特許第6043985号(P6043985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 名古屋油化株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6043985-マスキング治具 図000002
  • 特許6043985-マスキング治具 図000003
  • 特許6043985-マスキング治具 図000004
  • 特許6043985-マスキング治具 図000005
  • 特許6043985-マスキング治具 図000006
  • 特許6043985-マスキング治具 図000007
  • 特許6043985-マスキング治具 図000008
  • 特許6043985-マスキング治具 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043985
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】マスキング治具
(51)【国際特許分類】
   B05B 15/04 20060101AFI20161206BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20161206BHJP
   B60B 7/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B05B15/04 102
   B05C11/00
   B60B7/00 H
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-82549(P2013-82549)
(22)【出願日】2013年4月10日
(65)【公開番号】特開2014-205089(P2014-205089A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2016年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000243892
【氏名又は名称】名古屋油化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075476
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐見 忠男
(72)【発明者】
【氏名】小川 正則
(72)【発明者】
【氏名】藤井 慎
【審査官】 安積 高靖
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−120979(JP,A)
【文献】 特開2007−167769(JP,A)
【文献】 特開平09−057165(JP,A)
【文献】 特開2014−205090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 15/00−15/12
B60B 7/00
B05D 1/00− 7/26
B05C 7/00−21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装対象に設けられた穴の奥端部を塗装から保護するために使用されるマスキング治具であって、
芯棒と、
上記芯棒の一端部に設けられている円盤体と、
上記芯棒の両端側から上記円盤体を挟むように該芯棒上に取り付けられることで該芯棒上における該円盤体の位置を定めている一対の固定盤と、
上記芯棒上で上記円盤体から所定間隔をおいた他端側寄りの位置に交換自在に取り付けられて該円盤体を塗装から保護する保護盤と、
を有し、
上記穴の内部で上記芯棒の一端側が上記穴の奥端側になるように、該穴に挿入して使用されるものであるとともに、
上記一対の固定盤及び上記保護盤は上記穴の内径よりも小径に構成され、
上記円盤体に付勢部材を内装し、該付勢部材の付勢力により、該円盤体を上記穴の内径よりも小径の形態と上記穴の内径よりも大径の形態とに変化自在に、かつ上記穴の内径よりも大径の形態で該穴の内周面に該円盤体の外周面を圧接させるように構成した
ことを特徴とするマスキング治具。
【請求項2】
上記円盤体は、円板を直径で分割した一対の半割体からなり、上記付勢部材には金属製の圧縮バネを使用し、該一対の半割体が直径の一端部で相互開閉自在に繋がれたうえで、直径の他端部の間に上記圧縮バネが該一対の半割体を相互離間方向に付勢するように架設されている
請求項1に記載のマスキング治具。
