(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のセンサー素子および前記第2のセンサー素子は、それぞれ、基部と、前記基部から延出され、駆動振動される振動腕と、前記振動腕に設けられた質量調整用膜とを有する請求項1ないし3のいずれかに記載のセンサーデバイス。
第1の検出軸まわりの角速度を検出する第1のセンサー素子と、前記第1の検出軸と交差する第2の検出軸まわりの角速度を検出する第2のセンサー素子とを備え、前記第1のセンサー素子の駆動周波数をfd1とし、前記第2のセンサー素子の駆動周波数をfd2としたとき、fd1>fd2なる関係を満たすセンサーデバイスの製造方法であって、
前記第1のセンサー素子および前記第2のセンサー素子を用意する工程と、
前記第1のセンサー素子および前記第2のセンサー素子のうちの少なくとも一方のセンサー素子の離調周波数を調整する工程とを有し、
前記離調周波数を調整する工程では、前記第1のセンサー素子の離調周波数をfm1とし、前記第2のセンサー素子の離調周波数をfm2としたとき、fm1<fm2なる関係を満たし、かつ、前記第1のセンサー素子のセンサー出力のノイズ密度と前記第2のセンサー素子のセンサー出力のノイズ密度との差が、0[deg・s−1/√Hz]以上0.0003[deg・s−1/√Hz]以下となるように、前記調整を行うことを特徴とするセンサーデバイスの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、互いに異なる駆動周波数で駆動する複数のセンサー素子間のセンサー出力のノイズレベルの差を低減しつつ、互いに交差する方向の複数の検出軸まわりの角速度を検出することができるセンサーデバイスおよびセンサーデバイスの製造方法を提供すること、また、かかるセンサーデバイスを備える信頼性の高い電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
本発明のセンサーデバイスは、第1の検出軸まわりの角速度を検出する第1のセンサー素子と、
前記第1の検出軸と交差する第2の検出軸まわりの角速度を検出する第2のセンサー素子とを備え、
前記第1のセンサー素子の駆動周波数をfd1とし、前記第2のセンサー素子の駆動周波数をfd2とし、前記第1のセンサー素子の離調周波数をfm1とし、前記第2のセンサー素子の離調周波数をfm2としたとき、
fd1>fd2、かつ、fm1<fm2なる関係を満た
し、
前記第1のセンサー素子のセンサー出力のノイズ密度と前記第2のセンサー素子のセンサー出力のノイズ密度との差は、0[deg・s−1/√Hz]以上0.0003[deg・s−1/√Hz]以下であることを特徴とする。
このように構成されたセンサーデバイスによれば、互いに異なる駆動周波数で駆動する複数のセンサー素子間のセンサー出力のノイズレベルの差を低減しつつ、互いに交差する方向の複数の検出軸まわりの角速度を検出することができる。
【0007】
ここで、本発明のセンサーデバイスでは、前記第1のセンサー素子のセンサー出力のノイズ密度と前記第2のセンサー素子のセンサー出力のノイズ密度との差
が、0[deg・s
−1/√Hz]以上0.0003[deg・s
−1/√Hz]以下であること
により、第1のセンサー素子および第2のセンサー素子のセンサー出力のノイズ密度を実質的に等しくすることができる。
【0008】
[適用例
2]
本発明のセンサーデバイスでは、前記第1のセンサー素子の駆動周波数fd1と前記第2のセンサー素子の駆動周波数fd2との差は、3kHz以上30kHz以下であることが好ましい。
これにより、第1のセンサー素子および第2のセンサー素子間の駆動信号または検出信号のクロストークを効果的に低減することができる。
【0009】
[適用例
3]
本発明のセンサーデバイスでは、前記第1のセンサー素子の検出周波数をfs1とし、前記第2のセンサー素子の検出周波数をfs2としたとき、
fd1<fs1、かつ、fd2<fs2なる関係、または、fd1>fs1、かつ、fd2>fs2なる関係を満たすことが好ましい。
これにより、第1のセンサー素子および第2のセンサー素子の設計を容易なものとすることができる。
【0010】
[適用例
4]
本発明のセンサーデバイスでは、前記第1のセンサー素子および前記第2のセンサー素子は、それぞれ、基部と、前記基部から延出され、駆動振動される振動腕と、前記振動腕に設けられた質量調整用膜とを有することが好ましい。
このように構成された第1のセンサー素子および第2のセンサー素子では、質量調整用膜の少なくとも一部を除去することにより、駆動周波数、検出周波数および離調周波数の調整を容易に行うことができる。
【0011】
[適用例
5]
本発明のセンサーデバイスでは、前記第1のセンサー素子および前記第2のセンサー素子は、それぞれ、前記基部から延出され、検出振動が励振される検出用振動腕を有することが好ましい。
このように構成された第1のセンサー素子および第2のセンサー素子では、駆動周波数および検出周波数を個別に調整することができる。そのため、離調周波数の調整を容易に行うことができる。
【0012】
[適用例
6]
本発明のセンサーデバイスでは、前記第1の検出軸および前記第2の検出軸は、互いに直交することが好ましい。
これにより、簡単な構成で、互い直交する2つの検出軸まわりの角速度を高精度に検出することができる。
【0013】
[適用例
7]
本発明のセンサーデバイスでは、前記第1の検出軸および前記第2の検出軸と交差する第3の検出軸まわりの角速度を検出する第3のセンサー素子を備え、
前記第3のセンサー素子の駆動周波数をfd3とし、前記第3のセンサー素子の離調周波数をfm3としたとき、
fd1>fd2>fd3、かつ、fm1<fm2<fm3なる関係を満たすことが好ましい。
これにより、互いに異なる駆動周波数で駆動する3つのセンサー素子間のセンサー出力のノイズレベルの差を低減しつつ、互いに交差する3つの検出軸まわりの角速度を検出することができる。
