(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来の構成の一例として
図11のロータリ方式の高圧タイプ密閉型圧縮機500の縦断面図を参照しながら説明する。
【0003】
シリンダ504とローリングピストン541、ベーン(図示せず)を上軸受505aと下軸受505bで挟み込むことで吸入室と圧縮室を形成し、駆動軸523の回転に伴ってローリングピストン541が回転することで圧縮動作を行う圧縮機構503と、駆動軸523に回転力を伝えるロータ521とステータ522を含む電動要素502とが密閉容器501内に収納されている。
【0004】
シリンダ504に設けられた吸入穴506には吸入ライナー509が接続されている。
【0005】
低温低圧の吸入冷媒ガスは圧縮機構503で圧縮されて高温高圧の吐出冷媒ガスとして密閉容器501内部に放出され、密閉容器501内部で吐出冷媒ガスに含まれるオイルミストを分離後、密閉容器501上部に設けられた吐出管511から圧縮機外部へ導出される。
【0006】
図12は
図11の吸入ライナー509の取付個所の拡大図である。
【0007】
シリンダ504に設けられた吸入穴506には吸入ライナー509が圧入され、吸入ライナー509上流側は吸入接続管508が挿入され、密閉容器501に固定された吸入外管507とともにロー付けして密封されている。低温低圧の吸入冷媒ガスは吸入接続管508と吸入ライナー509、吸入穴506を経由して圧縮機構503内へと流入する。一方、圧縮機構503の外部雰囲気や吸入ライナー509の外側は高温高圧の吐出冷媒ガスが満たされている。吸入穴506内部と吸入ライナー509外部は圧入部591が仕切りとなることで高圧冷媒ガスが吸入配管経路へ流入することを防止している。
【0008】
しかし、高温高圧の吐出冷媒ガスにさらされている圧縮機構503は高温状態にあり、吸入穴506の壁面も高温であるため、低温の吸入冷媒ガスが吸入穴506を通過の際に加熱されて密度が低下、その結果、圧縮機の体積効率と圧縮機効率が低下するという課題がある。
【0009】
この課題を解決するため、特許文献1に示す高圧ドーム形圧縮機では、
図13のとおり、シリンダ504の吸入穴506に、吸入穴506に密嵌する嵌合筒部510aと、嵌合筒部510aに連続し、吸入穴506の内径より小径とした小径筒部510bとをもった吸入ライナー510を取り付けて、吸入ライナー510の小径筒部510bの外周面と吸入穴506の内周面との間にガス滞留部P1を設けることで、低温低圧の吸入冷媒ガスがシリンダ504の熱により加熱されるのを抑制している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
第1の発明は、密閉容器と、前記密閉容器内に配置された圧縮機構と、前記圧縮機構に形成され、冷媒が通過する吸入通路と、前記吸入通路に圧入されるライナーと、該ライナーは、前記吸入通路の内径よりわずかに大きく形成された外径を有する嵌合筒部と、前記嵌合筒部に連続して形成される延長筒部と、を有し、
前記延長筒部の管壁の表面に、前記ライナーの長さ方向に溝が形成されていることを特徴とする圧縮機であって、延長筒部の管壁の表面に、ライナーの長さ方向に溝を形成することにより、溝の底部分の厚みが薄く剛性が低下するので、延長筒部の剛性が低下して嵌合筒部の剛性の上昇が抑えられるとともに、既存の技術である溝付き管の製造技術を応用することで実施可能であるため、開発コストを抑えることができる。
【0020】
第2の発明は、密閉容器と、前記密閉容器内に配置された圧縮機構と、前記圧縮機構に形成され、冷媒が通過する吸入通路と、前記吸入通路に圧入されるライナーと、該ライナーは、前記吸入通路の内径よりわずかに大きく形成された外径を有する嵌合筒部と、前記嵌合筒部に連続して形成される延長筒部と、を有し、延長筒部の管壁の径方向外側に向かって、波型形状に形成された凸部を有する圧縮機であって、延長筒部の半径方向に作用する外力によって延長筒部の周方向に発生する応力を、波状の形状でばねのように弾性変形して吸収することができるので、嵌合筒部の剛性の上昇を抑制して、シリンダ等の変形を抑え、圧縮機性能の低下を防ぐことができる。また、凸部はライナーの長さ方向に対してリブとしての役割を果たして長さ方向の剛性が高まるので、ライナーの信頼性が向