【請求項3】
上記穴の少なくとも外端部には環状堤部が凸設されており、
上記保護盤は上記穴の内径よりも小径で、かつ上記環状堤部の内径よりも小径に構成され、
上記円盤体は上記穴の内径よりも小径の形態で上記環状堤部の内径よりも小径に設定されている
請求項1または請求項2に記載のマスキング治具。
【請求項4】
上記円盤体は、厚紙及びエンジニアリングプラスチック製シートの少なくとも何れか一方の積層物を材料に使用している
請求項1から請求項3のうち何れか一項に記載のマスキング治具。
【請求項5】
上記塗装対象は車両用のホイールのディスク部であり、上記穴は該ディスクの中心に位置するハブ穴である
請求項1から請求項4のうち何れか一項に記載のマスキング治具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両用のホイールのディスク部に設けられたハブ穴のように、塗装対象に設けられた穴の奥端部を塗装から保護するために使用されるマスキング治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に車両用のホイールにおいてディスク部の中心に設けられたハブ穴の奥端部は、車両への取り付けに際して位置決めの重要な要素であるため、塗装を許されていない。そこで、該車両用のホイールのディスク部を塗装する場合には、マスキング治具を用いることで該ハブ穴の奥端部への塗料の付着を防止している。
上記マスキング治具として、特許文献1に記載のホイール用マスキング材は、円盤形状をなす被覆部と、この被覆部の上面中央から突出する把持シャフト部と、被覆部の下面中央から突出する位置決めシャフト部とを有しており、把持シャフト部と位置決めシャフト部は同軸をなしている。該ホイール用マスキング材は、ディスク部の意匠面が上向きになるように略円錐台形状の支持台にセットされた車両用ホイールのハブ穴内に、ディスク部の意匠面側から挿入されて使用される。また該支持台にあっては、その上端に該ホイール用マスキング材の被覆部が載せられる載置部と、該ホイール用マスキング材の位置決めシャフト部が挿通される挿通穴とが設けられている。そして該ホイール用マスキング材は、該被覆部が該支持台の上端に載せられた状態で、該被覆部の外周面がハブ穴の内周面に僅かな隙間で対峙することにより、非塗装部への塗料の進入を抑制している。
しかし、上記ハブ穴には、例えばハブキャップを取り付ける等のために外端部に環状堤部が凸設されているものがある。このようなハブ穴を保護するホイール用マスキング材にあっては、塗装を傷つけないようにするため、被覆部の径を環状堤部の内径と同じか、これよりも小さくする必要があるが、被覆部の外周面がハブ穴の内周面と大きな隙間で対峙することになり、該大きな隙間からハブ穴の奥端部へ塗料が進入してしまう。
上記マスキング治具として、特許文献2に記載のホイール用マスキング材は、円板状のベース部と、該ベース部の全周縁に立設された環状シール部とを有し、これらベース部と環状シール部は、合成樹脂によって一体に成形されている。該環状シール部は、複数枚の弧状薄壁を環状に並べ連ねることで弾性を有するように構成されるとともに、その外径がハブ穴の内径よりも若干大径とされることにより、該環状シール部の外周面を上記ハブ穴の内周面に接触させて該環状シール部で上記ハブ穴の内周面を覆うことにより、ハブ穴の奥端部への塗料の付着を防止している。
上記ホイール用マスキング材は、複数枚の弧状薄壁を環状に並べ連ねることによって環状シール部を構成したことにより、弧状薄壁がベース部に対して各個に独立して傾動する。このため、上記環状堤部が凸設されているハブ穴であっても、該弧状薄壁が柔軟に傾動して該環状堤部を円滑に乗り越えることが出来る。また上記ホイール用マスキング材にあっては、該環状シール部の内側に円盤状の押圧体を設け、該環状シール部の外周面を上記ハブ穴の内周面に圧接させており、該環状シール部の外周面と上記ハブ穴の内周面の間に隙間が形成されないように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−167769号公報
【特許文献2】特開2011−120979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来のマスキング治具である特許文献2のホイール用マスキング材にあっては、塗装後の加熱処理で穴内における固定がはずれて穴から抜け落ちてしまうという問題点があった。
