(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定の太陽電池の受光面上に形成された表面電極と、前記所定の太陽電池に隣接する別の太陽電池の裏面上に形成された裏面電極とを、配線部材によって接続することにより、互いに接続された複数の太陽電池を備える太陽電池モジュールであって、
前記配線部材は受光面側および裏面側に前記表面電極および前記裏面電極より硬い凹凸形状を有し、
受光面側に設けられた凸部の少なくとも一部は前記裏面電極の中に食い込み、裏面側に設けられた凸部の少なくとも一部は前記表面電極の中に食い込み、
前記所定の太陽電池と前記配線部材とは、樹脂によって接着され、前記別の太陽電池と前記配線部材とは、樹脂によって接着されていることを特徴とする太陽電池モジュール。
前記配線部材は、第1の部材と、前記第1の部材を覆う表面に形成され前記電極より硬い凹凸形状を有する第2の部材とで構成される請求項1に記載の太陽電池モジュール。
前記配線部材は、第1の部材と、前記第1の部材を覆う表面に形成され前記電極より硬い凹凸形状を有する第2の部材とで構成されることを特徴とする請求項3に記載の太陽電
池モジュールの製造方法。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、複数の太陽電池がその表裏面の電極に電気的に接続された配線部材により直列及び/又は並列に接続された構造を有している。太陽電池モジュールを作製する際に、太陽電池の電極と配線部材との接続には、従来、半田が用いられている。半田は、導通性、固着強度等の接続信頼性に優れ、安価で汎用性があることから広く用いられている。
【0003】
一方、配線部材の接続時の熱影響を低減するため、太陽電池において半田を使用しない配線の接続方法も検討されている。例えば、樹脂接着剤を有する接着フィルムを用いて太陽電池と配線部材とを接続する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
接着フィルムを用いた配線の接続は、接着フィルムを太陽電池の電極と配線部材との間に配置し、太陽電池と配線材とを相対的に加圧しつつ加熱することにより、樹脂接着剤により配線部材を太陽電池の電極に接続させている。
【0005】
上記した樹脂接着剤を用いた太陽電池モジュールにおいて、電極と配線部材との間の剥がれを解消するために、太陽電池の表面上に形成されたバスバー電極を配線部材の中に埋め込むように構成したものが提案されている(例えば、特許文献2)。配線部材はバスバー電極が埋め込まれやすいように、銅箔の周囲に半田などの軟導電体層を設けている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態に係る太陽電池モジュールにつき図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、説明の重複を避けるためにその説明は繰返さない。
【0014】
本
図1は本実施形態にかかる太陽電池モジュールである。
図1に示すように、太陽電池モジュールは、複数の板状の太陽電池1を備えている。太陽電池1は、例えば、厚みが0.15mm程度の単結晶シリコンや多結晶シリコンなどで構成される結晶系半導体からなり、1辺が125mmの略正方形を有するが、厚みや大きさ等はこれに限るものではなく、また、他構成の太陽電池を用いても良い。
【0015】
太陽電池1内には、例えば、n型領域とp型領域が形成され、n型領域とp型領域との界面部分でキャリア分離用の電界を形成するための半導体接合部が形成されている。
【0016】
図2に示すように、太陽電池1の受光面(表面)側の表面上には、表面電極11、裏面側の表面上には裏面電極12が形成されている。本実施形態において、表面電極11は、互いに平行に形成された複数のフィンガー電極110からなる。フィンガー電極110は、例えば、フィンガー電極幅約100μm、ピッチ約2mmで55本程度形成される。
図3に示すように、フィンガー電極110に直交して配線部材としてのタブ20が接続される。表面電極11には、タブ20が接続される位置に合わせてバスバー電極111が設けられている。バスバー電極111は全てのフィンガー電極110と電気的に接続されている。バスバー電極111は、タブ20との接着性並びにフィンガー電極110とタブ20
との電気的接続を良好にするために、折れ線状に形成されている。
【0017】
