO 3HO)、カラメル、麦芽抽出物(Corocon(登録商標))、サトウキビ(赤砂糖)である。金属酸化物のLoDは、1%未満である。
【0066】
本発明において使用される賦形剤のうちの1種以上は、組成物をさらに安定化する乾燥剤として機能し得る。乾燥剤として有用な好適な賦形剤には、水と強固に結合する、または組成物の水分活性を低下させる、任意の薬学的に受容可能な賦形剤が含まれる。例えば、本発明の組成物は、約1〜4%のシリカゲル、または約2.5%のシリカゲル、無水プロリンもしくはトレハロースを含み得る。
【0067】
本発明の1つの実施形態において、腸溶コーティングされたビーズは、約15重量%のパンクレリパーゼ、約80%の担体および約5%のさらなる賦形剤を含み、それぞれの前記重量%は、コーティングされていないビーズの総重量に基づくものである。
【0068】
別の実施形態において、腸溶コーティングされたビーズは、約10重量%のパンクレリパーゼ、約85%の担体および約5%のさらなる賦形剤を含み、それぞれの前記重量%は、コーティングされていないビーズの総重量に基づくものである。
【0069】
本発明の希釈パンクレリパーゼビーズは、約10〜約20重量%の少なくとも1種の腸溶性ポリマーを含む腸溶コーティングを有し得る(重量%は、コーティングされたビーズの総重量に基づく)。胃耐性腸溶性ポリマーの非限定的な例は、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ポリビニルアセテートフタレート、メタクリル酸のコポリマー、メチルメタクリレートのエステル、およびシェラックである。これらのポリマーは、異なるブランド名(例えば、Cellacefate(登録商標)(酢酸フタル酸セルロース)、Eudragit(登録商標)L100、S100、L30D、FS30D、L100−55(メタクリル酸のコポリマー)、Aquateric(登録商標)(酢酸フタル酸セルロース)、Aqoat(登録商標)(ヒドロキシプロピルメチルセルロアセテートサクシネート(hydroxypropyl methylcelluloacetate succinate))、HP55(登録商標)(ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート))で市販されている。
【0070】
当該コーティングは、安定剤をさらに含み得る。当該コーティングの他の必要に応じての成分は、可塑剤、粘着防止剤、無機化合物(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、コロイド状二酸化ケイ素およびそれらの組み合わせ);さらに、必要に応じて低粘度エチルセルロース)である。好適な可塑剤の非限定的な例としては、トリアセチン、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリ−n−ブチル、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ヒマシ油、アセチル化モノ−およびジ−グリセリド、セチル/ミリスチルアルコール、およびそれらの混合物が挙げられる。好ましい可塑剤は、列挙された可塑剤のうちの非フタレート可塑剤またはその2つ以上(好ましくは、2つ)のものの任意の組み合わせでの混合物である。
【0071】
無機材料は、例えば、二酸化ケイ素、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、タルク、およびそれらの組み合わせを含み得る。1つの実施形態において、この材料は、タルクである。
【0072】
当該組成物の使用目的に応じて、腸溶性ポリマーと少なくとも1種の無機材料との比は、重量で約10:1〜約1:60の範囲内にあり得る。別の実施形態において、腸溶性ポリマーと少なくとも1種の無機材料との比は、重量で約8:1〜約1:50の範囲にある。別の実施形態において、腸溶性ポリマーと少なくとも1種の無機材料との比は、重量で約6:1〜約1:40の範囲にある。腸溶性ポリマーと少なくとも1種の無機材料との比は、重量で約5:1〜約1:30の範囲にあり得、好ましくは、腸溶性ポリマーと少なくとも1種の無機材料との比は、重量で約4:1〜約1:25または重量で約4:1〜約1:9の範囲にある。腸溶性ポリマーと少なくとも1種の無機材料との比は、重量で約10:4〜約10:7の範囲にあり得る。腸溶性コーティングの無機材料は、粒子の総重量の約1〜約10重量%の重量を構成する。別の実施形態において、無機材料は、粒子の約3、約5、約7、または約10重量%を構成する。無機材料がタルクである場合、それは、乾燥コーティング重量の約20〜約60%、例えば、乾燥コーティング重量の約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、または約60%(これらの間の全ての範囲、部分範囲および値を含む)を構成する。好ましい実施形態において、無機化合物は、タルクである。さらに別の特定の実施形態において、粒子の乾燥コーティングは、約31%のタルクを含む。
