(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、半導体の結晶化など、ごく短時間だけ基材の表面近傍を高温処理する用途に対して、従来例に示した特許文献1〜3に記載の熱プラズマを長尺状に発生させる技術では、処理速度(単位時間当たりに処理できる基板数)が小さいという問題点があった。また、長尺の熱プラズマが基材から遠いか、または、構成する2つの長い直線部のうち、片側だけを基材に直接照射する構成であるため、ガス及び高周波電力の利用効率が悪いという問題点があった。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みなされたもので、基材の表面近傍をごく短時間だけ均一に高温熱処理するに際して、或いは、反応ガスによるプラズマまたはプラズマと反応ガス流を同時に基材へ照射して基材を低温プラズマ処理するに際して、高速な処理が可能で、かつ、プラズマを安定的に利用することができるプラズマ処理装置及び方法、並びに電子デバイスの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の第1発明のプラズマ処理装置は、第一誘電体部材に囲まれた長尺でかつ環状のチャンバと、チャンバに連通する開口部と、チャンバ内に第一ガスを導入する第一ガス供給配管と、チャンバ近傍に設けられたコイルと、コイルに接続された高周波電源と、基材載置台とを備え、基材載置台がなす面に平行な面に沿ってチャンバが配置されており、チャンバの内側に第二ガスを導入する第二ガス供給配管を備えたことを特徴とする。
【0009】
このような構成により、高速な処理が可能で、かつ、プラズマを安定的に利用することができる。
【0010】
本願の第1発明のプラズマ処理装置において、好適には、前記チャンバを冷却するための冷却部を備え、前記第一誘電体部材と前記冷却部の間に、第一誘電体部材よりも熱伝導率が大きい第二誘電体部材が設けられていることが望ましい。
【0011】
このような構成により、より高速な処理が可能となる。
【0012】
また、好適には、前記基材載置台がなす面に平行な面に沿って前記コイルが設けられていることが望ましい。
【0013】
このような構成により、簡単にプラズマ処理装置を構成できる。
【0014】
また、好適には、前記開口部が少なくとも2つの長尺な直線部を有し、前記開口部の長手方向に対して垂直な向きに、前記チャンバと前記基材載置台とを相対的に移動可能とする移動機構を備えることが望ましい。
【0015】
このような構成により、基材の所望の被処理領域全体を短時間で効率よく処理することができる。
【0016】
また、好適には、前記第一誘電体部材が窒化シリコンを主成分とするセラミックス、または、シリコン、アルミニウム、酸素、窒素を主成分とするセラミックスであることが望ましい。
【0017】
このような構成により、より高速な処理が可能となる。
【0018】
また、好適には、前記第二誘電体部材が窒化アルミニウムを主成分とするセラミックス、または、窒化ボロンを主成分とするセラミックスであることが望ましい。
【0019】
このような構成により、より高速な処理が可能となる。
【0020】
また、好適には、前記コイルと前記チャンバの間に、前記チャンバに沿って冷媒流路を備えることが望ましい。
【0021】
このような構成により、さらに高速な処理が可能となる。
【0022】
また、この場合、好適には、第一ガスを溜める第一ガスマニホールドを備え、前記第一ガスマニホールドと前記チャンバが前記第一ガス供給配管によって連通され、第一ガス供給配管におけるガスの流れる方向が、前記チャンバがなす平面に対して傾斜していることが望ましい。
【0023】
このような構成により、簡単な構造の装置を実現できる。
【0024】
また、好適には、前記第一誘電体部材と、前記第一誘電体部材に貼り合わされた第二誘電体部材のいずれかに設けた溝が、前記冷媒流路を構成することが望ましい。
【0025】
このような構成により、簡単な構造の装置を実現できる。
【0026】
