特許第6044118号(P6044118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6044118-光学積層体、偏光板及び画像表示装置 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6044118
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】光学積層体、偏光板及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/14 20150101AFI20161206BHJP
   G02B 1/111 20150101ALI20161206BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20161206BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20161206BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   G02B1/14
   G02B1/111
   G02B5/30
   G02B5/02 B
   G02F1/1335 510
【請求項の数】13
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2012-121334(P2012-121334)
(22)【出願日】2012年5月28日
(65)【公開番号】特開2013-246371(P2013-246371A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 英司
(72)【発明者】
【氏名】黒田 剛志
(72)【発明者】
【氏名】古井 玄
(72)【発明者】
【氏名】磯嶋 征一
(72)【発明者】
【氏名】江口 淳哉
(72)【発明者】
【氏名】本田 誠
【審査官】 南 宏輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−104076(JP,A)
【文献】 特開2009−069427(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/162198(WO,A1)
【文献】 特開2011−059488(JP,A)
【文献】 特開2011−133881(JP,A)
【文献】 特開2007−196421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/02
G02B 1/10−1/18
G02B 5/30
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面内に複屈折率を有する光透過性基材の一方の面上に、表面に凹凸形状を有する光学機能層を有する光学積層体であって、
前記面内に複屈折率を有する光透過性基材は、3000nm以上のリタデーションを有し、
前記光学機能層の表面の凹凸形状は、凹凸部の平均傾斜角をθaとし、凹凸のスキューネスをSkとしたとき、前記Skの絶対値及びθaが以下の式を満たし、
JIS K7136に基づく全へイズが2.0未満である
ことを特徴とする光学積層体。
0.01°≦θa≦0.10°
|Sk|≦0.5
【請求項2】
面内に複屈折率を有する光透過性基材は、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx−ny)が、0.05〜0.20である請求項1記載の光学積層体。
【請求項3】
光学機能層の凹凸形状は、凹凸の算術平均粗さをRaとしたとき、以下の式を満たす請求項1又は2記載の光学積層体。
0.02μm≦Ra≦0.10μm
【請求項4】
光学機能層の凹凸形状は、λa=2π×(Ra/tan(θa))にて表される平均波長λaが下記式を満たす請求項3記載の光学積層体。
200μm≦λa≦800μm
【請求項5】
光学機能層は、ハードコート層である請求項1、2、3又は4記載の光学積層体。
【請求項6】
光学機能層は、ハードコート層上に低屈折率層が積層された構造である請求項1、2、3又は4記載の光学積層体。
【請求項7】
ハードコート層は、無機酸化物微粒子及びバインダー樹脂を含有する請求項5又は6記載の光学積層体。
【請求項8】
無機酸化物微粒子は、疎水化処理無機酸化物微粒子である請求項7記載の光学積層体。
【請求項9】
無機酸化物微粒子は、凝集体を形成してハードコート層に含有されており、前記凝集体の平均粒子径が100nm〜2.0μmである請求項7又は8記載の光学積層体。
【請求項10】
面内に複屈折率を有する光透過性基材は、ポリエステル基材である請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の光学積層体。
【請求項11】
偏光素子を備えてなる偏光板であって、
前記偏光板は、偏光素子表面に請求項1、2、3、4、5、6、7、8、又は1記載の光学積層体を備えることを特徴とする偏光板。
【請求項12】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、若しくは1記載の光学積層体、又は、請求項1記載の偏光板を備えることを特徴とする画像表示装置。
【請求項13】
バックライト光源として白色発光ダイオードを備える請求項1記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体、偏光板及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、省電力、軽量、薄型等といった特徴を有していることから、従来のCRTディスプレイに替わり、近年急速に普及している。
このような液晶表示装置には液晶セルの画像表示面側に偏光子が配置されており、通常、取扱い時に偏光子に傷が付かないように硬度を付与することが要求されることから、偏光板保護フィルムとして、光透過性基材上にハードコート層を設けたハードコートフィルムを利用することにより、画像表示面に硬度を付与することが一般になされている。
【0003】
従来、このようなハードコートフィルムの光透過性基材として、トリアセチルセルロースに代表されるセルロースエステルからなるフィルムが用いられていた。これは、セルロースエステルは、透明性、光学等方性に優れ、面内にほとんど位相差を持たない(リタデーション値が低い)ため、入射直線偏光の振動方向を変化させることが極めて少なく、液晶表示装置の表示品質への影響が少ないことや、適度な透水性を有することから、光学積層体を用いてなる偏光板を製造した時に偏光子に残留した水分を、光学積層体を通して乾燥させることができる等の利点に基づくものである。
しかしながら、セルロースエステルフィルムは、コスト的には不利な素材であり、また、耐湿、耐熱性が充分でなく、ハードコートフィルムを偏光板保護フィルムとして高温多湿の環境下で使用すると、偏光機能や色相等の偏光板機能を低下させるという欠点があった。
【0004】
このようなセルロースエステルフィルムの問題点から、透明性、耐熱性、機械強度に優れ、かつ、セルロースエステルフィルムに比べて安価な素材である、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル基材をセルロースエステルフィルムに代わる光透過性基材の材料として利用する試みがなされている。
しかしながら、ポリエチレンテレフタレートフィルムは、分子鎖中に分極率の大きい芳香族環を持つため固有複屈折が極めて大きく、優れた透明性、耐熱性、機械強度を付与させるための延伸処理による分子鎖の配向に伴ってフィルム複屈折が発現しやすい。このため、偏光素子上に配置した場合、液晶表示装置に色の異なるムラ(以下、「ニジムラ」ともいう)が、特に表示画面を斜めから観察したときに生じ、液晶表示装置の表示品質が損なわれてしまうという問題があった。
【0005】
ポリエステル基材をセルロースエステルフィルムに代わる光透過性基材の材料として利用する試みとしては、例えば、特許文献1には、ポリエステル樹脂を主成分とするフィルムとして、面内のレターデーションReを500nm以上とした偏光板保護フィルムが記載されている。当該特許文献1に記載の発明では、ポリエステルフィルムに充分な機械強度を持たせるために、縦及び横の延伸倍率が3.3/3.9となるように2軸延伸しているため必然的に発生したレターデーションであって、延伸倍率が小さく、また、縦横の延伸倍率がほぼ等しいので、レターデーション値は最小で500nm、最大で700nmである。ところが、このように小さなレターデーションではニジムラ問題を解消することができない。そこで、当該特許文献1に記載の発明では、へイズが10〜80%の光拡散層を最上層に設けることでニジムラ問題を解消している。しかしながら、10%以上のヘイズを有する光拡散層を設けると、ニジムラは解消できても、白ぼけやコントラスト等の画質が劣るという問題が生じてしまう。
【0006】
また、例えば、特許文献2には、2.5から6倍に延伸して充分透明性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを透明基材として用いた防眩フィルムが記載されている。この防眩フィルムにおいては、リタデーションが1000以上であれば、正面での色つきは目立たなくなるが、斜め方向での色ムラ(ニジムラ)は解消できないので、全へイズが透過鮮明度の8倍以上となるようにすることでニジムラを解消している。しかしながら、透過鮮明度が低いと視認性が低下してしまうので、特許文献2に記載の防眩フィルムは、ヘイズとして、5.5〜55%が必要となっている。さらには、上記透過鮮明度とヘイズの関係を満たすために、表面凹凸形状の周期を大きくして、防眩層の正反射率を0.05〜2%と非常に低い値とするため、防眩層表面にはほとんど平面が存在しないので、ニジムラは解消できても、白ぼけやコントラスト等を含めた画質が劣るという問題が生じてしまうこととなる。
【0007】
更に、特許文献3には、光源として白色発光ダイオードを用い、リタデーションが3000〜30000nmの高分子フィルムを偏光板の吸収軸と高分子フィルムの遅相軸とのなす角が45度となるように配して用いることで、サングラスなどの偏光板を通して画面を観察したとき、観察角度によらず、良好な視認性が確保できることが記載されている。しかしながら、特許文献3における好ましい高分子フィルムであるポリエステルやポリカーボネートフィルムは柔らかく耐擦傷性がないため、高分子フィルム表面にハードコート層を設けないかぎり実用に供し得ないものであった。然るに、高分子フィルムの表面にハードコート層を設けた場合、両者の屈折率の差が大きくなると該屈折率差に起因した干渉縞が生じて画質劣化をきたしてしまう。