また、太陽電池1の裏面側の表面部分には、裏面電極12が形成されている。裏面電極12は、互いに平行に形成された複数のフィンガー電極120からなる。フィンガー電極120は、例えば、フィンガー電極幅約100μm、ピッチ約0.5mmで217本程度形成される。裏面電極12には、タブ20が接続される位置に合わせてバスバー電極121が設けられている。バスバー電極121は全てのフィンガー電極120と電気的に接続されている。バスバー電極112は、タブ20との接着性並びにフィンガー電極120とタブ20との電気的接続を良好にするために、折れ線状に形成されている。
【0018】
このような表面電極11及び裏面電極12は、例えば、熱硬化型或いは熱焼成型の銀ペーストをスクリーン印刷することによって形成することができる。また、これ以外に蒸着法やスパッタ法或いはメッキ法等他の方法を用いて形成しても良い。
【0019】
図2において、バスバー電極111(121)及びフィンガー電極110(120)のタブ20が接続される領域において、点々で記載しているのは、後述するように、タブ20の山部が電極に食い込む領域を模式的に示している。また、
図3において、タブ20の中の点々も山部が電極に食い込む領域を模式的に示している。タブ20は、フィンガー電極110(120)の折れ曲がり角が露出する程度の細い幅となる。これによって、タブ20とフィンガー電極110(120)との位置合わせが容易になる。
【0020】
図1に示すように、表面電極11上、裏面電極12上に、3本のタブ20が接続される。タブ20の幅aは約1.5mmである。
【0021】
尚、太陽電池1の受光面に入射する光の量を増大させるために、表面電極11のフィンガー電極110の本数を、裏面電極12のフィンガー電極120の本数より少なくしている。また、表面電極11のフィンガー電極110の厚みを、裏面電極12のフィンガー電極120の厚みより大きくすることで、表面電極11の抵抗を小さくすることができ、さらに太陽電池特性を向上させることができる。
【0022】
次に、上記した太陽電池1を用いて太陽電池モジュールを製造する方法につき説明する。
図4は、
図1のA−A’線断面図である。太陽電池モジュールは、
図1、
図4に示すように、表面電極11、裏面電極12に配線部材としてのタブ20が電気的に接続される。タブ20を表面電極11、裏面電極12に接続するために樹脂剤3が用いられる。樹脂剤3としては、例えば、異方性導電樹脂剤が用いられる。
【0023】
異方性導電樹脂剤としては、樹脂接着成分とその中に分散した導電性粒子とを少なくとも含んで構成されている。樹脂接着成分は熱硬化性樹脂を含有する組成物からなり、例えば、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂等を用いることができる。これらの熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いるか2種以上を組み合わせて用いられ、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる1種以上の熱硬化性樹脂が好ましい。
【0024】
導電性粒子としては、例えば、金粒子、銀粒子、銅粒子及びニッケル粒子などの金属粒子、或いは、金メッキ粒子、銅メッキ粒子及びニッケルメッキ粒子などの導電性又は絶縁性の核粒子の表面を金属層などの導電層で被覆してなる導電性粒子が用いられる。
【0025】
まず、太陽電池1の表面電極11及び裏面電極12とタブ20との間に、樹脂剤3を配置する。樹脂剤3は、接続するタブ20の幅と同一若しくは少し幅の細いものが好ましい。例えば、タブ20の幅が、0.5mm〜3mmであれば、樹脂剤3の幅もタブ20の幅
に対応して0.5mm〜3mm若しくはこれより少し幅の細いものにする。本実施形態においては、
図1に示すように、幅1.2mmの3本のタブ20を用いている。このため、タブ20が接着される位置上にタブ20の幅に対応した幅の3本の樹脂剤3が配置される。尚、樹脂剤3は、硬化後も透光性を有するものであれば、タブ20の幅より広くても良い。
【0026】
図6に示すように、タブ20は、芯材としての銅薄板20aで構成され、タブ20の表面には、銀層20bを設けている。銀層20bは、表面電極11、裏面電極12より硬い層を構成している。
【0027】
タブ20としては、少なくとも片面に微細な凹凸が設けられ凹凸の山部の高さ約10〜50μmである。
図6に示すタブ20は、片面に微細な凹凸が設けられ、反対面は平坦な面である。このようなタブを片面凹凸タブという。