上する。
【0021】
第3の発明は、密閉容器と、前記密閉容器内に配置された圧縮機構と、前記圧縮機構に形成され、冷媒が通過する吸入通路と、前記吸入通路に圧入されるライナーと、該ライナーは、前記吸入通路の内径よりわずかに大きく形成された外径を有する嵌合筒部と、前記嵌合筒部に連続して形成される延長筒部と、を有し、延長筒部は、嵌合筒部とは異なる材料で構成され、延長筒部を構成する材料は、嵌合筒部を構成する材料より軟質のものである圧縮機であって、延長筒部を異なる材料で構成することにより、同材料の形状変更のみでは実現不可能な範囲まで剛性を低下させることができる。これによって延長筒部の剛性をより効果的に低下させ、嵌合筒部の剛性が上昇することを防止できるので、圧縮機構成
部材の変形が低減され、圧縮機性能の低下を防止することが可能である。
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態によって本発明が限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態1)
図1に示すように、本実施形態のロータリ圧縮機100は、密閉容器1、モータ2、圧縮機構102及びシャフト4を備えている。圧縮機構102は、密閉容器1の下部に配置されている。モータ2は、密閉容器1の内部において、圧縮機構102の上に配置されている。シャフト4によって、圧縮機構102とモータ2とが連結されている。密閉容器1の上部には、モータ2に電力を供給するための端子21が設けられている。密閉容器1の底部には、潤滑油を保持するためのオイル溜まり22が形成されている。
【0024】
モータ2は、ステータ17及びロータ18で構成されている。ステータ17は、密閉容器1の内壁に固定されている。ロータ18は、シャフト4に固定されており、かつシャフト4とともに回転する。
【0025】
密閉容器1の上部には、吐出管11が設けられている。吐出管11は、密閉容器1の上部を貫通しているとともに、密閉容器1の内部空間13に向かって開口している。吐出管11は、圧縮機構102で圧縮された冷媒を密閉容器1の外部に導く吐出流路としての役割を担う。ロータリ圧縮機100の動作時において、密閉容器1の内部空間13は、圧縮された冷媒で満たされる。つまり、ロータリ圧縮機100は、高圧シェル型の圧縮機である。高圧シェル型のロータリ圧縮機100によれば、冷媒でモータ2を冷却できるのでモータ効率の向上を期待できる。
【0026】
圧縮機構102は、冷媒を圧縮するようにモータ2によって駆動される。具体的に、圧縮機構102は、圧縮ブロック3、上軸受6、下軸受7、マフラー9を有する。冷媒は、圧縮ブロック3で圧縮される。圧縮ブロック3は、オイル溜まり22に溜められたオイルに浸漬されている。
【0027】
図2は、
図1のA−A断面における断面図であり、圧縮ブロック3の構成を示している。
図2において、圧縮ブロック3は、シリンダ5、ピストン8、ベーン32、吸入通路19、吐出孔40及びばね36で構成されている。
【0028】
シャフト4は、偏心部4aを有する。偏心部4aは、シャフト4の半径方向の外向きに突出している。ピストン8は、シリンダ5の内部に配置されている。シリンダ5の内部において、偏心部4aにピストン8が取り付けられている。
【0029】
上軸受6及び下軸受7は、シリンダ5の内周面とピストン8の外周面との間にシリンダ室15を形成するようにシリンダ5に取り付けられている。詳細には、上軸受6はシリンダ5の上部に取り付けられ、下軸受7はシリンダ5の下部に取り付けられている。ライナー14は密閉容器1に固定された吸入外管46とロー付けされ、吸入外管46とライナー14の間に生じる隙間は密封されている。
【0030】
吸入通路19は、シリンダ5に形成されている。吸入通路19は、シリンダ室15に向かって開口し、吸入口20を形成している。吸入通路19の他端には、ライナー14が接続されている。
【0031】
吐出孔40は、上軸受6に形成されている。吐出孔40は、シリンダ室15に向かって開口している。吐出孔40を開閉するように、吐出孔40に吐出弁43が設けられている
