特許第6043935号(P6043935)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6043935ピペラジノトリアゾール化合物及びその製造方法と製薬用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043935
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】ピペラジノトリアゾール化合物及びその製造方法と製薬用途
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20161206BHJP
   A61K 31/501 20060101ALI20161206BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20161206BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20161206BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20161206BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   C07D487/04 145
   C07D487/04CSP
   A61K31/501
   A61P43/00 111
   A61P9/10
   A61P25/00
   A61P35/00
【請求項の数】14
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2015-524614(P2015-524614)
(86)(22)【出願日】2013年7月24日
(65)【公表番号】特表2015-527336(P2015-527336A)
(43)【公表日】2015年9月17日
(86)【国際出願番号】CN2013079998
(87)【国際公開番号】WO2014019468
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2015年3月26日
(31)【優先権主張番号】201210272101.5
(32)【優先日】2012年8月1日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513299225
【氏名又は名称】上海 インスティテュート オブ マテリア メディカ、チャイニーズ アカデミー オブ サイエンシーズ
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI INSTITUTE OF MATERIA MEDICA, CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
(73)【特許権者】
【識別番号】516304551
【氏名又は名称】シャンハイ エースブライト ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Shanghai Acebright Pharmaceuticals Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ツァン,アオ
(72)【発明者】
【氏名】ミャオ,ツェーホン
(72)【発明者】
【氏名】エー,ナー
(72)【発明者】
【氏名】フアン,シャージュアン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ツィーラン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チュアンフイツィー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,イー
(72)【発明者】
【氏名】ディン,ジアン
【審査官】 早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−503166(JP,A)
【文献】 特表2009−538896(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/072033(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/019427(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103172619(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102898377(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 487/04
A61K 31/501
A61P 9/10
A61P 25/00
A61P 35/00
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式Iで表されるピペラジノトリアゾール化合物またはその異性体またはその薬剤学的に許容される塩または水和物
【化1】
(式中、A及びBは、それぞれ独立に、水素あるいは置換または無置換のC1-C8炭化水素基で、且つA及びBの少なくとも一方が水素ではなく、ここで、前記置換のための置換基は、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基およびアミノ基から選ばれ、
あるいは、A及びBは、連結する炭素原子といっしょに置換または無置換のC4-C8脂肪族環、置換または無置換のC6-C10芳香族環、N、O及びSから選ばれる1〜3個の原子を含有する置換または無置換の4〜8員複素環、又はN、O及びSから選ばれる1〜3個の原子を含有する置換または無置換の5〜8員芳香族複素環を形成し、ここで、前記置換のための置換基は、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基およびアミノ基から選ばれ、
Xは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ基またはシアノ基で、
Yは、水素あるいは置換または無置換のC1-C8アルキル基で、ここで、前記置換のための置換基は、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルキルカルボニル基、C2-C6アルコキシカルボニル基、C2-C6アルケニル基及びC2-C6アルキニル基から選ばれ、
Gは、水素、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルキルカルボニル基、C1-C6アルキルアミノ基または(C1-C6アルキル)2アミノ基で、
Zは、水素、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルキルカルボニル基、C1-C6アルキルアミノ基または(C1-C6アルキル)2アミノ基で、
且つ、Y、G及びZは、少なくともいずれかが水素ではなく、
Rは、水素あるいは置換または無置換のC1-C8アルキル基から選ばれ、前記置換のための置換基は、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルキルカルボニル基、C2-C6アルコキシカルボニル基及びC6-C10アリール基から選ばれる)。
【請求項2】
Yが、置換または無置換のC1-C8アルキル基で、ここで、前記置換のための置換基は、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルキルカルボニル基、C2-C6アルコキシカルボニル基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基及びC6-C10アリール基から選ばれる、請求項1に記載のピペラジノトリアゾール化合物またはその異性体またはその薬剤学的に許容される塩または水和物。
【請求項3】
Gが、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルキルカルボニル基、C1-C6アルキルアミノ基または(C1-C6アルキル)2アミノ基である、請求項1に記載のピペラジノトリアゾール化合物またはその異性体またはその薬剤学的に許容される塩または水和物。
【請求項4】
Zが、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルキルカルボニル基、C1-C6アルキルアミノ基または(C1-C6アルキル)2アミノ基である、請求項1に記載のピペラジノトリアゾール化合物またはその異性体またはその薬剤学的に許容される塩または水和物。
【請求項5】
Gが水素であるときは、ZがC1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルキルカルボニル基、C1-C6アルキルアミノ基または(C1-C6アルキル)2アミノ基であり、または
Zが水素であるときは、GがC1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルキルカルボニル基、C1-C6アルキルアミノ基または(C1-C6アルキル)2アミノ基である、
請求項1に記載のピペラジノトリアゾール化合物またはその異性体またはその薬剤学的に許容される塩または水和物。
【請求項6】
A及びBは、それぞれ独立に、水素、置換または無置換のC1-C8アルキル基、置換または無置換のC2-C8アルケニル基、あるいは置換または無置換のC2-C8アルキニル基で、且つA及びBの少なくとも一方が水素ではなく、ここで、前記置換のための置換基は、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基およびアミノ基から選ばれ、
あるいは、A及びBは、連結する炭素原子といっしょに置換または無置換のC4-C7脂肪族環、置換または無置換のC6-C8芳香族環、N、O及びSから選ばれる1〜3個の原子を含有する置換または無置換の4〜7員複素環、又はN、O及びSから選ばれる1〜3個の原子を含有する置換または無置換の5〜7員芳香族複素環を形成し、ここで、前記置換のための置換基は、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基およびアミノ基から選ばれ、
Xは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ基またはシアノ基で、
