(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6043987
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】化学原料の処理
(51)【国際特許分類】
C22B 34/14 20060101AFI20161206BHJP
C22B 5/04 20060101ALI20161206BHJP
C22B 5/12 20060101ALI20161206BHJP
C22B 7/02 20060101ALI20161206BHJP
B22F 9/00 20060101ALI20161206BHJP
B22F 9/20 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
C22B34/14
C22B5/04
C22B5/12
C22B7/02 Z
B22F9/00 A
B22F9/20 Z
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-535210(P2014-535210)
(86)(22)【出願日】2012年10月11日
(65)【公表番号】特表2014-532120(P2014-532120A)
(43)【公表日】2014年12月4日
(86)【国際出願番号】IB2012055511
(87)【国際公開番号】WO2013054282
(87)【国際公開日】20130418
【審査請求日】2015年7月13日
(31)【優先権主張番号】2011/07455
(32)【優先日】2011年10月11日
(33)【優先権主張国】ZA
(73)【特許権者】
【識別番号】512234094
【氏名又は名称】ザ サウス アフリカン ニュークリア エナジー コーポレイション リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(72)【発明者】
【氏名】ネル, ヨハネス, テオドルス
(72)【発明者】
【氏名】レティフ, ウィレム, リーベンベルグ
(72)【発明者】
【氏名】ハヴェンガ, ヨハン ルイス
(72)【発明者】
【氏名】デュプレシス, ウィレルミナ
(72)【発明者】
【氏名】ル ルー, ヨハネス, ペトルス
【審査官】
田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/030301(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 34/14
B22F 9/00
B22F 9/20
C22B 5/04
C22B 5/12
C22B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニウム含有原料を処理するための方法であって、
解離ジルコン(「DZ」)を含む原料をフッ素化させて、ジルコニウムフッ素化合物及びケイ素フッ素化合物を得るステップと、
前記ジルコニウムフッ素化合物を前記ケイ素フッ素化合物から分離するステップと、
前記ジルコニウムフッ素化合物を、非フッ素ハロゲン、アルカリ金属非フッ素ハロゲン化物又はアルカリ土類金属非フッ素ハロゲン化物と反応させ、それによってジルコニウム非フッ素ハロゲン化物を得るステップと、
前記ジルコニウム非フッ素ハロゲン化物を、プラズマ還元段階において還元剤の存在下で、前記ジルコニウム非フッ素ハロゲン化物を含む原料をプラズマ反応器の尾炎に導入することにより、プラズマ還元に供して、金属ジルコニウムを粉末形態で得るステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記原料が、ZrO2.SiO2を主に含むプラズマ解離ジルコン(「PDZ」)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記原料のフッ素化が、前記PDZを、式NH4F.xHF(式中、1<x≦5)を有する酸性フッ化アンモニウムと反応させるステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記原料のフッ素化が、反応(1)