【0008】
ここで、干渉縞とは、透明な薄膜に白色光が当たると、薄膜の表面から反射する光といったん薄膜に入ってその後ろの面から反射する光が干渉を起こして、部分的な虹彩状色彩が見られる現象であり、見る方向により強め合う波長が変わるために生じる現象である。この現象は、使用者にとって見づらいばかりか不快な印象を与える場合があり、改善が強く求められる。高分子フィルム(屈折率:Np)上に、ハードコート層(屈折率:Nh)を設けた場合、NpとNhに差(屈折率差)がある場合、例えば、Npが1.64〜1.68でNhが1.50〜1.53の場合などに、高分子フィルムとハードコート層との界面での反射光の干渉が起こり、上記屈折率差が大きいほど干渉縞は顕著である。
一方、高分子フィルム(屈折率:Np)及びハードコート層(屈折率:Nh)の屈折率をできるだけ揃える(以下、干渉縞解消法ともいう)ことによって干渉縞が解消できることが知られている。すなわち、特許文献3に記載の発明おいても、干渉縞を防止するにはハードコート層を上記干渉縞解消法に基づいて設ける必要がある。
しかしながら、特許文献3においては、高分子フィルムに高いリタデーション値を持たせるため、必然的に高分子フィルムの縦方向と横方向の屈折率(以下それぞれ、Nx、Nyともいう。ここで、Np−Nx=Ny−Npである)が大きく異なることとなるので、上記干渉縞解消法に基づいたハードコート層の屈折率Nhを決定することができないし、たとえ、NhをNxとNyの平均値にしたとしても、縦及び横方向ではそれぞれNh−Nx、Nh−Nyの屈折率差が存在することとなるので干渉縞を解消することはできない。換言すれば、高分子フィルム厚を増さないかぎり、リタデーションを大きくすればするほど、Nx及びNyとNhとの差は大きくなり、干渉縞はより大きな問題となる。
すなわち、特許文献3においては、干渉縞の発生による画質低下の問題を避けることはできないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−003541号公報
【特許文献2】特開2009−156938号公報
【特許文献3】特開2011−107198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このようなポリエステルフィルムのような光透過性基材を用いた場合の問題に対して、本発明者らが検討したところ、光学積層体の光透過性基材として、リタデーションReが特許文献1に記載されていた値よりもはるかに大きな値を有する面内に複屈折率を有する光透過性基材を用いることで、従来のポリエステルフィルム等からなる光透過性基材を備えた光学積層体を用いた場合と比較して、虹状のムラの問題を改善できることを見出した。
【0011】
ところが、このような高いリタデーション値を有する面内に複屈折率を有する光透過性基材を用い、該光透過性基材上にハードコート層を設けた光学積層体とした場合、光透過性基材とハードコート層との密着性を担保するためプライマー層が必須となる。このような構成の光学積層体では、光透過性基材は、一般に1.64〜1.68という高屈折率であるのに対し、プライマー層やハードコート層の屈折率は、なんらかの材料によって高屈折率化させない限り屈折率が低く、光透過性基材とプライマー層及びハードコート層との屈折率差が大きいため、虹のような干渉縞が発生し、ディスプレイなどの画質が低下するという問題があった。
【0012】
なお、干渉縞の発生を防ぐ方法として、例えば、光透過性基材上にハードコート層を形成する場合、ハードコート層を形成するための樹脂組成物に、光透過性基材に浸透して膨潤又は溶解させることができる溶剤を使用し、光透過性基材中に上記ハードコート層の材料を含浸させた含浸層を形成する方法が知られている。
ところが、このような方法は、光透過性基材が上記溶剤により膨潤又は溶解される材料、例えば、トリアセチルセルロース基材のような特定の材料からなる場合に有効であるが、ポリエステルフィルムのような光透過性基材は、上記溶剤により殆ど膨潤又は溶解されることがないため、当該方法を採用することはできなかった。
【0013】
本発明は、上記現状に鑑みて、面内に複屈折率を有する光透過性基材を用いた液晶表示装置において、表示画像にニジムラ及び干渉縞が生じることを高度に抑制することができる光学積層体、該光学積層体を用いた偏光板及び画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、面内に複屈折率を有する光透過性基材の一方の面上に、表面に凹凸形状を有する光学機能層を有する光学積層体であって、上記面内に複屈折率を有する光透過性基材は、3000nm以上のリタデーションを有し、上記光学機能層の表面の凹凸形状は、凹凸部の平均傾斜角をθaとし、凹凸のスキューネスをSkとしたとき、上記Skの絶対値及びθaが以下の式を満たし、JIS K7136に基づく全へイズが2.0未満であることを特徴とする光学積層体である。
0.01°≦θa≦0.10°
|Sk|≦0.5
【0015】
本発明の光学積層体において、上記面内に複屈折率を有する光透過性基材は、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、上記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx−ny)が、0.05〜0.20であることが好ましい。
また、上記光学機能層の凹凸形状は、凹凸の算術平均粗さをRaとしたとき、以下の式を満たすことが好ましい。
0.02μm≦Ra≦0.10μm
また、上記光学機能層の凹凸形状は、λa=2π×(Ra/tan(θa))にて表される平均波長λaが下記式を満たすことが好ましい。
200μm≦λa≦800μm
また、本発明において、上記光学機能層は、ハードコート層であることが好ましい。
また、本発明において、上記光学機能層は、ハードコート層上に低屈折率層が積層された構造であることが好ましい。
また、上記ハードコート層は、無機酸化物微粒子及びバインダー樹脂を含有することが好ましい。
また、上記無機酸化物微粒子は、疎水化処理無機酸化物微粒子であることが好ましい。
また、上記無機酸化物微粒子は、凝集体を形成してハードコート層に含有されており、上記凝集体の平均粒子径が100nm〜2.0μmであることが好ましい。
また、上記面内に複屈折率を有する光透過性基材は、ポリエステル基材であることが好ましい
【0016】
本発明はまた、偏光素子を備えてなる偏光板であって、上記偏光板は、偏光素子表面に上述の光学積層体を備えることを特徴とする偏光板でもある。
本発明は、上述の光学積層体、又は、上述の偏光板を備えることを特徴とする画像表示装置でもある。
本発明の画像表示装置は、バックライト光源として白色発光ダイオードを備えることが好ましい。
以下に、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明では、特別な記載がない限り、モノマー、オリゴマー、プレポリマー等の硬化性樹脂前駆体も“樹脂”と記載する。
【0017】
本発明者らは、光透過性基材の一方の面上に、光学機能層を有する構成の光学積層体について鋭意検討した結果、ポリエステル基材等の面内に複屈折率を有する透明基材を所定のリタデーション値を有するものとすることで表示画像のニジムラの発生を抑えることができ、更に、光学機能層の表面(光透過性基材と反対側面)に、特定の凹凸形状を形成することで、干渉縞の発生を好適に防止することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
なお、従来、防眩性付与を目的として、光学機能層の表面に凹凸形状を有する光学積層体(防眩性フィルム)が知られているが、本発明の光学積層体は、このような防眩性フィルムとは異なるものである。すなわち、本発明の光学積層体の光学機能層表面に形成された凹凸形状は、従来の防眩性フィルムの表面に形成された凹凸形状と比較して、凹凸の高さがより低く、更に、凹凸部の傾斜角度がよりなだらかである。従って、光学機能層にこのような凹凸形状が形成された本発明の光学積層体では、従来の防眩性フィルムのような防眩性は得られない。一方で、本発明によると、防眩性フィルムで問題となる外光による白濁感の発生が生じず、コントラストに優れた映像を提供する光学積層体を得ることができる。
【0018】
本発明の光学積層体は、面内に複屈折率を有する光透過性基材の一方の面上に、表面に凹凸形状を有する光学機能層を有する。
上記面内に複屈折率を有する光透過性基材としては特に限定されず、例えば、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、アクリル、ポリエステル等からなる基材が挙げられるが、なかでも、コスト及び機械的強度において有利なポリエステル基材であることが好適である。なお、以下の説明では、面内に複屈折率を有する光透過性基材をポリエステル基材として説明する。
【0019】
上記ポリエステル基材は、3000nm以上のリタデーションを有する。リタデーションが3000nm未満であると、本発明の防眩性フィルムを用いた液晶表示装置の表示画像にニジムラが生じてしまう。一方、上記ポリエステル基材のリタデーションの上限としては特に限定されないが、3万nm程度であることが好ましい。3万nmを超えると、これ以上の表示画像のニジムラ改善効果の向上が見られず、また、膜厚が相当に厚くなるため好ましくない。
上記ポリエステル基材のリタデーションは、ニジムラ防止性及び薄膜化の観点から、6000〜25000nmであることがより好ましい。更に好ましい範囲は、8000〜2万nmである。
【0020】
なお、上記リタデーションとは、ポリエステル基材の面内において最も屈折率が大きい方向(遅相軸方向)の屈折率(nx)と、遅相軸方向と直交する方向(進相軸方向)の屈折率(ny)と、ポリエステル基材の厚み(d)とにより、以下の式によって表わされるものである。
リタデーション(Re)=(nx−ny)×d
また、上記リタデーションは、例えば、王子計測機器社製KOBRA−WRによって測定(測定角0°、測定波長548.2nm)することができる。
なお、屈折率は、分光光度計(島津製作所社製のUV−3100PC)を用いて、波長380〜780nmの平均反射率(R)を測定し、得られた平均反射率(R)から、以下の式を用い、屈折率(n)の値を求めた。
光学機能層の平均反射率(R)は、易接着処理のない50μmPET上にそれぞれの原料組成物を塗布し、1〜3μmの厚さの硬化膜にし、PETの塗布しなかった面(裏面)に、裏面反射を防止するために測定スポット面積よりも大きな幅の黒ビニールテープ(例えば、ヤマトビニールテープNO200−38−21 38mm幅)を貼ってから各硬化膜の平均反射率を測定した。ポリエステル基材の屈折率は、測定面とは反対面に同様に黒ビニールテープを貼ってから測定を行った。
