(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6044011
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】爪矯正具
(51)【国際特許分類】
A61F 5/11 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
A61F5/11
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-172424(P2016-172424)
(22)【出願日】2016年9月5日
【審査請求日】2016年9月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516266950
【氏名又は名称】株式会社メディカルケア
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】清水 政則
【審査官】
古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/072456(WO,A1)
【文献】
特開2007−185203(JP,A)
【文献】
特開2001−37535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有するとともに板状であって爪の表側に貼り付けられる固着部と、
一端が爪の表側に当接可能であって前記固着部に一体に連結する表側板状部、該表側板状部に対向して設けられ一端が爪と皮膚との間に差し込まれる裏側板状部、及び該表側板状部の他端と該裏側板状部の他端とに一体に連結する湾曲部を有する操作部と、を備え、
前記操作部は、前記固着部が爪に貼り付けられるにあたって、前記表側板状部と前記裏側板状部で爪を挟持して皮膚から爪を離間させることが可能であって、該固着部が爪に貼り付けられた後は、該固着部から除去されるものである爪矯正具。
【請求項2】
前記固着部は、爪の先端から根元に向かって延在する縦部と、該縦部に一体に連結するとともに爪の幅方向に沿って延在する横部とを備え、
前記表側板状部は、前記縦部に沿って延在する請求項1に記載の爪矯正具。
【請求項3】
前記横部を複数備える請求項2に記載の爪矯正具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陥入爪や巻き爪といった、爪の変形を矯正するために用いられる爪矯正具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばハイヒールなどの幅の狭い靴を履き続けていると、爪の側縁が足指の皮膚に食い込んで炎症を起こす陥入爪や、通常よりも爪が曲がった状態になる巻き爪といった疾患を引き起こすことがある。
【0003】
このような陥入爪や巻き爪といった、爪の変形を矯正するための爪矯正具としては、例えば特許文献1に示されているようなものが知られている。特許文献1の爪矯正具は、板状体と、この板状体に間隔を隔てて設けられる挟持部とを備え、板状体と挟持部で爪を挟持した状態で維持することによって、湾曲した爪を平坦な状態に矯正しようとするものである。
【0004】
また特許文献2には、弾性を有する小片を爪の表側に貼り付け、その弾性力でもって爪を矯正しようとする爪矯正具が開示されている。なお特許文献2の爪矯正具は、概略、特許文献1の挟持部を省略した形態をなしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−185203号公報
【特許文献2】特開2001−37535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで特許文献1の爪矯正具は、爪と爪の裏側の皮膚との間に挟持部が常時差し込まれた状態になるものである。このため、挟持部が皮膚に当たることによって違和感を伴ったり、痛みを感じたりすることがある。これに対し、特許文献2の爪矯正具は挟持部を持たないため、このような違和感や痛みが生じることはない。しかし、爪が湾曲したままの状態で貼り付けても矯正効果は薄いため、別の器具を用いて爪を皮膚から離間させて爪を平坦な状態に近づけたうえで、爪矯正具を貼り付ける必要がある。すなわち、施術には別の器具が必要になるうえ、この器具と爪矯正具を途中で持ち替えなければならないために施術が行い難いという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決することを課題とするものであり、従来の挟持部の如き爪と皮膚との間に常時差し込まれる部位がなく、また、施術も行いやすいうえ高い矯正効果を発揮することができる新たな爪矯正具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、弾性を有するとともに板状であって爪の表側に貼り付けられる固着部と、
一端が爪の表側に当接可能であって前記固着部に一体に連結する表側板状部、該表側板状部に対向して設けられ一端が爪と皮膚との間に差し込まれる裏側板状部、及び該表側板状部の他端と該裏側板状部の他端とに一体に連結する湾曲部を有する操作部と、を備え、
前記操作部は、前記固着部が爪に貼り付けられるにあたって、前記表側板状部と前記裏側板状部で爪を挟持して皮膚から爪を離間させることが可能であって、該固着部が爪に貼り付けられた後は、該固着部から除去されるものである爪矯正具である。