ZrO2.SiO2 + 8NH4F.HF → (NH4)3ZrF7 + (NH4)2SiF6 + 3NH4F + 4H2O ............... (1)
に従って前記PDZを重フッ化アンモニウム、NH4F.HFと反応させるステップを含み、
したがって、(NH4)3ZrF7、(NH4)2SiF6、3NH4F、及び4H2Oが、反応生成物混合物を構成している、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ジルコニウムフッ素化合物((NH4)3ZrF7)の、前記ケイ素フッ素化合物((NH4)2SiF6)からの分離が、
前記反応生成物混合物を十分に高温に加熱して、(NH4)2SiF6、NH4F及びH2Oが気体状生成物成分として追い出され及び(NH4)3ZrF7が固体成分として残存するようにし、
前記固体成分をさらに加熱して、(NH4)3ZrF7が反応(2)
(NH4)3ZrF7 → ZrF4 + 3NH4F ......... (2)
に従って分解するようにし、
ZrF4をNH4Fから分離する、ことによって実施される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ジルコニウムフッ素化合物(ZrF4)が高温段階でアルカリ土類金属非フッ素ハロゲン化物と反応させられ、前記アルカリ土類金属非フッ素ハロゲン化物がMgCl2であり、前記反応が反応(4)
ZrF4 + 2MgCl2 → ZrCl4 + 2MgF2 ... (4)
に従って進む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記PDZが重フッ化アンモニウムと反応してHfF4も生成することができるように、前記PDZ原料が、若干のハフニウム、Hfも含有している、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記還元剤が、Mg、Ca、及びZnからなる群から選択される金属である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記還元剤が、H2及びNH3からなる群から選択される還元ガスである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記プラズマ反応器が、前記プラズマ還元を実施するための無移送アークプラズマを供給する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記プラズマ還元段階において、粉末金属形態のジルコニウムと還元剤ハロゲン化物とを含む生成物成分が生成され、前記生成物成分が高温分離段階で処理されて、前記還元剤ハロゲン化物がオフプロダクトとして及び前記ジルコニウムが有用な最終生成物として精製金属スポンジの形態で生成される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記プラズマ還元が、連続的に実施される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、化学原料の処理に関する。本発明は特に、ジルコニウム含有原料を処理するための方法に関する。
【0002】
本発明によれば、ジルコニウム含有原料を処理するための方法であって、
解離ジルコン(「DZ」)を含む原料をフッ素化させて、ジルコニウムフッ素化合物及びケイ素フッ素化合物を得るステップと、
ジルコニウムフッ素化合物をケイ素フッ素化合物と分離するステップと、
場合により、ジルコニウムフッ素化合物を、非フッ素ハロゲン、アルカリ金属非フッ素ハロゲン化物、又はアルカリ土類金属非フッ素ハロゲン化物と反応させ、それによってジルコニウム非フッ素ハロゲン化物を得るステップと、
ジルコニウムフッ素化合物を、又は存在する場合にはジルコニウム非フッ素ハロゲン化物を、プラズマ還元段階において還元剤の存在下でプラズマ還元に供して、金属ジルコニウムを得るステップと