すなわち、上記ベース部と上記環状シール部は合成樹脂によって一体に成形され、上記環状シール部を上記ハブ穴の内周面に圧接させる上記押圧体には発泡ゴム等の弾性材料が使用される。上記ホイール用マスキング材を上記ハブ穴に挿着した状態にすると、上記環状シール部と上記押圧体には該ホイール用マスキング材をハブ穴内に固定するべくテンションが加わるが、該状態のまま該ホイール用マスキング材を加熱処理すると、該テンションが加わった状態における形状が記憶されてしまい、該状態のクセがついてしまう。よって、上記環状シール部が上記ハブ穴の内周面に十分に接触できなくなったり、該押圧体の反発弾性が低下したりして、上記環状シール部の外周面を上記ハブ穴の内周面に十分に圧接させることが出来なくなる。
また上記ホイール用マスキング材(マスキング治具)にあっては、低コスト化を図りづらいという問題があった。つまり、上記ホイール用マスキング材にあっては、主に円板状シール体(保護盤)に塗料が付着するが、該塗料が付着したままで繰り返し使用すると、該塗料による汚損等の問題が生じる。よって円板状シール体を交換等する必要があるが、該円板状シール体は支持柱(芯棒)上に上記ベース部等を位置固定するべく該支持柱に接合されており、更に上記した環状シール部のクセつきの問題もあることから、交換等は上記ホイール用マスキング材の全体が対象となる。しかし上記ホイール用マスキング材は、上記ベース部等の成形のために型や手間を要する、上記押圧体に使用する発泡ゴムの材料費が高い等の理由から、製造に係るコスト低減を図りづらい。
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、安価なものとしつつ、加熱処理後も穴から抜け落ちることがないマスキング治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記従来の問題点を解決する手段として、請求項1に記載のマスキング治具の発明は、塗装対象に設けられた穴の奥端部を塗装から保護するために使用されるマスキング治具であって、芯棒と、上記芯棒の一端部に設けられている円盤体と、上記芯棒の両端側から上記円盤体を挟むように該芯棒上に取り付けられることで該芯棒上における該円盤体の位置を定めている一対の固定盤と、上記芯棒上で上記円盤体から所定間隔をおいた他端側寄りの位置に交換自在に取り付けられて該円盤体を塗装から保護する保護盤と、を有し、上記穴の内部で上記芯棒の一端側が上記穴の奥端側になるように、該穴に挿入して使用されるものであるとともに、上記一対の固定盤及び上記保護盤は上記穴の内径よりも小径に構成され、上記円盤体に付勢部材を内装し、該付勢部材の付勢力により、該円盤体を上記穴の内径よりも小径の形態と上記穴の内径よりも大径の形態とに変化自在に、かつ上記穴の内径よりも大径の形態で該穴の内周面に該円盤体の外周面を圧接させるように構成したことを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のマスキング治具の発明において、上記円盤体は、円板を直径で分割した一対の半割体からなり、上記付勢部材には金属製の圧縮バネを使用し、該一対の半割体が直径の一端部で相互開閉自在に繋がれたうえで、直径の他端部の間に上記圧縮バネが該一対の半割体を相互離間方向に付勢するように架設されていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のマスキング治具の発明において、上記穴の少なくとも外端部には環状堤部が凸設されており、上記保護盤は上記穴の内径よりも小径で、かつ上記環状堤部の内径よりも小径に構成され、上記円盤体は上記穴の内径よりも小径の形態で上記環状堤部の内径よりも小径に設定されていることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のうち何れか一項に記載のマスキング治具の発明において、上記円盤体は、厚紙及びエンジニアリングプラスチック製シートの少なくとも何れか一方の積層物を材料に使用していることを要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のうち何れか一項に記載のマスキング治具の発明において、上記塗装対象は車両用のホイールのディスク部であり、上記穴は該ディスクの中心に位置するハブ穴であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
〔作用〕