【0073】
本発明の1つの実施形態において、コーティングは、約10〜約20%の少なくとも1種の腸溶性ポリマー、約4〜約10%の少なくとも1種の無機化合物、および約1約2%の少なくとも1種の可塑剤を含む(粒子の総重量に基づく)。例えば、当該コーティングは、約10〜約20%のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、約4〜約10%のタルク、および約1〜約2%のクエン酸トリエチルを含み得る(粒子の総重量に基づく)。
【0074】
当該コーティングは、有機溶媒(例えば、アルコール(例えば、エタノール、イソプロピルアルコール)、ケトン(例えば、アセトン)、塩化メチレン、またはそれらの混合物(例えば、アセトンとエタノールとの混合物))中の腸溶性ポリマー(および必要に応じて、懸濁させた無機材料)の溶液として、希釈消化酵素含有ビーズに塗布され得る。好ましい実施形態においては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートが腸溶性ポリマーであり、かつアセトンが溶媒である。
【0075】
次いで、コーティングされた希釈消化酵素含有ビーズは、任意の好適な経口剤形へと製剤化され得る。本発明の好ましい剤形は、カプセル剤である。カプセル自体は、当該技術分野において知られている任意の従来の生分解性材料、例えば、ゼラチン、多糖(例えば、プルラン)、または変性セルロース材料(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)からなり得る。安定化消化酵素の安定性を改善するために、カプセルが充填に先立って乾燥され得るか、または低含水量の材料からなるカプセルが選択され得る。好ましい実施形態において、カプセルシェルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースからなり、約5%以下(例えば、4%以下、2%以下、または2〜5%もしくは3〜5%のいずれか程度)の含水率を有し、好ましくは約3%未満、さらに好ましくは2%未満の含水率を有する。
【0076】
用語「含水量(moisture content)」は、「含水率(water content)」とも称され、組成物が含有する水の量を意味する。含水量の変化に伴って体積を変化させない組成物については、含水量は、水分の質量と材料の乾燥体積との比として容量測定的に(すなわち、容量で)表され得る。含水量の変化に伴って体積を変化させる組成物については、含水量は、被検物の単位乾燥質量当たりの乾燥により除去される水の質量として重量測定的に(すなわち、重量で)表され得る。含水量の測定は、当該技術分野において知られている従来の方法の任意のものによって達成され得る。例えば、含水量は、試料を電気化学滴定セルにおいて溶解させるKarl Fischer滴定などの化学滴定によって測定され得る。試料からの水は電気化学反応において消費され、その反応の終点が電位差測定により測定され、それにより、試料中の水の量の直接的な測定が提供される。あるいは、制御された乾燥の前および後において試料の質量が測定される「乾燥減量」(LoD)などの比較的単純な熱重量分析法が使用され得る。乾燥後の質量の減少は、水分の減少によるものと考えられる。市販の水分分析器(例えば、Mettler Toledo,Sartorius AGなどから入手可能)もまた、含水量を測定するために使用され得る。
【0077】
本発明の成分の含水量および本発明の組成物または経口剤形の含水量は、当該技術分野において知られている任意の好適な方法(例えば、LoD、すなわち熱重量分析)によって測定され得る。LoDが、好ましい方法である。
【0078】