を含む、方法が提供される。
【0003】
原料は、最初にプラズマ解離ジルコン(「PDZ」)の形態であってもよい。代わりに、方法が、ジルコンをプラズマ解離に供してPDZを得るステップを含んでもよい。PDZは主にZrO
2.SiO
2を含むか、又は完全にZrO
2.SiO
2であるが、若干のハフニウムを、典型的にはHfO
2.SiO
2の形態で含有してもよい。
【0004】
ジルコニウムフッ素化合物は、非酸素含有化合物、例えばジルコニウムフッ化物でもよく、又は酸素含有化合物、例えばジルコニウムオキシフッ化物でもよく、又はこのような化合物の混合物でもよい。
【0005】
原料のフッ素化は、PDZを、式NH
4F.xHF(式中、1<x≦5)を有する酸性フッ化アンモニウム(ammonium acid fluoride)と反応させるステップを含んでもよい。
【0006】
代わりに、原料のフッ素化は、PDZを重フッ化アンモニウム、NH
4F.HFと反応させるステップを含んでもよい。次いで、この反応は、反応(1)
ZrO
2.SiO
2 + 8NH
4F.HF → (NH
4)
3ZrF
7 + (NH
4)
2SiF
6 + 3NH
4F + 4H
2O .............. (1)
に従ってもよく、したがって、(NH
4)
3ZrF
7、(NH
4)
2SiF
6、3NH
4F、及び4H
2Oは、反応生成物混合物を構成している。
【0007】
PDZがハフニウムを含有している場合、典型的にはHfO
2.SiO
2の形態のHfに関して同様の反応が起こるであろう。
【0008】
ジルコニウムフッ素化合物((NH
4)
3ZrF
7)の、ケイ素フッ素化合物((NH
4)
2SiF
6)からの分離は、反応生成物混合物を十分に高温に加熱して、(NH
4)
2SiF
6、NH
4F、及びH
2Oが気体状生成物成分として追い出され及び(NH
4)
3ZrF
7が固体成分として残存するようにし、その後、固体成分をさらに加熱して、(NH
4)
3ZrF
7が反応(2)
(NH
4)
3ZrF
7 → ZrF
4 + 3NH
4F ........ (2)
に従って分解するようにし、ZrF
4をNH
4Fから分離することによって実施することができる。
【0009】
(NH
4)
2SiF
6が蒸発する温度は約280℃であり、したがって、(NH
4)
2SiF
6を、NH
4F及びH
2Oと一緒に気体状生成物として放出させることが可能になる。次いで、反応(3)
(NH
4)
2SiF
6 → SiF
4 + 2NH
4F ........ (3)
に従って、(NH
4)
2SiF
6を分解して、四フッ化ケイ素(SiF
4)又は他のSi化合物及びフッ化アンモニウム(NH
4F)を生成することができる。
【0010】
生成したフッ化アンモニウム(NH
4F)は、所望により、反応(1)での使用に再利用することができる。
【0011】
(NH
4)
3ZrF
7は、約300℃超で分解する。
【0012】
重フッ化アンモニウムによるPDZの処理は、国際出願PCT/IB2010/053448に従ってもよく、同出願を参照により本明細書に組み込む。
【0013】
酸性フッ化アンモニウムによるPDZの処理は、国際出願PCT/IB2010/054067に従ってもよく、同出願を参照により本明細書に組み込む。
【0014】
PDZがハフニウムを含有している場合、PDZを重フッ化アンモニウム又は酸性フッ化アンモニウムと反応させると、四フッ化ハフニウムなどのハフニウムフッ化物が生成することも理解されよう。
【0015】
次いで、方法は、四フッ化ジルコニウム(ZrF
4)と四フッ化ハフニウム(HfF
4)が共に生成した場合、四フッ化ジルコニウムを四フッ化ハフニウムから分離するステップを含んでもよい。例えば、原子炉級ジルコニウム金属、即ち、典型的にはハフニウム含有量が100ppm未満のハフニウム減損ジルコニウム金属が最終生成物として求められる場合、このような分離が必要である。
【0016】