本発明のマスキング治具は、穴内へ装着する際に円盤体を該穴の内径よりも小径の形態に変化させ、該円盤体が取り付けられた芯棒の一端側が該穴の内部で奥端側になるように、該穴の中に挿入する。そして上記円盤体が上記穴の奥端部で塗料の付着を防ぎたい箇所で該円盤体を該穴の内径よりも大径の形態に変化させると、該円盤体の外周面が該穴の内周面に圧接された状態となり、該状態で上記マスキング治具が該円盤体による圧接力によって該穴内に固定される。
上記円盤体には付勢部材が内装されており、該円盤体における上記穴の内径よりも小径の形態と上記穴の内径よりも大径の形態の変化は、該付勢部材の付勢力で行われ、また円盤体による圧接力もまた該付勢部材の付勢力によるものである。つまり上記円盤体は、通常のような弾性材料による形状の変形ではなく、付勢部材の付勢力によって形態を変化させて圧接力を得るように構成されているため、塗装後の加熱処理で該圧接力が喪われにくく、上記マスキング治具が穴から抜け落ちることがない。
塗装時においては、上記穴の外側から該穴内に塗料が侵入するが、上記芯棒上で上記円盤体から所定間隔をおいた他端側寄りの位置、つまり該穴の外側寄りの位置に保護盤が設けられており、該塗料は該保護盤に付着する。つまり該保護盤は、言わば傘として機能することにより、該円盤体への塗料の付着を抑制し、該塗料による該円盤体の汚損を抑制する。そして、上記マスキング治具にあっては、上記穴内に入り込んだ塗料が付着する保護盤が、上記穴の内周面に対して圧接力を発生させる円盤体と一体になっておらず、なおかつ該保護盤が交換自在とされているため、上記保護盤に塗料がある程度付着したら、上記保護盤のみを交換、あるいは洗浄等すればよく、該保護盤の他は使い回して使用することができるため、安価なものとすることができる。
【0007】
〔効果〕
本発明のマスキング治具は安価に提供出来、また加熱しても円盤体が穴から抜け落ちるような不具合を生じない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態のマスキング治具を示す分解斜視図。
図2】実施形態の縮径形態の円盤体を示す正断面図。
図3】(a)は拡径形態の円盤体を示す平面図、(b)は縮径形態の円盤体を示す平面図。
図4】実施形態の固定盤を示す(a)は正断面図、(b)は平面図。
図5】保護盤を交換する状態を示す説明図。
図6】マスキング治具をハブ穴に挿着する前の状態を示す説明図。
図7】マスキング治具をハブ穴に挿着する状態を示す説明図。
図8】マスキング治具を用いた塗装状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のマスキング治具を具体化した一実施形態を図面に基づき説明する。
なお、以下の実施形態では、該マスキング治具を、塗装対象である車両用のホイールのディスク部中心に設けられた穴であるハブ穴の奥端部を塗装から保護するために使用されるものとする。勿論、該マスキング治具は、車両用のホイールに限らず、穴が設けられたものを塗装対象とするのであれば、何れに使用してもよい。
図1に示すように、マスキング治具1は、芯棒2を有しており、該芯棒2上の所定位置に、円盤体3と、一対の固定盤4,4と、保護盤5とを取り付けることで構成されたものである。
上記芯棒2は、上記円盤体3及び上記一対の固定盤4,4とともに上記マスキング治具1の本体部を構成するものであって、上記円盤体3、上記一対の固定盤4,4及び上記保護盤5を支持するものである。該芯棒2には、図中に示したような筒状のものを使用してもよく、あるいは棒状のものを使用してもよい。また上記車両用のホイールは焼付塗装による塗装時に170℃以上の高温で加熱処理が行われる。このため、該芯棒2の材料には、該加熱処理の際に軟化や溶融等することのないものを選択することが好ましく、このような材料として、アルミニウムや鉄や銅等の金属、ステンレス鋼等の合金、木材、紙材、あるいはポリフェニレンエーテル(PPE)等の耐熱性を有するエンジニアリングプラスチック等が例示される。この実施形態の芯棒2は、軽量であり、高温に耐え、耐久性が高く、繰り返して使用するマスキング治具1に適するという観点から、アルミニウムを材料に使用している。
【0010】
上記円盤体3は、上記マスキング治具1が穴(ハブ穴)内で抜け落ちることのないように固定するためのものである。該円盤体3は、円板状に形成されているが、これは円形状のハブ穴の他に、例えば正方形状、正六角形状、正八角形状、正十二角形状等といった種々の形状の穴にも柔軟に対応できるようにするための工夫であり、円形状とすることで該円盤体3の外周面の少なくとも一部を穴の内周面に接触させることが出来る。また該円盤体3の中心には、芯棒孔7が設けられており、該芯棒孔7に上記芯棒2を挿通することで、該芯棒2上に該円盤体3が配置されている。