【0009】
前記固着部は、爪の先端から根元に向かって延在する縦部と、該縦部に一体に連結するとともに爪の幅方向に沿って延在する横部とを備え、
前記表側板状部は、前記縦部に沿って延在することが好ましい。
【0010】
そして前記横部を複数備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の爪矯正具は、爪の表側に貼り付けられる固着部に、表側板状部、裏側板状部、及び弾性部を有するピンセットの如き操作部が一体に連結していて、この操作部で爪を挟持することによって皮膚から爪を離間させた状態にして、固着部を爪に貼り付けることができる。このため、爪を平坦な状態にしておくための別の器具は不要であり、また途中で別の器具に持ち替える必要がないため施術も行いやすく、更には爪を平坦な状態にして固着部を貼り付けることができるので高い矯正効果を得ることができる。また操作部は、施術後は固着部から除去されるものであるため、従来の爪矯正具で生じていた違和感や痛みを伴うことがない。
【0012】
固着部に、爪の先端から根元に向かって延在する縦部と、この縦部に一体に連結するとともに爪の幅方向に沿って延在する横部とを設ける場合は、操作部で爪を挟持することができる状態にして縦部を爪に貼り付け、その後、操作部で爪を挟持して皮膚から離間させ、しかる後に横部を爪に貼り付けるという順で施術を行うことができる。すなわち、施術の仕方が分かりやすく、また高い矯正効果を発揮することができる状態で施術を確実に行うことができる。更に、表側板状部が縦部に沿って延在する場合は、操作部が爪に正対した状態になり、施術者は自然な姿勢で処置することができるため、施術が行いやすくなる。
【0013】
更に、前述の横部を複数設ける場合は、爪を平坦な状態に維持できる部位が増えることから、より高い矯正効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に従う爪矯正具の第一実施形態を示す図であって、(a)は平面図であり、(b)は側面図であり、(c)は変形例を示した側面図である。
【
図2】
図1に示す爪矯正具用いて爪を矯正する手順を説明する図であって、(a)は患者の足の親指を示す平面図と正面図であり、(b)は爪矯正具の縦部と横部をカットする状況を示す平面図であり、(c)は爪に縦部を貼り付けた状態を示す平面図と正面図であり、(d)は爪を親指から離間させて横部を貼り付けた状態を示す平面図と正面図であり、(e)は操作部を除去した状態を示す平面図と正面図である。
【
図3】本発明に従う爪矯正具の第二実施形態を示す図であって、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【
図4】本発明に従う爪矯正具の第三実施形態を示す図であって、(a)は、施術者から見て爪の左側を特に矯正する場合の平面図であり、(b)は(a)の側面図であり、(c)は施術者から見て爪の右側を特に矯正する場合の平面図であり、(d)は(c)の側面図である。
【
図5】本発明に従う爪矯正具の第四実施形態を示す図であって、(a)は平面図であり、(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明に従う爪矯正具の一実施形態について説明する。ここで、
図1(a)、(b)における符号1Aは、本発明に従う爪矯正具の一実施形態を示す。爪矯正具1Aは、概略、固着部2と操作部3とで構成されている。また
図2(a)は、爪矯正具1Aによって矯正される患者の足の親指を示す図であって、符号10は親指を示し、符号11は親指の爪を示す。
【0016】
固着部2は、弾性を有する材料を用いて板状に形成され、矯正を行う爪の表側に貼り付けられるものである。このような材料としては、例えばABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂)やPMMA樹脂(アクリル樹脂)などの如き合成樹脂を挙げることができる。なお、材料として合成樹脂を用いる場合は、施術中の状況を確認しやすくすること、また施術後は爪に貼り付けられた状態になるために見映えを考慮すべきであることから、無色透明のものを用いることが好ましい。また板厚は、合成樹脂であれば例えば0.5mm〜1.5mm程度のものが使用される。なお本実施形態では、板状になる無色透明のABS樹脂を使用していて、その板厚は0.8mm〜0.9mmである。
【0017】
本実施形態の固着部2は、
図1(a)、
図2(b)に示すように、爪11の先端(親指10の指先側)から根元(親指10の付け根側)に向かって延在する縦長矩形状の縦部2aと、縦部2aに一体に連結するとともに爪11の幅方向に沿って延在する横長矩形状の横部2bとを備えている。本実施形態の固着部2は、施術者から見て爪11の左側(患者にとって爪11の右側)を特に矯正するものであって、施術者から見て横部2bは、縦部2aから右側に向かって延在している。なお、施術者から見て爪11の右側を特に矯正する場合には、横部2bが縦部2aから左側に向かって延在するようにすればよい。また本実施形態では、2つの横部2bを間隔をあけて設けている。また縦部2aは、横部2bよりも幅が大きくなるようにしている。
【0018】