図10に示すタブ20は、両面に微細な凹凸が設けられている。このようなタブ20を両面凹凸タブという。タブの凹凸としては、タブ20の長手方向に溝を形成したものや、ピラミッド状の凸部を多数表面上に形成したもの等を用いることができる。
【0028】
上記した微細な凹凸を有する表面に銀層20bを設けたタブ20を樹脂剤3に押圧し、押圧しながら加熱処理を施して樹脂剤3を熱硬化してタブ20を表面電極11、裏面電極12に接続する。
【0029】
複数の太陽電池1の各々を互いに隣接する他の太陽電池1とタブ20によって電気的に接続するには、タブ20の一方端側が所定の太陽電池1の受光面側の表面電極11に接続されるとともに、他方端側がその所定の太陽電池1に隣接する別の太陽電池の裏面側の裏面電極12に接続するように、太陽電池1の表裏に配置した樹脂剤3にそれぞれタブ20を置く。
【0030】
図13に示すように、太陽電池1を用意し(図中(a))、太陽電池1の表面電極11、裏面電極12に樹脂剤3を載せる(図中(b))。そして、例えば、ヒートブロック6上に載せられた太陽電池1を例えば、0.05〜1.00MPa程度の圧力で他のヒートブロック6を用いて押圧し、樹脂剤3を介してタブ20を太陽電池1側にそれぞれ押し付ける。そして、ヒートブロック6の温度を樹脂剤3の樹脂接着成分が熱硬化する温度での高温加熱、例えば、120℃以上200℃以下の温度に加熱してタブ20を圧着固定させ、太陽電池1を電気的に接続して配列する(図中(d))。
[0031] 樹脂剤3上に配置されたタブ20上部から太陽電池1の方向へ圧力をかけながら、当該太陽電池1を加熱する。この加熱時において、タブ20の銀層20bの表面領域は、表面電極11、裏面電極12よりも硬い状態が保たれる。
【0031】
そうすると、
図6、
図7及び
図13(d)に示すように、表面電極11、裏面電極12内に、タブ20の山部(凸部)が食い込み、タブ20と表面電極11、裏面電極12とが樹脂剤3にて接合される。このように、山部を有する銀層20bが、銀粉末を主としてエポキシ樹脂で固められた電極(バスバー電極111、121)がそれぞれ表面電極11、裏面電極12に食い込む。
【0032】
同様にして、2枚目の太陽電池1をタブ20上に重ね置いて軽く圧着し、上述した同様の手順で接着を行い、所望する枚数の太陽電池1を接合していき、ストリングが形成され、太陽電池モジュールが形成される。
【0033】
太陽電池1の反りは、タブ20と太陽電池1との線膨張係数が異なるために発生すると考えられる。このような反りは温度に比例することから、タブ20と太陽電池1とに加え
る温度が高くなれば、太陽電池1の反りは大きくなりやすい。従って、太陽電池1の反りの低減には、低い温度での接着接合が最も有効な手段といえる。
【0034】
本実施形態に係る太陽電池モジュールによると、接着手段を半田による合金接合よりも低温で行うことができる樹脂剤3にしたため、太陽電池1の表裏の反りによる応力をより小さくすることができ、反りの発生を抑えることができる。
【0035】
更に、樹脂剤3が表面電極11、裏面電極12に食い込んだタブ20の銀層20bの周辺で接着しているので、タブ20の接着性を高めることができる。
【0036】
なお、上記した実施形態では、樹脂剤3として異方性導電樹脂剤を例示したが、樹脂剤3としては導電性粒子を含まないものも用いることができる。樹脂剤3として導電性粒子を含まない樹脂剤を用いる場合には、表面電極11及び裏面電極12の表面の一部をタブ20の表面に直接接触させることによって、電気的な接続を行う。この場合においてもタブ20の銀層20bが表面電極11、裏面電極12に食い込んでいるので、十分な電気的接続が得られる。
【0037】
このようにして、タブ20により複数の太陽電池1を接続したものを、ガラスからなる表面部材と耐侯性フィルム又はガラス、プラスチックのような部材からなる裏面部材との間に、EVA等の透光性を有する封止材シートで挟んで重ね合わせる。そして、ラミネート装置により、太陽電池1を表面部材と裏面部材との間に封止材により封止することにより、太陽電池モジュールが得られる。
【0038】
図11は、片面凹凸タブを用いて隣り合う太陽電池1の表面と裏面とを接続した状態を示している。この例では、太陽電池1の表面側に山部が面し、裏面側には平坦部が面することになる。従って、表面側のタブ20の山部が電極11に食い込む。但し太陽電池1の裏面側では、タブ20は裏面電極12には食い込まない。
【0039】