【0014】
[適用例
8]
本発明のセンサーデバイスの製造方法は、第1の検出軸まわりの角速度を検出する第1のセンサー素子と、前記第1の検出軸と交差する第2の検出軸まわりの角速度を検出する第2のセンサー素子とを備え、前記第1のセンサー素子の駆動周波数をfd1とし、前記第2のセンサー素子の駆動周波数をfd2としたとき、fd1>fd2なる関係を満たすセンサーデバイスの製造方法であって、
前記第1のセンサー素子および前記第2のセンサー素子を用意する工程と、
前記第1のセンサー素子および前記第2のセンサー素子のうちの少なくとも一方のセンサー素子の離調周波数を調整する工程とを有し、
前記離調周波数を調整する工程では、前記第1のセンサー素子の離調周波数をfm1とし、前記第2のセンサー素子の離調周波数をfm2としたとき、fm1<fm2なる関係を満た
し、かつ、前記第1のセンサー素子のセンサー出力のノイズ密度と前記第2のセンサー素子のセンサー出力のノイズ密度との差が、0[deg・s−1/√Hz]以上0.0003[deg・s−1/√Hz]以下となるように、前記調整を行うことを特徴とする。
このようなセンサーデバイスの製造方法によれば、互いに異なる駆動周波数で駆動する複数のセンサー素子間のセンサー出力のノイズレベルの差を低減しつつ、互いに交差する方向の複数の検出軸まわりの角速度を検出することができるセンサーデバイスを製造することができる。
[適用例
9]
本発明の電子機器は、本発明のセンサーデバイスを備えることを特徴とする。
これにより、信頼性に優れる電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のセンサーデバイス、センサーデバイスの製造方法および電子機器を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るセンサーデバイスの概略構成を示す模式的断面図、
図2は、
図1に示すセンサーデバイスの平面図、
図3は、
図1に示すセンサーデバイスに備えられた支持部材を示す斜視図、
図4は、
図1に示すセンサーデバイスに備えられたセンサー素子の平面図、
図5は、
図1に示すセンサーデバイスの制御系を示すブロック図、
図6は、
図1に示すセンサーデバイスに備えられた複数のセンサー素子の離調周波数とセンサー出力のノイズ密度との関係を示すグラフ、
図7は、
図1に示すセンサーデバイスの製造方法における離調周波数の調整工程を説明するための図である。
【0017】
なお、以下では、説明の便宜上、
図1〜3では、互いに直交する3つの軸として、x軸、y軸およびz軸を図示しており、その図示した矢印の先端側を「+側」、基端側を「−側」とする。また、x軸に平行な方向を「x軸方向」、y軸に平行な方向を「y軸方向」、z軸に平行な方向(上下方向)を「z軸方向」と言い、+z側(
図1中の上側)を「上」、−z側(
図1中の下側)を「下」と言う。また、
図4では、水晶のX軸(電気軸)、Y軸(機械軸)およびZ軸(光学軸)を図示している。
【0018】
(センサーデバイス)
図1に示すセンサーデバイス1は、互いに直交するx軸、y軸およびz軸の3軸(3つの検出軸)まわりの角速度をそれぞれ検出するジャイロセンサーである。
このようなセンサーデバイス1は、例えば、撮像機器の手ぶれ補正や、GPS(Global Positioning System)衛星信号を用いた移動体ナビゲーションシステムにおける車両などの姿勢検出、姿勢制御等に用いることができる。
このセンサーデバイス1は、
図1に示すように、センサーモジュール2と、センサーモジュール2を収納するパッケージ3とを有する。
【0019】
以下、センサーデバイス1を構成する各部を順次説明する。
(センサーモジュール)
図1および
図2に示すように、センサーモジュール2は、支持部材10と、z軸(第1の検出軸)まわりの角速度を検知するセンサーユニット101と、x軸(第2の検出軸)まわりの角速度を検知するセンサーユニット102と、y軸(第3の検出軸)まわりの角速度を検知するセンサーユニット103とを備える。
【0020】
そして、センサーユニット101は、ICチップ20zと、センサー素子30zと、フレキシブル配線基板41とを備える。また、センサーユニット102は、ICチップ20xと、センサー素子30xと、フレキシブル配線基板42とを備える。また、センサーユニット103は、ICチップ20yと、センサー素子30yと、フレキシブル配線基板43とを備える。
【0021】
ここで、センサー素子30z、30x、30y(以下、単に「センサー素子30」ともいう)は、駆動周波数、検出周波数および離調周波数が異なる以外は、互いに同様に構成されている。また、ICチップ20z、20x、20y(以下、単に「ICチップ20」ともいう)は、センサー素子30z、30x、30yの相違に関する構成以外は、互いに同様に構成されている。
このように、センサーモジュール2は、支持部材10と、3つのICチップ20と、3つのセンサー素子30と、3つのフレキシブル配線基板41、42、43とを備える。
【0022】
[支持部材]
支持部材10は、3つのセンサーユニット101、102、103を支持する機能を有する。
この支持部材10は、
図3に示すように、z軸に直交する第1の支持面11と、x軸に直交する第2の支持面12と、y軸に直交する第3の支持面13とを有する。
【0023】
ここで、第1の支持面11と第2の支持面12とのなす角度θ1、第2の支持面12と第3の支持面13とのなす角度θ2、および、第1の支持面11と第3の支持面13とのなす角度θ3が、それぞれ、90度(直角)である。なお、角度θ1〜θ3は、それぞれ、厳密に90度でなくてもよく、センサーモジュール2のセンシング機能に影響を及ぼさない範囲で多少の誤差(0度〜2度程度)は許容される。
【0024】
このような支持部材10の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、構造用鋼、ステンレス鋼、銅、黄銅、燐青銅、洋伯等の金属を好適に用いることができる。