本願の第2発明のプラズマ処理方法は、第一誘電体部材で囲まれた長尺でかつ環状のチャンバ内に第一ガスを供給しつつ、チャンバに連通する開口部から基材に向けて第一ガスを噴出すると共に、コイルに高周波電力を供給することで、チャンバ内にプラズマを発生させ、基材載置台がなす面に平行な面に沿ってチャンバを配置し、チャンバの内側に第二ガスを供給しながら基材の表面を処理することを特徴とする。
【0027】
このような構成により、高速な処理が可能で、かつ、プラズマを安定的に利用することができる。
【0028】
本願の第2発明のプラズマ処理方法において、好適には、第一ガスが希ガス、または希ガスを主体とするガスであり、第二ガスが希ガス以外のガスを主体とするガスであることが望ましい。
【0029】
このような構成により、より安定したプラズマを得ることができる。
【0030】
本願の第3発明の電子デバイスの製造方法は、第一誘電体部材で囲まれた長尺でかつ環状のチャンバ内に第一ガスを供給しつつ、前記チャンバに連通する開口部から基材に向けて第一ガスを噴出すると共に、コイルに高周波電力を供給することで、前記チャンバ内に高周波電磁界を発生させてプラズマを発生させ、前記基材の表面を処理する電子デバイスの製造方法である。とりわけ、前記基材載置台がなす面に平行な面に沿って前記チャンバを配置し、前記チャンバの内側に第二ガスを供給しながら基材を処理する点に特徴を有する。
【0031】
このような構成により、高速な処理が可能で、かつ、プラズマを安定的に利用することができる。
【0032】
本願の第3発明の電子デバイスの製造方法において、好適には、第一ガスが希ガス、または希ガスを主体とするガスであり、第二ガスが希ガス以外のガスを主体とするガスであることが望ましい。
【0033】
このような構成により、より安定したプラズマを得ることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、基材の表面近傍をごく短時間だけ均一に高温熱処理するに際して、或いは、反応ガスによるプラズマまたはプラズマと反応ガス流を同時に基材へ照射して基材をプラズマ処理するに際して、高速な処理が可能で、かつ、プラズマを安定的に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態におけるプラズマ処理装置について図面を用いて説明する。
【0037】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について、
図1及び
図2を参照して説明する。
【0038】
図1は、本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、長尺の誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に垂直な面で切った断面図である。
図2は、
図1に示した誘導結合型プラズマトーチユニットの組立構成図であり、各部品(一部)の斜視図を並べたものである。
図2(a)は
図1の上方斜めから見た図、
図2(b)は
図1の下方斜めから見た図である。
【0039】
図1において、基材載置台1上に基材2が載置されている。誘導結合型プラズマトーチユニットTにおいて、導体製のコイル3が第一セラミックブロック4及び第二セラミックブロック5の近傍に配置される。コイル3は、図示しない接着剤により、第二セラミックブロック5に接着される。長尺のチャンバ7は、第一セラミックブロック4及び基材2によって囲まれた空間により画定される。
【0040】
基材載置台1がなす面に平行な面に沿ってコイル3及びチャンバ7が配置されている。また、チャンバ7のコイル3に近い側の内壁面は、コイル3と平行な面である。このような構成では、コイル3の任意の部位において、コイル3からチャンバ7までの距離が等しくなるので、小さい高周波電力で誘導結合性プラズマの発生が可能となり、効率の良いプラズマ生成が実現できる。
【0041】
誘導結合型プラズマトーチユニットTは、全体が接地された導体製のシールド部材(図示しない)で囲われ、高周波の漏洩(ノイズ)が効果的に防止できるとともに、好ましくない異常放電などを効果的に防止できる。
【0042】