図5は、隣り合う2つの太陽電池1の表面同士、裏面同士をタブ20で接続している。この例では、片面凹凸タブを用いても表面電極11、裏面電極12の両方にタブ20の山部を食い込ませることができる。この例では隣り合う2つの太陽電池1が並列に接続され、並列に接続された一対の太陽電池1同士を直列に接続している。
【0040】
図8は、両面凹凸タブを用いて隣り合う太陽電池1の表面と裏面とを接続した状態を示している。この例では、太陽電池1の表面電極11、裏面電極12の両方にタブ20の山部が面することになる。従って、
図10に示すように、表裏面側のタブ20の山部が表面電極11、裏面電極12にそれぞれ食い込んでいる。
【0041】
図9は、隣り合う2つの太陽電池1の表面同士、裏面同士を両面凹凸タブで接続している。この例では隣り合う2つの太陽電池1が並列に接続され、並列に接続された一対の太陽電池1同士を直列に接続している。
【0042】
次に、本発明による太陽電池モジュールと参考例の太陽電池モジュールを用意し、温度サイクル試験を行った。温度サイクル試験は、温度を常温から90±2℃から−40±3℃から常温に変化させ、各上下限10分以上、1サイクル6時間以下で、温度変化率は上昇、下降ともに87℃/毎時で行い、この温度サイクルを400回行った。参考例は、
図12に示すように、銅箔20aに軟導体として表面に錫のコーティング層20bを設けたものをタブ20として用い、上記した異方性導電接着剤を用いて表面電極11、裏面電極12に接続したものである。尚、錫をコーティングしたタブ20には凹凸は設けていない。本発明の実施例1は、
図11に示すように、表面側は、銀層20bを設けた片面凹凸タ
ブを用い、裏面側は、銅箔20aに軟導体として表面に錫のコーティング層20bを設けたものである。
【0043】
この実験に用いた太陽電池モジュールは、1枚の太陽電池1の表裏にそれぞれ該当するタブ20を接続し、それをガラスからなる表面部材と耐侯性フィルムからなる裏面部材との間に、EVA等の透光性を有する封止材シートで挟んで重ね合わせる。そして、ラミネート装置により、太陽電池を表面部材と裏面部材との間に封止材により封止したものである。
【0044】
400回の温度サイクル試験を行った結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
表1は、従来例及び実施例1における出力値を基準とした低下率を示す。尚、低下率は、参考例を1として規格化した。表1から、タブ20の銀層20bを表面電極11に食い込ませることにより、温度サイクルの400回後においても低下率が0.44と大幅に減っているのが分かる。
【0046】
次に、本発明の実施例1と
図10に示すように両面凹凸タブ20を用いて両方の表面電極11、裏面電極12に銀層20bを食い込ませた実施例2を用意し、600回の温度サイクル試験を行った。その結果を表2に示す。
【0047】
【表2】
実施例における出力値を基準とした低下率を示す。尚、実施例1を1として規格化した。表2より、両面凹凸のタブ20を用いると、600回の温度サイクル後においても、片面タブ20のものに比して0.74の低下率であり、より効果があることが分かる。
【0048】
上記したように、本発明は、タブが太陽電池の表面電極又は裏面電極に食い込むことにより、アンカー効果が生じ、タブの熱膨張、熱収縮の際のタブの動きが抑制され、温度変化に対する信頼性が高まったと考えられる。
【0049】
本発明における太陽電池1としては、例えば、結晶系シリコン基板表面に非晶質シリコン層を積層したいわゆるHIT(登録商標)構造を有する太陽電池や通常の結晶系あるいは薄膜系の太陽電池をもちいることができる。
【0050】
また、上記した実施形態は、バスバー電極111、121として折れ線状に形成されているが、直線状であっても本発明は適用できる。
【0051】
また、上記した実施形態は、電極はフィンガー電極とバスバー電極で構成しているが、電極としてフィンガー電極のみを有する太陽電池においても本発明は適用できる。
【0052】
又、本実施形態において、タブの材料を銅箔として説明を行ったが、タブの材料としては電気抵抗が小さいものであればよく、他に鉄、ニッケル、銀あるいはこれらを混合したものであっても、同様な効果が得られる。
【0053】
更に、本実施形態において、タブは、芯材と表面とが異なる材料で構成されていたが、芯材と表面とが同じ材料であっても本発明は適用できる。
【0054】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。