少なくとも1種の消化酵素を含む本発明の組成物または経口剤形は、約0.6以下、約0.5以下、約0.4以下、約0.3以下、約0.2以下、または約0.1以下(これらの間の全ての範囲および部分範囲(すなわち、約0.5〜約0.6、約0.4〜約0.6、約0.3〜約0.6、約0.2〜約0.6、約0.1〜約0.6、約0.4〜約0.5、約0.3〜約0.5、約0.2〜約0.5、約0.1〜約0.5、約0.3〜約0.4、約0.2〜約0.4、約0.1〜約0.4、約0.2〜約0.3、約0.1〜約0.3、約0.1〜約0.2など)を含む)の水分活性を有し得る。低い水分活性で維持される本発明の組成物または経口剤形は、より高い水分活性レベルで維持される従来の消化酵素組成物と比較して、かなりより安定であることが見出された。
【0079】
水分活性は、「aw」とも称され、ある物質中の水の相対的な利用可能性である。本明細書で使用される場合、用語「水分活性」は、試料中の水の蒸気圧を同じ温度における純水の蒸気圧で除した値として定義される。純粋な蒸留水は、ちょうど1の水分活性を有する。水分活性は、温度依存性である。すなわち、水分活性は、温度の変化に伴って変化する。本発明において、水分活性は、約0℃〜約50℃、好ましくは約10℃〜約40℃の範囲の温度において測定される。
【0080】
製品の水分活性は、平衡状態にある試料の周囲の空気の相対湿度を測定することによって測定され得る。したがって、試料中の水分活性の測定は、典型的に、密閉された(通常は断熱された)空間において行われ、ここで、この平衡が起こり得る。平衡状態において、試料の水分活性と空気の相対湿度とは相等しく、したがって、チャンバー中の空気の平衡相対湿度(ERH)の測定値は、試料の水分活性の尺度を提供する。少なくとも2つの異なる種類の水分活性計器が市販されている。水分活性計器の種類の1つには、鏡面冷却式露点法(例えば、Decagon Devices,Inc.から入手可能なAquaLab(登録商標)水分活性計)を用いるものがあり、他には、電気抵抗またはキャパシタンスを変化させるセンサー(例えば、Rotronic(登録商標)から入手可能な水分活性計)により相対湿度を測定するものもある。本発明の組成物または経口剤形の水分活性は、当該技術分野において知られている任意の好適な方法によって測定され得る。
【0081】
少なくとも1種の安定化された消化酵素を含む本発明の組成物または剤形は、酵素活性の低下を、3ヶ月間の加速安定性試験後には示さない。当該組成物または剤形は、6ヶ月間の加速安定性試験後に、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約12%以下、約10%以下、約8%以下、または約5%以下の酵素活性の低下を示し得る。
【0082】
用語「加速安定性試験」または「加速貯蔵試験」は、酵素活性に対する比較的長期の貯蔵条件の影響をシミュレートするために使用される、比較的短い期間で行われ得る試験方法をいう。加速安定性試験方法は、実時間の安定性試験の信頼できる代替法であることが当該技術分野において知られており、生物学的製品の貯蔵寿命を正確に予測し得る。そのような「加速安定性試験」の条件は当該技術分野において知られており、その全体が参照により本明細書に援用されるInternational Conference for Harmonization of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use:Stability Testing of New Drug Substances and Products Q1Aに準ずるものである。
【0083】
貯蔵後(または定期的に貯蔵の間)に、試料の酵素活性は、消化酵素活性をアッセイするための従来の方法(例えば、米国薬局方、Pancrelipase:リパーゼ活性についてのアッセイ;その全体が参照により本明細書に援用される)を用いて試験され得る。
【0084】
本発明の組成物および本発明の組成物を含む剤形は、従来の消化酵素(例えば、パンクレリパーゼ)組成物および剤形と比較して高い安定性を有しており、乳幼児または新生児を含む患者に臨床的に有用な量の消化酵素を送達する。
【0085】
