(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6044019
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】海水から氷を製造する方法
(51)【国際特許分類】
F25C 1/00 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
F25C1/00 B
F25C1/00 Z
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-206076(P2015-206076)
(22)【出願日】2015年10月20日
【審査請求日】2016年2月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516040800
【氏名又は名称】ノト冷研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088133
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 正道
(72)【発明者】
【氏名】四家 八則
(72)【発明者】
【氏名】鍛治谷 浩二
(72)【発明者】
【氏名】西本 茂世視
【審査官】
庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−309629(JP,A)
【文献】
特開2012−163312(JP,A)
【文献】
特開2008−057927(JP,A)
【文献】
特開2006−275441(JP,A)
【文献】
特開平11−179349(JP,A)
【文献】
特開2007−040548(JP,A)
【文献】
特開2003−042611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取水した海水を貯蔵タンクに貯蔵する工程と、前記貯蔵タンク内に窒素ガスを注入して酸素を放出する工程と、前記貯蔵した海水を殺菌する工程と、殺菌した海水を冷却タンクに移し、冷却装置との間を循環させて冷却する工程と、−2℃以下に過冷却した海水と発生した氷を氷分離タンクへ送り、発生した氷を分離して当該氷分離タンク外へ搬出する工程と、氷と分離された過冷却海水は戻し管で冷却タンクへ戻す工程とを順次行うことを特徴とする海水から氷を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は海水から氷を製造する方法に関すものであり、特に含む酸素量を減少させた氷とすると共に、氷のみを容易に得る製造する方法に関すものである。
【背景技術】
【0002】
海水を利用して氷を製造することは知られている。
例えば、特許第4124632号公報には、槽に供給された海水を循環させつつ冷却し、海水の一部を凍結させて海水氷を製造し、槽内の冷却された海水を排水すると共に、対応して海水を汲み上げ、海水の塩分濃度を維持しながら海水氷を製造することが開示されている。
【0003】
また、特開2013−76553号公報では、原水の塩分濃度の範囲および温度の範囲に条件があることに鑑みて、原水の塩分濃度および温度などの原水の要素を加味して制御し、短時間で良好なシャーベット氷を得る方法が開示されている。
【0004】
一方、含有する酸素の量に関して、特開2007−278667号公報には、運搬される活魚の冬眠時の呼吸量に応じた量の酸素気泡を含有し、シャーベット状に製氷された後に海水と撹拌混合されてスラリー状の海水氷が開示され、又、特開2007−155172号公報には、水中(真水)に窒素ガスを溶解させて、酸素溶存量を減少させた水を凍らせてなる窒素ガス封入氷で魚艙の水面を覆い、窒素ガス封入氷が融けることにより魚艙内の水の溶存酸素量を減少させて魚の鮮度を維持することが開示されている
【0005】
さらに、実用新案登録第3193441号公報では、魚艙内の水(通常は海水)を水循環手段により魚艙と窒素水変換装置の間で循環させて窒素水変換装置に通すことにより、水中に窒素ガスを溶け込ませるとともに、溶存酸素を追い出して溶存酸素量を低下させること、または、魚艙の内部に設置した窒素ガス注入管を通して窒素ガスを噴射することにより魚艙内の水に窒素ガスを溶け込ませるとともに、溶存酸素を追い出して溶存酸素量を低下させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4124632号公報
【特許文献2】特開2013−76553号公報
【特許文献3】特開2007− 278667号公報
【特許文献4】特開2007−155172号公報