Yは、水素あるいは置換または無置換のC1-C6アルキル基で、前記置換のための置換基は、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、C1-C4アルコキシ基、C2-C4アルキルカルボニル基、C2-C4アルコキシカルボニル基、C2-C4アルケニル基、C2-C4アルキニル基及びC6-C8アリール基から選ばれ、
Gは、独立に、水素、C1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ基、C2-C4アルキルカルボニル基、C1-C4アルキルアミノ基または(C1-C4アルキル)2アミノ基で、
Zは、独立に、水素、C1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ基、C2-C4アルキルカルボニル基、C1-C4アルキルアミノ基または(C1-C4アルキル)2アミノ基で、
且つ、Y、G及びZは、少なくともいずれかが水素ではなく、
Rは、水素あるいは置換または無置換のC1-C6アルキル基から選ばれ、前記置換のための置換基は、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、C1-C4アルコキシ基、C2-C4アルキルカルボニル基、C2-C4アルコキシカルボニル基及びC6-C8アリール基から選ばれる、
請求項1に記載のピペラジノトリアゾール化合物またはその異性体またはその薬剤学的に許容される塩または水和物。
【請求項7】
A及びBは、それぞれ独立に、水素あるいは置換または無置換のC1-C6アルキル基で、且つA及びBの少なくとも一方が水素ではなく、ここで、前記置換のための置換基は、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基およびアミノ基から選ばれ、
あるいは、A及びBは、連結する炭素原子といっしょに置換または無置換のC4-C7脂肪族環あるいは置換または無置換のC6-C8芳香族環を形成し、ここで、前記置換のための置換基は、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基およびアミノ基から選ばれ、
Xは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ基またはシアノ基で、
Yは、水素あるいは置換または無置換のC1-C6アルキル基で、前記置換のための置換基は、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、C1-C4アルコキシ基、C2-C4アルキルカルボニル基、C2-C4アルコキシカルボニル基、C2-C4アルケニル基、C2-C4アルキニル基及びC6-C8アリール基から選ばれ、
Gは、独立に、水素、C1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ基、C2-C4アルキルカルボニル基、C1-C4アルキルアミノ基または(C1-C4アルキル)2アミノ基で、
Zは、独立に、水素、C1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ基、C2-C4アルキルカルボニル基、C1-C4アルキルアミノ基または(C1-C4アルキル)2アミノ基で、
且つ、Y、G及びZは、少なくともいずれかが水素ではなく、
Rは、水素あるいは置換または無置換のC1-C6アルキル基から選ばれ、前記置換のための置換基は、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基およびアミノ基から選ばれる、
請求項6に記載のピペラジノトリアゾール化合物またはその異性体またはその薬剤学的に許容される塩または水和物。
【請求項8】
A及びBは、それぞれ独立に、水素あるいはC1-C4アルキル基で、且つA及びBの少なくとも一方が水素ではなく、
あるいは、A及びBは、連結する炭素原子といっしょに置換または無置換のC4-C6脂肪族環あるいは置換または無置換のC6-C8芳香族環を形成し、ここで、前記置換のための置換基は、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基およびアミノ基から選ばれ、
Xは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ基またはシアノ基で、
Yは、水素あるいは置換または無置換のC1-C4アルキル基で、前記置換のための置換基は、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、C1-C4アルコキシ基、C2-C4アルキルカルボニル基、C2-C4アルコキシカルボニル基、C2-C4アルケニル基及びフェニル基から選ばれ、
Gは、独立に、水素、C1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ基、C1-C4アルキルアミノ基または(C1-C4アルキル)2アミノ基で、
Zは、独立に、水素、C1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ基、C1-C4アルキルアミノ基または(C1-C4アルキル)2アミノ基で、
且つ、Y、G及びZは、少なくともいずれかが水素ではなく、
Rは、水素あるいは置換または無置換のC1-C4アルキル基から選ばれ、前記置換のための置換基は、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基およびアミノ基から選ばれる、
請求項7に記載のピペラジノトリアゾール化合物またはその異性体またはその薬剤学的に許容される塩または水和物。
【請求項9】
A及びBは、それぞれ独立に、水素あるいはメチル基で、且つA及びBの少なくとも一方が水素ではなく、
あるいは、A及びBは、連結する炭素原子といっしょにベンゼン環を形成し、
Xは、水素またはハロゲンで、
Yは、水素、メチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、アリル基、エトキシカルボニルエチル基またはベンジル基で、
Gは、独立に、水素、メチル基、エチル基、メトキシ基またはジメチルアミノ基で、
Zは、独立に、水素、メチル基、エチル基、メトキシ基またはジメチルアミノ基で、
且つ、Y、G及びZは、少なくともいずれかが水素ではなく、
Rは、水素、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基またはトリフルオロメチル基である、
請求項8に記載のピペラジノトリアゾール化合物またはその異性体またはその薬剤学的に許容される塩または水和物。
【請求項10】
以下の化合物の一つである、請求項1に記載のピペラジノトリアゾール化合物またはその異性体またはその薬剤学的に許容される塩または水和物。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【請求項11】
原料S(1eq)とアミンD(1eq)をDMFに溶解させ、氷浴で順にHBTU、DIPEAを入れ、ゆっくり室温まで昇温して一晩反応させ、氷浴で水を入れ、塩化メチレンで抽出し、さらに溶媒を蒸発で除去し、カラムクロマトグラフィーで分離して一般式Iで表されるピペラジノトリアゾール化合物を得る、
【化6】
工程を含む、請求項1に記載のピペラジノトリアゾール化合物を製造する方法。
【請求項12】
ポリ(アデノシン二リン酸リボース)ポリメラーゼ-1阻害剤としてのポリ(アデノシン二リン酸リボース)ポリメラーゼに関連する疾患を予防及び/又は治療する薬物の製造における、請求項1〜10のいずれかに記載のピペラジノトリアゾール化合物またはその異性体またはその薬剤学的に許容される塩または水和物の使用。
【請求項13】
前記ポリ(アデノシン二リン酸リボース)ポリメラーゼに関連する疾患は、虚血性疾患、神経変性疾患または癌症である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
治療有効量の一種又は複数種の請求項1〜10のいずれかに記載のピペラジノトリアゾール化合物またはその薬剤学的に許容される塩または水和物を含み、且つさらに任意に薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物学の分野に関し、具体的に、一つ又は複数の置換基を含有するピペラジノトリアゾール化合物またはその異性体またはその薬剤学的に許容される塩、エステル、プロドラッグまたは水和物、その医薬組成物、その製造方法および新規な高選択性ポリ(アデノシン二リン酸リボース)ポリメラーゼ-1(PARP1)阻害剤としてのPARP関連疾患の予防及び/又は治療におけるその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
1.PARPの構造のサブタイプと生物活性
ポリ(アデノシン二リン酸リボース)ポリメラーゼ[Poly(ADP-ribose) polymerase-1、PARP]は、真核細胞に存在し、ポリADPリボース化を触媒し、多くのファミリーメンバーを含む。中では、PARP1は、最も早く発見された、アデノシン二リン酸リボース基の多量体化を触媒する機能を有するリボザイムで、その後、PARP2、PARP3、PARP4(VPARP)、PARP5a(tankyrase 1)、PARP5b(tankyrase 2)、PARP7(TiPARP)やsPARP1などのサブタイプが分離されてきた。現在、PARP1の触媒ドメインの構造によって、18種類の潜在のPARP活性を持つ構造のサブタイプが確認されたが、なかでも、PARP1の構造は比較的に完全で、N末端のDNA結合ドメイン(DBD)、自己修飾ドメイン(AMD)及びC末端の触媒ドメインといった、3つの主なドメインを含む。DBDには、2つのジンクフィンガー構造とDNA鎖断裂感受性エレメント(NLS)が含まれ、NLSでDNA鎖断裂のシグナルを受け、ジンクフィンガー構造が損傷したDNA部位と結合して修復する。PARPファミリーにおいて、PARP-2とPARP1の相同性が最も高く、69%の相同性を有するため、いま報告されたPARP1阻害剤は、いずれもPARP2に対して同等の活性を持つ。
【0003】
2.PARPと疾患
既知のPARPに関連する機能において、PARP1はほとんどで、具体的に、1)DNAを修復してゲノムの安定性を保つこと、2)転写のレベルを調節し、関連タンパク質の発現を制御すること、3)複製と分化に影響し、テロメアの長さの維持に関与すること、4)細胞の死亡を制御し、生体内における損傷細胞を除去することを含む。そのため、PARP1の活性を抑制することによって、PARP1が仲介するDNA修復機構を抑制し、放射線治療と化学治療の腫瘍細胞のDNAに対する損傷を向上させることができるため、腫瘍に対する治療作用を有する。