本発明の組成物または剤形(例えば、錠剤またはカプセル剤)は、任意の好適なパッケージで貯蔵され得る。例えば、パッケージは、ねじ込みクロージャーまたはプレス嵌めクロージャーを有するガラスジャーまたはプラスチックジャーであり得る。あるいは、本発明の組成物または剤形は、「ブリスターパック」に単位剤形として包装され得る。防湿シールおよび/または防湿パッケージを提供することによって、当該消化酵素組成物または剤形の改善された安定性がもたらされ得る。好適な防湿パッケージの非限定的な例としては、ガラスジャー、防湿樹脂またはコーティングを含むプラスチックジャー、アルミニウム蒸着プラスチック(例えば、Mylar)包装などが挙げられる。用語「防水」とは、1日当たり容器容積1cm当たり約0.5mg未満の水という透水性を有するパッケージをいう。
【0086】
容器(例えば、ボトル)は、任意の適切なクロージャー、特に、貯蔵の間の湿気の進入を最小限に抑えるクロージャーで密閉され得る。例えば、本発明の組成物または剤形は、熱シールされたアルミニウムライナーおよびポリエチレンフォームキャップライナーであり得る。パッケージの完全性を確保するためおよび貯蔵の間の湿気の進入を最小限に抑えるために、本発明の組成物または剤形を含有するシールパッケージは、本発明の組成物または剤形を計量分配しかつパッケージをシールした後に、漏れについて試験され得る。例えば、シールパッケージは、制御された真空をクロージャーに印加し、経時的に真空の低下を検出することによって試験され得る。好適な漏れ試験装置としては、Bonfiglioliにより製造されたもの(例えば、モデルLF−01−PKVまたはモデルPKV 516)が挙げられる。
【0087】
本発明の組成物または剤形を含有するパッケージはまた、パッケージ内の湿度を低下させることが可能な乾燥剤(すなわち、水を吸収する、水と反応する、または水を吸着する物質)、例えば、パッケージ内に閉じ込められた大気から湿気を「取り除く」ことが可能な乾燥剤も含有し得る。そのようなパッケージの中に入れられ得る好適な乾燥剤の非限定的な例としては、ゼオライト(例えば、4Aモレキュラーシーブなどのモレキュラーシーブ)、粘土(例えば、モンモリロナイト粘土)、シリカゲル、またはそれらの組み合わせが挙げられる。1つの実施形態において、乾燥剤は、モレキュラーシーブを含む。
【0088】
また、経口薬学的単位用量を包装する場合に、セルロース系材料(例えば、綿)の「詰め物」を容器の上部に加えて容器の上部にある空間を埋め、それにより内容物の移動を最小限に抑えることが通例になっている。セルロース系材料は、やや吸湿性であり、パッケージ内の水分の「レザバ」として機能し得る。したがって、本発明においては、セルロース系または綿の「詰め物」は加えられない。本発明の1つの実施形態は、低くかつ均一なパンクレリパーゼ含有量を有する組成物および剤形の調製方法であり、以下のステップ:
a)少なくとも1種の消化酵素と少なくとも1種の担体またはその混合物と必要に応じてのさらなる賦形剤とを混合して混合物を形成するステップ(混合は、穏やかな条件下で行われ(例えば、乳鉢中での手動粉砕)、高エネルギー微粉砕は、リパーゼ活性低下の危険性を低減するために避けられるべきである)と、
b)その混合物を直接圧縮してビーズにするステップと、
c)少なくとも1種の腸溶性ポリマーを含む溶液でそのビーズをコーティングするステップと、
を含む。
【0089】
本方法は、以下のステップ:
d)そのコーティングされたビーズを用いて剤形を調製する(例えば、コーティングされたビーズをカプセルに充填する)ステップと、
e)その剤形を包装するステップと、
をさらに含む。
【0090】
全ての方法ステップが、非常に低いレベルで維持されるべきである環境水分の厳密な制御下で行われることが極めて重要であり、例えば、コーティングの間の流入空気の絶対湿分は、約2〜約3g/kgの値で維持されるべきであり、ステップd)の間の相対湿度は、40%未満であるべきである。さらに、ブレンドの成分およびコーティングの成分も全て、非常に低い含水量(または、好ましくは約15%未満、もしくは約10%未満、もしくは約5%未満、もしくは約3%未満)を有するべきである。カプセルシェルもまた、製品への水の移動を最小限に抑えるために、低い含水量(約5%未満、好ましくは約3%未満)を有するべきである。包装形態もまた、透水性を最小限に抑えるために、慎重に選択されるべきである。こうした条件下においてのみ、最終の希釈消化酵素組成物または剤形は、長期にわたる貯蔵安定性を有する。
【0091】