また、支持部材10は、前述したような金属で構成された場合、かかる金属で構成された金属板を折り曲げ加工することにより形成することができる。なお、支持部材10の形状は、
図3に示すものに限定されず、例えば、直方体、多角形柱状、多角錘状等のブロック体で構成されていてもよい。
【0025】
[ICチップ]
図1および
図2に示すICチップ20は、センサー素子30を駆動する機能と、センサー素子30からの信号を検出する機能とを有する。
このICチップ20は、板状をなし、その一方の面が能動面を構成し、他方の面が非能動面を構成する。
【0026】
そして、センサーユニット101のICチップ20の非能動面は、前述した支持部材10の第1の支持面11に絶縁性を有する接着剤(図示せず)により接着されている。同様に、センサーユニット102のICチップ20の非能動面は、支持部材10の第2の支持面12に絶縁性を有する接着剤(図示せず)により接着されている。また、センサーユニット103のICチップ20の非能動面は、支持部材10の第3の支持面13に絶縁性を有する接着剤(図示せず)により接着されている。
【0027】
一方、ICチップ20の能動面には、集積回路が形成されている。
具体的には、
図5に示すように、ICチップ20zは、センサー素子30zを駆動する駆動信号を出力する駆動回路201zと、センサー素子30zからの検出信号を検出する検出回路202zとを備える。
同様に、ICチップ20xは、センサー素子30xを駆動する駆動信号を出力する駆動回路201xと、センサー素子30xからの検出信号を検出する検出回路202xとを備える。
【0028】
また、ICチップ20yは、センサー素子30yを駆動する駆動信号を出力する駆動回路201yと、センサー素子30yからの検出信号を検出する検出回路202yとを備える。
駆動回路201zは、センサー素子30zが駆動周波数fd1で駆動するように、駆動信号を出力する。同様に、駆動回路201xは、センサー素子30xが駆動周波数fd2で駆動するように、駆動信号を出力する。また、駆動回路201yは、センサー素子30yが駆動周波数fd3で駆動するように、駆動信号を出力する。
【0029】
ここで、駆動回路201z、201x、201yから出力される駆動信号は、互いに同じであっても異なっていてもよい。駆動回路201z、201x、201yから出力される駆動信号が互いに同じである場合、3つの駆動周波数のうちの中間の駆動周波数に合わせた駆動信号を用いることにより、センサー素子30z、30x、30yをそれぞれの共振周波数で駆動することができる。また、駆動回路201z、201x、201yから出力される駆動信号が互いに異なる場合、センサー素子30z、30x、30yのそれぞれの共振周波数に合わせた駆動信号を用いることができる。
【0030】
また、検出回路202z、202x、202yは、検出信号を必要に応じて増幅してセンサー出力S1、S2、S3として出力する。例えば、検出回路202z、202x、202yは、センサー出力S1、S2、S3の信号量が互いに等しくなるように検出信号を増幅する。
また、ICチップ20の能動面側には、図示しないが、前述した集積回路に電気的に接続された接続端子および外部接続端子が設けられている。
【0031】
このICチップ20の接続端子は、例えば、ハンダボール、金線、アルミニウム線等を用いてバンプ形状に形成された突起電極である。そして、かかる接続端子は、センサー素子30に電気的および機械的に接続されている。これにより、ICチップ20の集積回路がセンサー素子30に電気的に接続されている。
また、この接続端子は、センサー素子30をICチップ20に対して固定・支持する機能をも有する。ここで、この接続端子は、突起電極であることから、センサー素子30とICチップ20との間に隙間を形成するスペーサとしても機能する。これにより、センサー素子30の駆動振動や検出振動を許容する空間を確保することができる。
【0032】
また、ICチップ20の外部接続端子は、例えば、ハンダボール、金線、アルミニウム線等などを用いてバンプ形状に形成された突起電極である。そして、かかる外部接続端子は、センサーユニット101ではフレキシブル配線基板41、センサーユニット102ではフレキシブル配線基板42、センサーユニット103ではフレキシブル配線基板43に電気的に接続されている。これにより、各センサーユニット101、102、103のICチップ20の集積回路がフレキシブル配線基板41、42、43に電気的に接続されている。
【0033】
[センサー素子]
センサー素子30(センサー素子片)は、1つの軸まわりの角速度を検出するジャイロセンサー素子である。具体的には、センサー素子30z(第1のセンサー素子)は、z軸(第1の検出軸)まわりの角速度を検出し、センサー素子30x(第2のセンサー素子)は、x軸(第2の検出軸)まわりの角速度を検出し、センサー素子30y(第3のセンサー素子)は、y軸(第3の検出軸)まわりの角速度を検出する。
【0034】
このようにセンサー素子30z、30x、30yの検出軸が互いに直交することにより、検出信号の処理が簡単となる。そのため、簡単な構成で、互い直交する3つの検出軸まわりの角速度を高精度に検出することができる。
このセンサー素子30は、その主要部分(基材)が圧電材料である水晶で構成されている。
【0035】
水晶は、互いに直交するX軸(電気軸)、Y軸(機械軸)およびZ軸(光学軸)を有する。センサー素子30は、水晶のX軸およびY軸に平行な板面を有する板状をなしている。また、センサー素子30は、その厚さ方向に沿って水晶のZ軸が存在している。このようなセンサー素子30の厚さは、発振周波数(共振周波数)、外形サイズ、加工性等に応じて適宜設定される。
【0036】
ここで、センサー素子30zは、水晶のZ軸がz軸に対して平行となるように配置される。また、センサー素子30xは、水晶のZ軸がx軸に対して平行となるように配置される。また、センサー素子30yは、水晶のZ軸がy軸に対して平行となるように配置される。