PARPは、DNA修復機能を有するが、DNAの損傷がひどすぎて修復が困難な場合、PARPが過剰に活性化され、「自殺機序」の傾向にあって基質であるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)とATPが大量に消費され、細胞のエネルギーが無くなり、細胞の壊死を引き起こし、最終的に器官・組織の損傷につながるが、これは脳損傷と神経変性疾患の発症機序の一つである。
研究によると、PARP1阻害剤は、脳虚血性損傷、ショック、アルツハイマー病やパーキンソン病などの疾患の動物モデルでは、優れた効果が示された。そのため、PARP1阻害剤は、様々な虚血性疾患と神経変性疾患に対して治療作用を有する。
【0004】
3.PARP阻害剤
Arminらは、PARPの基質であるNAD+をテンプレートとして研究したところ、PARP1の触媒活性部位は、ドナーとアクセプターの二つの領域に大きく分かれることを見出した。アクセプター領域は、ポリ(アデノシン二リン酸リボース)鎖のADP部位と結合する。ドナー領域は、NAD+と結合し、さらに三つのサブ結合領域に分かれ、それぞれニコチンアミド-リボース結合サイト(NI site)、リン酸結合サイト(PH site)、アデノシン-リボース結合サイト(AD site)である。PARP阻害剤の多くは、PARPのNI siteと互いに作用し、NAD+を競合的に阻害するものであるため、ニコチンアミドの構造と類似性があり、例えば、アストラゼネカ株式会社によって開発されたAZD2281(olaparib/KU-59436)は、経口投与のPARP小分子阻害剤で、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセルなどの薬物と併用して卵巣癌、乳癌および固形腫瘍を治療する研究において、優れた開発の将来性が示され、現在はII期臨床段階にある。
【0005】
【化1】
【0006】
しかしながら、化合物AZD2281は、体内の作用時間と半減期が短く(<1時間)、生物的利用率も低く(<15%)、さらなる研究・開発が困難になる。これらの欠点の原因はいろいろあるが、分子構造における環状第三級アミンは代謝の不安定性の要因の一つである。環状第三級アミンは、酸化酵素またはP450代謝酵素の作用によって酸化産物Iまたはイミン中間体II(上述図に示すように)、さらにN-脱アルキル化、環ヒドロキシ化、α-カルボニル化、N-酸化や開環等の代謝物を含む一連の酸化産物が生成することによって、薬物の分子が代謝されて不活性化し、ひいては毒性が生じ、例えば、一部の環状第三級アミンは、イミン中間体を経て代謝し、MPTP(1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン)やフェンサイクリジン(幻覚剤)などになり、中枢神経系に対する毒性が生じる。同時に、AZD2281は、PARPファミリーのメンバーに対する選択性が低く、特にテロメラーゼであるTankyrase 1とTankyrase 2に対する選択性が低く、臨床では安全性の問題がある。
【0007】
そのため、本発明は、主に、PARP1結晶の構造およびその小分子化合物、例えばAZD2281との結合の特徴を総合的に分析した上で、活性に影響する重要な水素結合作用サイト、即ち、アミド断片を残し、主にその疎水性作用領域に対して構造を修飾し、特に、1)置換基を含有するピペラジノトリアゾール環構造を導入し、第三級アミンの立体障害を増加し、あるいは代謝サイトを置換させて化合物の体内P450シトクロム系の作用下の酸化代謝能を低下させることによって、分子の体内安定性を増加し、毒性代謝物が生成する可能性を低下させること、2)ピペラジン環に一つ又は複数の置換基を導入し、テロメラーゼであるTankyrase 1とTankyrase 2に対する選択性を上げることで、化合物のPARP1阻害剤としての疾患治療における安全性を向上させる。そのため、一つ又は複数の置換基を含有するピペラジノトリアゾール化合物を設計し、新規な高選択性PARP1阻害剤として、様々な虚血性疾患、神経変性疾患および癌症の治療薬に使用する。
【発明の概要】
【0008】
本発明の一つの目的は、下記一般式Iで表される、一つ又は複数の置換基を含有するピペラジノトリアゾール化合物またはその異性体またはその薬剤学的に許容される塩、エステル、プロドラッグまたは水和物を提供することである。
本発明のもう一つの目的は、このような化合物の製造方法を提供することである。
本発明のまたもう一つの目的は、新規な高選択性PARP1阻害剤としてのPARP(ポリ(アデノシン二リン酸リボース)ポリメラーゼ)に関連する疾患を予防及び/又は治療する薬物の製造におけるこのような化合物の用途を提供することで、前述PARPに関連する疾患は、様々な虚血性疾患(大脳、臍帯、心臓、消化管、網膜など)、神経変性疾患(パーキンソン病、アルツハイマー病、筋ジストロフィーなど)および癌症(乳癌、卵巣癌、肝臓癌、黒色腫、前立腺癌、結腸癌、胃癌や固形腫瘍など)を含む。
【0009】
本発明のもう一つの目的は、治療有効量の一種又は複数種のピペラジノトリアゾール化合物またはその薬学的に許容される塩、エステル、プロドラッグまたは水和物を含む医薬組成物を提供することである。
本発明のさらにもう一つの目的は、PARPに関連する疾患を予防及び/又は治療する方法を提供することである。
上述目的を実現させるために、本発明は、下記一般式Iで表されるピペラジノトリアゾール化合物またはその異性体またはその薬剤学的に許容される塩、エステル、プロドラッグまたは水和物を提供する。
【化2】
【0010】
(式中、A及びBは、それぞれ独立に、水素あるいは置換または無置換のC1-C8炭化水素基で、且つA及びBの少なくとも一方が水素ではなく、ここで、前記置換のための置換基は、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基およびアミノ基から選ばれ、
あるいは、A及びBは、連結する炭素原子といっしょに置換または無置換のC4-C8脂肪族環、置換または無置換のC6-C10芳香族環、N、O及びSから選ばれる1〜3個の原子を含有する置換または無置換の4〜8員複素環、又はN、O及びSから選ばれる1〜3個の原子を含有する置換または無置換の5〜8員芳香族複素環を形成し、ここで、前記置換のための置換基は、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基およびアミノ基から選ばれる。
【0011】
Xは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ基またはシアノ基である。
Yは、水素あるいは置換または無置換のC1-C8アルキル基で、前記置換のための置換基は、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルキルカルボニル基、C2-C6アルコキシカルボニル基、C2-C6アルケニル基、C2-C6アルキニル基及びC6-C10アリール基から選ばれる。
Gは、水素、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルキルカルボニル基、C1-C6アルキルアミノ基または(C1-C6アルキル)2アミノ基である。
Zは、水素、C1-C6アルキル基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルキルカルボニル基、C1-C6アルキルアミノ基または(C1-C6アルキル)2アミノ基である。
且つ、Y、G及びZは、少なくともいずれかが水素ではない。
Rは、水素あるいは置換または無置換のC1-C8アルキル基から選ばれ、前記置換のための置換基は、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、C1-C6アルコキシ基、C2-C6アルキルカルボニル基、C2-C6アルコキシカルボニル基及びC6-C10アリール基から選ばれる。)
【0012】
好ましくは、一般式I化合物において、
A及びBは、それぞれ独立に、水素、置換または無置換のC1-C8アルキル基、置換または無置換のC2-C8アルケニル基、あるいは置換または無置換のC2-C8アルキニル基で、且つA及びBの少なくとも一方が水素ではなく、ここで、前記置換のための置換基は、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基およびアミノ基から選ばれ、
あるいは、A及びBは、連結する炭素原子といっしょに置換または無置換のC4-C7脂肪族環、置換または無置換のC6-C8芳香族環、N、O及びSから選ばれる1〜3個の原子を含有する置換または無置換の4〜7員複素環、又はN、O及びSから選ばれる1〜3個の原子を含有する置換または無置換の5〜7員芳香族複素環を形成し、ここで、前記置換のための置換基は、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基およびアミノ基から選ばれ、
Xは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ基またはシアノ基で、
Yは、水素あるいは置換または無置換のC1-C6アルキル基で、前記置換のための置換基は、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、
ヒドロキシ基、アミノ基、C1-C4アルコキシ基、C2-C4アルキルカルボニル基、C2-C4アルコキシカルボニル基、C2-C4アルケニル基、C2-C4アルキニル基及びC6-C8アリール基から選ばれ、
Gは、水素、C1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ基、C2-C4アルキルカルボニル基、C1-C4アルキルアミノ基または(C1-C4アルキル)2アミノ基で、
Zは、水素、C1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ基、C2-C4アルキルカルボニル基、C1-C4アルキルアミノ基または(C1-C4アルキル)2アミノ基で、
且つ、Y、G及びZは、少なくともいずれかが水素ではなく、
Rは、水素、置換または無置換のC1-C6アルキル基から選ばれ、前記置換のための置換基は、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、C1-C4アルコキシ基、C2-C4アルキルカルボニル基、C2-C4アルコキシカルボニル基及びC6-C8アリール基から選ばれる。
【0013】
より好ましくは、一般式I化合物において、
A及びBは、それぞれ独立に、水素あるいは置換または無置換のC1-C6アルキル基で、且つA及びBの少なくとも一方が水素ではなく、ここで、前記置換のための置換基は、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基およびアミノ基から選ばれ、