R(%)=(1−n)/(1+n)
また、光学積層体となった後に光学機能層の屈折率を測定する方法としては、各層の硬化膜をカッターなどで削り取り、粉状態のサンプルを作製し、JIS K7142(2008)B法(粉体又は粒状の透明材料用)に従ったベッケ法(屈折率が既知のカーギル試薬を用い、上記粉状態のサンプルをスライドガラスなどに置き、そのサンプル上に試薬を滴下し、試薬でサンプルを浸漬する。その様子を顕微鏡観察によって観察し、サンプルと試薬の屈折率が異なることによってサンプル輪郭に生じる輝線;ベッケ線が目視で観察できなくなる試薬の屈折率を、サンプルの屈折率とする方法)を用いることができる。
ポリエステル基材の場合は、方向によって屈折率が異なるので、ベッケ法ではなく、光学機能層の処理面に上記黒ビニールテープを貼ることで、平均反射率を測定し求める。
なお、本発明では、上記nx−ny(以下、Δnとも表記する)は、0.05〜0.20であることが好ましい。上記Δnが0.05未満であると、充分なニジムラの抑制効果が得られないことがあり、また、上述したリタデーション値を得るために必要な膜厚が厚くなることがある。一方、上記Δnが0.20を超えると、ポリエステル基材として、裂け、破れ等を生じやすくなり、工業材料としての実用性が著しく低下することがある。
上記Δnのより好ましい下限は0.07、より好ましい上限は0.15である。上記Δnが、0.07よりも小さいと、偏光板吸収軸に対し、遅相軸を0°又は、90°に合わせた時のニジムラ防止効果がでにくくなるためである。なお、上記Δnが0.15を超えると、耐湿熱性試験でのポリエステル基材の耐久性が劣ることがある。耐湿熱性試験での耐久性が優れることから、上記Δnの更に好ましい上限は0.12である。
なお、上記(nx)としては、1.67〜1.78であることが好ましく、より好ましい下限は1.69、より好ましい上限は1.73である。また、上記(ny)としては、1.55〜1.65であることが好ましく、より好ましい下限は1.57、より好ましい上限は1.62である。
上記nx及びnyが上記範囲にあり、かつ、上述したΔnの関係を満たすことで、好適なニジムラの抑制効果を得ることができる。
【0021】
上記ポリエステル基材を構成する材料としては、上述したリタデーションを充足するものであれば特に限定されないが、芳香族二塩基酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール又はそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルが挙げられる。かかるポリエステルの具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−ナフタレートを例示することができる。
また、ポリエステル基材に用いられるポリエステルは、これらのポリエステルの共重合体であってもよく、上記ポリエステルを主体(例えば80モル%以上の成分)とし、少割合(例えば20モル%以下)の他の種類の樹脂とブレンドしたものであってもよい。上記ポリエステルとしてポリエチレンテレフタレート又はポリエチレン−2,6−ナフタレートが力学的物性や光学物性等のバランスが良いので特に好ましい。特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなることが好ましい。ポリエチレンテレフタレートは汎用性が高く、入手が容易であるからである。本発明においてはPETのような、汎用性が極めて高いフィルムであっても、表示品質の高い液晶表示装置を作製することが可能な、光学積層体を得ることができる。更に、PETは、透明性、熱又は機械的特性に優れ、延伸加工によりリタデーションの制御が可能であり、固有複屈折が大きく、膜厚が薄くても比較的容易に大きなリタデーションが得られる。
【0022】
上記ポリエステル基材を得る方法としては、上述したリタデーションを充足する方法であれば特に限定されないが、例えば、材料の上記PET等のポリエステルを溶融し、シート状に押出し成形された未延伸ポリエステルをガラス転移温度以上の温度においてテンター等を用いて横延伸後、熱処理を施す方法が挙げられる。
上記横延伸温度としては、80〜130℃が好ましく、より好ましくは90〜120℃である。また、横延伸倍率は2.5〜6.0倍が好ましく、より好ましくは3.0〜5.5倍である。上記横延伸倍率が6.0倍を超えると、得られるポリエステル基材の透明性が低下しやすくなり、延伸倍率が2.5倍未満であると、延伸張力も小さくなるため、得られるポリエステル基材の複屈折が小さくなり、リタデーションを3000nm以上とできないことがある。
また、本発明においては、二軸延伸試験装置を用いて、上記未延伸ポリエステルの横延伸を上記条件で行った後、該横延伸に対する流れ方向の延伸(以下、縦延伸ともいう)を行ってもよい。この場合、上記縦延伸は、延伸倍率が2倍以下であることが好ましい。上記縦延伸の延伸倍率が2倍を超えると、Δnの値を上述した好ましい範囲にできないことがある。
また、上記熱処理時の処理温度はしては、100〜250℃が好ましく、より好ましくは180〜245℃である。
【0023】
上述した方法で作製したポリエステル基材のリタデーションを3000nm以上に制御する方法としては、延伸倍率や延伸温度、作製するポリエステル基材の膜厚を適宜設定する方法が挙げられる。具体的には、例えば、延伸倍率が高いほど、延伸温度が低いほど、また、膜厚が厚いほど、高いリタデーションを得やすくなり、延伸倍率が低いほど、延伸温度が高いほど、また、膜厚が薄いほど、低いリタデーションを得やすくなる。
【0024】
上記ポリエステル基材の厚みとしては、40〜500μmの範囲内であることが好ましい。40μm未満であると、上記ポリエステル基材のリタデーションを3000nm以上にできず、また、力学特性の異方性が顕著となり、裂け、破れ等を生じやすくなり、工業材料としての実用性が著しく低下することがある。一方、500μmを超えると、ポリエステル基材が非常に剛直であり、高分子フィルム特有のしなやかさが低下し、やはり工業材料としての実用性が低下するので好ましくない。上記ポリエステル基材の厚さのより好ましい下限は50μm、より好ましい上限は400μmであり、更により好ましい上限は300μmである。
【0025】
また、上記ポリエステル基材は、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、84%以上であるものがより好ましい。なお、上記透過率は、JIS K7361−1(プラスチック−透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
【0026】
また、本発明において、上記ポリエステル基材には本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、けん化処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、及び火炎処理等の表面処理を行ってもよい。また、プライマー層を設けることも、密着性改善や干渉縞の更なる改善の点で好ましい。
【0027】
上記光学機能層は、ハードコート性能を有することが好ましく、例えば、硬度が、JIS K5600−5−4(1999)による鉛筆硬度試験(荷重4.9N)において、H以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましい。
本発明の光学積層体において、上記光学機能層は、上記光透過性基材の一方の面上に形成されており、表面に凹凸形状を有するものである。
本発明の光学積層体において、上記光学機能層の表面に形成された凹凸形状は、凹凸部の平均傾斜角をθaとし、凹凸のスキューネスをSkとしたとき、上記θa及びSkが以下の式を満たすものである。
0.01°≦θa≦0.10°
|Sk|≦0.5
【0028】
上記光学機能層の表面に形成された凹凸形状により、干渉縞が防止できる理由は、光学機能層表面で反射する光が拡散し、非干渉性の光となるためである。光を拡散させるためには凹凸表面に傾斜があることが必要であり、その指標が平均傾斜角θaである。
本発明の光学積層体において、上記凹凸部の平均傾斜角θaの下限は0.01°である。0.01°未満であると、傾斜が充分でなく、干渉縞を防止することができない。より好ましい下限は0.03°であり、更に好ましい下限は0.04°である。また、上記凹凸部の平均傾斜角θaの上限は0.10°である。0.10°を超えると、上記凹凸部の傾斜角度が過度に大きいため、外光の拡散反射による白濁感の問題が生じる。より好ましい上限は0.09°であり、更に好ましい上限は0.08°である。
【0029】
また、本発明においては上記凹凸のスキューネスSkの絶対値が0.5以下である。上記スキューネスSkは、その絶対値が大きいほど、表面凹凸形状の、平均線に対する非対称性が大きいことを示している。表面凹凸形状の非対称性が大きいとき、急峻な山部分となだらかな谷部分が存在することとなり(Sk>0のとき)、上記平均傾斜角θaが上記範囲を満たしていても、その傾斜角分布に偏りが生じていることを示している。すなわち、山部分は傾斜角が大きくなり、谷部分は傾斜角が小さくなる(Sk<0のときは山と谷の関係が逆になる)。このような場合、傾斜角が大きい部分では、光の拡散が過度に大きくなり白濁感の問題が生じる恐れがある一方、傾斜角が小さい部分では、好適に干渉縞が防止できない恐れがある。上記Skの絶対値が0.5以下であれば、表面凹凸形状の非対称性が小さいため、傾斜角度分布の偏りが適度に抑えられ、干渉縞を好適に防止することができると同時に白濁感も抑えることができる。上記Skの絶対値は、より好ましくは0.4以下であり、更に好ましくは0.2以下である。
【0030】
また、本発明においては、凹凸の算術平均粗さをRaとしたとき、以下の式を満たすことが好ましい。
0.02μm≦Ra≦0.10μm
本発明においては、凹凸形状の各凸部の大きさ(高さ)を制御することが好ましいが、その指標が算術平均粗さRaである。
上記凹凸の算術平均粗さRaの下限は0.02μmである。上記Raが0.02μm未満であると、光の波長に対し各凸部の大きさ(高さ)が小さすぎることになり、拡散効果が得られないことがある。より好ましい下限は0.03μmであり、更に好ましい下限は0.04μmである。また、上記Raの上限は0.10μmである。Raが0.10μm超過であると、各凸部が大きくなりすぎ、透過光をゆがませるため、鮮明な画像が得られなくなることがある。より好ましい上限は0.09μmであり、更に好ましい上限は0.08μmである。
【0031】
また、本発明においては、λa=2π×(Ra/tan(θa))で表される平均波長λaが200μm以上800μm以下であることが好ましい。