また、センサー素子30における水晶のX軸、Y軸およびZ軸の向きは、それぞれ、水晶からの切り出し時における誤差を多少の範囲(0度〜7度)で許容することができる。
また、センサー素子30は、フォトリソグラフィー技術を用いたエッチング(ウェットエッチングまたはドライエッチング)により形成されている。
【0037】
図4に示すように、センサー素子30は、いわゆるダブルT型と呼ばれる構造を有する。
具体的に説明すると、センサー素子30は、基部31と、基部31を支持する支持部32と、基部31から延出した2つの検出用振動腕33、34および4つの駆動用振動腕35〜38とを有する。
【0038】
基部31は、本体部311と、本体部311からx軸方向に沿って互いに反対側へ延出する1対の連結腕312、313とを有する。
支持部32は、ICチップ20に対して固定される1対の固定部321、322と、固定部321と基部31の本体部311とを連結する1対の梁部323、324と、固定部322と基部31の本体部311とを連結する1対の梁部325、326とを有する。
【0039】
検出用振動腕33、34は、基部31の本体部311からy軸方向に沿って互いに反対側へ延出している。
駆動用振動腕35、36は、基部31の連結腕312の先端部からy軸方向に沿って互いに反対側へ延出している。
駆動用振動腕37、38は、基部31の連結腕313の先端部からy軸方向に沿って互いに反対方向へ延出している。
【0040】
本実施形態では、検出用振動腕33の先端部には、基端部よりも幅が大きい錘部(ハンマーヘッド)331が設けられている。同様に、検出用振動腕34の先端部には、錘部341が設けられ、駆動用振動腕35の先端部には、錘部351が設けられ、駆動用振動腕36の先端部には、錘部361が設けられ、駆動用振動腕37の先端部には、錘部371が設けられ、駆動用振動腕38の先端部には、錘部381が設けられている。このような錘部を設けることにより、センサー素子30の周波数を調整することができる。
【0041】
また、検出用振動腕33の先端部(錘部331)には、質量調整用膜332が設けられている。同様に、検出用振動腕34の先端部(錘部341)には、質量調整用膜342が設けられている。また、駆動用振動腕35の先端部(錘部351)には、質量調整用膜352が設けられている。また、駆動用振動腕36の先端部(錘部361)には、質量調整用膜362が設けられている。また、駆動用振動腕37の先端部(錘部371)には、質量調整用膜372が設けられている。また、駆動用振動腕38の先端部(錘部381)には、質量調整用膜382が設けられている。
【0042】
このような質量調整用膜332、342、352、362、372、382を有するセンサー素子30では、質量調整用膜332、342、352、362、372、382の少なくとも一部を除去することにより、駆動周波数、検出周波数および離調周波数の調整を容易に行うことができる。
また、検出用振動腕33、34および駆動用振動腕35〜38を有するセンサー素子30では、後述する周波数調整工程において、駆動周波数および検出周波数を個別に調整することができる。そのため、離調周波数の調整を容易に行うことができる。
【0043】
この質量調整用膜332、342、352、362、372、382の構成材料としては、特に限定されず、例えば、金属、無機化合物、樹脂等を用いることができるが、金属または金属化合物を用いるのが好ましい。
金属または無機化合物は、気相成膜法により簡単かつ高精度に成膜することができる。また、金属または無機化合物で構成された質量調整用膜(錘膜)は、エネルギー線(特にレーザー)の照射により簡単かつ高精度に除去することができる。このようなことから、質量調整用膜を金属または無機化合物で成膜することにより形成することで、後述する周波数調整がより簡単かつ高精度なものとなる。
【0044】
かかる金属材料としては、例えば、金(Au)、金合金、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、銀(Ag)、銀合金、クロム(Cr)、クロム合金、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)等挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、駆動電極や検出電極と一括形成できるという観点から、かかる金属材料としては、Al、Cr、Fe、Ni、Cu、Ag、Au、Ptまたはこれらのうちの少なくとも1種を含む合金を用いるのが好ましい。
【0045】
また、かかる無機化合物としては、アルミナ(酸化アルミニウム)、シリカ(酸化シリコン)、チタニア(酸化チタン)、ジルコニア、イットリア、リン酸カルシウム等の酸化物セラミックス、窒化珪素、窒化アルミ、窒化チタン、窒化ボロン等の窒化物セラミックス、グラファイト、タングステンカーバイト等の炭化物系セラミックス、その他、例えばチタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、PZT、PLZT、PLLZT等の強誘電体材料などが挙げられる。中でも、かかるセラミックスとしては、酸化シリコン(SiO
2)、酸化チタン(TiO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)等の絶縁材料を用いるのが好ましい。
【0046】
また、質量調整用膜332、342、352、362、372、382の厚さ(平均厚さ)は、それぞれ、特に限定されないが、1〜1000nm程度であるのが好ましい。これにより、高精度に厚さを規定した質量調整用膜332、342、352、362、372、382を容易に得ることができる。