この分離は、昇華、選択的沈殿及び結晶化、液体/液体抽出、蒸発パートラクション、蒸発蒸留などによって実施することができる。
【0017】
ジルコニウムフッ素化合物を反応させることができる非フッ素ハロゲンは、少なくとも原理的には、フッ素以外のハロゲンのいずれか、即ち、塩素、臭素、又はヨウ素であり得るが、塩素が好ましい。同様に、ジルコニウムフッ素化合物をアルカリ金属非フッ素ハロゲン化物又はアルカリ土類非フッ素ハロゲン化物と反応させる場合、ハロゲン化物のハロゲンは、フッ素以外のハロゲンのいずれか、即ち、塩素、臭素、又はヨウ素であり得るが、塩素が好ましい。例えば、アルカリ土類金属非フッ素ハロゲン化物を使用することができ、その場合、塩化マグネシウム、MgCl
2でもよい。
【0018】
ジルコニウムフッ素化合物(ZrF
4)とアルカリ土類金属非フッ素ハロゲン化物との反応は、行う場合、アークなどの高温段階において実施することができる。アルカリ土類非フッ素ハロゲン化物がMgCl
2である場合、反応は反応(4)
ZrF
4 + 2MgCl
2 → ZrCl
4 + 2MgF
2 ..... (4)
に従って進む。
【0019】
四フッ化ジルコニウム(ZrF
4)を四塩化ジルコニウム(ZrCl
4)に転化させると、粉末金属ジルコニウムを生成させるためのプラズマ還元における反応温度が低下することが分かった。
【0020】
還元剤は、Mg、Ca、及びZnからなる群から選択される金属であり得る。代わりに、還元剤は、H
2及びNH
3からなる群から選択される還元ガスでもよい。
【0021】
したがって、還元プロセスでは、金属ジルコニウムと、当量の還元剤ハロゲン化物、例えば塩化物との混合物が形成される。
【0022】
ジルコニウムフッ素化合物を又は存在する場合にはジルコニウム非フッ素ハロゲン化物をプラズマ還元に供するステップは、プラズマ反応器中で実施することができる。プラズマ反応器は、プラズマ還元を実施するための無移送アークプラズマ(non-transferred arc plasma)を供給することができる。プラズマ反応器は、単一軸方向に載置したトーチを典型的に有する軸流反応器であることが好ましい。プラズマは、アルゴン、窒素及びヘリウムなどの1種のプラズマガス又は複数のプラズマガスの混合物で作製することができる。プラズマ反応器で生成させた金属ジルコニウムは、例えば、反応器から取り出したとき、粉末金属形態であり得る。
【0023】
一次原料は、単一の原料源から、又は複数の原料源から得ることができる。原料を様々な原料源から得る場合、原料を、別々の原料供給ラインに沿って個別に、又は1つの原料供給ラインに沿って原料混合物として反応器中に導入することができる。
【0024】
二次原料、即ち、ジルコニウムフッ素化合物又はジルコニウム非フッ素ハロゲン化物は、プラズマ炎の上方に、直接プラズマ炎に、又はプラズマ炎の下方に向かってプラズマ反応器中に導入することができる。したがって、プラズマは、とりわけ、二次原料を、還元が起こり得る温度に加熱するのに使用される。
【0025】
プラズマ還元は好ましくは、連続的に実施する。しかし、プラズマ還元がバッチ式で実施できることも考えられる。好ましくは、本発明の方法は連続法である。
【0026】
したがって、プラズマ還元段階への原料、即ち、二次原料は、四フッ化ジルコニウム(ZrF
4)又は四塩化ジルコニウム(ZrCl
4)を含む。さらに、原料は、若干の四フッ化ハフニウム(HfF
4)又は四塩化ハフニウム(HfCl
4)を含んでもよい。これが典型的に当てはまるのは、例えば、(i)二次原料が、一次の原生鉱物原料に関連する不純物としてハフニウム(Hf)を含有する四フッ化ジルコニウム(ZrF
4)若しくは四塩化ジルコニウム(ZrCl
4)を含む場合、又は(ii)二次原料が、ハフニウム含有量が低減された四塩化ジルコニウムを含む場合であり得る。
【0027】
二次原料が四フッ化ジルコニウムを含み、還元剤がマグネシウムである場合、プラズマ還元反応は反応(5)
ZrF
4 + 2Mg → Zr + 2MgF
2 ......... (5)
に従う。
【0028】