【特許文献5】実用新案登録第3193441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、海水の塩分濃度を維持しながら海水氷を製造すること、海水の塩分濃度および温度などの要素を加味して制御し、短時間で良好なシャーベット氷を得る方法や、運搬される活魚の冬眠時の呼吸量に応じた量の酸素気泡を含有するシャーベット状の氷と海水を撹拌混合したスラリー状の海水氷、或いは、真水に窒素ガスを溶解させて、酸素溶存量を減少させた水を凍らせた窒素ガス封入氷や、魚艙内の水に窒素ガスを溶け込ませるとともに、溶存酸素を追い出して溶存酸素量を低下させること等が開示されている。
【0008】
このように従来は、海水を利用してそのまま海水で氷を製造するもの、また、海水中に含有する酸素量に着目した発明も存在する。
しかし、本発明では、酸素量を軽減した海水からの氷によって、従来にも増して魚の保冷等、多様に利用できるようにする目的に鑑みて、容易に且つ確実に海水から氷を製造する方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る海水から氷を製造する方法の発明は、取水した海水を貯蔵タンクに貯蔵する工程と、前記貯蔵タンク内に窒素ガスを注入して酸素を放出する工程と、前記貯蔵した海水を殺菌する工程と、殺菌した海水を冷却タンクに移し、冷却装置との間を循環させて冷却する工程と、
−2℃以下に過冷却した海水と発生した氷を氷分離タンクへ送り、発生した氷を分離して当該氷分離タンク外へ搬出する工程と、氷と分離された過冷却海水は戻し管で冷却タンクへ戻す工程とを順次行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の海水から氷を製造する方法の発明は、前記貯蔵タンク内に取水した海水に窒素ガスを注入して酸素を放出する工程を有するため、得られた氷には酸素が含まれず、腐食菌の繁殖を抑制し、酸化による老化を防止し、鮮度保持を伸長させる効果を発揮する。
【0012】
また、貯蔵した海水を殺菌する工程により、衛生面での安全性が確保され、氷が溶けても窒素ガスが発生するのみであるから、大気の環境負荷を与えず且つ安全性も極めて高い効果を有する。
【0013】
海水を冷却タンクに移し、冷却装置との間を循環させて冷却する工程と、過冷却した海水を氷分離タンクへ送り、今度は、海水を前記冷却タンクと冷却装置及び氷分離タンクとの間を循環させる工程を有することにより、過冷却して海水中の真水が凍り始める海水を氷分離タンクへ送るため、氷と海水を容易に分離することができる効果があり、過冷却した海水を冷却タンクへ戻すことによって冷却タンク内の海水を冷却できる効果をも有するのである。
【0014】
したがって、冷却タンクと氷分離タンクに分けたため、其々のタンクの目的に応じた特化した構成で良いこと、冷却タンクで一定量の海水を冷却した後、氷が発生する状態の過冷却海水のみを氷分離タンクで、簡易迅速に氷と海水に分離できること、氷分離タンクから分離した過冷却海水を冷却タンクへ戻すため、冷却タンク内の海水の冷却も持続できること等の効果を発揮するものである。
【0015】
また、海水内には海水60%に対して真水が40%の割合で混入しており、過冷却しても海水は凍らないため、凍った真水の混ざり合った状態を、一般にシャーベット氷と称している。
そこで、−2℃前後で海水中の真水が氷り始めことに鑑み、シャーベット氷状態となるところで氷分離タンクへ移し、氷のみを蓄積し、過冷却された海水は冷却タンクへ戻すことで、効率良く海水から氷を得られる効果を得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】取水した海水を貯蔵タンクに貯蔵する工程と、貯蔵した海水を殺菌すると共に、前記貯蔵タンク内に窒素ガスを注入して酸素を放出する工程とを示す構成図である。
【
図2】冷却タンクと冷却装置との間を循環させて冷却する工程と、過冷却した海水を氷分離タンクへ送り、海水を前記冷却タンクと冷却装置及び氷分離タンクとの間を循環させると共に、氷分離タンク内の発生した氷を当該氷分離タンク外へ搬出する工程とを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面は本発明の一実施の形態を示す図面であり、
図1は、取水した海水を貯蔵タンクに貯蔵する工程と、貯蔵した海水を殺菌すると共に、前記貯蔵タンク内に窒素ガスを注入して酸素を放出する工程とを示す構成図である。
図1では、貯蔵タンク1から殺菌室2を通り貯蔵タンク1へ戻る循環路を、連結管と循環ポンプ6Bを介在させて形成すると共に、窒素ガス発生装置3で生成した窒素ガスを貯蔵タンク2内の海水に圧入し、追い出した酸素を放出する構成が示されている。
【0018】
貯蔵タンク1には、必要量の海水を取水する給水ポンプ6Aが付設され、給水ポンプ6Aは貯蔵量調整センサー11により貯蔵する海水の量を制御して調整される。
また、殺菌室2内には殺菌灯21を装置して通過する海水の殺菌を行っている。
よって、取水した一定量の海水を貯蔵タンク1に貯蔵し、循環ポンプ6Bにより貯蔵した海水を循環させて殺菌する作用を奏している。
【0019】