数種類の投与製剤が作製され得るところ、異なる寸法の錠剤が得られる。パンクレリパーゼ、担体(1種または複数種)およびさらなる賦形剤を含有するパンクレリパーゼブレンドを、例えば円形の直径2mmの勾配付き杵を用いて、または円形の直径1.5mm、曲率半径1.2mmの杵を用いて錠剤化して、異なる寸法を有するマイクロ錠剤を製造し得る。当該ブレンドは、パンクレリパーゼミニ錠剤またはマイクロ錠剤を得るのに適した圧縮パラメータを用いて錠剤化され得る。例えば、約2mg〜約4mg、好ましくは約2.6〜約3.64mgの重量、約2.5%p/p未満の摩損度(USP法)および約1.5〜約2.0mmの厚さを有する希釈パンクレリパーゼマイクロ錠剤が、本発明に従って製造され得る。
【0092】
本発明の1つの実施形態は、患者における消化酵素不足に伴う状態または障害を処置または予防する方法であって、本発明の薬学的組成物または剤形をその処置または予防を必要とする患者(例えば、哺乳動物(例えば、ヒト))に投与するステップを含む方法を提供する。
【0093】
別の実施形態において、本発明は、消化酵素不足に伴う障害または状態を処置または予防する方法であって、本発明の組成物または剤形をその処置または予防を必要とする患者に投与するステップを含む方法において、当該組成物または剤形が、消化酵素に加えて、少なくとも1種のプロトンポンプ阻害薬、または1種の制酸薬、もしくはGI pHを上昇させる他の医薬を含む方法を提供する。さらに別の実施形態において、本発明は、消化酵素不足に伴う障害または状態を処置または予防する方法であって、本発明の組成物または剤形を、少なくとも1種のプロトンポンプ阻害薬、1種の制酸薬、またはGI pHを上昇させる他の医薬を含む剤形と組み合わせて投与するステップを含む方法を提供する。
【0094】
本発明の組成物または剤形で処置され得る障害または状態には、患者が消化酵素を有さないかもしくは低レベルの消化酵素を有する状態、または患者が消化酵素サプリメントを必要とする状態が含まれる。例えば、そのような状態には、膵外分泌機能不全、嚢胞性線維症、慢性膵炎、他の膵臓疾患(例えば、遺伝性、外傷後および同種移植片の膵炎、ヘモクロマトーシス、シュバッハマン症候群、脂肪腫症、または副甲状腺機能亢進症)、癌または癌処置の副作用、手術(例えば、胃腸バイパス手術、ホイップル手術、完全膵切除など)または膵酵素が腸に到達できない他の状態の副作用、混和不良(例えば、ビルロートII胃切除、他の種類の胃バイパス手術、ガストリノーマなど)、薬物処置(例えば、メトホルミン、またはHIVの症状および自己免疫疾患(例えば、膵臓に障害を生じさせ得る糖尿病)を処置するために使用される薬物での処置)の副作用、閉塞(例えば、膵管および胆管の結石症、膵臓および十二指腸の新生物、管狭窄症)、セリアック病に伴う吸収不良、食物アレルギーおよび老化が含まれ得る。
【0095】
本発明の目的に特に関連するのは、本発明の希釈組成物または剤形でのその処置を必要としている新生児および乳幼児の処置である。
【0096】
用語「薬学的有効量」とは、患者における膵酵素不足に伴う状態または症状を軽減または改善するのに有効な、本明細書に開示されるような本発明の組成物またはその剤形の量をいう。
【0097】
本発明の1つの実施形態において、本明細書に開示される組成物または剤形の有効量が、症候性または慢性の膵不全または膵外分泌機能不全を伴うCF(嚢胞性線維症)新生児または乳幼児における膵酵素補充療法(PERT)の処置において投与される。当該組成物または剤形は、脂肪吸収係数(coefficient of fat absorption:CFA)を改善するために投与される。
【0098】
上述の説明および本明細書に開示される実験から、本発明がいくつもの重要な利点を提供するものであることが理解され得る。記載される発明は、高い含量均一性および安定性を特徴とする希釈パンクレリパーゼ組成物および剤形を提供するものであり、したがって、本明細書における組成物および剤形は、低用量の膵酵素を必要とする乳幼児および新生児用に好適である。
【0099】
本明細書における一般的な説明および詳細な説明はいずれも本発明を限定するものではなく例示するものであること、ならびに全ての実施形態が当然ながら互いに組み合わされ得ることが、理解されるべきである。
【実施例】
【0100】
方法
溶出試験