二次原料が四塩化ジルコニウムを含み、還元剤がマグネシウムである場合、プラズマ還元反応は反応(6)
ZrCl
4 + 2Mg → Zr + 2MgCl
2 ....... (6)
に従う。
【0029】
二次原料が四フッ化ハフニウムを含み、還元剤がマグネシウムである場合、プラズマ還元反応は反応(7)
HfF
4 + 2Mg → Hf + 2MgF
2 ......... (7)
に従う。
【0030】
二次原料が四塩化ハフニウムを含み、還元剤がマグネシウムである場合、プラズマ還元反応は反応(8)
HfCl
4 + 2Mg → Hf + 2MgCl
2 ....... (8)
に従う。
【0031】
還元剤がH
2である場合、プラズマ還元反応は反応(9)
ZrCl
4 + 2H
2 → Zr + 4HCl ......... (9)
に従う。
【0032】
還元剤、即ち、例えば、Mg、Ca、Zn、H
2、又はNH
3は、典型的には化学量論量で使用するが、化学量論量より多い又は少ない量で使用することもできる。
【0033】
プラズマ還元段階において、粉末金属形態のジルコニウムと還元剤ハロゲン化物とを含む生成物成分が生成される。次いで、生成物成分を高温分離段階で処理して、還元剤ハロゲン化物をオフプロダクト(off-product)として、及び、ジルコニウムを、有用な最終生成物として精製金属スポンジの形態で生成することができる。
【0034】
本発明の方法の一利点は、PDZを四フッ化ジルコニウムに転化させるのに重フッ化アンモニウム又は酸性フッ化アンモニウムを使用した場合、方法が「乾式」であること、即ち、無水四フッ化ジルコニウムが得られることである。乾式処理は、湿式処理よりも生じる廃棄物が通常少ない。
【0035】
本発明の別の利点は、還元剤ハロゲン化物、例えばMgF
2又はMgCl
2の全て又は少なくとも一部が、同ステップにおいてプラズマ反応器中で既に蒸発しており、それによって、後続の精製及び分離プロセスが除外又は低減されることである。
【0036】
次に、本発明を添付のブロック図を参照してより詳細に説明する。このブロック図は、ジルコニウム及びハフニウム含有原料を処理するための、本発明による方法を説明するものである。
【0037】
図面において、参照番号10は一般に、ジルコニウム及びハフニウム含有原料を処理するための、本発明による方法を示す。
【0038】
方法10はプラズマ解離段階12を含み、ジルコン供給ライン14は段階12に繋がっている。
【0039】
PDZ移送ラインは、段階12から反応段階18に繋がっている。重フッ化アンモニウム供給ライン20は段階18に繋がっており、排ガス取出ライン22は段階18から出ている。
【0040】
四フッ化ジルコニウム(ZrF
4)及び四フッ化ハフニウム(HfF
4)の取出ライン24は、段階18からZrF
4/HfF
4分離段階26に繋がっている。HfF
4生成物取出ライン28は、段階26から出ている。
【0041】
ZrF
4ライン30は、段階26から転化段階32に繋がっている。任意選択のZrF
4生成物取出ライン34は、ライン30から出ている。
【0042】
塩化マグネシウム(MgCl
2)供給ライン36は段階32に繋がっており、フッ化マグネシウム(MgF
2)取出ライン38は段階32から出ている。
【0043】
四塩化ジルコニウム(ZrCl
4)取出ライン40は、段階32から出ている。
【0044】
ライン40は、連続プラズマ還元反応器を含むプラズマ還元段階42に繋がっている。マグネシウム(Mg)添加ライン44は、段階42に繋がっている。
【0045】
プラズマ還元反応器では、反応物が2個の直径方向に対向した供給オリフィスを通ってプラズマ尾炎に導入される場合、単一又は複数の無移送アークプラズマトーチを水冷式インジェクタブロックに載置する。インジェクタブロックは、水冷式反応器の軸線上に載置されており、水冷式反応器の下部は、生成物(金属ジルコニウム)を収集する生成物捕集ポットとして機能する。
【0046】
プラズマ反応器は典型的には、傾斜した排ガス出口を有し、プラズマガス、蒸気、及び混入微粒子を抽出し、熱交換器で冷却し、固体をサイクロン及びフィルタ設備で収集する。反応器は、直線(軸)流幾何構造を有する。