さらに、センサー素子30は、検出用振動腕33、34にそれぞれ設けられた検出電極(図示せず)と、駆動用振動腕35〜38にそれぞれ設けられた駆動電極(図示せず)と、支持部32の固定部321、322に設けられた複数の端子39a〜39fとを有する。端子39a、39dは、駆動用振動腕35〜38の駆動電極に電気的に接続され、端子39b、39cは、検出用振動腕33の検出電極に電気的に接続され、端子39e、39fは、検出用振動腕34の検出電極に電気的に接続されている。
【0047】
このようなセンサー素子30は、その平面視において、ICチップ20と重なるように、前述したICチップ20の能動面上に実装されている。
ここで、センサー素子30は、端子39a〜39fがICチップ20の各接続端子に電気的および機械的に接続されることにより、ICチップ20上に実装されている。
また、センサー素子30は、その板面がICチップ20の板面に沿う(略平行になる)ように設置されている。これにより、センサーユニット101では、センサー素子30zの板面がz軸に直交する。また、センサーユニット102では、センサー素子30xの板面がx軸に直交する。また、センサーユニット103では、センサー素子30yの板面がy軸に直交する。
【0048】
このように構成されたセンサー素子30では、ICチップ20の駆動回路から端子39a、39dを介して駆動電極に駆動信号が印加されることにより、駆動用振動腕35と駆動用振動腕37とが互いに接近・離間するように屈曲振動(駆動振動)するとともに、駆動用振動腕36と駆動用振動腕38とが上記屈曲振動と同方向に互いに接近・離間するように屈曲振動(駆動振動)する。
【0049】
このように駆動用振動腕35〜38を駆動振動させた状態で、センサー素子30にその重心Gを通る法線まわりの角速度ωが加わると、駆動用振動腕35〜38には、コリオリ力が働く。これにより、連結腕312、313を屈曲振動させながら本体部311を重心Gを通る法線(検出軸)まわりに回動振動させ、これに伴い、検出用振動腕33、34の屈曲振動(検出振動)が励振される。
【0050】
このような検出用振動腕33、34の検出振動により検出電極に生じた電荷(検出信号)を端子39b、39c、39e、39fを介してICチップ20の検出回路で検出する。これにより、センサー素子30に加わった角速度ωを求めることができる。
具体的には、センサーユニット101のセンサー素子30zは、その板面がz軸に直交することから、z軸まわりの角速度を検出することができる。また、センサーユニット102のセンサー素子30xは、その板面がx軸に直交することから、x軸まわりの角速度を検出することができる。また、センサーユニット103のセンサー素子30yは、その板面がy軸に直交することから、y軸まわりの角速度を検出することができる。
【0051】
このようなセンサー素子30z、30x、30yにおいては、センサー素子30zの駆動周波数をfd1とし、センサー素子30xの駆動周波数をfd2とし、センサー素子30yの駆動周波数をfd3としたとき、fd1>fd2>fd3なる関係を満たす。
これにより、センサー素子30z、30x、30y間での駆動信号や検出信号のクロストークを低減し、検出精度を優れたものとすることができる。
【0052】
そして、このような駆動周波数の関係のもと、センサー素子30zの離調周波数をfm1とし、センサー素子30xの離調周波数をfm2とし、センサー素子30yの離調周波数をfm3としたとき、fm1<fm2<fm3なる関係を満たす。なお、離調周波数とは、駆動周波数と検出周波数との差の絶対値をいう。
このような離調周波数の関係を満たすことにより、互いに異なる駆動周波数で駆動する3つのセンサー素子30z、30x、30y間のセンサー出力のノイズレベルの差を低減しつつ、互いに交差する3つの検出軸まわりの角速度を検出することができる。
【0053】
具体的に説明すると、
図6に示すように、駆動周波数が異なるセンサー素子では、離調周波数が互いに等しい場合、駆動周波数が大きいほど、センサー出力のノイズ密度が大きくなる。すなわち、駆動周波数が異なるセンサー素子では、離調周波数が互いに等しい場合、駆動周波数が大きいほど、センサー素子の感度(S/N比)が悪くなる。これは、駆動周波数が大きくなるほど、Q値が低下するためである。また、離調周波数が大きくなるほど、センサー出力のノイズ密度が大きくなる。
【0054】
このようなことから、前述したような駆動周波数および離調周波数の関係を満たすことにより、センサー素子30z、30x、30y間のセンサー出力のノイズレベルの差、すなわちセンサー出力S1、S2、S3のノイズ密度(ノイズレベル)の差を低減することができる。
また、センサー素子30z(第1のセンサー素子)のセンサー出力S1のノイズ密度とセンサー素子30x(第2のセンサー素子)のセンサー出力S2のノイズ密度との差は、0[deg・s
−1/√Hz]以上0.0003[deg・s
−1/√Hz]以下であるのが好ましく、0[deg・s
−1/√Hz]以上0.0001[deg・s
−1/√Hz]以下であるのがより好ましい。これにより、センサー素子30zおよびセンサー素子30xのセンサー出力のノイズ密度を実質的に等しくすることができる。
【0055】
同様の観点から、センサー素子30x(第2のセンサー素子)のセンサー出力S2のノイズ密度とセンサー素子30y(第3のセンサー素子)のセンサー出力S3のノイズ密度との差は、0[deg・s
−1/√Hz]以上0.0003[deg・s
−1/√Hz]以下であるのが好ましく、0[deg・s
−1/√Hz]以上0.0001[deg・s
−1/√Hz]以下であるのがより好ましい。
【0056】
また、センサー素子30zの駆動周波数fd1とセンサー素子30xの駆動周波数fd2との差は、3kHz以上であるのが好ましく、3kHz以上30kHz以下であるのがより好ましく、5kHz以上15kHz以下であるのがさらに好ましい。これにより、センサー素子30zおよびセンサー素子30x間の駆動信号または検出信号のクロストークを効果的に低減することができる。
【0057】