a)酸性段階媒体(pH1.2):800mLの精製水に2.00gの塩化ナトリウムを入れ、完全な可溶化まで撹拌する。7mLの37%HClを添加し、混合する。この溶液のpHを、1N HClまたは1N NaOHで1.20±0.05に調整する。精製水で1000mLに希釈し;pHを確認し、必要であれば1N HClまたは1N NaOHで1.20±0.05に調整する。b)腸内段階媒体(pH6.0):800mLの精製水に9.20gの第一リン酸カリウムおよび2.00gの塩化ナトリウムを入れ、完全な可溶化まで撹拌する。この溶液のpHを、1N NaOHで6.00±0.05に調整する。精製水で1,000mLに希釈し;pHを確認し、必要であれば1N HClまたは1N NaOHで6.00±0.05に調整する。
【0101】
脂肪分解活性の測定
脂肪分解活性の測定は、使用される基質(オリーブ油)中のエステル化された脂肪酸の加水分解から形成される遊離脂肪酸のpHスタット法による滴定に基づく、パンクレリパーゼUSPモノグラフに記載されているリパーゼアッセイの公定手順(compendia procedure)に基づく方法を用いて行われる。これは、以下の原理に基づくものである:リパーゼは、遊離脂肪酸(FFA)の形成に繋がるトリグリセリドの加水分解を触媒する。時間に基づく形成されたFFAの滴定は、リパーゼの酵素活性の測定を与え、その酵素活性は、1U=毎分1μモルのFFAの形成という単位で表され得る。反応は、pH値が固定値と比較して変化した場合にNaOH(滴定剤)の添加を与える実験系によって一定のpH値を維持することによって起こる(pHスタット法)。時間に基づく添加された滴定剤の量は、トリグリセリドに対するリパーゼ作用によって形成されたFFAの量に対応する。適切な量の基質を用い、かつ酵素が安定である実験条件下でこの手順を実施すれば、時間に基づくFFA形成についての線形動態が得られ得る。曲線の傾斜{添加された滴定剤=f(体積(mL)/時間(分))}により、リパーゼ酵素活性が与えられる。
【0102】
タンパク質分解活性の測定
タンパク質分解活性の測定は、パンクレリパーゼUSPモノグラフに記載されている公定手順に準じて行われる。
【0103】
実施例1.パンクレリパーゼ−担体ブレンドの適合性
パンクレリパーゼと担体との二成分ブレンドを、前記成分の存在下でのパンクレリパーゼの安定性を確認するために、混合することによって調製する。この二成分ブレンドは、60mgの量のパンクレリパーゼおよび324mgの量の担体を含有し;試験される担体は、微結晶性セルロース(微結晶性セルロースC:含水量5%以下、公称平均粒径50μm、メッシュサイズ60:残留量≦1.0%、メッシュサイズ200:残留量≦30.0%;Avicel(登録商標)PH101として販売されている)、トレハロース、ラクトース一水和物、イソマルト、プロリンイノシトールである。試料を、乾燥剤なしの10mLのPETおよびガラスバイアルに包装する。それらを、2つの異なる条件:穏やかな貯蔵条件(25℃、相対湿度(RH)65%)およびより厳しい貯蔵条件(40℃、相対湿度75%)において貯蔵する。リパーゼ活性を、本明細書に記載される公定方法に準じて異なる貯蔵期間後に試験する。
【0104】
実施例2.パンクレリパーゼ−担体ブレンドの物理的特性評価
パンクレリパーゼを、1種以上の担体とブレンドし、これらの混合物の物理的特性評価を、密度(嵩およびタップの両方)、Carr指数(圧縮性指数)、流動性(オリフィスを通る流量を、漏斗から流れる時間当たりの質量として測定、USP法)、LoDを測定することにより行う。その結果の概要を、表4に報告する。
結晶性セルロースAは、Vivapure(登録商標)12として販売され;結晶性セルロースBは、Avicel(登録商標)LM200として販売され;結晶性セルロースCは、Avicel(登録商標)PH101として販売されている。
【0105】
上記の表4から、微結晶性セルロースC(含水量5%以下、公称平均粒径50μm、メッシュサイズ60:残留量≦1.0%、メッシュサイズ200:残留量≦30%)は、直接圧縮工程における重要な問題の指標となる低い質量の流れを有することが明らかにされ得る。低い流動性を有する担体に関するそのような問題を回避するためには、典型的には追加の処理ステップ(例えば、湿式造粒法)が、質量の流れを高めるために行われるであろう。しかしながら、そのような追加のステップはいずれも、パンクレリパーゼ製剤の酵素活性には有害であり、したがって、分解の危険性を低減するために避けられるべきである。
【0106】
実施例3.パンクレリパーゼ−担体ブレンドの錠剤の硬度測定