上記平均波長λaは、凹凸の平均的な間隔を示すパラメータである。上記平均波長λaが200μm未満であると、凹凸が小さすぎて干渉縞が防止できないか、あるいは、凹凸平面での傾斜角の変化が大きすぎて、白濁感が見られる恐れがある。上記平均波長λaが800μm超過であると、凹凸平面での傾斜角の変化が少なくなり、好適に干渉縞を防止できない恐れがある。上記平均波長λaのより好ましい下限は300μm、より好ましい上限は600μmである。
【0032】
また、上記光学機能層の表面に形成された凹凸形状の十点平均粗さ(Rz)は、0.5μm未満であることが好ましく、より好ましい上限は0.3μmである。上記Rzが0.5μm以上であると、凹凸が大きすぎて白濁感が見られる恐れがある。上記Rzの下限は特に限定されず、拡散効果が得られる範囲で適宜調整される。
【0033】
なお、本明細書において、上記のθa、Sk、Ra及びRzは、JIS B 0601−1994に準拠する方法で得られた粗さ曲線から基準長さ毎に求められる値である。Ra及びRzはJIS B 0601−1994に定義された値であり、θaは、表面粗さ測定器:SE−3400 取り扱い説明書(1995.07.20改訂)(株式会社小坂研究所)に記載の定義による値であり、図1に示すように、基準長さLに存在する凸部高さの和(h+h+h+・・・+h)のアークタンジェントθa=tan−1{(h+h+h+・・・+h)/L}で求めることができる。
また、上記Skは下記の式により定義される値である。
【数1】
ここで、lは基準長さを表し、f(x)は粗さ曲線を表し、Rqは二乗平均平方根粗さであり下記の式により定義される。
【数2】
このようなθa、Sk、Ra及びRzは、例えば、表面粗さ測定器:SE−3400/株式会社小坂研究所製等により測定して求めることができる。
【0034】
上記光学機能層は、無機酸化物微粒子を含有していることが好ましい。
上記無機酸化物微粒子は、上記光学機能層の表面の凹凸形状を形成する材料であり、本発明の光学積層体では、上記無機酸化物微粒子は、凝集体を形成して上記光学機能層中に含有され、該無機酸化物微粒子の凝集体により上記光学機能層の表面の凹凸形状が形成されていることが好ましい。
上記無機酸化物微粒子としては、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、ジルコニア微粒子、チタニア微粒子、酸化スズ微粒子、ATO粒子、酸化亜鉛微粒子等が挙げられる。
【0035】
また、上記無機酸化物微粒子は、表面処理されていることが好ましい。上記無機酸化物微粒子が表面処理されていることで、該無機酸化物微粒子の凝集体の上記光学機能層中での分布を好適に制御することができ、また、無機酸化物微粒子自体の耐薬品性及び耐ケン化性の向上を図ることもできる。
【0036】
上記表面処理としては、疎水化処理が好ましく、例えば、上記無機酸化物微粒子を、メチル基あるいはオクチル基を有するシラン化合物で処理する方法等が挙げられる。
ここで、通常、上記無機酸化物微粒子の表面には水酸基が存在しているが、上記表面処理がされることで上記無機酸化物微粒子表面の水酸基が少なくなり、上記無機酸化物微粒子のBET法により測定される比表面積が小さくなるとともに、上記無機酸化物微粒子が過度に凝集することを防止でき、上述した特定の凹凸形状を光学機能層の表面に形成することができる。
【0037】
また、上記無機酸化物微粒子は、非晶質であることが好ましい。上記無機酸化物微粒子が結晶性である場合、その結晶構造中に含まれる格子欠陥により、無機酸化物微粒子のルイス酸性が強くなってしまい、無機酸化物微粒子の過度の凝集を制御できなくなることがある。
【0038】
このような無機酸化物微粒子としては、それ自身が凝集しやすく後述する凝集体を形成しやすいことから、例えば、フュームドシリカが好適に用いられる。ここで、上記フュームドシリカとは、乾式法で作製された200nm以下の粒径を有する非晶質のシリカをいい、ケイ素を含む揮発性化合物を気相で反応させることにより得られる。具体的には、例えば、ケイ素化合物、例えば、SiClを酸素と水素の炎中で加水分解して生成されたもの等が挙げられる。具体的には、例えば、AEROSIL R805(日本アエロジル社製)等が挙げられる。
【0039】
上記無機酸化物微粒子の含有量としては特に限定されないが、上記光学機能層中0.1〜5.0質量%であることが好ましい。0.1質量%未満であると、上述した特定の凹凸形状を光学機能層の表面に形成できず、干渉縞が防止できないことがあり、5.0質量%を超えると、凝集体が過度に生じ、内部拡散及び/又は光学機能層に大きな表面凹凸が生じるため、白濁感の問題が生じることがある。より好ましい下限は0.5質量%、より好ましい上限は3.0質量%である。
【0040】
上記無機酸化物微粒子は、平均1次粒子径が1〜100nmであることが好ましい。1nm未満であると、上述した特定の凹凸形状を光学機能層の表面に形成できないことがあり、100nmを超えると、無機酸化物微粒子により光が拡散され、本発明の光学積層体を用いた画像表示装置の暗室コントラストが劣ることがある。より好ましい下限は5nm、より好ましい上限は50nmである。
なお、上記無機酸化物微粒子の平均1次粒子径は、断面電子顕微鏡(TEM、STEM等の透過型で倍率は5万倍以上が好ましい)の画像から、画像処理ソフトウェアーを用いて測定される値である。
【0041】
上記無機酸化物微粒子は、単粒子状態での形状が球状であることが好ましい。上記無機酸化物微粒子の単粒子がこのような球状であることで、本発明の光学積層体を画像表示装置に適用した場合、高コントラストの表示画像を得ることができる。
なお、上記「球状」とは、例えば、真球状、楕円球状等が挙げられ、いわゆる不定形を除く意味である。
【0042】
また、本発明において、上記無機酸化物微粒子の凝集体は、上記光学機能層中で上述した無機酸化物微粒子が数珠状(真珠のネックレス状)に連なった構造を形成していることが好ましい。
上記光学機能層中で上記無機酸化物微粒子が数珠状に連なった凝集体を形成していることで、該凝集体に基づく凸部が傾斜の少ないなだらかな形状となるため、上記光学機能層の表面凹凸形状を上述した特定の凹凸形状とすることが容易になる。
なお、上記無機酸化物微粒子が数珠状に連なった構造とは、例えば、上記無機酸化物微粒子が直線状に連続して連なった構造(直鎖構造)、該直鎖構造が複数絡み合った構造、上記直鎖構造に無機酸化物微粒子が複数連続して形成された側鎖を1又は2以上有する分岐構造等、任意の構造が挙げられる。
【0043】
また、上記無機酸化物微粒子の凝集体は、平均粒子径が100nm〜2.0μmであることが好ましい。100nm未満であると、上述した特定の凹凸形状を光学機能層の表面に形成できないことがあり、2.0μmを超えると、上記無機酸化物微粒子の凝集体により光が拡散され、本発明の光学積層体を用いた画像表示装置の暗室コントラストが劣ることがある。上記凝集体の平均粒子径のより好ましい下限は200nm、より好ましい上限は1.5μmである。
なお、上記無機酸化物微粒子の凝集体の平均粒子径は、断面電子顕微鏡による観察(1万〜2万倍程度)から無機酸化物微粒子の凝集体が多く含まれる5μm四方の領域を選び、その領域中の無機酸化物微粒子の凝集体の粒子径を測定し、上位10個の無機酸化物微粒子の凝集体の粒子径を平均したものである。なお、上記「無機酸化物微粒子の凝集体の粒子径」は、無機酸化物微粒子の凝集体の断面を任意の平行な2本の直線で挟んだとき、該2本の直線間距離が最大となるような2本の直線の組み合わせにおける直線間距離として測定される。また、上記無機酸化物微粒子の凝集体の粒子径は、画像解析ソフトを用いて算出してもよい。
【0044】
本発明の光学積層体において、上記光学機能層は、ハードコート層であることが好ましい。
上記ハードコート層の厚さとしては、2.0〜7.0μmであることが好ましい。2.0μm未満であると、ハードコート層表面が傷付きやすくなることがあり、7.0μmを超えると、ハードコート層の薄膜化を図れないだけでなく、ハードコート層が割れやすくなったり、カールが問題となることがある。上記ハードコート層の厚さのより好ましい範囲は2.0〜5.0μmである。なお、上記ハードコート層の厚さは、断面顕微鏡観察により測定することができる。
【0045】
上記ハードコート層は、上記無機酸化物微粒子がバインダー樹脂中に分散されていることが好ましい。
上記バインダー樹脂としては、上記疎水化処理した無機酸化物微粒子の疎水性に応じて、極性が調整されていることが好ましい。バインダー樹脂の極性を調整する方法としては、例えば、バインダー樹脂の水酸基価を調整することが挙げられる。バインダー樹脂の極性を好適にすることで、上記無機酸化物微粒子の凝集・分散性を好適に制御し、上述した特定の凹凸形状を形成させやすくなる。
【0046】
上記バインダー樹脂としては、透明性のものが好ましく、例えば、紫外線又は電子線により硬化する樹脂である電離放射線硬化型樹脂が紫外線又は電子線の照射により硬化したものであることが好ましい。
なお、本明細書において、「樹脂」とは、特に言及しない限り、モノマー、オリゴマー、ポリマー等も包含する概念である。
【0047】
上記電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、アクリレート系等の官能基を有する化合物等の1又は2以上の不飽和結合を有する化合物が挙げられる。1の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等を挙げることができる。2以上の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリエステルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、アダマンチルジ(メタ)アクリレート、イソボロニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の多官能化合物等を挙げることができる。なかでも、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)が好適に用いられる。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート及びアクリレートを指すものである。また、本発明では、上記電離放射線硬化型樹脂として、上述した化合物をPO、EO等で変性したものも使用できる。
【0048】
上記化合物のほかに、不飽和二重結合を有する比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も上記電離放射線硬化型樹脂として使用することができる。
【0049】