同様の観点から、センサー素子30xの駆動周波数fd2とセンサー素子30yの駆動周波数fd3との差は、3kHz以上であるのが好ましく、3kHz以上30kHz以下であるのがより好ましく、5kHz以上15kHz以下であるのがさらに好ましい。
また、センサー素子30zの検出周波数をfs1とし、センサー素子30xの検出周波数をfs2としたとき、fd1<fs1、かつ、fd2<fs2なる関係、または、fd1>fs1、かつ、fd2>fs2なる関係を満たすのが好ましい。これにより、センサー素子30zおよびセンサー素子30xの設計を容易なものとすることができる。
【0058】
同様の観点から、センサー素子30yの検出周波数をfs3としたとき、fd1<fs1、かつ、fd2<fs2なる関係を満たす場合、fd3<fs3なる関係を満たすのが好ましく、また、fd1>fs1、かつ、fd2>fs2なる関係を満たす場合、fd3>fs3なる関係を満たすのが好ましい。
なお、駆動周波数fd1、fd2、fd3および離調周波数fm1、fm2、fm3の具体的数値は、それぞれ、センサー素子30の寸法、形状、材料、センサーデバイス1の用途等に応じて適宜決定されるものであり、前述したような関係を満たすものであれば、
図4に示すものに限定されない。
【0059】
[フレキシブル配線基板]
図1、2に示すフレキシブル配線基板41、42、43は、それぞれ、例えば、ポリイミド等の可撓性を有する樹脂を主体としたベース層(図示せず)と、そのベース層に接合された配線パターン層(図示せず)とを備えている。
そして、フレキシブル配線基板41は、配線パターン層の一方の端部が第1の支持面11に支持されたICチップ20zの外部接続端子(図示せず)に取り付けられ(接合され)、配線パターン層の他方の端部が後述するパッケージ3の内部端子71に電気的に接続されている。同様に、フレキシブル配線基板42は、配線パターン層の一方の端部が第2の支持面12に支持されたICチップ20xの外部接続端子(図示せず)に取り付けられ(接合され)、配線パターン層の他方の端部が後述するパッケージ3の内部端子72に電気的に接続されている。また、フレキシブル配線基板43は、配線パターン層の一方の端部が第3の支持面13に支持されたICチップ20yの外部接続端子(図示せず)に取り付けられ(接合され)、配線パターン層の他方の端部が後述するパッケージ3の内部端子73に電気的に接続されている。
以上説明したように構成されたセンサーモジュール2によれば、x軸、y軸およびz軸まわりのそれぞれの角速度を検出することができる。
【0060】
このようなセンサーモジュール2は、パッケージ3内に収納されることにより、x軸、y軸およびz軸まわりのそれぞれの角速度を検出可能なセンサーデバイス1を提供することができる。
また、センサーモジュール2は、1つの軸まわりの角速度を検出するセンサーデバイスを3つ組み合わせたもの(すなわち、3つのセンサーデバイスを個別に機器に組み込むもの)と比較して、実装スペースを相当程度小さくすることができることから、センサーデバイス1が組み込まれる機器の小型化を図ったり、機器に組み込む際の配置、設計等の自由度を高めたりすることができる。
【0061】
また、センサーモジュール2は、1つの軸まわりの角速度を検出するセンサーデバイスを3つ組み合わせたものと比較して、パッケージの数が少なくて済むことから、低コスト化を図ることもできる。
また、センサーモジュール2は、1つの軸まわりの角速度を検出するセンサーデバイスを3つ組み合わせたものと比較して、取付姿勢を本来の安定なものとすることができることから、耐衝撃性を向上させることが可能となる。
【0062】
また、センサーモジュール2は、3つのセンサー素子30の検出軸の直交度が支持部材10の加工精度(角度θ1、θ2、θ3の精度)で決まることから、センサーデバイス1が組み込まれる機器における実装精度(パッケージの取付角度の精度)に3つの検出軸の直交度が依存することがなく、簡単に検出精度の高精度化を図ることができる。これに対し、1つの軸まわりの角速度を検出するセンサーデバイスを3つ組み合わせたものでは、3つの検出軸の直交度が各センサーデバイスの実装精度に依存するため、検出精度を高めることが難しい。
【0063】
(パッケージ)
図1に示すように、パッケージ3は、平板状のベース部材61と、凹部62を有する蓋部材63(キャップ)とを備える。
本実施形態では、ベース部材61は、z軸方向からみた平面視(以下、単に「平面視」ともいう)にて矩形状をなしている。
【0064】
このベース部材61は、例えば、酸化アルニウム質焼結体、水晶、ガラス等で構成されている。
図1に示すように、ベース部材61の上面65(蓋部材63に覆われる側の面)には、接着剤のような接合部材51により、前述した支持部材10の第1の支持面11とは反対側の裏面14が接合されている。これにより、センサーモジュール2がベース部材61に対して支持・固定されている。
【0065】
また、ベース部材61の上面65には、内部端子71、72、73が設けられている。この内部端子71、72、73には、導電性接着剤、異方性導電膜、ハンダ等の導電性を有する接合部材(図示せず)を介して、センサーモジュール2のフレキシブル配線基板41、42、43が電気的に接続されている。
一方、ベース部材61の下面66(パッケージ3の底面であって、上面65に沿った面)には、センサーデバイス1が組み込まれる機器(外部機器)に実装される際に用いられる複数の外部端子74が設けられている。
【0066】
この複数の外部端子74は、図示しない内部配線を介して、前述した内部端子71、72、73に電気的に接続されている。これにより、センサーモジュール2の各センサーユニット101、102、103と複数の外部端子74とが電気的に接続されている。
このような内部端子71、72、73および各外部端子74は、それぞれ、例えば、タングステン(W)等のメタライズ層にニッケル(Ni)、金(Au)等の被膜をメッキ等により積層した金属被膜からなる。
【0067】