あるいは、A及びBは、連結する炭素原子といっしょに置換または無置換のC4-C7脂肪族環あるいは置換または無置換のC6-C8芳香族環を形成し、ここで、前記置換のための置換基は、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基およびアミノ基から選ばれ、
Xは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ基またはシアノ基で、
Yは、水素あるいは置換または無置換のC1-C6アルキル基で、前記置換のための置換基は、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、C1-C4アルコキシ基、C2-C4アルキルカルボニル基、C2-C4アルコキシカルボニル基、C2-C4アルケニル基、C2-C4アルキニル基及びC6-C8アリール基から選ばれ、
Gは、水素、C1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ基、C2-C4アルキルカルボニル基、C1-C4アルキルアミノ基または(C1-C4アルキル)2アミノ基で、
Zは、水素、C1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ基、C2-C4アルキルカルボニル基、C1-C4アルキルアミノ基または(C1-C4アルキル)2アミノ基で、
且つ、Y、G及びZは、少なくともいずれかが水素ではなく、
Rは、水素あるいは置換または無置換のC1-C6アルキル基から選ばれ、前記置換のための置換基は、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基およびアミノ基から選ばれる。
【0014】
より好ましくは、一般式I化合物において、
A及びBは、それぞれ独立に、水素あるいはC1-C4アルキル基で、且つA及びBの少なくとも一方が水素ではなく、
あるいは、A及びBは、連結する炭素原子といっしょに置換または無置換のC4-C6脂肪族環あるいは置換または無置換のC6-C8芳香族環を形成し、ここで、前記置換のための置換基は、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基およびアミノ基から選ばれ、Xは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ基またはシアノ基で、
Yは、水素あるいは置換または無置換のC1-C4アルキル基で、前記置換のための置換基は、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、C1-C4アルコキシ基、C2-C4アルキルカルボニル基、C2-C4アルコキシカルボニル基、C2-C4アルケニル基及びフェニル基から選ばれ、
Gは、水素、C1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ基、C1-C4アルキルアミノ基または(C1-C4アルキル)2アミノ基で、
Zは、水素、C1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ基、C1-C4アルキルアミノ基または(C1-C4アルキル)2アミノ基で、
且つ、Y、G及びZは、少なくともいずれかが水素ではなく、
Rは、水素あるいは置換または無置換のC1-C4アルキル基から選ばれ、前記置換のための置換基は、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基およびアミノ基から選ばれる。
【0015】
特に好ましくは、一般式I化合物において、
A及びBは、それぞれ独立に、水素あるいはメチル基で、且つA及びBの少なくとも一方が水素ではなく、
あるいは、A及びBは、連結する炭素原子といっしょにベンゼン環を形成し、
Xは、水素またはハロゲンで、
Yは、水素、メチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、アリル基、エトキシカルボニルエチル基またはベンジル基で、
Gは、水素、メチル基、エチル基、メトキシ基またはジメチルアミノ基で、
Zは、水素、メチル基、エチル基、メトキシ基またはジメチルアミノ基で、
且つ、Y、G及びZは、少なくともいずれかが水素ではなく、
Rは、水素、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基またはトリフルオロメチル基である。
【0016】
本分野の一般技術者には、一般式Iで表されるピペラジノトリアゾール化合物は、さらに互変異性体が存在し得ることが理解できる。一般式Iで表されるピペラジノトリアゾール化合物の互変異性体は、下記一般式IIで表される構造を含むが、これらに限定されない。
【化3】
本発明の典型的な化合物は、以下の化合物を含むが、これらに限定されない。
【0017】
【表A-1】
【0018】
【表A-2】
【0019】
【表A-3】
【0020】
本発明のもう一つは、以下のような工程を含む、一般式Iで表されるピペラジノトリアゾール化合物の製造方法を提供する。
【化4】
【0021】
原料Sの合成は、文献J. Med. Chem. 2008, 51, 6581-6591、US2008161280及びWO2007138351を参照し、ここで、HBTUはベンゾゾトリアゾール-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファートで、DIPEAはジイソプロピルエチルアミンで、DMFはN,N-ジメチルホルムアミドである。
原料S(1eq)と購入または合成したアミンD(1eq)をDMFに溶解させ、氷浴で順にHBTU、DIPEAを入れ、ゆっくり室温まで昇温して一晩反応させる。氷浴で水を入れ、塩化メチレンで抽出し、塩化メチレン相を飽和食塩水で洗浄し、乾燥し、溶媒を蒸発で除去し、カラムクロマトグラフィーで分離して一般式Iで表されるピペラジノトリアゾール化合物を得る。
【0022】
本発明のさらにもう一つの目的は、新規な高選択性PARP1阻害剤としてのPARP(ポリ(アデノシン二リン酸リボース)ポリメラーゼ)に関連する疾患を予防及び/又は治療する薬物の製造における一般式Iで表されるピペラジノトリアゾール化合物またはその異性体またはその薬剤学的に許容される塩、エステル、プロドラッグまたは水和物の用途を提供することで、前述PARPに関連する疾患は、様々な虚血性疾患(大脳、臍帯、心臓、消化管、網膜など)、神経変性疾患(パーキンソン病、アルツハイマー病、筋ジストロフィーなど)および癌症(乳癌、卵巣癌、肝臓癌、黒色腫、前立腺癌、結腸癌、胃癌や固形腫瘍など)である。
【0023】
本発明のまたもう一つの目的は、治療有効量の一種又は複数種の一般式Iで表されるピペラジノトリアゾール化合物またはその薬学的に許容される塩、エステル、プロドラッグまたは水和物を含み、且つさらに任意に薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、医薬組成物を提供することである。
本発明のまたもう一つの目的は、治療有効量の一種又は複数種の一般式Iで表されるピペラジノトリアゾール化合物またはその薬学的に許容される塩、エステル、プロドラッグまたは水和物を含み、且つさらに任意に薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、PARP1阻害剤を提供することである。
本発明のまたもう一つの目的は、患者に治療有効量の一般式Iで表されるピペラジノトリアゾール化合物またはその薬学的に許容される塩、エステル、プロドラッグまたは水和物、あるいは本発明の上述医薬組成物を投与することを含む、PARPに関連する疾患を予防及び/治療する方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、ラセミ体S3のスペクトルである。
図2図2は、光学異性体S3-(+)のスペクトルである。
図3図3は、光学異性体S3-(-)のスペクトルである。
【0025】
具体的な実施形態
以下、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、これらの実施例は、本発明の範囲を制限するものではない。
一.製造実施例
1H-NMRは、Varian Mercury AMX300型の装置によって測定した。MSは、VG ZAB-HS又はVG-7070型の装置によって測定し、説明しない限り、いずれもEI源(70ev)であった。溶媒は、すべて使用前に改めて蒸留され、使用された無水溶媒はいずれも標準方法によって乾燥されたものであった。説明しない限り、反応は、いずれも窒素保護下で行い、且つTLCでモニターし、後処理は、いずれも飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄して無水硫酸ナトリウムで乾燥するプロセスであった。製品の精製は、説明しない限り、いずれもシリカゲル(200〜300メッシュ)カラムクロマトグラフィーを使用した。ここで、シリカゲル(200〜300メッシュ)は青島海洋化工厂製のもので、GF254薄層シリカゲル板は、煙台江友シリカゲル開発有限公司製のものであった。
【0026】
【化5】
ここで、原料Sの合成は、文献J. Med. Chem. 2008, 51, 6581-6591を、原料1-1の合成は、文献J. Med. Chem. 2008, 51, 589-602を参照し、HBTUはベンゾゾトリアゾール-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファートで、DIPEAはジイソプロピルエチルアミンで、DMFはN,N-ジメチルホルムアミドであった。
【0027】
中間体S(1eq)と8-ベンジル-3-トリフルオロメチル-5,6,7,8-テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾール[4,3-a]ピペラジン(1eq)をDMFに溶解させ、氷浴で順にHBTU(1.2eq)、DIPEA(2eq)を入れ、ゆっくり室温まで昇温して一晩反応させた。氷浴で水を入れ、塩化メチレンで2回抽出し、塩化メチレン相を飽和食塩水で洗浄し、乾燥し、溶媒を蒸発で除去し、カラムクロマトグラフィーによって白色泡状物S1を得た。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ11.69(s,0.5Η),11.45(s,0.5H),8.44(s,1H),7.97〜7.62(m,3H),7.41〜6.69(m,7H),6.33(s,1H),5.26(d,J=40.2Hz,1H),4.29(s,2H),4.09(s,1.5H),3.89(s,1H),3.62(m,1.5H),3.18(s,1H),2.86(m,1H).