上記電離放射線硬化型樹脂は、溶剤乾燥型樹脂(熱可塑性樹脂等、塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂)と併用して使用することもできる。溶剤乾燥型樹脂を併用することによって、ハードコート層を形成する際に、塗液の塗布面の被膜欠陥を有効に防止することができる。
上記電離放射線硬化型樹脂と併用して使用することができる溶剤乾燥型樹脂としては特に限定されず、一般に、熱可塑性樹脂を使用することができる。
上記熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂及びゴム又はエラストマー等を挙げることができる。上記熱可塑性樹脂は、非結晶性で、かつ有機溶媒(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶媒)に可溶であることが好ましい。特に、透明性や耐候性という観点から、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類等)等が好ましい。
【0050】
また、上記ハードコート層は、熱硬化性樹脂を含有していてもよい。
上記熱硬化性樹脂としては特に限定されず、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を挙げることができる。
【0051】
上記無機酸化物微粒子及びバインダー樹脂を含有するハードコート層は、例えば、上述した無機酸化物微粒子、バインダー樹脂のモノマー成分及び溶剤を含有するハードコート層用組成物を、光透過性基材上に塗布し、乾燥させて形成した塗膜を電離放射線照射等により硬化させることで形成することができる。
【0052】
上記ハードコート層用組成物に含まれる溶剤としては、例えば、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、ベンジルアルコール、PGME、エチレングリコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン等)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタン等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)等が例示でき、これらの混合物であってもよい。
【0053】
上記ハードコート層用組成物は、更に光重合開始剤を含有することが好ましい。
上記光重合開始剤としては特に限定されず、公知のものを用いることができ、具体例には、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、チオキサントン類、プロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、アシルホスフィンオキシド類が挙げられる。また、光増感剤を混合して用いることが好ましく、その具体例としては、例えば、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホスフィン等が挙げられる。
【0054】
上記光重合開始剤としては、上記バインダー樹脂がラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等を単独又は混合して用いることが好ましい。また、上記バインダー樹脂がカチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、上記光重合開始剤としては、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を単独又は混合物として用いることが好ましい。
【0055】
上記ハードコート層用組成物における上記光重合開始剤の含有量は、上記バインダー樹脂100質量部に対して、0.5〜10.0質量部であることが好ましい。0.5質量部未満であると、形成するハードコート層のハードコート性能が不充分となることがあり、10.0質量部を超えると、逆に硬化を阻害する可能性も出てくるため、好ましくない。
【0056】
上記ハードコート層用組成物中における原料の含有割合(固形分)としては特に限定されないが、通常は5〜70質量%、特に25〜60質量%とすることが好ましい。
【0057】
上記ハードコート層用組成物には、ハードコート層の硬度を高くする、硬化収縮を抑える、屈折率を制御する等の目的に応じて、従来公知の分散剤、界面活性剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、易滑剤等を添加していてもよい。
上記レベリング剤としては、例えば、シリコーンオイル、フッ素系界面活性剤等が、ハードコート層がベナードセル構造となることを回避することから好ましい。溶剤を含む樹脂組成物を塗工し、乾燥する場合、塗膜内において塗膜表面と内面とに表面張力差等を生じ、それによって塗膜内に多数の対流が引き起こされる。この対流により生じる構造はベナードセル構造と呼ばれ、形成するハードコート層にゆず肌や塗工欠陥といった問題の原因となる。
また、上記ベナードセル構造は、ハードコート層の表面の凹凸が大きくなりすぎて光学積層体の外観を損なう恐れがある。前述のようなレベリング剤を用いると、この対流を防止することができるため、欠陥やムラのないハードコート層膜が得られるだけでなく、ハードコート層表面の凹凸形状の調整も容易となる。
【0058】
上記ハードコート層用組成物の調製方法としては各成分を均一に混合できれば特に限定されず、例えば、ペイントシェーカー、ビーズミル、ニーダー、ミキサー等の公知の装置を使用して行うことができる。
【0059】
上記ハードコート層用組成物を光透過性基材上に塗布する方法としては特に限定されず、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、ダイコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ピードコーター法等の公知の方法を挙げることができる。
上記の方法のいずれかでハードコート層用組成物を塗布した後、形成した塗膜を乾燥させるために加熱されたゾーンに搬送され各種の公知の方法で塗膜を乾燥させ溶剤を蒸発させる。ここで溶剤相対蒸発速度、固形分濃度、塗布液温度、乾燥温度、乾燥風の風速、乾燥時間、乾燥ゾーンの溶剤雰囲気濃度等を選定することにより、無機酸化物微粒子の凝集体の分布状態を調整できる。
特に、乾燥条件の選定によって無機酸化物微粒子の凝集体の分布状態を調整する方法が簡便で好ましい。具体的な乾燥温度としては、30〜120℃、乾燥風速では0.2〜50m/sであることが好ましく、この範囲内で適宜調整した乾燥処理を、1回又は複数回行うことで無機酸化物微粒子の凝集体の分布状態を所望の状態に調整することができる。
【0060】
また、上記乾燥後の塗膜を硬化させる際の電離放射線の照射方法としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯等の光源を用いる方法が挙げられる。
また、紫外線の波長としては、190〜380nmの波長域を使用することができる。電子線源の具体例としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が挙げられる。
【0061】
また、本発明の光学積層体は、周囲からの映り込みを低減し、透過率を向上させることができることから、上記光学機能層は、上記ハードコート層上に低屈折率層が積層された構造であることが好ましい。
なお、本発明の光学積層体が、光学機能層として上記低屈折率層を上記ハードコート層上に有する場合、該低屈折率層の表面に上述した特定の凹凸形状が形成されていることが必要である。
【0062】
上記低屈折率層は、外部からの光(例えば蛍光灯、自然光等)が光学積層体の表面にて反射する際、その反射率を低くするという役割を果たす層である。
上記低屈折率層としては、好ましくは1)シリカ、フッ化マグネシウム等の低屈折率粒子を含有する樹脂、2)低屈折率樹脂であるフッ素系樹脂、3)シリカ又はフッ化マグネシウムを含有するフッ素系樹脂、4)シリカ、フッ化マグネシウム等の低屈折率物質の薄膜等のいずれかで構成される。フッ素系樹脂以外の樹脂については、上述したハードコート層を構成するバインダー樹脂と同様の樹脂を用いることができる。
また、上述したシリカは、中空シリカ微粒子であることが好ましく、このような中空シリカ微粒子は、例えば、特開2005−099778号公報の実施例に記載の製造方法にて作製できる。
これらの低屈折率層は、その屈折率が1.45以下、特に1.42以下であることが好ましい。
また、低屈折率層の厚みは限定されないが、通常は30nm〜1μm程度の範囲内から適宜設定すれば良い。
また、上記低屈折率層は単層で効果が得られるが、より低い最低反射率、あるいはより高い最低反射率を調整する目的で、低屈折率層を2層以上設けることも適宜可能である。上記2層以上の低屈折率層を設ける場合、各々の低屈折率層の屈折率及び厚みに差異を設けることが好ましい。
【0063】
上記フッ素系樹脂としては、少なくとも分子中にフッ素原子を含む重合性化合物又はその重合体を用いることができる。重合性化合物としては特に限定されないが、例えば、電離放射線で硬化する官能基、熱硬化する極性基等の硬化反応性の基を有するものが好ましい。また、これらの反応性の基を同時に併せ持つ化合物でもよい。この重合性化合物に対し、重合体とは、上記のような反応性基などを一切もたないものである。
【0064】
上記電離放射線で硬化する官能基を有する重合性化合物としては、エチレン性不飽和結合を有するフッ素含有モノマーを広く用いることができる。より具体的には、フルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロブタジエン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)を例示することができる。(メタ)アクリロイルオキシ基を有するものとしては、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、α−トリフルオロメタクリル酸メチル、α−トリフルオロメタクリル酸エチルのような、分子中にフッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物;分子中に、フッ素原子を少なくとも3個持つ炭素数1〜14のフルオロアルキル基、フルオロシクロアルキル基又はフルオロアルキレン基と、少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステル化合物等もある。
【0065】