。
【0032】
ベーン溝34は、ピストン8と接触する、先端が円弧形状のベーン(ブレード32)がスライドできるように配置されている。ベーン32は、シリンダ室15をピストン8の周方向に沿って仕切っている。これにより、シリンダ室15が吸入室25aと吐出室25bとに仕切られている。
【0033】
吸入通路19及び吐出孔40は、それぞれ、ベーン32の左右に位置している。吸入通路19を通じて、圧縮されるべき冷媒がシリンダ室15(吸入室25a)に供給される。シリンダ室15で圧縮された冷媒は、吐出弁43を押し開き、吐出孔40を通じて吐出室25bから吐出される。
【0034】
ピストン8及びベーン32は単一の部品、すなわち、スイングピストンで構成されていてもよい。また、ベーン32は、ピストン8に結合していてもよい。
【0035】
ベーン32の背後には、ばね36が配置されている。ばね36は、ベーン32をシャフト4の中心に向かって押している。ベーン溝34の後部は、密閉容器1の内部空間13に連通している。従って、密閉容器1の内部空間13の圧力がベーン32の背面に加えられる。また、ベーン溝34には、オイル溜まり22に溜められた潤滑油が供給される。
【0036】
図1に示すように、マフラー9は、吐出孔40を通じて吐出室25bから吐出された冷媒が滞在できる冷媒吐出空間51をシリンダ室15の反対側に形成するように、上軸受6に取り付けられている。詳細には、マフラー9は、冷媒吐出空間51を上軸受6の上方に形成するように、上軸受6の上部に取り付けられている。吐出弁43は、マフラー9によって覆われている。マフラー9には、冷媒吐出空間51から密閉容器1の内部空間13に冷媒を導くための吐出孔9aが形成されている。冷媒吐出空間51は、冷媒の流路としての役割を担う。シャフト4は、マフラー9の中心部を貫通しているとともに、上軸受6及び下軸受7によって回転可能に支持されている。
【0037】
図3は、
図2のB−B断面における断面図である。ライナー14は、吸入通路19の内径dcよりもわずかに大きく形成された外径dL1の嵌合筒部14aと、嵌合筒部14aよりも冷媒流れの下流側に延長され、かつ、吸入通路19の内径dcよりも小さく形成された外径を持つ延長筒部14bを備えている。嵌合筒部14aの外径dL1と吸入通路19の内径dcの差Δd(dL1−dc)は圧入代と呼ばれ、通常、数十μmに設定されている。ライナー14を吸入通路19へ圧入することで、圧入代を持った嵌合筒部14aと吸入通路19とをすきまなく嵌合させ、シール領域45を構成している。シール領域45が存在することで、密閉容器1の内部空間と吸入通路19のシール領域45から下流側の空間が隔離され、密閉容器1内の吐出冷媒と吸入通路19へ流入する吸入冷媒とが混ざり合うことを防止している。延長筒部14bは嵌合筒部14aよりも下流側に存在し、また、その外径dL2が吸入通路19の内径dcよりも小さいために吸入通路19の内壁に対して距離を保ったまま固定されている。この延長筒部14bと吸入通路19の内壁との空間が冷媒を滞留させる滞留空間61となり、断熱層としての役割をはたすことで、シリンダ5の外部からの吸入通路19への入熱量を低減している。
【0038】
図4はライナー14の長さ方向断面形状、および、延長筒部14bの軸方向形状を示している。延長筒部14bの外周部には、長さ方向の溝14cが形成されている。溝14cの断面形状は矩形状になっており、延長筒部14bの端部から嵌合筒部との境界線付近にわたって形成されている。溝14cは延長筒部14bの外周に90degずつの角度をもって4つ形成されている。
【0039】
シリンダ5にライナー14が圧入されることによって、嵌合筒部14aと嵌合している周囲に変形・応力が発生する。具体的には、ライナー14の嵌合筒部14aの外径が吸入通路19の内径よりも圧入代Δdだけ大きく形成されているため、嵌合筒部14aが吸入通路19を押し広げる形で圧入されるので、シリンダ5が変形する。よってシリンダ5の変形量はライナー14の剛性や圧入代Δdに依存している。変形量が大きい場合には摺動部への変形等が顕著になり、圧縮機入力が増大したり、信頼性の維持が難しくなる。
【0040】