【0028】
【化6】
ここで、原料2-1の合成は、文献J. Med. Chem. 2008, 51, 589-602を参照した。
S2の合成方法はS1と同様であった。S2の分析データ:
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ11.59(s,0.65Η),11.47(s,0.35H),8.56〜8.29(m,1H),7.90〜7.59(m,3H),7.33(m,2H),7.06(m,1H),6.21〜6.17(m,0.5H),5.86(m,0.5H),5.47〜4.72(m,3H),4.30(s,2H),4.21〜3.82(m,2H),3.71(m,1H),3.47〜2.47(m,3H).
【0029】
【化7】
ここで、原料3-1の合成は、文献J. Med. Chem. 2008, 51, 589-602を参照した。
S3の合成方法はS1と同様であった。S3の分析データ:
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ12.19(s,0.33H),12.01(s,0.67H),8.37(d,J=7.4Hz,1H),7.71(m,3H),7.48〜7.28(m,2H),7.04(t,J=8.8Hz,1H),4.88(m,1H),4.76〜4.41(m,2H),4.22(s,2H),3.72(s,1H),3.46〜3.41(m,1H),1.49(d,J=6.3Hz,3H).
【0030】
【化8】
ここで、原料4-1の合成は、文献J. Med. Chem. 2008, 51, 589-602を参照した。
S4の合成方法はS1と同様であった。S4の分析データ:1H NMR(300MHz,CDCl3)δ12.13(s,1H),8.33(d,J=6.9Hz,1H),7.65(m,3H),7.35(s,2H),7.01(t,J=8.1Hz,1H),6.02(s,0.5H),5.18〜4.88(m,0.5H),4.25(s,2H),4.20〜3.80(m,3H),3.68(m,1H),1.63(d,J=4.5Hz,2H),1.46(s,1H).
【0031】
【化9】
ここで、原料5-1の合成は、文献J. Med. Chem. 2008, 51, 589-602を参照した。
S5の合成方法はS1と同様であった。
S5の分析データ:1H NMR(300MHz,CDCl3)δ11.93(s,0.3H),11.79(d,J=13.8Hz,0.7H),8.43(d,J=7.5Hz,1H),7.73(m,3H),7.36(m,2H),7.07(m,1H),6.10(t,J=6.9Hz,0.25H),5.09(d,J=7.2Hz,0.25H),4.89(d,J=14.1Hz,0.25H),4.67(s,0.25H),4.55〜4.37(m,1H),4.35〜4.24(m,2H),3.87〜3.53(m,0.5H),3.46〜3.18(m,1H),3.12〜3.05(m,0.5H),1.71〜1.43(m,6H).
【0032】
【化10】
ここで、原料6-1の合成は、文献J. Med. Chem. 2008, 51, 589-602を参照した。
S6の合成方法はS1と同様であった。S6の分析データ:
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ12.11(s,0.3Η),δ11.94(s,0.7Η),8.39(d,J=7.2Hz,1H),7.70(d,J=7.2Hz,3H),7.36(d,J=5.4Hz,2H),7.03(t,J=8.7Hz,1H),5.14(s,0.5H),4.76(s,1.5H),4.27(s,2H),3.98(s,1.5H),3.52(s,0.5H),1.62(s,4.35H),1.40(s,1.68H).
【0033】
【化11】
ここで、原料7-1の合成は、文献J. Med. Chem. 2008, 51, 589-602を参照し、TMEDAはテトラメチルエチレンジアミンであった。
【0034】
中間体7-2の合成:
原料7-1(1eq)をテトラヒドロフランに溶解させ、-78℃でTMEDA(1.5eq)を入れ、10min後ゆっくりn-BuLiを滴下し、10min後アリルブロミドを入れ、滴下が終わって20min後冷却を止めた。飽和クロロアミンでクエンチングした後、塩化メチレンで2回抽出し、塩化メチレン相を飽和食塩水で洗浄し、乾燥し、溶媒を蒸発で除去し、カラムクロマトグラフィーによって中間体7-2を得た。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ5.98〜5.36(m,2H),5.24〜4.83(m,2H),4.63〜4.26(m,2H),3.29(m,1H),2.82(s,1H),2.67(m,H),1.55〜1.37(m,12H).
【0035】
中間体7-3の合成:
原料7-2をエタノールに溶解させ、6N塩酸を入れ、室温で一晩撹拌し、直接減圧蒸留で溶媒を除去し、使用に備えた。S7の合成方法はS1と同様であった。S7の分析データ:
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ11.89〜11.78(m,1H),8.42(d,J=7.5Hz,1H),7.72(m,3H),7.38(m,2H),7.06(m,1H),6.25〜6.19(m,0.5H),5.87(m,0.5H),5.49〜4.73(m,3H),4.30(s,2H),4.20〜3.80(m,3H),3.45〜2.44(m,2H),1.72〜1.45(m,3H).
【0036】
【化12】
【0037】
中間体8-1の合成:
合成方法は、7-2の合成と同様であった。化合物8-1の分析データ:1H NMR(300MHz,CDCl3)δ7.38〜7.19(m,3Η),7.12(d,J=6.0Hz,2H),5.68(dd,J=9.1,3.8Hz,1H),4.49〜4.15(m,2H),.39(d,J=11.4Hz,1H),3.19(dd,J=13.7,9.7Hz,1H),2.91(dd,J=14.3,10.1Hz,1H),1.30〜1.07(m,12H).
【0038】
中間体8-2の合成:
原料8-1をエタノールに溶解させ、6N塩酸を入れ、室温で一晩撹拌し、直接減圧蒸留で溶媒を除去し、使用に備えた。最終産物S8の合成:
S8の合成方法はS1と同様であった。化合物S8の分析データ:1H NMR(300MHz,CDCl3)δ11.70(s,0.5Η),11.46(s,0.5H),8.44(s,1H),7.78(m,3H),7.43〜6.68(m,7H),6.35(s,1H),5.28(m,H),5.17〜4.67(m,1H),4.30(s,2H),4.09(m,2H),3.48〜3.14(m,2H),1.75〜1.48(m,3H).