上記熱硬化する極性基として好ましいのは、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基等の水素結合形成基である。これらは、塗膜との密着性だけでなく、シリカ等の無機超微粒子との親和性にも優れている。熱硬化性極性基を持つ重合性化合物としては、例えば、4−フルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体;フルオロエチレン−炭化水素系ビニルエーテル共重合体;エポキシ、ポリウレタン、セルロース、フェノール、ポリイミド等の各樹脂のフッ素変性品等が挙げられる。
上記電離放射線で硬化する官能基と熱硬化する極性基とを併せ持つ重合性化合物としては、アクリル又はメタクリル酸の部分及び完全フッ素化アルキル、アルケニル、アリールエステル類、完全又は部分フッ素化ビニルエーテル類、完全又は部分フッ素化ビニルエステル類、完全又は部分フッ素化ビニルケトン類等を例示することができる。
【0066】
また、フッ素系樹脂としては、例えば、次のようなものを挙げることができる。
上記電離放射線硬化性基を有する重合性化合物の含フッ素(メタ)アクリレート化合物を少なくとも1種類含むモノマー又はモノマー混合物の重合体;上記含フッ素(メタ)アクリレート化合物の少なくとも1種類と、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートの如き分子中にフッ素原子を含まない(メタ)アクリレート化合物との共重合体;フルオロエチレン、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、3,3,3−トリフルオロプロピレン、1,1,2−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレンのような含フッ素モノマーの単独重合体又は共重合体など。これらの共重合体にシリコーン成分を含有させたシリコーン含有フッ化ビニリデン共重合体も用いることができる。この場合のシリコーン成分としては、(ポリ)ジメチルシロキサン、(ポリ)ジエチルシロキサン、(ポリ)ジフェニルシロキサン、(ポリ)メチルフェニルシロキサン、アルキル変性(ポリ)ジメチルシロキサン、アゾ基含有(ポリ)ジメチルシロキサン、ジメチルシリコーン、フェニルメチルシリコーン、アルキル・アラルキル変性シリコーン、フルオロシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、脂肪酸エステル変性シリコーン、メチル水素シリコーン、シラノール基含有シリコーン、アルコキシ基含有シリコーン、フェノール基含有シリコーン、メタクリル変性シリコーン、アクリル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、カルボン酸変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等が例示される。なかでも、ジメチルシロキサン構造を有するものが好ましい。
【0067】
更には、以下のような化合物からなる非重合体又は重合体も、フッ素系樹脂として用いることができる。すなわち、分子中に少なくとも1個のイソシアナト基を有する含フッ素化合物と、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基のようなイソシアナト基と反応する官能基を分子中に少なくとも1個有する化合物とを反応させて得られる化合物;フッ素含有ポリエーテルポリオール、フッ素含有アルキルポリオール、フッ素含有ポリエステルポリオール、フッ素含有ε−カプロラクトン変性ポリオールのようなフッ素含有ポリオールと、イソシアナト基を有する化合物とを反応させて得られる化合物等を用いることができる。
【0068】
また、上記したフッ素原子を持つ重合性化合物や重合体とともに、上記ハードコート層に記載したような各バインダー樹脂を混合して使用することもできる。更に、反応性基等を硬化させるための硬化剤、塗工性を向上させたり、防汚性を付与させたりするために、各種添加剤、溶剤を適宜使用することができる。
【0069】
上記低屈折率層の形成においては、上述した材料を添加してなる低屈折率層用組成物の粘度を好ましい塗布性が得られる0.5〜5mPa・s(25℃)、好ましくは0.7〜3mPa・s(25℃)の範囲のものとすることが好ましい。可視光線の優れた反射防止層を実現でき、かつ、均一で塗布ムラのない薄膜を形成することができ、かつ、密着性に特に優れた低屈折率層を形成することができる。
【0070】
樹脂の硬化手段は、上述したハードコート層で説明したものと同様であってよい。硬化処理のために加熱手段が利用される場合には、加熱により、例えばラジカルを発生して重合性化合物の重合を開始させる熱重合開始剤がフッ素系樹脂組成物に添加されることが好ましい。
【0071】
低屈折率層の層厚(nm)dは、下記式(1):
=mλ/(4n) (1)
(上記式中、
は低屈折率層の屈折率を表し、
mは正の奇数を表し、好ましくは1を表し、
λは波長であり、好ましくは480〜580nmの範囲の値である)
を満たすものが好ましい。
【0072】
また、本発明にあっては、低屈折率層は下記式(2):
120<n<145 (2)
を満たすことが低反射率化の点で好ましい。
【0073】
本発明の光学積層体は、全光線透過率が90%以上であることが好ましい。90%未満であると、本発明の光学積層体を画像表示装置の表面に装着した場合において、色再現性や視認性を損なうおそれがある。上記全光線透過率は、91%以上であることがより好ましい。
なお、上記全光線透過率は、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7361に準拠した方法により測定することができる。
【0074】
また、本発明の光学積層体は、全ヘイズが2.0%未満であることが好ましい。2.0%以上であると、所望の光学特性が得られず、本発明の光学積層体を画像表示表面に設置した際の視認性が低下することがある。より好ましくは1.5%以下、更に好ましくは1.0%以下である。
上記全ヘイズは、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、製品番号;HM−150)を用いてJIS K−7136に準拠した方法により測定することができる。
【0075】
また、本発明の光学積層体は、透過画像鮮明度が0.125mm櫛において75〜95%であり、かつ、2.0mm櫛において95%以上であることが好ましい。0.125mm櫛における透過画像鮮明度が75%未満であると、画像を表示させた際の画像の鮮明性を損ない、画質に劣る恐れがある。95%超過であると、干渉縞が好適に防止できない恐れがある。0.125mm櫛における透過画像鮮明度は80〜90%であることがより好ましい。また、2.0mm櫛における透過画像鮮明度が95%未満であると、画像の鮮明性が損なわれ、また、外光の拡散反射による白濁感が生じる恐れがある。
上記透過画像鮮明度は写像性測定器(スガ試験機製、製品番号;ICM−1T)を用いて、JIS K−7105の像鮮明度の透過法に準拠した方法により測定することができる。
【0076】
本発明の光学積層体は、コントラスト比が80%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。80%未満であると、本発明の光学積層体をディスプレイ表面に装着した場合において、暗室コントラストに劣り視認性を損なう恐れがある。なお、本明細書における、上記コントラスト比は、以下の方法により測定された値である。
すなわちバックライトユニットとして冷陰極管光源に拡散板を設置したものを用い、2枚の偏光板(サムスン社製 AMN−3244TP)を用い、該偏光板をパラレルニコルに設置したときに通過する光の輝度のLmaxを、クロスニコルに設置したときに通過する光の輝度のLminで割った値(Lmax/Lmin)をコントラストとし、光学積層体(光透過性基材+ハードコート層等)のコントラスト(L)を、光透過性基材のコントラスト(L)で割った値(L/L)×100(%)をコントラスト比とする。
なお、上記輝度の測定は暗室下で行う。上記輝度の測定には、色彩輝度計(トプコン社製 BM−5A)を用い、色彩輝度計の測定角は、1°に設定し、サンプル上の視野φ5mmで測定する。また、バックライトの光量は、サンプルを設置しない状態で、2枚の偏光板をパラレルニコルに設置したときの輝度が3600cd/mになるように設置する。
【0077】
本発明の光学積層体は、上記光学機能層がハードコート層である場合、光透過性基材上に、例えば、無機酸化物微粒子、バインダー樹脂のモノマー成分及び溶剤を含有するハードコート層用組成物を使用してハードコート層を形成することにより製造することができる。また、上記光学機能層が上記ハードコート層上に低屈折率層が積層された構造の場合、光透過性基材上に、例えば、無機酸化物微粒子、バインダー樹脂のモノマー成分及び溶剤を含有するハードコート層用組成物を使用してハードコート層を形成した後、上述した低屈折率層用組成物を使用してハードコート層上に低屈折率層を形成することにより製造することができる。
上記ハードコート層用組成物及びハードコート層の形成方法、低屈折率層用組成物及び低屈折率層の形成方法については、上述したのと同様の材料、方法が挙げられる。
【0078】
本発明の光学積層体は、偏光素子の表面に、本発明による光学積層体を該光学積層体におけるハードコート層が存在する面と反対の面に設けることによって、偏光板とすることができる。このような偏光板もまた、本発明の一つである。
【0079】
上記偏光素子としては特に限定されず、例えば、ヨウ素等により染色し、延伸したポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルム等を使用することができる。上記偏光素子と本発明の光学積層体とのラミネート処理においては、光透過性基材(トリアセチルセルロースフィルム)にケン化処理を行うことが好ましい。ケン化処理によって、接着性が良好になり帯電防止効果も得ることができる。
【0080】
本発明は、上記光学積層体又は上記偏光板を備えてなる画像表示装置でもある。
上記画像表示装置は、LCD、PDP、FED、ELD(有機EL、無機EL)、CRT、タブレットPC、タッチパネル、電子ペーパー等の画像表示装置であってもよい。
【0081】
上記の代表的な例であるLCDは、透過性表示体と、上記透過性表示体を背面から照射する光源装置とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がLCDである場合、この透過性表示体の表面に、本発明の光学積層体又は本発明の偏光板が形成されてなるものである。
【0082】