嵌合筒部14aは延長筒部14bと連続しているため、その剛性は延長筒部14bの剛性からも影響を受ける。延長筒部14bが存在する場合には、存在しない場合より嵌合筒部14aの剛性は上がってしまう。よって、延長筒部14bが存在しないライナーと同様の圧入代Δdで延長筒部14bが存在するライナー14を圧入すると、嵌合筒部14aの剛性が上がっているためにシリンダ5の変形が大きくなってしまう。
【0041】
これに対し、本実施形態のライナー14においては
図4のように、延長筒部14bの外周側に長さ方向の溝14cが形成されている。このようにすることによって、ライナー14の延長筒部14bに部分的に長さ方向の薄肉部分が存在することになり、その部分の剛性が低くなるため、嵌合筒部14aの剛性の上昇を抑制することができる。よってライナー14を圧入することによるシリンダ5の変形を低減することができ、圧縮機の入力上昇による性能低下を抑制することができる。
【0042】
なお、本実施形態において溝14cは90degずつの角度をもった十字方向に形成されているが、その方向および本数については、この限りでなくても少なくとも1つ形成されていれば、本発明の効果を享受することができる。溝14cの断面形状についても、矩形である必要はなく、半円形などのR部分を持った溝形状でもよい。溝14cは外周側ではなく、内周側に設けられていてもよい。溝14cの長さは延長筒部14bの一部分に限られていてもよいが、全長にわたって設けられているほうが、本発明の効果をよりよく享受することができる。
【0043】
また、本実施形態では、圧縮機構102はロータリ式の圧縮機構となっている。
図2でも示されているとおり、ロータリ式の圧縮機構では、ベーン32がシリンダ室15を吸入室25aと吐出室25bに仕切っているので、シリンダ室容積を有効利用するために、吸入通路19はベーン溝34に近接して形成されている。ライナー14の圧入によるシリンダ5の変形は、吸入通路19の径方向外側に向けて現れるため、ベーン溝34が近接しているとその影響が大きく、ベーン溝34の変形によるベーン32の摺動損失の増加によって圧縮機性能が低下する恐れがある。よって、本実施形態のライナー14を用いれば嵌合筒部14aの剛性上昇を抑制することができるので、効果的である。
【0044】
(実施例1)
図5は、本実施形態の実施例1におけるライナー14を示している。実施例1において、ライナー14は、延長筒部14bの管壁の径方向外側に向かって、波形形状に形成された波状凸部14dが設けられている。この波状凸部14dは、ライナー14の長さ方向に伸びており、延長筒部14bの径方向への荷重に対して、ばねのように弾性変形する性質を有している。よって延長筒部14bの断面が円形かつ同程度の壁厚みを有している場合に比べて、嵌合筒部14aの変形に合わせて延長筒部14bの変形が起こりやすくなるので、嵌合筒部14aの剛性が大きく上昇することを防ぎ、ライナー14の圧入によるシリンダ5の変形を抑えて圧縮機性能の低下を防止することができる。
【0045】
なお、本実施例の波状凸部14dの本数、配置角度、形状、長さ等は、前述の溝14cと同様、この限りでなくてもよい。凸部が外周の全周にわたって設けられていてもよいし、波型のR寸法は、任意で決めることができる。
【0046】
(
参考例1)
図6は、本実施形態の
参考例1におけるライナー14を示している。
参考例1において、ライナー14は、延長筒部14bの管壁厚みが、嵌合筒部14aよりも薄く形成されている。このようにすることによって、延長筒部14bの剛性が嵌合筒部14aよりも小さくなり、嵌合筒部14aの剛性の上昇を抑制することができる。また、管壁の厚みを調整するのみで本発明の効果を享受することができるので、大きな加工コストもかからず、製造コストの削減となる。
【0047】
(
実施例2)
図7は、本実施形態の
実施例2におけるライナー14を示している。
実施例2において、ライナー14は延長筒部14bが嵌合筒部14aよりも柔らかい材質でできており、延長筒部14bと嵌合筒部14aはそれぞれのツメ14g、14hによって結合されている。このようにすることで、延長筒部14bの剛性は嵌合筒部14aと同材料で構成されているより場合よりも低くすることができる。延長筒部14bの材質は、たとえばPTFEやPETなどの樹脂を用いることができる。また、ツメ14g、14hのような形態で結合されていなくてもよく、たとえば接着剤などで結合されていてもよい。