【0039】
【化13】
S9及び中間体の合成方法は、S8と同様であった。
化合物S9の分析データ:1H NMR(300MHz,CDCl3)δ12.12(s,0.4Η),δ11.96(s,0.6H),8.36(d,J=7.2Hz,1H),7.70(d,J=7.2Hz,3H),7.36(d,J=5.4Hz,2H),7.03(t,J=8.7Hz,1H),6.00(s,0.5H),5.15〜4.85(m,0.5H),4.28(s,2H),3.95(s,1.5H),3.50(s,0.5H),1.60〜1.34(m,9H).
【0040】
【化14】
ここで、原料10-1の合成は、文献Journal of Heterocyclic Chemistry, 2005, 42(4), 691-694を参照した。
【0041】
中間体10-2の合成:
原料10-1を80%水加ヒドラジンに溶解させ、120℃に加熱して反応させ、完全に反応した後、室温に冷却してから冷蔵庫に置き、固体が大量に析出し、ろ過し、加熱乾燥して粗製品10-2を得た。1H NMR(300MHz,DMSO)δ7.48(s,1Η),7.41(s,1H),7.35(s,1H),4.11(s,2H),3.99(s,3H).
中間体10-3の合成:
無水トリフルオロ酢酸を氷浴で冷却した後、10-2を分けて入れ、さらにこの温度で10min撹拌し、ゆっくり室温に昇温して反応させ、完全に反応した後、反応液を減圧で蒸発させ、さらにポリリン酸を入れ、120℃に加熱して一晩反応させ、冷却して反応液を冷却された濃アンモニア水に注ぎ、ろ過して粗製品10-3を得た。1H NMR(300MHz,DMSO)δ9.51(s,1Η),8.08(s,1Η),4.02(s,3Η).
【0042】
中間体10-4の合成:
中間体10-3をメタノールに溶解させ、パラジウム炭素を入れ、水素置換して一晩反応させた。完全に反応させた後、パラジウム炭素をろ過し、ろ液を濃縮して10-4を得た。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ5.43(t,J=7.5Hz,1H),4.28(d,J=16.8Hz,1H),4.07(d,J=16.8Hz,1H),3.39(s,3H),3.18(dd,J=13.5,3.9Hz,1H),3.03(d,J=13.5Hz,1H),2.20(s,1H).
最終産物S10の合成:
S10の合成方法は、S1と同様であった。S10の分析データ:1H NMR(300MHz,CDCl3)δ12.21(s,0.4H),12.01(s,0.6H),8.35(d,J=7.4Hz,1H),7.69(m,3H),7.46〜7.28(m,2H),7.02(t,J=8.7Hz,1H),5.66(m,1H),4.88(m,1H),4.76(m,1H),4.22(s,2H),3.92(s,1H),3.71〜3.52(m,1H),3.35(s,3H).
【0043】
【化15】
最終産物S11及びその関連中間体の合成はS10と同様であった。
【0044】
11-2の分析データ1H NMR(300MHz,DMSO)δ7.45(s,1Η),7.38(s,1H),7.32(s,1H),4.09(s,2H),3.09(s,6H).
11-3の分析データ1H NMR(300MHz,DMSO)δ9.10(s,1Η),8.01(s,1H),3.21(s,6H).
11-4の分析データ1H NMR(300MHz,CDCl3)δ5.18(t,J=7.5Hz,1H),4.18(d,J=16.8Hz,1H),4.01(d,J=16.8Hz,1H),3.18(dd,J=13.5,3.9Hz,1H),3.03(d,J=13.5Hz,1H),2.28(s,6H),2.20(s,1H).
S11の分析データ1H NMR(300MHz,CDC13)δ12.22(s,0.4H),12.02(s,0.6H),8.33(d,J=7.4Hz,1H),7.66(m,3H),7.46〜7.28(m,2H),7.00(t,J=8.7Hz,1H),5.26(m,1H),4.86〜4.65(m,2H),4.21(s,2H),3.90(s,1H),3.70〜3.50(m,1H),2.31(m,6H).
【0045】
【化16】
ここで、中間体12-1の合成は、文献Journal of Natural Products, 2011, 74(7), 1630-1635を参照した。中間体12-4の合成は、11-4の合成方法と同様で、以降は前述中間体7-3の合成方法によって中間体12-7を得、最後に縮合して最終産物S12を得た。
化合物12-2の分析データ:1H NMR(300MHz,DMSO)δ7.52(s,1Η),7.41(s,1H),7.35(s,1H),4.21(s,2H),3.02(q,J=7.0Hz,2H),1.10(t,J=7.0Hz,3H).
化合物12-3の分析データ:1H NMR(300MHz,DMSO)δ9.01(s,1Η),7.92(s,1H),3.03(q,J=7.0Hz,2H),1.15(t,J=7.0Hz,3H).
化合物12-4の分析データ:1H NMR(300MHz,CDCl3)δ4.12(m,1H),4.01(d,J=16.8Hz,1H),3.83(d,J=16.8Hz,1H),3.12(dd,J=13.5,3.9Hz,1H),2.88(d,J=13.5Hz,1H),2.20(s,1H),1.75(q,J=7.0Hz,2H),0.95(t,J=7.0Hz,3H).
化合物12-6の分析データ:1H NMR(300MHz,CDCl3)δ5.57(m,1H),4.78〜4.16(m,2H),3.29(m,1H),1.73〜1.62(m,5H),0.95(m,3H).
化合物S12の分析データ:1H NMR(300MHz,CDC13)δ11.96(s,0.3H),11.81(d,J=13.8Hz,0.7H),8.45(d,J=7.5Hz,1H),7.75(m,3H),7.37(m,2H),7.07(m,1H),6.14(t,J=6.9Hz,0.25H),5.06(d,J=7.2Hz,0.25H),4.89(d,J=14.1Hz,0.25H),4.66(s,0.25H),4.54〜4.40(m,1H),4.30〜4.28(m,2H),3.81〜3.48(m,0.5H),3.48〜3.09(m,1H),3.10〜3.02(m,0.5H),1.81〜1.43(m,5H),0.96(m,3H).
【0046】
【化17】
化合物S13の合成は、化合物S12の合成方法と同様であった。
化合物S13の分析データ:1H NMR(300MHz,CDCl3)δ11.83(s,0.3H),11.67(d,J=13.8Hz,0.7H),8.32(d,J=7.5Hz,1H),7.59(m,3H),7.21(m,2H),7.01(m,1H),6.15(m,0.25H),5.45(m,1H),5.09〜4.85(m,0.75H),4.55〜4.39(m,2H),3.79〜3.42(m,0.5H),3.46〜3.18(m,1H),3.12〜3.05(m,0.5H),2.30(m,6H),1.67〜1.36(m,3H).
【0047】
【化18】
化合物S14の合成は、化合物S12の合成方法と同様であった。
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ11.98(s,0.3H),11.80(d,J=13.8Hz,0.7H),8.47(d,J=7.5Hz,1H),7.65(m,3H),7.30(m,2H),7.12(m,1H),6.35(m,0.25H),5.87(m,1H),5.15〜4.92(m,0.75H),4.64〜4.41(m,2H),4.13(s,3H),3.98〜3.68(m,0.5H),3.59〜3.33(m,1H),3.22〜3.12(m,0.5H),1.79〜1.51(m,3H).
【0048】
【化19】
化合物S15の合成は、化合物S12の合成方法と同様であった。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ12.01(s,0.3H),11.89(d,J=13.8Hz,0.7H),8.51(d,J=7.5Hz,1H),7.78(m,3H),7.39(m,2H),7.12(m,1H),6.08(t,J=6.9Hz,0.25H),5.11(d,J=7.2Hz,0.25H),4.92(d,J=14.1Hz,0.25H),4.72(s,0.25H),4.59〜4.42(m,1H),4.37〜4.27(m,2H),3.92〜3.56(m,0.5H),3.51〜3.22(m,1H),3.15〜3.07(m,0.5H),2.85(m,2H),1.71〜1.43(m,3H).