チャンバ7は、第一セラミックブロック4に設けた溝が一続きとなった環状の溝に囲まれている。つまり、チャンバ7全体が誘電体で囲まれている構成である。また、チャンバ7は環状である。ここでいう環状とは、一続きの閉じたヒモ状をなす形状を意味し、
図2に示すような長方形に限定されるものではない。本実施の形態においては、レーストラック形(2つの長辺をなす直線部と、その両端に2つの短辺をなす直線が連結されてなる、一続きの閉じたヒモ状の形状)のチャンバ7を例示している。チャンバ7に発生したプラズマPは、チャンバ7における開口部8としてのプラズマ噴出口より基材2に向けて噴出する。また、チャンバ7の長手方向とプラズマ噴出口としての開口部8の長手方向とは平行に配置されている。
【0043】
第二セラミックブロック5に設けた長方形の溝はプラズマガスマニホールド9であり、その内部には多孔質セラミックス材がはめ込まれている。プラズマガス供給配管10よりプラズマガスマニホールド9に供給されたガスは、第一セラミックブロック4に設けられたガス導入部としてのプラズマガス供給穴11(貫通穴)を介して、チャンバ7に導入される。このような構成により、長手方向に均一なガス流れを簡単に実現できる。プラズマガス供給配管10へ導入するガスの流量は、その上流にマスフローコントローラなどの流量制御装置を備えることにより制御される。また、プラズマガスマニホールド9内を多孔質セラミックス材で構成することで、ガス流れの均一化が実現できるとともに、プラズマガスマニホールド9近傍での異常放電を防止することができる。
【0044】
プラズマガス供給穴11は、長手方向に丸い穴状のものを複数設けたものであるが、長手方向に長尺のスリット状の穴を設けたものであってもよい。
【0045】
第二セラミックブロック5に設けた線分状の溝は放電抑制ガスマニホールド12であり、その内部は多孔質セラミックス材がはめ込まれている。放電抑制ガス供給配管14より放電抑制ガスマニホールド12に供給されたガスは、第一セラミックブロック4に設けられたガス導入部としての放電抑制ガス供給穴13(貫通穴)を介して、チャンバ7の内側の、誘導結合型プラズマトーチユニットTと基材2との間の空間に導入される。
【0046】
放電抑制ガス供給穴13は、長手方向に丸い穴状のものを複数設けたものであるが、長手方向に長尺のスリット状の穴を設けたものであってもよい。
【0047】
なお、図示しないが基材載置台1に近い部分に、シールドガス供給口としてのシールドガスノズルを配置してもよい。プラズマ生成に適したプラズマガスとは別にシールドガスを供給して、大気中の酸素、二酸化炭素など、処理に不要、或いは悪影響を及ぼすガスのプラズマ照射面への混入を低減することも可能となる。なお、シールドガス供給口は、開口部8の長尺方向と平行な向きに長尺な形状をもつスリットであってもよいし、或いは、開口部8の長尺方向と平行な向きに並んだ多数の穴であってもよい。
【0048】
コイル3は、断面が円形の銅管を、断面が直方体の銅ブロックに接着したものである。また、コイル3は中空の管であり、内部が冷媒流路となっている。すなわち、水などの冷媒を流すことで、冷却が可能である。また、第一セラミックブロック4及び第二セラミックブロック5に、開口部8の長手方向に対して平行に冷媒流路が設けられてもよい。また、第一セラミックブロック4と第二セラミックブロック5、及び、第二セラミックブロック5とコイル3とをそれぞれ接着剤によって接合することで、接着剤を介して第一セラミックブロック4及び第二セラミックブロック5の冷却が可能である。ここでは、チャンバを冷却するための冷却部はコイル3であり、第一セラミックブロック4とコイル3の間に、第一セラミックブロック4よりも熱伝導率が大きい第二セラミックブロック5が設けられている。すなわち、第一セラミックブロック4は窒化シリコンであり、第二セラミックブロック5は窒化アルミニウムである。このような構成により、第二セラミックブロック5をも窒化シリコンで構成した場合に比べて、より効果的に第一セラミックブロック4を冷却できるので、より大きい高周波電力を投入することができ、より高速な処理が可能となる。第一セラミックブロック4には、優れた耐熱性が求められるので、窒化シリコンを主成分とするセラミックス、または、シリコン、アルミニウム、酸素、窒素を主成分とするセラミックスが適している。一方、第二セラミックブロック5は、直接数千℃〜10,000℃の熱プラズマに接することはないので、耐熱性よりも優れた熱伝導率が必要となるので、窒化アルミニウムを主成分とするセラミックス、または、窒化ボロンを主成分とするセラミックスが適している。