このようにセンサーモジュール2が取り付けられたベース部材61の上面65には、センサーモジュール2を覆うように、蓋部材63が設けられている。
蓋部材63は、ベース部材61側に開口する凹部62を有する。これにより、ベース部材61との間にセンサーモジュール2が収納される内部空間を形成されている。
蓋部材63の凹部62の開口の外周部には、フランジ67が形成されている。
【0068】
このフランジ67は、平面視にて環状をなす。
この蓋部材63は、例えば、ベース部材61と同材料、または、コバール、42アロイ、ステンレス鋼等の金属で構成されている。
このような蓋部材63のフランジ67は、ベース部材61の上面65に気密的に接合されている。これにより、パッケージ3内が気密封止されている。
【0069】
本実施形態では、フランジ67とベース部材61とが金属で構成された接合部材64を介して接合されている。具体的には、例えば、接合部材64は、ベース部材61の上面65に対してろう接により接合されるとともに、蓋部材63のフランジ67に対してシーム溶接、エネルギー線溶接(レーザー溶接、電子線溶接等)等により接合されている。
なお、ベース部材61がシーム溶接やエネルギー線溶接等によりフランジ67に対して拡散接合し得る金属で構成されている場合には、接合部材64を省略することができる。この場合、蓋部材63のフランジ67は、ベース部材61の上面65にシーム溶接やエネルギー線溶接等により直接的に接合される。
この接合部材64は、蓋部材63のフランジ67に沿った四角環状をなしている。
【0070】
(センサーデバイスの製造方法)
次に、本発明のセンサーデバイスの製造方法について、前述したセンサーデバイス1の製造方法を例に説明する。
センサーデバイス1の製造方法は、[A]センサー素子30z、30x、30y(周波数調整前)を用意する工程と、[B]センサー素子30z、30x、30yのうちの少なくとも1つのセンサー素子の離調周波数を調整する工程とを有する。
【0071】
以下、各工程を順次説明する。
[A]
まず、周波数調整前(未調整)のセンサー素子30z、30x、30yを用意する。
このとき、センサー素子30z、30x、30yは、後述する周波数調整が可能であれば、センサーモジュール2に組み込まれた状態であってもよいし、パッケージ3に収納されていてもよい。
【0072】
[B]
次に、センサー素子30z、30x、30yのうちの少なくとも1つのセンサー素子の離調周波数を調整する。
具体的には、エネルギー線の照射により、質量調整用膜332、342、352、362、372、382の少なくとも一部を除去することにより、駆動周波数(駆動用振動腕35〜38の共振周波数)および検出周波数(検出用振動腕33、34の共振周波数)のうちの少なくとも一方を変化させ、離調周波数を調整する。このとき、前述したような駆動周波数および離調周波数の関係を満たすように、離調周波数の調整を行う。
【0073】
例えば、
図7(a)に示すように、検出用振動腕33の質量調整用膜332Aの先端側の部分を除去し、検出用振動腕33の共振周波数(検出周波数)の粗調整を行い、次いで、
図7(b)に示すように、粗調整後の質量調整用膜332Bの基端部側の部分を除去し、検出用振動腕33の共振周波数(検出周波数)の微調整を行う。
なお、この微調整および粗調整において除去される質量調整用膜332の形状、部位およびその除去量は、必要に応じて適宜設定されるものであり、図示のものに限定されない。例えば、質量調整用膜332の一部をレーザー光の照射により除去した場合、その除去された部分は、ライン状、ドット状等の形状をなす。
【0074】
このような粗調整および微調整により、質量調整用膜332は、その質量が減少した質量調整用膜332Bとなる。その結果、検出用振動腕33の共振周波数、すなわち検出周波数が高められる。これにより、離調周波数を変更することができる。具体的には、駆動周波数が検出周波数よりも大きい場合、検出周波数を高めることによって、離調周波数を小さくすることができ、また、駆動周波数が検出周波数よりも小さい場合、検出周波数を高めることによって、離調周波数を大きくすることができる。
【0075】
同様に、駆動周波数を高めることによって離調周波数を変更することができる。具体的には、駆動周波数が検出周波数よりも大きい場合、駆動周波数を高めることによって、離調周波数を大きくすることができ、また、駆動周波数が検出周波数よりも小さい場合、駆動周波数を高めることによって、離調周波数を小さくすることができる。
また、このような周波数調整に用いるエネルギー線は、センサー素子30に悪影響を与えずに、質量調整用膜の必要部位を除去することができるものであれば、特に限定されず、放射線、電子線、レーザー、イオンビーム等が挙げられるが、炭酸ガスレーザー、エキシマーレーザー、YAGレーザー等のレーザーを用いるのが好ましい。これにより、簡単かつ確実に、質量調整用膜の一部または全部を所望量だけ除去することができる。
以上説明したような工程[A]、[B]を経て、センサーデバイス1を得る。
【0076】
このようなセンサーデバイス1の製造方法によれば、互いに異なる駆動周波数で駆動する複数のセンサー素子30z、30x、30y間のセンサー出力のノイズレベルの差を低減しつつ、互いに交差する方向の複数の検出軸まわりの角速度を検出することができるセンサーデバイス1を製造することができる。
以上説明したような各実施形態のセンサーデバイスは、各種の電子機器に組み込んで使用することができる。
このような電子機器によれば、信頼性を優れたものとすることができる。
【0077】
(電子機器)
ここで、本発明の
センサーデバイスを備える電子機器の一例について、
図8〜
図10に基づき、詳細に説明する。
図8は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【0078】