【0048】
(実施の形態2)
図8は、本発明の実施形態2にかかる圧縮機の断面図であり、
図9は、
図8の断面C−Cにおける断面図であり、また、
図10は、
図9の断面D−Dにおける断面図を示している。図中の符号については、実施形態1と同様の構成要素については同じ符号を使用し、説明は省略する。
【0049】
実施形態2にかかるロータリ圧縮機200の圧縮機構202は、実施形態1のロータリ圧縮機100の圧縮ブロック3に加えて、圧縮ブロック203を備えたいわゆる2ピストンロータリ圧縮機構である。圧縮ブロック203の上方と圧縮ブロック3の下方は、中板250によって閉塞されている。圧縮ブロック203の下方は、下軸受207により閉塞されている。下軸受207を覆うように、マフラー209が配置されている。
【0050】
図9に示すように、圧縮ブロック203は、シリンダ205、ピストン208、ベーン232、吸入通路219、吐出孔240、およびばね236で構成されている。
【0051】
シャフト204は、上側の偏心部204aに加えて、下側の偏心部204bを備えている。上側の偏心部204aと下側の偏心部204bはどちらも半径方向外向きに吐出しているが、偏心方向の角度は偏心部204aに対して偏心部204bが180degに設定されている。偏心部204aは圧縮ブロック3のピストン8が取り付けられている。偏心部204bは、シリンダ205の内部に配置されたピストン208が取り付けられている。
【0052】
吸入通路219はシリンダ205に形成されている。吸入通路219は、シリンダ室215に向かって開口している。吸入通路219にはライナー14が接続されている。
【0053】
図10に示すライナー14は実施形態1のライナー14と同様に、吸入通路219の内径よりもわずかに大きく形成された嵌合筒部14aと延長筒部14bを持ち、吸入通路219に対し圧入されている。ライナー14はさらに嵌合筒部14aと連続して形成された延長筒部14bを有している。延長筒部14bの外周部には、長さ方向の溝214c(
図4における溝14cに相当)が形成されている。溝214cの断面形状は矩形状になっており、延長筒部14bの端部から嵌合筒部14aとの境界線付近にわたって形成されている。溝214cは延長筒部14bの外周に90degずつの角度をもって4つ形成されて
いる。
【0054】
圧縮ブロック203で圧縮された冷媒は下軸受207に設けられた吐出孔(図示せず)を通じて下軸受207の下方へと吐出される。
図8に示すように、マフラー209は、冷媒吐出空間251を下軸受207の下方に形成するように、下軸受207の下部に取り付けられている。圧縮機構202には、冷媒吐出空間251から冷媒吐出空間51へと冷媒を導くための連通孔が形成されており、圧縮ブロック203から吐出された冷媒はこの連通孔を経由して冷媒吐出空間51から密閉容器1の内部空間13へと吐出される。シャフト4は、上軸受6および下軸受207によって回転可能に支持されている。圧縮ブロック203のその他の構成については、圧縮ブロック3と同様である。
【0055】
本実施形態のような2ピストンロータリ式圧縮機構では、通常、2つの圧縮ブロックが中板などの閉塞部材をはさんで積み重ねられている。また、上下の圧縮ブロックを構成するシリンダそれぞれに、吸入通路が形成され、ライナーが圧入されている。よって、延長筒部をもったライナーが圧入される際には、上下のシリンダともに剛性の上昇した嵌合筒部によって変形し、上下の圧縮ブロック間で相互に変形の影響を及ぼしてしまう恐れがある。すなわち、1ピストンロータリ式圧縮機に比べて、変形による圧縮機性能への影響が大きくなってしまう。
【0056】
本実施形態では2ピストンロータリ式圧縮機構に本発明のライナー14を適用している。これにより、上下のシリンダ5、205の変形を抑えることができるので、1ピストンロータリ式圧縮機構の場合に比べて大きくなるはずの変形の影響を抑制して圧縮機性能の低下を防止することができ、本発明の構成が効果的である。