【0049】
【化20】
化合物S16の合成は、化合物S12の合成方法と同様であった。
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ11.93(s,0.3H),11.79(d,J=13.8Hz,0.7H),8.43(d,J=7.5Hz,1H),7.73(m,3H),7.36(m,2H),7.07(m,1H),6.10(t,J=6.9Hz,0.25H),5.09(d,J=7.2Hz,0.25H),4.89(d,J=14.1Hz,0.25H),4.67(s,0.25H),4.55〜4.37(m,1H),4.35〜4.24(m,2H),3.87〜3.53(m,0.5H),3.46〜3.18(m,1H),3.12〜3.05(m,0.5H),1.71〜1.43(m,6H).
【0050】
【化21】
ここで、原料17-2の合成は、文献J. Med. Chem. 2008, 51, 589-602を参照した。
【0051】
中間体17-3の合成:
無水ジフルオロ酢酸を冷却した後、氷浴で17-2を分けて入れ、終わった後この温度で10min撹拌し、ゆっくり室温に昇温して反応させ、完全に反応した後、反応液を減圧で濃縮し、さらにポリリン酸を入れ、120℃に加熱して一晩反応させた。冷却後、反応液を冷却された濃アンモニア水に注ぎ、ろ過して粗製品17-3を得た。1H NMR(300MHz,DMSO)δ9.51(s,1H),8.08(s,1H),6.87(t,J=51.6Hz,1H),2.68(s,3H).
中間体17-4の合成:
中間体17-3をメタノールに溶解させ、適量のパラジウム炭素を入れ、水素置換後、室温で一晩撹拌し、完全に反応した後パラジウム炭素をろ過で除去し、濃縮して粗製品17-4を得た。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ6.79(t,J=51.6Hz,1H),4.57〜4.41(m,1H),4.35(d,J=16.8Hz,1H),4.15(dd,J=15.9,7.7Hz,1H),3.22(dd,J=13.4,4.0Hz,1H),3.08(dd,J=13.4,1.6Hz,1H),2.38〜1.98(m,1H),1.54(t,J=5.9Hz,3H).
最終産物S17の合成は、S1と同様であった。
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ12.13(s,0.33H),12.05(s,0.67H),8.34(d,J=7.4Hz,1H),7.68(m,3H),7.43〜7.24(m,2H),6.92〜7.08(m,2H),4.85(m,1H),4.74〜4.40(m,2H),4.20(s,2H),3.70(s,1H),3.45〜3.38(m,1H),1.49(d,J=6.3Hz,3H).
【0052】
【化22】
ここで、断片18-1の合成は、断片17-4の合成方法と同様であった。
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ5.47(d,J=47.9Hz,2H),4.57〜4.41(m,1H),4.35(d,J=16.8Hz,1H),4.15(dd,J=15.9,7.7Hz,1H),3.22(dd,J=13.4,4.0Hz,1H),3.08(dd,J=13.4,1.6Hz,1H),2.38〜1.98(m,1H),1.54(t,J=5.9Hz,3H).
最終産物S18の合成は、S1と同様であった。
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ12.13(s,0.33H),12.05(s,0.67H),8.34(d,J=7.4Hz,1H),7.68(m,3H),7.43〜7.24(m,2H),6.92〜7.08(m,1H),5.54(d,J=47.7Hz,2H),4.85(m,1H),4.74〜4.40(m,2H),4.20(s,2H),3.70(s,1H),3.45〜3.38(m,1H),1.49(d,J=6.3Hz,3H).
【0053】
【化23】
ここで、断片19-1の合成は、断片5-1の合成方法と同様であった。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ5.59(s,1H),4.73〜4.24(m,2H),3.60〜3.17(m,1H),2.45(m,1H),1.77〜1.58(m,6H).
最終産物S19の合成は、S1と同様であった。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ11.93(s,0.3H),11.79(d,J=13.8Hz,0.7H),8.43(d,J=7.5Hz,1H),7.73(m,3H),7.36(m,2H),7.07(m,1H),6.10(t,J=6.9Hz,0.25H),5.52(d,J=47.4Hz,2H),5.09(d,J=7.2Hz,0.25H),4.89(d,J=14.1Hz,0.25H),4.67(s,0.25H),4.55〜4.37(m,1H),4.35〜4.24(m,2H),3.87〜3.53(m,0.5H),3.46〜3.18(m,1H),3.12〜3.05(m,0.5H),1.71〜1.43(m,6H).
【0054】
【化24】
ここで、断片20-1の合成は、断片6-1の合成方法と同様であった。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ5.48(d,J=48.3Hz,2H),4.72(d,J=1.4Hz,2H),3.53(s,2H),2.55(m,1H),1.49(s,6H).
S20の合成方法はS1と同様であった。
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ12.11(s,0.3Η),δ11.94(s,0.7H),8.39(d,J=7.2Hz,1H),7.70(d,J=7.2Hz,3H),7.36(d,J=5.4Hz,2H),7.03(t,J=8.7Hz,1H),5.51(d,J=47.6Hz,2H),5.14(s,0.5H),4.76(s,1.5H),4.27(s,2H),3.98(s,1.5H),3.52(s,0.5H),1.62(s,4.35H),1.40(s,1.68H).
【0055】
【化25】
S21の合成方法はS1と同様であった。
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ12.19(s,0.33H),12.01(s,0.67H),7.42(s,1H),7.13(t,J=8.9Hz,1H),7.01(d,J=8.7Hz,1H),4.88(m,1H),4.76〜4.41(m,2H),4.22(s,2H),3.72(s,lH),3.46〜3.41(m,1H),2.44(s,3H),2.14(s,3H),1.49(d,J=6.3Hz,3H).
【0056】
【化26】
S22の合成方法はS1と同様であった。
1H NMR(300MHz,CDCl3)δ12.19(s,0.33H),12.01(s,0.67H)7.35(m,2H),7.11(t,J=8.9Hz,1H),6.96(d,J=8.7Hz,1H),4.88(m,1H),4.76〜4.41(m,2H),4.22(s,2H),3.72(s,1H),3.46〜3.41(m,1H),2.14(s,3H),1.49(d,J=6.3Hz,3H).