パンクレリパーゼ原料(例えば、Nordmarkから得られる)を、異なる担体と混合して、7つの異なるブレンドを形成する:ブレンド1:パンクレリパーゼ;ブレンド2:パンクレリパーゼおよび微結晶性セルロースB;ブレンド3:パンクレリパーゼおよびトレハロース;ブレンド4:パンクレリパーゼおよびイソマルト;ブレンド5:パンクレリパーゼおよび二塩基性カルシウム;ブレンド6:パンクレリパーゼおよびイノシトール;ブレンド7:パンクレリパーゼおよび微結晶性セルロースA。これらのブレンドを直接圧縮により錠剤化し、硬度を各試料について測定する。その結果を図1に報告する。
【0107】
低い硬度は後のコーティング工程のステップにおいて重大であるので、好適な硬度値が非常に重要である。
【0108】
実施例4.15%希釈パンクレリパーゼマイクロ錠剤の調製
パンクレリパーゼ原料(例えば、Nordmarkから得られる)を、担体(1種または複数種)およびさらなる賦形剤と混合して、異なるブレンドを形成する。3つの異なるブレンドを調製する。第1のブレンド(ブレンド1)は、15%のパンクレリパーゼ、80%の微結晶性セルロースA(含水量5%未満、公称平均粒径160μm、メッシュサイズ38:残留量≦1.0%、メッシュサイズ94:残留量≦50.0%、メッシュサイズ300:残留量≦70.0%)、および5%の賦形剤(クロスカルメロースナトリウム、3.0%;硬化ヒマシ油、1.0%;コロイド状二酸化ケイ素、0.5%;ステアリン酸マグネシウム0.5%)を含有し、それぞれの前記重量%は、ブレンドの総重量に基づくものである。
【0109】
第2のブレンド(ブレンド2)は、15%のパンクレリパーゼ、40%の微結晶性セルロースA(含水量5%未満、公称平均粒径160μm、メッシュサイズ38:残留量≦1.0%、メッシュサイズ94:残留量≦50.0%、メッシュサイズ300:残留量≦70.0%)、40%のトレハロース(Trehalose G)、5%の賦形剤(クロスカルメロースナトリウム、3.0%;硬化ヒマシ油、1.0%;コロイド状二酸化ケイ素、0.5%、ステアリン酸マグネシウム0.5%)を含有し、それぞれの前記重量%は、ブレンドの総重量に基づくものである。
【0110】
第3のブレンド(ブレンド3)は、15%のパンクレリパーゼ、40%の微結晶性セルロースB(含水量5%以下、公称平均粒径180μm、メッシュサイズ60:残留量≧10.0%、メッシュサイズ100:残留量≧50.0%)、40%のトレハロース(トレハロースG)、5%の賦形剤(クロスカルメロースナトリウム、3.0%;硬化ヒマシ油、1.0%;コロイド状二酸化ケイ素、0.5%;ステアリン酸マグネシウム0.5%)を含有し、それぞれの重量%は、ブレンドの総重量に基づくものである。
【0111】
微結晶性セルロースAおよびBは、実施例3の表5に規定されている。
【0112】
次いで、この3つのブレンドを錠剤化して、マイクロ錠剤(1.5×1.5mm)を生成する。これらのマイクロ錠剤を、リパーゼ活性、崩壊時間、LoDについて試験し、それらの重量、厚さおよび摩損度もまた、生成された各バッチについて測定する(表6)。
上記のμ錠剤は、パンクレリパーゼ含有量に関して高い均質性を有する(5%未満のCV%)。
【0113】
実施例5.10%の希釈パンクレリパーゼミニ錠剤の調製
パンクレリパーゼ原料(例えば、Nordmarkから得られる)および担体(微結晶性セルロース)および賦形剤(例えば、クロスカルメロースナトリウム、硬化ヒマシ油、コロイド状二酸化ケイ素、微結晶性セルロース、およびステアリン酸マグネシウム)を混合して、ブレンドを形成する。ブレンドの組成は、以下の表(表7)に報告されており、0.75〜0.76g/mlの密度を有する。
【0114】
上記のブレンドを、円形の直径2mmの勾配付き杵を用いて錠剤化する。以下の物理的特性、すなわち0.074g〜0.086gの間の重量を、2.5%p/p未満の摩損度(USP法)、2.0〜2.4mmの間の厚さと共に有するパンクレリパーゼミニ錠剤(MT)を得るために、圧縮パラメータ(表8)を設定する。
【0115】
4つのバッチ(A〜D)の10%希釈パンクレリパーゼMTを、これらのブレンドを用いて製造する。それらは以下の物性を有する(表9)。
【0116】
実施例6.10%パンクレリパーゼMTの含量均一性
投与単位の均一性を、含量均一性を測定することによって証明する。各バッチを実施例4におけると同様に調製し、消化酵素活性をアッセイするための公定方法(例えば、米国薬局方、パンクレリパーゼ:リパーゼ活性についてのアッセイ)に準じてリパーゼ含有量を測定することによってアッセイする。アッセイは1バッチ毎に10回繰り返され、そのCV%結果を表10に報告する。