【0047】
生成物取出ライン46は、段階42から高温分離段階48に繋がっている。精製ジルコニウムスポンジ生成物取出ライン50は、段階48から出ており、同様にMg/MgCl
2取出ライン52も段階48から出ている。
【0048】
使用時には、ジルコン(ZrSiO
4)をプラズマ解離段階12に供給する。プラズマ解離によって、ジルコンを反応(10)
ZrSiO
4 → ZrO
2.SiO
2 ............. (10)
に従ってPDZ、即ちZrO
2.SiO
2に転化する。
【0049】
通常、ジルコンはまた、若干のハフニウムをHfSiO
4の形態で含有しており、したがって、HfSiO
4はHfO
2.SiO
2に転化される。このように、プラズマ反応器の段階12で生成されるPDZは、ZrO
2.SiO
2とHfO
2.SiO
2のどちらも含み、これは一般にZr(Hf)O
2.SiO
2として書かれる。PDZは、特にフッ化物化学物質に対する化学反応性が(ジルコンと比較して)はるかに高いため、有利な供給材料である。さらに、ジルコンは、PDZの生成に使用する場合、予備微粉砕を必要としない。
【0050】
段階12で生成したPDZは、ライン16に沿って反応段階18に進み、段階18で上述の反応(6)に従ってZr及びSi種に転化される。PDZはまたHfO
2.SiO
2を含むので、反応(1)のZr種と類似のHf種も形成することが理解されよう。
【0051】
Zr/Hf種とSi種との分離は、反応段階18で形成した生成物を加熱することによって実現される。最初に、Si種((NH
4)
2SiF
6)は約280℃で蒸発し、排ガス生成物としてライン22に沿って、反応(1)に従って形成されるフッ化アンモニウム(NH
4F)及び水と一緒に取り出される。
【0052】
その後、反応(2)に従って、約450℃でジルコニウム種を分解して、無水ZrF
4を生成させる(ハフニウム種では、同様の反応を行って、無水HfF
4を得る)。
【0053】
ZrF
4/HfF
4生成物を段階18からライン24に沿って取り出し、分離段階26に移動させる。
【0054】
段階18からライン22に沿って取り出した排ガスをさらに処理することができ、例えば、(NH
4)
2SiF
6を分解して、SiF
4及びフッ化アンモニウムNH
4Fを生成させることができ、これを段階18に再利用することができる。SiF
4は、電子産業で使用するための、単独で販売に適した生成物である。代わりに、SiF
4を、反応(11)
SiF
4 + 2H
2O → SiO
2 + 4HF ........ (11)
に従ってヒュームドSiO
2(焼成シリカ)を生成させるのに使用することができる。
【0055】
反応(11)に従って生成させたHFを回収し、再利用することができる。
【0056】
所望により、段階26を省略することができ、その省略は、例えば、粉末金属形態のジルコニウム及びハフニウムを含む混合生成物の場合に許容されることが理解されよう。しかし、原子炉級ジルコニウム金属が最終生成物として必要な場合、段階26は存在しなければならい。ZrF
4とHfF
4との分離は、昇華、選択的沈殿及び結晶化、液体/液体抽出法、パートラクション、又は蒸発蒸留などのプロセスによって実現することができる。
【0057】
HfF
4生成物を段階26からライン28に沿って取り出し、さらに処理して、例えば、プラズマ還元段階42に類似のプラズマ還元段階などを使用することによって、Hf金属を得ることができる。
【0058】
段階26からライン30に沿って取り出したZrF
4のいくらかを、光学産業で使用するための生成物としてライン34に沿って取り出して、例えば、特殊レンズ、レンズ上の薄膜被覆物、光ファイバを製造することができる。しかし、段階26で生成した無水ZrF
4の全てではないが大部分は、転化段階32に移動し、段階32でMgCl
2と反応して、ZrCl
4に転化される。ZrF
4をZrCl