【0057】
二.試験実施例
1.ハイスループットELISAによるPARP1阻害剤の分子レベルの評価
PARP1の全長プラスミドを使用し、PCR増幅、酵素切断、連接、DH5aへの導入を経て、HTb-PARP1陽性クローンを得た。抽出、酵素切断による同定を経て、DH10Bacに導入した後、PCRを行い、配列決定によってBacmid/PARPを同定し、TNIをトランスフェクトし、ウイルスを収集し、細胞を分解させ、親和クロマトグラフィーでPARP1タンパク質を精製し、ウェスタンブロッティングによって同定した。基質であるヒストン、NAD+及びDNAと発現されたPARP1酵素を被覆し、96ウェルプレートの反応系に置き、最適化して各反応条件を決め、反応産物であるPARにPARモノクローナル抗体を反応させ、二次抗体を入れた後、マイクロプレートリーダーでOD値を読み取り、且つPARP1酵素活性抑制の程度を計算し、表1に示す。
【0058】
【表1-1】
【0059】
【表1-2】
【0060】
【表1-3】
【0061】
【表1-4】
【0062】
表1から、ほとんどの化合物は、分子レベルでPARP1酵素に対して高い親和力を示し、PARPに顕著な抑制活性を表し、大半の化合物の抑制率濃度がナノモル級(<100nM)で、一部の化合物はPARPに対する抑制活性が陽性化合物よりも強く、一番の化合物は10nM以下に達し、陽性化合物AZD-2281の13倍であったことがわかる。そして、化合物S1〜S16の構造の特徴を比較すると、ピペラジン環における置換基の位置及び種類によって、化合物は分子レベルでPARP1酵素に異なる親和力を表し、例えばS1とS8は低い親和力であったことがわかった(300nM程度)。そのため、ピペラジノトリアゾール環および環における置換基は活性に大きく貢献する。
【0063】
2.化合物の光学分割
化合物の多くは1〜2個のキラル中心を有するため、キラル製造液相クロマトグラフィーで分割し、相応の光学異性体を得た。例えば、化合物S3の二つのエナンチオマーはいずれも高いPARP1酵素抑制活性を示し、中では、(-)-S3の活性は(+)-S3の活性よりも1倍高く、(-)-異性体のPARP酵素との結合がより良いことが示された。具体的な結果は以下の通りである。
1)分割条件:
キラルカラム:CHIRALPAKIA
キラルカラムのサイズ:0.46cm I.D.×15cm L
移動相:ヘキサン/IPA=40/60(v/v) 流速:1 ml/min
検出波長:UV 254 nm
2)キラルHPLCスペクトル:図1〜3に示す。
3)エナンチオマーのPARP1酵素抑制活性:
【0064】
【表2】
【0065】
3.代表的な化合物の細胞活性テスト
ELISAモデルによる化合物の分子レベルにおけるPARP1に対する抑制作用の初歩評価に基づき、さらに細胞増殖抑制モデルによって化合物の細胞レベルにおけるPARP1に対する抑制作用を評価したが、結果は以下の通りである。
【表3】
以上の結果から、新しい化合物は、PARP1酵素のレベルで高い活性を有するだけでなく、PARP1と直接関連する細胞VC8でも顕著な活性を示し、一部の化合物の活性は陽性化合物AZD2281の12倍であった。
【0066】
4.代表的な化合物S3とAZD2281の異なる腫瘍細胞に対する増殖生長抑制作用の比較
新しい化合物のAZD2281に対するありうる優勢をさらに確認するために、代表的な化合物S3ととAZD2281の異なる腫瘍細胞に対する増殖生長抑制作用を平行に比較したが、結果を表4に示す。その結果から、4種類の異なる組織由来の腫瘍細胞に対し、S3の増殖生長抑制作用はいずれもAZD2281よりも強く、最高は178倍に達したことが示された。
【表4】
【0067】
5.代表的な化合物S3のPARPファミリーの酵素に対する選択性
ピペラジノトリアゾール環における置換基のPARPファミリーのメンバーに対する選択性をテストするために、化合物S3と陽性化合物AZD2281の選択性をテストしたが、結果を下記表に示す。
【表5-1】
【0068】
上述表から、新しく合成された置換のピペラジノトリアゾール誘導体S3のPARP1とPARP2に対する活性は、陽性化合物よりも顕著に高かったことがわかる。同時に、化合物S3は、高い選択性を示し、とくにTNKS1とTNKS2に対し、選択性が870倍以上と高かったが、陽性化合物は、この二つのサブタイプに対する選択性は、5.5〜23.1倍と低かった。TNKS1とTNKS2の機能は、まだ明らかではないが、これらに対する選択性が低いということは、高い予測不能な毒性のリスクを示唆する。そのため、陽性化合物AZD2281と比較すると、新しく合成された化合物(S3)は、PARP1/2に対する選択性が顕著に高く、予測不能な毒性のリスクが低い。
【0069】
5.化合物のカリウムイオンチャンネルhERGに対する抑制活性
新しい化合物が良い安全性を有するかどうか、特に心臓毒性に関連するカリウムイオンチャンネルhERGに対する抑制活性を評価するために、さらにこれらの化合物のhERGに対する抑制活性を評価したが、結果を下記表に示す。
【表5-2】
このように、これらの化合物は、ラセミ体でも立体異性体でも、カリウムイオンチャンネルhERGに対する抑制作用がないため、心臓毒性のリスクが低い。
【0070】
6.代表的な化合物S3の体内における抗腫瘍活性
生長期の腫瘍組織を1.5 mm3程度に切り、無菌条件で、ヌードマウスの右側の脇下の皮下に接種した。ヌードマウスの皮下移植腫瘍は、ノギスで直径を測定し、腫瘍が100〜200 mm3に生長した時点で動物を無作為に群分けした。S3は、全部100 mg/kg群と25 mg/kg群に、陽性薬物AZD2281は、100 mg/kg群にした。すべて毎日1回経口投与し、三週続けた。溶媒対照群は、等量の生理食塩水を投与した。実験の全過程において、毎週2回移植腫瘍の直径を測定し、同時にマウスの体重を測った。腫瘍体積(tumor volume、TV)の計算式は、TV=1/2×a×b2で、ここで、a、bはそれぞれ長さ、幅を表す。測定の結果から相対腫瘍体積(relative tumor volume、RTV)を計算し、計算式は、RTV=Vt/V0である。ここで、V0は分けて投与する時点(即ちd0)で測定された腫瘍体積で、Vtは毎回の測定の時の腫瘍体積である。抗腫瘍活性の評価指標は、1)相対腫瘍増殖率
T/C(%)、計算式:T/C(%)=(TRTV/CRTV)×100%、TRTV/:治療群のRTV、CRTV:陰性対照群のRTV、2)腫瘍体積増加抑制率GI%、計算式:GI%=[1-(TVt-TV0)/(CVt-CT0)]×100%、TVt:治療群の毎回の測定の腫瘍体積、TV0:治療群の分けて投与する時点で測定された腫瘍体積、CVt:対照群の毎回の測定の腫瘍体積、CT0:対照群の分けて投与する時点で測定された腫瘍体積、3)腫瘍重量抑制率、計算式:腫瘍重量抑制率%=(WC-WT)/WC×100%、WC:対照群の腫瘍重量、WT:治療群の腫瘍重量。
【0071】
実験結果は表6に示す。化合物S3は、100 mg/kgと25 mg/kgの投与量で毎日1回経口投与し、21日続けて投与したところ、ヒト乳癌MDA-MB-436ヌードマウス皮下移植腫瘍の生長に対し、いずれも顕著な抑制作用を示し、21日目に測定されたT/C百分率はそれぞれ0.59%と9.80%であった。25 mg/kgの投与量の場合、腫瘍抑制作用が陽性対照AZD2281に相当したが、100 mg/kgの投与量の場合、腫瘍抑制作用が陽性対照AZD2281よりも遥かに高かった。
【表6】
以上のように、化合物S3は、体内で顕著な抗腫瘍活性を有し、25 mg/kgの投与量では、腫瘍に対する抑制作用が陽性化合物の100 mg/kgの投与量の場合に相当し、100 mg/kgの投与量では、腫瘍が完全に無くなった。より重要なのは、二つの投与量では、化合物S3はいずれも顕著な副作用を示さなかった。
【0072】
以上のように、化合物S3を代表とするこのような一つ又は複数の置換基を含有するピペラジノトリアゾール化合物は、非常に高いPARP1酵素抑制活性を有し、細胞活性も陽性化合物AZD2281よりも顕著に高い。同時に、環における置換基の存在も化合テロメラーゼであるTNKS1とTNKS2に対する選択性物を向上させ、心臓毒性のリスクが低く、PARP1マウスモデルにおける腫瘍の抑制作用も陽性化合物よりも顕著に高い。そのため、これらの化合物は、新規な高選択性リボースポリADP-リボースポリメラーゼ-1(PARP1)阻害剤としてPARPに関連する疾患の予防及び/又は治療に使用することができる。
図1
図2
図3