【0011】
図2に示すように、上記円盤体3は、複数枚(図中では5枚)の円形薄板31を重ね合わせて構成されている。このように円形薄板31を複数枚重ね合わせることで、該円盤体3は、ハブ穴の内周面への圧接に耐える剛性を得ることが出来るとともに、加熱処理時の高温に曝されても歪まないように構成されている。
上記円盤体3を構成する複数枚の円形薄板31には、該加熱処理の際に軟化や溶融等することのないものを選択することが好ましく、例えば厚紙、あるいはポリフェニレンエーテル(PPE)等の耐熱性を有するエンジニアリングプラスチックシート、あるいは木製薄板、あるいはアルミニウムや鉄や銅やステンレス鋼等からなる金属薄板等が使用され、これらの中でも入手が容易であって加工が簡易な、厚紙あるいはエンジニアリングプラスチックシートが望ましい。勿論、上記円盤体3は、厚紙のみからなる複数枚の円形薄板31で構成しても、あるいはエンジニアリングプラスチックシートのみからなる複数枚の円形薄板31で構成してもよく、更に厚紙からなる円形薄板31とエンジニアリングプラスチックシートからなる円形薄板31とを重ね合わせて構成してもよい。また厚紙からなる円形薄板31とエンジニアリングプラスチックシートからなる円形薄板31とを重ね合わせる場合、最も外側(この場合は上記円盤体3の上面と下面)に配される円形薄板31は、上記一対の固定盤4,4に対する摺動抵抗を軽減して後述する大径の形態と小径の形態との変化を円滑なものとするため、エンジニアリングプラスチックシートからなるものとすることが望ましい。
【0012】
上記複数枚の円形薄板31は、相互の結合力を高めて高温に曝された際の剥がれを抑制するとともに、製造作業の簡易化を図るという観点から、タッカーを使用してステープル6を打ち込むことによって固定されている。
図3(a),(b)に示すように、上記ステープル6は、上記円盤体3の周方向で略等間隔おきに打ち込まれるとともに、あるステープル6を該円盤体3の正面から打ち込んだら、その隣のステープル6を該円盤体3の背面から打ち込むというように、打込み方向がなるべく交互になるように考慮されている。このようにステープル6の打込み方向を交互とすることで、該ステープル6の打ち込みで生じる上記円盤体3の撓みや歪みが解消され、該円盤体3が加熱処理時の高温に好適に耐えるものとなる。
なお、上記複数枚の円形薄板31を相互に固定するには、上記のタッカーを使用してステープル6を打ち込む他に、両面粘着テープや接着剤等を用いて接合してもよく、この場合、両面粘着テープや接着剤には、高温に耐えるもの、円盤体3を歪ませないものを使用することが望ましい。該両面粘着テープには、ポリエステルフィルムや不織布等を基材としてその両面にアクリル系等の粘着剤を塗布してなる基材を有するものと、粘着剤のみからなる基材レスのものとがあるが、何れを使用してもよく、また該接着剤としては、ホットメルト接着剤、エポキシ接着剤が例示される。
【0013】
上記円盤体3は、円板を直径で2分割した左右一対の半割体3A,3Bによって構成されている。該一対の半割体3A,3Bは直径の一端部(図3中で上端部)において、半割体3A,3Bの間をわたるようにステープル6Aを打ち込むことにより、相互開閉自在に繋がれている。
上記一対の半割体3A,3Bには、直径の他端部(図中で下端部)において、スプリング溝31A,31Bが刻設されている。該スプリング溝31A,31Bには、一対のコの字形のスプリング座32A,32Bが相対してそれぞれ嵌着されている。そして該左右一対のスプリング座32A,32Bを介して、一対のスプリング溝31A,31Bの間に、付勢部材である圧縮バネ33が設けられていることにより、上記一対の半割体3A,3Bの他端部の間に該圧縮バネ33が架設されている。該圧縮バネ33は、上記一対の半割体3A,3Bを相互離間方向に常に付勢している。また該一対の半割体3A,3Bは、直径の一端部(図中で上端部)に扇状の切欠部34A,34Bが設けられ、該一対の半割体3A,3Bの一端部同士の干渉を抑制することで、相互開閉を円滑なものとされている。
なお、上記一対のスプリング座32A,32Bは、上記圧縮バネ33の付勢力から上記一対のスプリング溝31A,31Bを保護するために設けられるものであり、必要がなければ省略してもよい。
【0014】
図3(a)に示したように、上記円盤体3は、上記一対の半割体3A,3Bの間が開いた状態となることで、大径(R)の形態(以下、拡径形態)となる。また図3(b)に示したように、上記圧縮バネ33による付勢力に抗し、上記一対の半割体3A,3Bの間を閉じることで、上記円盤体3は、小径(R)の形態(以下、縮径形態)となる。