【0049】
なお、
図2に示されているように、コイル3は全体が長方形をなす平面状の渦巻き形であり、端部に冷媒給排口15が設けられている。
【0050】
長方形の開口部8が設けられ、基材載置台1(或いは、基材載置台1上の基材2)は、開口部8と対向して配置されている。この状態で、チャンバ7内にプラズマガスを供給しつつ、開口部8から基材2に向けてガスを噴出させながら、図示していない高周波電源よりコイル3に高周波電力を供給することにより、チャンバ7にプラズマPを発生させ、開口部8からプラズマを基材2に照射することにより、基材2上の薄膜22をプラズマ処理することができる。開口部8の長手方向に対して垂直な向きに、チャンバ7と基材載置台1とを相対的に移動させることで、基材2を処理する。つまり、
図1の左右方向へ誘導結合型プラズマトーチユニットTまたは基材載置台1を動かす。
【0051】
チャンバ7内に供給するプラズマガスとして種々のものが使用可能だが、プラズマの安定性、着火性、プラズマに暴露される部材の寿命などを考えると、不活性ガス、とくに希ガス主体であることが望ましい。なかでも、Arガスが典型的に用いられる。Arのみでプラズマを生成させた場合、プラズマは相当高温となる(10,000K以上)。
【0052】
一方、チャンバ7の内側の、誘導結合型プラズマトーチユニットTと基材2との間の空間に導入する放電抑制ガスとしては、希ガス以外のガスを主体とするガスであることが望ましい。例えば、窒素、酸素、二酸化炭素などが比較的安全で安価なガスとして利用できる。これらのガスは、希ガスに比べて熱プラズマ化しにくいため、チャンバ7の内側の、誘導結合型プラズマトーチユニットTと基材2との間の空間で環状の熱プラズマが
図1の左右に位置する2つの開口部8の間で繋がってしまい、長尺の熱プラズマとならず小さな円状のプラズマが発生してしまうことを効果的に抑制できる。
【0053】
希ガスの中でも、とくにArは熱プラズマ化するのに適しているので、プラズマガスとしてArを用い、放電抑制ガスとして他の希ガスを用いてもよい。あるいは、たとえArを主体とするガスであっても、数%以上の他のガスが混合していると、熱プラズマとはなりにくいことから、放電抑制ガスとしてArまたは他の希ガスを主体としながら、数%以上のAr以外のガスを含む混合ガスを利用してもよい。
【0054】
なお、本構成においては、開口部8の長手方向の長さが、基材2の幅以上となっている。したがって、一度の走査(誘導結合型プラズマトーチユニットTと基材載置台1とを相対的に移動すること)で基材2の表面近傍の薄膜22の全体を処理することができる。また、このような構成により、全体として長方形をなす開口部8の短辺側のプラズマが基板に照射されることがないので、均一な処理が可能となる。
【0055】
このようなプラズマ処理装置において、チャンバ7内にプラズマガスとしてArまたはAr+H
2ガスを供給しつつ、開口部8から基材2に向けてガスを噴出させながら、図示していない高周波電源より13.56MHzの高周波電力を、コイル3に供給することにより、チャンバ7に高周波電磁界を発生させることでプラズマPを発生させ、開口部8からプラズマを基材2に照射するとともに走査することで、半導体膜の結晶化などの熱処理を行うことができる。
【0056】
プラズマ発生の条件としては、開口部8と基材2間の距離=0.1〜5mm、走査速度=20〜3000mm/s、プラズマガス総流量=1〜100SLM、Ar+H
2ガス中のH
2濃度=0〜10%、放電抑制ガス(N
2)流量=1〜100SLM、高周波電力=0.5〜10kW程度の値が適切である。ただし、これらの諸量のうち、ガス流量及び電力は、開口部8の長さ100mm当たりの値である。ガス流量や電力などのパラメータは、開口部8の長さに比例した量を投入することが適切と考えられるためである。