操作部3は、一端3a1と他端3a2とを有し、一端3a1が固着部2の縦部2aに一体に連結する縦長矩形状の表側板状部3aと、一端3b1と他端3b2とを有し、表側板状部3aに対向して設けられる縦長矩形状の裏側板状部3bと、表側板状部3aの他端3a2と裏側板状部3bの他端3b2とに一体に連結する湾曲部3cとを有している。なお、爪矯正具1Aを爪11に貼り付けるにあたり、表側板状部3aの一端3a1は爪11の表側に当接するものであり、裏側板状部3bの一端3b1は爪11と親指10との間に差し込まれるものである。また湾曲部3cは、例えば
図1(b)に示すように概略コ字状に形成されるものでもよいし、
図1(c)に示すように円弧状に形成されるものでもよい。なお操作部3は、固着部2と同じ材料、同じ板厚で形成されている。
【0019】
次に、
図2を参照しながら爪矯正具1Aを用いて患者の爪11を矯正する方法について説明する。まず操作部3を、表側板状部3aの一端3a1と裏側板状部3bの一端3b1で爪11を挟持できる位置にセットし、
図2(b)に示すように、爪11の大きさに合わせて縦部2aと横部2bをカットする。なお2つの横部2bのうち、爪11の根元に近いものは、爪11の先端だけでなく根元に近い部分も矯正するために設けている。このため、爪11の先端だけの矯正ですむ場合は、根元側の横部2bを全てカットしてもよい。
【0020】
次に、縦部2aの裏側に(爪11の表側でもよい)接着剤を塗布して、縦部2aを爪11の表側に貼り付ける(
図2(c)参照)。接着剤としては、1液タイプや2液タイプなど種々のものを用いることができる。また接着剤に含まれる成分としては、例えばシアノアクリル酸エチルとポリメタクリル酸メチルが挙げられる。
【0021】
その後、表側板状部3aの一端3a1と裏側板状部3bの一端3b1で爪11を挟持し、操作部3をひねるようにして爪11を親指10から離間させる(
図2(c)の正面図を参照)。ここで、爪11を親指10から離間させる前、或いはその後において、横部2bの裏側(爪11の表側でもよい)には接着剤を塗布する。そして、平坦な状態に近づいた爪11に対して横部2bを貼り付ける(
図2(d)参照)。
【0022】
しかる後は、縦部2aから表側板状部3aをカットして、操作部3を固着部2から除去する(
図2(e)参照)。そして、貼り付けた縦部2aや横部2bの端縁を削って引っかかりが無いように整え、必要に応じて爪11の表面にジェルを塗布する等の仕上げを行って施術が完了する。
【0023】
このように本実施形態の爪矯正具1Aでは、爪11は操作部3で平坦な状態に近づけられ、そこに横部2bが貼り付けられるため、高い矯正効果を得ることができる。なお操作部3で親指10から離間させた側の爪11(施術者から見て左側)は、特に高い効果で矯正されるが、横部2bは弾性を有するため、横部2bを反対側(施術者から見て右側)まで延在させた状態にすることで、右側の爪11も矯正することができる。
【0024】
なお、本発明に従う爪矯正具はこれまでに述べた実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に従う限りにおいて種々の変更を加えたものも含まれる。
【0025】
例えば
図3(a)、(b)に示す爪矯正具1Bは、前述の爪矯正具1Aに対して、施術者から見て左側に延在する横部2bを追加したものである。このような爪矯正具1Bによれば、不要な側の横部2bをカットすることで、爪11の左右を問わずに使用することができる。
【0026】
また、
図4(a)〜(d)に示す爪矯正具1Cは、操作部3が初期の段階で平坦な状態になっていて、施術前に湾曲させるものである。具体的には、施術者から見て爪11の左側を矯正する場合は、平面視で
図4(a)になる向きにするとともに、操作部3を
図4(b)に破線で示すように湾曲させて使用する。一方、施術者から見て爪11の右側を矯正する場合は、
図4(c)のように爪矯正具1Cを裏返しにして、操作部3を
図4(d)に破線で示すように湾曲させて使用する。このような形態であれば、爪11の左右何れでも優先的に矯正することができる。
【0027】
また、施術の行いやすさを考慮すると、操作部3が爪11に正対した状態になる爪矯正具1A〜1Cが好ましいものの、
図5(a)、(b)に示す爪矯正具1Dのように、表側板状部3aが横向きに延在して操作部3が爪11の側方に位置するものであってもよい。
【符号の説明】
【0028】
1A〜1D:爪矯正具
2:固着部
2a:縦部
2b:横部
3:操作部
3a:表側板状部
3a1:表側板状部の一端
3a2:表側板状部の他端
3b:裏側板状部
3b1:裏側板状部の一端
3b2:裏側板状部の他端
3c:湾曲部
10:親指
11:爪
【要約】
【課題】爪と皮膚との間に常時差し込まれる部位がなく、また、施術も行いやすいうえ高い矯正効果を発揮することができる爪矯正具を提案する。
【解決手段】本発明の爪矯正具1Aは、弾性を有するとともに板状であって爪11の表側に貼り付けられる固着部2と、一端3a1が爪11の表側に当接可能であって固着部2に一体に連結する表側板状部3a、表側板状部3aに対向して設けられ一端3b1が爪11と皮膚との間に差し込まれる裏側板状部3b、及び表側板状部3aの他端3a2と裏側板状部3bの他端3b2とに一体に連結する湾曲部3cを有する操作部3と、を備え、操作部3は、固着部2が爪11に貼り付けられるにあたって、表側板状部3aと裏側板状部3bで爪11を挟持して皮膚から爪11を離間させることが可能であって、固着部2が爪11に貼り付けられた後は、固着部2から除去されるものである。
【選択図】
図1