本発明が上記光学積層体を有する液晶表示装置の場合、光源装置の光源は光学積層体の下側から照射される。なお、液晶表示素子と偏光板との間に、位相差板が挿入されてよい。この液晶表示装置の各層間には必要に応じて接着剤層が設けられてよい。
【0083】
上記画像表示装置であるPDPは、表面ガラス基板(表面に電極を形成)と当該表面ガラス基板に対向して間に放電ガスが封入されて配置された背面ガラス基板(電極および、微小な溝を表面に形成し、溝内に赤、緑、青の蛍光体層を形成)とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がPDPである場合、上記表面ガラス基板の表面、又はその前面板(ガラス基板又はフィルム基板)に上述した光学積層体を備えるものでもある。
【0084】
上記画像表示装置は、電圧をかけると発光する硫化亜鉛、ジアミン類物質:発光体をガラス基板に蒸着し、基板にかける電圧を制御して表示を行うELD装置、又は、電気信号を光に変換し、人間の目に見える像を発生させるCRTなどの画像表示装置であってもよい。この場合、上記のような各表示装置の最表面又はその前面板の表面に上述した光学積層体を備えるものである。
【0085】
ここで、本発明が上記光学積層体有する液晶表示装置の場合、上記光学積層体は、該光学積層体の遅相軸と上記偏光板(液晶セルの視認側に設置された偏光板)の吸収軸とのなす角度が、45°±15°と設置することで、サングラスなどの偏光板を通して液晶表示装置を観察した場合でも、良好な視認性を得ることができる。
また、本発明が上記光学積層体を有する液晶表示装置の場合、上記光学積層体は、該光学積層体の遅相軸と上記偏光板(液晶セルの視認側に配置された偏光板)の吸収軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように配設されることがより好ましい。上記光学積層体の遅相軸と上記偏光板の吸収軸とのなす角度が上記範囲内にあることで、本発明の液晶表示装置の表示画像にニジムラが生じることを極めて高度に抑制することができる。この理由は明確ではないが、以下の理由によると考えられる。
すなわち、外光や蛍光灯の光のない環境下(以下、このような環境下を「暗所」ともいう)では、本発明の液晶表示装置の光学積層体の遅相軸と偏光板の吸収軸とのなす角度は、どのような角度であってもニジムラの発生を抑制できる。しかしながら、外光や蛍光灯の光のある環境下(以下、このような環境下を「明所」ともいう)においては、外光や蛍光灯の光は、連続的な幅広いスペクトルを有するものばかりではないため、光学積層体の遅相軸と偏光板の吸収軸とのなす角度を上述の範囲にしないと、ニジムラが生じてしまい表示品位が低下してしまう。
更に、カラーフィルターを透過したバックライトの光も連続的な幅広いスペクトルを有するものばかりではくなるため、光学積層体の遅相軸と偏光板の吸収軸とのなす角度を上述の範囲にしないと、ニジムラが生じてしまい表示品位が低下してしまうと推測している。
【0086】
本発明の液晶表示装置において、バックライト光源としては特に限定されないが、白色発光ダイオード(白色LED)であることが好ましい。
上記白色LEDとは、蛍光体方式、すなわち化合物半導体を使用した青色光又は紫外光を発する発光ダイオードと蛍光体を組み合わせることにより白色を発する素子のことである。なかでも、化合物半導体を使用した青色発光ダイオードとイットリウム・アルミニウム・ガーネット系黄色蛍光体とを組み合わせた発光素子からなる白色発光ダイオードは、連続的で幅広い発光スペクトルを有していることからニジムラの改善に有効であるとともに、発光効率にも優れるため、本発明における上記バックライト光源として好適である。また、消費電力の小さい白色LEDを広汎に利用可能になるので、省エネルギー化の効果も奏することが可能となる。
【0087】
上記画像表示装置であるPDPは、表面ガラス基板(表面に電極を形成)と当該表面ガラス基板に対向して間に放電ガスが封入されて配置された背面ガラス基板(電極および、微小な溝を表面に形成し、溝内に赤、緑、青の蛍光体層を形成)とを備えてなるものである。本発明の画像表示装置がPDPである場合、上記表面ガラス基板の表面、又はその前面板(ガラス基板又はフィルム基板)に上述した防眩性フィルムを備えるものでもある。
【0088】
上記画像表示装置は、電圧をかけると発光する硫化亜鉛、ジアミン類物質:発光体をガラス基板に蒸着し、基板にかける電圧を制御して表示を行うELD装置、又は、電気信号を光に変換し、人間の目に見える像を発生させるCRTなどの画像表示装置であってもよい。この場合、上記のような各表示装置の表面又はその前面板の表面に上述した防眩性フィルムを備えるものである。
【0089】
本発明の画像表示装置は、いずれの場合も、テレビジョン、コンピュータ、電子ペーパー、タッチパネル、タブレットPCなどのディスプレイ表示に使用することができる。特に、CRT、液晶パネル、PDP、ELD、FED、タッチパネルなどの高精細画像用ディスプレイの表面に好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0090】
本発明の光学積層体は、上述した構成からなるものであるため、面内に複屈折率を有する光透過性基材を用いた液晶表示装置において、表示画像にニジムラ及び干渉縞が生じることを高度に抑制することができる。
このため、本発明の光学積層体は、陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、電子ペーパー等に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
図1】θaの測定方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0092】
本発明の内容を下記の実施例により説明するが、本発明の内容はこれらの実施態様に限定して解釈されるものではない。また、特別に断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
ポリエステル基材のリタデーションは、二枚の偏光板を用いて、フィルムの配向軸方向を求め、配向軸方向に対して直交する二つの軸の屈折率(nx,ny)を、アッベ屈折率計(アタゴ社製 NAR−4T)によって求めた。ここで、より大きい屈折率を示す軸を遅相軸と定義する。フィルム厚みd(nm)は、電気マイクロメータ(アンリツ社製)を用いて測定し、単位をnmに換算した。屈折率差(nx−ny)と、フィルムの厚みd(nm)の積より、リタデーションを求めた。
【0093】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート材料を290℃で溶融して、フィルム形成ダイを通して、シート状に押出し、水冷冷却した回転急冷ドラム上に密着させて冷却し、未延伸フィルムを作製した。この未延伸フィルムを二軸延伸試験装置(東洋精機製)にて、120℃にて1分間予熱した後、120℃にて、延伸倍率4.5倍に延伸した後、その延伸方向とは90度の方向に延伸倍率1.5倍にて延伸を行い、リタデーション=9900nm、膜厚=100μm、(nx−ny)=0.099のポリエステル基材を得た。
【0094】
得られたポリエステル基材の片面に、下記に示した組成のハードコート層用組成物を塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、0.2m/sの流速で70℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン社製、光源Hバルブ)を用いて、紫外線を窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下)下にて積算光量が100mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることにより、4μm厚み(硬化時)のハードコート層を形成し、実施例1に係る光学積層体を作製した。
(ハードコート層用組成物)
フュームドシリカ(オクチルシラン処理;平均粒子径12nm、日本アエロジル社製)
1質量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)(製品名:PETA、ダイセル・サイテック社製) 60質量部
ウレタンアクリレート(製品名:UV1700B、日本合成化学社製) 40質量部
イルガキュア184(BASFジャパン社製) 5質量部
ポリエーテル変性シリコーン(TSF4460、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製) 0.025質量部
トルエン 105質量部
イソプロピルアルコール 30質量部
シクロヘキサノン 15質量部
なお、フュームドシリカは、オクチル基を有するシラン化合物(例えば、オクチルシラン)により、シラノール基をオクチルシリル基で置換して疎水化処理されたものである。
【0095】
(実施例2)
フュームドシリカの配合量を1.5質量部とした以外は実施例1と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例2に係る光学積層体を作製した。
【0096】
(実施例3)
フュームドシリカの配合量を0.5質量部とした以外は実施例1と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例3に係る光学積層体を作製した。
【0097】
(実施例4)
フュームドシリカの配合量を2.5質量部とした以外は実施例1と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例4に係る光学積層体を作製した。
【0098】
(実施例5)
実施例1で得られたポリエステル基材の片面に、下記に示した組成のハードコート層用組成物を塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、0.2m/sの流速で70℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン社製、光源Hバルブ)を用いて、紫外線を窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下)下にて積算光量が50mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることにより、4μm厚み(硬化時)のハードコート層を形成した。
(ハードコート層用組成物)
フュームドシリカ(オクチルシラン処理;平均粒子径12nm、日本アエロジル社製)
1質量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)(製品名:PETA、ダイセル・サイテック社製) 60質量部
ウレタンアクリレート(製品名:UV1700B、日本合成化学社製) 40質量部