【0057】
このように、開口部8の長手方向と、基材載置台1とが平行に配置されたまま、開口部8の長手方向とは垂直な向きに、長尺のチャンバ7と基材載置台1とを相対的に移動するので、生成すべきプラズマの長さと、基材2の処理長さがほぼ等しくなるように構成することが可能となる。
【0058】
このように、本実施の形態によれば、基材2が長尺の熱プラズマに近く、また、長尺のチャンバ7を構成する2つの長い直線部の両側を用いて基材2に直接プラズマを照射する構成であるため、ガス及び高周波電力の利用効率に優れる。つまり、基材の表面近傍をごく短時間だけ均一に高温熱処理するに際して、或いは、反応ガスによるプラズマまたはプラズマと反応ガス流を同時に基材へ照射して基材を低温プラズマ処理するに際して、高速な処理が可能で、かつ、プラズマを安定的に利用することができる。
【0059】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について、
図3を参照して説明する。
【0060】
図3は、本発明の実施の形態2におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に垂直な面で切った断面図であり、
図1に相当する。
【0061】
実施の形態2では、第一セラミックブロック4及び第二セラミックブロック5を同一材料(窒化シリコン)で構成している。また、プラズマガスマニホールド9及び放電抑制ガスマニホールド12が、第一セラミックブロック4に設けた溝をもって構成され、第二セラミックブロック5は単純な平板である。
【0062】
このような構成では、第一セラミックブロック4の冷却能力は劣るものの、複雑な加工は第一セラミックブロック4のみに施せばよいという利点がある。
【0063】
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3について、
図4及び
図5を参照して説明する。
【0064】
図4は、本発明の実施の形態3におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に垂直な面で切った断面図であり、
図1に相当する。
図5は、
図4に示した誘導結合型プラズマトーチユニットの組立構成図であり、各部品(一部)の斜視図を並べたものである。
図5(a)は
図4の上方斜めから見た図、
図5(b)は
図4の下方斜めから見た図である。
【0065】
図4において、コイル3とチャンバ7の間に、チャンバ7に沿って冷媒流路16が設けられている。冷媒流路16は、第一セラミックブロック4に設けた溝と、これに貼り合わされた第二セラミックブロック5によって構成されている。冷媒流路16を流れる冷媒が、直接、第一セラミックブロック4に触れる構成となっており、チャンバ7を効果的に低温に保つことができる。冷却効率を最大化することを優先し、冷媒流路16をチャンバ7に沿うよう配置するため、プラズマガスを溜めるプラズマガスマニホールド9を冷媒流路16よりも外側に配置し、プラズマガス供給穴11を斜めに配置している。つまり、プラズマガス供給穴11におけるガスの流れる方向が、チャンバ7がなす平面に対して傾斜している構成である。
【0066】
図5に示すように、冷媒流路16に流す例えば冷却水の給排水は、給排水管17により行われる。本実施の形態では、冷媒流路16とプラズマガスマニホールド9が干渉しないように、第二セラミックブロック5に2つの溝が構成されている。
【0067】
(実施の形態4)
以下、本発明の実施の形態4について、
図6及び
図7を参照して説明する。
【0068】
図6は、本発明の実施の形態4におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に垂直な面で切った断面図であり、
図1に相当する。
図7は、
図6に示した誘導結合型プラズマトーチユニットの組立構成図であり、各部品(一部)の斜視図を並べたものである。
図7(a)は
図6の上方斜めから見た図、