一方、貯蔵タンク1内に貯蔵した海水中に、窒素ガス発生装置3で生成した窒素ガスを圧入する噴出具31が設置してあり、圧入した窒素ガスにより海水中に溶けている酸素が追い出され、更に貯蔵タンク1の上部空間にも窒素ガスが充満してタンク内の酸素を放出用チャッキ弁12よりタンク外へ放出する作用を為している。
窒素ガスを高圧で水中に噴射する噴出具31には多数の噴出孔が形成され、窒素ガスは水に溶け込むと同時に溶存酸素を追い出し、貯蔵タンク1内の水の溶存酸素量を低下させ溶存窒素量を高めて窒素水に変換するものである。
【0020】
図2は、冷却タンクと冷却装置との間を循環させて冷却する工程と、過冷却した海水を氷分離タンクへ送り、海水を前記冷却タンクと冷却装置及び氷分離タンクとの間を循環させると共に、氷分離タンク内の発生した氷を当該氷分離タンク外へ搬出する工程とを示す構成図である。
【0021】
前記殺菌すると共に窒素を含有した海水は、移送ポンプ6Cにより冷却タンク4へ送られ、
冷却タンク4内に貯留する海水の量は貯蔵量調整センサー41により調整されている。そして、貯留した海水を、冷却タンク4と冷却装置5との間を循環ポンプ6Dで循環させ、海水は冷却されながら冷却タンク4内に戻って貯留されるものである。
【0022】
即ち、海水は循環ポンプ6Dにより冷却タンク4から送水管61を経て、冷却装置5の過冷却槽51へ流入して流動し、この流動中に冷凍機52が供給する冷媒により冷却されて冷却タンク4へ戻る。
冷却タンク4内には撹拌用回転羽根42が装置してあり、海水の冷却温度を均し、さらに、冷却装置5へ循環する送水管61付近の冷却タンク4に設けた温度センサー43で冷却温度を計測している。
【0023】
また、冷却装置5から冷却タンク4へ戻る連結管62と、当該連結管62から分岐して氷分離タンク7へ通じる連結管63が備えられ、各々切換え弁8A,8Bを開閉操作して制御されている。
この分岐の制御は、冷却タンク4に設けた前記温度センサー43で計測した海水温度が、−2℃を目安として切換え弁8A,8Bを切り替えるように設定してある。
【0024】
冷却装置5の過冷却槽51では、槽を過冷却することにより、槽内面に接する海水中の真水が凍って付着し、この槽内面を適当な掻き手段で引っ掻くことで氷が削り取られ、氷は過冷却の海水に浮遊しながら混在することになる。
そして、海水温度が−2℃以下で、槽内面に接した海水中の真水が確実に凍る事実を検証できたため、海水の温度が−2℃となるのを目安として切換え弁8A,8Bを制御して氷分離タンク7へ通じるようにしているのである。
【0025】
氷分離タンク7では、連結管63で移送された過冷却海水と浮遊する氷とを分離し、それぞれを処理する。
図2において、氷分離タンク7は上下のタンク7A、7Bに構成され、中間に濾過素材71を配設し、上方より氷と冷却海水を引き込んで上部タンク7Aに氷を、下部タンク7Bに冷却海水を流下させて分離するものと成っている。
【0026】
氷と分離された過冷却海水は流下して下部タンク7Bに到り、配設した戻し管64で連結している冷却タンク4へ戻されることになる。
したがって、氷とならなかった真水を含む海水は、冷却タンク4と冷却装置5及び氷分離タンク7との間を再び循環して氷を生成することになる。
【0027】
一方、分離して上部タンク7Aに留まり蓄積された氷は、搬送装置である搬送スクリュー72により外部へ取り出し、殺菌された衛生的な窒素氷として成形加工して使用され、或いは冷凍庫に移動し保管される。
【0028】
以上、本発明を実施の形態を図面に基づき具体的に説明したが、上記の実施形態に限定されるものではなく、発明の思想を逸脱することない範囲の他の実施の形態にも適用可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 貯蔵タンク
2 殺菌室
3 窒素ガス発生装置
4 冷却タンク
6A 給水ポンプ
6B,6C 移送ポンプ
6D 循環ポンプ
5 冷却装置
7 氷分離タンク
7A,7B タンク
8A,8B 切換え弁
21 殺菌灯
31 噴出具
41 貯蔵量調整センサー
42 撹拌用回転羽根
43 温度センサー
51 過冷却槽
52 冷凍機
61,62,63 連結管
64 戻し管
71 濾過素材
72 搬送スクリュー
【要約】
【課題】酸素量を軽減した海水からの氷によって、従来にも増して魚の保冷等、多様に利用できるようにする目的に鑑みて、容易に且つ確実に海水から氷を製造する方法を提供する。
【解決手段】取水した海水を貯蔵タンク1に貯蔵する工程と、前記貯蔵タンク1内に窒素ガスを注入して酸素を放出する工程と、前記貯蔵した海水を殺菌する工程と、殺菌した海水を冷却タンク4に移し、冷却装置5との間を循環させて冷却する工程と、過冷却した海水を氷分離タンク7へ送り、今度は、海水を前記冷却タンク4と冷却装置5及び氷分離タンク7との間を循環させると共に、氷分離タンク7内の発生した氷を当該氷分離タンク7外へ搬出する工程とを順次行うことを特徴とする。
【選択図】
図2