上記円盤体3は、付勢部材として上記圧縮バネ33を使用したことにより、通常は該圧縮バネ33が伸びた状態の拡径形態となる。従って、拡径形態における上記円盤体3の大径Rの長さは、使用する該圧縮バネ33の長さに応じて設定することが可能である。また該付勢部材は、通常の上記円盤体3が拡径形態となるように上記一対の半割体3A,3Bを相互に付勢するものであれば、上記圧縮バネ33の他に、板バネや合成ゴム等を使用してもよい。
【0015】
上記一対の固定盤4,4は、上記芯棒2上における上記円盤体3の位置を定めるためのものである。図4(a),(b)に示すように、該固定盤4は、縮径形態の上記円盤体3と同一径(R)の円板状に形成され、その中心には、上記芯棒2を挿通する芯棒孔7が設けられている。なお、一対の固定盤4,4は、この実施形態では同一の構成とされている。
上記固定盤4は、上記円形薄板31と同様に、金属薄板、厚紙、エンジニアリングプラスチックシート、木製薄板等が使用可能であり、ここではアルミニウムからなる金属薄板を使用し、上記マスキング治具1を軽量で加熱処理時の高温に耐え、繰り返しての使用における耐久性の高いものとしている。つまり上記マスキング治具1は、穴の内周面に対して上記円盤体3の外周面のみが接触するように、該円盤体3の外周面を該穴の内周面に圧接させて固定されるため(後述する)、可能な限り軽量化することが望ましく、また塗装後の加熱処理時の高温に耐えられるものが望ましく、更に繰り返して使用するため耐久性の高いものとすることが望ましい。
【0016】
上記固定盤4において、上記円盤体3側となる一面は、外側薄板42で覆われている。該外側薄板42は、上記固定盤4と同一径(R)の円板状に形成され、その中心には、上記芯棒2を挿通する芯棒孔7が設けられている。
上記外側薄板42には、エンジニアリングプラスチックシートを使用することが望ましい。該外側薄板42にエンジニアリングプラスチックシートを使用することで、上記円盤体3の摺接抵抗が軽減され、該円盤体3の形態の変化を円滑なものとすることが可能である。
また該エンジニアリングプラスチックシートは、塗料の付着性が良い材料である。よって上記一対の固定盤4,4のうち、上記マスキング治具1をハブ穴に固定した際に外側(上記芯棒2の他端側)に配される固定盤4の他面(上記円盤体3側と反対側の面)を、該エンジニアリングプラスチックシートからなる該外側薄板42で覆ってもよい。このように固定盤4の他面を該外側薄板42で覆うことにより、上記円盤体3や上記固定盤4等への塗料の付着を好適に防止することができる。
【0017】
上記一対の固定盤4,4は、上記芯棒2の両端から上記円盤体3を挟み込むように、それぞれの芯棒孔7に該芯棒2が挿通されることで、該芯棒2に取り付けられている(図1参照)。さらに、該円盤体3及び該一対の固定盤4,4を挟み込むように、C字状をなす一対の固定リング8が該芯棒2上に嵌め込まれることにより(図5参照)、該一対の固定盤4,4は、該円盤体3に当接された状態で、該芯棒2の一端部(図5中で下端部)に固定されている。そして上記一対の固定盤4,4が上記芯棒2の一端部に固定された状態で、上記円盤体3は該芯棒2上における軸線方向の移動を規制され、位置固定される。
上記外側薄板42は、芯棒孔7の径を上記芯棒2の外径と略同じに設定し、該芯棒孔7に該芯棒2が嵌挿されることで該芯棒2に着脱可能に取り付けられており、塗料で汚れたり、高温で歪んだり、撓んだりした場合に簡易に交換できるように構成されている。また該外側薄板42は、芯棒孔7の径を上記芯棒2の外径と略同じにすることで、上記固定リング8も覆うことが可能であり、該固定リング8に塗料が付着し、硬化して、該固定リング8が該芯棒2から取り外し不能になることを防止している。
【0018】
上記保護盤5は、上記円盤体3や上記一対の固定盤4,4を塗装から保護するためのものである。該保護盤5は上記固定盤4と同一径(R)の円板状に形成され、その中心には、上記芯棒2を挿通する芯棒孔7が設けられている。
また上記芯棒2上において、上記円盤体3側となる上記保護盤5の直近位置には、支持盤9が設けられている。該支持盤9は、該保護盤5を該円盤体3側の方向(図5中で下側方向であり、上記マスキング治具1を穴に挿着した状態で該穴の奥端側から外側に向かう方向)から支持して、該保護盤5が曲がったり撓んだりすることを抑制するためのものである。該支持盤9は、該保護盤5と同一径かあるいは若干小径の円板状に形成され、その中心には、上記芯棒2を挿通する芯棒孔7が設けられている。