図7(b)は
図6の下方斜めから見た図である。
【0069】
図6、
図7において、冷媒流路16が第二セラミックブロック5の下面(基材載置台1に対向する面)に、また、プラズマガスマニホールド9及び放電抑制ガスマニホールド12が、その反対の面、つまり、第二セラミックブロック5の上面(基材載置台1とは逆側の面)に設けられている点で、実施の形態3と相違する。冷媒流路16は、第二セラミックブロック5に設けた溝と、これに貼り合わされた第一セラミックブロック4によって構成され、プラズマガスマニホールド9及び12は、第二セラミックブロック5に設けた溝と、これに貼り合わされたセラミック板25によって構成されている。
【0070】
プラズマガスマニホールド9とプラズマガス供給穴11とは、第二セラミックブロック5に設けた溝にはめ込まれた多孔質セラミックス材からなるプラズマガスマニホールド9と連通する貫通穴により構成された配管18によって接続されている。同様に、放電抑制ガスマニホールド12と放電抑制ガス供給穴13とは、第二セラミックブロック5に設けた溝にはめ込まれた多孔質セラミックス材からなる放電抑制ガスマニホールド12と連通する貫通穴により構成された配管19によって接続されている。
【0071】
上述の実施の形態3においては、第一セラミックブロック4と第二セラミックブロック5が接着剤によって接着されることで、冷媒が冷媒流路16から漏れないように構成されていたが、本実施の形態では、オーリング21によって冷媒流路16がシールされる。このように、冷媒流路16とプラズマガスマニホールド9及び12を、第二セラミックブロック5の別の面に設けた溝によって構成することにより、
図7(b)に示すように冷媒流路16を単純な環状の形状に構成することが可能となり、オーリング21によるシールが容易な構成とすることができる。
【0072】
第一セラミックブロック4と第二セラミックブロック5は接着してもよいが、接着せずに図示しないボルト・ナットなどで締結する構成とすることもできる。こうすることで、分解洗浄などのメンテナンスができるという利点がある。
【0073】
(実施の形態5)
以下、本発明の実施の形態5について、
図8を参照して説明する。
【0074】
図8は、本発明の実施の形態5におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に垂直な面で切った断面図であり、
図1に相当する。
【0075】
図8において、冷媒流路16及びプラズマガスマニホールド9が第一セラミックブロック4の上面(基材載置台1とは逆側の面)に設けられている点で、実施の形態3と相違する。このような構成も可能である。
【0076】
(実施の形態6)
以下、本発明の実施の形態6について、
図9を参照して説明する。
【0077】
図9は、本発明の実施の形態6におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に垂直な面で切った断面図であり、
図1に相当する。
【0078】
図9において、シリコンからなるシールド板23が、第一セラミックブロック4の下面(基材載置台1に対向する面)に設けられている点で、実施の形態3と相違する。このような構成により、コイル3が発生する高周波電磁界が、シールド板23によって効果的に遮蔽されるため、基材2近傍の高周波電磁界が相当に弱まるので、静電ダメージによる基材2上に形成されたトランジスタなどの電子デバイスの破壊・劣化がほとんど生じないという利点がある。
【0079】
(実施の形態7)
以下、本発明の実施の形態7について、
図10を参照して説明する。
【0080】
図10は、本発明の実施の形態7におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に垂直な面で切った断面図であり、
図1に相当する。
【0081】
図10において、金属からなるシールド板23が、第一セラミックブロック4の下面(基材載置台1に対向する面)に設けられた凹部に配置され、さらにシールド板23を覆うシールド板カバー24が設けられている。このような構成により、実施の形態6と同様、静電ダメージを抑制でき、また、実施の形態6においてシールド板23の表面で発生する可能性があるアークなどの異常放電がほとんど生じないという利点がある。