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部100を備えた表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このようなパーソナルコンピュータ1100には、ジャイロセンサーとして機能する前述したセンサーデバイス1が内蔵されている。
【0079】
図9は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHS、スマートフォンも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206を備え、操作ボタン1202と受話口1204との間には、表示部100が配置されている。
【0080】
このような携帯電話機1200には、ジャイロセンサーとして機能する前述したセンサーデバイス1が内蔵されている。
図10は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0081】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、表示部は、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
また、ケース1302の正面側(図中裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
【0082】
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、メモリ1308に転送・格納される。
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示されるように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、メモリ1308に格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
このようなディジタルスチルカメラ1300には、ジャイロセンサーとして機能する前述したセンサーデバイス1が内蔵されている。
【0083】
なお、本発明の電子機器は、
図8のパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、
図9の携帯電話機、
図10のディジタルスチルカメラの他にも、電子デバイスの種類に応じて、例えば、車体姿勢検出装置、ポインティングデバイス、ヘッドマウントディスプレイ、インクジェット式吐出装置(例えばインクジェットプリンタ)、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、テレビ、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダ、ナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ゲームコントローラー、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ等に適用することができる。
以上、本発明のセンサーデバイス、センサーデバイスの製造方法および電子機器について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0084】
また、本発明のセンサーデバイスおよび電子機器では、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
また、本発明のセンサーデバイスの製造方法では、任意の工程を追加することができる。
【0085】
また、前述した実施形態では、センサーデバイスが3つのセンサー素子を備える場合を例に説明したが、センサーデバイスが備えるセンサー素子の数は、これに限定されず、例えば、2つまたは4つ以上であってもよい。
また、前述した実施形態では、複数のセンサー素子の検出軸が互いに直交している場合を例に説明したが、複数のセンサー素子の検出軸は、互いに交差していればよく、必ずしも直交していなくてもよい。
【0086】
また、前述した実施形態では、センサー素子30の主要部分(基材)を水晶で構成した場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、センサー素子30の主要部分(基材)は、例えば、タンタル酸リチウム(LiTaO
3)、四ホウ酸リチウム(Li
2B4O
7)、ニオブ酸リチウム(LiNbO
3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)等の圧電体、またはシリコン(Si)等の半導体であってもよい。
【0087】
また、センサー素子30の主要部分は、圧電体材料以外の材料(非圧電体材料)、例えば、シリコン、石英等で構成されていてもよい。この場合、検出用振動腕および駆動用振動腕に圧電体素子を設ければよい。
また、センサー素子30は、前述したようなダブルT型以外にも、二脚音叉、三脚音叉、H型音叉、くし歯型、直交型、角柱型等、種々のジャイロ素子を用いることが可能である。
【0088】
また、センサー素子の検出軸は、センサー素子の主面(板面
)に直交する軸のほかに、センサー素子の主面に平行な軸であってもよい。
また、前述した実施形態では、支持部材およびICチップを介してセンサー素子をパッケージに固定・支持した構成を例に説明したが、この支持部材を省略し、センサー素子をICチップを介してまたは直接的にパッケージに固定・支持した構成であってもよい。
【0089】
また、前述した実施形態は、センサーデバイスが3つのICチップを有する場合を例に説明したが、これに限定されず、例えば、1つのICチップで複数のセンサー素子の駆動・検出を行うように構成してもよい。
また、前述した実施形態では、ICチップとパッケージとをフレキシブル配線基板を介して電気的に接続した構成を例に説明したが、ICチップとパッケージとの電気的接続は、これに限定されず、例えば、ボンディングワイヤーを介した接続、フェイスダウン実装による接続等であってもよい。