上記支持盤9は、上記芯棒2上で上記円盤体3から所定間隔をおいた他端側寄りの位置に配置されている。該支持盤9は、芯棒孔7の径を上記芯棒2の外径と略同じに設定し、該芯棒孔7に該芯棒2を挿通するとともに、該支持盤9を挟み込むように、C字状をなす一対の固定リング8が該芯棒2上に嵌め込まれることにより、該芯棒2上に固定されている(図5参照)。
そして、図5に示すように、該保護盤5は、該芯棒孔7に該芯棒2を挿通しつつ、該支持盤9上に載せることで、上記芯棒2上で上記円盤体3から所定間隔をおいた他端側寄りの位置に配置されて、上記円盤体3や上記一対の固定盤4,4を塗装から保護するように構成されている。さらに該保護盤5は、該支持盤9上に載せられて設けられていることから、該芯棒2から簡単に抜き取ることが可能であり、塗料等で汚れた場合に簡易に交換できるように構成されている。
上記保護盤5には、マスキング治具1固定のための軽量化を図りつつ、加熱処理時における高温への耐性を有し、更に塗料の付着性がよいという観点から、厚紙、エンジニアリングプラスチックシートを使用することが望ましい。また上記保護盤5は、上記固定盤4と同様に、金属薄板、厚紙、エンジニアリングプラスチックシート、木製薄板等が使用可能であり、ここではアルミニウムからなる金属薄板を使用し、上記マスキング治具1を軽量で加熱処理時の高温に耐え、繰り返しての使用における耐久性の高いものとし、上記保護盤5を下方からしっかりと支持するようにしている。
【0019】
なお、上記円盤体3は、例えば一枚の厚手の板等から形成されてもよいが、薄板を複数枚重ねて作成する本実施例の方法が望ましい。何となれば薄板は一枚のシート状薄板から打抜きによって簡単に作成されるからである。またシート状薄板を重ね合わせて積層体とし、該積層体にステープル6を円形に打ち込んで該シート状薄板同士を固定した後、該積層体を円形に打抜いて上記円盤体3を作成してもよい。また上記固定盤4、上記保護盤5は、上記円盤体3のように薄板を複数枚重ねて作成してもよい。
また上記保護盤5は、必ずしも支持盤9を設けて下方から支持する必要は無く、該支持盤9を省略するとともに、該保護盤5の芯棒孔7の径を上記芯棒2の外径と略同じに設定し、該芯棒孔7に該芯棒2を嵌挿するのみで該芯棒2に取り付け固定してもよい。
【0020】
図6に示すように、上記マスキング治具1は、組み立てられた状態で芯棒2上に一端側(図中で下端側)から順番に固定盤4、円盤体3、固定盤4、及び保護盤5が配置されている。これらのうち一対の固定盤4は、外側薄板42を介して円盤体3の両面に当接された状態で芯棒2に固定されており、該芯棒2上における円盤体3の位置を固定している。また保護盤5は、該円盤体3から所定間隔をおいて、該芯棒2上の中間部に固定されている。
上記マスキング治具1は、自動車のホイールにおいてディスク部10の中心に設けられたハブ穴11に対し、上記芯棒2の一端側、つまり一対の固定盤4と円盤体3が設けられている側が該ハブ穴11の奥端側になるようにして、該ハブ穴11の内部に外側から挿入される。
【0021】
ここで、上記ハブ穴11の両端には環状堤部12が凸設されており、該環状堤部12の内周直径dは、ハブ穴11の内周直径dよりも小さくなっている(d>d)。
一方、上記マスキング治具1において、上記円盤体3は、上記拡径形態における大径Rがハブ穴の内周直径(d)よりも長くなるように設定されている(R>d)。また該円盤体3は、上記縮径形態における小径Rが環状堤部12の内周直径(d)よりも短くなるように設定されている(d>R)。
さらに縮径形態における上記円盤体3の小径、固定盤4の直径、保護盤5の直径は、全て同一のRに設定されている。そして該Rは、ハブ穴11の内周直径(d)よりも短く(d>R)、更に環状堤部12の内周直径dと同じかこれよりも短く設定されている(d>d≧R)。
【0022】
図7に示すように、上記マスキング治具1は上記ハブ穴11へ挿着する際に、上記円盤体3が上記環状堤部12を乗り越えようとすることで、上記圧縮バネ33の付勢力に抗して縮径形態に変化する。この状態で上記マスキング治具1は、円盤体3、固定盤4、保護盤5の全ての径が上記環状堤部12の内周直径dよりも短い(d>R)ことから、該環状堤部12に邪魔されることなくハブ穴11内に挿入される。