【0082】
以上述べたプラズマ処理装置及び方法は、本発明の適用範囲のうちの典型例を例示したに過ぎない。
【0083】
例えば、誘導結合型プラズマトーチユニットTを、固定された基材載置台1に対して走査してもよいが、固定された誘導結合型プラズマトーチユニットTに対して、基材載置台1を走査してもよい。
【0084】
また、本発明の種々の構成によって、基材2の表面近傍を高温処理することが可能となる。それにより、従来例で述べたTFT用半導体膜の結晶化や太陽電池用半導体膜の改質に適用可能であることは勿論、シリコン半導体集積回路の酸化、活性化、シリサイド形成などのアニール、プラズマディスプレイパネルの保護層の清浄化や脱ガス低減、シリカ微粒子の集合体からなる誘電体層の表面平坦化や脱ガス低減、種々の電子デバイスのリフロー、固体不純物源を用いたプラズマドーピングなど、様々な表面処理に適用できる。また、太陽電池の製造方法としては、シリコンインゴットを粉砕して得られる粉末を基材上に塗布し、これにプラズマを照射して溶融させ多結晶シリコン膜を得る方法にも適用可能である。
【0085】
また、プラズマの着火を容易にするために、着火源を用いることも可能である。着火源としては、ガス給湯器などに用いられる点火用スパーク装置などを利用できる。
【0086】
また、説明においては簡単のため「熱プラズマ」という言葉を用いているが、熱プラズマと低温プラズマの区分けは厳密には難しく、また、例えば、田中康規「熱プラズマにおける非平衡性」プラズマ核融合学会誌、Vol.82、No.8(2006)pp.479−483において解説されているように、熱的平衡性のみでプラズマの種類を区分することも困難である。本発明は、基材を熱処理することを一つの目的としており、熱プラズマ、熱平衡プラズマ、高温プラズマなどの用語にとらわれず、高温のプラズマを照射する技術に関するものに適用可能である。
【0087】
また、基材の表面近傍をごく短時間だけ均一に高温熱処理する場合について詳しく例示したが、反応ガスによるプラズマまたはプラズマと反応ガス流を同時に基材へ照射して基材を低温プラズマ処理する場合においても、本発明は適用できる。プラズマガスに反応ガスを混ぜることにより、反応ガスによるプラズマを基材へ照射し、エッチングやCVDが実現できる。
【0088】
或いは、プラズマガスとしては希ガスまたは希ガスに少量のH
2ガスを加えたガスを用いつつ、シールドガスとして反応ガスを含むガスを供給することによって、プラズマと反応ガス流を同時に基材へ照射し、エッチング、CVD、ドーピングなどのプラズマ処理を実現することもできる。プラズマガスとしてアルゴンを主成分とするガスを用いると、実施例で詳しく例示したように、熱プラズマが発生する。
【0089】
一方、プラズマガスとしてヘリウムを主成分とするガスを用いると、比較的低温のプラズマを発生させることができる。このような方法で、基材をあまり加熱することなく、エッチングや成膜などの処理が可能となる。エッチングに用いる反応ガスとしては、ハロゲン含有ガス、例えば、C
xF
y(x、yは自然数)、SF
6などがあり、シリコンやシリコン化合物などをエッチングすることができる。反応ガスとしてO
2を用いれば、有機物の除去、レジストアッシングなどが可能となる。CVDに用いる反応ガスとしては、モノシラン、ジシランなどがあり、シリコンやシリコン化合物の成膜が可能となる。
【0090】
或いは、TEOS(Tetraethoxysilane)に代表されるシリコンを含有した有機ガスとO
2の混合ガスを用いれば、シリコン酸化膜を成膜することができる。その他、撥水性・親水性を改質する表面処理など、種々の低温プラズマ処理が可能である。容量結合型大気圧プラズマを用いた従来技術に比較すると、誘導結合型であるため、単位体積あたり高いパワー密度を投入してもアーク放電に移行しにくく、より高密度なプラズマが発生可能であり、その結果、速い反応速度が得られ、基材の所望の被処理領域全体を短時間で効率よく処理することが可能となる。