イルガキュア184(BASFジャパン社製) 5質量部
ポリエーテル変性シリコーン(TSF4460、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製) 0.025質量部
トルエン 105質量部
イソプロピルアルコール 30質量部
シクロヘキサノン 15質量部
なお、フュームドシリカは、オクチル基を有するシラン化合物(例えば、オクチルシラン)により、シラノール基をオクチルシリル基で置換して疎水化処理されたものである。
【0099】
次いで、形成したハードコート層の表面に、下記組成の低屈折率層用組成物を、乾燥後(40℃×1分)の膜厚が0.1μmとなるように塗布し、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン社製、光源Hバルブ)を用いて、窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下)下にて、積算光量100mJ/cmで紫外線照射を行って硬化させて低屈折率層を形成し、実施例5に係る光学積層体を製造した。
(低屈折率層用組成物)
中空シリカ微粒子(該シリカ微粒子の固形分:20質量%、溶液;メチルイソブチルケトン、平均粒径:50nm) 40質量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)(ダイセル・サイテック社製) 10質量部
重合開始剤(イルガキュア127;BASFジャパン社製) 0.35質量部
変性シリコーンオイル(X22164E;信越化学工業社製) 0.5質量部
MIBK 320質量部
PGMEA 161質量部
【0100】
(実施例6)
フュームドシリカの配合量を1.5質量部とした以外は実施例5と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いた以外は、実施例5と同様にして実施例6に係る光学積層体を作製した。
【0101】
(実施例7)
フュームドシリカの配合量を0.5質量部とした以外は実施例5と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いた以外は、実施例5と同様にして実施例7に係る光学積層体を作製した。
【0102】
(実施例8)
フュームドシリカの配合量を2.5質量部とした以外は実施例5と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いた以外は、実施例5と同様にして実施例8に係る光学積層体を作製した。
【0103】
(実施例9)
実施例1と同様にして得られた未延伸フィルムの延伸倍率を調整して、リタデーション=3500nm、膜厚=42μm、(nx−ny)=0.083のポリエステル基材を得た。得られたポリエステル基材を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例9に係る光学積層体を作製した。
【0104】
(実施例10)
実施例1と同様にして得られた未延伸フィルムの延伸倍率を調整して、リタデーション=19000nm、膜厚=190μm、(nx−ny)=0.10のポリエステル基材を得た。得られたポリエステル基材を用いた以外は、実施例1と同様にして実施例10に係る光学積層体を作製した。
【0105】
(比較例1)
フュームドシリカを配合しなかった以外は実施例1と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして比較例1に係る光学積層体を作製した。
【0106】
(比較例2)
有機微粒子(親水化処理アクリル−スチレン共重合体粒子、平均粒子径2.0μm、屈折率1.55、積水化成品工業社製)を3質量部加えた以外は、実施例1と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして比較例2に係る光学積層体を作製した。
【0107】
(比較例3)
有機微粒子(親水化処理アクリル−スチレン共重合体粒子、平均粒子径2.0μm、屈折率1.515、積水化成品工業社製)を1.5質量部加えた以外は、実施例1と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして比較例3に係る光学積層体を作製した。
【0108】
(比較例4)
フュームドシリカの配合量を4質量部とした以外は実施例1と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして比較例4に係る光学積層体を作製した。
【0109】
(比較例5)
フュームドシリカを配合しなかった以外は実施例5と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いた以外は、実施例5と同様にして比較例5に係る光学積層体を作製した。
【0110】
(比較例6)
有機微粒子(親水化処理アクリル−スチレン共重合体粒子、平均粒子径2.0μm、屈折率1.55、積水化成品工業社製)を3質量部加えた以外は、実施例5と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いた以外は、実施例5と同様にして比較例6に係る光学積層体を作製した。
【0111】
(比較例7)
有機微粒子(親水化処理アクリル−スチレン共重合体粒子、平均粒子径2.0μm、屈折率1.515、積水化成品工業社製)を1.5質量部加えた以外は、実施例5と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いた以外は、実施例5と同様にして比較例7に係る光学積層体を作製した。
【0112】
(比較例8)
フュームドシリカの配合量を4質量部とした以外は実施例5と同様にしてハードコート層用組成物を調製し、該ハードコート層用組成物を用いた以外は、実施例5と同様にして比較例8に係る光学積層体を作製した。
【0113】
(比較例9)
ポリエステル基材として、リタデーション=2500nm、膜厚=75μm、(nx−ny)=0.033の東洋紡社製PETフィルム A4100を用いた以外は、実施例1と同様にして比較例9に係る光学積層体を作製した。
【0114】
(比較例10)
実施例1と同様にして得られた未延伸フィルムの延伸倍率を調整して、リタデーション=2800nm、膜厚=34μm、(nx−ny)=0.083のポリエステル基材を得た。
得られたポリエステル基材を用いた以外は、実施例1と同様にして比較例10に係る光学積層体を作製した。
【0115】
得られた実施例及び比較例に係る光学積層体を下記項目について評価した。
全ての結果を表1に示した。
【0116】
(ニジムラ評価)
実施例、比較例にて作製した光学積層体を、液晶モニター(FLATORON IPS226V(LG Electronics Japan社製))の観察者側の偏光素子上に配置し、液晶表示装置を作製した。なお、ポリエステル基材の遅相軸と液晶モニターの観察者側の偏光素子の吸収軸とのなす角度が45°となるように配置した。
そして、暗所及び明所(液晶モニター周辺照度400ルクス)にて、正面及び斜め方向(約50度)から目視及び偏光サングラス越しに表示画像の観察を行い、ニジムラの有無を以下の基準に従い評価した。偏光サングラス越しの観察は、目視よりも非常に厳しい評価法である。観察は10人で行い、最多数の評価を観察結果としている。
◎:ニジムラが観察されない
○:ニジムラが観察されるが、実使用上問題ないレベル
△:ニジムラが薄く観察される
×:ニジムラが強く観察される
【0117】
(凹凸部の平均傾斜角(θa)、凹凸のスキューネス(Sk)、凹凸の算術平均粗さ(Ra))
表面粗さ測定器:SE−3400/株式会社小坂研究所製を用いて、JIS B 0601−1994に準拠し、かつ、以下の条件にて粗さ曲線を測定して、θa、Sk及びRaを測定した。なお、表1において、スキューネス(Sk)は、実測値を示した。
(1)表面粗さ検出部の触針:
型番/SE2555N(2μ触針)、株式会社小坂研究所製
(先端曲率半径2μm/頂角:90度/材質:ダイヤモンド)
(2)表面粗さ測定器の測定条件:
基準長さ(粗さ曲線のカットオフ値λc):2.5mm
評価長さ(基準長さ(カットオフ値λc)×5):12.5mm
触針の送り速さ:0.5mm/s
予備長さ:(カットオフ値λc)×2
縦倍率:2000倍
横倍率:10倍
なお、通常カットオフ値は0.8mmが使用されることが多いが、本発明においては、カットオフ値を2.5mmに設定して測定を行った。
また、λa=2π×(Ra/tan(θa))の式により、λaを算出した。
【0118】
(全ヘイズ)
JIS K7136に準拠し、ヘイズメーターHM−150(村上色彩技術研究所製)を用いて、得られた光学積層体の全ヘイズを測定した。
【0119】
(透過画像鮮明度)
JIS K7105に準拠し、写像性測定器ICM−1T(スガ試験機製)を用いて、透過測定により、得られた光学積層体の0.125mm櫛及び2.0mm櫛における透過画像鮮明度を測定した。
【0120】
(干渉縞)
実施例及び比較例で得られた各光学積層体のハードコート層と逆の面(光透過性基材面)を、透明粘着剤を介して、裏面反射を防止するための黒アクリル板に貼り、ハードコート層又は低屈折率層の面から各光学積層体にナトリウムランプを照射し、目視で観察し、干渉縞の発生の有無を以下の基準により評価した。
◎:干渉縞の発生は全くなかった。
○:干渉縞の発生が若干あるが、問題ないレベルであった。
×:干渉縞の発生があった。
【0121】
(白濁感)
実施例及び比較例で得られた各光学積層体のハードコート層と逆の面(光透過性基材面)を、透明粘着剤を介して、黒アクリル板に貼り、暗室にて卓上スタンド(3波長蛍光灯管)の下で、白濁感を観察し、以下の基準により評価した。
○:白さが観察されなかった。
×:白さが観察された。
【0122】
【表1】
【0123】
表1より、実施例に係る光学積層体は、全ての評価で良好な結果であった。
一方、比較例1及び5に係る光学積層体は、ハードコート層又は低屈折率層表面の平均傾斜角が小さすぎるため、干渉縞を防止することができなかった。
比較例2〜4及び6〜8に係る光学積層体は、平均傾斜角、又は、スキューネスの一方、もしくは両方が大きすぎ、白濁感に劣るものであった。比較例9及び10に係る光学積層体は、光透過性基材のリタデーションが小さく、明所及び暗所のいずれのニジムラ評価にも劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明の光学積層体は、陰極線管表示装置(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、タッチパネル、電子ペーパー、タブレットPC等に好適に適用することができる。
図1