調製されたMTは、パンクレリパーゼ含有量に関して高い均質性を示す。CV%が5%未満であることから、事実上、全てのアッセイされたバッチにより、用量均一性の要件が満たされている。
【0117】
実施例7.希釈パンクレリパーゼ錠剤のコーティング(μTおよびMT)
次いで、15%希釈パンクレリパーゼμTおよび10%希釈パンクレリパーゼMT(それぞれ、実施例5および6)を、塗料槽中のコーティング製剤(表11の組成を有する)で流動床によりコーティングする。コーティングは、錠剤が15〜32℃の温度に達した時に開始され得る。Zenpep(登録商標)ミニ錠剤に適用される標準的なコーティング方法に準じて調製されるコーティングされた粒子の組成は、(顕微鏡検査により分析されるとおり)均一で、滑らか、かつ均質な粒子を呈する。
次いで、非常に低い含水量を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセルに、そのコーティングされた希釈パンクレリパーゼマイクロ錠剤を充填する。
【0118】
実施例8.腸溶コーティングされた希釈パンクレリパーゼ製剤の酵素活性および溶出
HPMCカプセル(サイズ4 白不透明/白不透明)に、腸溶コーティングされた希釈パンクレリパーゼμTを充填する。このカプセルを、PPクロージャーライナー、Minipax乾燥剤を備えたガラス瓶中で貯蔵する。異なる条件下(25℃および相対湿度60%、ならびに40℃および相対湿度75%)において貯蔵された製剤について、酵素活性を測定する(表13〜18)。PPクロージャーライナー、Minipax乾燥剤を備えたガラス瓶中で40℃および相対湿度75%にて貯蔵されたバルクの腸溶コーティングされた希釈パンクレリパーゼマイクロ錠剤の貯蔵安定性もまた試験する(表12)。マイクロ錠剤の溶出もまた測定する。
【0119】
腸溶コーティングされたマイクロ錠剤1(μT1)は、15%のパンクレリパーゼ、80%の微結晶性セルロースA(含水量5%未満、公称平均粒径160μm、メッシュサイズ38:残留量≦1.0%、メッシュサイズ94:残留量≦50.0%、メッシュサイズ300:残留量≦70.0%)、および5%の賦形剤(クロスカルメロースナトリウム、3.0%;硬化ヒマシ油、1.0%;コロイド状二酸化ケイ素、0.5%;ステアリン酸マグネシウム0.5%)を含有し、それぞれの前記重量%は、コーティングされていないμTの総重量に基づくものである。
【0120】
腸溶性コーティングされたマイクロ錠剤2(μT2)は、15%のパンクレリパーゼ、40%の微結晶性セルロースA(含水量5%未満、公称平均粒径160μm、メッシュサイズ38:残留量≦1.0%、メッシュサイズ94:残留量≦50.0%、メッシュサイズ300:残留量≦70.0%)、40%のトレハロース、5%の賦形剤(クロスカルメロースナトリウム、3.0%;硬化ヒマシ油、1.0%;コロイド状二酸化ケイ素、0.5%、ステアリン酸マグネシウム0.5%)を含有し、それぞれの前記重量%は、コーティングされていないμTの総重量に基づくものである。
【0121】
腸溶性コーティングされたマイクロ錠剤3(μT3)は、15%のパンクレリパーゼ、40%の微結晶性セルロースB(含水量5%以下、公称平均粒径180μm、メッシュサイズ60:残留量≧10.0%、メッシュサイズ100:残留量≧50.0%)、40%のトレハロース、5%の賦形剤(クロスカルメロースナトリウム、3.0%;硬化ヒマシ油、1.0%;コロイド状二酸化ケイ素、0.5%;ステアリン酸マグネシウム0.5%)を含有し、それぞれの前記重量%は、μTの総重量に基づくものである。
【0122】
微結晶性セルロースAおよびBは、実施例3の表5に規定されており、腸溶性コーティング用組成物は、実施例7(表11)のコーティングと同じものである。
【0123】
これらの結果は、本発明の希釈パンクレリパーゼが、より厳しい貯蔵条件下であっても長期にわたって極めて安定であることを示している。
【0124】
特定の具体的な実施形態および実施例を参照して上に例示され、説明されてはいるが、本発明は、しかしながら、その示された詳細に限定されることは意図されていない。むしろ、様々な変更を、特許請求の範囲およびその均等物の範囲内において、本発明の精神から逸脱することなく、それらの詳細について行い得る。例えば、本文書において広く記載される範囲は全て、そのより広い範囲内に入るあらゆるより狭い範囲をその範囲内に包含することが、明示的に意図される。
図1