4に転化させる理由は、粉末金属を生成させる後続のプラズマ還元を容易にし、また、後続の段階48で生成させる粉末金属の精製を支援するためである。段階32の反応は反応(4)に従う。
【0059】
ZrCl
4を段階32から取り出し、プラズマ還元段階42に移動させ、段階42で還元剤としてMgを用いて連続還元に供する。必要に応じて、Mgを、Ca若しくはZnなどの別の還元剤、又はH
2及びNH
3などの還元ガスと置き換えることができる。
【0060】
段階42の連続プラズマ還元反応器は、プラズマ還元を実施するための無移送アークプラズマを供給する。プラズマは、アルゴン及び窒素などの1種のプラズマガス又は複数のプラズマガスの混合物で作製する。原料は、典型的には反応器と関連している供給機構によって反応器に導入することができる。原料は、プラズマ炎の上方に、直接プラズマ炎に、又はプラズマ炎の下方に向かってプラズマ反応器中に導入することができる。典型的には、原料はプラズマ反応器の尾炎に導入される。
【0061】
プラズマ反応器中の滞留時間及び温度勾配は、金属ジルコニウムの溶融小滴が形成し、凝固し、微粒子として凍結(固化)するようにする。したがって、金属ジルコニウムは、反応器の比較的冷たい生成物収集箇所で粉末として集まる。
【0062】
段階42では、ジルコニウム粉末がMg/MgCl
2と共に生成され、ライン46に沿って高温分離段階48に供給される。典型的には、高温分離段階48は、真空アーク炉又は電子ビーム融解装置を含む。Mg/MgCl
4を含むオフプロダクトをライン52に沿って取り出し、精製ジルコニウム金属スポンジをライン50に沿って取り出す。
【0063】
本出願人は、ジルコンから精製ジルコニウムスポンジを生成するための既知の化学的方法を承知している。この既知の方法は、ジルコンを微粉砕し、この微粉砕ジルコンを炭素でペレット化し、得られたペレット化生成物を流動床で塩素化に供し、その後、選択的縮合、加水分解、及びチオシアン酸塩を用いる液体/液体抽出に供して、ZrOCl
2を得ることを含む。ZrOCl
2は硫酸及び水酸化アンモニウムを用いる沈澱に供し、生成物をろ過し、炉で乾燥させる。ZrO
2を塩素化流動床で処理してZrCl
4を得、Krollバッチ反応器において還元剤としてマグネシウムを用いてこのZrCl
4を還元に供して、ジルコニウムスポンジのインゴットを得る。次いで、このインゴットを、微粉砕に供し、減圧蒸留分離に供してMg/MgCl
2を除去し、さらに微粉砕に供して、精製ジルコニウムスポンジを得る。
【0064】
この従来の方法に関連した欠点には、従来の方法が、複数回の高温炭素−塩素化と3回の微粉砕操作とを含むいくつもの主要ユニット操作を構成しているという事実が含まれる。ジルコンは、微粉砕してから炭素−塩素化し、次いで、炭素とブリケット化しなければならない。これは湿式プロセスであり、生じる廃棄物が大量になる。著しい廃棄流が生成され、塩素化流動床などの反応器段階の速度が遅い。これはエネルギー集約的であり、回収/再利用が困難な塩化物を大量に生じる。さらに、Kroll還元は、乾式プロセスにもかかわらず、典型的にはバッチプロセスである。
【0065】
対照的に、方法10は、6個のユニット操作しか含まず、乾式プロセスであるので、廃棄物の生成が従来の湿式プロセスの場合より少なくなり、その結果、方法は、廃棄物の生成に関して環境により優しいものとなる。従来の方法の場合のようなZrCl
4のバッチ還元の代わりに、連続プラズマ還元ステップを使用する。少なくとも若干のフッ素有価物(fluorine values)を回収/再利用することができる。方法10の反応器18は速度が速く、したがって、これは制限ステップではない。さらに、回収したジルコニウム金属は既に粉末の形態であるので、生成物を微粉砕する必要がない。さらに、重フッ化アンモニウム及び酸性フッ化アンモニウムは、NF
3又は肥料プラントから廃棄物として入手可能である。本発明の方法は、ハフニウム「フリー」若しくはハフニウム減損の原子炉級ジルコニウム金属(段階26を使用)又は非原子炉級ジルコニウム金属(段階26を省略)を生成する柔軟性を有する。