また拡径形態における上記円盤体3の大径はRに設定されており、該Rは上記ハブ穴11の内周直径dよりも長く(R>d)設定されている(図6参照)。このため上記円盤体3は上記環状堤部12を乗り越えた後、上記圧縮バネ33の付勢力によって上記ハブ穴11内で拡径形態に復帰しようとするが、完全に復帰することができずに拡径形態へ変化しようとする状態に保持される。そして該状態が保持されることで、該圧縮バネ33の付勢力は該円盤体3の外周面を上記ハブ穴11の内周面に圧接させるように作用し、上記マスキング治具1は、上記ハブ穴11の内周面に上記円盤体3の外周面のみを圧接させて固定される。つまり上記マスキング治具1は、円盤体3の外周面を除き、それ以外の箇所を上記ハブ穴11の内周面に全く接触させておらず、該ハブ穴11へ挿着する構成としながら、該内周面に傷付き等の影響を及ぼさないように構成されている。
具体的に上記円盤体3の大径Rは、上記ハブ穴11の内周直径dよりも、0.5〜2mm長く設定することが望ましく、0.5mmに満たない場合はハブ穴11内でのマスキング治具1の固定が不十分になるおそれがあり、2mmを超える場合はマスキング治具1をハブ穴11内に挿入しづらくなる。また円盤体3の小径、固定盤4の直径、保護盤5の直径であるRは、環状堤部12の内周直径dよりも、0〜2mm短く設定することが望ましく、0.5〜1mm短く設定することがより望ましい。Rがdよりも2mmを超えて短くなると、塗料が保護盤5とハブ穴11の内周面との間の隙間から奥端へと抜けやすくなる。
【0023】
図8に示すように、上記マスキング治具1は、上記円盤体3の外周面を上記ハブ穴11の奥端部の塗装保護個所PRに圧接させて挿着される。この状態でディスク部10に外側からスプレーガンSによって塗料Pをスプレーして粉体塗装を施す。該塗料Pは、ディスク部10の表面と、ハブ穴11の内周面で環状堤部12を含む外端部に付着し、加熱処理後に塗膜PCを形成する。つまり該塗膜PCは、車両用のホイールにおいて、外側となる部分の外観向上と防錆を図るために設けられるのであり、ハブ穴11内で環状堤部12を含む外端部は、塗装が必須の部位となる。一方、ハブ穴11内の奥端部は、ホイールを車両のハブに取り付ける際に、該ハブに対して該ホイールを位置決めするための重要な部位であるから、絶対に塗装してはいけない。但し、ハブ穴11内において、塗装が必須の外端部と、絶対に塗装してはいけない奥端部との間である中間部は、塗装しても塗装しなくても何れでもよい部位である。
なお上記したようにマスキング治具1が円盤体3の外周面以外の箇所を上記ハブ穴11の内周面に全く接触させずに固定される理由は、重要な部位である該ハブ穴11内の奥端部に該マスキング治具1を接触させないようにするためである。
塗装時に該塗料Pは上記ハブ穴11内に侵入するが、この侵入した塗料Pの大半は上記環状堤部12を含むハブ穴11内の外端部を塗装するのに使用され、該ハブ穴11の奥端部へ向かって侵入しようとする塗料Pは、保護盤5に付着することで該侵入を妨げられる。また保護盤5に付着せずに該ハブ穴11の奥端部へ向かって侵入しようとする極僅かな量の塗料Pは、該奥端部へ向かうまでにハブ穴11内の中間部で該ハブ穴11の内周面に付着するか、あるいは固定盤4を覆う外側薄板42に付着することで、該ハブ穴11内の奥端部への侵入を妨げられる。さらに円盤体3が塗装保護個所PRに圧接されているので、該ハブ穴11内における該塗装保護個所PRから奥端部への塗料Pの侵入は、確実に阻止される。
【0024】
上記マスキング治具1は、上記塗装が終了すると上記ホイールとともに加熱処理され、該加熱処理終了後に上記ハブ穴11から外側に引き抜き、回収される。回収された上記マスキング治具1にあっては、塗料Pの付着量が塗装に差し支えない程度であれば、再び使用される。
一方、塗料Pの付着量が塗装に差し支えるのであれば、図5に示すように、上記マスキング治具1において保護盤5の取り外しが行われる。該保護盤5の取り外しは、該保護盤5を芯棒2から抜き取って行われる。また取り外された該保護盤5は、洗浄して付着した塗料Pを洗い落とすか、あるいは新しい保護盤5に取替える。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明のマスキング治具は、例えば車両用のホイールのディスクのハブ穴の塗装保護個所を簡単にかつ確実にマスキングすることが出来るから、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 マスキング治具
2 芯棒
3 円盤体
4 固定盤
5 保護盤
6 ステープル
7 芯棒孔

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8